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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1369775
審判番号 不服2020-3254  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-09 
確定日 2021-01-04 
事件の表示 特願2017-539244「生体顔検出用の方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 4日国際公開、WO2016/123008、平成30年 3月29日国内公表、特表2018-508875〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2016年(平成28年)1月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年1月26日、中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和1年 8月 9日付け:拒絶理由通知
同年11月11日 :意見書の提出、手続補正
令和2年 2月 5日付け:拒絶査定
同年 3月 9日 :審判請求、手続補正

第2 本件補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和2年3月9日付け手続補正(「本件補正」)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
令和2年3月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和1年11月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項20(以下、「補正前の請求項1?補正前の請求項20」という。)を本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?請求項20(以下、「補正後の請求項1?補正後の請求項20」という。)とするものである。
本件補正により、補正前の請求項1は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。

符号A?Dは説明のため当審で付与したものであり、以下、構成A?構成Dと称する。各請求項において同じ記載内容の構成には同じ符号を付した。

(補正前の請求項1)
「【請求項1】
(A)生体顔検出方法であって、
(B)ビデオ画像シーケンスを取得することと、
(C)第1判断結果を取得するべく、前記ビデオ画像シーケンスに対してビデオショット境界検出プロセスを実行してショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在しているかどうかを判定することと、
(D)ショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在していると前記第1判断結果が示す場合に、生体顔検出に失敗したと判定することと、
を含み、
(C1)前記ビデオショット境界検出プロセスは、
(C2)2つの画像フレームの画像特徴ベクトルを取得するべく、画像特徴抽出領域内において前記ビデオ画像シーケンスに対して画像特徴抽出を実行することと、
(C3)前記画像特徴ベクトルに基づいて、前記2つの画像フレームがコンテンツにおいて不連続であるかどうかを判定することと、を含む、
(A)方法。」

(補正後の請求項1)
「【請求項1】
(A)生体顔検出方法であって、
(B)ビデオ画像シーケンスを取得することと、
(C)第1判断結果を取得するべく、前記ビデオ画像シーケンスに対してビデオショット境界検出プロセスを実行してショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在しているかどうかを判定することと、
(D)ショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在していると前記第1判断結果が示す場合に、生体顔検出に失敗したと判定することと、
を含み、
(C1)前記ビデオショット境界検出プロセスは、
(C2)2つの画像フレームの画像特徴ベクトルを取得するべく、画像特徴抽出領域内において前記ビデオ画像シーケンスに対して画像特徴抽出を実行することと、
(C3)前記画像特徴ベクトルに基づいて、前記2つの画像フレームがコンテンツにおいて不連続であるかどうかを判定することと、を含み、
(D1)生体顔検出に失敗したと前記判定することは、前記ビデオショット境界検出プロセスのためのアプリケーションを終了することを含む、
(A)方法。」

2 補正の適否
本件補正は、構成Dの「生体顔検出に失敗したと前記判定すること」を、「ビデオショット境界検出プロセスのためのアプリケーションを終了することを含む」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1の「補正後の請求項1」に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(Ee-Sin Ng et al.,Face verification using temporal affective cues,Proceedings of the 21st International Conference on Pattern Recognition (ICPR2012),IEEE,2013年 2月14日,pp.1249-1252)には、図面と共に次の事項ア?ウが記載されている。なお、仮訳及び下線は当審で付したものである。

ア(第1249頁「1 Introduction」の第13行目?第21行目)
「In this work, we address this vulnerability by coupling temporal information with randomized affective cues to verify the liveness of the user. The proposed method can be integrated with existing techniques used in face authentication system. Consequently, by making use of temporal information from randomized sequences of affective cues, our method provides face authentication systems with additional security without the need for additional hardware.」
(当審仮訳:この論文において、我々は、ユーザがライブであることを認証するために一時的な情報をランダムな感情的手がかりと結びつけることによって、この脆弱性に対処する。提案の方法は顔認証システムにおいて利用される既存の技術に統合され得る。結果として、感情的な手がかりのランダムなシーケンスから一時的な情報を利用することによって、我々の方法は、追加的なハードウェアの必要なしに、追加的なセキュリティを有する顔認証システムを提供する。)

