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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L |
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管理番号 | 1367971 |
審判番号 | 不服2019-4308 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-03 |
確定日 | 2020-11-11 |
事件の表示 | 特願2017-505112号「流体導管路設備の改修のための管状ライナー」拒絶査定不服審判事件〔2016年 2月 4日国際公開、WO2016/016348、平成29年10月 5日国内公表、特表2017-529495号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年7月29日(優先権主張外国庁受理2014年7月31日 ドイツ)を国際出願日とする出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成30年 1月26日 :拒絶理由通知 平成30年 6月28日 :意見書、手続補正書 平成30年12月 4日 :拒絶査定 平成31年 4月 3日 :審判請求、手続補正書 第2 平成31年4月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成31年4月3日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正により、補正される前の(すなわち、平成30年6月28日提出の手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1が下記の(2)に示す請求項1に補正された(下線は、補正箇所を示す。)。 (1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「シームレスな内側管状箔と、少なくとも1つの硬化可能な樹脂で含浸された少なくとも1つの繊維リボンを含む少なくとも1つの硬化可能な層と、を備えた、流体輸送配管設備の修復のためのライニングホースであって、 内側管状箔が、一つの樹脂含浸繊維リボン又は複数の樹脂含浸繊維リボンと接触し、装着した状態で一つの樹脂含浸繊維リボン又は複数の樹脂含浸繊維リボンに向かって配向されている表面上に官能基及び/又は補強材若しくは外装材を含み、 内側管状箔が多層複合箔であることを特徴とする、 ライニングホース。」 (2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「シームレスな内側管状箔と、少なくとも1つの硬化可能な樹脂で含浸された少なくとも1つの繊維リボンを含む少なくとも1つの硬化可能な層と、を備えた、流体輸送配管設備の修復のためのライニングホースであって、 内側管状箔が、一つの樹脂含浸繊維リボン又は複数の樹脂含浸繊維リボンと接触し、装着した状態で一つの樹脂含浸繊維リボン又は複数の樹脂含浸繊維リボンに向かって配向されている表面上に官能基及び/又は補強材若しくは外装材を含み、 内側管状箔が多層複合箔であり、 ライニングホースが、装着後に内側箔に向かって配向されている表面と反対側の繊維リボンの表面上に配置される1つの外側管状箔及び前記1つの外側管状箔の上部に配置された少なくとも1つのさらなる外側管状箔をさらに含む、 ことを特徴とする、ライニングホース。」 2 本件補正の目的について 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「流体輸送配管設備の修復のためのライニングホース」について、「ライニングホースが、装着後に内側箔に向かって配向されている表面と反対側の繊維リボンの表面上に配置される1つの外側管状箔及び前記1つの外側管状箔の上部に配置された少なくとも1つのさらなる外側管状箔をさらに含む」ことを限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか)について、以下、検討する。 3 独立特許要件の判断 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2) 引用文献の記載事項、引用発明 ア 引用文献1:欧州特許出願公開第0510306号明細書 ア) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(括弧内は、当審訳である。下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。 (ア-1) 「 」(1欄1?9行) (本発明は、アクセス不可能な管の更生のための硬化性強化プラスチックチューブの製造方法、およびその方法を実施するための装置に関する。 アクセス不可能な下水管および下水道を硬化性強化プラスチックチューブで補強し、これらを組み込んだ状態で硬化することについては公知とされている。) (ア-2) 「 」(1欄10?18行) (例えば、英国特許1 340 068では、平坦に折り畳まれたプラスチックチューブをロールから引き出し、ニードル不織布を用いて不織布縁部が重なり合うように該プラスチックチューブを包み、不織布縁部を相互に接合し、このサンドイッチ状態の上下をそれぞれフィルムウェブで覆い、フィルムウェブ縁部を相互に溶接することを提案している。) (ア-3) 「 」(1欄19?29行) (不織布はフィラメントまたはメッシュ織布で強化することができる。フィルム間に組み込まれた不織布は硬化性樹脂で含浸され、好ましくは、樹脂を外側フィルムを通して不織布に噴射し、必要に応じて、サンドイッチ状態のチューブをローラミルに通し、樹脂の分布状態を改善する。硬化性樹脂には、好ましくはポリエステルまたはエポキシ樹脂が使用され、通常、内側チューブはポリエチレンからなる。) (ア-4) 「 」(1欄30?36行) (このようなチューブの組込み方法については、DE 23 62 784 C2で詳述されている。