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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1368839
審判番号 不服2019-17411  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-24 
確定日 2020-12-04 
事件の表示 特願2015- 64963号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月20日出願公開、特開2016-182289号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月26日の出願であって、平成30年4月17日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月1日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年1月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月24日付けで最後の拒絶の理由が通知され、令和1年7月3日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月1日付け(送達日:同年10月8日)で、同年7月3日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年12月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和1年12月24日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和1年12月24日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成31年1月10日に提出された手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「遊技領域を有する遊技盤と、
前記遊技領域に設けられ、遊技媒体を受入れ易い第1状態と、遊技媒体を受入れ難い第2状態とに変位可能な第1可変入賞装置と、
前記遊技領域に設けられ、遊技媒体を受入れ易い第1状態と、遊技媒体を受入れ難い第2状態とに変位可能であると共に、遊技媒体が通過可能な特定領域を有する第2可変入賞装置と、
前記遊技領域に設けられ、遊技媒体が通過可能な通過領域と、
前記遊技領域に設けられ、前記通過領域に遊技媒体が通過し易い開放状態と、遊技媒体が通過し難い閉鎖状態とに変位可能な開閉部材と、
前記通過領域への遊技媒体の通過に基づいて、識別情報を変動表示することが可能な表示手段と、
前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示されたことを条件に、遊技者に有利な大当り遊技状態に移行制御可能な遊技状態移行制御手段と、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第1可変入賞装置を前記第1状態及び前記第2状態に変位させる第1ラウンド遊技を実行可能な第1ラウンド遊技実行手段と、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2可変入賞装置を前記第1状態及び前記第2状態に変位させる第2ラウンド遊技を実行可能な第2ラウンド遊技実行手段と、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2ラウンド遊技実行手段により実行される第2ラウンド遊技で前記特定領域に遊技媒体が通過したことに基づいて、前記大当り遊技状態の終了後に、前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示される確率が相対的に高い確変遊技状態に制御可能な確変遊技状態制御手段と、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2ラウンド遊技実行手段により実行される第2ラウンド遊技で前記特定領域に遊技媒体が通過しなかったことに基づいて、前記大当り遊技状態の終了後に、前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示される確率が相対的に低い非確変遊技状態に制御可能な非確変遊技状態制御手段と、
第1回数と、前記第1回数よりも多い第2回数とを含む複数の回数の中から、何れかの回数を決定可能な回数決定手段と、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態の終了後において、前記開閉部材が相対的に開放状態になり易い状態を含む時短遊技状態に制御可能な時短遊技状態制御手段と、
前記時短遊技状態制御手段により時短遊技状態に制御されてから前記表示手段により識別情報の変動表示された回数が、前記回数決定手段により決定された回数になったことを条件に、前記開閉部材が相対的に開放状態になり難い状態を含む非時短遊技状態に制御可能な非時短遊技状態制御手段と、
を備え、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態には、前記第1ラウンド遊技実行手段が所定回数の第1ラウンド遊技を実行すると共に、前記第2ラウンド遊技実行手段が所定回数の第2ラウンド遊技を実行することが可能な第1大当り遊技状態が含まれ、
前記回数決定手段は、
前記第1大当り遊技状態に移行する前の遊技状態に応じて、前記複数の回数の中から、何れかの回数を決定可能であり、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される第1大当り遊技状態において前記第2ラウンド遊技実行手段が所定回数の第2ラウンド遊技を実行中に、前記第1大当り遊技状態への移行前の遊技状態が、前記確変遊技状態制御手段により制御される確変遊技状態及び前記時短遊技状態制御手段により制御される時短遊技状態であり、前記特定領域に遊技媒体が通過して前記第1大当り遊技状態の終了後に前記確変遊技状態制御手段により確変遊技状態に制御される場合、第1回数を決定することが可能であると共に、前記特定領域に遊技媒体が通過せずに前記第1大当り遊技状態の終了後に前記非確変遊技状態制御手段により非確変遊技状態に制御される場合、第2回数を決定することが可能であることを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「遊技領域を有する遊技盤と、
前記遊技領域に設けられ、遊技媒体を受入れ易い第1状態と、遊技媒体を受入れ難い第2状態とに変位可能な第1可変入賞装置と、
前記遊技領域に設けられ、遊技媒体を受入れ易い第1状態と、遊技媒体を受入れ難い第2状態とに変位可能であると共に、遊技媒体が通過可能な特定領域を有する第2可変入賞装置と、
前記遊技領域に設けられ、遊技媒体が通過可能な通過領域と、
前記遊技領域に設けられ、前記通過領域に遊技媒体が通過し易い開放状態と、遊技媒体が通過し難い閉鎖状態とに変位可能な開閉部材と、
前記通過領域への遊技媒体の通過に基づいて、識別情報を変動表示することが可能な表示手段と、
前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示されたことを条件に、遊技者に有利な大当り遊技状態に移行制御可能な遊技状態移行制御手段と、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第1可変入賞装置を前記第1状態及び前記第2状態に変位させる第1ラウンド遊技を実行可能な第1ラウンド遊技実行手段と、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2可変入賞装置を前記第1状態及び前記第2状態に変位させる第2ラウンド遊技を実行可能な第2ラウンド遊技実行手段と、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2ラウンド遊技実行手段により実行される第2ラウンド遊技で前記特定領域に遊技媒体が通過したことに基づいて、前記大当り遊技状態の終了後に、前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示される確率が相対的に高い確変遊技状態に制御可能な確変遊技状態制御手段と、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2ラウンド遊技実行手段により実行される第2ラウンド遊技で前記特定領域に遊技媒体が通過しなかったことに基づいて、前記大当り遊技状態の終了後に、前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示される確率が相対的に低い非確変遊技状態に制御可能な非確変遊技状態制御手段と、
第1回数と、前記第1回数よりも多い第2回数とを含む複数の回数の中から、何れかの回数を決定可能な回数決定手段と、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態の終了後において、
前記開閉部材が相対的に開放状態になり易い状態を含む時短遊技状態に制御可能な時短遊技状態制御手段と、
前記時短遊技状態制御手段により時短遊技状態に制御されてから前記表示手段により識別情報の変動表示された回数が、前記回数決定手段により決定された回数になったことを条件に、前記開閉部材が相対的に開放状態になり難い状態を含む非時短遊技状態に制御可能な非時短遊技状態制御手段と、
を備え、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態には、前記第1ラウンド遊技実行手段が所定回数の第1ラウンド遊技を実行すると共に、前記第2ラウンド遊技実行手段が所定回数の第2ラウンド遊技を実行することが可能な第1大当り遊技状態が含まれ、
前記回数決定手段は、
前記第1大当り遊技状態に移行する前の遊技状態に応じて、前記複数の回数の中から、何れかの回数を決定可能であり、
前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される第1大当り遊技状態において前記第2ラウンド遊技実行手段が所定回数の第2ラウンド遊技を実行中に、前記第1大当り遊技状態への移行前の遊技状態が、前記確変遊技状態制御手段により制御される確変遊技状態及び前記時短遊技状態制御手段により制御される時短遊技状態であり、前記特定領域に遊技媒体が通過して前記第1大当り遊技状態の終了後に前記確変遊技状態制御手段により確変遊技状態に制御される場合、第1回数を決定することが可能であると共に、前記特定領域に遊技媒体が通過せずに前記第1大当り遊技状態の終了後に前記非確変遊技状態制御手段により非確変遊技状態に制御される場合、第2回数を決定することが可能であり、
前記回数決定手段において前記特定領域に遊技媒体が通過した場合に決定可能な最大回数と、前記特定領域に遊技媒体が通過しない場合に決定可能な最大回数とは同じであることを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「回数決定手段」に関して、「前記特定領域に遊技媒体が通過した場合に決定可能な最大回数と、前記特定領域に遊技媒体が通過しない場合に決定可能な最大回数とは同じである」とする補正。

2 本件補正の目的、新規事項追加の有無
(1)上記1(2)の補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の【0666】、【0667】、図62等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「回数決定手段」が決定可能な回数について「前記特定領域に遊技媒体が通過した場合に決定可能な最大回数と、前記特定領域に遊技媒体が通過しない場合に決定可能な最大回数とは同じである」と限定するものである。

(2)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしSは、分説するため合議体が付した。

「A 遊技領域を有する遊技盤と、
B 前記遊技領域に設けられ、遊技媒体を受入れ易い第1状態と、遊技媒体を受入れ難い第2状態とに変位可能な第1可変入賞装置と、
C 前記遊技領域に設けられ、遊技媒体を受入れ易い第1状態と、遊技媒体を受入れ難い第2状態とに変位可能であると共に、遊技媒体が通過可能な特定領域を有する第2可変入賞装置と、
D 前記遊技領域に設けられ、遊技媒体が通過可能な通過領域と、
E 前記遊技領域に設けられ、前記通過領域に遊技媒体が通過し易い開放状態と、遊技媒体が通過し難い閉鎖状態とに変位可能な開閉部材と、
F 前記通過領域への遊技媒体の通過に基づいて、識別情報を変動表示することが可能な表示手段と、
G 前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示されたことを条件に、遊技者に有利な大当り遊技状態に移行制御可能な遊技状態移行制御手段と、
H 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第1可変入賞装置を前記第1状態及び前記第2状態に変位させる第1ラウンド遊技を実行可能な第1ラウンド遊技実行手段と、
I 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2可変入賞装置を前記第1状態及び前記第2状態に変位させる第2ラウンド遊技を実行可能な第2ラウンド遊技実行手段と、
J 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2ラウンド遊技実行手段により実行される第2ラウンド遊技で前記特定領域に遊技媒体が通過したことに基づいて、前記大当り遊技状態の終了後に、前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示される確率が相対的に高い確変遊技状態に制御可能な確変遊技状態制御手段と、
K 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2ラウンド遊技実行手段により実行される第2ラウンド遊技で前記特定領域に遊技媒体が通過しなかったことに基づいて、前記大当り遊技状態の終了後に、前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示される確率が相対的に低い非確変遊技状態に制御可能な非確変遊技状態制御手段と、
L 第1回数と、前記第1回数よりも多い第2回数とを含む複数の回数の中から、何れかの回数を決定可能な回数決定手段と、
M 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態の終了後において、前記開閉部材が相対的に開放状態になり易い状態を含む時短遊技状態に制御可能な時短遊技状態制御手段と、
N 前記時短遊技状態制御手段により時短遊技状態に制御されてから前記表示手段により識別情報の変動表示された回数が、前記回数決定手段により決定された回数になったことを条件に、前記開閉部材が相対的に開放状態になり難い状態を含む非時短遊技状態に制御可能な非時短遊技状態制御手段と、
を備え、
O 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態には、前記第1ラウンド遊技実行手段が所定回数の第1ラウンド遊技を実行すると共に、前記第2ラウンド遊技実行手段が所定回数の第2ラウンド遊技を実行することが可能な第1大当り遊技状態が含まれ、
P 前記回数決定手段は、
前記第1大当り遊技状態に移行する前の遊技状態に応じて、前記複数の回数の中から、何れかの回数を決定可能であり、
Q 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される第1大当り遊技状態において前記第2ラウンド遊技実行手段が所定回数の第2ラウンド遊技を実行中に、前記第1大当り遊技状態への移行前の遊技状態が、前記確変遊技状態制御手段により制御される確変遊技状態及び前記時短遊技状態制御手段により制御される時短遊技状態であり、前記特定領域に遊技媒体が通過して前記第1大当り遊技状態の終了後に前記確変遊技状態制御手段により確変遊技状態に制御される場合、第1回数を決定することが可能であると共に、前記特定領域に遊技媒体が通過せずに前記第1大当り遊技状態の終了後に前記非確変遊技状態制御手段により非確変遊技状態に制御される場合、第2回数を決定することが可能であり、
R 前記回数決定手段において前記特定領域に遊技媒体が通過した場合に決定可能な最大回数と、前記特定領域に遊技媒体が通過しない場合に決定可能な最大回数とは同じである
S ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-57840号公報(平成26年4月3日出願公開、以下「引用例1」という。)には、弾球遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。

