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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01L
管理番号 1368647
審判番号 不服2019-4557  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-05 
確定日 2020-11-26 
事件の表示 特願2014- 23386「ドラフトチャンバー」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月24日出願公開、特開2015-150465〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年 2月10日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年12月11日付け:拒絶理由通知書
平成30年 2月13日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 6月11日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成30年 8月17日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年12月25日付け:拒絶査定
平成31年 4月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 5月19日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 7月27日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、令和2年7月27日にされた手続補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
開口部を通じて空気を作業空間に送り込んで前記作業空間内から外部に排気する機能を有し、
前記開口部の作業面開口高さの増減に関わらず、CAV制御方式を組み込んだ排気風量が一定の定風量のドラフトチャンバーの、制御風速を規定する法規制の適用に基づいて標準化された標準風量よりも40?60%減の、少ない風量で稼働可能なVAV制御方式の低風量のドラフトチャンバーであって、
前記低風量のドラフトチャンバーは、前記作業面開口高さの増減により排気風量を増減させることが可能とされると共に、
前記作業空間に前記空気を送り込んで排気させる空気送り込み排気手段と、
前記低風量のドラフトチャンバーの周辺に発生した外乱を検知するために、前記低風量のドラフトチャンバーが設置されている部屋内において動作する物体や形状を識別する撮像手段を少なくとも含む外乱検知手段と、
前記外乱検知手段による前記外乱の検知に基づいて前記空気送り込み排気手段を予め制御することにより、前記作業面開口高さによらず、前記作業空間から外部に排気する排気風量を増加させる制御部と、
を備えることを特徴とするドラフトチャンバー。」

第3 拒絶の理由
令和2年5月19日付けで当審が通知した拒絶理由のうち、本願の請求項1に係る発明に対するものは、要するに、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び下記の引用文献1及び2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるあるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という進歩性欠如に関するものである。

引用文献1:特表平07-500899号公報
引用文献2:米国特許第6428408号明細書

第4 引用文献及び周知例の記載
ここでは、上記引用文献1及び2の記載に加えて、周知技術を理解するため、次の周知例1及び2の記載についても併せて摘記した。
周知例1:特開2009-30837号公報
周知例2:特開2006-220405号公報

1 引用文献1の記載
引用文献1には以下の記載がある(当審注:「・・・」は当審が省略した部分を示し、下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
(1)第3頁左上欄冒頭-同右上欄第10行
「(技術分野)
本発明は、研究所の換気フード(fume hood)に関し、特に換気フードの密閉に影響を及ぼす1つ以上の条件の変化に応答して換気フードの面速度を変化させるための方法および装置に関する。
(発明の背景)
研究所の換気フードは、有害材料を安全に取扱うことができる通気された包囲体である。この換気フードは、汚染物質を捕捉してフード作業領域およびその周囲における空気および汚染物質をオペレータから遠ざける排気ブロワの使用により研究所内へこれら汚染物質が流出することを阻止して、汚染物質の吸引およびこれとの接触が最小限に抑えられるようにする。フードの内部への接近(アクセス)は、フード内への開口を変化させるため典型的に上下に摺動するサッシュで閉鎖される開口を介して行われる。
フードの開口を通過する空気流の速度は、面速度(face velocity)と呼ばれる。取扱われる材料が有害であればある程、推奨される面速度は高くなり、面速度を毒性に関連付けるガイドラインが確立されている。研究所の換気フードにおける典型的な面速度は、用途に応じて60乃至150フィート/分(約18乃至45m/分)である。
オペレータがフード内で作業するとき、内部の材料に対する自由な接近を許容するようにサッシュが開かれる。このサッシュは、フードにおいて行われる操作に応じて、部分的にあるいは完全に開かれる。換気フードおよびサッシュの大きさは変化するが、完全に開かれたサッシュにより提供される開口は、10平方フィート(約0.9m^(2))程度である。このため、ブロワが供給しなければならない最大空気流量は、典型的には600乃至1500立法フィート/分(約17.0乃至42.5m^(3)/分)程度である。
前記サッシュは、フードがオペレータにより使用されない時は閉鎖される。フードが使用されない時にフード内部の有害材料は通常収蔵され、従って、フードが使用されずサッシュが閉鎖される時でも、このような材料からの汚染物質を排出するため確実な空気流が維持されねばならない。取扱される材料の危険レベルおよび結果として生じる最小面速度が増加するに伴い、安全面速度を維持することは更に困難となる。
換気フード・システムの設計における重要な配慮は、システムの運転コストである。3つの主なコスト領域、即ち、フード据付けの金銭的経費、フードの排気ブロワの運転電力コスト、および換気フードにより部屋から排気される空気を置換する「補給量」の加熱、冷却および搬送のコストがある。」

(2)第4頁左上欄第6行-同右上欄下から3行目
「本発明の目的は、換気フードを制御するための改善された方法および装置の提供にあり、そのコントローラが、(a)サッシュ位置の如何に拘わらず、システムが用いる補充空気を実質的に低減し、(b)有毒なフューム拘束状態の破壊の危険、あるいは進行中の実験または装置に対する破壊の危険を許容せずあるいはこれを生じることなく、換気フード・システトを比較的低いピーク流量となるように設計することを可能にし、かつ(リサッシュ位置を選択する際の完全な柔軟性を研究者に許容する。
以上のことに従って、本発明は、面速度制御を有する換気フードに使用されるコントローラを提供する。面速度の制御は、面速度を直接制御し、あるいは流量あるいは面速度に影響を及ぼす他のある条件を制御することによりこの速度を間接的に制御するものである。コントローラは、少なくとも1つの拘束状態に影響を及ぼす条件を検出するための検出器を有し、この条件とは、(a)換気フードの予め定めた領域内における人の存在あるいは接近、(b)換気フードの予め定めた領域内の、人による運動あるいは通風または他の条件の結果としての動き、および(または)(c)フードの前面から予め定めた距離内の装置または材料の存在である。検出されるべき各条件に対して適当な検出器が提供される。拘束状態に影響を及ぼす条件のある選択された変化を検出する検出器に応答して、面速度の制御は変化した拘束状態の条件に対して適切な予め選定された速度に対応する換気フードの面速度の変化を生じる。この変化とは、存在する条件に影響を及ぼす拘束状態を含むフード内のフュームの拘束を保証するに充分なレベルへの換気フードの面速度の増加であり、・・・増加は、拘束状態に影響を及ぼす条件の検出時にほとんど即座に生じることが望ましい・・・増加は、拘束状態に影響を及ぼす条件の検出時にほとんど即座に生じることが望ましい・・・拘束状態に影響を及ぼす条件とは、人がフードの表面の選択された領域内にあること、フードの表面の選択された領域内の運動の検出であり、この運動は人の運動か、あるいはフードの内部または外部の空気の運動即ち乱流であって・・・。
面速度の制御は、変化分が流量変化である換気フードによる体積の制御である。本システムは、最大流量を確保するための手段、および(または)最小流量を確保するための手段を含み、最大流量および(または)最小流量は、拘束状態に影響を及ぼす条件の変化に応答して変化させられる。・・・換気フードが、少なくとも1つの運動可能サッシュにより変化する程度で覆われる開口を有する場合、選択される体積は、通常はサッシュの位置と関連して保持される。この選択される保持体積は、拘束状態に影響を及ぼす条件における変化の検出に応答して変化させられる。・・・
面速度の制御は、換気フードを排気するブロアに対する速度制御を含み、即ち、換気フードからの流出を直接的に変化させる。」

