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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1370365
審判番号 不服2019-9817  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-24 
確定日 2021-01-15 
事件の表示 特願2014-252490「案内表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月23日出願公開、特開2016-115090〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成26年12月12日を出願日とする出願であって、平成30年11月14日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月18日付けで手続補正がなされ、同月29日付けで拒絶理由が通知され、同年3月18日付けで手続補正がなされ、令和元年5月8日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年7月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成31年3月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「案内板に取り付けたRFIDタグと、前記RFIDタグを読み取る携帯型情報処理装置と、前記携帯型情報処理装置とインターネットを介して接続された管理コンピュータとより成る案内表示システムであって、
前記RFIDタグは周囲全体がゴム状弾性材により密着被覆されており、
前記管理コンピュータは、複数の案内板のそれぞれについての案内情報を蓄積したデータベースと、前記複数の案内板のそれぞれと結びつけられたURLへのアクセス要求に基づいて当該URLに対応する案内板に関する案内情報を送信する情報表示手段とを具備し、
前記案内板に取り付けたRFIDタグには、前記携帯型情報処理装置に送信する送信情報として当該案内板に関する案内情報に対応するURLが格納されており、
前記情報表示手段は、前記案内情報を送信する前に、複数の案内項目から所望の案内項目を選択する案内メニュー画面を送信することを特徴とする案内表示システム。」

3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2に記載された発明及び引用文献11,引用文献12に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2011-100243号公報
引用文献2.登録実用新案第3193528号公報
引用文献11.特開平11-140802号公報
引用文献12.特開2009-289099号公報

4.引用文献及び引用発明
(1)特開2011-100243号公報
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-100243号公報(以下、「引用文献1」という。)には、ア?エのとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。以下、同様。

「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、最新の案内情報が提供できる情報案内板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の情報案内板は、インターネット上のサーバ装置を識別するURLおよび識別情報を記憶し、前記URLおよび前記識別情報を読み取り手段を有する情報端末に送出する複数のRFIDタグが分散して配置されるとともに、表面に前記識別情報に関連づけられた案内情報を象徴する複数のマークが分散して付された情報案内板であって、前記読み取り手段を有する情報端末は、前記RFIDタグの前記URLおよび前記識別情報を読み取り、前記URLが示す前記インターネット上の前記サーバ装置に前記識別情報を送出し、前記サーバ装置は、予め前記識別情報に関連付けられた前記案内情報を記憶し、前記識別情報を受信した場合、前記識別情報に関連付けられた前記案内情報を前記読み取り手段を有する情報端末に送出することを特徴としている。」