ア「【技術分野】
【0001】
本発明は弾球遊技機、特に大当り遊技において遊技球が特定領域へ入球することで、大当り遊技後に遊技者に有利な特典遊技を付与する遊技機に関する。」

イ「【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を適用した実施形態の弾球遊技機たるパチンコ機を説明する。図1は、本パチンコ機の遊技盤2の正面図である。尚、パチンコ機の全体的な基本構成は周知技術であり図示および説明は省略する。
遊技盤2には外レール201と内レール202とによって囲まれた略円形の遊技領域20が形成されている。遊技領域20には図示しない多数の遊技釘が植設されている。
遊技領域20の中央部にはセンターケース200が装着されている。センターケース200は中央に演出図柄表示装置21(全体の図示は省略)のLCDパネルが配設されている。またセンターケース200には、周知のものと同様にワープ入口、ワープ樋、ステージなどが設けられている。
【0023】
遊技領域20のセンターケース200左横位置には、遊技球が通過可能であり、通過時に普通図柄(以下、単に普図という)の抽選が実行される作動ゲート(作動口)22が設けられている。
センターケース200の中央直下位置には、常時、遊技球の入球が可能で、入球により第1の特別図柄(以下、単に第1特図という)の抽選を実行する第1特図始動口23Aが設けてあり、更にその直下位置にはチューリップ式普通電動役物からなり、入球時に第2の特別図柄(以下、単に第2特図という)の抽選が実行される特図の第2特図始動口23Bが設置されている。
該第2特図始動口23Bは普通電動役物(以下、単に普電役物という)の開放時にのみ入球(入賞)可能である。普電役物は、普図の抽選で当りとなると所定時間開放する構成である。
【0024】
第2特図始動口23Bの直下位置には、開閉板にて開閉可能に設けられ、前記第1特図の大当り時に開放される第1大入賞装置(第1の大入賞装置)24が設置されている。
【0025】
またセンターケース200の右側斜め下方位置には、開閉板にて開閉可能に設けられ、前記第2特図の大当り時に開放される第2大入賞装置(第2の大入賞装置)25が設置されている。尚、第2大入賞装置25の内部には、Vゾーン(特許請求の範囲の「特定領域」に相当)26およびVゾーン26への入球を規制するシャッター(特許請求の範囲の「開閉部材」に相当する)30が設けられている。」

ウ「【0029】
図3は本パチンコ機の電気的構成を示すもので、遊技の制御を司る主制御装置40を中心に、サブ制御装置として払出制御装置41、サブ統合制御装置42および演出図柄制御装置43を具備する構成である。主制御装置40、払出制御装置41、サブ統合制御装置42および演出図柄制御装置43においては、何れもCPU、ROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え、これら制御装置は何れもCPUにより、2ms周期又は4ms周期の割り込み信号に起因してROMに搭載しているメインルーチンおよびサブルーチンからなるプログラムが開始され、各種の制御が実行される。
発射制御装置44にはCPU、ROM、RAM等が設けられていない。しかしこれに限るわけではなく、発射制御装置44にCPU、ROM、RAM等を設けてもよい。
【0030】
主制御装置40は、裏配線中継端子板530および外部接続端子板38を介して遊技施設のホールコンピュータ500と電気的に接続される。また主制御装置40には、裏配線中継端子板530や遊技盤中継端子板531を介して、前枠(ガラス枠)および内枠が閉鎖しているか否か検出する前面枠閉鎖SW(スイッチ)501、意匠枠閉鎖SW502、第1特図始動口23Aへの入球を検出する第1特図始動SW503、第2特図始動口23Bへの入球を検出する第2特図始動SW504、普図の作動ゲート22への入球を検出する普通図柄作動SW505、第1大入賞装置24への入球を検出する第1カウントSW506、第2大入賞装置25の入賞口252への入球を検出する第2カウントSW507、Vゾーン26への入球を検出する特定領域SW508、および普通入賞口27への入球を検出する一般入賞口SW509等の検出信号が入力される。
【0031】
また主制御装置40は搭載しているプログラムに従って動作して、上述の検出信号などに基づいて遊技の進行に関わる各種のコマンドを生成し、払出制御装置41や、演出中継端子板532を介してサブ統合制御装置42、演出図柄制御装置43へ向けてのコマンドの出力や、図柄表示装置中継端子板533を介して第1特図表示装置28A、第2特図表示装置28B、第1特図保留数表示装置281、第2特図保留数表示装置282、普図表示装置29および普図保留数表示装置291等の表示制御を行なう。
【0032】
更に主制御装置40は、遊技盤版中継端子板531を介して、第1大入賞口ソレノイド510、第2大入賞口ソレノイド511、シャッターソレノイド512および普通電役ソレノイド513が接続されている。そして第1大入賞口ソレノイド510又は第2大入賞口ソレノイド511を制御して第1大入賞装置24又は第2大入賞装置25を開放作動せしめる。またシャッターソレノイド512を制御してVゾーン26を開閉作動せしめ、更に普電役物ソレノイド513を制御して第2特図始動口23Bの普電役物の開閉作動せしめる。
主制御装置40からの出力信号は試験信号端子にも出力される他、図柄変動や大当り等の管理用の信号が外部接続端子板38を経てホールコンピュータ500に送られる。
主制御装置40と払出制御装置41とは双方向通信が可能である。
【0033】
払出制御装置41は、裏配線中継端子板530や払出中継端子板534を介して球タンクが空状態になったことを検出する球切れSW520、遊技球が払い出されたことを検出する払出SW522、遊技球貯留皿が満杯状態になったことを検出する満杯SW523等の検出信号が入力される。また主制御装置40から送られてくるコマンドに応じて払出モータ521を稼働させて遊技球を払い出させる。更に、CRユニット端子板535を介してCRユニット60と電気的に接続され、精算表示装置173を介して球貸および精算SW171,172による貸出要求、精算要求の操作信号を受け付け、CRユニット60とデータを送受し、貸出要求信号に応じて払出モータ521を稼働させて貸球を払い出させ、CRユニット60に挿入されているプリペイドカードの残高表示を制御する。
【0034】
発射制御装置44は、発射ハンドルの回転操作を検出するスイッチ524、発射停止SW525、発射ハンドル14に遊技者が接触(操作)していることを検出するタッチSW526等の検出信号が入力される。払出制御装置41を介して主制御装置40から送られてくるコマンド(タッチSW526の信号や遊技状況を反映している)、発射ハンドル14(524)の回動信号および発射停止SW525の信号に基づいて発射モータ527を制御して遊技球を発射および停止させる。
【0035】
サブ統合制御装置42には、音量調節SW、遊技ボタンやジョグダイヤルの操作を検出する遊技SW15などの操作信号が入力される。
そしてサブ統合制御装置42は、スピーカ112を駆動して音声を出力することや、各種LEDや各種ランプ113の点灯、消灯等を制御する。更に演出図柄制御装置43へキャラクタなどを表示する擬似演出や特図の擬似図柄の表示態様のコマンドを送信する。
【0036】
演出図柄制御装置43は、LCDパネルユニットや付属ユニットと共に演出図柄表示装置21を構成している。演出図柄制御装置43は、サブ統合制御装置42から送られてくるコマンドに応じて演出図柄表示装置21のLCDパネルの表示を制御する。
【0037】
次にパチンコ機の作動を説明する。
パチンコ機は、作動ゲート22への入球に起因して普図の当否抽選を行い、普図表示装置29の図柄変動を開始する。前記抽選結果が当りであれば、表示装置29に当選結果を確定表示して前記普電役物を開放する。これにより第2特図始動口23Bへの入賞が可能となる。
なお、普電役物が常時入賞可能な構成の場合には、普電役物の開放により第2特図始動口23Bへの入賞が容易となる。
第1又は第2特図始動口23A,23Bへの入賞があると、これらに起因して乱数値が抽出され、該乱数値に基づいて第1特図又は第2特図の当否判定を行い、第1特図表示装置28A又は第2特図表示装置28Bと演出図柄表示装置21の図柄変動を開始する。第1特図又は第2特図の何れのときも判定結果が大当りであれば、大当り図柄を決めて各表示装置21,28A,28Bに大当り図柄を確定表示して大当り遊技(特別遊技)を実行する構成である。尚、演出図柄表示装置21には特図に対応する擬似演出図柄が表示される。
【0038】
大当り遊技は、第1大入賞装置24を開放し所定の時間または入球数が所定数に達して閉じるまでの動作を1ラウンドとして、所定数のラウンドを継続することを基本遊技としている。そして、大当り遊技の最終ラウンドにおいて第2大入賞装置25を開放して、該最終ラウンドにおいて第2大入賞装置25のVゾーン26への入球があれば、大当り遊技後の遊技状態を大当りの当選確率が高確率となる確率変動(確変)遊技および普図の当選が高確率となり普電役物の平均開放時間が長くなり特図の変動時間が短縮される時間短縮(時短)遊技へと移行する基本構成である。」

