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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1370302
審判番号 不服2019-9853  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-25 
確定日 2021-01-12 
事件の表示 特願2017- 75050「通信システムにおける物理ダウンリンク制御シグナリングの拡張」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-139798〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年(平成24年)6月15日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年6月15日 米国,2012年1月26日 米国)を国際出願日とする特願2014-515760号の一部を,平成29年4月5日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成29年 6月22日 手続補正書の提出
平成30年 7月23日付け 拒絶理由通知書
平成30年10月30日 意見書,及び手続補正書の提出
平成31年 3月15日付け 拒絶査定
令和 元年 7月25日 拒絶査定不服審判の請求,
及び手続補正書の提出

第2 令和元年7月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年7月25日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概要
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成30年10月30日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1は,次のとおりである。

「 ユーザ端末における制御情報を受信する方法であって,
EPDCCH(Enhanced Physical Downlink Control Channel)のための物理リソースブロック(Physical Resource Block;PRB)に関連する上位階層シグナリングを受信するステップと,
第1の開始(beginning)OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiple)シンボルが前記上位階層シグナリングにより知られた場合,前記上位階層シグナリングにより決定される前記第1の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信するステップと,
前記第1の開始OFDMシンボルが前記上位階層シグナリングにより知られなかった場合PCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)により決定される第2の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信するステップと,を含み,
前記制御情報は,ダウンリンクサブフレーム内の少なくとも一つのECCE(Enhanced Control Channel Element)を用いて受信され,
前記少なくとも一つのECCEがモニタリングされる探索空間は,UE-専用探索空間である,方法。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。(下線は補正箇所を示す。)

「 ユーザ端末における制御情報を受信する方法であって,
EPDCCH(Enhanced Physical Downlink Control Channel)のための物理リソースブロック(Physical Resource Block;PRB)に関連する上位階層シグナリングを受信するステップと,
第1の開始(beginning)OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボルが前記上位階層シグナリングにより知られた場合,前記上位階層シグナリングにより決定される前記第1の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信し,前記上位階層シグナリングにより決定された前記第1の開始OFDMシンボルで転送が開始されるPDSCH(physical downlink shared channel)を受信するステップと,
前記第1の開始OFDMシンボルが前記上位階層シグナリングにより知られなかった場合PCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)により決定される第2の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信するステップと,を含み,
前記制御情報は,ダウンリンクサブフレーム内の少なくとも一つのECCE(Enhanced Control Channel Element)を用いて受信され,
前記少なくとも一つのECCEがモニタリングされる探索空間は,UE-専用探索空間である,方法。」

2 補正の適否

(1)新規事項の有無,補正の目的要件,シフト補正の有無
上記補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の開始(beginning)OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiple)シンボルが前記上位階層シグナリングにより知られた場合,前記上位階層シグナリングにより決定される前記第1の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信するステップ」を「第1の開始(beginning)OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボルが前記上位階層シグナリングにより知られた場合,前記上位階層シグナリングにより決定される前記第1の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信し,前記上位階層シグナリングにより決定された前記第1の開始OFDMシンボルで転送が開始されるPDSCH(physical downlink shared channel)を受信するステップ」に限定する補正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
したがって,上記補正は特許法17条の2第5項2号(補正の目的)に規定された事項を目的とするものである。また,同法17条の2第3項(新規事項)及び同法17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反するところはない。

(2)独立特許要件
上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて,以下に検討する。

ア 特許法第36条第6項第1号について
本件補正発明は,上記「1(2)」に記載したとおりのものである。
本件補正発明には,「前記第1の開始OFDMシンボルが前記上位階層シグナリングにより知られなかった場合PCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)により決定される第2の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信するステップ」との記載がある。
一方で,発明の詳細な説明には,以下の記載がある。(なお,下線は,当審が付与した。)

