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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D
管理番号 1370703
審判番号 不服2019-4276  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-02 
確定日 2021-01-25 
事件の表示 特願2017-504373「洗濯洗剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月11日国際公開、WO2016/022785、平成29年 8月31日国内公表、特表2017-524780〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年8月6日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年8月7日(EP)欧州特許庁、2015年7月9日(EP)欧州特許庁〕を国際出願日とする出願であって、
平成30年2月28日付けの拒絶理由通知に対して、平成30年6月6日付けで意見書と手続補正書の提出がなされ、
平成30年11月29日付けの拒絶査定に対して、平成31年4月2日付けで審判請求がなされ、
令和元年12月12日付けの審判合議体による拒絶理由に対して、令和2年4月27日付けで意見書と手続補正書の提出がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明は、令和2年4月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本1発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
液体組成物を含む水溶性洗濯単位用量物品であって、前記液体組成物は、
-アニオン性界面活性剤と、
-非イオン性界面活性剤と、
-水と、を含み、
前記アニオン性界面活性剤は、線状アルキルベンゼンスルホネートを含み、
前記非イオン性界面活性剤は、式R(EO)_(n)で示す脂肪アルコールエトキシレート(ただし、Rは4?30個の炭素原子のアルキル鎖を示し、(EO)はエチレンオキシドモノマーの1単位を示し、nは0.5?20の平均値を有する)を含み、
前記アニオン性界面活性剤の総量と前記非イオン性界面活性剤の重量比が5:1?20:1であり、
前記液体組成物は、20?60重量%の前記アニオン性界面活性剤と、0.5?7.5重量%の前記非イオン性界面活性剤とを含み、
前記液体組成物は、0.1重量%?5重量%の香料と0.1重量%?5重量%の封入香料とを含み、
前記界面活性剤の総量と水との比が3:1?20:1であることを特徴とする、単位用量物品。」

第3 令和元年12月12日付けの拒絶理由通知の概要
令和元年12月12日付けの拒絶理由通知(以下「先の拒絶理由通知」という。)には、理由1?3として、次の理由が示されている。

理由1:この出願の請求項1?13に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由2:この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由3:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

そして、その「記」には、記載不備として、次の1.(3)ウ.?エ.の点が指摘され、刊行物1?5として、次の2.(1)の刊行物が提示されている。

1.(3)サポート要件
ウ.重量比について
エ.材料の種類と量の範囲

2.(1)引用刊行物
刊行物1:特表2013-525564号公報(原査定の文献1)
刊行物2:国際公開第2007/107215号
刊行物3:米国特許出願公開第2008/0261850号明細書
刊行物4:特表2013-521401号公報(原査定の文献2)
刊行物5:特表2013-534981号公報(原査定の文献4)

第4 当審の判断
1.本願明細書の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
摘示a:背景技術
「【0002】洗濯単位容量物品が消費者に普及している。当該物品は通常、少なくとも1つの内部の区画を提供するよう成形された1つ以上の水溶性フィルムを含む。洗濯洗剤組成物は、当該内部の区画に含まれる。水に加えられると、水溶性フィルムは溶解し、組成物が洗浄溶液へと放出される。
【0003】芳香剤は、洗濯洗剤組成物に有用であると知られている。通常、当該芳香剤は、香料又は封入香料の形態をとる。芳香剤の問題点として、その成分が布地に付着せず、洗浄溶液に洗い流されてしまい、大部分が失われてしまう。したがって、望むように布地に定着させるには、洗浄溶液に高濃度に芳香剤を添加しなければならないのである。
【0004】水溶性単位容量物品の場合、当該物品内に調整できる材料量が制限されている。これは、単位容量物品の物理的サイズが制限されていることによる。したがって、単位容量物品内の芳香材料の濃度に関わらず、洗濯された布地に所望の芳香効果を得るのは通常困難である。単位容量物品内の芳香材料の濃度を上げると、その他材料の含有量を犠牲にすることになり、布地の洗浄効果に悪影響を及ぼすことが多い。」

摘示b:発明が解決しようとする課題
「【0005】良好な洗浄効果を保ったまま、水溶性単位容量物品で選択された布地のおける芳香/香り効果を向上することが、本分野で求められている。
【0006】驚くべきことに、本発明者らは芳香剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の洗剤組成物内での比率を丁寧に調整することで、芳香剤を洗い工程中により布地に定着させられることを発見した。」