エ「【0055】
第1特図の大当り図柄のうち「EP,FH,HP,PE,LH」は「入球困難図柄」とされ、これらに応じた大当り遊技の大入賞装置の開放パターンは、図11に示すように、大当り遊技の第1ラウンドから第12ラウンドまでの各ラウンドで第1大入賞装置24が28秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放され、大当り遊技の最終ラウンドである第13ラウンドにおいて第2大入賞装置25が0.9秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放される。即ち、第2大入賞装置25への入球が困難となる開放パターンであり、換言すればVゾーン26への入球が困難な開放パターンである。
【0056】
一方、第1又は第2特図の大当り図柄「EL,FE,HF,LF,PL」は「入球容易図柄」とされ、これらに応じた大当り遊技の大入賞装置の開放パターンは、大当り遊技の第1ラウンドから第12ラウンドまでの各ラウンドで第1大入賞装置24が28秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放され、大当り遊技の最終ラウンドの第13ラウンドにおいて第2大入賞装置25が28秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放される。即ち、第2大入賞装置25への入球が容易な開放パターンであり、換言すればVゾーン26への入球が容易な開放パターンである。」

オ「【0059】
大当りであってもハズレであっても前記S318の処理に続いて、S320の処理において、前記当否判定の結果を示すデータ(大当り図柄の種類、ハズレの種類(リーチの有無)、変動時間等)を含んだ変動指示コマンドをサブ統合制御装置42に出力するとともに、第1特図表示装置28A又は第2特図表示装置28Bにおいて特別図柄を変動表示させる処理を行い、特別遊技処理1に移行する。従って、サブ統合制御装置42は前記変動指示コマンドを受信することにより、大当り図柄の種類、ハズレ図柄、リーチの有無、変動時間を把握することが出来る。
【0060】
図6の前記S301の処理において特図が変動中であれば(S301:no)、図8に示すようにS330の処理において、特図の変動時間(S318で選択した変動パターンに基づく)が経過したか否かを確認し、変動時間の経過が確認できれば(S330:yes)、図柄停止コマンドをサブ統合制御装置42に出力するとともに、第1特図表示装置28A又は第2特図表示装置28Bを制御してS316又はS319で決定した図柄を確定表示させる(S331)。
図柄停止コマンドを受信したサブ統合制御装置42は演出図柄制御装置43に予め決めておいた特図に対応する擬似(演出)図柄を確定表示させる指示信号を出力し、演出図柄制御装置43は、その信号により演出図柄表示装置21を制御して擬似(演出)図柄を確定表示させる。これにより、特別図柄と擬似(演出)図柄の変動の開始と終了が同じタイミングになる(同期する)。
【0061】
続くS332の処理において、確定表示した特図が大当りを示すか大当り図柄であるか否かを確認する。大当り図柄であれば(S332:yes)、S333の確定図柄表示設定処理において確定図柄を表示させておく時間の設定を行い、S334の処理において第1特典フラグに「1」又は「0」をセットする。第1特典フラグは、特許請求の範囲に記載の「第1の特典情報」に相当し、詳細には前記図7のS316の処理で選択された第1特図又は第2特図の大当たり図柄の種類、即ち、「入球容易図柄」又は「入球困難図柄」のいずれであるかに応じて設定される。図12(a)に示すように、第1特典フラグは、大当り図柄が第1特図の「EP,FH,HP,PE,LH」で「入球困難図柄」のときは「0」がセットされる。一方、第1又は第2特図の大当り図柄の「EL,FE,HF,LF,PL」で「入球容易図柄」のときに「1」がセットされる。尚、前記S334の処理は特許請求の範囲に記載の「第1の特典情報設定手段」に相当する。」

カ「【0066】
次に主制御装置40が実行する「特別遊技処理」を、図13ないし図17に基づいて説明する。「特別遊技処理」は大当り遊技の進行を制御する処理である。
図13に示すように、先ず、大当りフラグに基づいて条件装置が未作動か否かを確認する(S400)。条件装置が未作動であれば(S400:yes)、第1大入賞装置24および第2大入賞装置25が閉鎖中か否かを確認する(S401)。閉鎖中であれば(S401:yes)、大当り遊技の開始演出中か否かを確認する(S402)。大当り遊技の開始演出中であれば(S402:yes)、大当り遊技の開始演出が終了する時間か否かを確認し(S403)、演出が終了する時間であれば(S403:yes)、第1大入賞装置24を開放する大入賞口開放処理(S404)を行い、リターンする。
【0067】
前記S402の処理で大当り遊技の開始演出中でなければ(S402:no)、S405の処理においてインターバル中か否か判定する。このインターバルとは、第1大入賞装置24が閉じている状態から再度、第1大入賞装置24又は第2大入賞装置25が開放されるまでの時間のことである。インターバル中であれば(S405:yes)、次にS406の処理においてインターバルが終了する時間か否かを判定する(S406)。終了する時間であれば(S406:yes)、次回の大当り遊技の動作が第1ラウンド目から第12ラウンド目までの範囲であるか否かを確認する(S407)。そうであれば(S407:yes)、第1大入賞装置24を開放する第1大入賞装置開放処理を行い(S408)、リターンする。
【0068】
次回の大当り遊技の動作が第13ラウンド目であれば(S407:no)、第2大入賞装置25を開放する第2大入賞装置開放処理を行い(S409)、続いてシャッター30を遊技球入球可能位置に変位させる開放処理を行い(S410)、リターンする。
勿論、第2大入賞装置25およびシャッター30の開放態様は、第1特図または第2特図の大当り図柄に応じて開放される。即ち、前記「入球容易図柄」では開放時間が長く、前記「入球困難図柄」では開放時間が短い。
【0069】
前記S405の処理においてインターバル中でなければ(S405:no)、非大当り遊技の終了演出中であるか否かを確認し(S411)、前記終了演出中であれば(S411:no)、サブ統合制御装置42に大当り開始演出を指示するコマンドを送信する大当り開始演出処理を行い(S412)、リターンする。
【0070】
該大当り開始演出処理(S412)では、主制御装置40はサブ統合制御装置42に大当り開始演出指示コマンドを送信し、大当り開始演出指示コマンドを受信したサブ統合制御装置42は、パチンコ機に設けられた各種LED、ランプ113を大当り遊技演出用に激しく発光させたり、大当り遊技用の音声をスピーカ112から出力させる。また、サブ統合制御装置42は、演出図柄制御装置43に信号を送信し、演出図柄表示装置21において大当り開始演出を表示させる。
【0071】
前記S401において第1大入賞装置24又は第2大入賞装置25が開放中であれば(S401:no)、図14に示すように、S420の処理において開放中の大当り遊技が最終の第13ラウンドであるか否か、即ち第2大入賞装置25が開放中であるか否かを確認する。第13ラウンドであれば(S420:yes)、S421の処理において、Vゾーン26へ遊技球の入球があったことを示す「第2特典フラグ」が「0」であるか否かを確認する。「第2特典フラグ」は主制御装置40が記憶する値であり、図12(b)に示すように、値が「1」なら既にVゾーン26に遊技球が入球したことを示し、「0」ならVゾーン26に入球していないことを示す。
【0072】
前記第2特典フラグが「0」であれば(S421:yes)、Vゾーン26への入球があり特定領域SW508が遊技球を検出したか否か確認し(S422)、そうであれば(S422:yes)、前記第2特典フラグに「1」を設定し(S423)、シャッター30の駆動を終了してこれを閉じる開放終了処理を行う(S424)。尚、前記第2特典フラグは特許請求の範囲に記載の「第2の特典情報」に相当し、前記S420?S423の処理は特許請求の範囲に記載の「第2の特典情報設定手段」に相当する。
【0073】
S424の処理、又はS420、S421、S422の否定判定(S420:no、S421:no、S422:no)に続いて、図15に示すように、S430の処理において、作動(開放)中の大入賞装置(第1大入賞装置24又は第2大入賞装置25)への遊技球の入球数が規定数(9個)未満か否かを確認し、規定数(9個)未満であれば(S430:yes)、第1大入賞装置24又は第2大入賞装置25の最大開放時間が経過したか否かを判定し(S431)、開放時間終了でなければ(S431:no、)リターンする。
【0074】
前記S430の処理で入球数が規定数(9個)(S430:no)又は、前記S431の処理で大入賞装置の開放時間終了(S431:yes)であれば、続くS432の処理において開放中の大入賞装置(第1大入賞装置24又は第2大入賞装置25)を閉鎖する大入賞口閉鎖処理を行う。S432の処理後は、該処理で終了したラウンドが最終の第13ラウンド目であったか否か確認し(S433)、第13ラウンド目であれば(S433:yes)、シャッター30がVゾーン26へ遊技球を誘導する開放位置にあるか否かを確認し(S434)、開放中であれば(S434:yes)、シャッター30の閉鎖処理を行う(S435)。
【0075】
該S435の処理後、又は前記S434の処理でシャッター30が閉じていれば(S434:no)、S436の処理においてサブ統合制御装置42に大当り終了演出を指示するコマンドを送信する。該大当り終了演出処理は、前記図13のS412の大当り開始演出処理と同様に、主制御装置40からサブ統合制御装置42に大当り終了演出指示コマンドを送信することによって、パチンコ機に設けられた各種LED、ランプ113や演出図柄表示装置21において大当りの終了演出を行うための処理である。
続くS437の処理において条件装置の停止処理を行う。
前記S433の処理で開放を終了したラウンドが第13ラウンド目でなければ(S433:no)、インターバル処理を開始し(S438)、リターンする。
【0076】
前記S437の処理の後、図16に示すようにS440の処理において、前記第1特典フラグが「1」であるか否かを確認する。第1特典フラグが「1」であれば(S440:yes)、大当り図柄が前記「入球容易図柄」であり、前記第2大入賞装置25の開放時間が長い。
次に、S441の処理において、前記第2特典フラグが「1」であるか否かを確認する。
【0077】
前記S441の処理で第2特典フラグが「1」であれば(S441:yes)、Vゾーン26へ遊技球が入球したことが確認され、続くS442の処理において大当り遊技終了後に遊技状態を確変状態とする確変フラグに「1」をセットするとともに、確変状態の継続期間を計る確変カウンタに「160」をセットする(S443)。これにより大当り遊技終了後、第1又は第2特図の図柄変動が160回に達すまで確変遊技状態となる(図12(c)参照)。
【0078】
また続くS444の処理において大当り遊技終了後に遊技状態を時短状態とする時短フラグに「1」をセットするとともに、時短状態の継続期間を計る時短カウンタに「160」をセットする(S445)。これにより大当り遊技終了後、第1又は第2特図の図柄変動が160回に達すまで時短遊技状態となる(図12(c)参照)。
【0079】
一方、前記S441の処理で第2特典フラグが「1」でなければ(S441:no)、Vゾーン26への入球が無いため、続くS446の処理において前記確変フラグに「0」をセットするとともに、前記確変カウンタに「0」をセットする(S447)。これにより大当り遊技終了後、確変遊技状態とならない(図12(c)参照)。
【0080】
しかしながらこの場合、確変獲得のチャンスがあったにも関わらず、確変を逃したので遊技者救済の観点から、続くS448の処理において前記時短フラグに「1」をセットするとともに、前記時短カウンタに「100」をセットし(S449)、大当り遊技終了後、第1又は第2特図の図柄変動が100回に達すまで時短遊技状態とする(図12(c)参照)。
【0081】
前記S445又はS449の処理の後、前記第1および第2特典フラグをそれぞれ「0」にリセットし(S450)、続くS451の処理において、前記S442ないしS449の処理で設定された前記大当り遊技後の遊技状態を、演出図柄表示装置21上で報知するための指示信号を、演出図柄制御装置21に送信する。次にS452の処理において、前記決定された大当り遊技後の遊技状態を指定する状態指定コマンドを、サブ統合制御装置42に送信する処理を実行する。その後、リターンする。
【0082】
尚、サブ統合制御装置42では、受信した状態指定コマンドに基づいて、各種演出制御を実行する。
また前記状態指定コマンドを送信する処理は、当該大当り遊技終了のタイミングに限らず、特図の変動開始時、更に変動終了時にも行うようにしてもよい。このようにすることで、遊技状態の切り替わるタイミングに先立って、変更する状態指定コマンドを送信することができ、サブ統合制御装置42が実行する演出上の不具合を防止することができる。
【0083】
前記S440の処理において第1特典フラグが「1」でなければ(S440:no)、大当り図柄が前記「入球困難図柄」であり、前記第2大入賞装置25の開放時間が短い。
続いて、図17に示すようにS460の処理において、前記第2特典フラグが「1」であるか否かを確認する。
【0084】
前記S460の処理で第2特典フラグが「1」でなければ(S460:no)、Vゾーン26への入球が無いため、続くS461の処理において前記確変フラグに「0」をセットするとともに、前記確変カウンタに「0」をセットする(S462)。これにより大当り遊技終了後、確変遊技状態とならない(図12(c)参照)。
【0085】
続くS463の処理において前記時短フラグに「1」をセットするとともに、前記時短カウンタに「50」をセットし(S464)、大当り遊技終了後、第1又は第2特図の図柄変動が50回に達すまで時短遊技状態とする。
【0086】
一方、前記S460の処理で第2特典フラグが「1」で(S460:yes)、Vゾーン26へ遊技球が入球したことが確認されると、続くS465の処理において前記確変フラグに「1」をセットするとともに、前記確変カウンタに「160」をセットする(S466)。これにより大当り遊技終了後、第1又は第2特図の図柄変動が160回に達すまで確変遊技状態となる(図12(c)参照)。
【0087】
続くS467の処理において前記時短フラグを「0」をセットするとともに、前記時短カウンタに「0」をセットする(S468)。これにより大当り遊技終了後、時短遊技状態とならない(図12(c)参照)。
【0088】
前記S464又はS468の処理の後、前記図16に示すS450,S451,S452の処理を実行し、その後、リターンする。
【0089】
特典遊技を付与する条件は、大当り図柄が「入球容易図柄」でVゾーン26への入球が有る場合(第1の条件)と、無い場合(第2の条件)、大当り図柄が「入球困難図柄」でVゾーン26への入球が有る場合(第3の条件)と、無い場合(第4の条件)の4通りがあり、各条件によって特典内容が相違する。即ち、最も特典内容が良いのは第1の条件として「入球容易図柄」でVゾーン26への入球が有る場合で、確変および時短を付与する。これに対して第3の条件として「入球困難図柄」でVゾーン26への入球が有る場合は偶発であり、本来、特図の当否判定に関する結果として確変を付与するものでないがVゾーン26への入球が有るにもかかわらず確変とならないと遊技者の疑念が生ずるので、確変のみを付与し前記第1の条件の特典と差異を設けた。
【0090】
また第2の条件として「入球容易図柄」でVゾーン26への入球が無い場合と、第4の条件として「入球困難図柄」でVゾーン26への入球が無い場合は、ともに時短のみが付与されるが、第2の条件では前記遊技者の救済の観点から第4の条件のより時短カウンタの設定値を大きくして時短の継続期間が長くしてある。
尚、図16の前記S440?S449の処理、図17の前記S460?S468の処理は特許請求の範囲に記載の「特典遊技決定手段」に相当する。またS445,S449,S464およびS468の処理は特許請求の範囲に記載の「時短付与回数決定手段」に相当する。」