チューブは気体または液体を使用して更生する管に挿入され、管壁に押圧される。硬化は、圧力媒体の加熱、または紫外線によっても実施することができる(EP 0 122 246 A1)。) (ア-5) 「 」(1欄37?43行) (サンドイッチ・チューブを更生する管に挿入する際、更生する管の粗さによって損傷することから、反転工法が導入されるようになった。この損傷を回避するため、チューブを台車用またはスライド用チェーン(Wagen- oder Schlittenkette)を用いて管へと送り込むことも提案された(WO88/09897)。) (ア-6)「 」(1欄44?47行) (反転工法の欠点は、比較的薄壁のチューブしか配置できないことであり、多くの場合、そのようなチューブは十分な強度を有していない。) (ア-7) 「 」(1欄48?56行) (これらの多層硬化性強化プラスチックチューブに関して公知されている全製造方法の欠点は、内側チューブと外側チューブの間に空気が閉じ込められ、この空気によって硬化性強化プラスチックチューブ内に細孔が生じることである。したがって、内側フィルムチューブの引き抜きまたはチューブの損傷によって、更生された管の気密性をもはや維持できない恐れがある。) (ア-8) 「 」(1欄57行?2欄1行) (それゆえに、この気泡の発生を回避する製造方法の開発が課題となった。) (ア-9) 「 」(2欄2?11行) (本発明によると、この課題は、平坦な内側フィルムチューブ1の周囲に層状に配置された不織布、織布、またはスクリム3、7および11が、樹脂が充填された含浸槽20で含浸され、含浸槽20において2つのカバーフィルム26および27で包まれ、完成したプラスチックチューブが含浸槽20から出てくる過程で、プラスチックチューブが押圧され、カバーフィルム縁部が相互に溶接されることで解決される。) (ア-10) 「 」(2欄12?23行) (当然、製造速度は、繊維層が樹脂で完全に充填される速度に依存する。ここでは、樹脂の粘度および繊維層の厚さが重要となる。製造速度を高めるために、含浸槽への流入路に真空室を組み込み、繊維層で包まれた内側フィルムチューブ20を通すことができる。繊維層で発生した低圧によって、流入路端部では樹脂が空気を含むことなく繊維層に引き込まれる。) (ア-11) 「 」(2欄24行?30行) (さらに、繊維層の真空化によって繊維が乾燥することから、繊維と樹脂との間に好ましい接着状態が生じる。 一般的に使用されているポリエステル樹脂は、特にスチレンを含有し(EP 0 391 270 A1)、これに対し、最も推奨されているポリエチレンなどからなるフィルムチューブは安定性に欠ける。) (ア-12) 「 」(2欄31?47行) (硬化によって、スチレンがプラスチックチューブ内部に入り込む恐れがある。個別のケースでは火災の原因にもなっている。このような理由から、スチレンに対して安定性を有するポリビニルアルコールからなるフィルムを内側および外側のシーリング材として使用することが提案される。内側には連続してシームレスに押出されるフィルムチューブを使用することができる。外側フィルムはフィルムウェブでシーリングされ、外側シーリング縁部は水蒸気を用いた溶媒溶接によって接合される。紫外線による硬化では、樹脂を含浸させた繊維層を日光の紫外線から保護するために、色素沈着またはコーティングによって紫外線が外側フィルムを透過しないように処理するのが好ましい。) (ア-13) 「 」(2欄48?55行) (部分的に破損した管を更生する場合、硬化プラスチックチューブ周囲に均等に負荷が分布しているという前提で始めることはできない。むしろ、点状または線状の負荷ピークが発生しており、それらの負荷ピークを吸収できるのは、相応する壁厚さによって十分に強化されたチューブのみである。) (ア-14)「 」(2欄56行?3欄5行) (このため、提案される多層繊維層構造は、絡合繊維で縫合され、かつ、対角線および軸方向に補強された外側スクリム層、ニードル不織布からなる中間層、外側スクリム層に相応する内側層、および内側の表面不織布で構成される。) (ア-15) 「 」(3欄6?11行) (外側および内側に配置された絡合繊維層を有する対角線スクリムは補強に役立ち、中間に位置する変厚の不織布は直径に応じた壁厚さを生み出し、また、表面不織布は内側に低ガラス高樹脂性の腐食層を生み出す。) (ア-16) 「 」(3欄12?19行) (個々の繊維層と不織布層は、好ましくは、緩やかに重なり合う縁部を有する。重なり合う部分は層から層へと相対的に補完され、特にチューブの周囲に均等に分布される。そのため、積層には横方向の分離は生じない。このような方法で接合された複合体においては縫い目は不要となる。) (ア-17) 「 」(3欄20?37行) (このようなプラスチックチューブは、反転工法による取り付けにはほぼ不適当なため、好ましくは、折り畳んだ状態で更生する管に挿入される。外側フィルム層の損傷を回避するため、折り畳まれたチューブは保護ウェブ、例えば布ウェブで包まれる。外側フィルムの仕上げ加工前であれば、この保護ウェブの内側に紫外線光を透過させないようコーティングすることができる。更生する管路にプラスチックチューブを挿入した後、保護ウェブを引き抜くことも、管路内に残置することも可能である。後者では、プラスチックチューブを展開した際、保護ウェブは管底に配置され、場合によってはそこに残留している先の尖った汚染物に対する保護的役割を担う。) (ア-18) 「 」(3欄38?39行) (本発明は、図面を参照してより詳細に説明される。) (ア-19) 「 」(3欄40?49行) (図1は製造装置の基本構造を示し、図2は外側フィルム縁部の溶接装置の断面図であり、ポリビニルアルコール・フィルムを使用する。 