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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1368826 |
審判番号 | 不服2019-8731 |
総通号数 | 253 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-30 |
確定日 | 2020-12-04 |
事件の表示 | 特願2016-49049号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-107127号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年11月17日に出願した特願2014-233180号の一部を平成28年3月12日に新たな特許出願(特願2016-49049号)としたものであって、平成30年9月27日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月3日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年3月27日付け(送達日:同年4月2日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年6月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、令和2年2月18日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願請求項1に係る発明 令和2年4月27日付け手続補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、当該補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下「本願発明」という。A?Mは分説のため当審にて付与した。)。 (本願発明) 「【請求項1】 A 遊技領域に形成され、開閉可能に構成された大入賞手段と、 B 当りに関する抽選を実行する抽選手段と、 C 前記抽選手段による抽選結果が当りである場合、大入賞手段を所定の開閉パターンで開閉動作させる当り遊技を実行制御する特別遊技制御手段と、 D 前記大入賞手段に入球した遊技球を計数する入球数計数手段と、 E 遊技に関連する演出を実行する演出手段と、 F 前記演出手段を制御する演出制御手段と、 G 遊技動作の異常が生じたか否かを判定可能に構成された異常判定手段と、 H を備える弾球遊技機であって、 G-1 前記異常判定手段は、 G-2 少なくとも前記入球数計数手段の計数に基づかない遊技動作の異常が生じたか否かを判定可能に構成され、 I 前記特別遊技制御手段は、前記入球数計数手段により計数された遊技球数が規定入球数に達するまで前記大入賞手段を開放状態に制御可能に構成され、 J 前記演出手段は、音による音演出を実行可能な第1の演出手段と、前記音演出とは異なる演出を実行可能な第2の演出手段とを少なくとも含み、 K 前記演出制御手段は、 K-1 前記大入賞手段に遊技球が入球した場合、当該入球が発生した旨を報知する入賞演出制御手段と、 K-2 前記異常判定手段により前記入球数計数手段の計数に基づかない遊技動作の異常が生じたと判定された場合、当該異常が生じた旨を前記第1の演出手段を利用して報知するエラー報知を実行制御する異常報知制御手段と、を含み、 L 前記入賞演出制御手段は、 L-1 前記エラー報知の非実行中に前記入球数計数手段による計数値が規定数を超えた場合には、前記第1の演出手段と前記第2の演出手段とを利用して特定入賞演出を実行制御し、 L-2 前記エラー報知の実行中に前記入球数計数手段による計数値が規定数を超えた場合には、前記第1の演出手段を利用せずに前記第2の演出手段を利用して前記特定入賞演出を実行制御するように構成され、 L-3 前記エラー報知の非実行中の前記第2の演出手段による前記特定入賞演出の演出態様と、前記エラー報知の実行中の前記第2の演出手段による前記特定入賞演出の演出態様とは、共通の演出態様であり、 L-4 前記エラー報知とは異なる特定エラー報知を実行する場合には、前記第2の演出手段による前記特定入賞演出を制限する、 M ことを特徴とする弾球遊技機。」 第3 拒絶の理由 令和2年2月18日付けの当審における拒絶の理由の概要は、以下のとおりのものである。 1.(進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ●理由1(進歩性)について ・請求項 1 ・引用文献等 1-4 <引用文献等一覧> 1.特開2013-208221号公報 2.特開2004-187797号公報 3.特開2003-62205号公報 4.特開2013-9717号公報 第4 引用文献に記載された事項 1 引用文献1 当審における拒絶の理由(令和2年2月18日付け拒絶理由通知書)に引用文献1として引用された本願の原出願の出願前に頒布された特開2013-208221号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (1)「【0783】 <全体構成> まず、図118を用いて、本発明の第4の実施の形態に係るパチンコ機100の全体構成について説明する。なお、同図はパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。 ・・・ 【0786】 球貯留皿付扉108は、パチンコ機100の前面において本体104の下側に対して、ロック機能付きで且つ開閉自在となるように装着された扉部材である。球貯留皿付扉108は、複数の遊技球(以下、単に「球」と称する場合がある)が貯留可能で、且つ発射装置へと遊技球を案内する扉側球通路ユニットが設けられている上皿126と、上皿126に貯留しきれない遊技球を貯留する下皿128と、遊技者の操作によって上皿126に貯留された遊技球を下皿128へと排出させる球抜ボタン130と、遊技者の操作によって下皿128に貯留された遊技球を遊技球収集容器(俗称、ドル箱)へと排出させる球排出レバー132と、遊技者の操作によって発射装置110へと案内された遊技球を遊技盤200の遊技領域124へと打ち出す球発射ハンドル134と、遊技者の操作によって各種演出装置206の演出態様に変化を与えるチャンスボタン136と、チャンスボタン136を発光させるチャンスボタンランプ138と、を備える。また、下皿128が満タンであることを検出する不図示の下皿満タンセンサを備える。 ・・・ 【0799】 また、遊技領域124の下方領域には、所定の球進入口、例えば、一般入賞口226と、普図始動口228と、第1特図始動口230と、第2特図始動口232と、第1可変入賞口234と、第2可変入賞口235を配設している。」 (2)「【0804】 第1可変入賞口234と第2可変入賞口235は、大入賞口またはアタッカーと呼ばれ、本実施形態では遊技盤200の中央部下方と右下にそれぞれ1つずつ配設している。