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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B44C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B44C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B44C
管理番号 1370384
審判番号 不服2019-14828  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-06 
確定日 2021-01-14 
事件の表示 特願2015- 70356「加飾成形品及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開、特開2016-190331〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2015-70356号(以下「本件出願」という。)は、平成27年3月30日を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成30年11月16日付け:拒絶理由通知書
平成31年 3月26日 :手続補正書
平成31年 3月26日 :意見書
令和 元年 7月31日付け:拒絶査定
令和 元年11月 6日 :審判請求書
令和 2年 7月31日付け:拒絶理由通知書
令和 2年10月 1日 :意見書
令和 2年10月 1日 :手続補正書

2 本願発明
本件出願の請求項1?請求項5に係る発明は、令和2年10月1日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項5に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のものである。
「【請求項1】
高艶調成形品と、前記高艶調成形品表面の一部に設けられた絵柄層とを有し、
前記高艶調成形品は、基材層と、高艶樹脂層との積層体であり、
前記高艶樹脂層が前記基材層の前記絵柄層側の表面に積層されており、
前記絵柄層上にトップコート層をさらに有し、
前記トップコート層は、艶消し調である、加飾成形品。」

3 当合議体の拒絶の理由
令和2年7月31日付け拒絶理由通知書によって当合議体が通知した拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:特開2001-310436号公報
引用文献2:特開2006-231578号公報
引用文献3:特開2011-230404号公報
(当合議体注:引用文献1、引用文献2あるいは引用文献3が主引用例である。)

第2 当合議体の判断
1 引用文献3を主引用例とした場合
(1) 引用文献3の記載
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷層が水圧転写された成形体の表面における金属性の光沢を均一に仕上げるとともに充分な輝度感を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機やスロットマシン等の遊技機には多くのプラスチック部品が使用されている。そうした部品の中でも遊技者の目に触れる部分に配されるものは、多少なりとも装飾性を持たされている。また、装飾を主目的とする部品もある。
【0003】
このような装飾性を有する部品では、デザイン性や品質を高めるために成形体の表面に水圧転写によって装飾を加えるようにした表面加飾品が多く実用化されている。
例えば、特許文献1には、自動車の内装部品に関する技術分野ではあるが、表面加飾品が、樹脂成形体と、発光層と、第1クリアコート層と、印刷層と、第2クリアコート層とを備え、印刷層が第1クリアコート層の表面上に水圧転写される点が開示されている。
【0004】
ここで、水圧転写とは、水面上に特殊フィルムを浮かべ、そのフィルムに印刷された所定の絵柄(木目模様や石目模様、幾何学模様、ホログラムなどの絵柄)を水圧によって成形体の表面に転写する技術である。
【0005】
・・・中略・・・
さらに、装飾効果として金属性の光沢(いわゆるメタリック)を出すために、メタリックカラーやクリアカラーなどの塗料を特殊フィルムに塗装することで印刷層を形成し、その印刷層を水圧転写する手法も知られている。
・・・中略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述のような水圧転写技術においては、メタリックカラーやクリアカラーなどの塗料を特殊フィルムに塗装する際に、その塗装状態が均一になりにくく、このことに起因して、水圧転写後の成形体の表面における輝度感が均一になりにくいという問題があった。
・・・中略・・・
【0009】
また、上述のような水圧転写技術では、水圧転写後の成形体の表面を充分な輝度感に仕上げにくいという問題があった。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、印刷層が水圧転写された成形体の表面における金属性の光沢を均一に仕上げるとともに充分な輝度感を実現する技術を提供することにある。」

イ 「【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)第一実施形態の遊技機部品(プラスチック部品)の断面構造模式図、(b)第二実施形態の遊技機部品(金属部品)の断面構造模式図」