イ(第1249頁「2.1 Video acquisition」の第1行目?第9行目)
「In the proposed method, a live video of the user is first capturedwith a web camera in which the system prompts the user to display a random sequence of affective cues. Here, we exploit three facial expressions corresponding to “neutral”, “yawn” and “smile” which exhibit large inter-class variability. In our current setup, the user is prompted to perform each facial expression twice for 2 seconds and we record the video sequence at 30 frames per second.」
(当審仮訳:提案の方法において、システムがユーザに感情的手がかりのランダムなシーケンスを表示するよう促し、最初にウェブカメラでユーザのライブビデオをキャプチャする。ここで、我々は、大きな級内変動を示す「ニュートラル」、「あくび」、「笑顔」に対応する3つの表情を利用する。我々の現在のセットアップでは、ユーザは、それぞれの表情を2秒間にわたって2回ずつ行い、我々は1秒あたり30フレームでビデオシーケンスを記録する。)

ウ(第1250頁「2.2 SIFT flow for detecting abrupt changes」の第1行目?第21行目)
「Next, we exploit the acquired videos to authorize a user. To ensure smoothness in the videos and to detect the presence of tampered orstitched videos/image sequences, we calculate the SIFT flow energy between consecutive frames of the video to detect abrupt changes in image properties. Videos with abrupt changes will typically result inhigh SIFT flow energy between consecutive frames, while videos with smooth and gradual changes will result in low SIFT flow energy.(中略)When an abrupt change is detected, thesystem will prompt the user to perform a random sequence of affective cues again.」
(当審仮訳:次に、我々は、獲得したビデオを利用してユーザの認証を行う。ビデオの滑らかさを保証し、改ざんされた又はつなぎ合わされたビデオ/画像シーケンスを検知するために、我々は、ビデオの連続するフレーム間のSIFTフローエネルギーを計算し、画像特性における突然の変化を検出する。突然の変化を有するビデオでは典型的に連続するフレーム間で高いSIFTフローエネルギーとなり、一方、滑らかで漸進的な変化を有するビデオでは低いSIFTフローエネルギーとなる。(中略)突然の変化が検知された場合、システムはユーザに感情的手がかりのランダムなシーケンスを再度実行するように促す。)

エ 引用発明
上記ア?ウから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
符号a?dは説明のため当審で付与したものであり、以下、構成a?構成dと称する。

(引用発明)
(a)顔認証の方法であって、
(b)ユーザに感情的手がかりのランダムなシーケンスを表示するよう促し、ウェブカメラでユーザのライブビデオをキャプチャして、ビデオ/画像シーケンスを記録し、
(c)ビデオの滑らかさを保証し、改ざんされた又はつなぎ合わされたビデオシーケンスを検知するために、ビデオの連続するフレーム間のSIFTフローエネルギーを計算し、画像特性における突然の変化を検出し、
(c1)突然の変化を有するビデオでは連続するフレーム間で高いSIFTフローエネルギーとなり、滑らかで漸進的な変化を有するビデオでは低いSIFTフローエネルギーとなり、
(d)突然の変化が検知された場合、ユーザに感情的手がかりのランダムなシーケンスを再度実行するように促す、
(a)方法。

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 構成Aについて
構成aの「顔認証」は、構成bから、ユーザのライブビデオをキャプチャするので、「生体顔」を「認証」するといえる。
また、構成aの「認証」は、構成Aの「検出」に相当する。

