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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  H04N
審判 一部無効 1項3号刊行物記載  H04N
管理番号 1368476
審判番号 無効2017-800124  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-09-11 
確定日 2020-11-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第4734471号発明「表示装置、コメント表示方法、及びプログラム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 経緯
1 本件出願の経緯
本件特許第4734471号に係る出願は、平成18年12月11日の出願である特願2006-333851号の一部を平成22年11月30日に新たな特許出願としたものであって、平成23年4月28日に設定登録されたものであり、登録時の請求項の数は10である。

2 本件審判の経緯
本件無効審判における手続の経緯は、概要、以下のとおりである。

平成29年 9月11日 無効審判請求書(請求人)
(甲第1号証から甲第4号証添付)
平成29年12月15日 答弁書(被請求人)
平成30年 1月29日 審理事項通知書(合議体)
平成30年 2月15日 口頭審理陳述要領書(請求人)
(差出日) (甲第5号証から甲第11号証添付)
平成30年 3月 1日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
(乙第1号証及び乙第2号証添付)
平成30年 3月 8日 上申書(請求人)
平成30年 3月14日 上申書(請求人)
平成30年 3月14日 審理事項通知書(合議体)
平成30年 3月19日 証拠説明書(請求人)
平成30年 3月19日 口頭審理
平成30年 3月26日 上申書(請求人)
平成30年 4月23日 上申書(被請求人)
平成30年 5月25日 上申書、証拠説明書(請求人)
(甲第12号証から甲第19号証添付)

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明10」、あるいは、これらを総称して「本件特許発明」という。)。
なお、本件特許発明の各構成の符号は、審判請求書の記載を元に付与したものであり、以下、構成1A?構成6Mと称する。

[本件特許発明1](請求項1)
(1A)動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置であって、
(1B)前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と、
(1C)前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、
(1D)前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と、を有し、
(1E)前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり、
(1F)前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する
(1G)ことを特徴とする表示装置。

[本件特許発明2](請求項2)
(2H)前記コメント表示部は、前記コメントを移動表示させることを特徴とする請求項1記載の表示装置。

[本件特許発明3](請求項3)
前記コメント表示部は、前記コメントを前記第1の表示欄内から当該第1の表示欄外であって前記第2の表示欄内へ移動表示させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の表示装置。

[本件特許発明4](請求項4)
前記コメント表示部が前記コメントを表示する前記第2の表示欄は、前記第1の表示欄よりも大きいサイズである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の表示装置。

[本件特許発明5](請求項5)
(5J)前記コメント表示部は、前記コメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する際、前記第1の表示欄と前記第2の表示欄とにまたがるように表示させる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の表示装置。

[本件特許発明6](請求項6)
(6L)前記コメント表示部によって表示されるコメントが他のコメントと表示位置が重なるか否かを判定する判定部と、
(6M)前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、各コメントが重ならない位置に表示させる表示位置制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の表示装置。

[本件特許発明7](請求項7)
動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置におけるコメント表示方法であって、
動画再生部が、前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示し、
コメント表示部が、コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部に記憶された情報を参照し、前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントをコメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントの一部を、前記コメントを表示する領域であって一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており他の領域が前記第1の表示欄の外側にある第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する
ことを特徴とする表示方法。

[本件特許発明8](請求項8)
前記コメント表示部は、前記コメントを移動表示させることを特徴とする請求項7記載の表示方法。

[本件特許発明9](請求項9)
動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置のコンピュータを、
前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生手段、
コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部に記憶された情報を参照し、前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントをコメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントの一部を、前記コメントを表示する領域であって一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており他の領域が前記第1の表示欄の外側にある第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示するコメント表示手段、
として機能させるプログラム。

[本件特許発明10](請求項10)
前記コメント表示手段は、前記コメントを移動表示させることを特徴とする請求項9記載のプログラム。

第3 当事者の主張
1 請求人の主張
(1)請求の趣旨
特許第4734471号発明の特許請求の範囲の請求項1,2,5,6,9及び10に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

(2)無効理由
審判請求書、平成30年2月15日差出しの口頭審理陳述要領書、平成30年3月14日付けの上申書、平成30年3月26日付けの上申書及び平成30年5月25日付けの上申書によれば、請求人が主張する無効理由は、以下のとおりである。

ア 無効理由1(新規性)
本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、2、5、9、10は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

イ 無効理由2(進歩性)
本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、2、5、9、10は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

ウ 無効理由3(進歩性)
本件特許発明6は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲第2?4号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明6は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

エ 無効理由4(進歩性)
本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、2、5、9、10は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

オ 無効理由5(進歩性)
本件特許発明6は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明6は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)証拠方法
甲第1号証:特開2003-111054号公報
甲第2号証:特開平8-107552号公報
甲第3号証:特開昭59-105788号公報
甲第4号証:特開平6-165139号公報
甲第5号証:「パテントマップガイダンス(PMGS)」におけるH04N7/00のFI,独立行政法人工業所有権情報・研修館(平成30年1月17日出力)
甲第6号証:「パテントマップガイダンス(PMGS)」における5C063のFターム,独立行政法人工業所有権情報・研修館(平成30年1月18日出力)
甲第7号証:安藤伸彌,『SMILで魅せるストリーミングコンテンツ作成ガイド』,第1版第1刷,エーアイ出版株式会社,2002年5月3日,p.ii-iii,14-27,58-61,102-113
甲第8号証:大重美幸,『macromedia FLASH ActionScriptサンプル集』,初版第1刷,株式会社ソーテック社,2001年4月25日,p.72-77
甲第9号証:大重美幸,『FLASH ActionScriptスーパーサンプル集 1.0/2.0対応版』,初版第1刷,株式会社ソーテック社,2006年11月20日,p.112-119
甲第10号証:大重美幸,『FLASH ActionScript 2.0入門完全ガイド+実践サンプル集』,初版第2刷,株式会社ソーテック社,2005年11月30日,p.322-345
甲第11号証:まつむらまきお、たなかまり,『おしえて!!FLASH MX 2004』,初版第1刷,(株)毎日コミュニケーションズ,2004年5月10日,p.136-137,228-229,234-235
甲第12号証:小泉昌弘,『SMILで作るストリーミングコンテンツFor RealPlayer』,初版第1刷,株式会社エスシーシー(SCC),2002年4月1日,p.xii-xiii,xx,2-6,156-167
甲第13号証:大重美幸,『FLASH ActionScriptスーパーサンプル集 1.0/2.0対応版』,初版第1刷,株式会社ソーテック社,2006年11月20日,p.326-327
甲第14号証:特願2010-267283の平成23年3月14日付け「意見書」
甲第15号証:特願2010-267283の平成23年3月14日付け「手続補正書」
甲第16号証:平成28年(ワ)第38565号 特許権侵害差止等請求事件の平成30年4月27日付け「原告第3準備書面」
甲第17号証:平成30年3月6日付け「準備書面(10)」の「【別紙1-1】」
甲第18号証:蔵守伸一,『すぐ使えるムービーメーカー Windows Meでかんたんビデオ編集』,第1版第1刷,株式会社オーム社,平成12年11月30日,p.64-65
甲第19号証:『DVD入門』,Adobe,2004年3月更新および増補,p.19-26

2 被請求人の主張
(1)答弁の趣旨
本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は,請求人の負担とするとの審決を求める。

(2)答弁の概要
答弁書、平成30年3月1日付け口頭審理陳述要領書及び平成30年4月23日付け上申書によれば、無効理由に対する被請求人の主張は、以下のとおりである。

ア 無効理由1について
本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1号証に基づく新規性欠如はない。

イ 無効理由2について
本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1号証に基づく進歩性欠如はない。

ウ 無効理由3について
本件特許発明6は、甲第1?4号証に基づく進歩性欠如はない。

エ 無効理由4について
本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1、8?11号証に基づく進歩性欠如はない。

オ 無効理由5について
本件特許発明6は、甲第1、8?11、2号証に基づく進歩性欠如はない。

(3)証拠方法
乙第1号証:審判便覧51-16 「請求の理由」の要旨変更
乙第2号証:審判便覧51-15 請求人の弁駁後の審理

第4 甲第1号証ないし甲第19号証の記載事項
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証(特開2003-111054号公報)には、「動画配信システム」(発明の名称)として、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。

ア「【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような背景において、ユーザの情報端末装置に対して、動画コンテンツを放送により配信するとともに、それに関連したデータコンテンツをネットワーク経由で配信するサービスが検討されている。ここでいうデータコンテンツとは、テキストデータや静止画像データ等である。
【0004】このようなサービスでは、情報端末装置のモニタ画面(表示画面)内に動画コンテンツとデータコンテンツとを同時に表示する必要がある。例えば、動画の再生に伴って、その場面に応じたテキスト情報を自動的に画面に表示するなどの用途が考えられる。
【0005】ところで、情報端末装置には、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)、カーナビゲーション装置、ゲーム装置、パーソナルコンピュータ、家庭用テレビ等、種々の装置があり、それぞれにそのモニタ画面のサイズや縦横比はまちまちである。また、携帯電話端末ひとつをとっても、そのモニタ画面のサイズは様々であり、通常縦長のものが多いが、横長のものも存在する。
【0006】したがって、このような種々のモニタ画面に動画コンテンツとデータコンテンツとを同時に、かつ、ユーザによって見やすく表示させる場合には、何らかの工夫が必要となる。特に、携帯電話端末などの比較的モニタ画面が小さい情報端末装置では、動きのある動画像はなるべく大きく表示したいという要請がある一方、テキストなどのデータコンテンツも読みやすさが損なわれないことが望まれる。
【0007】本発明は、このような従来の課題に対して、個々のモニタ画面に応じて、または、ユーザの希望に応じて、動画コンテンツとデータコンテンツとをより適切な表示形態でモニタ画面上に表示させることができる動画配信システムおよび情報端末装置を提供することを目的とする。」

イ「【0027】図1に、本発明の一実施の形態に係る動画配信システムの概略構成を示す。この動画配信システムは、サーバ100と情報端末装置200とにより構成される。情報端末装置200は図の例では携帯電話端末を例として説明する。」

ウ「【0030】一方、サーバ100内の他方の記憶部120は、HTML(Hyper Text MarkupLanguage)を代表とするマークアップ言語で記述されたデータコンテンツを格納する部位である。このデータコンテンツは、インターネットのホームページのデータに対応するものであり、代表的にはテキストや静止画を含み、場合によっては音声などのデータを含みうる。ここでは、情報端末装置200のモニタ画面280の縦長/横長の別に応じて、実質的に同じ内容の縦長用と横長用の二つのデータコンテンツ122,124を用意している。両者は、単にテキストの1行当たりの文字数が異なるだけでなく、実質的な内容が変わらない範囲で文章の表現を変更したものであってもよい。単に1行当たりの文字数を変更しただけでは、読みやすさが改善されないからである。」

エ「【0032】図2に示したブロック図により、情報端末装置200の内部構成例を説明する。
【0033】図1に示した放送設備150からの放送電波は放送受信部240により選択受信される。放送受信部240で選択受信された動画情報は、動画ビューワ265へ送られる。後述するようにこの動画ビューワ265は映像伸縮機能(動画のサイズ変更機能)も有している。この放送電波からの受信信号には動画情報に加えて、前記データコンテンツ再生スケジュール情報および前記表示態様コマンドを含む。本実施の形態での放送受信部240は、この表示関連コマンドを抽出するコマンド抽出部242を有する。抽出されたコマンドはコマンド受信部250を介してコマンド解釈エンジン225に入力される。コマンド受信部250は、初期的には、ROM220内に予め格納されたデフォルトの表示態様コマンドであるデフォルトコマンド222を受けて、コマンド解釈エンジン255に渡す。」

オ「【0035】コマンド解釈エンジン255は、初期的には、デフォルトコマンド222を受けて、動画コンテンツの表示エリアおよびデータコンテンツの表示エリアのサイズや表示態様(重ね合わせ状態、動画エリアの伸縮、コンテンツ間の表示の切替や一方のコンテンツの一時消去等)を定め、その結果をWWWブラウザ260および動画ビューワ265に指示する。例えば、コマンド解釈エンジン255は、動画エリア情報が「アスペクト比保存」を示しているとき、動画のアスペクト比を保存しつつ当該モニタ画面の画面幅に合わせて動画エリアのサイズを決定する。本実施の形態ではモニタ画面の原点位置は画面の左上端の位置であり、動画エリアの位置はモニタ画面の原点位置に動画エリアの左上端を合わせるように設定される。動画エリア情報が特定の動画エリアサイズを指定している場合には、そのサイズ情報(幅wおよび高さh)を動画ビューワ265に与える。すなわち、動画ビューワ265は、指定されたサイズに合うように動画エリア(およびその中に表示する動画)を伸縮する機能を有する。動画エリア情報がアスペクト比保存を指定している場合には、原則的に、その動画エリアサイズは当該モニタ画面に収納される最大サイズに設定される。
【0036】コマンド解釈エンジン255は、また、後に詳述するような、放送により受信されたコマンド内の時刻情報およびURL(Universal Resource Locator)情報(データのアクセス情報)からなるデータコンテンツ再生スケジュール情報に基づいて、動画再生に伴って逐次所定のタイミングでURL情報をWWWブラウザ260に与える。これに加えて、デフォルトの表示態様を、放送により受信されたコマンドに基づいて更新する。これにより、コンテンツ作製者側では、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様を指定することができる。また、コマンド解釈エンジン255は操作パネル210のキー群212(テンキーや矢印キー、スイッチ等)からのユーザ指示または姿勢センサ232の出力を受けて、表示態様を更新することもできる。姿勢センサ232は本発明に必須のものではないが、これを設ければ携帯端末の90°回転の有無を自動的に検知し、モニタ画面の表示を切り替えることができる。これは特に、通常縦長のモニタ画面の場合に、動画エリアを拡大できる点で有意義である。姿勢センサ232としては任意の公知のものを利用できる。例えば、重力に従う光遮蔽部材と光インタラプタ(いずれも図示せず)の組み合わせを利用することができる。この姿勢センサ232は少なくとも動画の表示時に連続的にまたは周期的(例えば数100m秒毎)に作動させれば足りる。」

