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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24H |
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管理番号 | 1369375 |
審判番号 | 不服2019-5607 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-25 |
確定日 | 2020-12-10 |
事件の表示 | 特願2014- 96560「流体加熱装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月 3日出願公開、特開2015-215099〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年5月8日に出願したものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成29年10月31日付けで拒絶理由の通知(平成29年11月7日発送) 平成30年2月28日に意見書及び手続補正書の提出 平成30年7月3日付けで拒絶理由の通知(最後;平成30年7月10日発送) 平成30年9月10日に意見書及び手続補正書の提出 平成31年1月31日付けで補正の却下の決定及び拒絶査定(平成31年2月5日発送) 平成31年4月25日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出 令和2年2月10日に上申書の提出 令和2年5月27日付けで拒絶理由の通知(令和2年6月2日発送) 令和2年8月3日に意見書及び手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年8月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに願書に最初に添付された図面の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるものである。 「 【請求項1】 液体又は気体である被加熱物を加熱する装置であって、 a) 液体の水である熱媒体と、 b) 上部に空間を残して前記熱媒体が貯留された状態で密閉されたタンクであって、該熱媒体の導入口と、該熱媒体の液面よりも下側に設けられた該熱媒体の送出口を有するタンクと、 c) 前記タンク内の前記熱媒体を加熱する電気ヒータである熱媒体加熱装置と、 d) 前記タンクの外部に設けられた、前記送出口と前記導入口を接続する閉鎖された循環経路と、 e) 前記被加熱物が貯留される被加熱物貯留部と、前記循環経路中であって前記被加熱物貯留部内に設けられた熱媒体通過管とを有する、前記熱媒体の熱により前記被加熱物を加熱する熱交換器と、 f) 前記循環経路中の前記送出口と前記熱交換器の間に設けられた、前記熱媒体を前記送出口から前記導入口に送液する送液ポンプと を備えることを特徴とする流体加熱装置。」 第3 令和2年5月27日付けで通知した拒絶の理由 当審において、令和2年5月27日付けで通知した拒絶の理由は、概ね以下のとおりである。 <理由(進歩性)> 本願の請求項1ないし6に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開平1-181824号公報 引用文献2:特開2005-49964号公報 第4 引用文献 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 当審において通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、参考の為、当審で付した。以下同様である。)。 「〔発明の概要〕 より詳細には、この発明は、高圧により沸騰を抑えられた高圧熱水を熱媒として、これを食品用フライヤーの油槽内に設置した油加熱器を含む循環系内で循環させることにより、フライ油を間接加熱するように構成したことを要旨とするものである。 〔発明の実施例〕 以下、この発明の実施例を図面について説明する。