(3)第4頁左下欄下から3行目-第5頁左上欄第16行
「本システムにおいては、センサは、空気流を制御するため、ブロワ14の速度を制御するか、あるいは排気ダクト15内のダンパーを制御するため使用される。・・・本発明に関係する1つの生じ得る問題は、これら装置により制御されるフードの面速度がフードの前面近くに立つユーザにより影響を受けることである。・・・本発明は、平均面速度を増加してより良好なフュームの捕捉および拘束を生じる。・・・フードのそばを通過する人の擾乱が、このような制御システムのないフードより著しく悪い応答を生じるおそれがある。本発明は、異なる検出および制御装置を用いて、正しい方法で即座に擾乱を検出して迅速に応答し、良好な換気フード動作をもたらす。・・・本発明はまたユーザを検出しようと試みるが、従来技術とは異なり、面速度を変化させてフードの体積を変えてエネルギを節減し・・・また、本システムは、米国特許第4,528,898号および同第4,706,553号に記載される如き一定の面速度制御システムと組合わせて用いられる時、このようなシステムが本発明が達成する平均面速度における低下の故に単独で使用される時よりも、大きなエネルギ節減を達成することができる。・・・流量コントローラ32は、・・・サッシュ位置に基く一定の面速度を維持する可変体積制御システムからなる。米国特許第4,741,257号、同第4,528,898号および同第4,706,553号は、流量コントローラ・ブロック32に対して用いることができる種々の形式の可変体積制御システムについて記載する。これら全ての流量コントローラは、所与の面速度設定値を維持するように働く。・・・可変体積システムにおいては、換気フードの体積は所与の面速度設定点に対して変化することになる。多くの場合、可変体積システムでは、換気フード制御部には最小および最大排気体積限度が置かれることになる。」

(4)第5頁左上欄第17行-同右下欄第10行
「トランスジューサ35および人間/運動検出回路34は、フード前方のユーザ/研究者の存在および運動を検出するように一緒に働く。前記トランスジューサはまた、フード前方あるいはその付近における著しい空気の運動または乱流を検出することもできる。空気の運動またはユーザの近接/運動が検出される時、このトランスジューサは面速度設定点変更回路33を付勢する。この回路は、多くのあり得る方法の1つで流量コントローラ32に対して働くが、一般にその面速度および(または)体積流の設定点を増加するように働く。・・・例えば、トランスジューサ35は、受動型遠赤外線(典型的には、8乃至14μm)運動センサ、能動型超音波運動センサ、能動型マイクロ波運動センサ、能動型近赤外線(典型的には、880乃至940nm)または可視光近接センサ、あるいはそれらの組合わせを用いることにより実現することもできる。
図3は、受動型パイロ(ピロ)電気赤外線運動センサおよび検出回路を用いる構成を示す。このパイロ電気検出器41は、検出区域(ゾーン)における背景放射に対する人間の運動により生じる熱パターンにおける変化を検出する。光学系40、例えばミラーまたはフレネル・レンズが、例えば8乃至14μmのスペクトルの赤外線エネルギを検出器へ集束する。・・・
可変電圧出力部47の使用により、前記回路は異なる区域を検出することもできる。例えば、可変電圧出力は、換気フードの前方の検出区間に対する研究所の研究者の検出を表示することになる。この可変電圧は、図2の面速度設定点変更ブロック33に、研究者が室内に存在する時は面速度を僅かに増加すること、また研究者がフードの前方にあるならば、面速度を更に余計に増加することを指令することになる。
ドップラ運動検出を含む完全な能動型システムが図4に示される。これらのシステムは、受動型検出器と組合わせることができ、かつ典型的に次の3つの技術、即ち、800乃至900nmの赤外線、マイクロ波または超音波の1つに基くものである。能動型システムは、人間の存在または運動を検出する。研究者が何処におり、どれだけの早さで運動しているかを示す運動が、マイクロ波および超音波に対するドップラ効果により検出される。研究者がある特定の場所にあるかどうかを示す存在は、赤外線ビームにより検出される。・・・次に、面速度は、研究者が換気フードに近づく時に増加され、また研究者が換気フードから遠去かる時には減少される。
存在検出器と運動検出器の双方の使用は、システムがフードのそばを通過する人達により悪影響を受けることを防止するために有効であることを証し得る。」