カ「【0037】WWWブラウザ260は、通信部245を介してネットワーク170に接続され、所定のプロトコル(例えばhttp: hyper text transfer protocol)に従って、指定されたURLに存在するデータである例えばHTML(Hyper Text Maukup Language)文書を要求し、そのデータを受信して表示内容を組み立てる機能を有する。また、本実施の形態では、前述したように、そのデータを表示する画面(データエリアまたはブラウザ画面という)の位置やサイズの情報をコマンド解釈エンジン255から受信して、そのデータエリアに対応する表示メモリ272内位置に表示データを展開する機能を有する。」

キ「【0038】表示メモリ272は、本実施の形態では、動画コンテンツとデータコンテンツとで展開するメモリプレーンを別としている。これにより、両コンテンツの重ね合わせや一方の一時表示停止などの制御が容易となる。(但し、本発明は両コンテンツを同一のメモリプレーンに書き込む場合を排除するものではない。)表示制御部270は、表示メモリ272の内容を読み出してモニタ(ディスプレイ)280へ表示データ信号および表示制御信号を出力し、目的の画面を表示させる。一方の表示プレーンの非表示などの制御はコマンド解釈エンジン255から表示制御部270を直接制御することで行うことができる。」

ク「【0041】データコンテンツがデータエリアに収納しきれない場合には、ユーザのキー操作に応じてデータ画像のスクロールが可能である。本実施の形態においてデータエリアが動画エリアに隣接する方向(動画エリアの右側か下側か)は、モニタ画面が縦長の場合には動画エリアの下側、モニタ画面が横長の場合には動画エリアの右側である。但し、サーバ側から隣接する方向をタイルコマンドとともに指示し、それに応じるかどうかは端末側で決定するようにしてもよい。」

ケ「【0043】図3(b)は両エリアを重ね合わせる「オーバレイ」表示状態を示している。この例では、モニタ画面全体をデータエリアとし、これを動画エリアに重ねている。この場合、データコンテンツと動画コンテンツが同時に見えるように、アルファブレンディングのような表示処理操作を施すことが好ましい。
【0044】図3(d)は動画エリアが具体的なサイズで指定された場合のオーバレイ状態を示している。この場合も、モニタ画面全体をデータエリアとすることに代わりはない。
【0045】ところで、通常、動画はテレビ画面に相当した4:3や16:9のような横長であり、これを横長画面に最大収容した場合には、図3(f)に示すように、モニタ画面内の動画エリアの残りの空き領域はごく狭いエリアとなる。(図では動画エリアの右側に空き領域は発生する場合を示したが、モニタ画面および動画エリアのそれぞれの縦横比によって、空き領域が動画エリアの下側に生じる場合もありうる。)したがって、このような場合は、指示された重ね合わせ態様に関わらず、強制的にオーバレイ表示状態とするようにしてもよい。これに対して、横長画面の場合でも、図3(e)に示すように、比較的小サイズの動画エリアが指定された場合であって、その残りのエリア内に所定の横幅以上の矩形エリアが利用できる場合には、当該矩形エリアをデータエリアとすることができる。」

コ「【0050】図5は、縦長状態で動画コンテンツとして映画を表示しているときに、登場人物のプロフィールをデータコンテンツとして表示している場面を示している。図5(a)はタイル表示状態を示している。このとき、データコンテンツは縦長用をサーバに要求している。この状態から、ユーザのキー(またはスイッチ)の操作による指示またはセンサ出力の変化に応じてモニタ画面が90°回転したとき、モニタ画面全体は横長になる。この例では、アスペクト比保存状態を示しており、動画エリアはモニタ画面に合わせて回転および拡大されている。当然ながら、動画エリアの回転および拡大に合わせてその中に表示される動画も同様に回転・拡大される。図5(b)の例では、動画エリアの残りの空き領域の横幅が小さいためにタイル表示ではデータエリアの横幅が十分ではなく、強制的にタイル表示状態からオーバレイ表示状態に切り替えた状況を示している。図5(c)のオーバレイ表示状態ではデータエリアの横幅はモニタ画面の長辺一杯を利用できるので、横長用のデータコンテンツを選択している。図5(a)での重ね合わせ状態がオーバレイ表示の場合にも、そのモニタ画面回転時は図5(b)のようになる。」

サ「【0051】図6により、サーバ100から動画コンテンツとともに送信される表示関連コマンドの例を説明する。本実施の形態における表示関連コマンドは、図6(a)に示すように、動画再生開始時点からの相対時刻情報(当該動画の再生中におけるデータコンテンツの再生時刻情報)、重ね合わせ状態(tile/overlay)、データコンテンツへのアクセス情報(ここでは縦コンテンツURLおよび横コンテンツURL)、動画エリア情報(アスペクト比保存またはサイズ)の1組を1単位としたコマンド群である。相対時刻情報およびアクセス情報は、動画の再生に連動したデータコンテンツ再生スケジュール情報を構成する。また、相対時刻情報およびURL情報以外の、情報端末装置の画面内の動画コンテンツおよびデータコンテンツの表示態様を決定する表示関連コマンドは表示態様コマンドという。表示態様コマンドには、動画の伸縮切替等、他の種類のコマンドを含んでもよい。図6(b)に示すように、表示態様コマンドを含めた表示関連コマンドの複数の組(複数単位)を相対時刻順に直列に並べたものも、便宜上、再生スケジュール情報という。表示態様を決定するある1単位内のあるコマンドは、好ましくは、直前の1単位の同種のコマンドと内容が同じ場合には、後続の単位内の同コマンドの記述を省略するようにしてもよい。」

シ「【0057】図8に、図7のステップS20の動画エリア決定処理の具体的な手順例を示す。まず、現在のモニタ画面の原点の位置を確認する(S31)。ついで、動画エリアのサイズ指定があるかどうかをチェックする(S32)。動画エリアのサイズ指定があれば、その指定された幅の値を変数wに代入し、指定された高さの値をを変数hに代入する(S34)。サイズ指定がない、すなわち、アスペクト比保存の場合、アスペクト比を保存したまま、モニタ画面内で最大面積となるw値とh値を計算する(S33)。このようにして得られたw、hが動画エリアのサイズとなる。前述したように、動画エリアの位置は、モニタ画面の左上の座標点に動画エリアの左上の座標点が一致する位置である。ステップS33,S34の後は図7の処理に戻る。」

ス「【0060】次に、図10により、データコンテンツ選択処理を説明する。まず、再生スケジュール情報の1単位を読み出す(S61)。ついで、その1単位の中から、現在のモニタ画面の縦長/横長に応じた方のデータコンテンツURLを選択する(S62)。この際、タイル表示の場合には、好ましくは、データエリアの幅がモニタ画面の長い方の辺と同じであれば横長のデータコンテンツURLを選択し、そうでなければ縦長のデータコンテンツURLを選択する。そこで、当該1単位の相対時刻の到来を待つ(S63)。相対時刻が到来したら、前記選択されたURLへのアクセスをWWWブラウザに指示する(S64)。相対時刻は、データコンテンツのアクセスに要する時間を考慮して、該当する動画場面の表示時刻より所定時間前の時刻としてもよい。この措置は、サーバ側で画一的に行っておいてもよいが、端末側でその端末の通信環境に応じて個別に前記所定時間を可変設定してもよい。」

セ「【0062】図10の処理により、個々の動画コンテンツに対応したデータコンテンツの再生スケジュールに応じて、データコンテンツの逐次再生が実行される。また、モニタ画面の現在の縦長/横長に応じて対応したデータコンテンツURLが選択される。 以上、本発明の好適に実施の形態について説明したが、種々の変形、変更を行うことが可能である。」

ソ「【図2】



タ「【図3】



チ「【図5】



(2)甲第1号証に記載された発明
ア 情報端末装置について
上記(1)イによれば、「この動画配信システムは、サーバ100と情報端末装置200とにより構成される」と記載されている。
したがって、甲第1号証には、『サーバと情報端末装置とにより構成される動画配信システムの情報端末装置』が記載されている。

イ 放送受信部について
上記(1)エ、ソによれば、「情報端末装置200」は、内部構成として「放送受信部240」を備えている。
また、上記(1)エによれば、「放送設備150からの放送電波は放送受信部240により選択受信される。放送受信部240で選択受信された動画情報は、動画ビューワ265へ送られる」と記載されている。
また、上記(1)エによれば、「この放送電波からの受信信号には動画情報に加えて、前記データコンテンツ再生スケジュール情報および前記表示態様コマンドを含む。本実施の形態での放送受信部240は、この表示関連コマンドを抽出するコマンド抽出部242を有する。抽出されたコマンドはコマンド受信部250を介してコマンド解釈エンジン225に入力される」と記載されている。
以上によれば、甲第1号証には、「情報端末装置」が、『放送設備からの放送電波を選択受信する放送受信部であって、選択受信された動画情報は、動画ビューワへ送られ、放送電波からの受信信号には動画情報に加えて、データコンテンツ再生スケジュール情報および表示態様コマンドを含み、放送受信部は、表示関連コマンドを抽出するコマンド抽出部を有し、抽出されたコマンドはコマンド受信部を介してコマンド解釈エンジンに入力される、放送受信部』を備えることが記載されている。

ウ 動画ビューワについて
上記(1)オ、ソによれば、「情報端末装置200」は、内部構成として「動画ビューワ265」を備えている。
また、上記(1)オによれば、「動画ビューワ265は、指定されたサイズに合うように動画エリア(およびその中に表示する動画)を伸縮する機能を有する」と記載されている。
以上によれば、甲第1号証には、「情報端末装置」が、『指定されたサイズに合うように動画エリア(およびその中に表示する動画)を伸縮する動画ビューワ』を備えることが記載されている。

エ WWWブラウザについて
上記(1)カ、ソによれば、「情報端末装置200」は、内部構成として「WWWブラウザ260」を備えている。
また、上記(1)カによれば、「WWWブラウザ260は、通信部245を介してネットワーク170に接続され、所定のプロトコル(例えばhttp: hyper text transfer protocol)に従って、指定されたURLに存在するデータである例えばHTML(Hyper Text Maukup Language)文書を要求し、そのデータを受信して表示内容を組み立てる機能を有する。また、本実施の形態では、前述したように、そのデータを表示する画面(データエリアまたはブラウザ画面という)の位置やサイズの情報をコマンド解釈エンジン255から受信して、そのデータエリアに対応する表示メモリ272内位置に表示データを展開する機能を有する」と記載されている。
以上によれば、甲第1号証には、「情報端末装置」が、『通信部を介してネットワークに接続され、所定のプロトコルに従って、指定されたURLに存在するデータを要求し、そのデータを受信して表示内容を組み立て、そのデータを表示する画面(データエリアまたはブラウザ画面という)の位置やサイズの情報をコマンド解釈エンジンから受信して、そのデータエリアに対応する表示メモリ内位置に表示データを展開するWWWブラウザ』を備えることが記載されている。

オ コマンド解釈エンジンについて
上記(1)オ、ソによれば、「情報端末装置200」は、内部構成として「コマンド解釈エンジン255」を備えている。
また、上記(1)オによれば、「コマンド解釈エンジン255は、また、後に詳述するような、放送により受信されたコマンド内の時刻情報およびURL(Universal Resource Locator)情報(データのアクセス情報)からなるデータコンテンツ再生スケジュール情報に基づいて、動画再生に伴って逐次所定のタイミングでURL情報をWWWブラウザ260に与える」、「これにより、コンテンツ作製者側では、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様を指定することができる」と記載されている。
また、上記(1)ウによれば、「データコンテンツは、インターネットのホームページのデータに対応するものであり、代表的にはテキストや静止画を含み、場合によっては音声などのデータを含みうる」と記載されている。
また、上記(1)スによれば、「再生スケジュール情報の1単位を読み出す(S61)。ついで、その1単位の中から、現在のモニタ画面の縦長/横長に応じた方のデータコンテンツURLを選択する(S62)」、「当該1単位の相対時刻の到来を待つ(S63)。相対時刻が到来したら、前記選択されたURLへのアクセスをWWWブラウザに指示する(S64)」と記載されている。
また、上記(1)セによれば、「図10の処理により、個々の動画コンテンツに対応したデータコンテンツの再生スケジュールに応じて、データコンテンツの逐次再生が実行される」と記載されている。
また、上記(1)サによれば、「サーバ100から動画コンテンツとともに送信される表示関連コマンドの例を説明する。本実施の形態における表示関連コマンドは、図6(a)に示すように、動画再生開始時点からの相対時刻情報(当該動画の再生中におけるデータコンテンツの再生時刻情報)、重ね合わせ状態(tile/overlay)、データコンテンツへのアクセス情報(ここでは縦コンテンツURLおよび横コンテンツURL)、動画エリア情報(アスペクト比保存またはサイズ)の1組を1単位としたコマンド群である。相対時刻情報およびアクセス情報は、動画の再生に連動したデータコンテンツ再生スケジュール情報を構成する」と記載されている。
以上によれば、甲第1号証には、「情報端末装置」が、『放送により受信されたコマンド内の時刻情報およびURL(Universal Resource Locator)情報(データのアクセス情報)からなるデータコンテンツ再生スケジュール情報に基づいて、動画再生に伴って逐次所定のタイミングでURL情報をWWWブラウザに与えるコマンド解釈エンジンであって、コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様が指定され、データコンテンツは、インターネットのホームページのデータに対応するものであり、代表的にはテキストや静止画を含み、場合によっては音声などのデータを含み、表示関連コマンドは、動画再生開始時点からの相対時刻情報(当該動画の再生中におけるデータコンテンツの再生時刻情報)、重ね合わせ状態(tile/overlay)、データコンテンツへのアクセス情報(ここでは縦コンテンツURLおよび横コンテンツURL)、動画エリア情報(アスペクト比保存またはサイズ)の1組を1単位としたコマンド群であり、相対時刻情報およびアクセス情報は、動画の再生に連動したデータコンテンツ再生スケジュール情報を構成し、再生スケジュール情報の1単位を読み出し、その1単位の中から、現在のモニタ画面の縦長/横長に応じた方のデータコンテンツURLを選択し、当該1単位の相対時刻の到来を待ち、相対時刻が到来したら、前記選択されたURLへのアクセスをWWWブラウザに指示する処理により、個々の動画コンテンツに対応したデータコンテンツの再生スケジュールに応じて、データコンテンツの逐次再生が実行されるコマンド解釈エンジン』を備えることが記載されている。