図3は折り畳まれたプラスチックチューブの完成品の断面を示し、実物とは異なり、各層は圧縮せずに膨らませて描写されているが、これは細部を分かりやすく説明するためである。) (ア-20) 「 」(3欄50行?4欄1行) (内側シーリング層用のポリビニルアルコールで構成される平坦に折り畳まれたフィルムチューブ1はロール2によって引き出され、続いて、該フィルムチューブはロール4によって引き出された第1繊維層3と共に一対のローラ5を介して引き出される。第1繊維層は、長手方向にフィラメント20%、角度45°にフィラメント40%、および長手方向に対して角度45°にフィラメント40%からなり、かつ、絡合繊維の薄層と縫合されているガラス繊維スクリムで構成されている。) (ア-21)「 」(4欄2?11行) (下方に配置された繊維層3は、折り畳み装置6においてその縁部が上側で重なり合うように、フィルムチューブ1の周囲に配置される。次に、ガラス不織布7がロール8によって下方へと引き出される。層構造は一対のローラ9を通り、その通過後、不織布7が折り畳み装置10において、不織布7縁部が繊維層3縁部とは別の箇所を覆うように、上側へと折り返される。) (ア-22) 「 」(4欄12?25行) (続いて、構造上、繊維層3に相応する繊維層11がロール12によって引き出され、該繊維層11は一対のローラ13の間隙では上方から層構造上に配置され、折り畳み装置14では下方から層構造の周囲に配置され、再び縁部が覆われる。この構造は、一対のローラ15、ならびにこれに近接し、真空接続部18および換気管もしくは排出管19を備えた真空室17が存在するガイドシャフト16を通過する。真空室17の両側のガイドシャフト16の長さは、室内において圧力約50mbarを達するように算定される。) (ア-23) 「 」(4欄26?30行) (ガイドシャフト16は、樹脂面下方において排出管21を備えた含浸槽20と合流し、含浸槽20には浸漬管23を介してタンク22から流動性硬化樹脂24が充満される。) (ア-24) 「 」(4欄31?47行) (含浸槽20の開口部はガイドシャフト16との合流点の反対側に位置し、該開口部には一対のローラ25が回転可能な状態で配置されている。ローラ25端部は含浸槽20から突出し、間隙は極めて小さい。中央領域ではチューブ層構造の厚さに相応して間隙が大きくなる。外側領域ではローラ25の含浸槽20に対する間隙は極めて小さいものの、ローラ28および29からの外側カバーフィルム26および27を通過させるには全く十分な間隙である。一対のローラ25を通過する時に、層構造はカバーフィルム26および27とそれぞれ溶接され、空気が侵入することなく、また、処理されたプラスチックチューブ表面が樹脂で汚れることもない。) (ア-25) 「 」(4欄48?57行) (プラスチックチューブは折り畳み装置30で折り畳まれ、ローラ32からの織布ウェブ31と共に一対のローラ33を通過する。織布ウェブ31は、折り畳み装置34で折り畳まれたプラスチックチューブの周囲に配置される。次に、包み込まれたプラスチックチューブは、一対のローラ35を通過し、巻取りステーション36で巻き取られる。折り畳まれたプラスチックチューブの構造については図3で示されている。) (ア-26) 「 」(4欄58行?5欄5行) (ポリビニルアルコールは加熱では容易に溶着できず、事前に水でもって膨潤させる必要があることから、この材料からなるカバーフィルムの使用にあたっては、図2が示すように特別なローラシール構造が必要となる。) (ア-27) 「 」(5欄6?17行) (含浸槽20のケーシング壁に組み込まれた一対のローラ25用のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製シール37は、ケーシング壁から突出する端部に室38を有し、該室へと管39を介して水蒸気が送り込まれる。室はロール側に対してカバーフィルム26および27縁部によってシーリングされる。水蒸気に直接接触すると、フィルム縁部が膨潤し、一対のロール25端部の間隙において押圧され、溶接される。必要に応じて、管40を介して凝縮された水蒸気を再び放出することができる。) (ア-28) 「 」(5欄18?29行) (製造方法は簡略化され、個々の繊維層はその幅において相対的に補完し合いながら重なり合って配置され、共にフィルムチューブの周囲に配置される。この場合、製造されるチューブに対応する幅の既製の繊維層を備えたロールスタンドのロールは、予め定められた重なり合う部分に合わせて相互に補完し合いながら配置される。接触センサがウェブロールの位置を相互補正し、一定の重なり合いを保証する。) (アー29) 「 」(5欄30?40行) (接合台では、ローラトラックから引き出された各層およびフィルムチューブは、上から下へと順に説明すると、平坦に配置されたPVA(ポリビニルアルコール)フィルムチューブの下に表面不織布、その下には、第1層を補完する対角線スクリムの絡合繊維層が続き、さらにその下には、第1および2層を補完する厚さが直径に応じて変化する間隙フェルト(Abstandsfilz)、その下には、第1、2および3層を補完する再び対角線スクリムの絡合繊維層が配置される。) (ア-30) 「 」(5欄41?45行) (このウェブスクリムは、折り畳み装置で互いに補完し合い配置される個別層と組み合わさって環状となり、続いて、平坦に配置され、真空区間のガイド路に挿入される。) (ア-31) 「 」(5欄46?51行) (前述の製造方法での接合による繊維層の重なり合いとは異なり、この方法では、重なり合う領域での伸張抵抗は小さく、階段状に重なり合う。) (ア-32) 「 」(5欄53行?6欄15行) (1.平坦な内側フィルムチューブ(1)の周囲に層状に配置された不織布、織布、またはスクリム(3、7、11)が、樹脂が充填された含浸槽(20)に浸され、含浸槽(20)において、2つのカバーフィルム(26、27)によって包まれ、それらの縁部はプラスチックチューブが押圧されると、相互に溶接され、完成したプラスチックチューブは含浸槽(20)から取り出されることを特徴とする、内側および外側のフィルムチューブ、ならびにこれらのチューブ間に配置される硬化性樹脂で含浸させた多層繊維構造から構成され、内側フィルムチューブを繊維層で包み、カバーフィルムを配置し、カバーフィルム縁部を溶接し、および繊維構造を含浸させる、硬化性プラスチックチューブの製造方法。) (ア-32) 「 」(6欄17?41行) (2.