キ「【0104】
本実施形態のパチンコ機によれば、大当り図柄が「入球困難図柄」でありVゾーン26への入球が極めて困難な開放パターンで大当り遊技が実行されたにも関わらず、不正行為や大入賞口内の予期せぬ停留等によりVゾーン26への入球があった場合には、確変により遊技機の出球性能が上がり設計当初に想定していた遊技機の出球性能から乖離するおそれがある。しかしながらVゾーン26への入球があるにも関わらず確変としないと、遊技者が機台に対して疑念を抱くこととなる。そこで確変を付与する一方、時短遊技を付与しない構成とすることで、遊技者の疑念の問題を解消し、遊技機の出球性能の乖離幅を小さく抑えることができる。
尚、第1大入賞装置24を遊技領域20の中央下部に設けたのに対して第2大入賞装置25を遊技領域20の右寄り位置に設けたので、第2大入賞装置25へ遊技球を入賞させるには、発射ハンドルによる発射強度を通常よりも強くする必要がある。この構成により、意図して発射ハンドルの操作量を増やさなければ第2大入賞装置25へ入賞させることができないため、偶発的なVゾーン26への入球を防ぐ効果を奏する。
【0105】
一方、大当り図柄が「入球容易図柄」でありVゾーン26への入球が容易な開放パターンであるにも関わらず、Vゾーン26へ入球させることができずに確変が付与されなければ、その結果、遊技機の出球性能が低下し、当初想定していた遊技機の出球性能と乖離するおそれがある。また遊技者の落胆も大きい。そこで時短を付与する構成とすることで遊技機の出球性能の乖離幅を小さく抑えることができるとともに、遊技者の救済効果を奏する。
【0106】
また本パチンコ機は、大当り図柄が「入球困難図柄」であり第1特典フラグが「1」であるとき、Vゾーン26への入球の有無(第2特典フラグ)によって時短遊技の付与回数を相違させ、例えばVゾーン26への入球時には「160回」とし、非入球時には「100回」としたので、遊技性に幅を持たせることができる。尚、遊技者保護の観点では非入球時に時短遊技の付与回数を多くし、遊技性を重視すれば入球時に時短遊技の付与回数を多くすることが望ましい。
【0107】
更にまた本パチンコ機は、第1特典フラグ=「0」で第2特典フラグ=「1」のときと第1特典フラグ=「0」で第2特典フラグ=「0」のとき、又は、第1特典フラグ=「1」で第2特典フラグ=「1」のときと第1特典フラグ=「1」で第2特典フラグ=「0」のときとでは、Vゾーン26への入球の有無の違いであって、大当り時に表示される大当り図柄は同一の図柄群から選択されることになる。前者は「入球困難図柄」群、後者は「入球容易図柄」群である。これらの場合、図柄群とVゾーン26への入球の有無によって時短遊技の付与回数を相違させ、例えば前者ではでは「50回」と「0回」、後者では「160回」と「100回」としているので、同一の図柄群であっても時短遊技の付与回数が異なり、遊技に幅を持たせることができる。」

<認定事項>
ク 上記キの【0106】には「また本パチンコ機は、大当り図柄が「入球困難図柄」であり第1特典フラグが「1」であるとき、Vゾーン26への入球の有無(第2特典フラグ)によって時短遊技の付与回数を相違させ、例えばVゾーン26への入球時には「160回」とし、非入球時には「100回」としたので、・・・」と記載されているが、上記オの【0061】の「・・・第1特典フラグは、大当り図柄が第1特図の「EP,FH,HP,PE,LH」で「入球困難図柄」のときは「0」がセットされる。一方、第1又は第2特図の大当り図柄の「EL,FE,HF,LF,PL」で「入球容易図柄」のときに「1」がセットされる・・・」との記載、上記キの【0104】の「・・・大当り図柄が「入球困難図柄」でありVゾーン26への入球が極めて困難な開放パターンで大当り遊技が実行されたにも関わらず、不正行為や大入賞口内の予期せぬ停留等によりVゾーン26への入球があった場合には、確変により遊技機の出球性能が上がり設計当初に想定していた遊技機の出球性能から乖離するおそれがある。しかしながらVゾーン26への入球があるにも関わらず確変としないと、遊技者が機台に対して疑念を抱くこととなる。そこで確変を付与する一方、時短遊技を付与しない構成とすることで・・・」との記載、同【0105】の「一方、大当り図柄が「入球容易図柄」でありVゾーン26への入球が容易な開放パターンであるにも関わらず、Vゾーン26へ入球させることができずに確変が付与されなければ、・・・(中略)・・・そこで時短を付与する構成とすることで遊技機の出球性能の乖離幅を小さく抑えることができるとともに、遊技者の救済効果を奏する。」との記載、同【0107】の「前者は「入球困難図柄」群、後者は「入球容易図柄」群である。これらの場合、図柄群とVゾーン26への入球の有無によって時短遊技の付与回数を相違させ、例えば前者ではでは「50回」と「0回」、後者では「160回」と「100回」としているので・・・」との記載から、【0106】の「第1特典フラグが「1」」が「第1特典フラグが「0」」の誤記ではなく、「入球困難図柄」は「入球容易図柄」の誤記と認める。