摘示c:実施例
「【0133】(実施例1)以下に液体洗剤組成物と異なる界面活性剤組成物について説明する。例B、C、E、F、及びGは本発明の例であり、例A及びDは本発明の範囲にない例である。
【0134】【表1】

^(*)含有される場合、複数区画パウチ設計の使用により、酵素から分離されている。
^(**)プロパンジオール、グリセロール、エタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0135】調合物AからG 28gをPVAフィルム(単一の区画、又はカチオン変性ヒドロキシエチルセルロースが含有される場合は複数の区画)に封入し、これをテリー及びポリエステルトレーサー及び3.0kgの混成(綿、ポリコットン、ポリエステル)バラスト荷重と共に洗浄した(40℃、2.5mmol/L水硬度を用いたMiele W1714ショートコットンサイクル)。乾燥工程の後、テリー繊維固着物が60℃でエタノールから抽出された(実験室シェーカーで2時間)。抽出物は、大容量注入GC-MS分析を用いて、香料原料の定着を分析された。トナリドを内部標準として、内部標準較正方法によって定量した。香料の定着結果は、布地1g当たりの定着されたPRM(μg)で以下に示す。
【0136】【表2】

【0137】同時に洗浄された濡れたテリートレーサー及び乾燥した(物干しかけ)テリートレーサーに対して、ヘッドスペース分析を行った。5セットを高速ヘッドスペースGC/MSによって分析した。テリー面トレーサーの4cm×4cm角を25mLヘッドスペースびんに移入した。布地サンプルを、75℃で10分間、平衡化させた。上記ヘッドスペースにおいて、布地をSPME(50/30μm DVB/Carboxen/PDMS)法により5分間サンプリングした。続いて、SPMEファイバーを、GC内でオンライン加熱脱着した。検体を、高速GC/MSのフルスキャンモードで分析した。香料原料の特定の質量のイオン抽出により、上記試験片上の総ヘッドスペース反応(エリア数で示す)を求めた。
【0138】【表3】

【0139】【表4】



2.理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件の観点
一般に『特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人(…)が証明責任を負うと解するのが相当である。…当然のことながら,その数式の示す範囲が単なる憶測ではなく,実験結果に裏付けられたものであることを明らかにしなければならないという趣旨を含むものである。』とされているところ〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕、このような観点に基づいて、本願特許請求の範囲の記載がサポート要件に違反するものであるか否かを検討する。

(2)解決しようとする課題について
本1発明の解決しようとする課題は、本願明細書の段落0005(摘示b)の記載の記載を含む発明の詳細な説明の全体の記載からみて『良好な洗浄効果を保ったまま、水溶性単位用量物品で洗濯された布地における芳香/香り効果を向上させた水溶性洗濯単位用量物品の提供』にあるものと認められる。
そして、同段落0006には「芳香剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の洗剤組成物内での比率を丁寧に調整することで、芳香剤を洗い工程中により布地に定着させられる」との記載がなされている。

(3)上記第3の「1.(3)ウ.重量比について」の点について
ア.相対的な組成比について
本願請求項1の「アニオン性界面活性剤の総量と非イオン性界面活性剤の重量比が5:1?20:1であり、…前記界面活性剤の総量と水との比が3:1?20:1である」との記載について、
本願明細書の段落0134(摘示c)には、本発明の例として「例B、C、E、F、及びG」と、本発明の範囲にない例として「例A及びD」が記載されているところ、これらの重量比は有効桁数を四捨五入により揃えた値で、
アニオン性界面活性剤の総量と非イオン性界面活性剤の重量比が、例B、C、E、F、及びGで12:1、例A及びDで2:1、
界面活性剤の総量と水との比(仮定)が、例B、C、E、F、及びG、並びに例A及びDで5:1と計算され、
同段落0135以下には、本発明の例(例B、C、E、F、及びG)が、本発明の範囲にない例(例A及びD)に比して「香料の定着」が多い結果になったことが示されている。
しかしながら、当該試験結果は「香料の定着」の観点のみの試験結果であって、本発明の例(例B?C及びE?G)が、例A又はDと同等又はそれ以上の「洗浄性」を維持しているか否かについて何ら裏付けるものではないので、本願請求項1に記載された発明の広範な範囲のもの全てが、本願発明の上記『良好な洗浄効果を保ったまま、水溶性単位用量物品で洗濯された布地における芳香/香り効果を向上させた水溶性洗濯単位用量物品の提供』という課題を解決できると直ちに認識することができない。
この点に関して、令和2年4月27日付けの意見書の第4頁において、審判請求人は『上記ご指摘の洗浄効果の点につきましては、当業者であれば、これら実施例の組成においては、通常の洗濯洗剤成分である界面活性剤等が含有されていることから、所定の洗浄効果が得られるであろうことは自明であるものと思料いたします。』と主張する。
しかしながら、本願明細書の段落0004(摘示a)の「洗濯された布地に所望の芳香効果を得るのは通常困難である。単位容量物品内の芳香材料の濃度を上げると、その他材料の含有量を犠牲にすることになり、布地の洗浄効果に悪影響を及ぼすことが多い。」との記載にあるように、洗濯された布地に「所望の芳香効果」を得ようとすると「布地の洗浄効果」に悪影響を及ぼすとされているので、本願明細書の例A?Gの試験結果において、例B?C及びE?Gのものの「芳香効果」が例A及びDのものよりも優れているからといって、例B?C及びE?Gのものの「洗浄効果」が例A及びDのものと同等又はそれ以上にある(良好な洗浄効果を保ったままにある)と直ちに解することはできない。
したがって、上記意見書の主張を検討しても、本願請求項1に記載された発明の広範な範囲のもの全てが、上記『良好な洗浄効果を保ったまま、水溶性単位用量物品で洗濯された布地における芳香/香り効果を向上させた水溶性洗濯単位用量物品の提供』という課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとは認められない。