繊維層(3、7、11)で包まれたフィルムチューブ(1)が、樹脂面の下方に位置する含浸槽(20)に挿入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 3.繊維層(3、7、11)が、含浸槽(20)への挿入前に真空化されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 4.フィルムチューブ(1)がポリビニルアルコールからなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。 5.カバーフィルム(26、27)がポリビニルアルコールからなり、水蒸気による膨潤溶着によってその縁部が相互に接合することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。 6.プラスチックチューブが折り畳まれ、保護ウェブ(31)で包まれ、巻き取られることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。) (ア-33) 「 」(6欄43行?7欄16行) (7.外側繊維層(11)用に折り畳み装置(14)の後方に含浸槽(20)が配置され、含浸槽(11)にはタンク(22)から浸漬管(23)を介して硬化性樹脂が充填され、その後方壁には端部よりも中央領域の間隙が大きい一対のローラ(25)が配置されることを特徴とする、ローラブロック、一対のローラ、折り畳み装置およびカバーフィルム縁部用溶接装置からなる請求項1から6のいずれか一項に記載の硬化性プラスチックチューブの製造装置。 8.折り畳み装置(14)と含浸槽(20)との間にガイドシャフト(16)が配置され、必要に応じて、真空室(17)が装備されることを特徴とする、請求項7に記載の装置。 9.含浸槽(20)はシール(37)を備え、該含浸槽は一対のローラ(25)端部に対して開放されている室(38)を有し、注入管(39)および排出管(40)を装備していることを特徴とする、請求項7または8のいずれか一項に記載の装置。 10.含浸槽(20)後方にはローラブロック(32)を備えた別の折り畳み装置(30)および巻取り装置(36)配置されていることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の装置。) (ア-34) 「 」 (ア-35) 「 」 (ア-36) 「 」 イ) 引用文献1に記載された発明 上記(ア-1)、(ア-12)によれば、下水管や下水道の補修のために、プラスチックチューブの構成要素として、シームレスに押し出されるフィルムチューブが使用されることがわかる。また、上記(アー1)によれば、アクセス不可能な下水管および下水道を硬化性強化プラスチックチューブで補強し、これらを組み込んだ状態で硬化するものであるから、プラスチックチューブは、下水管および下水道のライニングの機能を有することがわかる。 上記(ア-25)、請求項6、図3の各部材の配置によると、プラスチックチューブが折り畳まれ、織布ウェブ(31)がプラスチックチューブの周囲に配置されており、当該織布ウエブは、2つのカバーフィルム(26、27)の上部に配置されている外側の管状の織布ウエブ(26、27)をなすものといえる。 そうすると、上記ア)の記載事項を総合しつつ、請求項1の製造方法により製造されるプラスチックチューブについてみると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「構成要素として、シームレスに押出されるフィルムチューブ(1)と、 平坦な内側フィルムチューブ(1)の周囲に層状に配置された不織布、織布、またはスクリム(3、7、11)が、樹脂が充填された含浸槽(20)に浸され、含浸槽(20)において、2つのカバーフィルム(26、27)によって包まれ、それらの縁部はプラスチックチューブが押圧されると、相互に溶接され、完成したプラスチックチューブは含浸槽(20)から取り出される少なくとも1つの硬化可能な層と、を備えた下水管や下水道の補修のための、ライニングの機能を有するプラスチックチューブであって、 プラスチックチューブが折り畳まれ、プラスチックチューブの周囲に配置される、2つのカバーフィルム(26、27)の上部に配置される外側の管状の織布ウエブ(31)をさらに含む、 プラスチックチューブ。」 イ 引用文献2:独国特許出願公開第102011105592号明細書 ア) 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。 (イ-1) 「 」 ([0001]本発明は、少なくとも1つの内側フィルムチューブ、少なくとも1つの外側フィルムチューブ、および少なくとも1つの内側および少なくとも1つの外側フィルムチューブ間に少なくとも1つの樹脂含浸繊維チューブを備える流体輸送システムの更生のためのライニングチューブに関する。 [0002]流体輸送システムの更生のためのライニングチューブ自体は公知され、文献にも記載されている。 [0003]この目的のために、繊維補強材を含み、熱可塑性材料をベースにした、いわゆるライナーの有効性が実証されている。このライナーとは、更生する管システムに挿入し、続いて、更生する管システムの内側面に接合し、最終的に繊維チューブに含まれる樹脂を硬化させることによって最終形状になる、柔軟なライニングチューブのことである。) (イ-2) 「 」 ([0008]EP-A 2 253 456から公知のライニングチューブは、内側フィルムチューブ、外側フィルムチューブ、およびそれらの間に少なくとも1つの樹脂含浸繊維チューブを備える。内側フィルムチューブを製造するためには、細長いフラットフィルムの長手方向端部を重ね合わせて、相互に接着または溶接する。この上に最初に不織布、次に樹脂含浸繊維シートを巻きつける。