これらの第1可変入賞口234と第2可変入賞口235は同一構造からなり、開閉自在な扉部材234a、235aを備え、扉部材234a、235aの閉鎖中は球の入球が不可能であり、特図変動遊技に当選して特図表示装置が大当たり図柄を停止表示した場合に扉部材234a、235aが所定の時間間隔(例えば、開放時間29秒、閉鎖時間1.5秒)、所定の回数(例えば15回)で開閉する。 【0805】 本実施形態では、特図1変動遊技に当選した場合には、第1可変入賞口234の扉部材234aを所定の時間間隔、所定の回数で開閉し、特図2変動遊技に当選した場合には、第2可変入賞口235の扉部材235aを所定の時間間隔、所定の回数で開閉する。また、第1可変入賞口234または第2可変入賞口235への入球を所定の球検出センサが検出した場合、払出装置152を駆動し、所定の個数(例えば、15個)の球を賞球として上皿126に排出する。なお、第1可変入賞口234と第2可変入賞口235に入球した球は、パチンコ機100の裏側に誘導した後、遊技島側に排出する。」 (3)「【0814】 また、基本回路302には、水晶発振器316aが出力するクロック信号を受信する度に0?65535の範囲で数値を変動させるハードウェア乱数カウンタとして使用しているカウンタ回路318(この回路には2つのカウンタを内蔵しているものとする)と、所定の球検出センサ、例えば各始動口、入賞口、可変入賞口を通過する遊技球を検出するセンサや、前面枠扉開放センサや内枠開放センサや下皿満タンセンサを含む各種センサ320が出力する信号を受信し、増幅結果や基準電圧との比較結果をカウンタ回路318および基本回路302に出力するためのセンサ回路322と、所定の図柄表示装置、例えば第1特図表示装置212や第2特図表示装置214の表示制御を行うための駆動回路324と、所定の図柄表示装置、例えば普図表示装置210の表示制御を行うための駆動回路326と、各種状態表示部328(例えば、普図保留ランプ216、第1特図保留ランプ218、第2特図保留ランプ220、高確中ランプ222等)の表示制御を行うための駆動回路330と、所定の可動部材、例えば第2特図始動口232の羽根部材232a、第1可変入賞口234の扉部材234a、第2可変入賞口235の扉部材235a等を開閉駆動する各種ソレノイド332を制御するための駆動回路334を接続している。 ・・・ 【0821】 また、基本回路402には、スピーカ120(およびアンプ)の制御を行うための音源IC416と、各種ランプ418(例えば、チャンスボタンランプ138)の制御を行うための駆動回路420と、遮蔽装置246の駆動制御を行うための駆動回路432と、遮蔽装置246の現在位置を検出する遮蔽装置センサ430と、チャンスボタン136の押下を検出するチャンスボタン検出センサ426と、遮蔽装置センサ430やチャンスボタン検出センサ426からの検出信号を基本回路402に出力するセンサ回路428と、CPU404からの信号に基づいてROM406に記憶された画像データ等を読み出してVRAM436のワークエリアを使用して表示画像を生成して装飾図柄表示装置208に画像を表示するVDP434(ビデオ・ディスプレイ・プロセッサー)と、を接続している。 ・・・ 【0823】 また、基本回路502には、第1演出可動体224および第2演出可動体225の駆動制御を行うための駆動回路516と、第1演出可動体224および第2演出可動体225の現在位置を検出する演出可動体センサ424と、演出可動体センサ424からの検出信号を基本回路502に出力するセンサ回路518と、遊技盤用ランプ532の制御を行うための遊技盤用ランプ駆動回路530と、遊技台枠用ランプ542の制御を行うための遊技台枠用ランプ駆動回路540と、遊技盤用ランプ駆動回路530と遊技台枠用ランプ駆動回路540との間でシリアル通信による点灯制御を行うシリアル通信制御回路520と、を接続している。 ・・・ 【0838】 これらの当否判定用テーブルには、特図確変の有無(特図高確率状態または特図低確率状態)と、特図大当り判定用の抽選値データと、特図変動遊技の当否結果が対応付けされて記憶されている。主制御部300の基本回路302は、この当否判定用テーブルと、特図確変の有無と、第1特図始動口230(または第2特図始動口232)に球が入賞したことを所定の球検出センサが検出した場合に取得する特図当選乱数値に基づいて、特図1変動遊技(または特図2変動遊技)の当否結果を決定する大当り判定を行う。」 (4)「【0853】 なお、本実施形態では、第1可変入賞口234は第2可変入賞口235よりも遊技球が入球し難い位置(遊技盤200の中央部下方)に配置しているため、最大開放時間0.1秒のラウンドで第1可変入賞口234に入球可能な遊技球の最大数を、第2可変入賞口235の2個よりも少ない1個としている。また、本実施形態では、第1可変入賞口234(または第2可変入賞口235)に入球した遊技球が所定の最大入球数(10個)に達したことを検出した場合には、最大開放時間が経過する前であっても、第1可変入賞口234の扉部材234a(または第2可変入賞口235の扉部材235a)を強制的に閉鎖するように構成している。」 (5)「【0886】 <主制御部タイマ割込処理> 次に、図130を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割込処理について説明する。なお、同図は主制御部タイマ割込処理の流れを示すフローチャートである。 ・・・ 【0889】 ステップS2205では、入力ポート状態更新処理を行う。この入力ポート状態更新処理では、I/O310の入力ポートを介して、上述の前面枠扉開放センサや内枠開放センサや下皿満タンセンサ、各種の球検出センサを含む各種センサ320の検出信号を入力して検出信号の有無を監視し、RAM308に各種センサ320ごとに区画して設けた信号状態記憶領域に記憶する。球検出センサの検出信号を例にして説明すれば、前々回のタイマ割込処理(約4ms前)で検出した各々の球検出センサの検出信号の有無の情報を、RAM308に各々の球検出センサごとに区画して設けた前回検出信号記憶領域から読み出し、この情報をRAM308に各々の球検出センサごとに区画して設けた前々回検出信号記憶領域に記憶し、前回のタイマ割込処理(約2ms前)で検出した各々の球検出センサの検出信号の有無の情報を、RAM308に各々の球検出センサごとに区画して設けた今回検出信号記憶領域から読み出し、この情報を上述の前回検出信号記憶領域に記憶する。 また、今回検出した各々の球検出センサの検出信号を、上述の今回検出信号記憶領域に記憶する。 ・・・ 【0914】 ステップS2233では、コマンド設定送信処理を行い、各種のコマンドが第1副制御部400に送信される。なお、第1副制御部400に送信する出力予定情報は例えば16ビットで構成しており、ビット15はストローブ情報(オンの場合、データをセットしていることを示す)、ビット11?14はコマンド種別(本実施形態では、基本コマンド、図柄変動開始コマンド、図柄変動停止コマンド、入賞演出開始コマンド、終了演出開始コマンド、大当りラウンド数指定コマンド、復電コマンド、FRAMクリアコマンドなどコマンドの種類を特定可能な情報)、ビット0?10はコマンドデータ(コマンド種別に対応する所定の情報)で構成している。 