「【0014】
図1に示すように、本実施例の情報案内板10は、ボード11の裏面にインターネット12上のサーバ装置13を識別するURL(Uniform Resource Locator)および識別情報を記憶し、URLおよび識別情報を読み取り手段を有する情報端末14に送出する複数のRFIDタグ15が分散して配置されている。ボード11の表面には、自己の識別情報に関連付けられた案内情報を象徴する複数のマーク16が分散して付されている。
【0015】
ボード11は、例えばプラスチック、合板などからなるボードで、壁掛けまたはスタンドに取り付けられて掲示できるように構成されている。
【0016】
RFIDタグ15は、例えばパッシブダグであり、タグリーダから送信された電波を受信し、その電波をエネルギー源として動作する。即ち、RFIDタグ15のアンテナとダグリーダのアンテナとの間で電波をやりとりし、エネルギー、信号を伝達する。
【0017】
GHzオーダの周波数の電波を使用した場合、RFIDタグ15とタグリーダとの通信可能距離は3?5m程度である。RFIDタグ15は、外界の影響を避けるために、例えば基板11の裏面に埋め込まれ、または保護材で被覆されている。
【0018】
マーク16は、広告媒体で、例えば商品、店舗、施設、観光地、イベントなどを示すシンボルマークである。マーク16は、ボード11の表面に付け替え可能に、例えば粘着性テープなどで固定されている。
【0019】
マーク16のサイズ、形状はボード11内に収まる範囲内であれば任意であり、ボード11内の任意の領域に配置することができる。図では、一例として、1つのマーク16のみが表示されている。
【0020】
タグリーダを有する情報端末14は、例えば移動体通信端末で、複数のマーク16のうちから所定のマークが付された領域に配置されているRFIDタグ15のURLおよび識別情報を読み取り、URLが示すインターネット上のサーバ装置13に識別情報を送信し、インターネット上のサーバ装置13から返信された案内情報を受信する。
【0021】
サーバ装置13は、予め識別情報に関連付けられた案内情報を記憶している。サーバ装置13は、情報端末14からRFIDタグの識別情報を受信した場合、識別情報に関連付けられた案内情報を、タグリーダを有する情報端末14に返信する。
【0022】
RFIDタグ15の数は、マーク16の数より多いので、マーク16が付されている領域には、複数のRFIDタグが含まれている。
【0023】
上記構成の情報案内板では、サーバ装置13側で、識別情報に関連付けられた案内情報を常時アップデートしておくことにより、最新の案内情報が提供できるように構成されている。更に、ボード11側で、マーク16を別のマークに付け替え、サーバ装置13側で、別のマークに応じて識別情報に関連付けられた案内情報をリニューアルすることにより、ボード11が繰り返し使用可能になるように構成されている。
【0024】
図2は情報案内板11を媒介した情報の流れを示すフローチャートである。図2に示すように、情報端末14は、特定のマーク16が付された領域に近づけられ、読み取り指令を受けると、特定のマーク16が付された領域に配置されているRFIDタグ15のURLおよび識別情報を読みとる(ステップS11)。
【0025】
次に、情報端末14は、読み取った識別情報をURLが示すインターネット12上のサーバ装置13に送信する(ステップS12)。
【0026】
次に、サーバ装置13は、記憶している案内情報の中から送られてきた識別情報に関連付けられた案内情報に対応するメニュー画面情報を、インターネット12を介して情報端末14に返信する(ステップS13)。
【0027】
次に、情報端末14は、サーバ装置13から送られてきたメニュー画面情報を基に、メニューを情報端末14の画面に表示する(ステップS14)。
【0028】
図3は、情報端末14の画面に表示されるメニューを示す図である。図3に示すように、特定のマーク16が、例えば施設である場合、その施設の周辺地図、その施設の設備や間取りなどを示す建物情報、その施設の周辺地域のお天気情報、その施設で開催されるイベント情報、その施設までの移動手段を含む距離情報などを表示することができる。
【0029】
これにより、情報端末14を所持しているユーザは、特定のマーク16を選択し、インターネット12上のサーバ装置13にアクセスすることにより、いつでも最新の案内情報が得ることができる。」





段落【0020】の記載によると、「タグリーダを有する情報端末14は、たとえば移動体通信端末」であり、段落【0008】、【0009】の記載によると、情報案内板10とサーバ装置13と情報端末14とからなる装置は、案内情報を提供するから、「案内情報提供装置」といい得るものである。
よって、図1、段落【0009】、【0014】の記載によると、引用文献1には、「情報案内板10に取り付けられたRFIDタグ15と、移動体通信端末等のタグリーダを有する情報端末14と、前記情報端末14とインターネットを介して接続されたサーバ装置13とからなる、案内情報提供装置。」が記載されている。

段落【0014】、【0017】の記載によれば、上記RFIDタグ15は、外界の影響を避けるために、情報案内板10のボード11の裏面に埋め込まれ、または保護材で被覆されている。

段落【0014】の記載によれば、上記RFIDタグ15は、「サーバ装置13を識別するURLおよび識別情報」を記憶し、当該「URLおよび識別情報」を情報端末14に送出する。

段落【0020】、【0025】の記載によれば、上記情報端末14は、RFIDタグ15のURLおよび識別情報を読み取り、読み取った識別情報をURLが示すインターネット12上のサーバ装置13に送信する。

段落【0021】の記載によれば、上記サーバ装置13は、予め識別情報に関連付けられた案内情報を記憶し、情報端末14からRFIDタグの識別情報を受信した場合、識別情報に関連付けられた案内情報を、情報端末14に返信する。

