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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01R
管理番号 1369402
審判番号 不服2019-12927  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-29 
確定日 2020-12-14 
事件の表示 特願2014-116405「光ファイバ電流検知システムを監視するシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月18日出願公開、特開2014-238398〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月5日(パリ条約による優先権主張2013年6月10日、米国)にされた特許出願であって、その後の経緯は以下のとおりである。
平成30年 2月 9日付け:拒絶理由通知書
平成30年 5月 9日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年10月29日付け:拒絶理由通知書(最後の拒絶理由通知書)
平成31年 1月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 5月31日付け:平成31年1月28日にされた特許請求の範囲についての補正の却下の決定、拒絶査定(以下、「原査定」という。送達日:令和1年6月14日)
令和 1年 9月29日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年9月29日にされた特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含む。
本件補正前及び本件補正後の請求項1の記載は、以下のとおりである。下線は、補正箇所を示す。

(1)本件補正前
「【請求項1】
光ファイバ電流センサと、
前記光ファイバ電流センサと光学的に結合された光ファイバ電流変換器であって、
前記光ファイバ電流センサからy偏光光及びx偏光光を受信し、
前記x偏光光から第一電気信号を生成し、
前記y偏光光から第二電気信号を生成し、
第一電気信号の第一直流(DC)成分を分離し、
第二電気信号の第二DC成分を分離するように構成された、光ファイバ電流変換器と、
前記第一及び第二光ファイバ電流変換器と通信可能に結合された監視回路であって、
前記第一及び第二光ファイバ電流変換器から第一及び第二DC成分を受信し、
前記第一及び第二DC成分が実質的に0であるか否かを判断し、
前記第一または第二DC成分が実質的に0であるか否かに基づいて出力信号を生成するように構成されており、前記出力信号は前記光ファイバ電流センサ及び前記光ファイバ電流変換器の動作状態を表す、監視回路と、
を備えるシステム。」

(2)補正後
「【請求項1】
光ファイバ電流センサと、
前記光ファイバ電流センサと光学的に結合された光ファイバ電流変換器であって、
前記光ファイバ電流センサからx偏光光を受信し、x偏光光とは異なる光ファイバを通じてy偏光光を受信し、
前記x偏光光から第一電気信号を生成し、
前記y偏光光から第二電気信号を生成し、
第一電気信号の第一直流(DC)成分を分離し、
第二電気信号の第二DC成分を分離するように構成された、光ファイバ電流変換器と、
前記光ファイバ電流変換器と通信可能に結合された監視回路であって、
前記光ファイバ電流変換器から第一及び第二DC成分を受信し、
前記第一DC成分が実質的に0であるか否かを判断し、
前記第二DC成分が実質的に0であるか否かを判断し、
前記第一DC成分が実質的に0であるか否か及び、前記第二DC成分が実質的に0であるか否かに基づいて出力信号を生成するように構成されており、前記出力信号は前記光ファイバ電流センサ及び前記光ファイバ電流変換器の動作状態を表す、監視回路と、
を備えるシステム。」

2 本件補正の目的
(1)本件補正は、補正前の請求項1に記載した事項のうち、「光ファイバ電流変換器」について、「前記光ファイバ電流センサからy偏光光及びx偏光光を受信し」とされていた記載を「前記光ファイバ電流センサからx偏光光を受信し、x偏光光とは異なる光ファイバを通じてy偏光光を受信し」という記載に変更して、「x偏光光」及び「y偏光光」を受信する経路を限定するものである。また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

(2)また、本件補正は、補正前の請求項1に記載した事項のうち、「前記第一及び第二光ファイバ電流変換器」について、「第一及び第二」という記載を削除し、「前記光ファイバ電流変換器」と記載することにより、「前記第一及び第二光ファイバ電流変換器」という記載より前に記載の無い「第一及び第二光ファイバ電流変換器」を「前記」と指し示す記載の不整合を解消しており、特許法第17条の2第5項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とする補正に該当する。