<認定事項>
ケ 上記キの【0106】には「・・・大当り図柄が「入球容易図柄」(当審注:上記クのとおり誤記と認めた。)であり第1特典フラグが「1」であるとき、Vゾーン26への入球の有無(第2特典フラグ)によって時短遊技の付与回数を相違させ、例えばVゾーン26への入球時には「160回」とし、非入球時には「100回」としたので、遊技性に幅を持たせることができる。尚、遊技者保護の観点では非入球時に時短遊技の付与回数を多くし、遊技性を重視すれば入球時に時短遊技の付与回数を多くすることが望ましい。」と記載されており、同【0107】には「・・・前者は「入球困難図柄」群、後者は「入球容易図柄」群である。・・・図柄群とVゾーン26への入球の有無によって時短遊技の付与回数を相違させ、例えば前者ではでは「50回」と「0回」、後者では「160回」と「100回」としているので、同一の図柄群であっても時短遊技の付与回数が異なり、遊技に幅を持たせることができる。」と記載されており、図柄群毎に2種類の時短回数を設け、その多寡について「遊技者保護の観点では非入球時に時短遊技の付与回数を多くし」と記載していることから、引用例1には、大当り図柄が入球容易図柄群でありVゾーン26への入球が容易な開放パターンであるにも関わらず、Vゾーン26へ入球させることができずに確変が付与されない場合に、遊技者保護の観点から、時短遊技の付与回数を、Vゾーン26への非入球時には入球時に比べて多い回数とし、大当たり図柄が入球困難図柄群である場合には、入球容易図柄群である場合よりも時短遊技の付与回数を少ない回数とすることが記載されているといえる。

コ 上記アないしケからみて、引用例1には、次の発明が記載されている。なお、aないしlについては分説するため合議体が付し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 外レール201と内レール202とによって囲まれた略円形の遊技領域20が形成された遊技盤2と(【0022】)、
b 遊技領域20の第2特図始動口23Bの直下位置には、開閉板にて開閉可能に設けられ大当り遊技で開放される第1大入賞装置24が設置され(【0024】、【0055】、【0056】)、
c 遊技領域20のセンターケース200の右側斜め下方位置には、開閉板にて開閉可能に設けられ大当り遊技で開放される第2大入賞装置25が設置されており、第2大入賞装置25の内部には、Vゾーン26およびVゾーン26への入球を規制するシャッター30が設けられ(【0025】、【0055】、【0056】)、
d 遊技領域20のセンターケース200の中央直下位置には、常時、遊技球の入球が可能で、入球により第1特図の抽選を実行する第1特図始動口23Aが設けてあり、更にその直下位置にはチューリップ式普通電動役物からなり、入球時に第2特図の抽選を実行する第2特図始動口23Bが設置され、該第2特図始動口23Bは普通電動役物の開放時にのみ入球(入賞)可能であり(【0023】)、
e 遊技の制御を司る主制御装置40を備え(【0029】)、
主制御装置40は、搭載しているプログラムに従って動作して、検出信号などに基づいて遊技の進行に関わる各種のコマンドを生成し、演出中継端子板532を介してサブ統合制御装置42、演出図柄制御装置43へ向けてのコマンドの出力や、図柄表示装置中継端子板533を介して第1特図表示装置28A、第2特図表示装置28B、第1特図保留数表示装置281、第2特図保留数表示装置282、普図表示装置29および普図保留数表示装置291等の表示制御を行ない(【0031】)、第1大入賞口ソレノイド510又は第2大入賞口ソレノイド511を制御して第1大入賞装置24又は第2大入賞装置25を開放作動せしめ、シャッターソレノイド512を制御してVゾーン26を開閉作動せしめ、更に普電役物ソレノイド513を制御して第2特図始動口23Bの普電役物の開閉作動せしめ(【0032】)、
第1又は第2特図始動口23A,23Bへの入賞があると、これらに起因して乱数値が抽出され、該乱数値に基づいて第1特図又は第2特図の当否判定を行い、第1特図表示装置28A又は第2特図表示装置28Bと演出図柄表示装置21の図柄変動を開始し、第1特図又は第2特図の何れのときも判定結果が大当りであれば、大当り図柄を決めて各表示装置21,28A,28Bに大当り図柄を確定表示して大当り遊技を実行し(【0037】)、
f 第1特図の大当り図柄のうち入球困難図柄に応じた大当り遊技の大入賞装置の開放パターンは、大当り遊技の第1ラウンドから第12ラウンドまでの各ラウンドで第1大入賞装置24が28秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放され、大当り遊技の最終ラウンドである第13ラウンドにおいて第2大入賞装置25が0.9秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放されるVゾーン26への入球が困難な開放パターンであり(【0055】)、
g 第1又は第2特図の大当り図柄のうち入球容易図柄に応じた大当り遊技の大入賞装置の開放パターンは、大当り遊技の第1ラウンドから第12ラウンドまでの各ラウンドで第1大入賞装置24が28秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放され、大当り遊技の最終ラウンドの第13ラウンドにおいて第2大入賞装置25が28秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放されるVゾーン26への入球が容易な開放パターンであり(【0056】)、
h 該最終ラウンドにおいて第2大入賞装置25のVゾーン26への入球があれば、大当り遊技後の遊技状態を大当りの当選確率が高確率となる確率変動遊技および普図の当選が高確率となり普電役物の平均開放時間が長くなり特図の変動時間が短縮される時間短縮遊技へと移行し(【0038】)、
i 該最終ラウンドにおいて第2大入賞装置25のVゾーン26への入球が無い場合は、時短のみが付与され時間短縮遊技へと移行し(【0038】、【0089】、【0090】)、
j 大当り図柄が入球容易図柄群でありVゾーン26への入球が容易な開放パターンであるにも関わらず、Vゾーン26へ入球させることができずに確変が付与されない場合に、遊技者保護の観点から、時短遊技の付与回数を、Vゾーン26への非入球時には入球時に比べて多い回数とし、大当たり図柄が入球困難図柄群である場合には、入球容易図柄群である場合よりも、時短遊技の付与回数を少ない回数とし(【0106】、【0107】、上記(ケ))、
k 大当り遊技終了後、第1又は第2特図の図柄変動が付与された回数に達するまで時短遊技状態とする(【0078】、【0080】、【0085】)、
l 弾球遊技機(【0022】)。」(以下「引用発明」という。)

(3)周知技術
ア 周知例1
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-14491号公報(平成26年1月30日出願公開、以下「周知例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技者に有利な特別遊技が実行される遊技機に関する。」

(イ)「【0100】
図14は、上記のようにして特別遊技が実行された場合に、当該特別遊技の終了後の遊技状態を設定するための遊技状態設定テーブルを説明する図である。特別遊技の終了後の遊技状態は、大当たりの抽選によって決定された特別図柄の種別と、大当たり当選時の遊技状態とを参照して次のように決定される。
【0101】
図示のとおり、大当たりに当選した場合には、特別図柄の種別に拘わらず、特別遊技の終了後に高確率遊技状態に設定される。なお、高確率遊技状態の継続回数(以下、「高確回数」という)は8回に設定される。これは、高確率遊技状態が、大当たりの抽選結果が8回確定するまで継続することを意味している。ただし、上記した高確回数は1の高確率遊技状態における最大継続回数を示すものであり、上記の継続回数に到達するまでの間に大当たりに当選した場合には、再度、高確回数の設定が行われることとなる。
【0102】
また、特別遊技の終了後には、高確率遊技状態に設定されるとともに、必ず時短遊技状態に設定されることとなるが、この時短遊技状態の継続回数(以下、「時短回数」という)は、大当たり当選時の遊技状態に応じて次のようにして決定される。すなわち、大当たり当選時の遊技状態が、低確率遊技状態であって、かつ、非時短遊技状態であった場合には、特別図柄(大当たり図柄)の種別を問わず、時短回数が8回に設定され、その他の遊技状態であった場合には、特別図柄(大当たり図柄)の種別を問わず、時短回数が100回に設定される。
【0103】
なお、ここでは、特別図柄の種別に拘わらず、遊技状態が設定されることとしたが、特別図柄の種別に応じて、例えば、低確率遊技状態に設定したり、あるいは、時短回数を異ならせたりしてもよい。」

(ウ)「【図14】



イ 周知例2
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-202361号公報(平成25年10月7日出願公開、以下「周知例2」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、大当り抽選に当選した際の遊技状態に応じて、大当り遊技終了後に付与する特典を変化させる遊技機に関する。」