段落【0026】の記載によれば、上記サーバ装置13は、記憶している案内情報の中から送られてきた識別情報に関連付けられた案内情報に対応するメニュー画面情報を、インターネット12を介して情報端末14に返信する。

段落【0028】の記載、図3によれば、上記クの「メニュー画面情報」は、案内情報が「施設」に関連する場合、当該施設に関する「周辺地図」、「建物情報」、「お天気情報」、「イベント情報」、「距離情報」を選択可能としたメニュー画面の情報である。

以上、オ?サによると、引用文献1には、
「情報案内板10に取り付けられたRFIDタグ15と、移動体通信端末等のタグリーダを有する情報端末14と、前記情報端末14とインターネットを介して接続されたサーバ装置13とからなる、案内情報提供装置であって、
前記RFIDタグ15は、外界の影響を避けるために、前記情報案内板10のボード11の裏面に埋め込まれ、または保護材で被覆されており、
前記サーバ装置13は、予め識別情報に関連付けられた案内情報を記憶し、前記情報端末14からRFIDタグの識別情報を受信した場合、当該識別情報に関連付けられた案内情報を、前記情報端末14に返信するものであり、
前記RFIDタグ15には、前記サーバ装置13を識別するURLおよび識別情報が記憶されており、RFIDタグ15は、当該『URLおよび識別情報』を情報端末14に送出し、前記情報端末14は、当該『URLおよび識別情報』を読み取り、読み取った識別情報をURLが示すインターネット12上のサーバ装置13に送信し、
前記サーバ装置13は、記憶している案内情報の中から送られてきた識別情報に関連付けられた案内情報に対応するメニュー画面情報を、インターネット12を介して情報端末14に返信し、
前記メニュー画面情報は、案内情報が『施設』に関連する場合、当該施設に関する『周辺地図』、『建物情報』、『お天気情報』、『イベント情報』、『距離情報』を選択可能としたメニュー画面の情報である、
案内情報提供装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2)登録実用新案第3193528号公報
原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3193528号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次のとおりの記載がある。
「【0006】
本考案によれば、RFタグが建築構造物等の物体に取り付けられているときには、当該物体に関するデータを通信するタグ本体は、物体と筐体の凹部との間に形成される空間内に収容される。これにより、電子装置であるタグ本体を、筐体の外部に存在する水分(水や湿気)から保護することが可能になる。更に、タグ本体は、筐体の凹部内に充填されたゲル状物質によって被覆されている。ゲル状物質は密着性が高い物質であるため、仮に、筐体の凹部内に水分が侵入しても、侵入した水分がタグ本体まで到達することが抑制される。このように、本考案によれば、タグ本体が筐体及び凹部内に充填されたゲル状物質によって二重に保護されているため、タグ本体に水分が接触することが効果的に抑制される。ゆえに、本考案によれば、高い耐水性・耐湿性を有するRFタグを提供することができる。」
「【0015】
<RFタグの構成>
本実施例に係るRFタグ10は、トンネルや橋梁などの建築構造物に取り付けられるRFタグであって、リーダライタとの間で無線通信によって当該建築構造物に関するデータ(情報)を通信するものである。図1に示されるように、RFタグ10は、リーダライタとの間で無線通信によって建築構造物に関するデータを通信するタグ本体20と、建築構造物に取り付けられたときに、建築構造物との間で空間を形成する凹部31が設けられた筐体30と、を備えている。そして、タグ本体20は、凹部31内に充填されたゲル状物質から成る被覆部40によって完全に被覆されている。」
「【0017】
筐体30は、図2Aに示されるように、正面(上面)から見たときに概ね矩形形状を有する部材である。筐体30は、建築構造物に対して取り付けられる取付面32と、取付面32よりも窪むようにして設けられた凹部31とを備えている。建築構造物へのRFタグ10の取り付けは、取付面32に設けられたボルト孔33に挿通されるボルトによって、筐体30が建築構造物に対して固定されることによって行われる。なお、本実施例においては2つのボルト孔33が設けられているが、その数は適宜変更することができる。凹部31には平坦な底34が形成されている。タグ本体20は、底34の内面35の概ね中央部分に貼付されることによって固定される。本実施例に係る筐体30は、ポリウレタン(ポリウレタン樹脂)から形成される部材であり、取付面32から底34の外面36までの高さH(図2B参照)は22mm以上に設定されている。また、底34の厚さT(図3参照)は1mmに設定されている。
【0018】
被覆部40は、凹部31内に充填されたゲル状物質から構成されている。本実施例においては、シリコーンを含む物質であるシリコーンゴムがゲル状物質として用いられている。シリコーンゴムは、硬化する前は流動性を有する物質である。ゆえに、タグ本体20が固定された底34を概ね水平に設置した状態で凹部31内に硬化前のシリコーンゴムを流し込むことにより、タグ本体20の全体を容易かつ確実に被覆することが可能になる。そして、シリコーンゴムの硬化後には、その高い密着性により、被覆部40とタグ本体20や凹部31の表面との間に隙間が生じることが抑制される。ここで、図3を用いて被覆部40の厚さ、即ち、シリコーンゴムの充填深さG(内面35から被覆部40の表面までの距離)について説明する。充填深さGが凹部31の深さDの10パーセント未満であると、被覆部40が剥離する虞があるために、タグ本体20への水分の接触や、タグ本体20の脱落が生じる虞がある。一方、充填深さGが凹部31の深さDの20パーセントを超えると、電波の透過率が低下するために、リーダライタとタグ本体20との無線通信に支障が出る虞がある。そこで、本実施例においては、被覆部40を構成するシリコーンゴムは、凹部31の深さDの10パーセント以上且つ20パーセント以下の深さまで充填されている。」