第2図において、(1)はフライヤーの油槽で、この油槽底部には、油加熱器(7)としてのモノチューブの形態をなす熱交換用チューブが設置されている。同図中の二点鎖線で囲った部分(2)は、管式貫流ボイラであり、(3)及び(4)はそれに付属の強制循環ポンプ及びバーナー、(5)は受熱用熱交換器としての、前記加熱器と同様な形態のコイルチューブである。 上記の油槽(1)とボイラ(2)との間には、それらを連絡している循環系の途中の、好ましくは往路側に圧力調整熱水タンク(6)が介装されており、そのタンク内上部は、例えばチッソ、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス(11)で、その残部は、加圧された熱水(10)でそれぞれ満たされている。そのような圧力調整熱水タンクは、この発明の主要部を構成するものであって、その上部は、該タンク内圧の低下を補償するように働く圧力調整弁(9)を経て、不活性ガスボンベ(8)に接続されている。勿論、油槽(1)に対する貫流ボイラ(2)や圧力調整熱水タンク(6)さらには不活性ガスボンベ(8)は、所望の位置にとりまとめて、或いは別個に遠隔して設置されるものである。 又、図中の矢印の如く、単管式貫流ボイラ(2)の受熱用熱交換器(5)の出口端は、圧力調整熱水タンク(6)に連結されており、その底部が油加熱器(7)に通じ、さらに該加熱器の出口端は、貫流ボイラ(2)の強制循環ポンプ(3)の吸入口に連結されている。 尚、図中の(12)は貫流ボイラ(2)から油槽(1)へ至る熱水循環系の往路、(13)は油槽(1)から貫流ボイラ(2)へ至る同じ系の復路、 (14)は圧力調整熱水タンク(6)と不活性ガスボンベ(8)間の連絡流路である。 以上のような装置において、強制循環ポンプ(3)を駆動すると、系内に満たされた水が受熱用熱交換器(5)に送り込まれ、これがバーナー(4)により加熱されて熱水となり、圧力調整熱水タンク(6)に送り込まれる。しかして、該タンクは、不活性ガスボンベ(8)より導入されるガスの元圧(例えば、30 kg/cm^(2))が上記の圧力調整弁(9)の働きにより調整されて、常時所定圧(例えば、20kg/cm^(2))になるように設定されているので、系内の水は、-定の飽和温度以下(20kg/cm^(2)において211℃以下)では沸騰しない。 この後、圧力調整熱水タンク(6)の底部より出た熱水は、油槽(1)内の油加熱器(7)を通して、フライ油を間接的に加熱し、強制循環ポンプ(3)に還流することとなるが、このような加圧熱水の循環流により、油槽(1)内のフライ油を必要温度(e.g.150?170℃)に昇温・維持し、かつ適宜調節して、常に美味なフライ食品を加工し得る。 この場合の油温の調節要領としては、強制循環ポンプ(3)及びバーナー(4)の運転を圧力調整熱水タンク(6)内の熱水(10)或いは油槽(1)中のフライ油と接する温度センサー(a)、(b)により、コントローラー(C)を介して発停させるようにし、該油温を希望の温度に一定させるのが望ましいけれども、これに限定されるものではない。」(第2ページ左上欄第13行目-同ページ右下欄第17行目) 「 」 (2)上記(1)の記載された事項から、引用文献1には、次の事項が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。 「フライ油を間接加熱する装置であって、 高圧熱水を熱媒として、 上部は、不活性ガス(11)で、その残部は、加圧された熱水(10)でそれぞれ満たされている圧力調整熱水タンク(6)であって、貫流ボイラ(2)の受熱用熱交換器(5)の出口端と接続され、底部が油加熱器(7)に通じている圧力調整熱水タンク(6)と、 バーナー(4)により加熱し、熱水として、圧力調整熱水タンク(6)に送り込む受熱用熱交換器(5)と、 貫流ボイラ(2)から油槽(1)へ至る熱水循環系の往路(12)と、 油槽(1)から貫流ボイラ(2)へ至る同じ系の復路(13)と、 油槽(1)と、この油槽(1)底部に設置された熱交換用チューブとを有する、熱水によりフライ油を加熱する油加熱器(7)と、 加圧熱水を循環させる強制循環ポンプ(3)と を備える食品用フライヤー。」 2 引用文献2 (1)引用文献2の記載 当審において通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献2には、次の事項が記載されている。 