(3)上記に加えて、本件補正は、補正前の請求項1に記載した事項のうち、「前記第一及び第二DC成分が実質的に0であるか否かを判断し、前記第一または第二DC成分が実質的に0であるか否かに基づいて出力信号を生成する」という記載を、「前記第一DC成分が実質的に0であるか否かを判断し、前記第二DC成分が実質的に0であるか否かを判断し、前記第一DC成分が実質的に0であるか否か及び、前記第二DC成分が実質的に0であるか否かに基づいて出力信号を生成する」という記載に変更して、実質的に0であるか否かを判断し、それに基づいて出力信号を生成する旨の特定を、第一及び第二DC成分について一括して行う記載から、第一及び第二DC成分のそれぞれについて個別に行う記載に変更しているが、この変更は、記載の内容を実質的に変化させるものではない。

(4)上記のように、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同条同項第4号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討を行う。

3 独立特許要件についての判断
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献
以下に掲げる引用文献1、3は、原査定の理由に引用された文献であり、公開日はいずれも本願の優先日より前である。
引用文献1:特開2010-071934号公報
引用文献3:特開平04-006423号公報

(3)引用文献に記載された発明等
ア 引用文献1
(ア)引用文献1には、次の記載がある。下線は、当合議体が付した。
「【0013】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は、本発明の第1実施形態を示す構成図であり、本発明を反射型光CTに適用した場合のものである。図1において、100Aは信号処理装置、101a,101bは伝送用光ファイバ、102は偏/検光子及び光学バイアス部、103は鉛ガラスファイバ等からなるセンサファイバ、104はセンサファイバ103の終端に配置されたミラー、110Aはセンサヘッドである。
【0014】
信号処理装置100Aにおいて、111はスーパールミネセントダイオードや半導体レーザ等からなる光源、112は光源111からの信号光を取り出すためのサーキュレータ、101c,101dは伝送用光ファイバ、113,114はフォトダイオード等の受光素子、115,116はバンドパスフィルタ、117,118はローパスフィルタ、119,120はそれぞれバンドパスフィルタ115,116の出力をローパスフィルタ117,118の出力により除算する除算器、121は除算器120の出力信号の極性を反転する反転器、122は除算器119の出力信号と反転器121の出力信号とを加算する加算器、123は温度センサ、124は温度センサによる検出温度に応じてゲイン調整信号を出力する温度補償部、125は温度補償部124から出力されるゲイン調整信号に従って増幅ゲインを変化させるゲイン可変アンプである。
ここで、温度センサ123は請求項における温度測定手段を構成し、温度補償部124及びゲイン可変アンプ125は請求項における補正手段を構成している。
【0015】
この実施形態の動作を説明すると、光源111からの信号光はサーキュレータ112及び伝送用光ファイバ101aを介して偏/検光子及び光学バイアス部102に入射し、直線偏光になると共に、ファラデー回転により偏波面が例えば22.5度回転した光としてセンサヘッド110A内のセンサファイバ103に入射する。センサファイバ103内を伝搬する直線偏光の偏波面は、被測定電流が作る磁界によりファラデー回転を受け、ミラー104により反射されてセンサファイバ103内を逆方向に伝搬する。ここで、ファラデー効果は非相反性であるため、復路においても往路と同方向のファラデー回転を受ける。
よって、ファラデー回転角は、光がセンサファイバ103を往復することにより片道の場合の2倍となる。
【0016】
センサファイバ103からの出射光は、偏/検光子及び光学バイアス部102を通過する際に光学バイアス部によって偏波面が更に22.5度回転するため、偏波面は往復で45度回転したことになり、これによって45度の光学的バイアスが実現される。この結果、偏/検光子及び光学バイアス部102の出射光の偏波面は、入射光に対して光学バイアス部により45度回転し、更に、被測定電流に起因するファラデー回転角が加わった値となる。
偏/検光子及び光学バイアス部102内の検光子により0度と90度の方向に分離された偏光成分の一方は、伝送用光ファイバ101a、サーキュレータ112及び伝送用光ファイバ101cを介して受光素子113に入射し、他方は伝送用光ファイバ101b,101dを介して受光素子114に入射する。
【0017】
次に、受光素子113,114の出力信号は図示されていないアンプにより適宜増幅されてバンドパスフィルタ115,116及びローパスフィルタ117,118に入力され、バンドパスフィルタ115,116により交流成分(被測定電流による変調周波数成分)が、ローパスフィルタ117,118により直流成分がそれぞれ抽出される。これらの各成分は除算器119,120に入力され、交流成分と直流成分との比が変調度信号としてそれぞれ算出されると共に、除算器120の出力信号は反転器121により極性が反転される。
加算器122は、除算器119の出力信号と反転器121の出力信号とを加算することにより、被測定電流によるファラデー回転角に比例した信号を得る。
なお、除算器119,120は、交流成分を直流成分により規格化して平均化処理を行なうことにより、受光パワーの変化による検出感度の変動をキャンセルすると共に、光学バイアス部や受光素子113,114、図示されていないアンプ等の特性のバラツキを相殺するように作用する。
受光素子113,114から加算器122に至るまでの信号処理方法は、例えば特許第3342768号公報(発明の名称:光ファイバ型計測装置及び計測方法)に記載されていて周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。」