(イ)「【0044】
本実施形態のパチンコ遊技機1では、大当り抽選に当選した場合、3種類の大当りの中から1つの大当りが決定され、その決定された大当りに基づく大当り遊技が付与される。3種類の大当りのうち、何れの大当りとするかは、大当り抽選に当選した場合に決定する特図(大当り図柄)の種類に応じて決定される。
【0045】
図柄A及び図柄aには、特図1又は特図2の大当り図柄として50種類がそれぞれ振分けられている。図柄B及び図柄bには、特図1又は特図2の大当り図柄として25種類がそれぞれ振分けられている。図柄C及び図柄cには、特図1又は特図2の大当り図柄として25種類がそれぞれ振分けられている。
【0046】
図柄A,aの大当りは、16ラウンド大当り遊技を付与するとともに、当選時の遊技状態に関係なく、大当り遊技終了後、次回大当り抽選に当選するまでの間、確変状態を付与する。その一方で、図柄A,aの大当りは、大当り抽選当選時の遊技状態に応じて、大当り遊技終了後に異なる条件下で変短状態を付与する。具体的には、第1特図変動ゲームで大当り抽選に当選し、かつ図柄Aが決定された場合、大当り抽選当選時の遊技状態が「非変短状態」であるなら、変短上限回数を10回とする変短状態を付与する。この変短上限回数「10回」は、第1保留記憶数の上限数(4)又は第2保留記憶数の上限数(4)よりも多い回数であって、100回よりも少ない回数となっている。一方、第1特図変動ゲームで大当り抽選に当選し、かつ図柄Aが決定された場合、大当り抽選当選時の遊技状態が「変短状態」であるなら、次回大当り抽選に当選するまでの間、変短状態を付与する。また、第2特図変動ゲームで大当り抽選に当選し、かつ図柄aが決定された場合、大当り抽選当選時の遊技状態が変短状態であるか否かに係わらず、次回大当り抽選に当選するまでの間、変短状態を付与する。以下の説明では、図柄A,aの大当りを「16R確変大当り」と示す場合がある。
【0047】
図柄B,bの大当りは、2ラウンド大当り遊技を付与するとともに、当選時の遊技状態に関係なく、大当り遊技終了後、次回大当り抽選に当選するまでの間、確変状態を付与する。その一方で、図柄B,bの大当りは、大当り抽選当選時の遊技状態に応じて、大当り遊技終了後に異なる条件下で変短状態を付与する。具体的には、第1特図変動ゲーム又は第2特図変動ゲームで大当り抽選に当選し、かつ図柄B又は図柄bが決定された場合、大当り抽選当選時の遊技状態が「非変短状態」であるなら、変短上限回数を4回とする変短状態を付与する。この変短上限回数「4回」は、第1保留記憶数の上限数(4)又は第2保留記憶数の上限数(4)と同一回数となっている。一方、第1特図変動ゲーム又は第2特図変動ゲームで大当り抽選に当選し、かつ図柄B又は図柄bが決定された場合、大当り抽選当選時の遊技状態が「変短状態」であるなら、次回大当り抽選に当選するまでの間、変短状態を付与する。以下の説明では、図柄B,bの大当りを「2R確変大当り」と示す場合がある。
【0048】
図柄C,cの大当りは、16ラウンド大当り遊技を付与するとともに、当選時の遊技状態に関係なく、大当り遊技終了後、確変状態を付与しない(非確変状態を付与する)。その一方で、図柄C,cの大当りは、大当り抽選当選時の遊技状態に応じて、大当り遊技終了後に異なる条件下で変短状態を付与する。具体的には、第1特図変動ゲームで大当り抽選に当選し、かつ図柄Cが決定された場合、大当り抽選当選時の遊技状態が「非変短状態」であるなら、変短上限回数を10回とする変短状態を付与する。一方、第1特図変動ゲームで大当り抽選に当選し、かつ図柄Cが決定された場合、大当り抽選当選時の遊技状態が「変短状態」であるなら、変短上限回数を100回とする変短状態を付与する。また、第2特図変動ゲームで大当り抽選に当選し、かつ図柄cが決定された場合、大当り抽選当選時の遊技状態が変短状態であるか否かに係わらず、変短上限回数を100回とする変短状態を付与する。以下の説明では、図柄C,cの大当りを「16R非確変大当り」と示す場合がある。」

(ウ)「【図17】



ウ 周知例3
原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-110066号公報(平成20年5月15日出願公開、以下「周知例3」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機に関する。」

(イ)「【0195】
したがって、本実施形態によれば、低確率状態から、確変大当りを経て高確率状態に移行した場合には、333回の時短が与えられる。また、高確率状態から確変大当りを経て高確率状態に移行した場合、所謂、確変大当りの連チャンの場合には、70回の時短が与えられる。また、通常大当りに当選した場合には、30回の時短が与えられる。ここで、高確率状態において2ラウンド通常大当り(突然時短)に当選した場合、2ラウンド通常大当り当選時の残り時短回数が、30回より上であれば、前回の残り時短回数が時短カウンタにセットされる。例えば、通常状態において2ラウンド確変大当り(突然確変)に当選した場合には333回の時短が付与される。そして、残り300回の時に2ラウンド通常大当り(突然時短)に当選した場合、大当り遊技終了後、300回の時短が付与される。なお、残り300回の時に15ラウンド通常大当り(通常大当り)に当選した場合、大当り遊技終了後、30回の時短が付与される。このように、メインCPU66は、複数の遊技の実行を制御する実行制御手段の一例である。また、メインCPU66は、特別遊技の終了後に、前記第1モード設定手段及び前記第2モード設定手段によって設定されたモード、及び前記条件設定手段によって設定された条件に基づいて遊技の実行を制御する実行制御手段の一例である。」

エ 周知技術1
上記アないしウで挙げた周知例1ないし3の記載からみて、
遊技機において、「大当り遊技状態に移行する前の遊技状態に応じて、大当り遊技終了後に付与する時短遊技の回数を複数の回数の中から何れかの回数を決定可能とすること。」は本願出願前に周知(以下「周知技術1」という。)であると認める。

オ 周知例4
本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2009-178265号公報(平成21年8月13日出願公開、以下「周知例4」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する可変表示装置を備え、可変表示装置に特定表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に移行させるとともに、特定遊技状態が終了したのちに通常状態であるときに比べて識別情報の可変表示の表示結果が特定表示結果となりやすい特別遊技状態に移行可能なパチンコ遊技機やパチスロ遊技機等の遊技機に関する。」

(イ)「【0248】
図36は、特別図柄プロセス処理における大当り終了処理(ステップS307)を示すフローチャートである。大当り終了処理において、CPU56は、大当り終了表示タイマが設定されているか否か確認し(ステップS150)、大当り終了表示タイマが設定されている場合には、ステップS154に移行する。大当り終了表示タイマが設定されていない場合には、大当りフラグをリセットし(ステップS151)、大当り終了指定コマンドを送信する制御を行う(ステップS152)。ここで、確変大当りであった場合には大当り終了2指定コマンドを送信し、突然確変大当りであった場合には小当り/突確終了指定コマンドを送信し、いずれでもない場合には大当り終了1指定コマンドを送信する。そして、大当り終了表示タイマに、画像表示装置9において大当り終了表示が行われている時間(大当り終了表示時間)に対応する表示時間に相当する値を設定し(ステップS153)、処理を終了する。なお、ステップS152の処理を、大入賞口開放中処理におけるステップS442の前で実行してもよい。
【0249】
ステップS154では、大当り終了表示タイマの値を1減算する。そして、CPU56は、大当り終了表示タイマの値が0になっているか否か、すなわち大当り終了表示時間が経過したか否か確認する(ステップS155)。経過していなければ処理を終了する。経過していれば、大当りの種別が確変大当りまたは突然確変大当りであったか否か確認する(ステップS160)。
【0250】
大当りの種別が確変大当りでも突然確変大当りでもない場合は、ステップS163に移行する。確変大当りまたは突然確変大当りであった場合には、確変フラグをセットして遊技状態を確変状態に移行させる(ステップS161)。また、確変回数カウンタに70の値をセットする(ステップS162)。これにより、大当り遊技の終了後、確変状態が70回の変動だけ継続されることになる(ステップS141B,S142B参照)。そして、ステップS163に移行する。
【0251】
ステップS163では、CPU56は、時短フラグをセットし(ステップS163)、時短状態が継続可能な時短回数として50回、70回または100回のいずれにするかを決定する時短回数決定処理を実行する(ステップS164)。なお、時短回数決定処理では、例えば、時短回数を決定するための乱数値(時短回数決定用乱数値;図9に図示せず)を抽出し、抽出した乱数値にもとづいて時短回数を50回、70回または100回のいずれかにするかを決定する。そして、CPU56は、時短回数決定処理で決定した時短回数(50回、70回または100回)を示す値を時短回数カウンタにセットする(ステップS165)。そして、特別図柄プロセスフラグの値を特別図柄通常処理(ステップS300)に対応した値に更新する(ステップS166)。」

(ウ)「【図36】



カ 周知例5
本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-55488号公報(平成24年3月22日出願公開、以下「周知例5」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ぱちんこ遊技機等の弾球遊技機に関し、特に弾球遊技機における遊技の進行を制御する技術に関する。」

(イ)「【0091】
図5は、通常状態において第1特別図柄192または第2特別図柄193の停止図柄を決定するときに参照される図柄判定テーブルを模式的に示す図である。当否抽選の結果が大当りの場合、「1」?「9」の数字で表される特別図柄のいずれかが選択されよう、図柄判定テーブルには、これらの特別図柄と図柄抽選値との対応関係が定められている。各特別図柄には、確変を伴うか否か、時短を伴うか否かが定められている。第1当否判定手段113および第2当否判定手段117は、図柄抽選値がいずれの範囲に含まれるかに応じて特別図柄「1」?「9」のうちいずれかを選択する。特別図柄「1」?「3」が選択された場合には確変を伴なう大当りとなる。一方、特別図柄「4」?「9」が選択された場合には確変を伴わない大当りとなる。図柄抽選値の範囲は各特別図柄にほぼ均等に割り当てられる結果、大当りのうち約33%の確率で確変を伴う当りとなる。
【0092】
また、図5に示すように、特別図柄「1」?「4」が選択された場合には入球容易性が高い時短が伴う。一方、特別図柄「5」?「9」が選択された場合には時短が伴わない通常状態となる。本実施例では、時短を伴う大当りの場合、特別図柄「1」?「4」のどの特別図柄が選択された場合においても50回の終期回数が設定される。しかし、時短の終期回数がこれに限られないことは勿論であり、例えば「1」?「4」のうち「1」または「2」が選択された場合には50回、「3」または「4」が選択された場合には100回など、選択される特別図柄に応じて異なる終期回数が設定されてもよい。本実施例では、通常状態において大当りとなったときの時短への移行確率は約44%と比較的低い設定とされている。」

キ 周知技術2
上記オないしカで挙げた周知例4ないし5の記載からみて、
遊技機において、「大当り遊技状態の終了後に確変遊技状態になる場合に決定可能な時短遊技の最大回数と、非確変遊技状態になる場合に決定可能な時短遊技の最大回数とが同じであること。」は本願出願前に周知(以下「周知技術2」という。)であると認める。

(4)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の構成aは、本願補正発明の特定事項Aに相当する。

(イ)引用発明の「遊技領域20の第2特図始動口23Bの直下位置」に設置されることは、本願補正発明の「前記遊技領域に設けられ」ることに相当する。また、引用発明の「開閉板にて開閉可能に設けられ大当り遊技で開放される第1大入賞装置24」に「遊技球」(本願補正発明の「遊技媒体」に相当)が入球することは明らかであるから、引用発明の「開閉板にて開閉可能に設けられ大当り遊技で開放される第1大入賞装置24」は、本願補正発明の「遊技媒体を受入れ易い第1状態と、遊技媒体を受入れ難い第2状態とに変位可能な第1可変入賞装置」に相当する。
してみると、引用発明の構成bは、本願補正発明の特定事項Bに相当する。