したがって、引用発明は本件補正発明と構成Aで一致する。

イ 構成Bについて
構成bの「ビデオ/画像シーケンス」は、構成Bの「ビデオ画像シーケンス」に相当する。

したがって、引用発明は本件補正発明と構成Bを含む点で一致する。

ウ 構成C、C1、C2、C3について
(ア)構成C2について
構成cの「ビデオの連続するフレーム」は、構成C2の「2つの画像フレーム」に相当する。
構成cの「ビデオの連続するフレーム間のSIFTフローエネルギー」について、SIFTが画像特徴ベクトルを表すものであり、画像の全体または一部の領域に特徴抽出を実行することによって得られること、及び、SIFTフローエネルギーが2つの画像フレームの画像特徴ベクトルに基づいて計算されることは、当業者にとって自明である。
よって、構成cの「ビデオの連続するフレーム間のSIFTフローエネルギーを計算」することは、構成C2の「画像特徴抽出領域内において」「ビデオ画像シーケンスに対して画像特徴抽出を実行」し、「2つの画像フレームの画像特徴ベクトルを取得する」ことに相当する。

(イ)構成C3について
構成cの「画像特性における突然の変化」は、「ビデオの滑らかさを保証し、改ざんされた又はつなぎ合わされたビデオシーケンスを検知するために」検出するものであることから、ビデオの連続するフレームが画像の内容や場面に関して連続していない状態を表すといえる。
また、引用発明は、構成c1から、SIFTフローエネルギーに基づいて、「突然の変化を有するビデオ」かどうかを検出している。
よって、構成c及び構成c1は、構成C3の「画像特徴ベクトルに基づいて」「2つの画像フレームがコンテンツにおいて不連続であるかどうかを判定する」ことに相当する。

(ウ)構成C、C1の「ビデオショット境界検出プロセス」について
構成C1?C3から、本件補正発明の「ビデオショット境界検出プロセス」は、構成C2及びC3を含むものであり、構成C2及びC3については、上記(ア)及び(イ)で検討したとおりである。
また、上記(イ)で検討したとおり、引用発明の構成cにおいて検出する「画像特性における突然の変化」は、ビデオの連続するフレームが画像の内容や場面に関して連続していない状態を表していることから、「突然の変化を検出」することは、「ビデオショット境界」を「検出」することに相当する。
以上から、引用発明の構成c及び構成c1は、本件補正発明の「ビデオショット境界検出プロセス」を実行しているといえる。

(エ)構成Cについて
引用発明の構成c及び構成c1が、本件補正発明の「ビデオショット境界検出プロセス」を実行することについては、上記(ウ)で検討したとおりである。
また、上記(イ)で検討したとおり、引用発明の構成cにおいて「突然の変化を検出」することは、ビデオの連続するフレームが画像の内容や場面に関して連続していない状態を検出することであることから、「ショットの変化が」「ビデオ画像シーケンス内に存在しているかどうかを判定すること」に相当する。
さらに、構成cにおいて「突然の変化を検出」することは、構成c1から、「突然の変化を有するビデオ」であるか、「滑らかで漸進的な変化を有するビデオ」であるかを判断することであって、その判断結果が、構成Cの「第1判断結果」に相当する。
以上から、引用発明の構成c及び構成c1は、本件補正発明の構成Cに相当する。

(オ)小括
したがって、引用発明は本件補正発明と構成C、C1、C2、C3を含む点で一致する。

エ 構成D、D1について
上記ウ(エ)から、構成dの「突然の変化が検知された場合」は、構成Dの「ショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在していると前記第1判断結果が示す場合」に相当する。

そして、本件補正発明と引用発明は、ショットの変化がビデオ画像シーケンス内に存在していると第1判断結果が示す場合に、生体顔検出のプロセスを先に進めない点で共通する。

しかしながら、ショットの変化がビデオ画像シーケンス内に存在していると第1判断結果が示す場合に、生体顔検出のプロセスを先に進めない方法として、本件補正発明では、「生体顔検出に失敗したと判定」し、「生体顔検出に失敗したと判定することは、ビデオショット境界検出プロセスのためのアプリケーションを終了することを含む」のに対して、引用発明では、ユーザに感情的手がかりのランダムなシーケンスを再度実行するように促す点で相違する。