(5)第6頁左上欄下から6行目-同右上欄下から6行目
「フード付近のユーザの存在または運動を検出することに加えて、先に述べたように、より高い面速度に対する必要を示す潜在的に他の要因、例えば、付近の給気拡散装置から30乃至50フィート/分(約9.1乃至15.2m/分)以上の如き空気速度の存在が存在する。更に、フードのサッシュ前方から後方に最初の6インチ(約15cm)にある装置の存在もまた、フードの拘束を減じ得、より高い面速度に対する必要を招く。
換気フードの前方、あるいはその隅部または側部における空気の運動を検出するため使用することができる多くの種類および形式の空気速度センサがある。不都合なことには、これらの多くは、ホット・ワイヤまたはサーミスタ形式の熱アネオメータ(aneometer)の如き定点センサである傾向を有する。より優れたシステムは、より広い面積にわたる低い空気速度の存在を検出する。1つのこのような試みは、長いストリーマ(streamer)51、(図6B)を使用し、このようなストリーマの各々の長さはおおよそサツシ、開口の高さに等しい。・・・
更に簡単な方法は、先に述べたパイロ電気センサまたは熱センサを使用することである。これらの装置は、背景と異なる温度である空気の運動に感応するように作ることができる。例えば、フード付近の拡散装置から出てくる条件付けされた給気は、典型的に70°F(約21℃)の背景室温に対して55°F(約13℃)である。フード付近の空気流の乱れに従って、この空気の運動はパイロ電気センサにより検出されることになる。」

(6)第6頁右下欄下から6行目-第7頁左上欄第1行
「擾乱が生じる時拘束状態を増すために、面速度または体積を変化させることができる幾つかの方法がある。図8は、体積を変化させることができる1つの方法を示す図である。この事例においては、フードは、本例では解放面積の20%で生じる最小流量の点149で交差する線131と105により示される70フィート/分(約21m/分)の待機(スタンバイ)面速度で動作させられる。擾乱が生じると、面速度は増加して、線130および104により図8に概略を示した流量とサッシュ位置の関係カーブを生じる。」

(7)図8




2 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。
(1)第1欄第26-34行
「Such safety thresholds and other factors relating to testing and performance of laboratory fume hoods are prescribed by government and industry standards by organizations, such as the American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers,Inc. (ASHRAE) of Atlanta, Ga., for example, ANSI/ASHRAE 110-1995. ASHAAE Standard, "Method of Testing Performance of Laboratory Fume Hoods".」(当審訳:作業者が曝される汚染物質の濃度を可能な限り低く保たれるべきであり、安全限界値を決して超えるべきではない。実験室のガスフュームフードの試験及び性能に関連するこのような安全性閾値および他の因子は、組織によって、政府および産業界の規格によって規定された、American Society of Heating, Refrigerating and Air-ConditioningEngineers, Inc. (ASHRAE) of Atlanta, Ga.、例えば、ANSI/ASHRAE110-1995などである。ASHAAE Standard、「実験室フュームフードの性能試験方法」。)

(2)第2欄第31-42行
「An important factor in a conventional fume hood's ability to contain contaminants is its face velocity. The face velocity of a fume hood is determined by its exhaust and its open face area. Recommendations for face velocity of conventional fume hoods range from 75 feet per minute (fpm) for materials of low toxicity (Class C:TLV>500 ppm) to 130 fpm for extremely toxic or hazardous materials (Class A:TLV<10 ppm). Cooper, E. C., 1994. Laboratory Design Handbook, CRC Press. Ingeneral, industrial hygienists recommend face velocities in the range of 100fpm plus or minus 10 fpm for containment of contaminants by conventional hoods with open sashes.」(当審訳:汚染物質を含有する従来のフュームフードの能力における重要な要因は、その速度である。フュームフードの面速度は、その排気及びその開放した面領域によって決定される。従来のフュームフードの表面速度のための推奨は、低い毒性(クラスC:TLV>500ppm)の材料のための75フィート/分(fpm)から、極めて有毒な又は危険な材料(クラスA:TLV<10ppm)のための130fpmの範囲である(Cooper, E. C., 1994, 実験設計ハンドブック, CRC Press)。一般的には、工業衛生士は、開いたサッシを有する従来のフードによって汚染物質の封じ込めのために100fpmのプラス又はマイナス10フィート/分の範囲の面速度を推奨している。)

(3)第3欄第33-39行
「Thus, the abundant amount of air provided for the operation of conventional laboratory fume hoods results in a tremendous energy wastage. Accordingly, alternative fume hood designs which reduce the amount of air required for operability, reduce energy consumption and provide containment of contaminants would be desirable.」(当審訳:従って、従来の実験室フュームフードの運転のために提供される空気の豊富な量は、多大なエネルギー浪費をもたらす。従って、操作性に必要な空気量を減らし、エネルギー消費を減らし、汚染物質の封じ込めを提供する代替フュームフード設計が望ましい。)

(4)第3欄第43-62行
「To achieve the foregoing, the present invention provides a fume hood that offers an adequate containment of contaminants while reducing the amount of air exhausted from the hood. The fume hood includes a plurality of air supply outlets which provide fresh air, preferably having laminar flow, to the fume hood. The fume hood also includes an air exhaust which pulls air from the work chamber in a minimally turbulent manner. The push of the air supply outlets and the pull of the air exhaust form a push-pull system that provides a low velocity displacement flow which displaces the volume of gases currently present in the hood in a minimally turbulent and substantially consistent manner. As a result,inconsistent flow patterns associated with turbulent air supply and contaminant escape from the fume hood are minimized. The displacement flow fume hood in accordance with one embodiment of the present invention largely reduces the need to exhaust large amounts of air from the hood. It has been shown that exhaust air flow reductions of up to 70% are possible without a decrease in the hood’s containment performance.」(当審訳:上記を達成するために、本発明は、フードから排出される空気の量を低減しながら、汚染物質の適切な封じ込めを提供するフュームフードを提供する。フュームフードは、好ましくは層流を有する新鮮な空気をフュームフードに供給する複数の空気供給出口を含む。フュームフードはまた、最小限の乱流で作業チャンバから空気を吸引する空気排出部を含む。空気供給出口の供給及び空気排出部の吸引は、フード内に現在存在するガスの容積を最小乱流及び実質的に一貫した方法で変位させる低速変位流を提供するプッシュプルシステムを形成する。その結果、乱流空気の供給に関連した一貫性のない流れパターンとフュームフードからの汚染の漏れが最少化される。本発明の一実施形態による変位流フュームフードは、フードから大量の空気を排出する必要性を大幅に低減する。フードの封じ込め性能を低下させることなく、70%までの排気流量低減が可能であることが示されている。)