(ウ)引用発明の「遊技領域20のセンターケース200の右側斜め下方位置」に設置されることは、本願補正発明の「前記遊技領域に設けられ」ることに相当する。また、引用発明の「開閉板」が「大当り時に開放される」際に、「第2大入賞装置25」及び「第2大入賞装置25の内部」に設けられた「Vゾーン26」に「遊技球」が入球することは明らかであるから、引用発明の「開閉板にて開閉可能に設けられ大当り遊技で開放される第2大入賞装置25」、「Vゾーン26」は、それぞれ本願補正発明の「遊技媒体を受入れ易い第1状態と、遊技媒体を受入れ難い第2状態とに変位可能である」「第2可変入賞装置」、「遊技媒体が通過可能な特定領域」に相当する。
してみると、引用発明の構成cは、本願補正発明の特定事項Cに相当する。

(エ)引用発明の「遊技領域20のセンターケース200の中央直下位置」に設置された「第1特図始動口23A」の「更にその直下位置に」「設置され」ることは、本願補正発明の「前記遊技領域に設けられる」ることに相当する。
また、引用発明の「第2特図始動口23B」は、「普通電動役物の開放時にのみ入球(入賞)可能であ」るから、引用発明の「第2特図始動口23B」、「普通電動役物」は、それぞれ本願補正発明の「通過領域」、「遊技媒体が通過し易い開放状態と、遊技媒体が通過し難い閉鎖状態とに変位可能な開閉部材」に相当する。
してみると、引用発明の構成dは、本願補正発明の特定事項D及びEに相当する。

(オ)引用発明では「第1又は第2特図始動口23A,23Bへの入賞があると、これらに起因して乱数値が抽出され、該乱数値に基づいて第1特図又は第2特図の当否判定を行い、第1特図表示装置28A又は第2特図表示装置28Bと演出図柄表示装置21の図柄変動を開始し、第1特図又は第2特図の何れのときも判定結果が大当りであれば、大当り図柄を決めて各表示装置21,28A,28Bに大当り図柄を確定表示して大当り遊技を実行し」ていることから、引用発明の「第2特図」、「第2特図表示装置28B」、「大当り図柄を決めて」「第2特図表示装置28B」「に大当り図柄を確定表示」及び「大当り遊技を実行」は、それぞれ本願補正発明の「識別情報」、「表示手段」、「前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示」及び「遊技者に有利な大当り遊技状態に移行制御」に相当する。そして、引用発明では、「主制御装置40」が上記制御を実行していることから、引用発明の「主制御装置40」は本願補正発明の「遊技状態移行制御手段」に相当する機能を備えているといえる。
してみると、引用発明の構成eは、本願補正発明の特定事項F及びGに相当する。

(カ)引用発明の「大当り遊技」において「大当り遊技の第1ラウンドから第12ラウンドまでの各ラウンドで第1大入賞装置24が28秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放され」ることが、本願補正発明の「大当り遊技状態において、前記第1可変入賞装置を前記第1状態及び前記第2状態に変位させる第1ラウンド遊技を実行」することに相当することは明らかであり、引用発明では、「主制御装置40」が上記制御を実行していることから、引用発明の構成f及びgは、本願補正発明の特定事項Hに相当する。

(キ)引用発明の「大当り遊技」において「第1特図の大当り図柄のうち入球困難図柄に応じた大当り遊技」では「第2大入賞装置25」が「大当り遊技の最終ラウンドである第13ラウンドにおいて第2大入賞装置25が0.9秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放され」、「第1又は第2特図の大当り図柄のうち入球容易図柄に応じた大当り遊技」では「第2大入賞装置25」が「大当り遊技の最終ラウンドの第13ラウンドにおいて第2大入賞装置25が28秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放され」ることが、本願補正発明の「大当り遊技状態において、前記第2可変入賞装置を前記第1状態及び前記第2状態に変位させる第2ラウンド遊技を実行」することに相当することは明らかであり、引用発明では、「主制御装置40」が上記制御を実行していることから、引用発明の構成f及びgは、本願補正発明の特定事項Iに相当する。

(ク)上記(キ)のとおり引用発明の「最終ラウンド」が本願補正発明の「第2ラウンド遊技」に相当し、引用発明では、「該最終ラウンドにおいて第2大入賞装置25のVゾーン26への入球があれば、大当り遊技後の遊技状態を大当りの当選確率が高確率となる確率変動遊技および普図の当選が高確率となり普電役物の平均開放時間が長くなり特図の変動時間が短縮される時間短縮遊技へと移行」することから、引用発明の「大当りの当選確率が高確率となる確率変動遊技」を行っている遊技状態が、本願補正発明の「前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示される確率が相対的に高い確変遊技状態」に相当する。
そして、引用発明では、「主制御装置40」が上記制御を実行していることから、引用発明の「主制御装置40」の一部の機能は、本願補正発明の「確変遊技状態制御手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成hは、本願補正発明の特定事項Jに相当する。

(ケ)引用発明では「該最終ラウンドにおいて第2大入賞装置25のVゾーン26への入球が無い場合は、時短のみが付与され時間短縮遊技へと移行」することから、当該「時短のみが付与され」る「時間短縮遊技」は、本願補正発明の「前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示される確率が相対的に低い非確変遊技状態」に相当する。
そして、引用発明では、「主制御装置40」が上記制御を実行していることから、引用発明の「主制御装置40」の一部の機能は、本願補正発明の「非確変遊技状態制御手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成iは、本願補正発明の特定事項Kに相当する。

(コ)引用発明では、「大当り図柄が入球容易図柄群でありVゾーン26への入球が容易な開放パターンであるにも関わらず、Vゾーン26へ入球させることができずに確変が付与されない場合に、遊技者保護の観点から、時短遊技の付与回数を、Vゾーン26への非入球時には入球時に比べて多い回数とし」ていることから、引用発明の「Vゾーン26への非入球時」の場合の「付与回数」が本願補正発明の「第2回数」に相当し、引用発明の「Vゾーン26への」「入球時」の場合の「付与回数」が本願補正発明の「第1回数」に相当する。
そして、引用発明では、「主制御装置40」が上記制御を実行していることから、引用発明の「主制御装置40」の一部の機能は、本願補正発明の「回数決定手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成jは、本願補正発明の特定事項Lに相当する。

(サ)引用発明の「大当り遊技後の遊技状態」として「普図の当選が高確率となり普電役物の平均開放時間が長くなり特図の変動時間が短縮される時間短縮遊技へと移行」することが、本願補正発明の「大当り遊技状態の終了後において、前記開閉部材が相対的に開放状態になり易い状態を含む時短遊技状態」に「移行される」ことに相当し、「主制御装置40」が上記制御を実行していることから、引用発明の「主制御装置40」の一部の機能は、本願補正発明の「時短遊技状態制御手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成hは、本願補正発明の特定事項Mに相当する。

(シ)引用発明は「大当り遊技終了後、第1又は第2特図の図柄変動が付与された回数に達するまで時短遊技状態とする」ことから、付与された回数に達すると時短遊技状態が終わり時短遊技状態でない状態とすることは明らかであるから、その時短遊技状態でない状態が本願補正発明の「非時短遊技状態」に相当する。
そして、主制御装置40が上記制御を実行していることから、引用発明の「主制御装置40」の一部の機能は、本願補正発明の「非時短状態制御手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成kは、本願補正発明の特定事項Nに相当する。

(ス)引用発明は「第1又は第2特図の大当り図柄のうち入球容易図柄に応じた大当り遊技の大入賞装置の開放パターンは、大当り遊技の第1ラウンドから第12ラウンドまでの各ラウンドで第1大入賞装置24が28秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放され、大当り遊技の最終ラウンドの第13ラウンドにおいて第2大入賞装置25が28秒間又は9個の遊技球が入賞するまで開放される」ことから、引用発明の「第1又は第2特図の大当り図柄のうち入球容易図柄に応じた大当り遊技」が、本願補正発明の「第1大当り遊技状態」に相当する。
そして、主制御装置40が上記制御を実行していることから、引用発明の「主制御装置40」の一部の機能は、本願補正発明の「遊技状態移行制御手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成gは、本願補正発明の特定事項Oに相当する。

(セ)引用発明では「大当り図柄が入球容易図柄群でありVゾーン26への入球が容易な開放パターンであるにも関わらず、Vゾーン26へ入球させることができずに確変が付与されない場合に、遊技者保護の観点から、時短遊技の付与回数を、Vゾーン26への非入球時には入球時に比べて多い回数とし」ており、大当り遊技終了後に、大当りの当選確率が高確率となる確率変動遊技とならない場合の時短遊技の付与回数を、大当りの当選確率が高確率となる確率変動遊技となる場合の時短遊技の付与回数より多くしている。
よって、引用発明の「大当り図柄が入球容易図柄群でありVゾーン26への入球が容易な開放パターンであるにも関わらず、Vゾーン26へ入球させることができずに確変が付与されない場合に、遊技者保護の観点から、時短遊技の付与回数を、Vゾーン26への非入球時には入球時に比べて多い回数とし」ていることは、本願補正発明の「前記特定領域に遊技媒体が通過して前記第1大当り遊技状態の終了後に前記確変遊技状態制御手段により確変遊技状態に制御される場合、第1回数を決定することが可能であると共に、前記特定領域に遊技媒体が通過せずに前記第1大当り遊技状態の終了後に前記非確変遊技状態制御手段により非確変遊技状態に制御される場合、第2回数を決定することが可能であ」ることに相当する。
また、引用発明では、大当り図柄の種類とVゾーン26への入球の有無で時短遊技の付与回数を決定しており、大当り遊技状態への移行前の遊技状態は時短遊技の付与回数に影響していないことから、大当り遊技前の遊技状態が大当り遊技終了後に大当りの当選確率が高確率となる確率変動遊技であって、時短遊技を行っている場合にも、時短遊技の付与回数を構成jと同様に決定することは明らかである。
そして、主制御装置40が上記制御を実行していることから、引用発明の「主制御装置40」の一部の機能は、本願補正発明の「回数決定手段」の一部の機能(特定事項Q)に相当する。
してみると、引用発明の構成jは、本願補正発明の特定事項Qに相当する。