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[第一実施形態]
樹脂製の射出成形品である表面加飾品としての遊技機部品(以下プラスチック部品)1は、パチンコ機やスロットマシンなどの遊技機の装飾に用いられる部品であり、その表面には、アンダーコート層2、ミドルコート層3、オーバーコート層4、三次元デザイン層5、オーバーコート層6の順で層構造が構成されている。
【0020】
アンダーコート層2は、基材となるプラスチック部品1の表面にクリアを塗装することで形成される。なお、クリアとしては、無色のクリアまたは有色のクリアの何れでもよいが、有色のクリアを用いれば、色付けにもなる。また、クリアによってつやの具合(つやあり、つやなし、半つや)を調整可能である。また、クリアの代わりにウレタン系やアクリル系、塩化ビニール系のオーバーコート剤を塗装することでアンダーコート層2を形成してもよい。
【0021】
ミドルコート層3は、プラスチック部品1の表面に形成されたアンダーコート層2の上からアルミニウムなどの金属を蒸着することで形成される。
・・・中略・・・
【0022】
オーバーコート層4は、プラスチック部品1の表面に形成されたアンダーコート層2およびミドルコート層3の上からウレタン系のオーバーコート剤を塗装することで形成される。なお、ウレタン系のオーバーコート剤の代わりに、アクリル系や塩化ビニール系のオーバーコート剤を用いてもよい。特に、ウレタン系のオーバーコート剤を用いてオーバーコート層4を形成する場合に、後述する三次元デザイン層5がその上から転写しやすいことが実験で確認されている。また、オーバーコート剤の代わりにクリアを塗装することでオーバーコート層4を形成してもよい。
【0023】
三次元デザイン層5は、プラスチック部品1の表面に形成されたアンダーコート層2、ミドルコート層3およびオーバーコート層4の上から印刷層を水圧転写することで形成される。なお、水圧転写とは、水面上に特殊フィルムを浮かべ、そのフィルムに印刷された所定の絵柄(木目模様や石目模様、幾何学模様、ホログラムなどの絵柄)を水圧によってプラスチック部品1の表面に転写する公知の技術である。
【0024】
オーバーコート層6は、プラスチック部品1の表面に形成されたアンダーコート層2、ミドルコート層3、オーバーコート層4および三次元デザイン層5の上からクリアを塗装することで形成される。なお、クリアの代わりに上述のオーバーコート剤を塗装することでオーバーコート層6を形成してもよい。
・・・中略・・・
【0026】
このプラスチック部品1は、上記のとおりの表面構造であるので、ミドルコート層3によって金属性の光沢が実現する。このことにより、印刷層が水圧転写されたプラスチック部品1の表面における金属性の光沢を均一に仕上げるとともに充分な輝度感を実現することができる。
【0027】
また、最表層がクリアまたはオーバーコート剤を塗装することで形成されるオーバーコート層6であるから、遊技者がプラスチック部品1の表面に直接触れてもざらつきは感じられず、オーバーコート層6によって三次元デザイン層5の脱落(剥離など)を防止できる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
上記実施形態では、本発明を樹脂製の射出成形品である遊技機部品に適用した例を説明したが、樹脂製の成形体であれば、自動車や携帯電話、パーソナルコンピュータなどの各種製品に用いられる各種部品にも本発明を適用可能である。
【0029】
[第二実施形態]
金属製の成形体である表面加飾品としての遊技機部品(以下金属部品)11は、パチンコ機やスロットマシンなどの遊技機の装飾に用いられる部品であり、その表面には、アンダーコート層12、三次元デザイン層13、オーバーコート層14の順で層構造が構成されている。
【0030】
アンダーコート層12は、基材となる金属部品11の表面にクリアを塗装することで形成される。なお、クリアとしては、無色のクリアまたは有色のクリアの何れでもよいが、有色のクリアを用いれば、色付けにもなる。また、クリアによってつやの具合(つやあり、つやなし、半つや)を調整可能である。また、クリアの代わりにウレタン系やアクリル系、塩化ビニール系のオーバーコート剤を塗装することでアンダーコート層12を形成してもよい。
【0031】
三次元デザイン層13は、金属部品11の表面に形成されたアンダーコート層12の上から印刷層を水圧転写することで形成される。なお、水圧転写については上述したのでここではその詳細な説明は省略する。
【0032】
オーバーコート層14は、金属部品11の表面に形成されたアンダーコート層12および三次元デザイン層13の上からクリアを塗装することで形成される。なお、クリアの代わりに上述のオーバーコート剤を塗装することでオーバーコート層14を形成してもよい。
【0033】
この層構造は次のように形成された。まず金属部品11の表面を脱脂して、ここにクリアを塗装する(アンダーコート層12、第一工程)。代わりにオーバーコート剤を塗装してもよい。アンダーコート層2が乾くのを待ってから、印刷層を水圧転写する。具体的には、水面上に特殊フィルムを浮かべ、そのフィルムに印刷された所定の絵柄を水圧によってプラスチック部品1の表面に転写する(三次元デザイン層13、第二工程)。そして、三次元デザイン層13の乾燥を待ってからクリアを塗装する(オーバーコート層14、第三工程)。代わりにオーバーコート剤を塗装してもよい。
【0034】
この金属部品11は、上記のとおりの表面構造であるので、金属部品11の表面そのものによって金属性の光沢が実現する。このことにより、印刷層が水圧転写された金属部品11の表面における金属性の光沢を均一に仕上げるとともに充分な輝度感を実現することができる。
【0035】
また、最表層がクリアまたはオーバーコート剤を塗装することで形成されるオーバーコート層14であるから、遊技者が金属部品11の表面に直接触れてもざらつきは感じられず、オーバーコート層14によって三次元デザイン層13の脱落(剥離など)を防止できる。」