「【0004】 図2において、1は加熱室、2は加熱ヒータ2aを内蔵した温水タンク(大気圧開放形)、3は送水ポンプ、4は浄水器、5は熱媒体の循環管路であり、加熱室1には室内に搬入した飲料容器6の中身飲料を攪拌する手段として飲料容器を横置姿勢に支える回転式の保持機構(回転ローラ)7,その駆動モータ8、および飲料容器6の周域に4ないし6箇所に分けて分散配備した噴射ノズル9を備え、これらで容器入り飲料の加熱装置を構成している。 【0005】 この飲料加熱装置においては、温水タンク2に熱媒体として貯留した水を95℃程度にヒータ2aで加熱しておく。そして、飲料容器の加熱指令が与えられると、加熱室1に搬入,保持した飲料容器6を例えば1000rpmで回転しつつ、送水ポンプ3を始動して温水タンク2から循環管路5を経由して加熱室1の噴射ノズル9に加圧送水した高温水を衝突噴流として飲料容器6の周面に吹きつけて中身飲料を加熱する。また、噴射水は加熱室1から浄水器4を経て温水タンク2に戻し、再び高温に加熱して循環送水するようにしている。」 「【0010】 図3において、図2の構成と異なる点は温水タンク2が圧力形(密閉構造の圧力タンク)であり、この温水タンク2を挟んで熱媒体循環管路5の往路および復路側管路にはそれぞれ開閉弁10,11を接続し、さらに加熱室1の排水側(下流側)と温水タンク2との間には加熱室1から排出した熱媒体を回収して一時的に貯留する排水回収容器12を備えており、図2における送水ポンプ3は備えてない。なお、2bは温水タンクの内圧が所定圧力以上に上昇した際に弁を開いて放圧する安全弁である。 【0011】 上記の構成で、加熱室1に飲料容器6を搬入してない待機時は循環管路5の開閉弁10,11を閉じておく。また、この状態で温水タンク2に貯留した熱媒体としての水をヒータ2aで加熱することにより、貯留水はヒータ加熱に伴い水の飽和温度が100℃以上に上昇し、その飽和圧力も大気圧(0.1013MPa)以上に高まる。この状態から加熱室1に搬入した飲料容器6の加熱指令に基づき往路側の開閉制御弁10を開くと、温水タンク2に貯留されていた高温高圧水(例えば、水温130℃,飽和蒸気圧0.3MPa)がタンクの内圧を受けて循環管路5に圧送され、加熱室1の噴射ノズル9より飲料容器6の周面に噴出してこれを加熱する。なお、加熱室1の室内に放出した排水は加熱室の下流側に配した排水回収容器12に流出してここに一時的に貯留される。そして、所定の加熱時間(十数秒程度)が経過した後に往路側の開閉弁10を閉じ、復路側の開閉弁11を開くことにより、回収容器12に溜まっていた排水が温水タンク2に還流する。この加熱方式により、熱媒体として圧力形の温水タンク2で100℃以上に加熱した高温高圧水を、ポンプを使わずに噴射ノズル9を通じて飲料容器6に吹きつけることができる。なお、前記開閉弁10,11は図示してない制御部からの指令で飲料容器の加熱動作に合わせて自動的に開閉制御するものとする。」 「 」 (2)上記(1)の記載された事項から、引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる(以下、「引用文献2記載の技術的事項1」、「引用文献2記載の技術的事項2」という。)。 ア.引用文献2記載の技術的事項1 「密閉構造の圧力タンク内の熱媒体としての水を100℃以上に加熱するヒータ」(段落【0010】、【0011】、図3) イ.引用文献2記載の技術的事項2 「加熱ヒータを内蔵した温水タンクと加熱室の間に設けられた送水ポンプ」(段落【0004】、【0005】、図2) 第5 対比 本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 引用発明の「フライ油を間接加熱する装置」、「高圧熱水」、「熱媒」、「油槽(1)」、「油槽(1)底部」、「熱交換用チューブ」、「熱水によりフライ油を加熱する油加熱器(7)」、は、各文言の意味、機能又は作用等からみて、それぞれ本願発明の「液体又は気体である被加熱物を加熱する装置」、「液体の水」、「熱媒体」、「前記被加熱物が貯留される被加熱物貯留部」、「前記被加熱貯留部内」、「熱媒体通過管」、「前記熱媒体の熱により前記被加熱物を加熱する熱交換器」、に、相当する。 