(ソ)引用発明の構成lの「弾球遊技機」は、本願補正発明の特定事項Sの「遊技機」に相当する。

イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技領域を有する遊技盤と、
B 前記遊技領域に設けられ、遊技媒体を受入れ易い第1状態と、遊技媒体を受入れ難い第2状態とに変位可能な第1可変入賞装置と、
C 前記遊技領域に設けられ、遊技媒体を受入れ易い第1状態と、遊技媒体を受入れ難い第2状態とに変位可能であると共に、遊技媒体が通過可能な特定領域を有する第2可変入賞装置と、
D 前記遊技領域に設けられ、遊技媒体が通過可能な通過領域と、
E 前記遊技領域に設けられ、前記通過領域に遊技媒体が通過し易い開放状態と、遊技媒体が通過し難い閉鎖状態とに変位可能な開閉部材と、
F 前記通過領域への遊技媒体の通過に基づいて、識別情報を変動表示することが可能な表示手段と、
G 前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示されたことを条件に、遊技者に有利な大当り遊技状態に移行制御可能な遊技状態移行制御手段と、
H 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第1可変入賞装置を前記第1状態及び前記第2状態に変位させる第1ラウンド遊技を実行可能な第1ラウンド遊技実行手段と、
I 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2可変入賞装置を前記第1状態及び前記第2状態に変位させる第2ラウンド遊技を実行可能な第2ラウンド遊技実行手段と、
J 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2ラウンド遊技実行手段により実行される第2ラウンド遊技で前記特定領域に遊技媒体が通過したことに基づいて、前記大当り遊技状態の終了後に、前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示される確率が相対的に高い確変遊技状態に制御可能な確変遊技状態制御手段と、
K 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態において、前記第2ラウンド遊技実行手段により実行される第2ラウンド遊技で前記特定領域に遊技媒体が通過しなかったことに基づいて、前記大当り遊技状態の終了後に、前記表示手段に特定態様で識別情報が停止表示される確率が相対的に低い非確変遊技状態に制御可能な非確変遊技状態制御手段と、
L 第1回数と、前記第1回数よりも多い第2回数とを含む複数の回数の中から、何れかの回数を決定可能な回数決定手段と、
M 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態の終了後において、前記開閉部材が相対的に開放状態になり易い状態を含む時短遊技状態に制御可能な時短遊技状態制御手段と、
N 前記時短遊技状態制御手段により時短遊技状態に制御されてから前記表示手段により識別情報の変動表示された回数が、前記回数決定手段により決定された回数になったことを条件に、前記開閉部材が相対的に開放状態になり難い状態を含む非時短遊技状態に制御可能な非時短遊技状態制御手段と、
を備え、
O 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される大当り遊技状態には、前記第1ラウンド遊技実行手段が所定回数の第1ラウンド遊技を実行すると共に、前記第2ラウンド遊技実行手段が所定回数の第2ラウンド遊技を実行することが可能な第1大当り遊技状態が含まれ、
Q 前記遊技状態移行制御手段の制御により移行される第1大当り遊技状態において前記第2ラウンド遊技実行手段が所定回数の第2ラウンド遊技を実行中に、前記第1大当り遊技状態への移行前の遊技状態が、前記確変遊技状態制御手段により制御される確変遊技状態及び前記時短遊技状態制御手段により制御される時短遊技状態であり、前記特定領域に遊技媒体が通過して前記第1大当り遊技状態の終了後に前記確変遊技状態制御手段により確変遊技状態に制御される場合、第1回数を決定することが可能であると共に、前記特定領域に遊技媒体が通過せずに前記第1大当り遊技状態の終了後に前記非確変遊技状態制御手段により非確変遊技状態に制御される場合、第2回数を決定することが可能である、
S 遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(特定事項P)
「前記回数決定手段」は、
本願補正発明では、「前記第1大当り遊技状態に移行する前の遊技状態に応じて、前記複数の回数の中から、何れかの回数を決定可能であ」るのに対し、
引用発明では、大当り遊技に移行する前の遊技状態に応じて回数を決定するのではなく大当り図柄の種類(「入球困難図柄」、「入球容易図柄」)及び「Vゾーン26」への入賞の有無で決定している点。

・相違点2(特定事項R)
「前記回数決定手段」は、
本願補正発明では、「前記特定領域に遊技媒体が通過した場合に決定可能な最大回数と、前記特定領域に遊技媒体が通過しない場合に決定可能な最大回数とは同じである」のに対して、
引用発明では、「Vゾーン26」に遊技球が通過した場合に決定可能な最大回数と、「Vゾーン26」に遊技球が通過しない場合に決定可能な最大回数との関係が不明である点。

(5)判断
ア 相違点1と2は関連しているため併せて検討する。
引用発明では、時短遊技の付与回数を、大当り図柄の種類及びVゾーン26への入賞の有無で決定しているものの、上記(3)エで説示したとおり、遊技機の分野において、大当り遊技状態に移行する前の遊技状態に応じて、付与する時短遊技の回数を複数の回数の中から何れかの回数を決定可能とすることは周知技術(周知技術1)である。
そして、遊技者に対して付与する時短遊技の回数をどのように決定するかは当業者が遊技性等に応じて適宜決定し得る程度の事項にすぎないことから、引用発明において大当り図柄の種類及びVゾーン26への入賞の有無で決定していることに加えて、大当り遊技状態に移行する前の遊技状態に応じて回数を決定可能とし、その際に、時短遊技の付与回数は、加える前の4通り(「入球困難図柄」及び「入球容易図柄」の何れの図柄群の大当りか、と、Vゾーン26の通過の有無の組合せ)から、16通り(前記4通りと確変の有無、時短の有無の4通りの組合せ)となることから、それぞれの状態に時短遊技の付与回数を割り振る必要があって、付与回数を割り振るにあたって、上記(3)キで説示した周知技術(周知技術2)を参酌し、大当り遊技状態の終了後に確変遊技状態になる場合に決定可能な時短遊技の最大回数と、非確変遊技状態になる場合に決定可能な時短遊技最大回数とが同じとすることは当業者が容易になし得たことである。
してみると、引用発明において、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは当業者が各周知技術(周知技術1及び周知技術2)に基いて容易になし得たことである。

イ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】の「4.本願発明が特許されるべき理由」において、以下のとおり概略主張している。
「4.本願発明が特許されるべき理由
・・・略・・・
4-2.本願発明と引用文献との対比
そして本願発明は、構成要件(S)という特徴的な構成要件を有することにより、大当り終了後における時短回数の最大値が決められているため、遊技者が有利になり、遊技店が不利になる事態を回避できようになる。しかも、V入賞させるか否かによって、回数は少ないが大当り確率が高い確変遊技状態を選ぶか、回数は多いが大当り確率が低い非確変遊技状態を選ぶか、を遊技者に選択させるという興趣を遊技者に与えることが可能になる、という効果を奏する。
それに対して、引用文献1には、大当り図柄が入球容易図柄で、Vゾーン26への入球時には時短の付与回数を160回とし、非入球時には100回とする点(段落0106)についての記載がある。しかし、図12(C)を見る限り、V入賞及びV非入賞時における大当り終了後の時短回数の最大値は同じではない。
また、引用文献2?4には、V入賞、V非入賞についての記載がない。なお、引用文献4に「V・カウントセンサ102」とあるが、このセンサは、次のラウンドゲームへ継続して進むための条件となるものであり、確変にするための条件となるものではない。
したがって、引用文献1?4発明は、本願発明のように、V入賞及びV非入賞時における大当り終了後の時短回数の最大値は同じではない。
このように、本願発明と引用文献1?4の発明とは、本願発明が構成要件(S)を備えているという点で互いに構成を異にしており、この相違する構成から得られる上述した本願発明特有の効果、特に、大当り終了後時短回数の最大値が決められているため、遊技者が極めて有利になり、遊技店が極めて不利になる事態を回避できようになるという効果を奏するものではない。
仮に、引用文献1?4に記載された技術内容を組み合わせたとしても、構成要件(S)という本願発明の構成上の特徴に到達できるものではなく、本願発明が奏する上記格別の効果は各引用文献の発明から予測できるものではない。
したがって、本願発明は、各引用文献の発明に対して進歩性を有するものである。」

(イ)上記(ア)の請求人の主張について検討する。
まず、「大当り終了後における時短回数の最大値が決められているため、遊技者が有利になり、遊技店が不利になる事態を回避できようになる。」という効果については、各時短回数の発生確率に応じて遊技店と遊技者との有利不利が決定され、単に、時短回数の最大値を同じにする、というだけではいずれが有利でいずれが不利であるのかが決まらないから、請求人が主張する上記効果は、本願補正発明が奏し得るものとは認められない。
次に、「V入賞させるか否かによって、回数は少ないが大当り確率が高い確変遊技状態を選ぶか、回数は多いが大当り確率が低い非確変遊技状態を選ぶか、を遊技者に選択させるという興趣を遊技者に与えることが可能になる」という効果については、V入賞させるか否かを遊技者が選択可能な点が本願補正発明で特定されていないことから、上記と同様に、本願補正発明が奏し得るものとは認められない。

(6)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が、引用発明及び各周知技術(周知技術1及び2)に基いて容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年1月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の平成31年1月10日に提出された手続補正書により補正された請求項1に係る発明が、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。


引用文献1.特開2014-57840号公報
引用文献2.特開2014-14491号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2013-202361号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2008-110066号公報(周知技術を示す文献)

3 引用発明
(1)引用例1(引用文献1)ないし引用例4(引用文献4)の記載事項、引用発明及び周知技術(周知技術1)は、上記第2〔理由〕3(2)、(3)アないしエに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明(上記第2〔理由〕1(1))は、本願補正発明(上記第2〔理由〕3(1))から、「前記回数決定手段において前記特定領域に遊技媒体が通過した場合に決定可能な最大回数と、前記特定領域に遊技媒体が通過しない場合に決定可能な最大回数とは同じである」点(特定事項R)を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記相違点1でのみ相違するから、本願発明も上記第2〔理由〕3(5)及び(6)で示した理由と同様の理由により、当業者が、引用発明及び周知技術(周知技術1)に基いて、容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用発明及び周知技術1に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-09-24 
結審通知日 2020-09-29 
審決日 2020-10-13 
出願番号 特願2015-64963(P2015-64963)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 澤田 真治
鷲崎 亮
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人タス・マイスター  

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