「【0045】
PRBは少なくとも1つのePDCCH転送を含み,ePDCCH転送は1つのPRBに全的に含まれるか,または複数のPRBを通じて分散できる。
ePDCCH転送は,従来のDL制御領域(PCFICHのデコーディングの後にUEにより決定された)の最後のOFDMシンボルの直後にあるOFDMシンボルで開始されることができ,またはePDCCH転送はより高いレイヤシグナリング(higher layer signaling)によりUEに知られた固定OFDXシンボルで開始されることもできる。例えば,ePDCCH転送は,従来のDL制御領域のために使われたOFDMシンボルの最大個数に対応するものの以後のOFDMシンボルで開始できる。ePDCCH転送のために使われたOFDMシンボルの個数は,DLサブフレームでの残りのOFDMシンボルの全てであるか,またはこれら残りのOFDMシンボルの任意サブセットでありうる。
【0046】
本発明の一実施形態に従って,同一なDLサブフレームでの共存をサポートする通信システムにあるcPDCCH及びePDCCHに対してUE検出プロセスが提供される。
具体的には,UEには,上位階層シグナリング,例えばRRCシグナリングを通じてcPDCCHのみをデコーディングするか,またはePDCCHのみをデコーディングするか否かが通知される。例えば,RRCシグナリングのうちの1ビットは,このような目的のために使われることができ,即ち,バイナリ‘0’はcPDCCH検出を表し,バイナリ‘1’はePDCCH検出を表す。」
(なお,【0045】の「固定OFDXシンボル」との記載は,原出願である特願2014-515760号の国際公開公報である国際公開第2012/173425号の対応する記載である[70]に,「a fixed OFDM symbol」と記載されていることから,「固定OFDMシンボル」の誤記と認められる。)

「【0064】
本発明の別の実施形態に従って,HARQ-ACK信号転送のためのPUCCHリソースがcPDCCHに対応するものに連続的なePDCCHに対応する代わりに,ePDCCHのみを受信するように環境設定されたUEが,cPDCCHに対応するPUCCHリソースにオフセットを適用することによって,例えばcPDCCHに対応する最大PUCCHリソースを仮定することによって,これらPUCCHリソースを独立的に決定することもできる。これは,ePDCCHのみを受信するように環境設定されたUEがPCFICHをデコーディングできない場合に有利である(ePDCCHデコーディングのために環境設定されたUEは,PCFICHをデコーディングするか否かを1-ビットRRCシグナリングを通じてNodeBにより環境設定されることもできる)。これはセル間干渉によって,UEが全体DLBWに対して貧弱なDLSINRを経験している場合に適用可能であり,干渉保護されたPRBにはePDCCHが割り当てられる(PCFICHは実質的に全体DLBWを通じて転送され,干渉から保護できない)。不利な点は,cPDCCHに対するOFDMシンボルの個数が最大のものでない場合には,幾つかのPUCCHリソースが使われていない状態に維持されるという点である。
【0065】
図11は,本発明の一実施形態に従って,HARQ-ACK信号転送に対するPUCCHリソース決定のためのcCCE及びeCCEの順序化を図示している。
図11を参照すると,ePDCCH(1110,1112,1114,及び1116)の潜在的転送のために4個のPRBが環境設定される。各々のPRBは,例えば周波数領域で昇りのPRB次順で先にナンバリングされ,その後に時間領域でナンバリングされる4個のeCCEを含む(でなければ,eCCEがPRBの昇順で時間領域に先にマッピングされることもできる)。ePDCCHのみを受信するようにNodeBにより環境設定されたUEは,OFDMシンボルの最大個数がcPDCCHの転送のために使われることと仮定することによって,cCCEの最大個数Nc,maxのようなcCCEの固定された個数を仮定し,PCFICHをデコーディングしない。(以下略)」

発明の詳細な説明の段落【0045】の記載によれば,「従来のDL制御領域(PCFICHのデコーディングの後にUEにより決定された)の最後のOFDMシンボルの直後にあるOFDMシンボル」と,「ePDCCH転送はより高いレイヤシグナリング(higher layer signaling)によりUEに知られた固定OFDMシンボルというePDCCH転送が開始されるOFDMシンボルについて2つの例示がなされている。
しかしながら,発明の詳細な説明には,「高いレイヤシグナリング(higher layer signaling)」によりePDCCH転送が開始される「固定OFDMシンボル」がUEに知られなかった場合に,「ePDCCH転送は,従来のDL制御領域(PCFICHのデコーディングの後にUEにより決定された)の最後のOFDMシンボルの直後にあるOFDMシンボルで開始される」ことについての記載はない。また,本願優先日においては,ePDCCHをどのようなリソースに割り当てるかは議論の段階であり,決まった方法がなかったことが技術常識であり,「ePDCCH転送は,従来のDL制御領域(PCFICHのデコーディングの後にUEにより決定された)の最後のOFDMシンボルの直後にあるOFDMシンボルで開始される」ことが周知技術であるともいえない。してみれば,「高いレイヤシグナリング(higher layer signaling)」によりePDCCH転送が開始される「固定OFDMシンボル」がUEに知られなかった場合に,「ePDCCH転送は,従来のDL制御領域(PCFICHのデコーディングの後にUEにより決定された)の最後のOFDMシンボルの直後にあるOFDMシンボルで開始される」ことを採用することが,当業者にとって自明であるとはいえず,発明の詳細な説明には,当該事項が示唆されているとまではいえない。
関連する【0046】,【0064】,及び,【0065】の記載からも,UEが上位階層シグナリングによりePDCCHのみをデコードするよう設定された場合において,PCFICHをデコードする必要がないことを記載するのみであり,「前記第1の開始OFDMシンボルが前記上位階層シグナリングにより知られなかった場合PCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)により決定される第2の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信する」ことは,記載も示唆もされていない。
したがって,本件補正発明の「前記第1の開始OFDMシンボルが前記上位階層シグナリングにより知られなかった場合PCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)により決定される第2の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信するステップ」は,発明の詳細な説明に記載も示唆もされたものではない。
よって,この出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,特許出願の際,独立して特許を受けることができない。