「【図1】



(イ)引用文献1の【0013】及び【図1】の記載を参照すれば、センサヘッド110Aは、偏/検光子及び光学バイアス部102、センサファイバ103、ミラー104を構成として含んでいる。この点を踏まえ、引用文献1の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「偏/検光子及び光学バイアス部102、センサファイバ103、ミラー104を含むセンサヘッド110A(【0013】、【図1】)と、受光素子113、114、ローパスフィルタ117、118を含む信号処理装置100A(【0014】)とから構成された反射型光CT(【0013】)において、ミラー104により反射されてセンサファイバ103内を往復する直線偏光の偏波面が、被測定電流が作る磁界によりファラデー回転を受けた後(【0015】、【図1】)、偏/検光子及び光学バイアス部102内の検光子により0度と90度の方向に偏光成分の光が分離され、偏光成分の光の一方は、伝送用光ファイバ101aを介して受光素子113に入射し、他方は、伝送用光ファイバ101bを介して受光素子114に入射し(【0014】、【0016】、【図1】)、受光素子113,114の出力信号はアンプにより増幅されて、それぞれローパスフィルタ117,118により直流成分が抽出される(【0017】、【図1】)、反射型光CT。」

イ 引用文献3
(ア)引用文献3には、下記の記載がある。下線は、当合議体が付した。
「第2図は例えば実開昭61-125783号公報に示された従来の光応用測定装置を示すブロック図である。図において、(1)は光送信機、(3)は光ファイバ(2)を介して光送信機(1)に接続され、ポッケルス効果やファラデー効果を利用して被測定物理量に応じて光送信機(1)からの光を強度変調する光センサ、(5)は光ファイバ(4)を介して光センサ(3)に接続され、光センサ(3)からの光を受け取って電気量に変換する光受信機、(6)は光受信機(5)の出力に含まれるDC成分を除去するためのコンデンサ、(7)は光受信機(5)に接続され、光受信機(5)の出力に含まれるDC成分のみを増幅するDC増幅器、(8)はコンデンサ(6)を介して光受信機(5)に接続され、コンデンサ(6)の出力を増幅するAC増幅器、(9)は増幅器(7)、(8)に接続され、AC増幅器(8)の出力をDC増幅器(7)の出力で割り算する割算器、(10)はDC増幅器(7)に接続され、その出力と規定値を比較するコンパレータ、(11)はコンパレータ(10)に接続され、その出力を表示する表示器出ある。尚、増幅器(7)、(8)と割算器(9)は演算手段を構成し、コンパレータ(10)と表示器(11)は第1のモニタ手段を構成する。」(第1頁右下欄第9行?第2頁左上欄第13行)