イ.絶対的な組成について
補正により導入された本願請求項1の「前記液体組成物は、20?60重量%の前記アニオン性界面活性剤と、0.5?7.5重量%の前記非イオン性界面活性剤とを含み」との記載について、本願明細書(摘示c)の例A?Gのものは、四捨五入した値で、
アニオン性界面活性剤の量が、例B?C及びE?Gのものが45重量%、例A及びDのものが34.7重量%、
非イオン性界面活性剤の量が、例B?C及びE?Gのものが3.9重量%、例A及びDのものが13.9重量%となっている。
してみると、本願明細書の段落0006(摘示b)の「芳香剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の洗剤組成物内での比率を丁寧に調整することで、芳香剤を洗い工程中により布地に定着させられる」との記載をも参酌するに、
アニオン性界面活性剤の量が「20重量%」で、非イオン性界面活性剤の量が「1.0重量%」のものは、界面活性剤の絶対量が少ないので「良好な洗浄効果を保ったまま」といえる程度の洗浄性を確保できると直ちに認識することができず、
アニオン性界面活性剤の量が「60重量%」で、非イオン性界面活性剤の量が「7.5重量%」のものは、界面活性剤の絶対量が多いので「洗濯された布地における芳香/香り効果を向上」できるといえる芳香性を確保できると直ちに認識することができない。
したがって、上記補正により導入された事項を検討しても、本願請求項1に記載された発明の広範な範囲のもの全てが、上記『良好な洗浄効果を保ったまま、水溶性単位用量物品で洗濯された布地における芳香/香り効果を向上させた水溶性洗濯単位用量物品の提供』という課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとは認められない。

(4)サポート要件のまとめ
以上総括するに、本願明細書の発明の詳細な説明の「試験結果」と「作用機序」の記載によっては、本願出願時の「技術常識」及び令和2年4月27日付けの意見書の主張を考慮しても、本願請求項1の記載が明細書のサポート要件を満たす範囲にあると認めることはできない。
したがって、本願請求項1に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められないので、本願請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

3.理由1(進歩性)について
(1)刊行物1?4の記載事項
ア.上記刊行物1には、次の記載がある。
摘記1a:請求項2及び24
「【請求項2】前記有益剤が、香料、増白剤、虫除け剤、シリコーン、ワックス、香味料、ビタミン、繊維製品用柔軟剤、スキンケア剤、酵素、プロバイオティクス、染料ポリマー共役体、染料粘土共役体、香料送達系、1つの態様では冷却剤である感覚剤、1つの態様ではフェロモンである誘引剤、抗菌剤、染料、顔料、漂白剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の組成物。…
【請求項24】前記組成物が、流体布地強化剤、固体布地強化剤、流体シャンプー、固体シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、固体制汗剤、流体制汗剤、固体脱臭剤、流体脱臭剤、流体保湿剤、固体保湿剤、流体ローション、流体洗顔クレンザー、固体洗顔クレンザー、流体化粧品、固体化粧品、流体毛髪着色剤組成物、固体毛髪着色剤組成物、流体洗剤、固体洗剤、流体硬表面洗浄剤、固体硬表面洗浄剤、又は洗剤及び前記洗剤をカプセル化する水溶性被膜を含む単位用量洗剤である、請求項1に記載の組成物。」