カ 表示制御部について
上記(1)キ、ソによれば、「情報端末装置200」は、内部構成として「表示制御部270」を備え、「表示制御部270」は、「表示メモリ272」を備えている。
また、上記(1)キによれば、「表示メモリ272は、本実施の形態では、動画コンテンツとデータコンテンツとで展開するメモリプレーンを別としている。これにより、両コンテンツの重ね合わせや一方の一時表示停止などの制御が容易となる」、「表示制御部270は、表示メモリ272の内容を読み出してモニタ(ディスプレイ)280へ表示データ信号および表示制御信号を出力し、目的の画面を表示させる」と記載されている。
以上によれば、甲第1号証には、「情報端末装置」が、『表示メモリを備え、表示メモリの内容を読み出してモニタへ表示データ信号および表示制御信号を出力し、目的の画面を表示させる表示制御部であって、表示メモリは、動画コンテンツとデータコンテンツとで展開するメモリプレーンを別とすることにより、両コンテンツの重ね合わせの制御が容易となる、表示制御部』を備えることが記載されている。

キ モニタについて
上記(1)キ、ソによれば、「情報端末装置200」は、内部構成として「モニタ(ディスプレイ)280」を備えている。
以上によれば、甲第1号証には、「情報端末装置」が、『モニタ』を備えることが記載されている。

ク オーバレイ表示について
上記(1)ケによれば、「図3(b)は両エリアを重ね合わせる「オーバレイ」表示状態を示している。この例では、モニタ画面全体をデータエリアとし、これを動画エリアに重ねている」と記載されている。
また、上記(1)タによれば、データエリアのうち、一部の領域が動画エリアと重なっており、他の領域が動画エリアの外側にあることが記載されている。
また、上記(1)コ、チによれば、データエリアのうち、動画エリアの外側であってデータエリアの内側にも登場人物のプロフィールがデータコンテンツとして表示され、当該登場人物のプロフィールは、動画エリアとデータエリアとにまたがるように表示されることが記載されている。
以上によれば、甲第1号証には、『「オーバレイ」表示状態では、モニタ画面全体をデータエリアとし、これを動画エリアに重ねており、データエリアのうち、一部の領域が動画エリアと重なっており、他の領域が動画エリアの外側にあり、データエリアのうち、動画エリアの外側であってデータエリアの内側にも登場人物のプロフィールがデータコンテンツとして表示され、当該登場人物のプロフィールは、動画エリアとデータエリアとにまたがるように表示される』ことが記載されている。

ケ スクロール表示について
上記(1)クによれば、「データコンテンツがデータエリアに収納しきれない場合には、ユーザのキー操作に応じてデータ画像のスクロールが可能である」と記載されている。
以上によれば、甲第1号証には、『データコンテンツがデータエリアに収納しきれない場合には、ユーザのキー操作に応じてデータ画像のスクロールが可能である』ことが記載されている。

コ まとめ
以上によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。甲1発明の各構成については、以下、構成1a?構成1iと称する。

(甲1発明)
(1a)サーバと情報端末装置とにより構成される動画配信システムの情報端末装置であって、
(1b)放送設備からの放送電波を選択受信する放送受信部であって、選択受信された動画情報は、動画ビューワへ送られ、放送電波からの受信信号には動画情報に加えて、データコンテンツ再生スケジュール情報および表示態様コマンドを含み、放送受信部は、表示関連コマンドを抽出するコマンド抽出部を有し、抽出されたコマンドはコマンド受信部を介してコマンド解釈エンジンに入力される、放送受信部と、
(1c)指定されたサイズに合うように動画エリア(およびその中に表示する動画)を伸縮する動画ビューワと、
(1d)通信部を介してネットワークに接続され、所定のプロトコルに従って、指定されたURLに存在するデータを要求し、そのデータを受信して表示内容を組み立て、そのデータを表示する画面(データエリアまたはブラウザ画面という)の位置やサイズの情報をコマンド解釈エンジンから受信して、そのデータエリアに対応する表示メモリ内位置に表示データを展開するWWWブラウザと、
(1e)放送により受信されたコマンド内の時刻情報およびURL(Universal Resource Locator)情報(データのアクセス情報)からなるデータコンテンツ再生スケジュール情報に基づいて、動画再生に伴って逐次所定のタイミングでURL情報をWWWブラウザに与えるコマンド解釈エンジンであって、コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様が指定され、データコンテンツは、インターネットのホームページのデータに対応するものであり、代表的にはテキストや静止画を含み、場合によっては音声などのデータを含み、表示関連コマンドは、動画再生開始時点からの相対時刻情報(当該動画の再生中におけるデータコンテンツの再生時刻情報)、重ね合わせ状態(tile/overlay)、データコンテンツへのアクセス情報(ここでは縦コンテンツURLおよび横コンテンツURL)、動画エリア情報(アスペクト比保存またはサイズ)の1組を1単位としたコマンド群であり、相対時刻情報およびアクセス情報は、動画の再生に連動したデータコンテンツ再生スケジュール情報を構成し、再生スケジュール情報の1単位を読み出し、その1単位の中から、現在のモニタ画面の縦長/横長に応じた方のデータコンテンツURLを選択し、当該1単位の相対時刻の到来を待ち、相対時刻が到来したら、前記選択されたURLへのアクセスをWWWブラウザに指示する処理により、個々の動画コンテンツに対応したデータコンテンツの再生スケジュールに応じて、データコンテンツの逐次再生が実行されるコマンド解釈エンジンと、
(1f)表示メモリを備え、表示メモリの内容を読み出してモニタへ表示データ信号および表示制御信号を出力し、目的の画面を表示させる表示制御部であって、表示メモリは、動画コンテンツとデータコンテンツとで展開するメモリプレーンを別とすることにより、両コンテンツの重ね合わせの制御が容易となる、表示制御部と、
(1g)モニタを備え、
(1h)「オーバレイ」表示状態では、モニタ画面全体をデータエリアとし、これを動画エリアに重ねており、データエリアのうち、一部の領域が動画エリアと重なっており、他の領域が動画エリアの外側にあり、データエリアのうち、動画エリアの外側であってデータエリアの内側にも登場人物のプロフィールがデータコンテンツとして表示され、当該登場人物のプロフィールは、動画エリアとデータエリアとにまたがるように表示され、
(1i)データコンテンツがデータエリアに収納しきれない場合には、ユーザのキー操作に応じてデータ画像のスクロールが可能である
(1a)情報端末装置。

2 甲第2号証
(1)甲第2号証の記載事項
甲第2号証(特開平8-107552号公報)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。なお、丸付き数字は(1)のように括弧付き数字で代用した。

ア「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、文字放送特殊再生装置及びテレテキスト放送特殊再生装置に関し、より詳細には、TV(テレビジョン)映像信号の垂直帰線消去期間に文字,図形からなるデータを重畳して送信される文字放送データを受信・復調し、このデータをTV画面上に単独で表示する、スーパーインポーズ表示する、あるいはスクロール表示するなどの特殊な番組提示処理機能を有する文字放送特殊再生装置及びテレテキスト放送特殊再生装置に関する。」

イ「【0005】文字放送の伝送方式としては、文字や図形を画素単位に分解して伝送するパターン伝送方式と、文字やモザイク図形を符号化して伝送するコード伝送方式とがある。該コード伝送方式は、1画面当りの伝送速度は速いが、文字発生器を必要とする。一方、パターン伝送方式は、伝送速度は遅いが、任意の図形又は文字を送ることができる。現行の文字放送は、これらの優れた点を組合わせたもので、ハイブリッド方式と呼ばれている。」

ウ「【0009】文字放送の表示には、画面の全てが文字番組である単独表示と、テレビ画面の一部に文字番組を重ねて表示するスーパー表示の2種類がある。また、表示モードは、(1)全面固定表示(表示領域に静止した文字及び図形を表示する),(2)スーパー固定表示(テレビ放送の映像に重ねて静止した文字及び図形を表示する),(3)字幕表示(スーパー固定表示であって、同時に放送されるテレビ放送番組の内容と直接に関係のある文字及び図形を表示する),(4)一行横スクロール表示(テレビ放送の映像に重ねて右から左へ移動する横一行の文字及び図形を表示する),(5)全面縦スクロール(本文表示領域に下から上へ移動する文字及び図形を表示する),(6)多画面表示(本文表示領域を4つの象現に分け、各象現に画面を全面固定表示で同時に表示する)がある。」

エ「【0026】また、特開昭63-185173号公報のものは、横長のワイドディスプレイを用いるテレビジョン受信装置において、映画サイズの画像で、上下のブランクの所に字幕が挿入された場合、文字が見えなくなる時がありうるという問題点を解決するために、映画サイズの画面が入力され、上下のブランクの所に字幕があれば、それを映画映像の上に合成するようにしたものであり、現行標準テレビジョンのアスペクト比と異なるディスプレイを持ち、ブランク検出回路、字幕検出回路、字幕未合成回路を備え、映画サイズの画像で上下ブラングの所の字幕を検出し、それを合成して表示できるように構成したものである。
【0027】また、特開平2-305190号公報のものは、ブランキング期間に字幕のある映画ソフトに対しても、表示画面内に字幕が納まるように、字幕に処理を施すようにし、映像や字幕が欠けることのない表示を得るようにしたものである。
【0028】さらに、特開平3-127565号公報のものは、上下の欠けた映像をスクリーン一杯に拡大して投射するに際し、字幕が有効な映像信号の外(上下の欠けている部分)にあって、これを移動させて合成したとき、元の映像信号の影響を受けにくくするために、フィールドメモリで遅延させたデータと予め決められた値とを比較し、その比較信号出力により元の映像信号と遅延した映像信号の字幕部分とを切り替えると、比較する値をできるだけ黒レベルに近いところに置くと比較信号の幅が太くなり、元の映像信号の抜き取り部分が広くなり、また切り替えられる字幕スーパーの文字の立ち上がり立ち下がりは、帯領制限を受け鈍っており、結果的に合成された文字に縁が付いた形になり見やすくなるというものである。」

オ「【0055】また、ワイドアスペクトモニタにて視聴する場合、画面モードによっては、受信画像の一部がモニタの表示枠外に出てしまって、文字の一部が隠れてしまったり、また、字幕移動機能などにより字幕が文字放送受信による文字表示位置に重なってしまったりする欠点もあり、テレビ画面のテロップなどの表示と重なりあってしまう欠点もあった。また、前述した前記特開昭59-105788号公報では、操作者が横一行スクロールする位置を選択しなければならず、操作者が何もしなければテレビ画像と重なりあってしまうという欠点があった。」

カ「【0057】また、ワイドアスペクトモニタにて視聴する場合、画面モードによっては、受信画像の一部がモニタの表示枠外に出てしまって、文字の一部が隠れてしまったり、また、字幕移動機能などにより字幕が文字放送受信による文字表示位置に重なってしまったりする欠点もあり、テレビ画面のテロップなどの表示と重なりあってしまう欠点もあった。」

キ「【0066】
【実施例】実施例について、図面を参照して以下に説明する。図1は、本発明による文字放送特殊再生装置の一実施例(請求項1,11)を説明するための構成図で、図中、1は取込制御部、2はCPU(中央処理装置)、2aは特殊再生制御部、3はCG・ROM(キャラクタジェネレータ:Read Only Memory)、4はタイマ、5は信号検出部、6は表示制御部、7はメモリ、8はI/F(インタフェース)である。」