(3)特開2009-140434号公報
特開2009-140434号公報(以下、「周知文献1」という。)には、次のとおりの記載がある。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムカバー付ICタグの製造方法( 以下、単に「製造方法」とも称する)およびゴムカバー付ICタグに関し、詳しくは、各種製品の管理等の目的で好適に適用可能なゴムカバー付ICタグの製造方法およびゴムカバー付ICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグは、磁気シートやバーコードに比べて情報量が多いことから、近年、その利点を活かして、製品の物流管理や製造管理、品質管理等のさまざまな場面に用途が広がってきている。ICタグは、例えば、プラスチックフィルムでコーティングしたり、プラスチックやセラミックでカバーするなどして、製品に取付けて使用される。
【0003】
また、ICタグの特徴の一つとして、耐熱性に優れることが挙げられる。ICタグの耐熱温度は、精密機器でありながら、現状、120℃付近まで達成されている。したがって、製品とICタグを一体化する際には、かかる耐熱温度の範囲内で、一体化処理を行っている。」
「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のプラスチックフィルムでコーティングされたICタグは、柔軟性はあるものの、耐水性や耐環境性などに劣るために使用環境が限定されてしまい、また、プラスチックカバーやセラミックカバーで保護されたICタグは、その堅牢性から耐水性や耐環境性には優れるものの、材質上、柔軟性に劣るという課題を有していた。
【0006】
これに対して、柔軟であって耐水性や耐環境性にも優れるカバー材として、ゴムを用いたICタグが検討されている。かかるゴムカバー付きICタグの作製方法としては、未加硫ゴム中にICタグを埋め込んで加硫したり、あらかじめ加硫したゴムカバー内にICタグを入れ、これを接着したり、または、常温硬化型のゴムを用いてカバーを作製するなどの方法が採られている。
【0007】
しかしながら、ゴム中にICタグを埋め込む方法では、一般的なゴムの加硫温度および加硫時の圧力を用いた場合、中に埋め込まれるICタグが破壊されてしまうおそれがある。すなわち、加硫温度がICタグの耐熱温度よりも高温域であったり、加硫圧がタイヤ加硫時のような高圧力であったりするような場合である。また、加硫ゴムを接着させる方法では、接着方法および長期使用時の接着信頼性が課題となる。さらに、常温硬化型のゴムについても、材料のベースが高いことや、その材料の成型前のポットライフが短いために、成型方法に大幅な制約があることなど、実使用には難点を有するものであった。
【0008】
上述のように、従来の技術では、十分なゴムカバー付きICタグが得られるものとはいえず、実使用に耐え得るゴムカバー付きICタグの実現が求められていた。この点、前記特許文献1に記載の技術によれば、ICタグと製品(被着体)との間の接着については確保できるが、ICタグとゴムカバー自体との一体化の課題については、十分解消できるものではなかった。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、使用するICタグの耐熱温度によらず、ICタグとゴムカバーとを一体化することができ、従来のような成形方法の制約や接着信頼性、コスト高等の問題もない、ゴムカバー付きICタグの製造方法およびそれにより得られるゴムカバー付きICタグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記構成とすることにより、使用するICタグの耐熱温度によらず、ICタグとゴムカバーとを一体化することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のゴムカバー付きICタグの製造方法は、ICタグと、該ICタグを被覆するゴムカバーとからなるゴムカバー付きICタグを、2枚以上の未加硫ゴムシートでICタグを挟み込んだ後、該ICタグを挟み込んだ未加硫ゴムシートを加硫することにより製造するゴムカバー付きICタグの製造方法であって、
前記未加硫ゴムシートとして発泡抑制剤を含有するものを用いるとともに、前記加硫を、大気圧以上大気圧+0.2MPa以下の圧力下、前記ICタグの耐熱温度以下の温度で行うことを特徴とするものである。」
「【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記構成としたことにより、使用するICタグの耐熱温度によらず、ICタグとゴムカバーとを一体化することができ、従来のような成形方法の制約や接着信頼性、コスト高等の問題もない、ゴムカバー付きICタグの製造方法およびゴムカバー付きICタグを実現することが可能となった。」
「【0030】
本発明のゴムカバー付きICタグは、接着等により各種製品に適用することが可能である他、ゴム製品自体と一体化して形成することも可能であり、その用途については、特に制限されるものではない。」