また、引用発明の「圧力調整熱水タンク」は、上部が、「不活性ガス(11)」で満たされた空間であり、その残部である下部に、「加圧された熱水(10)」が貯留していることから、「密閉されたタンク」であると言え、本願発明の「上部に空間を残して前記熱媒体が貯留された状態で密閉されたタンク」に相当し、また、当該「圧力調整熱水タンク」は、「貫流ボイラ(2)の受熱用熱交換器(5)の出口端と接続」して、熱水を導入し、熱水が貯留している「底部」を通じて「油加熱器(7)」に熱水を送出することから、本願発明の「該熱媒体の導入口と、該熱媒体の液面よりも下側に設けられた該熱媒体の送出口を有するタンク」に相当する。 引用発明の「受熱用熱交換器」は、熱媒体を加熱し、「熱水」とすることから、本願発明と、「熱媒体加熱装置」であるという点で一致する。 引用発明の「熱循環系の往路(12)」と「復路(13)」は、「圧力調整熱水タンク」を経路上に含む「貫流ボイラ(2)」から「油槽(1)」へ至る「往路(12)」及び「復路(13)」で構成された循環路であり、閉鎖された経路である。よって、本願発明の「前記タンクの外部に設けられた、前記送出口と前記導入口を接続する閉鎖された循環経路」に相当する。また、「油槽(1)底部に設置された熱交換用チューブ」は、「循環経路中」に設けられている。 引用発明の「加圧熱水を循環させる強制循環ポンプ(3)」は、「加圧熱水」を「熱循環系の往路(12)」と「復路(13)」に循環させており、「強制循環ポンプ」は循環路である「熱循環系の往路(12)」又は「復路(13)」上に設けられている。よって、「加圧熱水を循環させる強制循環ポンプ(3)」は、本願発明の「前記循環経路中」に「設けられた、前記熱媒体を前記送出口から前記導入口に送液する送液ポンプ」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次の通りである。 【一致点】 「液体又は気体である被加熱物を加熱する装置であって、 a)液体の水である熱媒体と、 b)上部に空間を残して前記熱媒体が貯留された状態で密閉されたタンクであって、該熱媒体の導入口と、該熱媒体の液面よりも下側に設けられた該熱媒体の送出口を有するタンクと、 c)前記熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置と、 d)前記タンクの外部に設けられた、前記送出口と前記導入口を接続する閉鎖された循環経路と、 e)前記被加熱物が貯留される被加熱物貯留部と、前記循環経路中であって前記被加熱物貯留部内に設けられた熱媒体通過管とを有する、前記熱媒体の熱により前記被加熱物を加熱する熱交換器と、 f)前記循環経路中に設けられた、前記熱媒体を前記送出口から前記導入口に送液する送液ポンプと を備える流体加熱装置。」 【相違点1】 熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置として、本願発明は、「前記タンク内の前記熱媒体を加熱する電気ヒータ」を用いているのに対し、引用発明は、「バーナー(4)により加熱し、熱水として、圧力調整熱水タンク(6)に送り込む」構成を有している点。 【相違点2】 送液ポンプを設ける位置が本願発明は、「前記送出口と前記熱交換器との間」であるのに対し、引用発明は、循環経路中であるものの、「前記送出口と前記熱交換器との間」でない点。 第6 判断 1 相違点の検討 (1)相違点1について 引用文献2記載の技術的事項1の「密閉構造の圧力タンク内熱媒体としての水を100℃以上に加熱するヒータ」は、文言の意味、機能又は作用等からみて、本願発明の「前記タンク内の前記熱媒体を加熱する電気ヒータ」に相当する。 そして、引用発明の「バーナー(4)により加熱し、熱水として、圧力調整熱水タンク(6)に送り込む」構成と、引用文献2記載の技術的事項1とは、共に、加圧された熱水を熱媒体として用いる加熱装置の熱媒体加熱装置である。 したがって、引用発明の当該構成に換えて同様の機能、作用を有する引用文献2記載の技術的事項1を用いることは、当業者が容易になし得たことである。 (2)相違点2について 引用文献2記載の技術的事項2の「加熱ヒータを内蔵した温水タンクと加熱室の間に設けられた送水ポンプ」は、文言の意味、機能又は作用等から見て、本願発明の「前記送出口と前記熱交換器との間」に設けられた「送液ポンプ」に相当する。 