[請求人の主張について]
請求人は,審判請求書において以下のとおり主張している。
「 次の明細書の記載を参考にすれば,
本願発明は,(例えば,1-ビットRRCシグナリングを通じて)PCFICHをデコーディングするかどうかを決定することができます。
また,本願の図11に示すように,第1の開始OFDMシンボルが,前記上位階層シグナリングにより知られた場合に,PCFICHをデコーディングしません。
したがいまして,PCFICHをデコーディングする場合は,(例えば,1-ビットRRCシグナリングを通じて)PCFICHをデコーディングすることと決定し,第1の開始OFDMシンボルが,前記上位階層シグナリングにより知られなかった場合です。
<本願の図11>
(中略)
<本願の段落[0064],[0065](下線は出願人により記す)>
(中略)
つまり,審査官殿が主張されましたように,
「二つの場合しかなく,どちらかの方法しか取り得ない」場合ではないとしても,本願発明では,第1の開始OFDMシンボルが,前記上位階層シグナリングにより知られていないという条件は,PCFICHをデコーディングするための必要条件となりますので,
「前記第1の開始OFDMシンボルが前記上位階層シグナリングにより知られなかった場合PCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)により決定される第2の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信するステップと,」は,発明の詳細な説明に記載された内容によってサポートされると思料されます。」

しかしながら,本願図面の【図11】には,「第1の開始OFDMシンボルが,前記上位階層シグナリングにより知られた場合に,PCFICHをデコーディングし」ないことは記載されていない。
また,発明の詳細な説明の段落【0064】,【0065】及び【図11】には,「PCFICHをデコーディングする場合は,(例えば,1-ビットRRCシグナリングを通じて)PCFICHをデコーディングすることと決定し,第1の開始OFDMシンボルが,前記上位階層シグナリングにより知られなかった場合で」あることや,「第1の開始OFDMシンボルが,前記上位階層シグナリングにより知られていないという条件は,PCFICHをデコーディングするための必要条件とな」ることも記載されていない。
そして,発明の詳細な説明の段落【0064】に記載の「PCFICHをデコーディングするか否かを1-ビットRRCシグナリング」は,PCFICHをデコーディングするか否かを示すものであり,第1の開始シンボルを示すものではない。
してみれば,請求人の主張は,発明の詳細な説明や図面の記載に基づいたものではない。
したがって,請求人の主張は,採用できない。

4 まとめ
以上のことから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の特許請求の範囲に記載された発明は,平成30年10月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-16に記載された事項により特定されるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という)は,上記「第2 1(1)」の項で示したとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は,「3.(サポート要件)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」というものを含むものであり,請求項1については,「請求項1には,「前記第1の開始OFDMシンボルが前記上位階層シグナリングにより設定されない場合,PCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)により決定される第2の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信するステップ」と記載されている。発明の詳細な説明には,PCFICHにより決定される開始OFDMシンボルでEPDCCHが転送されることは記載されているが,そのことが第1の開始OFDMシンボルが上位階層シグナリングにより設定されない場合であることは記載されていない。」というものである。

3 当審の判断
上記「第2 (2)ア」のとおり,本願発明の「前記第1の開始OFDMシンボルが前記上位階層シグナリングにより知られなかった場合PCFICH(Physical Control Format Indicator Channel)により決定される第2の開始OFDMシンボルで転送が開始される前記EPDCCHで前記制御情報を受信するステップ」は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。
したがって,この出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,特許を受けることができない。

よって,上記結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-07-22 
結審通知日 2020-07-27 
審決日 2020-08-27 
出願番号 特願2017-75050(P2017-75050)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04W)
P 1 8・ 575- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 健  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 永田 義仁
望月 章俊
発明の名称 通信システムにおける物理ダウンリンク制御シグナリングの拡張  
代理人 崔 允辰  
代理人 阿部 達彦  
代理人 木内 敬二  
代理人 実広 信哉  

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