5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「情報案内板10」、「RFIDタグ15」、「移動体通信端末等のタグリーダを有する情報端末14」、「サーバ装置13」は、それぞれ、本願発明の「案内板」、「RFIDタグ」、「携帯型情報処理装置」、「管理コンピュータ」に相当し、引用発明の「案内情報提供装置」は、本願発明と同様の「案内表示システム」ともいい得るから、引用発明の「情報案内板10に取り付けられたRFIDタグ15と、移動体通信端末等のタグリーダを有する情報端末14と、前記情報端末14とインターネットを介して接続されたサーバ装置13とからなる、案内情報提供装置」は、本願発明の「案内板に取り付けたRFIDタグと、前記RFIDタグを読み取る携帯型情報処理装置と、前記携帯型情報処理装置とインターネットを介して接続された管理コンピュータとより成る案内表示システム」に相当する。
(2)本願明細書の段落【0036】、【0037】の「本発明のRFIDタグ2は、図2に示す市販されているRFIDタグ2aを、図3及び図4に示す様に、RFIDタグ2a全体をゴム状弾性材2bにより被覆したものである。この為、耐水性、塩水や排気ガス等に対する耐腐食性、耐摩耗性、耐変形性等が要求される厳しい環境の案内板に使用できる。」との記載によると、本願発明のRFIDタグ全体のゴム状弾性体による密着被覆は、案内板設置環境における水、塩水、排気ガス等からのRFIDタグ本体の保護を目的とすることは明らかであるから、引用発明の択一的に記載された「外界の影響を避けるために、情報案内板10のボード11の裏面に埋め込まれ、または保護材で被覆され」た「RFIDタグ」の一方の「外界の影響を避けるために、保護材で被覆され」た「RFIDタグ」と、本願発明の「周囲全体がゴム状弾性材により密着被覆され」た「RFIDタグ」とは、いずれも、「外界の影響を避けるために、保護材で被覆され」た「RFIDタグ」である点で共通する。
(3)引用発明の「サーバ装置13」において、識別情報と案内情報とを関連付けて記憶したものは、データベースといえる。
また、引用発明の「識別情報」は、「情報案内板10」に設けられた「RFIDタグ」に格納されたものであり、識別情報に関連付けられた情報は、情報案内板に関係する案内情報であることは明らかであるから、引用発明の「識別情報に関連付けられた案内情報」は、「情報案内板10」に関係する「案内情報」であるといえる。
よって、引用発明の「予め識別情報に関連付けられた案内情報を記憶」した「サーバ装置13」と本願発明の「複数の案内板のそれぞれについての案内情報を蓄積したデータベース」を備える「管理コンピュータ」とは、「案内板に関係する案内情報を蓄積したデータベース」を備える「管理コンピュータ」である点で共通する。
(4)引用発明の、RFID15に記憶され、情報端末14に送出され、情報端末14により読み取られ、情報端末14が、サーバ装置13へのアクセスし、案内情報を要求するための「サーバ装置13を識別するURLおよび識別情報」と、本願発明のRFIDタグに格納され、「携帯型情報処理装置に送信」され、「前記複数の案内板のそれぞれと結びつけられ」た「URL」であって、当該「URL」に対する「アクセス要求に基づいて」「当該URLに対応する案内板に関する案内情報を送信する」ための「URL」とは、いずれも、「案内板に関係する案内情報」に「アクセスするためのアクセス情報」である点で共通する。