【0915】 具体的には、ストローブ情報は上述のコマンド送信処理でオン、オフするようにしている。また、コマンド種別が図柄変動開始コマンドの場合であればコマンドデータに、15R大当りフラグや2R大当たりフラグの値、特図確率変動フラグの値、特図関連抽選処理で選択したタイマ番号などを示す情報を含み、図柄変動停止コマンドの場合であれば、15R大当りフラグや2R大当たりフラグの値、特図確率変動フラグの値などを含み、入賞演出コマンドおよび終了演出開始コマンドの場合であれば、特図確率変動フラグの値などを含み、大当りラウンド数指定コマンドの場合であれば特図確率変動フラグの値、大当りラウンド数などを含むようにしている。コマンド種別が基本コマンドを示す場合は、コマンドデータにデバイス情報、第1特図始動口230への入賞の有無、第2特図始動口232への入賞の有無、第1可変入賞口234(または第2可変入賞口235)への入賞の有無などを含む。 【0916】 第1副制御部400では、受信した出力予定情報に含まれるコマンド種別により、主制御部300における遊技制御の変化に応じた演出制御の決定が可能になるとともに、出力予定情報に含まれているコマンドデータの情報に基づいて、演出制御内容を決定することができるようになる。 ・・・ 【0918】 ステップS2237では、デバイス監視処理を行う。このデバイス監視処理では、ステップS2205において信号状態記憶領域に記憶した各種センサの信号状態を読み出して、所定のエラーの有無、例えば前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無などを監視し、前面枠扉開放エラーまたは下皿満タンエラーを検出した場合に、第1副制御部400に送信すべき送信情報に、前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無を示すデバイス情報を設定する。また、各種ソレノイド332を駆動して第2特図始動口232や、可変入賞口234の開閉を制御したり、駆動回路324、326、330を介して普通図柄表示装置210、第1特別図柄表示装置212、第2特別図柄表示装置214、各種状態表示部328などに出力する表示データを、I/O310の出力ポートに設定する。また、払出要求数送信処理(ステップS2219)で設定した出力予定情報を出力ポート(I/O310)を介して第1副制御部400に出力する。 ・・・ 【0923】 ステップS2301では、入賞口カウンタ更新処理を行う。この入賞口カウンタ更新処理では、一般入賞口226、第1可変入賞口234、第2可変入賞口235、第1特図始動口230、第2特図始動口232、普図始動口228のいずれかに入賞があった場合に、RAM308に各入賞口ごと、あるいは各始動口ごとに設けた入賞数記憶領域の値を読み出し、1を加算して、元の入賞数記憶領域に設定する。 ・・・ 【0926】 ステップS2306では、入賞異常対応処理を行う。詳細は後述するが、この入賞異常対応処理では、パチンコ機100の外部(例えば、ホールコンピュータ)に入賞異常が発生したことを示す異常検出信号を所定時間(例えば、30秒)出力するための設定を行う。なお、異常検出信号の出力は上述の外部出力信号設定処理(ステップS2235)で行うように構成しているが、このステップS2306で出力するように構成してもよい。また、主制御部300が制御する所定の報知手段(例えば、ランプ、スピーカ、各種の表示装置、各種の可動物(第2特図始動口232、第1可変入賞口234、第2可変入賞口235も含む))で入賞異常の発生を報知してもよいし、所定の報知手段による報知(光の出力、音の出力、画像や文字の表示、可動物の移動や回転)を中断または終了することで入賞異常の発生を報知するようにしてもよい。また、第1副制御部400に入賞異常が発生したことを知らせる信号を出力するための設定を行ってもよいし、当該信号を出力する処理を行ってもよい。」 (6)「【0942】 ステップS2507では、コマンド処理を行う。第1副制御部400のCPU404は、主制御部300からコマンドを受信したか否かを判別する。ステップS2509では、演出制御処理を行う。詳細は後述するが、この演出制御処理では、例えば、ステップS2507で新たなコマンドがあった場合には、このコマンドに対応する演出データをROM406から読み出す等の処理を行い、演出データの更新が必要な場合には演出データの更新処理を行う。 ・・・ 【0944】 ステップS2515では、ステップS2509で読み出した演出データの中に音源IC416への命令がある場合には、この命令を音源IC416に出力する。ステップS2517では、ステップS2509で読み出した演出データの中に各種ランプ418への命令がある場合には、この命令を駆動回路420に出力する。 【0945】 ステップS2519では、ステップS2509で読み出した演出データの中に遮蔽装置246への命令がある場合には、この命令を駆動回路432に出力する。ステップS2521では、ステップS2509で読み出した演出データの中に第2副制御部500に送信する制御コマンドがある場合には、この制御コマンドを出力する設定を行い、ステップS2503へ戻る。」 (7)「【0970】 <第2副制御部500の処理> 次に、図139を用いて、第2副制御部500の処理について説明する。なお、同図(a)は、第2副制御部500のCPU504が実行するメイン処理のフローチャートである。同図(b)は、第2副制御部500のコマンド受信割込処理のフローチャートである。同図(c)は、第2副制御部500のタイマ割込処理のフローチャートである。 ・・・ 【0973】 ステップS3311では、第1副制御部400からの遊技盤用ランプ532や遊技台枠用ランプ542への命令がある場合には、この命令をシリアル通信制御回路520に出力する。ステップS3313では、第1副制御部400からの演出可動体224への命令がある場合には、この命令を駆動回路516に出力し、ステップS3303に戻る。」 (8)「【1052】 <オーバー入賞報知/最大入球後の1個のオーバー入賞の場合> 図158(a)は、最大入球後に1個のオーバー入賞を検出した場合の入賞報知の実行タイミングを示した図であり、同図(b)は、オーバー入賞の表示態様の一例を示した図である。ここで、同図の「扉開」は第1可変入賞口234の扉部材234a(または第2可変入賞口235の扉部材235a)が開放状態にあることを示し、「扉閉」は第1可変入賞口234の扉部材234a(または第2可変入賞口235の扉部材235a)が閉鎖状態にあることを示している。また、「検知有効」は第1可変入賞口234の扉部材234a(または第2可変入賞口235の扉部材235a)に入球した球を、球検出センサで検出することが許可されている期間(検出が有効とされている期間)を示し、「検知無効」は、当該検出が禁止されている期間(検出が無効とされている期間)を示している。