ク「【0070】すなわち、テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳された文字放送データを取込制御部1にて取り込む。文字放送データが取り込まれると、取込制御部1よりCPU2へ割り込みが掛かる。該CPU2は、その割り込みにより文字放送データの受信を知り、BEST(誤り訂正処理)を行う。その後、文字放送データの連続性を確認しながら文字放送データの送出単位の再生を行い、メモリ7の文字放送受信データ格納部7aへ格納する。操作者が番組を選択すると、その番組データをCPU2がメモリ7より読み出す。その後、後述する図13のフローチャートに示すような処理を行い、提示画面変換用テーブル7bを作成し、1ページ(一画面)の提示画面変換用テーブル7bを作成完了後、該テーブルの最初から1文字ずつスクロール表示する。特殊再生制御部2aは、該提示画面変換用テーブル7bを作成するとともに、該提示画面変換用テーブル7bに基づいて表示制御部6でスクロール表示をするためのものである。」

ケ「【0073】通常のTV信号処理に係る構成は、TV信号処理回路11と表示モード制御部12と字幕表示位置制御部13とから成る。また、通常の文字放送信号処理(従来)に係る構成は、文字放送取込制御部14と誤り訂正部15とデータ転送部16と文字コード・制御コード弁別部17と制御コード処理部18とCG・ROM読出制御部19と通常文字放送表示制御部20とメモリ7とTV・文字放送表示制御部32とキーボード33と入出力制御部(I/O)35とCG・ROM3とから成る。」

コ「【0075】以下、図2及び図3における各構成要素について説明する。表示モード制御部12は、リモコン信号に基づいて異なるアスペクト比を有する各表示画面モードを制御する。字幕表示位置制御部13は、リモコン信号に基づいて字幕表示位置を移動するよう制御する。取込制御部14は、入力映像信号より文字放送データを取込む。誤り訂正部15は、文字放送データに対して誤り訂正処理を行う。データ転送部16は、文字放送データを番組単位でメモリ7に対して書込み、読出しを行う。文字コード・制御コード弁別部17は、文字放送データの符号集合から文字コードと制御コードとに弁別する。制御コード処理部18は、制御コードに基づき、文字サイズ指定、表示色指定、表示座標指定属性設定等の処理を行う。」

サ「【0080】通常のTV放送を受信する際には、映像信号をTV信号処理回路11と表示モード制御部12と字幕表示位置制御部13を介して処理し、TV文字放送表示制御部32によって、TV放送受信モードに切換えて表示装置に送る。すなわち、通常のTV放送をワイド画面に変更して見る時には、リモコンより表示モード御御部12を制御して画面をワイド画面に切り替えればよい。また、映画等の字幕が見にくい位置になったときには、リモコンにより字幕表示位置制御部13を操作して表示位置を調整すれば良い。」

シ「【0084】次に、本発明に従って、全画面固定で送られてきた文字放送をスクロール表示する動作について説明する。文字放送取込制御部14に入力された映像信号は、誤り訂正部15により文字放送データに対し誤り訂正処理が行なわれたのち、データ転送部16に送られ、文字放送データを番組単位でメモリ7に対して書き込み、読み出しを行う、受信コードが文字コードであるかどうかを文字コード判別部22で判別され、特殊再生モードである場合に、文字放送データはゲート回路23を通過する。」

ス「【0087】一方、前記表示モード制御部12からの制御信号に基づいて、表示モード判別部29により表示モードが判別され、また、前記字幕表示位置制御部13からの制御信号に基づいて、字幕位置検出部30により字幕位置が検出される。さらに、スクロール表示させる表示位置の最適位置が信号検出部5により検出される。
【0088】前記特殊再生装置制御部31は、信号検出部5と表示モード判別部29と字幕位置検出部30とからの検出結果に基づいて、スクロール表示する表示位置を決定し、TV・文字放送表示制御部32に送られ、特殊再生表示画面のための映像信号が作成される。また、TV・文字放送表示制御部32は、前記通常文字放送表示制御部20による通常の文字放送表示に対し、子画面作成部21により作成された子画面を表示するための映像信号を作成する。」

セ「【0095】また、字幕移動機能などにより字幕がある場合には、字幕位置検出部30により字幕位置を検出し、特殊再生(スクロール)表示位置制御部31により、字幕位置を避けて最適位置にスクロール表示を行う(請求項6)。さらに、テレビ映像上の指定領域の平均輝度やピーク輝度を信号検出部5により検出し、輝度の少なく、写しやすく、テレビ映像の情報の邪魔にならない領域に提示位置を特殊再生(スクロール)表示位置制御部31により移動させてスクロール表示する(請求項7)。」

ソ「【0102】このように、本発明は、従来の構成に対して信号検出部5を付加している。該信号検出部5とは、本発明にてスクロール表示させる表示位置を視聴者が見やすい位置に表示するため、最適表示位置を探し出すための回路である。スクロール表示では、通常のテレビ画面にスーパーインポーズして表示するために、テレビ画面の映像内容によってはスクロール表示されている文字情報が見づらくなることが生じる。そこで、該信号検出部5においては、テレビ映像の内容を確認し、情報が見やすいところを探し出すことが可能である。従来は、本発明の信号検出部を持たないため、操作者が見やすい位置へ表示位置を移動していたか、もしくは移動できずにそのままの状態で見ていた。」

タ「【0120】図14(a)?(d)は、ワイドアスペクトモニタの各画面モードでの表示例を示す図で、図14(a)は通常画面モード(アスペクト比、縦3、横4)、図14(b)は画面モードA、図14(c)は画面モードB(アスペクト比、縦9、横16)、図14(d)は画面モードB′を各々示している。図中、51は通常のテレビ映像、52は本発明による番組データの表示領域である。
【0121】図14より各画面モードにおいて画面サイズが違うのが分かる。これでは、通常のスクロール表示をすると、図14(c)に示すように、スクロール部分が画面から外れてしまう(見えなくなってしまう)。また、字幕移動機能を使用したときなどは、字幕がスクロール表示をしている領域と重なってしまう。したがって、現在の画面モード,字幕移動機能が働いているかをインターフェース8よりCPU2が読み込み、それらのモードに応じて最適なスクロール表示位置にする。図9の「B」,「C」,「D」は、画面モードの切り換えキーである。」

チ「【0159】また、字幕移動機能などにより字幕がある場合には、字幕位置検出部30により字幕位置を検出し、特殊再生(スクロール)表示位置制御部31により、字幕位置を避けて最適位置にスクロール表示を行う(請求項20)。さらに、テレビ映像上の指定領域の平均輝度やピーク輝度を信号検出部5により検出し、輝度の少なく、写しやすく、テレビ映像の情報の邪魔にならない領域に提示位置を特殊再生(スクロール)表示位置制御部31により移動させてスクロール表示する(請求項21)。」

ツ「【0166】このように、本発明は、従来の構成に対して信号検出部5を付加している。該信号検出部5とは、本発明にてスクロール表示させる表示位置を視聴者が見やすい位置に表示するため、最適表示位置を探し出すための回路である。スクロール表示では、通常のテレビ画面にスーパーインポーズして表示するために、テレビ画面の映像内容によってはスクロール表示されている文字情報が見づらくなることが生じる。そこで、該信号検出部5においては、テレビ映像の内容を確認し、情報が見やすいところを探し出すことが可能である。従来は、本発明の信号検出部を持たないため、操作者が見やすい位置へ表示位置を移動していたか、もしくは移動できずにそのままの状態で見ていた。」

テ「【0184】図14(a)?(d)は、ワイドアスペクトモニタの各画面モードでの表示例を示す図で、図14(a)は通常画面モード(アスペクト比、縦3、横4)、図14(b)は画面モードA、図14(c)は画面モードB(アスペクト比、縦9、横16)、図14(d)は画面モードB′を各々示している。図中、51は通常のテレビ映像、52は本発明によるページデータの表示領域である。
【0185】図14より各画面モードにおいて画面サイズが違うのが分かる。これでは、通常のスクロール表示をすると、図14(c)に示すように、スクロール部分が画面から外れてしまう(見えなくなってしまう)。また、字幕移動機能を使用したときなどは、字幕がスクロール表示をしている領域と重なってしまう。したがって、現在の画面モード,字幕移動機能が働いているかをインターフェース8よりCPU2が読み込み、それらのモードに応じて最適なスクロール表示位置にする。図9の「B」,「C」,「D」は、画面モードの切り換えキーである。」

ト「【0195】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によると、以下のような効果がある。
(中略)
(2)請求項5,6に対応する効果:文字放送番組をワイドアスペクトモニタにて視聴する場合、提示位置を画面モードに応じて最適の位置に自動変換し、字幕移動機能などにより、字幕がある時もそこを避けて最適位置にスーパーインポーズし、スクロール表示で情報を得ることができる。すなわち、マイクロコンヒュータにより、ワイドアスペクトモニタにて視聴する場合の提示位置を、画面モード、また字幕移動機能などにより字幕があるかとを判断する機能を有し、そこを避けることにより、最適位置にスーパーインポーズ表示やスクロール表示で情報を得ることができる。
(中略)
(8)請求項19,20に対応する効果:テレテキスト放送ページをワイドアスペクトモニタにて視聴する場合、提示位置を画面モードに応じて最適の位置に自動変換し、字幕移動機能などにより、字幕がある時もそこを避けて最適位置にスーパーインポーズし、スクロール表示で情報を得ることができる。すなわち、マイクロコンヒュータにより、ワイドアスペクトモニタにて視聴する場合の提示位置を、画面モード、また字幕移動機能などにより字幕があるかとを判断する機能を有し、そこを避けることにより、最適位置にスーパーインポーズ表示やスクロール表示で情報を得ることができる。」

(2)甲第2号証に記載された技術
ア 字幕表示位置制御部について
上記(1)ケによれば、文字放送特殊再生装置の実施例について、「通常のTV信号処理に係る構成は、TV信号処理回路11と表示モード制御部12と字幕表示位置制御部13とから成る」と記載されている。
また、上記(1)コによれば、「字幕表示位置制御部13は、リモコン信号に基づいて字幕表示位置を移動するよう制御する」と記載されている。
また、上記(1)サによれば、「映画等の字幕が見にくい位置になったときには、リモコンにより字幕表示位置制御部13を操作して表示位置を調整すれば良い」と記載されている。
文字放送特殊再生装置の通常のTV信号処理に係る構成の「字幕表示位置制御部13」が行う字幕表示位置を移動する制御について確認すると、上記(1)エによれば、従来の技術の説明として、「映画サイズの画像で、上下のブランクの所に字幕が挿入された場合、文字が見えなくなる時がありうるという問題点を解決するために、映画サイズの画面が入力され、上下のブランクの所に字幕があれば、それを映画映像の上に合成する」、「映画サイズの画像で上下ブラングの所の字幕を検出し、それを合成して表示できる」、「ブランキング期間に字幕のある映画ソフトに対しても、表示画面内に字幕が納まるように、字幕に処理を施すようにし、映像や字幕が欠けることのない表示を得る」、「字幕が有効な映像信号の外(上下の欠けている部分)にあって、これを移動させて合成した」、「元の映像信号と遅延した映像信号の字幕部分とを切り替える」と記載されている。
そして、文字放送特殊再生装置の実施例における「字幕表示位置制御部13」が行う字幕表示位置を移動する制御は、従来の技術から何ら変わるものではないといえるから、文字放送特殊再生装置の実施例における「字幕表示位置制御部13」は、映像信号の上下のブランクの部分にある字幕を検出し、これを移動させて、映像信号に合成するものであるといえる。
以上によれば、甲第2号証には、「字幕表示位置制御部」は、『映画等の字幕が見にくい位置になったときには、リモコン信号に基づいて映像信号の上下のブランクの部分にある字幕を検出し、これを移動させて、映像信号に合成することにより、字幕表示位置を移動するよう制御する』ことが記載されているといえる。

イ まとめ
上記ア及び、(1)ア?トによれば、甲第2号証には、以下の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。甲2技術の各構成については、以下、構成2a?構成2gと称する。

(甲2技術)
(2a)テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳された文字放送データをスクロール表示させる文字放送特殊再生装置において、
(2b)字幕移動機能などにより字幕が文字放送受信による文字表示位置に重なってしまったりする欠点を解消するために、
(2c)通常のTV放送を受信する際には、映像信号をTV信号処理回路と表示モード制御部と字幕表示位置制御部を介して処理し、
(2d)字幕表示位置制御部は、映画等の字幕が見にくい位置になったときには、リモコン信号に基づいて映像信号の上下のブランクの部分にある字幕を検出し、これを移動させて、映像信号に合成することにより、字幕表示位置を移動するよう制御し、
(2e)全画面固定で送られてきた文字放送をスクロール表示する動作では、
(2f)前記字幕表示位置制御部からの制御信号に基づいて、字幕位置検出部により字幕位置が検出され、
(2g)特殊再生装置制御部は、字幕位置検出部からの検出結果に基づいて、スクロール表示する表示位置を決定することにより、字幕位置を避けて最適位置にスクロール表示を行う
(2a)文字放送特殊再生装置。

3 甲第3号証
(1)甲第3号証の記載事項
甲第3号証(特開昭59-105788号公報)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。

ア「テレビ放送におけるブランキング期間に主番組とは別に送られてきたデータ信号を画像として再生するテレビ多重文字放送の受像機において、横スクロールモード時、全表示エリアについて水平走査に同期したラインアドレス信号によりアドレスしてデータ信号を読み出すと共に、そのラインアドレス信号を変更して横スクロール用のデータ信号が読み出される水平期間を変更し、かつ、上記水平期間を除いて上記読み出されたデータ信号のブランキングを行うようにしたテレビ多重文字放送の受像機。」(「特許請求の範囲」欄、第1頁左下欄第4?14行目)