よって、引用発明のサーバ装置13における「情報端末14からRFIDタグの識別情報を受信した場合、識別情報に関連付けられた案内情報を、前記情報端末14に返信する」構成と、本願発明の「前記複数の案内板のそれぞれと結びつけられたURLへのアクセス要求に基づいて当該URLに対応する案内板に関する案内情報を送信する情報表示手段」とは、いずれも、「案内板に関係する案内情報にアクセスするためのアクセス情報へのアクセス要求に基づいて当該アクセス情報に対応する案内板に関係する案内情報を送信する」点で共通し、引用発明の当該構成は、本願発明と同様の「情報表示手段」といい得るものである。
(5)上記(4)と同様に、引用発明の「情報端末14により読み取られる」「サーバ装置13を識別するURLおよび識別情報が記憶され」、「当該『URLおよび識別情報』を情報端末14に送出」する「RFIDタグ15」と、本願発明の「前記携帯型情報処理装置に送信する送信情報として当該案内板に関する案内情報に対応するURLが格納され」た「RFIDタグ」とは、いずれも、「前記携帯型情報処理装置に送信する送信情報として当該案内板に関係する案内情報に対応するアクセス情報が格納され」ている点で共通する。
(6)引用発明における「メニュー画面情報」は、「周辺地図」、「建物情報」、「お天気情報」、「イベント情報」、「距離情報」などの項目をメニュー画面として表示するための情報であり、それぞれの項目を選択することにより、それぞれの案内情報が得られることは明らかであるから、引用発明は、本願発明と同様に「前記情報表示手段は、前記案内情報を送信する前に、複数の案内項目から所望の案内項目を選択する案内メニュー画面を送信する」ものである。
(7)以上、(1)?(6)によると、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。
[一致点]
案内板に取り付けたRFIDタグと、前記RFIDタグを読み取る携帯型情報処理装置と、前記携帯型情報処理装置とインターネットを介して接続された管理コンピュータとより成る案内表示システムであって、
前記RFIDタグは外界の影響を避けるために、保護材で被覆されており、
前記管理コンピュータは、案内板に関係する案内情報を蓄積したデータベースと、案内板に関係する案内情報にアクセスするためのアクセス情報へのアクセス要求に基づいて当該アクセス情報に対応する案内板に関係する案内情報を送信する情報表示手段とを具備し、
前記案内板に取り付けたRFIDタグには、前記携帯型情報処理装置に送信する送信情報として当該案内板に関係する案内情報に対応するアクセス情報が格納されており、
前記情報表示手段は、前記案内情報を送信する前に、複数の案内項目から所望の案内項目を選択する案内メニュー画面を送信することを特徴とする案内表示システム。