また、「入賞」は、球検出センサによって入球(入賞)を検出していることを示し、「非入賞」は、当該入球(入賞)を検出をしていないことを示している。また、「入賞報知」は、オーバー入賞報知を行っていることを示し、「入賞非報知」は、当該報知を行っていないことを示している。 【1053】 この例では、大当り遊技の1R目の扉部材の開放期間中に最大入球数(10個)の入球(入賞)を検知したことを契機として1R目の遊技を終了しているが、当該遊技で1個のオーバー入賞(11個目の入球)を検出したため、同図(b)に示すようなオーバー入賞報知(この例では、装飾図柄表示装置208による画像と文字の表示と、スピーカ120による音の出力)を開始し、次の2R目の遊技の開始と同時に当該オーバー入賞報知を終了している。 【1054】 なお、この例では、オーバー入賞報知を次回のラウンドの開始と同時に終了しているが、次回のラウンド以降も継続するようにしてもよい。また、オーバー入賞報知は同図(b)に例示した態様に限定されず、例えば、上述の可動体を移動させることによって報知を行ってもよく、液晶表示装置、スピーカ、および可動体の1、複数、またはすべてを用いてもよい。また、先読み処理で特図変動遊技の保留に大当りとなる遊技が含まれていると判定した場合には、同図(c)に示すようなオーバー入賞特別報知(この例では、装飾図柄表示装置208による画像(通常のオーバー入賞報知とは異なる特殊な画像)と文字の表示と、スピーカ120による音(通常のオーバー入賞報知とは異なる特殊な音)の出力)を行ってもよい。」 (9)「図158 」 2 上記1(8)の【1052】【1053】の記載、及び上記1(9)に示した図158を参照すると、大当り遊技にオーバー入賞を検出すると装飾図柄表示装置208によって、キャラクタ画像と「すごいね!!!」との文字の表示をすると共に、スピーカ120による「キーン」や「ドーン!」なる音の出力をしていることが認定できる。 3 上記1の記載事項、及び上記2の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?mは、本願発明の記号A?Mに対応させて付した。( )内は引用文献1の対応箇所を示している。)。 (引用発明) 「a 遊技領域124の下方領域に配設され、開閉自在な扉部材234a、235aを備えた第1可変入賞口234、第2可変入賞口235と(【0799】、【0804】)、 b 特図当選乱数値に基づいて、特図1変動遊技、または特図2変動遊技の当否結果を決定する大当り判定を行う基本回路302と(【0838】)、 c 特図1変動遊技に当選した場合には、第1可変入賞口234の扉部材234aを所定の時間間隔、所定の回数で開閉駆動し、特図2変動遊技に当選した場合には、第2可変入賞口235の扉部材235aを所定の時間間隔、所定の回数で開閉駆動する各種ソレノイド332を制御する駆動回路334と(【0805】、【0814】) d 第1可変入賞口234、第2可変入賞口235に入賞があった場合に、第1可変入賞口234または第2可変入賞口235への入球を所定の球検出センサが検出した場合、払出装置152を駆動し、所定の個数(例えば、15個)の球を賞球として上皿126に排出し、RAM308に各入賞口ごとに設けた入賞数記憶領域の値を読み出し、1を加算して、元の入賞数記憶領域に設定する入賞口カウンタ更新処理を行うCPU304と(【0805】、【0886】、【0923】)、 e、f、j 主制御部300から受信したコマンドに対応する演出データの中に、スピーカ120の制御を行うための音源IC416への命令がある場合には、この命令を音源IC416に出力するCPU404と(【0821】、【0942】、【0944】)、 第1副制御部400から、第1演出可動体224への命令がある場合には、この命令を、第1演出可動体224の制御を行う駆動回路516に出力するCPU504と(【0823】、【0970】、【0973】)、 g、g-1、g-2 下皿128が満タンであることを検出する下皿満タンセンサと、下皿満タンセンサの検出信号を入力して下皿満タンセンサが出力する信号を受信し、下皿満タンエラーを検出するCPU304と(【0786】、【0886】、【0889】、【0918】)、 h を備えるパチンコ機100であって(【0783】)、 i 駆動回路334は、第1可変入賞口234、または第2可変入賞口235に入球した遊技球が所定の最大入球数(10個)に達したことを入賞口カウンタ更新処理を行うCPU304が検出した場合には、最大開放時間が経過する前であっても、第1可変入賞口234の扉部材234a、または第2可変入賞口235の扉部材235aを強制的に閉鎖するように構成し(【0805】、【0814】、【0853】、【0886】、【0923】)、 k、k-2 主制御部300のCPU304は、下皿満タンエラーを検出した場合に、第1副制御部400に送信すべき送信情報に、下皿満タンエラーの有無を示すデバイス情報を設定し、デバイス情報はコマンドデータに含まれ、第1副制御部400に送信するコマンドは、ストローブ情報、コマンド種別及びコマンドデータで構成され、第1副制御部400のCPU404は、主制御部300からコマンドを受信し、コマンドデータの情報に基づいて、演出制御内容を決定し、コマンドに対応する演出データをROM406から読み出す等の処理を行い、演出データの中にスピーカ120の制御を行うための音源IC416への命令がある場合には、この命令を音源IC416に出力し、演出データの中に各種ランプ418への命令がある場合には、この命令を駆動回路420に出力し、演出データの中に遮蔽装置246への命令がある場合には、この命令を駆動回路432に出力し、演出データの中に第2副制御部500に送信する制御コマンドがある場合には、この制御コマンドを出力し、第2副制御部500のCPU504は、第1副制御部400からの演出可動体224への命令がある場合には、この命令を駆動回路516に出力し(【0886】、【0914】-【0915】、【0918】、【0942】、【0944】、【0945】、【0973】)、 l、l-1、l-2 CPU404、504は、第1可変入賞口234、または第2可変入賞口235に入球した遊技球が所定の最大入球数に達し、最大入球後にオーバー入賞を検出した場合、オーバー入賞報知として、装飾図柄表示装置208によって、キャラクタ画像と「すごいね!!!」との文字の表示をすると共に、スピーカ120による「キーン」や「ドーン!」なる音の出力を行う(【1052】、【1053】、図158)ことに代えて、オーバー入賞報知をスピーカ120及び第1演出可動体224を用いて行い(【0853】、【0942】、【0970】、【1052】、【1054】)、 l-4 入賞異常が発生した際に、音の出力や可動物の移動や回転を中断または終了することで入賞異常の発生を報知する(【0926】)、 m パチンコ機100。(【0783】)。」 