不織布は内側フィルムチューブに接合されず、硬化後に内側フィルムチューブを完成した管から引き出す必要がある。記載の方法による不織布フラットフィルムを使用し、これらを長手方向端部に沿って重ね合わせて溶接または接着した場合、漏れが生じる恐れがある。というのは、下方の長手方向端部の表面の不織布ライニングに、溶接または接着の際に問題が生じるからである。 [0009]本発明の課題は、任意の長さで容易に製造ができ、その一方で、補強された内側フィルムチューブを使用した場合でも漏れのリスクを伴わない、流体輸送システムの更生のためのライニングチューブを提供することである。 [0010]この課題は、本発明の請求項1に記載のライニングチューブによって解決される。本発明によるライニングチューブの好ましい実施形態については、従属請求項および後続の詳細な説明に示されている。 [0011]本発明のもう一つ別の特徴は、本発明によるライニングチューブの製造方法、ならびに上下水道システムの更生のための本発明によるライニングチューブの使用に関する。) (イ-3) 「 」 ([0012]本発明の意味する流体運搬システムとは、流体、すなわち、液体または気体の輸送可能なすべてのシステムを意味する。更生するシステムの構造、直径または材料については特別な制限はない。) (イ-4) 「 」 ([0014]本発明によるライニングチューブは、熱可塑性プラスチックをベースにした少なくとも1つの補強された内側フィルムチューブを備える。熱可塑性プラスチックとしては、基本的には、それぞれの用途に要求される厚さまたは強度を持つフィルムまたはフィルムチューブへの加工可能なすべてのポリマーが適している。硬化が光化学的に行われる場合、製品が硬化に使用する放射線の波長または波長範囲に対して十分な透過性を有していることに注意する必要がある。内側フィルムチューブを硬化後に更生するシステムに残置する必要がある場合、輸送される流体、および繊維チューブの樹脂に対しても十分な安定性を有していることにも注意しなければならない。ただし、多くの場合では、硬化後には内側フィルムチューブは再び取り出される。基本的には、これらの基準を考慮し、ポリオレフィン(ポリエチレンまたはポリプロピレンなど)、ポリアミド、ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートなど)、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、もしくは熱可塑性ポリウレタンまたはこれらポリマの混合物が適している。熱可塑性エラストマも基本的には適している。熱可塑性エラストマは、弾性ポリマ鎖が熱可塑性材料に含まれている原材料である。通常のエラストマには必要な加硫工程が存在しないにもかかわらず、熱可塑性エラストマはゴム弾性特性を有し、多くの用途にとって有利となり得る。これについては、例としてポリオレフィンエラストマまたはポリアミドエラストマが挙げられる。相応する製品については文献で説明されており、さまざまな製造業者から市販されているため、ここでは詳細な説明を省略する。) (イ-5) 「 」 ([0015]特に適切で好ましい熱可塑性プラスチックは、例えばポリオレフィンおよび/またはポリアミドで、ポリオレフィンやポリアミドからなる複合フィルムをベースにしたフィルムチューブは、多くの場合、使用される樹脂の溶剤として用いられるスチレンに対して純ポリエチレンフィルムよりも優れた防御効果を有することから、特定の用途において有利であることが確認されている。これによって、硬化前にライニングチューブの内側にこの溶剤/モノマが漏れるのを回避することができる。) (イ-6) 「 」 ([0016]本発明によれば、内側フィルムチューブは補強材を備える。各用途に対して最適化された特性プロフィルを獲得し、同時に、ライニングチューブの製造が可能な限り簡潔化されるように、この補強材は選択される。 [0017]好ましい実施形態によれば、内側フィルムチューブは、繊維ベース、特に繊維シートをベースにした補強材を備える。基本的に、繊維シートには、長繊維または短繊維を含む、織布、編布、スクリム、マットまたは不織布といった当業者に公知のあらゆる製品が適する。) (イ-7) 「 」 ([0018]補強材の厚さは、例えば不織布の場合、有利には0.001?10 mmの範囲、特に好ましくは0.02?5 mmの範囲である。 [0019]特に好ましい実施形態によれば、繊維ベースの補強材は、ガラス繊維織布またはガラス繊維スクリムである。 [0020]さらに好ましい実施形態によれば、内側フィルムチューブは不織布ライニングを備える。 [0021]相応する製品は当業者に公知であり、様々な製造業者から多種多様な製品が市販されている。 [0022]一般に、織布は、直角に交差した少なくとも2つの繊維系、いわゆる縦方向の経糸およびそれに対して垂直な緯糸が走っている繊維系からなるシート状の織物製品と理解される。) (イ-8) 「 」 ([0023]一般に、編布は、網目で形成される繊維製品と理解される。 [0024]スクリムは繊維処理の別バージョンであり、繊維は織らずに、互いに平行に配置され、化学キャリア物質(基材)に埋め込まれ、通常、上下のカバーフィルム、場合によっては縫い糸または接着剤を用いて固定される。スクリムは、繊維の平行配列によって、配向方向およびそれ対する垂直方向への際立った強度異方性を有し、このことは多くの用途にとって有利となり得る。) (イ-9) 「 」 ([0031]フェルトは好ましい温度耐性を有し、一般には耐湿性であることから、特に流体輸送システムへの適用に有利である。 [0032]好ましくは、補強材は、内側フィルムチューブの基礎を形成するフィルムと物理的に接合される。例えばフィルムに補強材を積層することで、フィルムが部分的に融着する。相応するライニング方法については当業者に公知であり、文献にも記載されていることから、ここでの詳細な説明は省略する。) (イ-10)「 」 ([0033]本発明によれば、少なくとも1つの樹脂含浸繊維チューブと接触する少なくとも1つの内側フィルムチューブは、樹脂含浸繊維チューブに対向する内側表面に、長手方向に配向されたフィルムシートを備える。