[相違点1]
RFIDタグにおける外界の影響を避けるための保護材による被覆が、本願発明では、RFIDタグ周囲全体をゴム状弾性材により密着被覆するものであるのに対し、引用発明では、そのような特定のない点。
[相違点2]
データベースに蓄積される案内板に関係する案内情報が、本願発明では、複数の案内板のそれぞれに対応づけられているのに対し、引用発明では、案内板に取り付けられたRFIDタグの識別情報に対応付けられており、そのため、案内板に関係する案内情報にアクセスするためのアクセス情報、および、RFIDタグに格納される案内情報に対応するアクセス情報が、本願発明では、「URL」であるのに対し、引用発明では、「サーバ装置13を識別するURLおよび識別情報」である点、すなわち、本願発明では、案内板とURL及び案内情報とが、1対1の対応関係であり、案内板が複数であることが特定されているのに対し、引用発明では、案内板に対して識別情報が複数あり、案内板と識別情報及び案内情報とが、1対多の対応関係であり、案内板が複数であることが特定されていない点。

6.当審の判断
(1)上記[相違点1]について
引用発明の情報案内板は、一般的には屋外に設置されるものであり、そのため、引用発明のRFIDタグは、外界の影響を避けるために、保護材により被覆されている。ここで、外界の影響とは、主に雨水の影響のことと認められ、RFIDに対する水の浸入を防止する技術として、引用文献2(段落【0006】、【0015】、【0017】、【0018】、図1)には、ポリウレタンからなる筐体の凹部の中央にRFIDタグを貼付し、シリコーンゴムを流し込むことにより、RFIDタグ本体を被覆し、シリコーンゴムの硬化後には、シリコーンゴムの高い密着性により、被覆部とタグ本体や凹部の表面との間に隙間が生じることが抑制され、これにより、タグ本体に水分が接触することが効果的に抑制され、高い耐水性・耐湿性を有することが記載されている。
引用発明のRFIDタグには、外界の影響、すなわち、雨水の影響を避けるという課題が存在するため、当該課題を解決するため、引用文献2に記載された技術に限らず、周知の耐水性、耐湿性を有するRFIDの被覆構造を採用することは当業者が適宜選択する事項と認められ、RFIDタグ本体の周囲全体をゴム状弾性体により密着被覆したRFIDタグは、周知文献1(段落【0006】、【0008】?【0011】、【0030】、図1)に記載されているように周知技術であるから、引用発明において、外界の影響を避けるための保護材により被覆されたRFIDタグを、RFIDタグの周囲全体をゴム状弾性体より密着被覆したRFIDとすることは当業者が容易に想到し得た事項である。
(2)上記[相違点2]について
引用発明は、案内板と識別情報及び案内情報とが1対多の関係にあるが、引用発明において、案内板に対応する複数の識別情報及び案内情報を、単に、1つとすることに何ら困難性はなく、案内情報に対応するアクセス情報をURLとすることは特開2004-348243号公報(段落【0009】)に記載されているように周知技術であり、案内板に対応する案内情報を1つとした場合、案内板に対して複数の識別情報を対応させる必要はないのであるから、案内情報に対応するアクセス情報をURLとすることに格別の困難性はない。
また、引用発明において、案内板は1つに限られないから、引用発明の案内板を複数とすることに格別の困難性はない。
したがって、引用発明において、相違点2に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得た事項である。
(3)本願発明の効果について
請求人が審判請求書の請求の理由において主張する、設置済の案内板に容易に取り付けることができ、風雨に晒される案内板に取り付けても、劣化が進むことがない、案内板を設置する基台などのコンクリートと共にコンクリート内部に埋設することができるという効果は、周知文献1には、「ICタグとゴムカバーとを一体化した」「ゴムカバー付きICタグ」のゴムカバーは、「柔軟であって耐水性や耐環境性にも優れ」ている(段落【0006】)ことが記載されていることから、引用文献1、引用文献2及び周知文献1の記載事項から当業者が予測し得る範囲を超えるものではない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-10-29 
結審通知日 2020-11-11 
審決日 2020-11-25 
出願番号 特願2014-252490(P2014-252490)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 加寿磨  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 中野 浩昌
高瀬 勤
発明の名称 案内表示システム  
代理人 栗原 浩之  
代理人 山▲崎▼ 雄一郎  

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