(5)第6欄第1行-第7欄第50行、図3A、3B
「fan」(ファン)315, 321, 342を備えた「supply air plenum」(供給空気プレナム)312, 320, 340によって、「work chamber」(作業室)302内に空気を供給すること、「fan」(ファン)362を備えた「exhaustoutlet」(排気口)340を通じて排気を行うことが記載されている。

(6)第13欄第1-4行
「As displacement flow in accordance with the present invention allows a fume hood to use substantially less air than a conventional fume hood, energy efficiency achievable with a displacement flow fume hood is greatly improved.」(当審訳:本発明による変位流が、従来のフュームフードよりも実質的により少ない空気を使用することを可能にするので、変位流フュームフードで達成可能なエネルギー効率は大幅に改善される。)

(7)第13欄第17-20行
「In one embodiment, air is emitted form the supply air outlets 314,325 and 343 at the same speed with a flow velocity in the range of about 30 fpm to 90 fpm (about 0.15 m/s to 0.46m/s).」(当審訳:一実施形態では、空気は、供給空気出口314、325および343から、約30fpmから90fpm(約0.15m/sから0.46m/s)の範囲の流速で、同じ速度で放出される。)

(8)第13欄第37-40行
「The air exhausted from the fume hood 300 may be as low as 30% of that exhausted from a conventional fume hood resulting in substantial energy savings due to reduced air conditioning requirements. By way of example, the air exhausted from the fume hood 300 maybe in the range of about 30 to 50% of fume hood with a typical face velocity of 100 fpm.」(当審訳:フュームフード300から排出される空気は、従来のフュームフードから排出されるものの30%と低くてもよく、その結果、空調要件の低減による実質的なエネルギー節約がもたらされる。一例として、フュームフード300から排出された空気は、典型的な100フィート/分の面速度のフュームフードの約30?50%の範囲にあってもよい。)

3 周知例1の記載
周知例1には、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】
クリーンルームの清浄度機能を自動制御するための、クリーンエアシステム、送風ユニット、排風ユニットを備え、送風ユニットの送風口からクリーンルーム内へクリーンエアを一定量送風し、且つ排風ユニットからクリーンルーム外へクリーンルームエアを一定量排風するクリーンルーム送風量制御システムにおいて、
クリーンルーム内に監視カメラを設置し、
所定時間間隔毎に、監視カメラの撮像から画像処理を用いた画像データへ変換した後、
画像データから人の移動動作を検出し、
移動動作の変化から人の移動量を算出し、
移動量に対応する送風量を算出した後、
クリーンルーム内へクリーンエアの送風量を増加、又は減少する、且つ排風ユニットからクリーンルーム外へクリーンルームエアの排風量を増加、又は減少することを特徴とする画像処理を用いたクリーンルーム送風量制御システム。
【請求項 2】
前記人の移動量は、現在の画像データと、その直前の画像データとの人の位置の画像データ差からその直後の人の位置を算出して、人の移動方向及び移動量を予測することを含むことを特徴とする請求項1記載の画像処理を用いたクリーンルーム送風量制御システム。」

(2)「【0043】
実施例1では、データ差の範囲を人の部位、例えば顔の領域抽出処理を実行し、顔の位置及び床面の位置から人の動作情報を取得した。
【0044】
画像データの顔の大小から、カメラ位置から人の顔領域までの距離を算出し、人の移動量、その距離、移動速度の移動情報を取得した。」

4 周知例2の記載
周知例2には、以下の記載がある。
(1)「【請求項 1】
室内熱交換器及び室内ファンを収納し室内の空気を吸込み空調された空気を吹出口から前記室内へ吹出す室内機と、前記室内機に設けられもしくは前記室内に配置されて前記室内の空調を行う空間の画像情報を取り込み空気を吹出す方向及び距離を検出する画像センサーと、前記吹出口に設けられ駆動機構により前記吹出口から吹出される空気の風向を左右方向及び上下方向に位置を変更する複数のフラップと、前記フラップを独立に駆動して複数のフラップの位置を前記画像センサーが検出した空気を吹出す方向及び距離に応じそれぞれ制御する制御装置と、を備え、異なる風向きを有する複数の気流生成を可能とすることを特徴とする空気調和装置。」

(2)「【0020】
以下に、図2、3で説明した画像センサーからの画像情報にて、図4乃至図12のような気流制御を行う構造、動作を図13以下にて説明する。図13はエアコンの室内機1とそのエアコンが空調を行う空間の関係を説明する図(a)と、所定の位置に固定された画像センサー2の撮影する画像情報と、この画像センサーが取りこむ画像情報の一例を説明する図(b)を示す。・・・記憶された画像と新たに検出されて取り込まれた画像との比較からどの領域もしくはどの特定位置に空調を行う空調対象が存在するかの検出を行うことになるがこの検出した空調対象である例えば人物までの方向及び距離を求め、前記フラップの空気を吹出す方向や室内ファンの回転速度などを制御する。
【0021】
図2、または図3のシステムにおいて、画像センサーからの画像情報により人の動きを検出して人の位置を分割されたどのエリアの方向に存在するか、どのくらいの距離かなどを推定する。短い時間を置いて継続しあるいは連続するなどの様に続けて撮影を行う場合の画像認識で動きを検出する一般的な方法を使用すれば良く、他の方法として移動物体の大きさでもおおよその距離が検出できるが、平均身長などのデータやあらかじめ設定しマイコンに記憶させておいた大きさとの画像データである比較データにより人間として、あるいは男性や女性の区分けなど特定の人として識別しても良いし、移動物体が記憶された設定画像のどの領域、あるいはどの特定点の周囲にあるかを判断しても良い。また顔の画像を記憶させておき、顔の画像と身長との比較、例えばおおよそ何頭身かでも距離の推定が可能である。この様に領域や特定点の距離をあらかじめ設定しておけば動きの存在する位置に対し、或いは取り込んだ画像情報に対し、その方向、距離も簡単に設定できる。図13は画像データから人の位置を9分割されたエリア領域イ-リにて推定する一例である。図13(a)は、エアコンと内蔵されたカメラ、部屋の鳥瞰図、図13(b)は、カメラの画像データから見た部屋の様子である。・・・いずれにしろ画像で検出しあらかじめ記憶された画像と比較し、或いは設定してあるデータと比較するので領域では無く各特定な点としても精度良く方向、距離の検出が可能である。且つ、画像情報のためフレキシブルに個人の認識、人の動きや形状の認識等の処理が行え、誰が座っている、あるいは立っているまで、更には人数の検出まで行える。」