このフィルムシートは、接着や溶接などの適切な接合方法によって、内側フィルムチューブの基礎を形成するフィルムとの接合が可能となる。フィルムシートは補強されたフィルムチューブの未補強の表面に配置されるため、接合の際に、特に接着または溶接の際に、例えばEP A 2 253 456に記載の方法を実施する際に生じ得るような問題が発生することはない。長手方向に配向されたフィルムシートは、内側フィルムチューブの外周方向に弾性率を有し、これは、同一の条件下での内側フィルムチューブの外周方向の弾性率よりも高い。) (イ-11)「 」 ([0034]少なくとも1つの樹脂含浸繊維シートと接触している少なくとも1つの内側フィルムチューブは、フラットフィルムの2つの長手方向端部を適切な装置を用いて相互に接合させることによって形成され、2つの長手方向端部間の距離は、好ましくは0?2、特に0.1?1.5 mmとすることができる。続いて、このようにして形成された接合端部に沿って長手方向にフィルムシートは配置され、適切な接合方法によってフラットフィルムに接合させる。内側チューブの外周方向のフィルムシートの弾性率は、同じ条件下でも、内側フィルムチューブの外周方向の、内側フィルムチューブを形成するフラットフィルムの弾性率よりも高いという事実によって、通常、接合によって更生する管システムと接合する内側フィルムチューブが展開する際に、接合部またはフィルムシートが伸張することはなく、漏れの生じるリスクを回避することができる。フィルムシートは、その高い弾性率によってフィルムシートで覆われた領域が伸長するのを防ぎ、それに伴い、漏れやその他の望ましくない問題を引き起こす可能性のある接合部分での亀裂形成も防ぐことから、発生し得る伸張は、フィルムシートで覆われていないフラットフィルムの領域に限定される。) (イ-12)「 」 ([0040]既に上述したように、フィルムシートには補強材を備えることも可能で、基本的には、内側フィルムチューブを形成するフラットフィルムの補強にも使用される補強材と同じ補強材が適している。好ましい実施形態によれば、補強材としてガラス繊維織布またはガラス繊維スクリムが使用され、特に好ましくは、スクリムを使用する場合、繊維はフィルムシートの横方向に配向される(これにより、横方向、すなわち、内側フィルムチューブの外周方向の弾性率が著しく高まる)。フラットフィルムおよびフィルムシートは、同じまたは異なる補強材を備えることができる。フィルムシートの弾性率は、補強材のタイプと量によって調整し、必要な値にすることができる。) (イ-13)「 」 ([0041]別の実施形態によれば、内側フィルムチューブを形成するフラットフィルムとは異なるポリマをベースとするフィルムシートを使用することができる。この場合、所望するフィルムシートの高い弾性率は、異なるポリマベースによって達成可能である。 [0042]更生する配管システムに挿入した後に光照射による硬化を行う必要がある場合、硬化が妨害または阻害されることのないよう、(内側フィルムチューブを形成するフラットフィルムおよびフィルムシート用に)使用する材料が、照射に使用する光に対して十分な透過性を有していることに注意する必要がある。熱硬化の場合はこの限りではない。 [0043]構成要素b)として、本発明によるライニングチューブは、熱可塑性プラスチックをベースにした少なくとも1つの外側フィルムチューブを備える。) (イー14)「 」 ([0044]本発明によるライニングチューブへの使用に適した外側フィルムチューブについては公知され、文献にも記載されている。これについては、例えば上述のWO 95/04646およびWO 00/73692を参照のこと。なお、WO 00/73692に記載の補強された外側フィルムチューブが好ましい実施形態として示されている。) (イ-15)「 」 ([0045]原則として、少なくとも1つの外側フィルムチューブが光保護を提供し(光化学硬化の場合に時期尚早の望ましくない硬化を防ぐため)、さらには、樹脂が樹脂含浸繊維チューブから更生する配管システムに漏れ出るのを防ぐ。特に、土壌内に敷設されている更生する配管システムでは、通常、これは環境保護の観点からも望ましい、もしくは必要とされる。ライニングチューブが配管システムに挿入され、その際に配管の表面の粗さまたは破損箇所によって機械的にチューブの損傷リスクが生じることから、外側フィルムチューブは機械的に発生する損傷に対して一定の保護を提供する点でも有利である。 [0046]原則、少なくとも1つの外側フィルムチューブの材料b)として、すべての熱可塑性プラスチックが、場合によっては上述の個別要件を考慮し、個別ケースに基づいて検討の対象となる。当業者であれば、規定の要求プロフィルに従って適切な熱可塑性プラスチックを選択するであろう。同じことが外側フィルムチューブの厚さおよび補強材の使用にも当てはまり、これについては当業者であれば個別ケースに基づいて決定するだろう。 [0047]構成要素c)として、本発明によるライニングチューブは、少なくとも1つの内側フィルムチューブおよび少なくとも1つの外側フィルムチューブとの間に少なくとも1つの樹脂含浸繊維チューブを備える。 [0048]このライニングチューブは、好ましくは、巻取芯または別の適切な装置を用いて、内側フィルムチューブ上またはその周囲に繊維シートを巻き付けることによって形成される。) (イ-16)「 」 ([0079]本発明によるライニングチューブは、あらゆるタイプの流体輸送システムの更生に適し、システムを停止させなければならない間、システムの停止期間を最小限に抑えながら、迅速な更生を可能にする。損傷した部品を交換する場合と比較して、システムの停止時間が短縮される。特に有利には、本発明によるライニングチューブは、例えばシステムが全体装置の構成部品であるために、または例えばシステムが地中に敷設されアクセスが不可能なために、従来の修理または更生では部品交換を行うには無理があるようなシステムの更生のために使用することができる。