3 引用文献4 当審における拒絶の理由(令和2年2月18日付け拒絶理由通知書)に引用文献4として引用された本願の原出願の出願前に頒布された特開2013-9717号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した)。 「【0016】 本実施例のパチンコ遊技機1は、図1に示すように、遊技島設備(図示省略)に固定される外枠2と、この外枠2の前面開口部を覆う遊技機本体3とからなる。遊技機本体3は、中央上部の略円形の開口部に遊技盤10が取り付けられた前枠5を備え、この前枠5の一側縁がヒンジ部材4,4を介して外枠2に開閉可能に枢着されている。前枠5には、遊技盤10を覆うガラス板6が設けられている。また、前枠5の下部には、二つの球受皿7,8が上下に列設されており、各球受皿7,8を臨む位置には、遊技球が払い出される球払出口20,21が夫々開口している。二つの球受皿7,8のうち、下側に設置された下部球受皿8の底部には、開閉可能な球抜孔23が設けられており、遊技者は、下部球受皿8の手前側に設けられた球抜レバー24を操作して球抜孔23を開放することで、下部球受皿8の遊技球を機外に排出できる。また、前枠5には、右下部に発射ハンドル9が突設され、右上部にスピーカ16が配設される。 ・・・ 【0022】 そして、上記画像表示器14の表示画面19には、遊技の進行に合わせて図柄やキャラクターなどの演出画像が表示される。例えば、特別図柄が変動表示されている間は、表示画面19で演出図柄が変動表示され、時折リーチ演出画像や予告演出画像などが表示されることによって、遊技者の大当りへの期待感を盛り上げる。また、大当り遊技中には大当り用の演出画像が画像表示器14に表示され、大当り遊技を盛り上げる。また、演出画像の表示と並行して、演出用LED(図示省略)が発光・点滅する。さらに、これらと並行するように、スピーカ16から演出音声が逐次出力されることで、画像、光、音声などを組み合わせた盛大な演出が行われる。 ・・・ 【0038】 本実施例では、遊技中に入賞が発生すると、通常は、入賞の種類に応じた数の遊技球が賞球として球受皿7,8に払い出される。払出装置27が送出する遊技球は、上述のように、上部球受皿7に優先的に払い出され、上部球受皿7が満杯となって遊技球が上部球受皿7に流入不能となると、下部球受皿8に払い出される。そして、下部球受皿8も満杯となると、遊技球の払出しが停止する。そして、下部球受皿8の満杯状態にあっては、遊技者に下部球受皿8からの遊技球排出を促す満杯エラー報知が時間を置いて繰返される。この満杯エラー報知は、画像表示器14での満杯エラー画像表示によるものと、スピーカ16からの満杯エラー音声出力によるものとの、二種類の報知態様によって実現される。 ・・・ 【0048】 なお、本実施例では、満杯エラー画像31が演出画像30を部分的に覆うようにして表示されているが(図6(b)参照)、本発明に係る満杯エラー画像は、演出画像と重ねずに並列表示してもよいし、また、表示画面全体に表示してもよい。また、本発明に係る満杯エラー音声は、演出音声と異なるスピーカから出力してもよいし、満杯エラー音声の出力中は、演出音声を消音するようにしてもよい。」 4 上記3の記載事項を総合すると、引用文献4には、次の技術事項(以下、「引用文献4に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる(記号e?mは、本願発明の記号E?Mに対応させて付した。( )内は引用文献4の対応箇所を示している。)。 (引用文献4に記載の技術事項) 「e、j 大当り用の演出画像が画像表示器14に表示され、演出画像の表示と並行してスピーカ16から演出音声が逐次出力され(【0022】)、 k-2 下部球受皿8の満杯状態にあっては、満杯エラー報知は、スピーカ16からの満杯エラー音声出力の報知態様によって実現され(【0038】)、 l-2 満杯エラー音声の出力中は、演出音声を消音する(【0048】)、 m パチンコ遊技機1。(【0016】)」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願発明の構成A?Mと引用発明の構成a?mについて、それぞれ(a)?(m)の見出しを付して行った。)。 (a) 引用発明の構成aの「遊技領域124」は本願発明の構成Aの「遊技領域」に相当し、引用発明の構成aにおいて「第1可変入賞口234、第2可変入賞口235」が「開閉自在な扉部材234a、235aを備え」ることは、本願発明の構成Aの「大入賞手段」が「開閉可能に構成され」ることに相当するから、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。 (b) 引用発明の構成bにおいて、「基本回路302」は「特図当選乱数値に基づいて、特図1変動遊技、または特図2変動遊技の当否結果を決定する大当り判定を行う」のであるから、本願発明の構成Bの「当りに関する抽選を実行する」「抽選手段」に相当する。 したがって、引用発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当する。 (c) 引用発明の構成cにおいて、「特図1変動遊技に当選した場合」に「第1可変入賞口234の扉部材234aを所定の時間間隔、所定の回数で開閉駆動」すること、及び、「特図2変動遊技に当選した場合」に「第2可変入賞口235の扉部材235aを所定の時間間隔、所定の回数で開閉駆動する」ことは、いずれも、本願発明の構成Cにおいて、「前記抽選手段による抽選結果が当りである場合」に「大入賞手段を所定の開閉パターンで開閉動作させ」ることに相当し、 引用発明の構成cにおいて「駆動回路334」は、「各種ソレノイド332を制御する」ことによって、第1及び第2可変入賞口の扉部材を開閉駆動しているのであるから、本願発明の構成Cの「当り遊技を実行制御する」「特別遊技制御手段」に相当する。 したがって、引用発明の構成cは、本願発明の構成Cに相当する。 (d) 引用発明の構成dにおいて、「第1可変入賞口234、第2可変入賞口235に入賞があ」ることは、本願発明の構成Dにおいて、「大入賞手段に」「遊技球」が「入球」することに相当し、引用発明の構成dにおいて、「入賞があった場合に、RAM308に各入賞口ごとに設けた入賞数記憶領域の値を読み出し、1を加算して、元の入賞数記憶領域に設定する」ことは、本願発明の構成Dにおいて、「入球した遊技球を計数する」ことに相当するので、引用発明の構成dの「入賞口カウンタ更新処理を行うCPU304」は、本願発明の構成Dの「入球数計数手段」に相当する。 したがって、引用発明の構成dは、本願発明の構成Dに相当する。 (e) 引用発明の構成e、f、jにおける「スピーカ120」は、「演出データ」の中に「音源IC416への命令」があることによって、「音源IC416」によって制御されるのであり、引用発明の構成l、l-1、l-2によれば、オーバー入賞を検出した場合にオーバー入賞報知を行うものであるのだから、遊技に関連する演出を実行している。 また、引用発明の構成e、f、jにおける「第1演出可動体224」は、移動することによって、遊技者の興趣を高めており、引用発明の構成l、l-1、l-2によれば、オーバー入賞を検出した場合にオーバー入賞報知を行うものであるのだから、遊技に関連する演出を実行している。 