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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
管理番号 1367901
審判番号 不服2019-924  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-24 
確定日 2020-11-11 
事件の表示 特願2016-542975「アレイ基板の配線構造」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日国際公開、WO2015/096261、平成29年 1月19日国内公表、特表2017-502354〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年1月23日にされた国際特許出願(パリ条約による優先権主張2013年12月25日、中国)であって、平成30年9月26日付けで拒絶査定がなされ(送達日:平成30年10月5日)、これに対して、平成31年1月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲についての補正がなされたものである。
次いで当審において、令和元年12月26日付けで拒絶理由通知がなされ(発送日:令和2年1月6日)、これに対して、令和2年4月6日に意見書(以下、「本件意見書」という。)が提出されると同時に明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。


第2 特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
データ線になる赤緑青複合線(21)と、
走査線になる奇数偶数複合線(22)と、
アレイ基板の共通線(20)と、
カラーフィルタ基板の共通線(23)と、
それぞれ前記赤緑青複合線(21)、前記奇数偶数複合線(22)、前記アレイ基板の共通線(20)及び前記カラーフィルタ基板の共通線(23)に接続されて対応する電圧を受け取るための赤緑青硬性パッド(21‐1)、奇数偶数の硬性パッド(22‐1)、アレイ基板の硬性パッド(20‐1)及びカラーフィルタ基板の硬性パッド(23‐1)とを備え、
前記赤緑青複合線(21)は、赤線、青線及び緑線を備え、前記赤線、前記青線及び前記緑線において互いに隣接する2本の配線同士は第1の薄膜トランジスタによって接続され、前記第1の薄膜トランジスタのゲート電極で当該第1の薄膜トランジスタの導通/遮断を制御することにより、前記隣接する2本の配線の短絡又は切断を制御し、
前記奇数偶数複合線(22)は第2の薄膜トランジスタによって接続されている奇数線及び偶数線を備え、前記第2の薄膜トランジスタのゲート電極によってこの第2の薄膜トランジスタの導通/遮断を制御することにより、前記奇数線と前記偶数線との短絡又は切断を制御し、
前記アレイ基板の配線構造は少なくとも1本の補助硬性配線(24)及びこの補助硬性配線(24)に接続される補助硬性パッド(24‐1)をさらに備え、
前記補助硬性配線(24)は前記第1の薄膜トランジスタと前記第2の薄膜トランジスタとのゲート電極に接続され、前記補助硬性パッド(24‐1)は前記第1の薄膜トランジスタと前記第2の薄膜トランジスタとのゲート電極の電圧を受け取るためのものであることを特徴とするアレイ基板の配線構造。
【請求項2】
前記赤線と前記青線とは、前記第1の薄膜トランジスタによって接続され、前記緑線と前記青線とは、前記第1の薄膜トランジスタによって接続されることを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板の配線構造。
【請求項3】
前記青線と前記赤線とは、前記第1の薄膜トランジスタによって接続され、前記緑線と前記赤線とは、前記第1の薄膜トランジスタによって接続されることを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板の配線構造。
【請求項4】
前記青線と前記緑線とは、前記第1の薄膜トランジスタによって接続され、前記緑線と前記赤線とは、前記第1の薄膜トランジスタによって接続されることを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板の配線構造。」


第3 当審拒絶理由
当審が令和元年12月26日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の理由1,2の概要は、以下のとおりである。

1 理由1(特許法第36条第4項第1号)について
本願明細書において、
「【0003】
通常、高分子安定化垂直配列(PSVA)プロセスの薄膜トランジスタ液晶表示装置(TFT LCD)のアレイ基板の設計において、配線構造は、硬化配線(curing line)を用いてアレイテストパッド(Array test pad)と硬化パッド(curing pad)とを接続させる。アレイテストパッド(Array test pad)は、アレイ基板の製造後のパネルに対する電気的検査のプローブとして用いられ、硬化パッド(curing pad)は、液晶パネルの硬化プローブとして用いられる。通常の場合、アレイテストバスライン(array test bus line)と硬化バスライン(curing bus line)とは、本数が同じかつ一対一に対応する。従って、製品の設計において、硬化配線の需要によって周辺配線が多く増加されるので、配布設計及び製造の良品率に対して影響を与える。」
と記載され、また明細書全般にわたり、「硬化」の表記が多数用いられている。
しかしながら、「硬化」とは、何をどのように硬化することを指すのか、またアレイ基板に関するどのような部位、工程に関するものであるのかが不明であり、アレイ基板の配線構造として、何をどのように設けるのかが不明である。

2 理由2(特許法第36条第6項第2号)について
請求項1において、多数「硬化」の記載が含まれているが、何をどのように硬化することを指すのかが不明である。


第4 当審の判断
1 「硬性」について
当審拒絶理由の理由1,2について併せて検討する。
本件補正により、明細書及び特許請求の範囲の記載において、複数の「硬化」という文言が「硬性」という文言に置き換えられた。しかしながら、本件補正後の「硬性」という記載がどのような状態、特性を指すのかが不明である。
本件補正後の明細書、段落【0003】においては、
「通常、高分子安定化垂直配列(PSVA)プロセスの薄膜トランジスタ液晶表示装置(TFT LCD)のアレイ基板の設計において、配線構造は、塗布、パタンの形成、露光処理、現像処理、エッチング処理、レジスト剥離処理等によって形成された硬性配線(以下硬性配線と略称)によりアレイテストパッド(Array test pad)と硬性パッドを接続させる。」(下線は当審による。以下同様。)
とあるが、そもそもアレイ基板上の配線構造は通常、「塗布、パタンの形成、露光処理、現像処理、エッチング処理、レジスト剥離処理等によって形成され」るものであるから、上記の記載によって「硬性」という文言がどのような意味なのか(すなわち、「配線」と「硬性配線」とがどのように異なるものであるのか)を特定しているとはいえない。
また、請求人は本件意見書において、
「当業者は、補正後の明細書の記載により「硬性配線は、塗布、パタンの形成、露光処理、現像処理、エッチング処理、レジスト剥離処理等によって形成された硬性の配線であり、硬性パッドは硬性のパッドを指し、硬性プローブは硬性のプローブを指し、硬性バスラインは硬性のバスラインを指す」ことを直ちに認識し、容易に理解することができます。」
と主張しているが、「硬性バスラインは硬性のバスラインを指す」というのは事実上同じ言葉を単に繰り返しているだけであって、「硬性」という文言の意味について何ら説明をなすものではないと言わざるを得ない。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

2 「硬化」について
当審拒絶理由の理由2について検討する。
本件補正後の明細書において、
「硬化過程」(【0006】)
「硬化」(【0007】)
「硬化用電圧」(【0008】)
「硬化過程」(【0013】)
「硬化プロセス」(【0029】)
「硬化過程」(【0031】)
として、いまだ「硬化」という記載が含まれている。
そして、上記「硬化」とは、何をどのように硬化することを指すのか、またアレイ基板に関するどのような部位、工程に関するものであるのかについて、本件意見書においても何ら説明は述べられておらず、その意味が不明である。

3 判断のまとめ
よって、本願の請求項1に係る発明は明確でない。請求項1の記載を引用して記載された請求項2-4に係る発明も同様である。
また、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1-4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。


第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載、及び発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第6項第2号、及び特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-06-08 
結審通知日 2020-06-10 
審決日 2020-06-25 
出願番号 特願2016-542975(P2016-542975)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G09F)
P 1 8・ 537- WZ (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 謙仁小川 亮田辺 正樹  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 中澤 真吾
中塚 直樹
発明の名称 アレイ基板の配線構造  
代理人 大槻 聡  

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