エ 「【符号の説明】
【0037】
1…プラスチック部品、2…アンダーコート層、3…ミドルコート層、4…オーバーコート層、5…三次元デザイン層、6…オーバーコート層、11…金属部品、12…アンダーコート層、13…三次元デザイン層、14…オーバーコート層」

オ 「【図1】



(2)引用発明3
引用文献3の【0029】?【0035】及び図1(b)の記載からみて、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

「 アンダーコート層12、三次元デザイン層13、オーバーコート層14の順で層構造が構成されている、金属製の成形体である表面加飾品であって、
アンダーコート層12は、基材となる金属部品11の表面にクリアを塗装することで形成され、
三次元デザイン層13は、金属部品11の表面に形成されたアンダーコート層12の上から印刷層を水圧転写することで形成され、
オーバーコート層14は、金属部品11の表面に形成されたアンダーコート層12および三次元デザイン層13の上からクリアを塗装することで形成され、
金属部品11の表面そのものによって金属性の光沢が実現する、
表面加飾品。」

(3)対比
本願発明と引用発明3を対比すると、以下のとおりとなる。

ア 高艶調成形品
引用発明3の「表面加飾品」は、「アンダーコート層12、三次元デザイン層13、オーバーコート層14の順で層構造が構成されている、金属製の成形体であ」り、「金属部品11の表面そのものによって金属性の光沢が実現する」ものである。また、「アンダーコート層12は、基材となる金属部品11の表面にクリアを塗装することで形成され」る。
上記の構成からみて、引用発明3の「表面加飾品」のうち、「金属部品11」及び「アンダーコート層12」からなる部分(以下「下地部分」という。)は、「金属性の光沢」及び「クリア」によって発現された艶を有するものと理解される。
そうしてみると、引用発明の「下地部分」は、本願発明の「高艶調成形品」に相当する。