そうすると、引用発明の構成e、f、jにおける「スピーカ120」及び「第1演出可動体224」は、本願発明の構成Eの「遊技に関連する演出を実行する演出手段」に相当するから、引用発明の構成e、f、j及び構成l、l-1、l-2は、本願発明の構成Eの構成を含む。 (f) 引用発明の構成e、f、jにおける「CPU404」及び「CPU504」は、「音源IC416」及び「駆動回路516」を介して「スピーカ120」及び「第1演出可動体224」を制御しているから、本願発明の構成Eの「演出手段を制御する演出制御手段」に相当し、引用発明の構成e、f、jは、本願発明の構成Fの構成を含む。 (g) 引用発明の構成g、g-1、g-2において、「下皿128が満タンであることを検出する下皿満タンセンサ」は、下皿128が満タンであることを検出しているのであるから、第1可変入賞口234、第2可変入賞口への入賞とは関係ない下皿128の満タンも検出可能である。また、「下皿128が満タンであること」は、本願における「遊技動作状態の異常」として図35に例示される「球詰まりエラー」に相当するものであるため、本願発明の構成G-2の「遊技動作」に「異常が生じ」ていることに含まれる。 このため、引用発明の構成g、g-1、g-2の「下皿128が満タンであること」は、本願発明の構成G-2の「入球数計数手段の計数に基づかない遊技動作の異常」に相当する。 そして、引用発明の構成g、g-1、g-2において、「下皿満タンエラーを検出」するか否かを定めることは、本願発明の構成G、G-2の「遊技動作の異常が生じたか否かを判定」することに相当する。 そうすると引用発明の構成g、g-1、g-2の「下皿満タンエラーを検出するCPU304」は、本願発明の構成G、G-1の「異常判定手段」に相当する。 したがって、引用発明の構成g、g-1、g-2は、本願発明の構成G、G-1、G-2に相当する。 (h) 引用発明の構成hは、本願発明の構成Hに相当する。 (i) 引用発明の構成iにおける「入賞口カウンタ更新処理を行うCPU304」及び「所定の最大入球数(10個)」は、本願発明の構成Iにおける「入球数計数手段」及び「規定入球数」に相当する。そして、引用発明の構成iにおいて「駆動回路334は、第1可変入賞口234、または第2可変入賞口235に入球した遊技球が所定の最大入球数(10個)に達したことを検出」するまでは、扉部材234a及び235aを所定の時間間隔、所定の回数で開閉駆動しており、引用発明の「駆動回路334」は本願発明の「特別遊技制御手段」に相当する(上記(c)を参照。)から、引用発明は、本願発明の構成Iの「前記特別遊技制御手段は、前記入球数計数手段により計数された遊技球数が規定入球数に達するまで前記大入賞手段を開放状態に制御可能」とする構成を備えている。 したがって、引用発明の構成i及びcは、本願発明の構成Iに相当する構成を備える。 (j) 引用発明の構成e、f、jにおける「スピーカ120」及び「第1演出可動体224」は、それぞれ、本願発明の構成Jにおける「第1の演出手段」及び「第2の演出手段」に相当する。 したがって、引用発明の構成e、f、jは、本願発明の構成Jに相当する構成を含む。 (k、k-1) 引用発明の構成l、l-1、l-2における「CPU404、504」は、上記(f)で述べたように、本願発明の「演出制御手段」に相当し、「第1可変入賞口234、または第2可変入賞口235(本願発明の大入賞手段に相当。上記(a)を参照。)に入球」して「オーバー入賞」を検出した場合に、「スピーカ120及び第1演出可動体224を用いてオーバー入賞報知を行う」から、引用発明の構成l、l-1、l-2と、本願発明の構成K、K-1は、「演出制御手段は、前記大入賞手段に遊技球が入球した場合、当該入球が発生した旨を報知する」ことがある「入賞演出制御手段」を含んでいる点で共通する。 (k、k-2) 引用発明の構成k、k-2における「下皿満タンエラー」は、本願発明の構成K-2の「入球数計数手段の計数に基づかない遊技動作の異常」に相当(上記(g)も参照。)し、当該異常が生じた際には、「下皿満タンエラーの有無を示すデバイス情報」が設定され、デバイス情報はコマンドに含まれて第1副制御部400に送信される一方で、第1副制御部400にあるCPU404は、コマンドに対応する演出データをROM406から読み出し、最終的にスピーカ120、各種ランプ418、遮蔽装置246及び演出可動体224を動作させるのであるから、これらによって、報知が実行されていることは自明である。つまり、引用発明の構成k、k-2における「CPU304」及び「CPU404」は、本願発明の構成K-2の「エラー報知を実行制御する異常報知制御手段」を構成していることは明らかである。 そうすると、引用発明の構成k、k-2は、本願発明の構成K、K-2は、「前記異常判定手段により前記入球数計数手段の計数に基づかない遊技動作の異常が生じたと判定された場合、当該異常が生じた旨を」「報知するエラー報知を実行制御する異常報知制御手段」含んでいる点で共通する。 (l) 引用発明の構成l、l-1、l-2における「CPU404、504」は、「スピーカ120」及び「第1演出可動体224」を制御するものであり(上記(f)も参照。)、「オーバー入賞」を検出した場合に、「スピーカ120及び第1演出可動体224を用いてオーバー入賞報知を行う」ものである(上記(k、k-1)を参照。)から、本願発明の構成Lの「入賞演出制御手段」に相当する。 また、引用発明の構成l、l-1、l-2における「第1可変入賞口234、または第2可変入賞口235に入球した遊技球が所定の最大入球数に達し、最大入球後にオーバー入賞を検出した場合」は、本願発明の構成L-1、L-2の「前記入球数計数手段による計数値が規定数を超えた場合」に相当する。 さらに、引用発明の構成l、l-1、l-2における「オーバー入賞報知」は、「装飾図柄表示装置208によって、キャラクタ画像と「すごいね!!!」との文字の表示をすると共に、スピーカ120による「キーン」や「ドーン!」なる音の出力を行」っていたものを、スピーカ120及び第1演出可動体224を用いて行うものとしたのであるから、大当り中の「オーバー入賞」時に、大当りを盛り上げるために行う入賞演出に他ならないため、引用発明の構成l、l-1、l-2において「第1可変入賞口234、または第2可変入賞口235に入球した遊技球が所定の最大入球数に達し、最大入球後にオーバー入賞を検出した場合、スピーカ120及び第1演出可動体を用いてオーバー入賞報知を行う」ことは、本願発明の構成L-1の「前記入球数計数手段による計数値が規定数を超えた場合には、前記第1の演出手段と前記第2の演出手段とを利用して特定入賞演出を実行制御」することに相当する。 してみると、引用発明の構成l、l-1、l-2は、本願発明の構成L、L-1、L-2と、「入賞演出制御手段は、」「前記入球数計数手段による計数値が規定数を超えた場合には、」「前記第1の演出手段と前記第2の演出手段と」「を利用して特定入賞演出を実行制御」する点で共通する。 (l-4) 引用発明の構成l-4における「入賞異常」「が発生した際」に行われる「入賞異常の発生」の「報知」は、「下皿満タンエラー」の報知ではないため、本願発明の構成L-4の「前記エラー報知とは異なる特定エラー報知」に相当する。 また、引用発明の構成l-4の「可動物の移動や回転を中断または終了する」ことは、本願発明の構成L-4の「第2の演出手段による」「特定入賞演出」を「中断または終了」することに相当する。 そうすると、引用発明の構成l-4は、本願発明の構成L-4に相当する。 (m) 引用発明の構成mは、本願発明の構成Mに相当する。 上記(a)?(m)の検討により、本願発明と引用発明とは、 [一致点] 「A 遊技領域に形成され、開閉可能に構成された大入賞手段と、 B 当りに関する抽選を実行する抽選手段と、 C 前記抽選手段による抽選結果が当りである場合、大入賞手段を所定の開閉パターンで開閉動作させる当り遊技を実行制御する特別遊技制御手段と、 D 前記大入賞手段に入球した遊技球を計数する入球数計数手段と、 E 遊技に関連する演出を実行する演出手段と、 F 前記演出手段を制御する演出制御手段と、 G 遊技動作の異常が生じたか否かを判定可能に構成された異常判定手段と、 H を備える弾球遊技機であって、 G-1 前記異常判定手段は、 G-2 少なくとも前記入球数計数手段の計数に基づかない遊技動作の異常が生じたか否かを判定可能に構成され、 I 前記特別遊技制御手段は、前記入球数計数手段により計数された遊技球数が規定入球数に達するまで前記大入賞手段を開放状態に制御可能に構成され、 J 前記演出手段は、音による音演出を実行可能な第1の演出手段と、前記音演出とは異なる演出を実行可能な第2の演出手段とを少なくとも含み、 K 前記演出制御手段は、 K-1’ 前記大入賞手段に遊技球が入球した場合、当該入球が発生した旨を報知することがある入賞演出制御手段と、 K-2’ 前記異常判定手段により前記入球数計数手段の計数に基づかない遊技動作の異常が生じたと判定された場合、当該異常が生じた旨を報知するエラー報知を実行制御する異常報知制御手段と、を含み、 L’ 前記入賞演出制御手段は、前記入球数計数手段による計数値が規定数を超えた場合には、前記第1の演出手段と前記第2の演出手段とを利用して特定入賞演出を実行制御し、 L-4 前記エラー報知とは異なる特定エラー報知を実行する場合には、前記第2の演出手段による前記特定入賞演出を制限する、 M ことを特徴とする弾球遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1](構成K-1) 「演出制御手段」が含む「前記大入賞手段に遊技球が入球した場合、当該入球が発生した旨を報知する」ことがある「入賞演出制御手段」に関して、本願発明は、(入球数計数手段による計数値が規定数を超えていなくても)「前記大入賞手段に遊技球が入球した場合、当該入球が発生した旨を報知する」のに対し、引用発明では、オーバー入賞となっていない場合に、第1可変入賞口234、または第2可変入賞口235に入球した場合、当該入球が発生した旨を報知するか否かが不明な点。 [相違点2](構成K-2) 「前記異常判定手段により前記入球数計数手段の計数に基づかない遊技動作の異常が生じたと判定された場合、当該異常が生じた旨を」「報知するエラー報知を実行制御する異常報知制御手段」に関して、本願発明は「第1の演出手段を用いて」報知しているのに対し、引用発明では、どのように報知をしているのか不明な点。 [相違点3](構成L-1、L-2、L-3) 「前記入球数計数手段による計数値が規定数を超えた場合には、」「前記前記第1の演出手段と前記第2の演出手段と」「を利用して特定入賞演出を実行制御」する「入賞演出制御手段」に関して、本願発明は、「前記エラー報知の非実行中に前記入球数計数手段による計数値が規定数を超えた場合には、前記第1の演出手段と前記第2の演出手段とを利用して特定入賞演出を実行制御し、前記エラー報知の実行中に前記入球数計数手段による計数値が規定数を超えた場合には、前記第1の演出手段を利用せずに前記第2の演出手段を利用して前記特定入賞演出を実行制御するように構成され、前記エラー報知の非実行中の前記第2演出手段による前記特定入賞演出の演出態様と、前記エラー報知の実行中の前記第2演出手段による前記特定入賞演出の演出態様とは、共通の演出態様である」という構成を備えるのに対し、引用発明は、下皿満タンエラーを検出したことによるエラー報知の有無に応じたオーバー入賞報知の演出態様が不明であるため、当該構成を備えているのか不明である点。 第6 当審における判断 1 相違点1について 本願の原出願の出願日前において、遊技の興趣を高めるために(オーバー入賞時でなくとも)「大入賞手段に遊技球が入球した場合、当該入球が発生した旨を報知すること」は、周知の技術である。(以下、「周知技術」という。例えば、当審の令和2年2月18日付け拒絶理由通知において引用文献3として提示された、本願の原出願の出願前に日本国内または外国において頒布された特開2003-62205号公報の段落【0002】には、遊技の興趣を高めるために、大入賞口に遊技球が入賞すると、その入賞の度に所定の遊技音が入賞音として発音されること、【0038】には、大入賞口41への1個の遊技球の入賞に対して15個の賞球が払い出されることについて記載されており、また、当審の令和2年2月18日付け拒絶理由通知において引用文献2として提示された、本願の原出願の出願前に日本国内または外国において頒布された特開2004-187797号公報の段落【0049】には、大入賞口25に遊技球が入賞した場合に賞球を払出し、音や光を発生させることが記載されていると認められる。) また、引用発明における「オーバー入賞報知」も、演出の一環であり、遊技の興趣を高めるためのものである。 してみれば、引用発明と上記周知技術とは、遊技機の技術分野において、大入賞手段に遊技球が入球した場合に賞球を排出する遊技機において、遊技の興趣を高めることを目的として、大入賞手段に遊技球が入球した場合、当該入球が発生した旨を報知するものであるので、技術分野、目的、効果がいずれも共通しているものである。 してみると、引用発明の(オーバー入賞時に)「オーバー入賞報知」を行う「CPU404、504」に対して上記周知の技術を適用し、(オーバー入賞時でなくとも)「大入賞手段に遊技球が入球した場合、当該入球が発生した旨を報知すること」とし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。 2 相違点2及び3について 相違点2及び3は、エラー報知を実施することに関するものであるため、まとめて検討する。 引用文献4に記載の技術事項の「演出画像」を「表示」する「画像表示器14」、「演出音声が逐次出力され」る「スピーカ16」、「下部球受皿8の満杯状態」、「満杯エラー報知」及び「パチンコ遊技機1」は、それぞれ、本願発明の「音演出とは異なる演出を実行可能な第2の演出手段」「音による音演出を実行可能な第1の演出手段」、「入球数計数手段の計数に基づかない遊技動作の異常」、「エラー報知」及び「弾球遊技機」に相当する。 