第5 引用文献1に記載された発明(引用発明)
1 上記「第4」1(1)によれば、引用文献1には、「研究所の換気フード(fume hood)に関し、特に換気フードの密閉に影響を及ぼす1つ以上の条件の変化に応答して換気フードの面速度を変化させるための方法および装置」に関し、「換気フードは、汚染物質を捕捉してフード作業領域およびその周囲における空気および汚染物質をオペレータから遠ざける排気ブロワの使用により研究所内へこれら汚染物質が流出することを阻止」し、「フードの開口を通過する空気流の速度は、面速度(face velocity)と呼ばれる」との記載があるから、これらの記載から、空気流がフードの開口を通過し、排気ブロワにより排気する換気フード(fume hood)という事項が記載されているといえる。

2 同(2)によれば、引用文献1には「本発明は、面速度制御を有する換気フードに使用されるコントローラを提供する」及び「面速度の制御は、換気フードを排気するブロアに対する速度制御を含み、即ち、換気フードからの流出を直接的に変化させる」との記載があるから、これらの記載から、換気フードが、排気ブロアを制御するコントローラを有するという事項が記載されているといえる。

3 同(2)によれば、引用文献1には「コントローラは、少なくとも1つの拘束状態に影響を及ぼす条件を検出するための検出器を有し、この条件とは、(a)換気フードの予め定めた領域内における人の存在あるいは接近、(b)換気フードの予め定めた領域内の、人による運動あるいは通風または他の条件の結果としての動き、および(または)(c)フードの前面から予め定めた距離内の装置または材料の存在である」との記載があるから、この記載から、コントローラは、換気フードの予め定めた領域内における人の存在、接近、運動を検出する検出器を有するという事項が記載されているといえる。

4 同(2)によれば、引用文献1には「拘束状態に影響を及ぼす条件のある選択された変化を検出する検出器に応答して、面速度の制御は変化した拘束状態の条件に対して適切な予め選定された速度に対応する換気フードの面速度の変化を生じる。この変化とは、存在する条件に影響を及ぼす拘束状態を含むフード内のフュームの拘束を保証するに充分なレベルへの換気フードの面速度の増加であり」との記載があるから、この記載から、検出器が検出するとフード内のフュームの拘束を保証するに充分なレベルに換気フードの面速度を増加させるという事項が記載されているといえる。

5 同(2)の「換気フードが、少なくとも1つの運動可能サッシュにより変化する程度で覆われる開口を有する場合、選択される体積は、通常はサッシュの位置と関連して保持される」との記載、同(3)の「本システムは、米国特許第4,528,898号および同第4,706,553号に記載される如き一定の面速度制御システムと組合わせて用いられる時・・・流量コントローラ32は、・・・サッシュ位置に基く一定の面速度を維持する可変体積制御システムからなる」との記載及び同(7)図8のグラフの記載より看取できる、サッシュの高さ又は開口面積に応じて空気流量を増減させて面速度を維持するとの事項から、引用文献1には、コントローラはサッシュ位置に基づく一定の面速度を維持する可変体積制御を行うという事項が記載されているといえる。

6 同(2)の「換気フードが、少なくとも1つの運動可能サッシュにより変化する程度で覆われる開口を有する場合、選択される体積は、通常はサッシュの位置と関連して保持される。この選択される保持体積は、拘束状態に影響を及ぼす条件における変化の検出に応答して変化させられる」との記載、同(6)の「この事例においては、フードは、本例では解放面積の20%で生じる最小流量の点149で交差する線131と105により示される70フィート/分(約21m/分)の待機(スタンバイ)面速度で動作させられる。擾乱が生じると、面速度は増加して、線130および104により図8に概略を示した流量とサッシュ位置の関係カーブを生じる」との記載及び同(7)図8のグラフから看取できる、サッシュの高さ又は開口面積にかかわらず、同(6)に記載の「擾乱が生じると面速度は増加」が行われるという事項から、引用文献1には、拘束状態に影響を及ぼす条件における変化の検出に応じて、サッシュの位置にかかわらず面速度を増加させるという事項が記載されているといえる。

7 上記1?6によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「空気流がフードの開口を通過し、排気ブロワにより排気する換気フード(fume hood)であって、
換気フードは、排気ブロアを制御するコントローラを有し、
コントローラはサッシュ位置に基づく一定の面速度を維持する可変体積制御を行い、
コントローラは、換気フードの予め定めた領域内における人の存在、接近、運動を検出する検出器を有し、
検出器が検出すると、サッシュの位置にかかわらず、フード内のフュームの拘束を保証するに充分なレベルに換気フードの面速度を増加させる、
換気フード(fume hood)。」

第6 本願発明と引用発明との対比・検討(進歩性欠如についての判断)
1 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「換気フード(fume hood)」は、本願明細書【0003】の「このようなドラフトチャンバーとしては、一般的に「低風量ドラフトチャンバー」あるいは「低風量フュームフード」と呼称されている」との記載からも明らかなように、一般的に「ドラフトチャンバー」といわれるものであるから、引用発明における「フード開口を通過する空気流を排気ブロワにより排気する機能を有する、換気フード(fume hood)」は、本願発明における「開口部を通じて空気を作業空間に送り込んで前記作業空間内から外部に排気する機能を有し」た「ドラフトチャンバー」に相当するといえる。

(2)引用発明における「サッシュ位置に基く一定の面速度を維持する可変体積制御」は、上記「第4」1(2)、(3)、(6)、(7)に記載されているように、サッシュの位置に基いて空気流量を変化させて、面速度を維持するシステムであるから、本願発明における「前記作業面開口高さの増減により排気風量を増減させることが可能とされる」「VAV制御方式」に相当するといえる。