イ 絵柄層
引用発明3の「表面加飾品」は、「アンダーコート層12、三次元デザイン層13、オーバーコート層14の順で層構造が構成されている、金属製の成形体であ」り、「金属部品11の表面そのものによって金属性の光沢が実現する」ものである。
ここで、引用発明3の「三次元デザイン層13」は、三次元「デザイン」層であるから、絵柄が設けられた層といえる(【0023】の水圧転写に関する記載からも確認される事項である。)。また、上記の構成からみて、引用発明3の「三次元デザイン層13」は、「金属部品11の表面」の一部に設けられたもの(「金属部品11の表面そのもの」も見えるもの)と考えられる(当合議体注:仮にそうでないとしても、水圧転写法の絵柄として周知である。)。
そうしてみると、引用発明の「三次元デザイン層13」は、本願発明の「絵柄層」に相当する。また、引用発明の「三次元デザイン層13」は、本願発明の「絵柄層」における、「前記高艶調成形品表面の一部に設けられた」という要件を満たす。

ウ 積層体
引用発明3の「アンダーコート層12は、基材となる金属部品11の表面にクリアを塗装することで形成され」る。
上記の構成からみて、引用発明3の「金属部品11」は、「基材」であり、また、「かさなりをなすものの一つ」(広辞苑6版)、すなわち「層」である。加えて、「アンダーコート層12」は、その「クリア」という用語からみて、高い艶を発現する樹脂の層であることは技術的にみて明らかである。
そうしてみると、引用発明3の「金属部品11」及び「アンダーコート層12」は、それぞれ本願発明の「基材層」及び「高艶樹脂層」に相当する。また、引用発明の「下地部分」は、本願発明の「前記高艶調成形品」における、「基材層と、高艶樹脂層との積層体であり」という要件を満たす。
さらに、上記ア及びイの対比結果を踏まえると、引用発明3の「アンダーコート層12」は、本願発明の「高艶樹脂層」における、「前記基材層の前記絵柄層側の表面に積層されており」という要件を満たす。

エ トップコート層
引用発明の「表面加飾品」は、「アンダーコート層12、三次元デザイン層13、オーバーコート層14の順で層構造が構成されている、金属製の成形体である」。
上記の層構成からみて、引用発明3の「オーバーコート層14」は、最も上(トップ)に「コート」された「層」といえる。
そうしてみると、引用発明3の「オーバーコート層14」は、本願発明の「トップコート層」に相当する。

オ 加飾成形品
以上ア?エの対比結果からみて、引用発明3の「表面加飾品」は、本願発明の「加飾成形品」に相当する。また、引用発明の「表面加飾品」は、本願発明の「加飾成形品」における、「高艶調成形品と」、「絵柄層とを有し」及び「前記絵柄層上にトップコート層をさらに有し」という要件を満たす。

(4)一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明3は、次の構成で一致する。

「 高艶調成形品と、前記高艶調成形品表面の一部に設けられた絵柄層とを有し、
前記高艶調成形品は、基材層と、高艶樹脂層との積層体であり、
前記高艶樹脂層が前記基材層の前記絵柄層側の表面に積層されており、
前記絵柄層上にトップコート層をさらに有する、加飾成形品。」

イ 相違点
本願発明と引用発明3は、以下の点で相違する。
(相違点1)
「トップコート層」が、本願発明は、「艶消し調である」のに対し、引用発明3は、そのような特定がなされていない点。

(5)判断
相違点についての判断は以下のとおりである。
ア 相違点1について
引用発明3の「オーバーコート層14」は、「クリアを塗装することで形成され」るところ、「クリア」に関して、引用文献3の【0030】には、「クリアによってつやの具合(つやあり、つやなし、半つや)を調整可能である」と記載されている。
ここで、上記【0030】の記載は、「アンダーコート層12」の「クリア」に関する記載ではある。しかしながら、「つやの具合」は、「表面加飾品」の外観の問題であるから、これを「オーバーコート層14」に当てはめて考えて良いことは明らかである。
そうしてみると、引用発明3の「オーバーコート層14」の「クリア」を「つやなし」や「半つや」とし、上記相違点1に係る本願発明の構成を具備したものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(6)発明の効果について
本願発明の効果に関して、本件出願の明細書の【0010】には、「本発明によれば、高い立体感と、観察する角度によって意匠性が変化するような独特の意匠を有しており、さらには、転写加工性の低い意匠層を設ける必要が無いため、生産コストを低減することもできる加飾成形品を提供することができる。」と記載されている。
しかしながら、このような効果は、引用発明3から予測できる範囲内のものである。