イ「(iii)横スクロールモード
第3図に示すように、メインの放送画像に対して、文字放送の文章の1行を表示するが、これを横方向にスクロールする」(「背景技術とその問題点」欄、第1頁右下欄第12?15行目)

ウ「ところで、横スクロールモードでは、第3図にも示すように、メインの放送画像に対して文字放送による1行がスーパーインポーズにより表示されるので、この表示位置に、メインの放送による文字など、例えば野球の打者の名前などが表示されると、両方の表示が重なり、両方とも見づらくなってしまう。」(「背景技術とその問題点」欄、第4頁左上欄第2?8行目)

エ「そのため、この発明においては、縦スクロール用の機能を利用して横スクロールの位置を縦方向に変更できるようにしたものである。
従って、横スクロールの文字とメインの放送の文字とが重なることを避けることができ、両者を見ることができる。」(「発明の概要」欄、第4頁左上欄第14?19行目)

オ「そして、(200)が横スクロールモードのときに、その縦方向における表示位置を変更するために追加された回路である。」(第5頁右上欄第16?18行目)

カ「従つて、横スクロールの表示をブロックのN行に行うときには、例えば第1行(N=1)に行うときには、これをキーボート(41)から入力する。」(第6頁左上欄第1?3行目)

キ「横スクロールの表示位置を任意の行とすることができるので、横スクロールの表示文字とメインの放送画像の文字とが重なったりすることがなく、両者を見ることができる。」(「発明の効果」欄、第6頁右下欄第13?16行目)

(2)甲第3号証に記載された技術
上記(1)ア?キによれば、甲第3号証には、以下の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されている。甲3技術の各構成については、以下、構成3a?構成3fと称する。

(甲3技術)
(3a)テレビ多重文字放送の受像機において、
(3b)メインの放送画像に対して、文字放送の文章の1行を表示するが、これを横方向にスクロールし、
(3c)横スクロールモードでは、メイン放送画像に対して文字放送による1行がスーパーインポーズにより表示されるので、この表示位置に、メインの放送による文字など、例えば野球の打者の名前などが表示されると、両方の表示が重なり、両方とも見づらくなってしまうことを避けるために、
(3d)横スクロールモードのときに、その縦方向における表示位置を変更するための回路を設け、
(3e)横スクロールの表示をブロックのN行に行うときには、例えば第1行(N=1)に行うときには、これをキーボートから入力することにより、
(3f)横スクロールの表示位置を任意の行とすることができ、横スクロールの表示文字とメインの放送画像の文字とが重なったりすることがなく、両者を見ることができるようにする
(3a)テレビ多重文字放送の受像機。

4 甲第4号証
(1)甲第4号証の記載事項
甲第4号証(特開平6-165139号公報)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。

ア「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、映像信号に重畳して伝送された文字信号を抽出して所定位置に文字情報を画面表示するクローズド・キャプションデコーダ及びこのクローズド・キャプションデコーダを備え、文字情報を映像とともに画面表示するテレビジョン受信機に関する。
【0002】
【従来の技術】米国では、ろうあ者,難聴者が健常者と同様にテレビジョン放送を楽しめるように、音声と同じ内容を文字情報にして映像信号の垂直帰線期間内の走査線信号に重畳して伝送するクローズド・キャプション(文字多重)システムが多くのテレビジョン番組,ビデオソフト等に採用されており、文字の符号化方法,伝送方法などは FCC(連邦通信委員会)規格に基づいて細かく規定されている。また、日本では、クローズド・キャプションシステムを語学教材に利用することが考えられている。」

イ「【0004】データスライサ回路1は映像信号からキャプション情報を抽出し、デコーダ回路2は、抽出されたキャプション情報の表示モード(キャプション,テキスト),表示スタイル(ペイントオン,ポップオン,ロールアップ),文字内容,文字種(表示色,イタリック),表示位置などを規格に基づいて解析する。画面表示制御部3はデコーダ回路2の解析結果に従って文字種,表示位置などを制御して文字を含む映像信号を出力し、図8に示すような文字情報が映像とともに表示される。」

ウ「【0007】また、日本語字幕とクローズド・キャプションの英語字幕とを比較しようとする場合に、日本語字幕にクローズド・キャプションの字幕が重なって読みにくくなっても受け手側で表示位置を変更できないという問題がある。」

エ「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係るクローズド・キャプションデコーダは、映像信号の垂直帰線期間に重畳されている符号化された文字信号を抽出して復号化し、画面上の所定位置に文字情報を表示するクローズド・キャプションデコーダにおいて、画面上の文字情報の表示位置を指定する手段と、文字信号に含まれる文字情報の表示アドレスを、指定された表示位置に応じた表示アドレスに変換する回路と、変換した表示アドレスに文字情報を表示する手段とを備えたことを特徴とする。」

オ「【0021】以上の結果、従来のクローズド・キャプションデコーダでは図2(a) のようにしか表示できなかったキャプション情報の表示位置を、図2(c) に示すような表示位置に変更することができ、日本語字幕とキャプション情報である英語字幕との重なりが避けられて両者を比較し易くなる。」

カ「【0023】
【発明の効果】以上のように、本発明に係るクローズド・キャプションデコーダ及びこれを備えたテレビジョン受信機は、映像信号の送信側で決定されたクローズド・キャプションによる文字情報の表示アドレスを受信側で変更することができるので、例えば、一定の表示位置に固定することにより文字情報に神経が集中し易くなり、また、オープン・キャプションによる文字情報と重ならない位置に移動することにより両者を比較し易くなるという優れた効果を奏する。」

(2)甲第4号証に記載された技術
上記(1)ア?カによれば、甲第4号証には、以下の技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されている。甲4技術の各構成については、以下、構成4a?構成4dと称する。

(甲4技術)
(4a)映像信号に重畳して伝送された文字信号を抽出して所定位置に文字情報を画面表示するクローズド・キャプションデコーダを備え、文字情報を映像とともに画面表示するクローズド・キャプション(文字多重)システムのテレビジョン受信機において、
(4b)オープン・キャプションによる文字情報である日本語字幕にクローズド・キャプションの字幕が重なって読みにくくなっても受け手側で表示位置を変更できないという問題を解決するために、
(4c)クローズド・キャプションデコーダが、画面上の文字情報の表示位置を指定する手段と、文字信号に含まれる文字情報の表示アドレスを、指定された表示位置に応じた表示アドレスに変換する回路を備え、
(4d)クローズド・キャプションデコーダで、キャプション情報の表示位置を変更することで、送信側で決定されたクローズド・キャプションによる文字情報の表示アドレスを、オープン・キャプションによる文字情報と重ならない位置に移動する
(4a)クローズド・キャプション(文字多重)システムのテレビジョン受信機。

5 甲第5号証
甲第5号証には、FI「H04N7/08 Z」とFI「H04N7/08 A」はテーマコード「5C063」に属することが記載されている。

6 甲第6号証
甲第6号証には、テーマコード「5C063」のタイトルは「テレビジョン方式」であることが記載されている。

7 甲第7号証
(1)甲第7号証の記載事項
甲第7号証(SMILで魅せるストリーミングコンテンツ作成ガイド)には、以下の事項が記載されている。

ア「具体例として、「ルパン3世」や「踊る大捜査線」のサブタイトルを模したものを作成してみましょう。この、1文字ずつ現れる面倒そうな「演出」がRealTextで簡単に作成することができます。」(第104頁「RealTextの記述例」の欄)

イ「テキストが一文字ずつ表示されれ、最後にすべてのテキストが表示される」(第104頁の図1の説明)

ウ「これは、再生から1秒後に表示を開始し、以後0.2秒おきに一文字ずつ表示し、最後にすべてのサブタイトルを表示する仕掛けになっています。」(第105頁第1?2行目)

(2)甲第7号証に記載された技術
上記(1)ア?ウによれば、甲第7号証には、『空間的に重なる位置に複数の文字を順次表示していく場合に、次の文字が表示されるまでに前の文字を消去して文字どうしが時間的に重ならないように調整する技術』が記載されている。

8 甲第8、9号証
(1)甲第8号証の記載事項
甲第8号証(macromedia FLASH ActionScriptサンプル集)には、以下の事項が記載されている。

ア「・テキストイメージが横に流れます。」(第72頁「ムービーのポイント」欄)

イ「・手前のムービークリップのほうが大きく、速く動きます。」(第72頁「ムービーのポイント」欄)

ウ「・流れるコースは乱数で決まります。」(第72頁「ムービーのポイント」欄)

エ「ムービーを再生すると、「ACTIONSCRIPT」が左方向へ、(中略)流れます。」(第72頁「ムービーの内容」欄)

オ「ステージに背景となる写真を置き、これをムービークリップに変換します。そしてzoneというインスタンス名を付けます。」(第75頁「ステージに配置」欄)

カ「イメージが流れる範囲はzoneの横幅にインスタンスの幅の分を広げています。」(第76頁「スクリプトのポイント」欄)

キ また、甲第8号証から、下記事項が看取できる。
(ア)大きさがそれぞれ異なる(つまり、相対的速さがそれぞれ異なる)複数のテキスト「ACTIONSCRIPT」が、背景画像上に時間的及び空間的に重なるように表示されている(第72頁の図)。

(イ)複数のテキスト「ACTIONSCRIPT」が、背景画像が表示されている領域の外側であってテキストが表示される領域の内側に、両領域にまたがるように表示されている(第76頁の図)。

(2)甲第9号証の記載事項
甲第9号証(FLASH ActionScriptスーパーサンプル集 1.0/2.0対応版)には、以下の事項が記載されている。

ア「ムービーを再生すると、「ACTIONSCRIPT test」が左方向へ、(中略)と流れます。」(第112頁「ムービーの概要」欄)

イ「遠くほど小さく、手前ほど大きくする」(第116頁「スクリプトの解説」欄)

ウ「遠くほど遅く、手前ほど速く動かす」(第117頁「スクリプトの解説」欄)

エ また、甲第9号証から、下記の各事項が看取できる。
(ア)大きさがそれぞれ異なる(つまり、相対的速さがそれぞれ異なる)複数のテキスト「ACTIONSCRIPT test」が、背景画像上に時間的及び空間的に重なるように表示されている(第112頁の図)。

(イ)複数のテキスト「ACTIONSCRIPT test」が、背景画像が表示されている領域の外側であってテキストが表示される領域の内側に、両領域にまたがるように表示されている(第116頁の図)。

(3)甲第8、9号証に記載された技術
上記(1)、(2)によれば、甲第8、9号証には、『背景画像上に複数のテキストを横に流す技術』が記載されている。

9 甲第10号証
(1)甲第10号証の記載事項
甲第10号証(FLASH ActionScript 2.0入門完全ガイド+実践サンプル集)の第335?345頁の「Sample11-3 テロップ原稿をXMLファイルから読み込む」の欄には、ニュース原稿をXMLファイルから読み込んでテロップを表示するためのスクリプトが記載されている。

(2)甲第10号証に記載された技術事項
上記(1)によれば、甲第10号証には、『Flashにおいて、ニュース原稿をXMLファイルから読み込んでテロップを表示する技術』が記載されている。

10 甲第11号証
(1)甲第11号証の記載事項
甲第11号証(おしえて!!FLASH MX 2004)の第234?235頁の「13-5 ダイナミックテキストでテキスト読み込み」の欄には、Flashにおいて、アクションスクリプトにより、ムービー内の文章を別のテキストファイルから読み込むことが記載されている。

また、甲第11号証の第136頁の「8-6 Flashでビデオムービーをつかう」の欄には、ビデオのファイルについて、「取り込んでしまえば、写真やインスタンスと同じように扱える。(中略)。テロップを入れたり、アニメと合成しても楽しいぞっ。」と記載されている。

(2)甲第11号証に記載された技術
上記(1)によれば、甲第11号証には、『Flashにおいて、ムービー内のテキストを別のテキストファイルから読み込み、テロップとする技術』が記載されている。

11 甲第12号証
(1)甲第12号証の記載事項
甲第12号証(SMILで作るストリーミングコンテンツFor RealPlayer)には、以下の事項が記載されている。

ア「ストリーミング・テクノロジーのひとつであるRealNetworks社のRealSystemは、映像・音声・音楽単体で配信するだけでなく、映像と文字を同期して配信、静止画像によるスライドショウをBGMといっしょに配信するといった機能を搭載しています。」(第5頁「SMIL」欄)

イ「そのテクノロジーが“SMIL言語”です(Synchronized Multimedia Integration Language:スマイルと発音します)。」(第5頁「SMIL」欄)

ウ「RealPlayerのSMILコンテンツでは、
・RealPixとRealAudioを組み合わせたBGM、ナレーションつきスライドショウ
・RealVideoとRealTextを組み合わせたキャプション(字幕)つき映像
という組み合わせが一般的です。」(第156頁「1.SMILとは」欄)

エ「ストリーミングでは、ネットワークの回線速度が刻々と変化するため、ある程度のデータをクライアント(受信側のコンピュータ)のメモリやハードディスクに蓄えておきます。これを“バッファリング”といいます。ネットワークが混雑して回線速度が低下したり、同じ番組を見ている視聴者が多くなりサーバ(送信側のコンピュータ)の送信能力が低下した場合に備え、ある程度のデータを蓄えておくことによって途切れないようにするための工夫といえます。バッファリングは、再生開始前と再生中に実行されますが、再生開始前に行われるバッファリングを“プリロール”といいます。」(第3頁「バッファリング」欄)