(3)引用発明における「換気フードの予め定めた領域内における人の存在、接近、運動を検出する検出器」は、上記「第4」1(2)、(3)に記載されているように、人間の運動により発生するフードの拘束状態に影響を及ぼす乱れを検出するためのものであり、本願発明における「ドラフトチャンバーの周辺に発生した外乱を検知するために」、「ドラフトチャンバーが設置されている部屋内において動作する物体」を検知する「外乱検知手段」に相当するといえる。

(4)引用発明において、換気フードの面速度を増加させる手段は、コントローラにより制御された排気ブロアであるので、引用発明における「検出器が検出すると、サッシュの位置にかかわらずフード内のフュームの拘束を保証するに充分なレベルに換気フードの面速度を増加させる」「コントローラ」は、本願発明における「前記外乱検知手段による前記外乱の検知に基づいて」「制御することにより」、「前記作業面開口高さによらず、前記作業空間から外部に排気する排気風量を増加させる制御部」に相当するといえる。

(5)そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「開口部を通じて空気を作業空間に送り込んで前記作業空間内から外部に排気する機能を有し、
VAV制御方式のドラフトチャンバーであって、
前記ドラフトチャンバーは、前記作業面開口高さの増減により排気風量を増減させることが可能とされると共に、
前記ドラフトチャンバーの周辺に発生した外乱を検知するために、前記ドラフトチャンバーが設置されている部屋内において動作する物体を検知する外乱検知手段と、
前記外乱検知手段による前記外乱の検知に基づいて制御することにより、前記作業面開口高さによらず、前記作業空間から外部に排気する排気風量を増加させる制御部と、
を備えることを特徴とするドラフトチャンバー。」

<相違点1>
本願発明は「前記外乱検知手段による前記外乱の検知に基づいて」、「予め制御することにより、前記作業面開口高さによらず、前記作業空間から外部に排気する排気風量を増加させる制御部」を備えるものであるのに対し、引用発明は「検出器が検出すると、サッシュの位置にかかわらずフード内のフュームの拘束を保証するに充分なレベルに換気フードの面速度を増加させる」、「コントローラ」を備えるものであり、当該「予め」という風量増加の制御タイミングについての明示がない点。

<相違点2>
本願発明は「前記開口部の作業面開口高さの増減に関わらず、CAV制御方式を組み込んだ排気風量が一定の定風量のドラフトチャンバーの、制御風速を規定する法規制の適用に基づいて標準化された標準風量よりも40?60%減の、少ない風量で稼働可能」な「低風量のドラフトチャンバー」であるのに対し、引用発明は、上記「第4」1(1)、(6)、(7)等の記載から、本願発明における「標準風量」相当で稼働している可能性が高く、「低風量ドラフトチャンバー」ではない点。

<相違点3>
本願発明は「前記作業空間に前記空気を送り込んで排気させる空気送り込み排気手段」を有し、「外乱の検知」に基いて当該手段を制御するのに対し、引用発明は「排気ブロワ」により排気流量を制御しており、「排気ブロワ」が生み出す気流によって、フード開口を通じて換気フード内に空気を送り込んでいるものの、本願明細書【0032】、【0033】に記載されているような、低風量化のためのプッシュエアーを生み出す手段ではない点。

<相違点4>
本願発明は、外乱検知手段が「動作する物体や形状を識別する撮像手段」であるのに対し、引用発明は「検出器」として撮像手段を用いていない点。

2 相違点についての検討
(1) 相違点1について
上記「外乱の検知に基いて」、「予め」制御するという風量増加の制御タイミングについて、当該「予め」とは、何に対して「予め」であるのか判然としないが、本願明細書【0016】、【0062】、【0096】、【0098】の記載から、「内部ガスの漏洩が発生する前」を意味するものと解される。
一方、上記「第4」1(2)、(3)には、拘束状態に影響を及ぼす条件の検出時にほとんど即座に迅速に応答し、良好な換気フード動作をもたらフード内のフュームの拘束を保証するに充分なレベルへの換気フードの面速度の増加を行うことが記載されており、引用発明における「検出器が検出すると、サッシュの位置にかかわらずフード内のフュームの拘束を保証するに充分なレベルに換気フードの面速度を増加させる」制御は、実質、本願発明における「外乱の検知」に基いて「内部ガスの漏洩発生する前」に「前記作業空間から外部に排気する排気風量を増加」する制御を行うことに相当するといえ、また、そのような制御が「撮像手段」を用いた検知手段でなければできないと解する合理的な理由もない。
したがって、相違点1は、実質的な相違点ではなく、仮に、相違するとしても、当該引用文献1の上記記載事項に基いて、「予め」面速度を増加する制御を行うことは、当業者が容易に想到し得るものであるといえる。

(2) 相違点2、3について
ア 上記「第4」2(4)、(5)、(8)によれば、引用文献2には、「fan(ファン)」を備えた「supply air plenum(供給空気プレナム)」によって、「層流を有する新鮮な空気をフュームフードに供給」するプッシュプルシステムにより、「フードから大量の空気を排出する必要性を大幅に低減」し、「フードの封じ込め性能を低下させることなく」、「従来のフュームフードから排出されるものの」「70%までの排気流量低減が可能」であり、例として「約30?50%」排気量(すなわち約50?70%減)である技術事項が記載されているといえる。

イ ここで、上記アにおける「fan(ファン)」を備えた「supply air plenum(供給空気プレナム)」は、プッシュエアーをフード内に空気を送り込むものであり、その気流が排気に寄与することは明らかであるから、本願発明における「前記作業空間に前記空気を送り込んで排気させる空気送り込み排気手段」に相当するものといえる。

ウ また、上記「第4」2(1)、(2)によれば、引用文献2における「従来のフュームフード」は、その排気及びその開放した面領域、取り扱う材料に基づき政府および産業界の規格によって面速度が規定されるものであり、実質、本願発明における「前記開口部の作業面開口高さの増減に関わらず、CAV制御方式を組み込んだ排気風量が一定の定風量のドラフトチャンバーの、制御風速を規定する法規制の適用に基づいて標準化された標準風量」相当で稼働するものといえるので、上記アにおける「従来のフュームフードから排出されるものの」「70%までの排気流量低減が可能」であり、例として「約30?50%」排気量であるとの技術的事項は、本願発明における「前記開口部の作業面開口高さの増減に関わらず、CAV制御方式を組み込んだ排気風量が一定の定風量のドラフトチャンバーの、制御風速を規定する法規制の適用に基づいて標準化された標準風量よりも40?60%減の、少ない風量」に相当するか、もしくは「50?60%減」の範囲において重複する。