オ まとめ
以上によると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
(A)生体顔検出方法であって、
(B)ビデオ画像シーケンスを取得することと、
(C)第1判断結果を取得するべく、前記ビデオ画像シーケンスに対してビデオショット境界検出プロセスを実行してショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在しているかどうかを判定することと、
(D’)ショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在していると前記第1判断結果が示す場合に、生体顔検出のプロセスを先に進めないことと、
を含み、
(C1)前記ビデオショット境界検出プロセスは、
(C2)2つの画像フレームの画像特徴ベクトルを取得するべく、画像特徴抽出領域内において前記ビデオ画像シーケンスに対して画像特徴抽出を実行することと、
(C3)前記画像特徴ベクトルに基づいて、前記2つの画像フレームがコンテンツにおいて不連続であるかどうかを判定することと、を含む
(A)方法。

[相違点]
ショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在していると前記第1判断結果が示す場合に、生体顔検出のプロセスを先に進めない方法として、本件補正発明では、「生体顔検出に失敗したと判定」し、「生体顔検出に失敗したと判定することは、ビデオショット境界検出プロセスのためのアプリケーションを終了することを含む」のに対して、引用発明では、ユーザに感情的手がかりのランダムなシーケンスを再度実行するように促す点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

引用発明は、順に実行される、構成b、構成c及びc1、構成dの3つの工程からなり、最後の構成dによれば、「突然の変化が検知された場合、ユーザに感情的手がかりのランダムなシーケンスを再度実行するように促す」ものである。したがって、「突然の変化が検知された場合」には、構成bの「ユーザに感情的手がかりのランダムなシーケンスを表示するように促す」という最初の工程に戻ることとなり、今までの工程処理の結果(構成b、構成c及びc1の工程処理の結果)を破棄して初めからやり直すこととなるものである。
一方、コンピュータで工程処理を行う場合にアプリケーションにより処理を行うことは普通に行われていることであり、引用発明の工程処理においても当然に採用し得ることである。
したがって、引用発明において、上記3つの工程の処理をアプリケーションにより行い(この場合、アプリケーションは、「ビデオショット境界検出プロセスのためのアプリケーション」といい得る)、今までの工程処理の結果を破棄して初めからやり直す場合(「生体顔検出に失敗したと判定すること」といえる)に、一旦、該アプリケーションを終了し、適宜起動するようにすることは当業者が容易になし得ることである。
すなわち、引用発明において、「(D)ショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在していると前記第1判断結果が示す場合に、生体顔検出に失敗したと判定することと、」を含み、「(D1)生体顔検出に失敗したと判定することは、ビデオショット境界検出プロセスのためのアプリケーションを終了することを含む」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
請求人は、令和2年3月9日付け審判請求書(「(4)本願発明が特許されるべき理由」)において、以下のとおり主張している。
「本発明の上記構成、特に「ショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在していると前記第1判断結果が示す場合に、生体顔検出に失敗したと判定すること」、および「生体顔検出に失敗したと前記判定することは、前記ビデオショット境界検出プロセスのためのアプリケーションを終了することを含む」という構成は、引用文献1?3のいずれにも開示されておらず、示唆する記載も一切ありません。
ここで、審査官殿は拒絶査定において『引用文献1「2.4 Verification of temporal affective cues」の第1251頁第2行-第5行には、2.1章に記載のようにビデオに突然の変化がないことを確認して、表情の手がかりに対応するキーフレームをビデオから抽出する、と記載されており、突然の変化の検出も、第1250頁第13行-第15行に記載の、再撮影された画像やビデオによるなりすまし攻撃からユーザを守るためにユーザが生体であることを検証する方法に含まれるものと認められる。』と認定されています。
しかしながら、引用文献1に記載される構成では、その「2.2 SIFT flow for detecting abrupt changes」、「2.4 Verification of temporal affective cues」に記載されているように、ビデオの突然の変化が検出された場合、ユーザにニュートラル、あくび、笑顔等の表情のランダムなシーケンスを行わせて、表情画像を再取得し、再取得した表情画像が正しく分類される割合に基づいてユーザが生体であることの検証が行われます。このような構成では、ビデオの突然の変化が検出された場合であっても、再取得した表情画像に基づいて生体であると判定される場合がある点で、ショットの変化が検出された場合、生体顔検出に失敗したと判定し、ビデオショット境界検出プロセスのためのアプリケーションを終了する本発明とは大きく異なります。」
上記主張について検討する。
請求人は、引用発明について、「ビデオの突然の変化が検出された場合、ユーザにニュートラル、あくび、笑顔等の表情のランダムなシーケンスを行わせて、表情画像を再取得し、再取得した表情画像が正しく分類される割合に基づいてユーザが生体であることの検証が行われます。このような構成では、ビデオの突然の変化が検出された場合であっても、再取得した表情画像に基づいて生体であると判定される場合がある」と主張しているが、上記(2)エの引用発明の構成が示すとおり、ビデオの突然の変化が検出された場合、ユーザのライブビデオのキャプチャを再度行うことが促され(構成d)、ビデオのキャプチャ(構成b)が再度行われ、その後、突然の変化の検出(構成c)が再度行われる。つまり、突然の変化が検出された場合に再取得したビデオシーケンスについて、突然の変化の検出プロセスを経ることなく、生体であると判定されることはない。
そして、上記(4)で検討したとおり、引用発明において、「(D)ショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在していると前記第1判断結果が示す場合に、生体顔検出に失敗したと判定することと、」を含み、「(D1)生体顔検出に失敗したと判定することは、ビデオショット境界検出プロセスのためのアプリケーションを終了することを含む」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(6)まとめ
以上のように、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3 むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年3月9日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和1年11月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1において、「補正前の請求項1」として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由
(理由3)この出願の請求項1-20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:Ee-Sin Ng et al.,Face verification using temporal affective cues,Proceedings of the 21st International Conference on Pattern Recognition (ICPR2012),IEEE,2013年 2月14日,pp.1249-1252,
引用文献2:特開2006-270301号公報
引用文献3:HongJiang Zhang et al.,Automatic Partitioning of Full-Motion Video,Multimedia Systems,1993年 1月,pp.10-28,