(7)審判請求人の主張について
審判請求人は、「引用発明3の第二オーバーコート層につきましても、艶消し調にすることは記載されておりません(引用文献3の段落[0022],[0024])し、そのようにする動機付けは当業者にはありません。」と主張する(令和2年10月1日の意見書の「理由1(3)」)。
しかしながら、上記(5)イで述べたとおりであり、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

(8)小括
本願発明は、引用文献3に記載された発明に基づいて、本件出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用文献2を主引用例とした場合
(1) 引用発明2
引用文献2の図1及びその説明(【0020】等)には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「基材としての樹脂成形体2と、樹脂成形体2の表面上に形成される発光層3と、発光層3の表面上に形成される第1クリアコート層4と、第1クリアコート層4の表面上の一部に形成される印刷層5と、印刷層5を覆うように第1クリアコート層4の表面上に形成される第2クリアコート層6とを備える、表面加飾品1」

(2)相違点
本願発明と引用発明2を対比すると、以下の相違点がみいだされる。
ア 相違点1
「高艶調成形品」が、本願発明は、「基材層と、高艶樹脂層との積層体」であるのに対し、引用発明2は、「基材としての樹脂成形体2と、樹脂成形体2の表面上に形成される発光層3と、発光層3の表面上に形成される第1クリアコート層4」である点。

イ 相違点2
本願発明は、「前記高艶樹脂層が前記基材層の前記絵柄層側の表面に積層されており、」との構成を有するのに対し、引用発明2は、「第1クリアコート層4」が「発光層3の表面上に形成され」ている点。

ウ 相違点3
「トップコート層」が、本願発明は「艶消し調である」のに対し、引用発明2は、そのような特定がない点。

(3)判断
ア 相違点1について
本願発明の「高艶調成形品」は、「基材層と、高艶樹脂層との積層体」であれば、「積層体」に他の層が含まれることを排除しないと、一応、理解することができる。
したがって、相違点1は相違点ではない。

イ 相違点2について
引用発明2は「自動車におけるドアのアームレストを構成する内装部品」(【0019】)であるところ、「発光層3」の材料は安価とはいえないものであるから、「発光層3」は、夜間、アームレストの位置が判る程度に、部分的に設けるのが合理的である。そして、引用発明2の「表面加飾品」において、「発光層3」を設けなかった領域の層構造は、相違点2に係る本願発明の構成のものになる。
したがって、引用発明2の「表面加飾品」を、相違点2に係る本願発明の構成を具備したものとすることは、当業者における創意工夫の範囲内の事項である。

イ 相違点3について
上記「1(5)ア 相違点1について」において述べたのと同様である。

ウ 審判請求人の主張について
請求人は、「これに対して、引用発明2の第2クリアコート層6は透明な層(段落[0024])であるため、艶消し調にする動機付けは当業者にはありません。」と主張している。(令和2年10月1日の意見書の「理由1(2)」)。
しかしながら、上記イで述べたとおりであり、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

(5)小括
本願発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、本件出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された、引用文献3に記載された発明、あるいは引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-10-30 
結審通知日 2020-11-10 
審決日 2020-11-25 
出願番号 特願2015-70356(P2015-70356)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (B44C)
P 1 8・ 113- WZ (B44C)
P 1 8・ 121- WZ (B44C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 亮  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 福村 拓
関根 洋之
発明の名称 加飾成形品及びその製造方法  
代理人 水谷 馨也  
代理人 田中 順也  

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