エ そして、上記「第4」1(1)、(3)の記載及び上記「第4」2(3)、(4)、(6)、(8)記載にあるように、引用文献1と引用文献2は、換気フードにおける排気量を低減し、運転コストを下げるという点で、技術分野及び課題が共通している。

オ したがって、引用発明において、上記アにおける引用文献2に記載された技術的事項を採用し、相違点2、3に係る本願発明の構成を備えるものとすることは当業者が容易に想到し得るものである。
その際、上記「第4」2(4)のとおり、上記「fan(ファン)」を備えた「supply air plenum(供給空気プレナム)」が送出するプッシュエアーは汚染物質の漏出防止に寄与するものであり、面速度又は流量に直接影響を及ぼすものであるので、引用発明における検出器が検出した場合の拘束を保証するための流量コントローラ制御において、当該「fan(ファン)」を制御すべきことは、当業者であれば当然に想起し得るものである。

カ なお、相違点2、3に係る本願発明の構成の効果について、平成30年2月13日付け意見書には「作業面開口高さの増減により排気風量を増減させるVAV制御(可変風量制御)方式を組み込んだ低風量ドラフトチャンバーにおいて、低風速下で発生しやすい外乱等による作業空間内の雰囲気の外部への漏れを防ぐことができるようにしたものであって、これにより、使用する作業者や設置されている部屋内に居る作業者に対して、常に安全な状態を保ちつつ、省エネルギー化とガスの漏洩濃度の低減の両立が図れるといった、引用文献1からは得られない格別の作用効果を奏するものであります。」と主張されている。
しかしながら、引用発明は、上記「第4」1(1)、(6)等の記載から、本願発明における「標準風量」相当で稼働している可能性が高いが、そのような標準風量の換気フードにおいても、「人の存在、接近、運動」が、フード内のフュームの拘束状態に影響を及ぼすのであるから、さらなるコスト削減のために、上記アにおける引用文献2に記載された技術的事項を採用して低風量化した換気フードにおいては、なおさら「人の存在、接近、運動」の影響を受けるであろうこと、及び、引用発明の「前記検出器が検出した場合に、サッシュの位置にかかわらず、面速度を増加させる」ことで、当該影響を低減できるであろうことは、当然当業者の予測し得る範囲内のことであり、格別の作用効果とまでは認められない。
したがって、当該主張は採用できない。

(3) 相違点4について
ア はじめに、周知技術について整理しておく。
(ア)上記「第4」3(1)のとおり、周知例1には、監視カメラの撮像から画像処理を用いた画像データへ変換を行うことが記載され、当該「監視カメラ」は撮像手段であるといえる。
また、上記「第4」4(2)のとおり、周知例2には画像センサーに関する記載があり、当該「画像センサー」は「撮像素子」に相当するので、撮像手段であるといえる。

(イ)このように、「撮像手段」自体は、本願出願日当時において当業者に周知の技術であるといえる。
そして、上記「第4」3(1)の「所定時間間隔毎に、監視カメラの撮像から画像処理を用いた画像データへ変換した後、画像データから人の移動動作を検出し、移動動作の変化から人の移動量を算出し、移動量に対応する送風量を算出」(請求項1)及び「現在の画像データと、その直前の画像データとの人の位置の画像データ差からその直後の人の位置を算出して、人の移動方向及び移動量を予測する」(請求項2)なる記載、同3(2)の「【0044】画像データの顔の大小から、カメラ位置から人の顔領域までの距離を算出し、人の移動量、その距離、移動速度の移動情報を取得した」なる記載、及び、同4(3)の「画像センサーからの画像情報により人の動きを検出して人の位置を分割されたどのエリアの方向に存在するか、どのくらいの距離かなどを推定する。短い時間を置いて継続しあるいは連続するなどの様に続けて撮影を行う場合の画像認識で動きを検出する一般的な方法を使用すれば良く」なる記載に照らすと、所定時間毎又は連続的に撮像手段で撮像した画像を解析し、対象領域における人の存在、位置、動き、移動方向や移動速度の情報を得ること、更には、対象機器の制御、例えば風量の制御を行うことも、本願出願日当時において当業者に周知の技術であるといえる。

(ウ)さらに、上記「第4」3(2)【0043】、【0044】及び同4(2)【0021】には、撮像手段からの画像を解析することで、顔の特定や大小を識別できることが、また、同4(2)【0021】には、人の動きや形状の認識等の処理が行えることが、それぞれ記載されているから、撮像手段からの画像を解析することで、「形状」を識別できることも、本願出願日当時において当業者に周知の技術であるということができる。

イ 引用発明において、「検出器」は「換気フードの予め定めた領域内における人の存在、接近、運動を検出する」ものであり、更に、上記「第4」1(4)によれば、引用文献1には「トランスジューサ35および人間/運動検出回路34は、フード前方のユーザ/研究者の存在および運動を検出するように一緒に働く。前記トランスジューサはまた、フード前方あるいはその付近における著しい空気の運動または乱流を検出することもできる。空気の運動またはユーザの近接/運動が検出される時、このトランスジューサは面速度設定点変更回路33を付勢する。この回路は、多くのあり得る方法の1つで流量コントローラ32に対して働くが、一般にその面速度および(または)体積流の設定点を増加するように働く」及び「ドップラ運動検出を含む完全な能動型システムが図4に示される・・・能動型システムは、人間の存在または運動を検出する。研究者が何処におり、どれだけの早さで運動しているかを示す運動が、マイクロ波および超音波に対するドップラ効果により検出される。研究者がある特定の場所にあるかどうかを示す存在は、赤外線ビームにより検出される。・・・次に、面速度は、研究者が換気フードに近づく時に増加され、また研究者が換気フードから遠去かる時には減少される」との記載があり、この記載から、当該「検出器」はフード前方のユーザ/研究者のが何処におり、どれだけの早さで運動しているか、換気フードに近づくのか遠ざかるのかを検出するという事項が記載されているといえる。
上記ア(ア)?(ウ)の周知技術に照らすと、引用発明において、換気フードの予め定めた領域内における人の存在、接近、運動、更に、何処におり、どれだけの早さで運動し、換気フードに近づくのか遠ざかるのかをを検出する検出器として、撮像手段を採用し、上記相違点4に係る本願発明の構成を備えるものとすることは、単なる周知技術の付加または置換に過ぎず、当業者が容易に想到し得るものというべきである。
また、撮像手段を採用することによる固有の効果について、本願明細書に明示的な記載は見当たらないが、例えば、撮像手段により簡単に、精度良く、フレキシブルに人の動きや位置を認識できるという効果は、画像の特性上、撮像手段が当然に有する効果に過ぎないものである(上記「第4」4(2)【0021】参照)。