オ「garden.smiのレイアウトは右上図の構成となっており前半は、RealVideoクリップ(garden.rm)と字幕(garden.rt)によりMy Summer gardenという夏の草花のプレゼンテーションを実行します。」(第157頁「2.RealVideoを中心としたSMILコンテンツの実際」欄)

カ「本プレゼンテーションの再生要求が発生するとRealPlayerが起動しgarden.smi受信後、garden.rm、garden.rtのプリロールが開始します。」(第164頁「■garden.smi全体の帯域戦略」欄)

キ「プリロールが完了すると再生を開始。再生中もデータ転送が続けられます。ここでは、便宜上garden.rtも図に示していますが、実際には、再生開始の前に受信を完了しているでしょう。すべてのデータを受信すると再生のみ実行されます。」(第164頁「■garden.smi全体の帯域戦略」欄)

(2)甲第12号証に記載された技術
上記(1)によれば、甲第12号証には、『SMILコンテンツをストリーミングする際に、ビデオクリップと字幕をバッファリングする技術』が記載されている。

12 甲第13号証
(1)甲第13号証の記載事項
甲第13号証(FLASH ActionScriptスーパーサンプル集 1.0/2.0対応版)には、以下の事項が記載されている。

ア「マスクが掛かった状態で表示される」、「マスクが掛かっている状態で表示されます。」(第327頁)

(2)甲第13号証に記載された技術
上記(1)によれば、甲第13号証には、『マスクが掛かった状態で表示を行う技術』が記載されている。

13 甲第14?19号証
甲第14?19号証は、関連訴訟における原告(本件無効審判の被請求人)の主張に対する反論を立証するための証拠であって、本件無効審判の無効理由1?5を立証するための証拠とは認められないから採用しない。

第5 当審の判断
1 無効理由1について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)構成1A、1Gについて
まず、本件特許発明における「コメント」の技術的意味について、本件特許明細書を参照して検討する。
本件特許明細書には、以下の記載がある。

a「【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、放送されたテレビ番組などの動画に対してユーザが発言したコメントをその動画と併せて表示するシステムがある。
例えば、地域ごとに放送時間が異なるテレビ番組等に関する掲示板において、テレビ番組の1シーンに対する書き込みを、放送開始からの正味時間に対応させて記憶しておき、掲示板を閲覧する時間が異なっていても、以前に書き込まれた内容がテレビ番組のシーンに合わせて表示させるシステムがある(例えば、特許文献1参照)。このシステムによれば、ユーザは放送時間のタイムラグを感じることがなく、テレビ番組を見ながら、コメントを閲覧して楽しむことができる。」

b「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術におけるシステムを利用すると、以下のことが考えられる。すなわち、動画上に多数のコメントが書き込まれたとすると、コメント同士が重なり合ってしまい、コメントを読みにくくなってしまう。また、ユーザ毎にコメントを表示する位置を割り当ててしまうと、重なることを解消することができるが、同じ画面上にコメントを書き込めるユーザの数が限られてしまうため、大人数でコメントを交換する面白みが低減してしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数のコメントが書き込まれても、コメントの読みにくさを低減させることができる表示装置、コメント表示方法、及びプログラムを提供することにある。」

c「【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、この発明によれば、動画を第1の表示欄に再生させ、コメント情報のうち、動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントをコメント情報から読み出し、第1の表示欄と一部が重なり他の部分が重ならない表示領域である第2の表示欄における、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に、読み出したコメントの少なくとも一部を表示するようにした。これにより、例えば、オーバーレイ表示されたコメント等が、動画の画面の外側でトリミングするようにして、コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握可能となり、コメントの読みにくさを低減させることができる。」

d「【0029】
次に、端末装置3の動作について図面を用いて説明する。図8は、端末装置3の動作を説明するためのフローチャートである。
端末装置3の入力部37は、ユーザから動画再生の指示が入力されると(ステップS201)、指示された動画の動画IDを送信部40によって動画配信サーバ1に送信し、動画の配信要求をするとともに、コメント情報の配信要求をコメント配信サーバ2に送信する。そして、コメント情報受信部32は、コメント配信サーバ2から配信されるコメント情報を受信したならば(ステップS202)、コメント情報記憶部33に記憶する。
【0030】
コメント情報が受信されコメント情報記憶部33に記憶されると、動画再生部31は、動画配信サーバ1から配信される動画を受信し、受信した動画を再生し、第1の表示部35によって表示装置34に表示する(ステップS203)。動画の再生が開始されると、第1の表示部35は、現在の動画再生時間に基づいて、動画再生時間に一致するコメント付与時間が設定されたコメントデータがあるか否かをコメント情報記憶部33を参照して、判定する(ステップS204)。動画再生時間に一致するコメント付与時間が設定されたコメントデータがある場合(ステップS205-YES)、第1の表示部35は、当該コメントデータの表示位置を算出する(ステップS206)。そして算出された表示位置に従って、動画上にコメントの表示制御を行う(ステップS206)。
一方、動画再生部31は、再生が終了したか否かを判定し、再生が終了していれば処理を終了し、再生が終了して否ければ、ステップS204に移行する。
【0031】
一方、ステップS205において、表示させるコメントがなければ、配信部40は、入力部37からコメントが入力されたか否かを検出する(ステップS209)。コメントの入力があった場合には、そのコメントが入力された時点(例えば、「書く」ボタン(符号111)がクリックされた時点)における、その動画を再生しているソフトウェアのプレイヤーが指す再生時間(動画再生時間)を読み出し、その動画再生時間をコメント付与時間とし、再生中の動画の動画IDと、閲覧中のコメントのスレッドIDと、現在の実時間情報(現在時刻の情報)と、端末装置3のユーザのユーザ名と、入力されたコメント内容と、コメント表示方法とを対応づけて、コメント情報としてコメント情報記憶部33のコメント一覧に追加保存する(ステップS210)。そして、送信部40は、追加保存したコメント情報をコメント配信サーバ2に送信し(ステップS211)、ステップS208に移行する。」

上記a?cによれば、本件特許発明は、「放送されたテレビ番組などの動画に対してユーザが発言したコメントをその動画と併せて表示するシステム」という背景技術を前提とし、「コメントの読みにくさを低減させる」という課題を解決するための発明であり、本件特許発明により、「オーバーレイ表示されたコメント等が、動画の画面の外側でトリミングするようにして、コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握可能となり、コメントの読みにくさを低減させることができる」という効果を奏するものである。
そして、当該背景技術、課題、効果に鑑みれば、本件特許発明は、「ユーザが発言したコメント」を動画上に表示することを前提とするものと解するのが相当である。
また、上記dによれば、本件特許発明における「コメント」とは、動画を閲覧するユーザが、動画の再生開始後の任意の時点に、動画に対して付与するものと解するのが相当である。

次に、本件特許発明1の構成1A、1Gについて検討する。
構成1fの「動画コンテンツ」の「メモリプレーン」について、「表示メモリの内容を読み出してモニタへ表示データ信号及び表示制御信号を出力する」ことは、「動画を再生する」ことといえる。

構成1hの「データエリア」に表示される「登場人物のプロフィール」は、「データコンテンツURL」にアクセスすることにより受信した「データコンテンツ」の「テキスト」(構成1e)である。
また、当該「データコンテンツ」の「テキスト」は、「コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて」指定される(構成1e)ものである。
以上によれば、構成1Aの「コメント」と甲1発明の「データコンテンツ」の「テキスト」は、「文字列」である点で共通するものの、甲1発明の「データコンテンツ」の「テキスト」は、「コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様が指定される」ものであって、動画を閲覧するユーザが、動画の再生開始後の任意の時点に、動画に対して付与するものではないから、構成1Aの「コメント」と一致するものとはいえない。

構成1hの「「オーバレイ」表示状態では、モニタ画面全体をデータエリアとし、これを動画エリアに重ねている」ことは、「動画上に文字列を表示すること」といえる。
また、構成1aの「情報端末装置」は、構成1gの「モニタ」を備えるから、「表示装置」といえる。

したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「動画を再生するとともに、前記動画上に文字列を表示する表示装置」である点で共通する。
ただし、「文字列」が、本件特許発明1では、「コメント」であるのに対し、甲1発明では、コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて指定される「テキスト」である点で、両発明は相違する。

(イ)構成1Bについて
まず、本件特許発明における「コメント付与時間」の技術的意味について検討する。
上記(ア)の検討のとおりであり、本件特許発明における「コメント」は、動画を閲覧するユーザが、動画の再生開始後の任意の時点に、動画に対して付与するものであるから、本件特許発明における「コメント付与時間」とは、ユーザによりコメントが付与された時点における、再生中の動画の再生時間であると解するのが相当である。

次に、構成1Bについて検討する。
構成1eの「表示関連コマンド」の「データコンテンツ再生スケジュール情報」に含まれる「動画再生開始時点からの相対時刻情報」は、コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて指定され、URLへのアクセスをWWWブラウザに指示するものである。
よって、構成1Bの「コメント付与時間」と、甲1発明の「相対時刻」は、「動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間」である点で共通するものの、甲1発明の「相対時刻」は、コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様が指定されるものであって、ユーザによりコメントが付与された時点における、再生中の動画の再生時間ではないから、構成1Bの「コメント付与時間」と一致するものとはいえない。

構成1eの「動画再生開始時点からの相対時刻情報」は、「データコンテンツ」に関連した情報であり、当該「データコンテンツ」は「テキスト」であり、「文字列」といえるから、構成1eの「動画再生開始時点からの相対時刻情報」は、「文字列情報」といえる。
また、構成1bの「放送受信部」は、「放送電波を選択受信」するとともに、「表示関連コマンドを抽出するコマンド抽出部を有する」ものであり、構成1eは、「表示関連コマンド」の「データコンテンツ再生スケジュール情報」について、「再生スケジュール情報の1単位を読み出す」ものである。
ここで、放送を受信する情報端末装置の技術分野において、放送電波を選択受信して抽出した情報をメモリ等の記憶部に記憶することは技術常識である。
よって、構成1aの「情報端末装置」が、放送電波を選択受信して抽出した「表示関連コマンド」の「データコンテンツ再生スケジュール情報」に含まれる「動画再生開始時点からの相対時刻情報」を記憶する記憶部を備えていることは、当業者にとって明らかであり、当該記憶部は、「文字列情報記憶部」といえる。

したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間を含む文字列情報を記憶する文字列情報記憶部」を有する点で共通する。
上記(ア)で検討した「文字列」についての相違に加えて、文字列情報記憶部に記憶される「文字列情報」について、本件特許発明1では、「前記コメント」を含むのに対し、甲1発明では、「前記コメント」を含んでいない点で、両発明は相違する。
また、文字列情報記憶部に記憶される「動画再生時間」が、本件特許発明1では、「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」であるのに対し、甲1発明では、コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて指定され、URLへのアクセスをWWWブラウザに指示する「動画再生開始時点からの相対時刻情報」である点で、両発明は相違する。

(ウ)構成1Cについて
構成1hの「動画エリア」は、「動画を表示する領域である第1の表示欄」といえる。
また、構成1cの「動画ビューワ」と、構成1fの「表示メモリの内容を読み出してモニタへ表示データ信号および表示制御信号を出力し、目的の画面を表示させる表示制御部」は、「動画を再生して表示する動画再生部」といえる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部」を有する点で一致する。

(エ)構成1Dについて
構成1hの「データエリア」は、「文字列を表示する領域である第2の表示欄」といえる。
また、構成1eの「再生スケジュール情報の1単位を読み出し、その1単位の中から、現在のモニタ画面の縦長/横長に応じた方のデータコンテンツURLを選択し、当該1単位の相対時刻の到来を待ち、相対時刻が到来したら、前記選択されたURLへのアクセスをWWWブラウザに指示する処理により、個々の動画コンテンツに対応したデータコンテンツの再生スケジュールに応じて、データコンテンツの逐次再生が実行される」ことは、「再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記動画の動画再生時間に対応する文字列を表示する」ことといえる。
また、構成1dの「WWWブラウザ」と、構成1fの「表示メモリの内容を読み出してモニタへ表示データ信号および表示制御信号を出力し、目的の画面を表示させる表示制御部」は、「文字列を表示する文字列表示部」といえる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記動画の動画再生時間に対応する文字列を、前記文字列を表示する領域である第2の表示欄に表示する文字列表示部」を有する点で共通する。
上記(ア)で検討した「文字列」についての相違に加えて、表示する「文字列」について、本件特許発明1では、「前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメント」であるのに対し、甲1発明では、選択されたURLへのアクセスをWWWブラウザに指示することにより受信したデータコンテンツのテキストである点で、両発明は相違する。

(オ)構成1Eについて
構成1hの「データエリアのうち、一部の領域が動画エリアと重なっており、他の領域が動画エリアの外側にある」ことは、構成1Eの「第2の表示欄のうち、一部の領域が第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にある」ことに相当する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にある」点で一致する。

(カ)構成1Fについて
構成1hの「データエリアのうち、動画エリアの外側であってデータエリアの内側にも登場人物のプロフィールがデータコンテンツとして表示される」ことは、文字列の少なくとも一部を、第2の表示欄のうち、第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示することといえる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「前記文字列表示部は、前記文字列の少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」点で共通する。
上記(ア)で検討した「文字列」についての相違に加えて、表示する「文字列」について、本件特許発明1では、「読み出したコメント」であるのに対し、甲1発明では、選択されたURLへのアクセスをWWWブラウザに指示することにより受信したデータコンテンツのテキストである点で、両発明は相違する。