3 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]1で摘記した本件補正発明に追加された限定事項を省いたものである。
そうすると、上記第2[理由]2(3)の「対比」における検討を援用すると、本願発明と引用発明との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
生体顔検出方法であって、
ビデオ画像シーケンスを取得することと、
第1判断結果を取得するべく、前記ビデオ画像シーケンスに対してビデオショット境界検出プロセスを実行してショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在しているかどうかを判定することと、
ショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在していると前記第1判断結果が示す場合に、生体顔検出のプロセスを先に進めないことと、
を含み、
前記ビデオショット境界検出プロセスは、
2つの画像フレームの画像特徴ベクトルを取得するべく、画像特徴抽出領域内において前記ビデオ画像シーケンスに対して画像特徴抽出を実行することと、
前記画像特徴ベクトルに基づいて、前記2つの画像フレームがコンテンツにおいて不連続であるかどうかを判定することと、を含む
方法。

[相違点]
ショットの変化が前記ビデオ画像シーケンス内に存在していると前記第1判断結果が示す場合に、生体顔検出のプロセスを先に進めない方法として、本件補正発明では、「生体顔検出に失敗したと判定する」のに対して、引用発明では、ユーザに感情的手がかりのランダムなシーケンスを再度実行するように促す点。

5 判断
上記第2[理由]2(4)における検討を援用すると、上記相違点は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-08-04 
結審通知日 2020-08-05 
審決日 2020-08-18 
出願番号 特願2017-539244(P2017-539244)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 板垣 有紀  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 曽我 亮司
小池 正彦
発明の名称 生体顔検出用の方法及び装置  
代理人 内藤 和彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  
代理人 江口 昭彦  

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