そして、引用発明と、引用文献2記載の技術的事項2とは、共に、熱水を熱媒体として用いる加熱装置の送液ポンプである。また、引用発明の「加圧熱水を循環させる強制循環ポンプ(3)」は、循環路内であればどこに設置しても加圧熱水の循環が可能であり、必ずしも特定の場所に設置しなければならないものではない。 したがって、引用発明の当該構成に換えて引用文献2記載の技術的事項2を用いることは、当業者が容易になし得た事項である。 そうすると、引用発明において、上記相違点1及び2に係る本願発明の構成とすることは、引用文献2記載の技術的事項1及び2に基づいて、当業者が容易になし得たことである。 なお、引用発明は、圧力調整熱水タンク(6)により、系内の水が常時加圧され、所定圧になるように設定されているので(引用文献1 第2ページ左下欄第17行-右下欄第3行目)、圧力調整熱水タンクは、熱媒体である水の循環に寄与しておらず、系内の水は、強制循環ポンプ(3)により加圧、送水され循環している。一方、引用文献2記載の技術的事項2の送水ポンプ(3)も、温水タンク(2)から加圧室(1)へ熱媒体である水を加圧送水するものであり、引用発明において、引用文献2記載の技術的事項2を用いることに困難性はない。 2 効果について 本願発明の有する効果は、全体としてみても、引用発明、引用文献2記載の技術的事項1及び2から予測し得る範囲のものである。 3 請求人の主張について なお、請求人は、令和2年8月3日に提出された意見書において、「(4) 本発明1及び引用文献1に記載の装置のいずれにおいても、通常は、熱媒体は液体の状態でタンクから熱交換器に供給され、被加熱物との間で熱交換をした後、液体の状態で熱交換器からタンクに戻されます。しかし、何らかの理由によって被加熱物貯留部(引用文献1では油槽1)内に高温の被加熱物が導入されると、熱交換器内において熱媒体が気化し、熱交換器に導入された液体の熱媒体よりも高温の気体が循環経路を通ってタンクに導入されてしまいます。 (5) そうすると、引用文献1に記載のように送液ポンプ(強制循環ポンプ3)が熱交換器とタンクの導入口の間に設けられていると、液体ポンプである強制循環ポンプ3は気体となった熱媒体に対して適切に作動することができません。また、高温の気体が送液ポンプに流入すると、送液ポンプが故障してしまいます。 (6) それに対して本発明1では、送液ポンプがタンクの送出口と熱交換器の間に設けられていることから、仮に熱媒体が熱交換器で気体となったとしても、送液ポンプはタンクからの熱媒体の送出を引き続き正常に行うことができます。また、熱交換器で発生した高温の気体は熱交換器から見て送液ポンプとは反対側であるタンクへの導入口の方に移動するため、このような高温の気体が送液ポンプに流入することがなく、送液ポンプの故障を防ぐことができます。」(第2ページ第25行?第3ページ第1行目)と主張している。 しかしながら、請求人の主張する状況、「しかし、何らかの理由によって被加熱物貯留部(引用文献1では油槽1)内に高温の被加熱物が導入されると、熱交換器内において熱媒体が気化し、熱交換器に導入された液体の熱媒体よりも高温の気体が循環経路を通ってタンクに導入されてしまいます。」は、熱交換器において、熱媒体により熱を与えられる被加熱物が、熱媒体より高温であるという通常の状態においてはあり得ない状況を仮定した主張であるため、請求人の主張は採用することができない。 4 まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-09-24 |
結審通知日 | 2020-09-29 |
審決日 | 2020-10-22 |
出願番号 | 特願2014-96560(P2014-96560) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F24H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 弘 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
塚本 英隆 槙原 進 |
発明の名称 | 流体加熱装置 |
代理人 | 特許業務法人京都国際特許事務所 |