(キ)一致点・相違点
以上によれば、本件特許発明1と甲1発明の一致点・相違点は次のとおりである。

[一致点]
(1A’)動画を再生するとともに、前記動画上に文字列を表示する表示装置であって、
(1B’)動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間を含む文字列情報を記憶する文字列情報記憶部と、
(1C)前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、
(1D’)前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記動画の動画再生時間に対応する文字列を、前記文字列を表示する領域である第2の表示欄に表示する文字列表示部と、を有し、
(1E)前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり、
(1F’)前記文字列表示部は、前記文字列の少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する
(1G)ことを特徴とする表示装置。

[相違点]
(相違点1)「文字列」が、本件特許発明1では、「コメント」であるのに対し、甲1発明では、コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて指定される「テキスト」である点。

(相違点2)文字列情報記憶部に記憶される「文字列情報」について、本件特許発明1では、「前記コメント」を含むのに対し、甲1発明では、「前記コメント」を含んでいない点。

(相違点3)文字列情報記憶部に記憶される「動画再生時間」が、本件特許発明1では、「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」であるのに対し、甲1発明では、コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて指定され、URLへのアクセスをWWWブラウザに指示する「動画再生開始時点からの相対時刻情報」である点。

(相違点4)表示する「文字列」について、本件特許発明1では、「前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメント」であるのに対し、甲1発明では、選択されたURLへのアクセスをWWWブラウザに指示することにより受信したデータコンテンツのテキストである点。

イ 判断
以上のとおり、本件特許発明1と甲1発明の間には相違点1?相違点4があるから、本件特許発明1は、甲1発明と同一ではない。

ウ 請求人の主張について
(ア)請求人の主張
請求人は、本件特許発明の「コメント」及び「コメント付与時間」に関して、口頭審理陳述要領書において、以下の主張をしている。

a「本件特許発明1,2,5,6,9,10における「コメント」と甲第1号証における「テキスト」は、いずれも文字列データを主要な要素とするオブジェクト(文字列オブジェクト)である。
したがって、甲第1号証における「テキスト」は、本件特許発明1,2,5,6,9,10における「コメント」に相当する。
なお、本件特許発明1,2,5,6,9,10における「コメント」と甲第1号証における「テキスト」とが概念として仮に相違するとしても、当該相違は本件特許発明1,2,5,6,9,10と甲1発明A(B)の間の異同に何ら影響を与えない。」(口頭審理陳述要領書別紙第6頁第4?12行目)

b「本件特許発明1,2,5,6,9,10における「コメント付与時間」と甲第1号証における「相対時刻」は、いずれも動画のタイムライン上の位置(指定時点)を指定するデータである。
したがって、甲第1号証における「相対時刻」は、本件特許発明1,2,5,6,9,10における「コメント付与時間」に相当する。
なお、本件特許発明1,2,5,6,9,10における「コメント付与時間」と甲第1号証における「相対時刻」とが概念として仮に相違するとしても、当該相違は本件特許発明1,2,5,6,9,10と甲1発明A(B)の間の異同に何ら影響を与えない。」(口頭審理陳述要領書別紙第6頁第15?23行目)

(イ)判断
「コメント」については、上記ア(ア)で検討したとおりであり、本件特許発明1の「コメント」と、甲1発明の「データコンテンツ」の「テキスト」は、「文字列」である点で共通するものの、甲1発明の「データコンテンツ」の「テキスト」は、「コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様が指定される」ものであって、動画を閲覧するユーザが、動画の再生開始後の任意の時点に、動画に対して付与するものではないから、本件特許発明1の「コメント」と一致するものとはいえない。

また、「コメント付与時間」については、上記ア(イ)で検討したとおりであり、本件特許発明1の「コメント付与時間」と、甲1発明の「相対時刻」は、「動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間」である点で共通するものの、甲1発明の「相対時刻」は、「コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様が指定される」ものであって、ユーザによりコメントが付与された時点における、再生中の動画の再生時間ではないから、本件特許発明1の「コメント付与時間」と一致するものとはいえない。

したがって、請求人の主張は採用することができない。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明1と甲1発明の間には相違点1?相違点4があるから、本件特許発明1は、甲1発明と同一ではない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明と同一であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(2)本件特許発明2、5、9、10について
本件特許発明2及び5は、本件特許発明1を引用する発明であるから、少なくとも、相違点1?相違点4に係る構成を有している発明である。
したがって、本件特許発明2及び5は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明と同一であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

また、本件特許発明9及び10は、本件特許発明1及び2の装置に対応するプログラムの発明である。
したがって、本件特許発明9及び10は、甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

2 無効理由2について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明の対比は、上記1(1)アのとおりである。

イ 判断
以下、相違点1?相違点4について検討する。

上記1(1)ア(ア)、(イ)で検討したとおり、本件特許発明における「コメント」とは、動画を閲覧するユーザが、動画の再生開始後の任意の時点に、動画に対して付与するものであり、本件特許発明における「コメント付与時間」とは、ユーザによりコメントが付与された時点における、再生中の動画の再生時間であると解するのが相当である。

一方、上記1(1)ア(ア)で検討したとおり、甲1発明における「データコンテンツ」の「テキスト」は、「コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様が指定される」ものであって、動画を閲覧するユーザが、動画の再生開始後の任意の時点に、動画に対して付与するものではない。

以上によれば、動画上に表示される「文字列」について、本件特許発明の「コメント」は、動画を閲覧するユーザが、動画の再生開始後の任意の時点に、動画に対して付与するものであるのに対し、甲1発明の「データコンテンツ」の「テキスト」は、コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様が指定されるものである点で、本件特許発明と甲1発明とでは、その前提を異にするものである。

そして、本件特許発明と甲1発明では、動画上に表示される「文字列」に関する前提が異なるから、甲第1号証の記載からは、甲1発明において、「文字列」である「テキスト」を、「コメント」とし、文字列情報記憶部に記憶される「動画再生時間」を、「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」とすることには、何ら動機付けは認められない。

したがって、甲1発明において、「文字列」であり、コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて指定される「テキスト」を、「コメント」とし(相違点1)、文字列情報記憶部に記憶される「文字列情報」に、「前記コメント」を含ませること(相違点2)は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
また、甲1発明において、文字列情報記憶部に記憶される「動画再生時間」を、「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」とすること(相違点3)は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
また、甲1発明において、表示する「文字列」を、「前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメント」とすること(相違点4)も、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

以上によれば、相違点1?相違点4は、甲1発明から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)本件特許発明2、5、9、10について
本件特許発明2及び5は、相違点1?相違点4に係る構成を有している発明である。
したがって、本件特許発明2及び5は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

また、本件特許発明9及び10は、本件特許発明1及び2の装置に対応するプログラムの発明である。
したがって、本件特許発明9及び10は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

3 無効理由3について
(1)本件特許発明6について
ア 対比
請求項2及び5を引用する本件特許発明6と甲1発明とを対比すると、両者は、上記1(1)ア(キ)で述べた相違点1?相違点4のほか、以下の相違点5及び相違点6でも相違している。

(相違点5)本件特許発明6は、「前記コメント表示部によって表示されるコメントが他のコメントと表示位置が重なるか否かを判定する判定部」を備えるのに対し、甲1発明は、当該「判定部」を備えていない点。

(相違点6)本件特許発明6は、「前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、各コメントが重ならない位置に表示させる表示位置制御部」を備えるのに対し、甲1発明は、当該「表示位置制御部」を備えていない点。

イ 判断
相違点1?相違点4については、上記2(1)イで判断したとおりであり、甲1発明から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

したがって、本件特許発明6は、当業者が相違点1?相違点4に係る構成を容易に導き出すことはできない。よって、相違点5及び相違点6について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲2?4技術から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 請求人の主張について
(ア)請求人の主張
相違点5及び相違点6について、請求人は、審判請求書において、以下の主張を行っている。ここで、「甲1発明A」は、甲第1号証に記載されている発明、「公知技術C1」は、甲第2号証に記載されている技術、「周知技術C2」は、甲第2?4号証の記載による周知技術と主張している。

a「【甲1発明A】
1A 動画を再生するとともに、動画上にテキストを、両者が同時に見えるように表示する情報端末装置200であって、
1B テキストと、動画再生開始時点からの相対時刻情報(当該動画の再生中におけるテキストの再生時刻情報)と、を一時的に記憶する表示メモリ272と、
1C,1D 動画を表示する動画エリアに当該動画を再生して表示するとともに、再生される動画の動画再生時間に基づいて、表示メモリ272に記憶された情報のうち、動画の動画再生時間に対応する相対時刻に対応するテキストを表示メモリ272から読み出し、当該読み出されたテキストを、データエリアにスクロール表示させる表示制御部270と、を有し、
1E データエリアのうち、一部の領域が動画エリアの全部と重なっており、他の領域が動画エリアの外側にあり、
1F 表示制御部270は、読み出したテキストを、その一部がデータエリアのうち動画エリアの外側であってデータエリアの内側に表示されるよう、動画エリアとデータエリアとにまたがるように表示する
1G ことを特徴とする情報端末装置200。」(審判請求書第11頁第7?23行目)

b「【公知技術C1】
字幕移動機能などにより字幕が文字放送受信による文字表示位置に重なってしまうと文字が見づらくなるという欠点を解消するため、字幕が文字表示領域に重なるか否かを判定し重なると判定した場合に文字について字幕位置を避けて最適位置にスクロール表示を行う。」(審判請求書第17頁第1?5行目)

c「【周知技術C2】
映像が再生表示される領域の前面に表示されている文字情報aに他の文字情報bが重なってしまうと文字が読みづらくなるという課題を解決するため、文字情報aに他の文字情報bが重なるか否かを判定し重なると判定した場合に文字情報aに重なる位置を避けて文字情報bをスクロール表示する。」(審判請求書第19頁第1?5行目)

d「次に、画面上に複数のメッセージを同時期に表示させる場合においてメッセージどうしが重なると読みづらくなることは、本件原出願目よりかなり前から周知の課題であった(甲第2号証乃至甲第4号証)。具体的には、甲第2号証乃至甲第4号証のうち最も後に公開された甲第2号証の公開日(1996年4月23日)は、本件原出願目(2006年12月11日)より10年以上も前である。そして、【公知技術C1】及び【周知技術C2】の課題はいずれも、上記周知の課題と共通である。よって、画面上に複数のメッセージを同時期に表示させる前提において、主引用発明(【甲1発明A】)と副引用発明(【公知技術C1】又は【公知技術C2】)との間には、課題の共通性がある。
そうすると、画面上に複数のメッセージが同時期に表示される際に発生し得る不都合という周知の課題を解決するために、【甲1発明A】に対し【公知技術C1】又は【周知技術C2】を適用することには、技術分野の関連性及び課題の共通性に基づく動機付けがあるというべきである。
以上によれば、主引用発明(【甲1発明A】)に副引用発明(【公知技術C1】又は【周知技術C2】)を適用して当業者が本件特許発明6に導かれる動機付けがある。」(審判請求書第20頁第5?20行目)

(イ)判断
しかしながら、上記イで述べたとおり、本件特許発明6は、当業者が相違点1?相違点4に係る構成を容易に導き出すことはできない。よって、相違点5及び相違点6について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲2?4技術から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

なお、仮に、相違点5及び相違点6について検討したとしても、以下に述べるように、相違点5及び相違点6は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲2?4技術から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

a 甲第2?4号証に記載された技術
上記第4の2(2)、3(2)、4(2)のとおり、甲第2?4号証に記載された技術を再掲すると、以下のとおりである。

(甲2技術)
(2a)テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳された文字放送データをスクロール表示させる文字放送特殊再生装置において、
(2b)字幕移動機能などにより字幕が文字放送受信による文字表示位置に重なってしまったりする欠点を解消するために、
(2c)通常のTV放送を受信する際には、映像信号をTV信号処理回路と表示モード制御部と字幕表示位置制御部を介して処理し、
(2d)字幕表示位置制御部は、映画等の字幕が見にくい位置になったときには、リモコン信号に基づいて映像信号の上下のブランクの部分にある字幕を検出し、これを移動させて、映像信号に合成することにより、字幕表示位置を移動するよう制御し、
(2e)全画面固定で送られてきた文字放送をスクロール表示する動作では、
(2f)前記字幕表示位置制御部からの制御信号に基づいて、字幕位置検出部により字幕位置が検出され、
(2g)特殊再生装置制御部は、字幕位置検出部からの検出結果に基づいて、スクロール表示する表示位置を決定することにより、字幕位置を避けて最適位置にスクロール表示を行う
(2a)文字放送特殊再生装置。

(甲3技術)
(3a)テレビ多重文字放送の受像機において、
(3b)メインの放送画像に対して、文字放送の文章の1行を表示するが、これを横方向にスクロールし、
(3c)横スクロールモードでは、メイン放送画像に対して文字放送による1行がスーパーインポーズにより表示されるので、この表示位置に、メインの放送による文字など、例えば野球の打者の名前などが表示されると、両方の表示が重なり、両方とも見づらくなってしまうことを避けるために、
(3d)横スクロールモードのときに、その縦方向における表示位置を変更するための回路を設け、
(3e)横スクロールの表示をブロックのN行に行うときには、例えば第1行(N=1)に行うときには、これをキーボートから入力することにより、
(3f)横スクロールの表示位置を任意の行とすることができ、横スクロールの表示文字とメインの放送画像の文字とが重なったりすることがなく、両者を見ることができるようにする
(3a)テレビ多重文字放送の受像機。