ウ なお、相違点4に係る本願発明の構成について、令和2年7月27日に提出された意見書には、概略、次の主張がなされているので、ここで検討をする。
(ア)主張の概要
(主張1)本願発明によれば、低風量のドラフトチャンバーが設置されている部屋内において、撮像手段により動体をリアルタイムで光学的に検出できるようにしたことによって、該チャンバーの周辺で外乱気流が発生したか否かをより正確に検知できるようになり、この結果、外乱の検知時には、該チャンバーの作業開口部の付近での気流の乱れやその強度を容易に予測することが可能となり、よって、予め該チャンバーからの排気風量を増加させる予測制御が可能となり、外乱により内部ガスが部屋内に漏洩するのを未然に防止できる。
(主張2)撮像手段としてCCD(電荷結合素子)カメラのような小型カメラを適用し、撮影した小型カメラの画像を解析し、低風量ドラフトチャンバーの周辺の動体や形状をフレームごとに識別することは出願当時において、当たり前の技術ではなく、検出した動体の位置を認識し、さらには移動方向・移動距離から該チャンバーの作業開口部での外乱の発生やその大きさを予測してVAV(可変風量制御)の制御量を予めコントロールできるようにした本願発明は、特有の技術的特徴を備えたものである。

(イ)主張1について
主張1のうち、チャンバーの作業開口部の付近での気流の乱れやその強度を容易に予測することが可能となり、よって、予め該チャンバーからの排気風量を増加させる予測制御が可能となり、外乱により内部ガスが部屋内に漏洩するのを未然に防止できるという効果について、引用発明においても「換気フードの予め定めた領域内における人の存在、接近、運動を検出する検出器」により、上記イのとおり、更に、人が何処におり(位置)、どれだけの早さで(速度)運動し、換気フードに近づくのか遠ざかるのか(移動方向)を検出するものであり、チャンバーの作業開口部の付近での気流の乱れやその強度を容易に予測することが可能であるといえ、また、「予め」の制御により外乱により内部ガスが部屋内に漏洩するのを未然に防止できることについては、上記2で述べたとおり、引用発明においても発現し得るものであり、撮像手段の使用に限られるものではない。
撮像手段を使用することで、動体をリアルタイムで光学的に正確に検知できるという効果は確かに生じ得るものの、当該「リアルタイム」な検知は上記「第4」1(4)、(5)に挙げられたセンサーでも可能であるし、また、上記ア(イ)、(ウ)及びイに示したとおり、連続的に撮像する撮像手段により、簡単に、精度良く、フレキシブルに人の動きや位置を認識できることは、本願出願日当時において当業者に周知の技術であり、当該効果が格別顕著なものであるとはいえない。
したがって、当該主張1は採用できない。

(ウ)主張2について
ドラフトチャンバーの周辺の動体(動作する物体)を検出し、検出した動体の位置を認識し、さらには移動方向・移動距離から該チャンバーの作業開口部での外乱の発生やその大きさを予測して風量の制御量を予めコントロールするという技術的特徴について、本願明細書の発明の詳細な説明には、「移動方向・移動距離」を測定すること及びその測定結果をどのように用いて「外乱の発生やその大きさを予測して風量の制御量を予めコントロール」するのかについて何ら記載はなく、採用できるものではないが、引用発明においても「換気フードの予め定めた領域内における人の存在、接近、運動を検出する検出器を備え」、上記イのとおり、検出器は更に、人が何処におり(位置)、どれだけの早さで(速度)運動し、換気フードに近づくのか遠ざかるのか(移動方向)を検出していることから、外乱の発生やその大きさを予測し得るものといえ、「前記検出器が検出した場合に、サッシュの位置にかかわらず、面速度を増加させ」ており、同様の技術的特徴を有するものといえる。
また、撮像手段としてCCD(電荷結合素子)カメラのような小型カメラを適用し、撮影した小型カメラの画像を解析し、低風量ドラフトチャンバーの周辺の動体や形状をフレームごとに識別するという技術的特徴について、本願明細書の発明の詳細な説明には、撮影した小型カメラの画像を解析して動体や形状をフレームごとに識別することにについて何ら記載はなく、採用できるものではないが、上記ア(イ)、(ウ)で示したとおり所定時間毎または連続的に撮像手段で撮像した画像を解析し、対象領域における人の存在、位置、動き、形状、移動方向や移動速度の情報を得ること、更には、対象機器の制御、例えば風量の制御を行うことは、本願出願日当時において当業者に周知の技術であり、その適用により、格別顕著な効果を奏するものとはいえない。
したがって、当該主張2は採用できない。

(4)相違点についての検討のまとめ
上記のとおり、相違点1?4に係る本件発明の構成は、いずれも容易想到の事項であり、これら相乗的な効果をもたらすとも認められない。

3 小括
以上によれば、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1、2に記載された事項、更には本願出願日当時における周知技術に照らして、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性が欠如するものと認められる。

第7 むすび
以上の検討のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明並びに引用文献1及び2に記載された事項に基いて、周知技術を熟知するその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-09-15 
結審通知日 2020-09-23 
審決日 2020-10-06 
出願番号 特願2014-23386(P2014-23386)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B01L)
P 1 8・ 537- WZ (B01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河野 隆一朗  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 金 公彦
村岡 一磨
発明の名称 ドラフトチャンバー  
代理人 三好 秀和  

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