そして、引用発明と引用文献4に記載の技術事項は、入球数計数手段の計数に基づかない遊技動作の異常を検知した場合にエラー報知を行う遊技機である点で共通するものである。 また、引用文献4に記載の技術事項において「演出音声を消音する」ことについて、「演出画像の表示と並行して」「演出音声が逐次出力され」た状態において、演出音声を停止したり中断したりするのでなく、「演出音声を消音」して「満杯エラー音声出力」を行うのだから、「演出画像の表示と並行してスピーカ16から演出音声が逐次出力され」ていることに鑑みれば、引用文献4に記載の技術事項においては、音声による演出ではない、「演出画像」を「表示」する「画像表示器14」による演出は、「演出音声」の「消音」中も継続して行われていることは明らかである。 そして、「演出音声を消音する」ことは、エラー報知と演出音声の出力との重複を防止するという作用効果を奏するためのものであることは明らかであり、これは演出を音声で行っている遊技機に対して、エラー報知を音声で行うとするのであれば当然生じる課題である。 そうすると、上記「第5 対比(l)」において述べたように、大当りを盛り上げる演出音声の一部であるオーバー入賞報知をスピーカ120も用いて行う引用発明に対し、引用文献4に記載の技術事項を適用し、満杯エラーを音声で報知するようにするとともに、満杯エラーの音声報知と、演出音声であるスピーカを用いたオーバー入賞報知の出力との重複を防止するために「満杯エラー音声の出力中は、演出音声を消音する」という事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 すなわち、「前記異常判定手段により前記入球数計数手段の計数に基づかない遊技動作の異常が生じたと判定された場合、当該異常が生じた旨を」「報知するエラー報知を実行制御する異常報知制御手段」に関して、引用発明の「下皿満タンエラーを検出した場合に」「報知を行う」「CPU304」及び「CPU404」に対し、引用文献4に記載の技術事項の構成k-2の、「下部球受皿8の満杯状態にあっては、満杯エラー報知は、スピーカ16からの満杯エラー音声出力の報知態様によって実現」するという事項を適用するとともに、「前記入球数計数手段による計数値が規定数を超えた場合には、」「前記第1の演出手段と前記第2の演出手段」「を利用して特定入賞演出を実行制御」する「入賞演出制御手段」に関し、引用発明の「スピーカ120及び第1演出可動体224を用いてオーバー入賞報知を」を行う「CPU404、504」に対し、引用文献4に記載の技術事項のl-2「満杯エラー音声の出力中は、演出音声を消音する」と言う事項を適用し、上記のとおり、音声による演出ではない演出を、「演出音声」の「消音」中も継続するようにすることによって、「スピーカ120を用いてエラー報知を実行している場合においてオーバー入賞を検出した場合には、スピーカ120を用いたオーバー入賞報知の演出音声は消音」するが、「第1演出可動体224は通常どおりの演出態様でオーバー入賞報知を行う」ものとし、上記相違点2及び3にかかる本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。 3 請求人の主張について 請求人は、令和2年4月27日付け意見書において、 「引用文献1、4は、三種類の報知(性格の異なる複数種類のエラーとオーバー入賞報知)をいかに扱うべきかの視点がないものであり、本願発明の発明特定事項J、K-2、L-1、L-2、L-3の有機的結合を明らかに欠くものです。 (2)仮に引用文献1に引用文献4を適用することを試みたとしても、一方の引用文献1は、本願発明の前提となるエラー報知とオーバー入賞報知のうちオーバー入賞報知の側についての構成を開示しているだけで、オーバー入賞報知とエラー報知(特に、本願発明のエラー報知中のオーバー入賞報知)が重なった場合について開示も示唆もないものです。他方の引用文献4は、満杯エラー音声と大当りを盛り上げる一般的な演出音声との関係を記載しているだけで、オーバー入賞があった場合自体について開示も示唆もないものです。 よって、エラー報知中にオーバー入賞報知が重なった場合について記載も示唆もない引用文献1に対し、オーバー入賞についての記載がない引用文献4を適用してみても、さらには引用文献2、3の周知技術を加味してみても、エラー報知(球詰りエラー報知)とオーバー入賞報知とが重ならない場合の演出態様に係る発明に想到できるだけです。 故に、当業者といえども、本願発明の効果が得られる構成、すなわち「エラー報知中であっても、オーバー入賞が発生した旨を適切に遊技者に対して報知することができる」および「遊技者にオーバー入賞の真偽が判別不能な違和感を与えなくすることができる」、さらに「エラー報知種別に応じた適切なオーバー入賞報知を実行できる」という効果が得られる本願発明の構成(特徴部αおよび特徴部β)には、容易に想到することはできないものと考えます。 (3)したがって、本願発明は、当業者といえども、引用文献1?4に基づいて容易に想到することはできない発明であると思料します。」と主張する。 しかしながら、上記「第6 当審における判断 2 相違点2、3」において検討したとおり、引用発明におけるオーバー入賞報知は、上記「第5 対比(l)」において述べたように、大当りを盛り上げる演出音声の一部であるのだから、当該オーバー入賞報知について、エラー報知(玉詰まりエラー報知)中は演出音声のみを消音して、その他の演出は続行するするという引用文献4に記載の技術を適用し、「エラー報知中であっても、オーバー入賞が発生した旨を適切に遊技者に対して報知することができる」および「遊技者にオーバー入賞の真偽が判別不能な違和感を与えなくすることができる」ものとすることは容易であるし、上記「第5 対比 (l-4)」で述べたように、引用発明では、下皿満タンエラーの報知(エラー報知)と異なる入賞異常の報知(特定エラー報知)をする際には、音と可動物の何れも中断又は終了するという、「エラー報知種別に応じた適切なオーバー入賞報知を実行できる」という効果をもとより備えている。 したがって、本願発明は、当業者にとって容易に想到することができるものである。 よって、請求人の主張は採用できない。 4 小括 上記「1 相違点1について」及び「2 相違点2及び3について」において検討したとおりであるので、本願発明は、引用発明、引用文献4に記載された技術事項、周知技術1及び周知技術2に基づき当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-09-23 |
結審通知日 | 2020-09-29 |
審決日 | 2020-10-13 |
出願番号 | 特願2016-49049(P2016-49049) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 昌宏 |
特許庁審判長 |
長崎 洋一 |
特許庁審判官 |
小島 寛史 井海田 隆 |
発明の名称 | 弾球遊技機 |
代理人 | 河合 貴之 |