(甲4技術)
(4a)映像信号に重畳して伝送された文字信号を抽出して所定位置に文字情報を画面表示するクローズド・キャプションデコーダを備え、文字情報を映像とともに画面表示するクローズド・キャプション(文字多重)システムのテレビジョン受信機において、
(4b)オープン・キャプションによる文字情報である日本語字幕にクローズド・キャプションの字幕が重なって読みにくくなっても受け手側で表示位置を変更できないという問題を解決するために、
(4c)クローズド・キャプションデコーダが、画面上の文字情報の表示位置を指定する手段と、文字信号に含まれる文字情報の表示アドレスを、指定された表示位置に応じた表示アドレスに変換する回路を備え、
(4d)クローズド・キャプションデコーダで、キャプション情報の表示位置を変更することで、送信側で決定されたクローズド・キャプションによる文字情報の表示アドレスを、オープン・キャプションによる文字情報と重ならない位置に移動する
(4a)クローズド・キャプション(文字多重)システムのテレビジョン受信機。

b 技術分野について
まず、甲1発明と、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術で、技術分野が共通するかについて検討する。

(a)甲1発明について
甲1発明は、「サーバと情報端末装置とにより構成される動画配信システムの情報端末装置」の発明であり、前記情報端末装置は、放送設備からの放送電波を選択受信し、選択受信された動画情報を動画ビューワへ送り、動画エリアとして表示し(構成1b、構成1c、構成1h)、URLへアクセスすることにより受信したデータコンテンツを、データエリアに表示させる(構成1d、構成1e、構成1h)ものである。

(b)甲2技術について
甲2技術は、テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳された「文字放送データ」をスクロール表示させる文字放送特殊再生装置の技術である。
ここで、構成2dの字幕表示位置制御部は、通常のTV放送の映像信号を処理し、リモコン信号に基づいて映像信号の上下のブランクの部分にある字幕を検出し、これを移動させて、映像信号に合成することにより、字幕表示位置を移動するから、構成2dの「字幕」は、映像信号であるといえる。
一方、構成2aの「文字放送データ」は、テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳されたものであり、映像信号である字幕とは異なるものであるといえる。また、構成2eと構成2gのスクロール表示、及び、構成2bの「文字表示位置」への表示の表示対象は、「文字放送データ」であるといえる。
よって、甲2技術は、テレビ文字放送の再生装置の技術であって、テレビ放送に重畳された「文字放送データ」が映像信号の文字と重ならないように、当該「文字放送データ」の表示位置を変更する技術であるといえる。

(c)甲3技術について
甲3技術は、テレビ多重文字放送における「文字放送の文章の1行」を横方向にスクロールして表示するテレビ多重文字放送の受像機の技術である。
ここで、構成3bと構成3fの「メインの放送画像」及び構成3cの「メイン放送画像」は、テレビ多重文字放送のメインの放送画像であるから、映像信号といえる。また、構成3cの「メインの放送による文字」及び構成3fの「メインの放送画像の文字」は、「野球の打者の名前など」であるから、構成3c及び構成3fの「文字」は、映像信号であるといえる。
一方、構成3fの「横スクロールの表示文字」は、構成3bの「文字放送の文章の1行」であるから、文字放送の文字データであり、メインの放送画像の映像信号の文字とは異なるものであるといえる。
よって、甲3技術は、テレビ文字放送の受信機の技術であって、テレビ多重文字放送における文字放送の文字データである「文字放送の文章の1行」が映像信号の文字と重ならないように、当該「文字放送の文章の1行」の表示位置を変更する技術であるといえる。

(d)甲4技術について
甲4技術は、「クローズド・キャプションの字幕」を表示するクローズド・キャプション(文字多重)システムのテレビジョン受信機の技術である。
ここで、構成4bの「日本語字幕」は「オープン・キャプションによる文字情報」であり、「オープン・キャプション」とは、映像信号中の文字を表す用語であるから、構成4bの「オープン・キャプションによる文字情報である日本語字幕」は、映像信号であるといえる。
一方、構成4bの「クローズド・キャプションの字幕」は、文字多重のシステムのテレビジョン受信機において、「映像信号に重畳して伝送された文字信号を抽出」したものであるから、文字放送の文字データであり、映像信号であるオープン・キャプションによる文字情報とは異なるものであるといえる。
よって、甲4技術は、文字多重システムのテレビジョン受信機の技術において、文字放送の文字データである「クローズド・キャプションの字幕」が映像信号の文字と重ならないように、当該「クローズド・キャプションの字幕」の表示位置を変更する技術であるといえる。

(e)甲2?4技術から把握される周知技術について
上記(b)?(d)によれば、甲2?4技術から把握される周知技術は、テレビ文字放送の受信機の技術において、テレビ文字放送に重畳された「文字放送データ」が映像信号の文字と重ならないように、当該「文字放送データ」の表示位置を変更する技術である。

(f)判断
以上によれば、甲1発明は、サーバと情報端末装置とにより構成される動画配信システムの情報端末装置の発明であるのに対して、甲2技術、及び、甲2?4技術から把握される周知技術は、テレビ文字放送の受信機の技術であるから、両者は、そのシステム構成について技術分野が異なるといえる。また、表示位置の制御の対象をみても、甲1発明は、URLへアクセスすることにより受信したデータコンテンツであるのに対して、甲2技術、及び、甲2?4技術から把握される周知技術は、「テレビ文字放送に重畳された文字放送データ」であるから、両者の技術分野は異なるといえる。
したがって、甲1発明と、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術で、技術分野が共通するとはいえない。

c 解決しようとする課題について
次に、甲1発明と、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術で、解決しようとする課題が共通するかについて検討する。

(a)甲1発明の課題
甲1発明が解決しようとする課題は、上記第4の1(1)アのとおり、個々のモニタ画面に応じて、または、ユーザの希望に応じて、動画コンテンツとデータコンテンツとをより適切な表示形態でモニタ画面上に表示させることができる動画配信システムおよび情報端末装置を提供することであるといえる。

(b)甲2技術の課題
甲2技術が解決しようとする課題は、上記第4の2(1)オ及びカのとおり、テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳された「文字放送データ」をスクロール表示させる際に、映像信号の字幕の字幕位置に重なってしまったりする欠点を解消することであるといえる。

(c)甲3技術の課題
甲3技術が解決しようとする課題は、上記第4の3(1)ウ及びエのとおり、テレビ多重文字放送の文字データである「文字放送の文章の1行」を横方向にスクロールして表示する際に、当該「文字放送の文章の1行」の表示位置に、映像信号であるメインの放送による文字が表示されると、両方の表示が重なり、両方とも見づらくなってしまうことを避けることであるといえる。

(d)甲4技術の課題
甲4技術が解決しようとする課題は、上記第4の4(1)ウのとおり、クローズド・キャプション(文字多重)システムの受信機において、文字放送の文字データである「クローズド・キャプションの字幕」が、映像信号であるオープン・キャプションによる文字情報に重なって読みにくくなっても受け手側で表示位置を変更できないということであるといえる。

(e)判断
以上によれば、甲1発明の課題は、個々のモニタ画面に応じて、または、ユーザの希望に応じて、動画コンテンツとデータコンテンツとをより適切な表示形態でモニタ画面上に表示させることができる動画配信システムおよび情報端末装置を提供することであるのに対して、甲2?4技術の課題は、テレビ文字放送の受信機において、テレビ放送に重畳された「文字放送データ」の表示位置が、映像信号の文字の表示位置と重ならないようにするために、前記「文字放送データ」の表示位置を変更することといえる。
よって、両者の解決しようとする課題は異なるから、両者の解決しようとする課題は共通するとはいえない。

d 動機付けについて
次に、甲1発明に甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用する動機付けがあったかどうかについて検討する。

上記b及びcのとおり、甲1発明と甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術は、技術分野が共通するとはいえず、課題も共通するとはいえないから、甲1発明に甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用する動機付けがあったとはいえない。
ここで、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術が、「文字放送データ」の表示位置を変更する技術であることから、念のために、甲1発明のデータコンテンツの表示位置に関して何らかの課題を有するか否かを検討する。

甲1発明では、データコンテンツの表示態様は、コンテンツ作製者側で、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて指定されるものである。
そして、甲第1号証には、一つの画面上に、データコンテンツの複数のテキストが重なって表示されることは何ら記載されていないから、甲1発明において、複数のテキストが重なって読みづらくなるという課題は、甲第1号証の記載からは想定することができない。また、当該課題が、甲第1号証の記載から自明な課題であるともいえない。

以上のとおりであり、甲1発明と甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術では、技術分野及び解決しようとする課題が共通するとはいえないから、甲1発明に甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用する動機付けがあったとはいえない。

e 予備的検討
さらに、仮に、甲1発明に、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用した場合に、相違点5及び相違点6に係る構成に至るかどうかについて検討する。

甲1発明の「情報端末装置」が再生する「動画」は、映像信号であり、表示する「データコンテンツ」はテキスト等であって、映像信号とは異なるものといえる。
よって、甲1発明に、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用すると、映像信号の再生と映像信号とは異なるデータコンテンツのテキスト等の表示に対して、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術の映像信号と異なる「文字放送データ」の表示位置を変更する技術を適用することになるから、「情報端末装置」において、データコンテンツの「テキスト」の表示位置が、映像信号である「動画」の文字の表示位置と重ならないようにするために、データコンテンツの「テキスト」の表示位置を変更するものとなる。
しかしながら、当該映像信号である「動画」の文字は、映像信号であるから「動画」に対応するものであって、複数の端末から送信されるコメントではないから、相違点5及び相違点6における「コメント」または「他のコメント」に対応するものとはいえない。
よって、甲1発明に、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用したとしても、相違点5に係る構成である「前記コメント表示部によって表示されるコメントが他のコメントと表示位置が重なるか否かを判定する判定部」、及び、相違点6に係る構成である「前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、各コメントが重ならない位置に表示させる表示位置制御部」を備えるものとはならない。

したがって、仮に、甲1発明に、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用したとしても、相違点5及び相違点6に係る構成に至るとはいえない。

f まとめ
以上によれば、相違点5及び相違点6は、甲1発明と甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

よって、請求人の主張は採用することができない。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明6は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲2技術、甲3技術、甲4技術から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)まとめ
以上のとおり、本件特許発明6は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲第2?4号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

4 無効理由4について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明の対比は、上記1(1)アのとおりである。

イ 判断
相違点1?相違点4については、上記2(1)イで判断したとおりである。

また、上記第4の8(3)のとおり、甲第8、9号証には、「背景画像上に複数のテキストを横に流す技術」が記載されている。
また、上記第4の9(2)のとおり、甲第10号証には、「Flashにおいて、ニュース原稿をXMLファイルから読み込んでテロップを表示する技術」が記載されている。
また、上記第4の10(2)のとおり、甲第11号証には、「Flashにおいて、ムービー内のテキストを別のテキストファイルから読み込み、テロップとする技術」が記載されている。
しかしながら、甲第8?11号証には、「コメント」及び「コメント付与時間」については何ら記載がない。

したがって、本件特許発明1は、甲1発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)本件特許発明2、5、9、10について
本件特許発明2及び5は、相違点1?相違点4に係る構成を有している発明である。
したがって、本件特許発明2及び5は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

また、本件特許発明9及び10は、本件特許発明1及び2の装置に対応するプログラムの発明である。
したがって、本件特許発明9及び10は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

5 無効理由5について
(1)本件特許発明6について
ア 対比
本件特許発明6と甲1発明の対比は、上記3(1)アのとおりである。

イ 判断
相違点1?相違点6については、上記3(1)イで判断したとおりである。
また、上記4(1)イで述べたとおり、甲第8?11号証にも、「コメント」及び「コメント付与時間」については何ら記載がない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術、並びに甲2技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり、本件特許発明6は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)まとめ
以上のとおり、本件特許発明6は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

6 まとめ
(1)無効理由1について
本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、2、5、9、10は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとの請求人の主張は成立しない。

(2)無効理由2について
本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、2、5、9、10は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとの請求人の主張は成立しない。

(3)無効理由3について
本件特許発明6は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲第2?4号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明6は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとの請求人の主張は成立しない。

(4)無効理由4について
本件特許発明1、2、5、9、10は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、2、5、9、10は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとの請求人の主張は成立しない。

(5)無効理由5について
本件特許発明6は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第8?11号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明6は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとの請求人の主張は成立しない。

第6 むすび
以上のとおり、請求人が申し立てる無効理由1ないし5は、いずれも理由がなく、特許第4734471号発明の特許請求の範囲の請求項1,2,5,6,9及び10に記載された発明についての特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-12-28 
結審通知日 2019-01-07 
審決日 2019-01-18 
出願番号 特願2010-267283(P2010-267283)
審決分類 P 1 123・ 113- Y (H04N)
P 1 123・ 121- Y (H04N)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 清水 正一
坂東 大五郎
登録日 2011-04-28 
登録番号 特許第4734471号(P4734471)
発明の名称 表示装置、コメント表示方法、及びプログラム  
代理人 井上 正  
代理人 中山 俊彦  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 野河 信久  
代理人 陳野 裕  
代理人 峰 隆司  
復代理人 朝倉 傑  

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