このようなシステムの例として、都市や自治体の地中や、多くの場合道路やその他の交通路下に敷設されている上下水の輸送用の配管システムが挙げられる。交換による更生の場合、これらの配管はまず適切な土木工事によって掘り出す必要があり、交通路は長期間にわたって使用できないため、特に交通量が多い場合は著しい支障を引き起こす。これに対し、そのような配管システムの更生は、本発明によるライニングチューブによって、大規模な土木工事をすることなく数時間または数日で実施することができる。 [0080]したがって、上下水道システムの更生のための本発明によるライニングチューブの使用が、本発明のもう一つの主題である。) (イ-17)「 」 (1. 流体輸送システムの更生のためのライニングチューブであって、 a)熱可塑性プラスチックをベースにした少なくとも1つの補強された内側フィルムチューブ、 b)熱可塑性プラスチックをベースにした少なくとも1つの外側フィルムチューブ、および、 c)少なくとも1つの内側および少なくとも1つの外側フィルムチューブの間に配置される少なくとも1つ樹脂含浸繊維チューブ を備え、 少なくとも1つ繊維チューブと接触している少なくとも1つ内側フィルムチューブは、繊維チューブに対向する内側表面上に、内側フィルムチューブの長手方向に配向されたフィルムシートを備え、内側フィルムチューブの外周方向の弾性率は、同方向および同条件下において、内側フィルムを形成するフィルムの弾性率よりも高い。) イ) 引用文献2に記載された事項 引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。 ・ライニングチューブは、内側フィルムチューブ、外側フィルムチューブ、およびそれらの間に少なくとも1つの樹脂含浸繊維チューブを備え([0008]参照。)、内側フィルムチューブは補強材を備え([0016]参照。)、内側フィルムチューブは不織布ライニングを備える([0020]参照。)こと(以下「引2技術」という。)。 (3) 対比・判断 ア 対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。 引用発明の「ライニングの機能を有するプラスチックチューブ」は、その機能、作用等からみて、本件補正発明の「ライニングホース」に相当する。 引用発明の「シームレスに押出されるフィルムチューブ(1)」である「内側フィルムチューブ(1)」は、フィルムはその厚みが相対的に薄いものであって、本件補正発明の「シームレスな内側管状箔」及び「内側箔」に相当する。 引用発明の「2つのカバーフィルム(26、27)」は、「内側フィルムチューブ」及び「少なくとも1つの硬化可能な層」を包むものであって、外側に位置しているといえ、フィルムはその厚みが相対的に薄いものであるから、本件補正発明の「1つの外側管状箔」に相当する。 引用発明の「下水管や下水道の補修のための」は、本件補正発明の「流体輸送配管設備の修復のための」に相当する。 引用発明の「平坦な内側フィルムチューブ(1)の周囲に層状に配置された不織布、織布、またはスクリム(3、7、11)が、樹脂が充填された含浸槽(20)に浸され、含浸槽(20)において、2つのカバーフィルム(26、27)によって包まれ、それらの縁部はプラスチックチューブが押圧されると、相互に溶接され、完成したプラスチックチューブは含浸槽(20)から取り出される少なくとも1つの硬化可能な層」は、配置された不織布、織布、またはスクリム(3、7、11)が、チューブの幅程度をなすリボンといえるものであるから、本件補正発明の「少なくとも1つの硬化可能な樹脂で含浸された少なくとも1つの繊維リボンを含む少なくとも1つの硬化可能な層」に相当する。また、引用発明の「硬化可能な層」は、「一つの樹脂含浸繊維リボン又は複数の樹脂含浸繊維リボン」を備えるものである。 また、引用発明の「内側フィルムチューブ(1)の周囲に層状に配置された」「少なくとも1つの硬化可能な層」は、「内側フィルムチューブ(1)」が「少なくとも1つの硬化可能な層」と接触していることは明らかであり、また、「内側フィルムチューブ(1)」を装着した状態で、「内側フィルムチューブ(1)」は、その配置からみて、「少なくとも1つの硬化可能な層」に配向しているといえる。また、フィルムを構成する樹脂が、その表面上に官能基を有していることもまた明らかである。 そうすると、引用発明は、本件補正発明の「内側管状箔が、一つの樹脂含浸繊維リボン又は複数の樹脂含浸繊維リボンと接触し、装着した状態で一つの樹脂含浸繊維リボン又は複数の樹脂含浸繊維リボンに向かって配向されている表面上に官能基及び/又は補強材若しくは外装材を含み」との態様を備えるものである。 引用発明の「プラスチックチューブが折り畳まれ、プラスチックチューブの周囲に配置される、2つのカバーフィルム(26、27)の上部に配置される外側の管状の織布ウエブ(31)をさらに含む」ことと、本件補正発明の「ライニングホースが、装着後に内側箔に向かって配向されている表面と反対側の繊維リボンの表面上に配置される1つの外側管状箔及び前記1つの外側管状箔の上部に配置された少なくとも1つのさらなる外側管状箔をさらに含む」こととは、引用発明の「織布ウエブ(31)」が、「カバーフィルム(26、27)」の上部に配置された少なくとも1つのさらなる外側管といえるので、「ライニングホースが、装着後に内側箔に向かって配向されている表面と反対側の繊維リボンの表面上に配置される1つの外側管状箔及び前記1つの外側管状箔の上部に配置された少なくとも1つのさらなる外側の管状部材をさらに含む」との限りで一致する。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、以下の構成において一致する。 