「コンパレータ(10)は、DC増幅器(7)の出力のレベルが規定値以内になってるかどうかを常時監視しており、DC増幅器(7)の出力のレベルが規定値以外となった場合に出力を表示器(11)に供給し、警報を出させる。DC増幅器(7)の出力Vdcは光受信機(5)の平均受光強度に比例した値であり、この監視により、光送信機(1)、光ファイバ(2)、(4)、光センサ(3)、光受信機(5)及びDC増幅器(7)の異常の自己点検が可能である。」(第2頁左下欄第7行?第16行)

「第2図



(イ)引用文献3の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献3には、以下の事項が記載されている。

「光送信機(1)と、光ファイバ(2)を介して光送信機(1)に接続され、ファラデー効果を利用して光を強度変調する光センサ(3)と、光ファイバ(4)を介して光センサ(3)に接続され、光センサ(3)からの光を受け取って電気量に変換する光受信機(5)と、光受信機(5)に接続され、光受信機(5)の出力に含まれるDC成分のみを増幅するDC増幅器(7)と、DC増幅器(7)に接続され、その出力と規定値を比較するコンパレータ(10)とからなる光応用測定装置において、コンパレータ(10)は、DC増幅器(7)の出力のレベルが規定値以内になっているかどうかを常時監視し、DC増幅器(7)の出力のレベルが規定値以外となった場合に出力を表示器(11)に供給して警報を出させ、この監視により光送信機(1)、光ファイバ(2)、(4)、光センサ(3)、光受信機(5)及びDC増幅器(7)の異常の自己点検が可能である。」

(4)対比
ア 引用発明において、「センサヘッド110A」は、「偏/検光子及び光学バイアス部102」、「センサファイバ103」、「ミラー104」を構成として含み、「ミラー104」により反射されて「センサファイバ103」内を往復する「直線偏光の偏波面」は、「被測定電流」が作る磁界により「ファラデー回転」を受けた後、「偏/検光子及び光学バイアス部102」内の検光子により0度と90度の方向に偏光成分が分離されている。言い換えれば、引用発明における「センサヘッド110A」は、「被測定電流」の大きさを、「直線偏光の偏波面」の「ファラデー回転」として分離・抽出ものであり、「センサ」の役割を果たすものであるから、本件補正発明における「光ファイバ電流センサ」に相当する。

イ 引用発明において、「偏/検光子及び光学バイアス部102」内の検光子により「0度」と「90度」の方向に分離された偏光成分の光は、偏波面の方向が互いに90度をなしている。一方、本件補正発明において、「x偏光光」と「y偏光光」とは、偏波面の方向が互いに90度をなしていることは明らかである。そして、本件補正発明において、「x偏光光」及び「y偏光光」の偏波面の絶対的な方向は、何ら特定されていないから、任意に選択することができる。そこで、引用発明の「0度」の方向に分離された偏光成分の光を、便宜的に本件補正発明の「x偏光光」に相当するとすれば、引用発明の「90度」の方向に分離された偏光成分の光は、本件補正発明の「y偏光光」に相当する。

ウ 引用発明における「受光素子113」及び「受光素子114」には、0度及び90度の方向に分離された偏光成分の光が入射する。「受光素子113」及び「受光素子114」の出力信号は、その後にアンプにより増幅される信号であるから、「電気信号」である。よって、引用発明の「受光素子113」、「受光素子114」によって信号を出力することは、それぞれ本件補正発明の「前記x偏光光から第一電気信号を生成」すること、「前記y偏光光から第二電気信号を生成」することに相当する。

エ 引用発明において、「受光素子113」、「受光素子114」、「ローパスフィルタ117」、「ローパスフィルタ118」を含む「信号処理装置100A」は、伝送用光ファイバ101a、伝送用光ファイバ101bを介して入射した「0度」及び「90度」方向の偏光成分の光を「電気信号」としており、言い換えれば、伝送用光ファイバから入射した光を電流に変換しているから、引用発明の「光ファイバ電流変換器」に相当する。また、「0度」、「90度」の偏光成分の光は、それぞれ異なる光ファイバである「伝送用光ファイバ101a」、「伝送用光ファイバ101b」を介して、「信号処理装置100A」の「受光素子113」、「受光素子114」に入射する。このことは、本件補正発明において、「光ファイバ電流変換器」が、「光ファイバ電流センサからx偏光光を受信し、x偏光光とは異なる光ファイバを通じてy偏光光を受信」すること、及び、「光ファイバ電流センサと光学的に結合」されていることに相当する。

オ 引用発明において、アンプによって増幅された「受光素子113」及び「受光素子114」の出力信号は、それぞれ「ローパスフィルタ117」、「ローパスフィルタ118」により直流成分が抽出されており、このことは、本件補正発明における「第一電気信号の第一直流(DC)成分を分離し、第二電気信号の第二DC成分を分離」することに相当する。

カ 引用発明における「信号処理装置100A」は、本件補正発明における「光ファイバ電流変換器」に相当する。

キ 引用発明における「光CT」は、「センサヘッド110A」と、「信号処理装置100A」とから構成されているから、本件補正発明における「光ファイバ電流センサ」と、「光ファイバ電流変換器」とから構成される「システム」に相当する。

(5)一致点及び相違点
前記(4)の対比の結果をまとめると、本件補正発明と、引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点
「光ファイバ電流センサと、
前記光ファイバ電流センサと光学的に結合された光ファイバ電流変換器であって、
前記光ファイバ電流センサからx偏光光を受信し、x偏光光とは異なる光ファイバを通じてy偏光光を受信し、
前記x偏光光から第一電気信号を生成し、
前記y偏光光から第二電気信号を生成し、
第一電気信号の第一直流(DC)成分を分離し、
第二電気信号の第二DC成分を分離するように構成された、光ファイバ電流変換器と
を備えるシステム」である点。