「シームレスな内側管状箔と、少なくとも1つの硬化可能な樹脂で含浸された少なくとも1つの繊維リボンを含む少なくとも1つの硬化可能な層と、を備えた、流体輸送配管設備の修復のためのライニングホースであって、 内側管状箔が、一つの樹脂含浸繊維リボン又は複数の樹脂含浸繊維リボンと接触し、装着した状態で一つの樹脂含浸繊維リボン又は複数の樹脂含浸繊維リボンに向かって配向されている表面上に官能基及び/又は補強材若しくは外装材を含み、 ライニングホースが、装着後に内側箔に向かって配向されている表面と反対側の繊維リボンの表面上に配置される1つの外側管状箔及び前記1つの外側管状箔の上部に配置された少なくとも1つのさらなる外側の管状部材をさらに含む、 ライニングホース。」 そして、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1> 内側管状箔について、本件補正発明では、「多層複合箔」であるのに対して、引用発明では、そのような特定はなされていない点。 <相違点2> 1つの外側管状箔の上部に配置された少なくとも1つのさらなる外側の管状部材について、本件補正発明では、「外側管状箔」とされているのに対して、引用発明では、「織布ウエブ」である点。 イ 判断 ア) 相違点1について 上記引2技術によると、ライニングチューブの内側フィルムチューブについて、補強を兼ねて、不織布ライニングを備えることが行われており、当該態様は、フィルムと不織布とからなる多層の複合箔といえるものである。 そして、引用発明と引2技術の内側フィルムチューブは、ともに硬化させるための溶剤が内側に漏れるのを防止する機能を有する点で共通するものであり、また、上記引2技術と同様に、ライニングの機能を有するプラスチックチューブの内側フィルムチューブにおいて、構成部材の強度をより強いものとすることは、引用発明において当然内在する課題であるから、引用発明に、上記引2技術を採用して、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ) 相違点2について 引用発明の「織布ウエブ」は、「2つのカバーフィルム(26、27)の上部に配置されている外側の管状の織布ウエブ(26、27)」であり、図3の織布ウエブ(26、27)も参酌すると、織布ウエブは、相対的に薄い態様を示し、「箔」と言い得るものである。そうすると、上記相違点2は、実質的に相違点でない。 また、仮に相違するとしても、織布ウエブの厚さを適宜調整して、薄いものとすること、すなわち「箔」の態様とすることや、あるいは、引用発明の「2つのカバーフィルム(26、27)」を、硬化させるための溶剤が内側に漏れるのを防止することや外部からの保護強化のために、多層化して、カバーフィルムそれぞれを構成する層の数を増やしたものとすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 ウ) 効果について 本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び引2技術から予測し得る程度のものであり、当業者の予測を超える格別のものとは認められない。 エ) 請求人の主張について 請求人は、「1つの外側管状箔の上部に配置された少なくとも1つのさらなる外側管状箔は、気密性、特に本発明に係るライニングホースの周辺領域の気密性をさらに改善するために有利となる(段落0107参照)。 引用文献1には、ライニングホースが1つの外側箔を有する記載はあるが、ライニングホースが、少なくとも2つの外側管状箔を含む記載はない。また、引用文献2?4にも、ライニングホースが、少なくとも2つの外側管状箔を含む記載はない。」(審判請求書「3.本願発明が特許されるべき理由(3)理由2について(イ)引用文献との対比」参照。)と主張している。 しかしながら、上述のとおり、「2つのカバーフィルム(26、27)」のさらなる外側の管状の箔として、引用発明の「外側の管状の織布ウエブ(31)」を配置すること、あるいは、「2つのカバーフィルム(26、27)」を多層化することにより、気密性が改善されることは明らかであって、上記請求人の主張することは、当業者が容易に予測できたものであるから、採用できない。 (4) 結論 よって、本件補正発明は、引用発明、及び引2技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成30年 6月28日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1 (1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1」に記載のとおりのものであると認める。 2 引用文献 原査定の拒絶理由に引用された引用文献、その記載事項及び引用発明は、前記「第2 3 (2) 引用文献の記載事項、引用発明」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、本件補正発明から、「ライニングホース」について、「装着後に内側箔に向かって配向されている表面と反対側の繊維リボンの表面上に配置される1つの外側管状箔及び前記1つの外側管状箔の上部に配置され」るという限定を省いたものであり、本願発明と引用発明とは、上記相違点1で相違する。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本件補正発明についての前記「第2 3 (3) 対比・判断」における検討を踏まえると、本願発明は、引用発明及び引2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-06-05 |
結審通知日 | 2020-06-09 |
審決日 | 2020-06-25 |
出願番号 | 特願2017-505112(P2017-505112) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柳本 幸雄 |
特許庁審判長 |
平城 俊雅 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 松下 聡 |
発明の名称 | 流体導管路設備の改修のための管状ライナー |
代理人 | 特許業務法人 津国 |