イ 相違点
本件補正発明が、「光ファイバ電流変換器と通信可能に結合された監視回路」を備えているのに対して、引用発明が、そのような「監視回路」を備えていない点。

(6)相違点についての判断
引用文献3には、第2の3(3)イ(イ)に示した事項が記載されている。
引用発明と引用文献3に記載された光応用測定装置は、光センサから受信した(ファラデー効果により変調された)光を電気信号に変換する光ファイバ電流変換器を備えたシステムであるという点で、同じ技術分野に属している。また、引用文献3における光応用測定装置は、光ファイバ、光センサ、光受信機、DC増幅器からなり、引用文献1の(伝送用光ファイバ、センサヘッド、受光素子、ローパスフィルタからなる)反射型光CTと同様の構成を有する装置である。
そうすると、引用文献3に記載された事項を引用発明に適用し、引用発明の「反射型光CT」に「コンパレータ(10)」を設け、その「コンパレータ(10)」で、アンプにより増幅されて「ローパスフィルタ117,118」により抽出された「受光素子113,114」の出力信号の直流成分(引用文献3に記載された事項の「DC増幅器(7)」の出力レベルに相当する。)が「規定値以内」になっているかどうかを常時監視し、「規定値以外」となった場合に警報を出させることにより、「伝送用光ファイバ101a」又は「伝送用光ファイバ101b」(「引用文献3に記載された事項の光ファイバ(2)、(4)」に相当する。)の異常の自己点検を可能にすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ここで、引用文献3に記載された事項は、光ファイバ(2)、(4)の異常の点検が可能であるという効果を奏することから、DC増幅器(7)の出力レベルが「規定値以外」となる場合として、光ファイバ(2)、(4)の断線により出力レベルが異常に低い値となる(実質的に0になる)場合が想定されていることは、明らかである。したがって、引用発明に引用文献3に記載された事項を適用する際に、「規定値以外」を具体化したものとして「実質的に0」を選択することは、当業者が適宜決定し得る設計事項にすぎない。
また、引用発明において、「偏/検光子及び光学バイアス部102」により0度と90度の偏光成分が分離された以降は、信号線が2系統に分かれているから、そのそれぞれに異常が発生し得ることは明らかである。その両方を監視するか、一方のみを監視するか、一方のみを監視するのであれば、どちらを監視するかは、監視の必要性やそれに要する費用などを勘案して、当業者が適宜決定し得る設計事項に過ぎない。すなわち、引用発明に引用文献3に記載された事項を適用する際に、1系統のみを異常点検の対象とする(一方のみのDC成分を監視する)か、2系統を異常点検の対象とする(両方のDC成分を監視する)かは、当業者が適宜設計し得た事項である。
以上のとおりであるから、相違点に係る補正発明の構成は、引用文献3に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到し得るものである。
よって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願に係る発明
本件補正は、上記第2において述べたように却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」)は、上記第2の1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶理由の概要
(1)原査定の拒絶の理由1
本願の請求項1ないし9に係る発明は、以下の引用文献1ないし引用文献7に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

1.特開2010-071934号公報(前掲)
2.特開2003-066080号公報
3.特開平04-006423号公報(前掲)
4.実願昭53-160036号(実開昭55-77182号)のマイクロフィルム
5.特表平11-512826号公報
6.特表2002-534685号公報
7.特表2011-529675号公報

(2)原査定の拒絶の理由2
本願の請求項1ないし8に係る発明は明確でないから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3 引用文献に記載された事項
引用文献1には、前記第2の3(3)ア(イ)において記載したとおりの引用発明が記載されている。また、引用文献3には、前記第2の3(3)イ(イ)において記載したとおりの事項が記載されている。

4 理由1(特許法第29条第2項)について
本願発明は、本件補正発明から、「光ファイバ電流変換器」が「x偏光光」及び「y偏光光」を受信する経路についての限定を省いたものである。
また、前記第2の2(3)に記載したように、本件補正前の請求項1の「前記第一及び第二DC成分が実質的に0であるか否かを判断し、前記第一または第二DC成分が実質的に0であるか否かに基づいて出力信号を生成する」という記載は、本件補正後の請求項1の「前記第一DC成分が実質的に0であるか否かを判断し、前記第二DC成分が実質的に0であるか否かを判断し、前記第一DC成分が実質的に0であるか否か及び、前記第二DC成分が実質的に0であるか否かに基づいて出力信号を生成する」という記載と実質的に同じ内容であるから、本願発明は、この点で本件補正発明と異なるものではない。
そして、本願発明の構成を全て含み、更に前記の限定を付加した本件補正発明は、前記第2の3(6)において示したとおり、引用発明と、引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、本件補正発明から前記の限定を省いた本願発明も同様に、引用発明と、引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 理由2(特許法第36条第6項第2項違反)について
本願発明に係る請求項1には、「前記第一及び第二光ファイバ電流変換器」との記載がある一方、この記載よりも前に「第一」および「第二」の記載が無く、該「第一」および「第二」が何を指し示しているのかが明確でない。
よって、本願発明は明確でない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、また、本願の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-06-25 
結審通知日 2020-06-26 
審決日 2020-07-28 
出願番号 特願2014-116405(P2014-116405)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01R)
P 1 8・ 537- WZ (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 洋平荒井 誠  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 中塚 直樹
中澤 真吾
発明の名称 光ファイバ電流検知システムを監視するシステム及び方法  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  

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