摘記1b:段落0001?0002及び0021
「【0001】本発明は、カプセル化有益剤、かかるカプセル化有益剤を含む組成物、並びにかかるカプセル化有益剤を含む組成物の製造プロセス及び使用プロセスに関する。
【0002】香料、シリコーン、ワックス、香味料、ビタミン、及び柔軟剤等の有益剤は高価であり、パーソナルケア組成物、洗浄組成物、及び布地ケア組成物において高濃度で使用される場合、概して効果が弱い。結果として、かかる有益剤の効率を最大限にすることが望ましい。この目標を達成する1つの方法は、配合され、配合された製品組成物中で熟成する間のかかる有益剤の保持及びかかる有益剤の送達効率を改善することである。残念ながら、かかる有益剤が有益剤の物理的又は化学的特性のために喪失され得るか、あるいはかかる有益剤が他の組成成分又は処理される部位と不適合であり得ることから、有益剤の保持力及び送達効率を改善することは困難である。…
【0021】百分率及び比率は全て、特に指示しない限り、重量で計算される。百分率及び比率は全て、特に指示しない限り、組成物全体を基準にして計算される。」

摘記1c:段落0067
「【0067】本発明の態様は、洗濯洗剤組成物(例えば、TIDE(商標))、硬表面洗浄剤(例えば、MR CLEAN(商標))、自動食器洗い用液体(例えば、CASCADE(商標))、及び床洗浄剤(例えば、SWIFFER(商標))における本発明の粒子の使用を含む。」

摘記1d:段落0091及び0099
「【0091】…本発明の組成物は、カチオン性ポリマーを含有してもよい。本組成物中のカチオン性ポリマーの濃度は、典型的には、約0.05%?約3%、別の実施形態では約0.075%?約2.0%、なおも別の実施形態では約0.1%?約1.0%の範囲である。…このような好適なカチオン性ポリマーの平均分子量は一般に、約10,000?10,000,000であり、一実施形態では、約50,000?約5,000,000であり、別の実施形態では、約100,000?約3,000,000である。…
【0099】有用なカチオン性セルロースポリマーは、トリメチルアンモニウム置換エポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの塩を含み、当業界(CTFA)においてポリクオタニウム10と称され、Amerchol Corp.(Edison,N.J.,USA)からポリマーのUcare(商標)Polymer LR、Ucare(商標)PolymerJR、及びUcare(商標)PolymerKGシリーズで入手可能である。」

摘記1e:段落0191
「【0191】界面活性剤-本発明による組成物は、界面活性剤又は界面活性剤系を含むことができ、界面活性剤は、非イオン性及び/若しくはアニオン性及び/若しくはカチオン性界面活性剤並びに/又は両性及び/若しくは双極性及び/若しくは半極性非イオン性界面活性剤から選択できる。界面活性剤は、典型的には洗浄組成物の約0.1重量%から、約1重量%から、又は更には約5重量%から、洗浄組成物の約99.9重量%まで、約80重量%まで、約35重量%まで、又は更には約30重量%までの濃度で存在する。」

摘記1f:段落0320及び0325?0326
「【0320】実施例31.液体洗濯配合物(HDL)
前述の実施例の精製された香料マイクロカプセルを含有する製品配合物の非限定的な例は、以下の表に要約される。…
【0325】【表35】

【0326】【表36】…
*25?35%の活性スラリー(水溶液)として加えられるマイクロカプセル。コア/壁比の範囲は80/20?最大90/10であることができ、平均粒径は5μm?50μmの範囲であり、前述の実施例のいずれかにより精製することができる。マイクロカプセルの好適な組み合わせは、実施例1?21に提供される。
**ポリビニルアルコールの単回投与量/サッシェ中の低水分液体洗剤」

摘記1g:段落0329?0330
「【0329】実施例33:液体単位用量
以下は、液体組成物がPVAフィルム内に封入される単位容量の実施例である。本実施例で使用される好ましいフィルムは、厚さ76μmのMonosol M8630である。
【0330】【表38】

^(1) -NHあたり20個のエトキシレート基を有するポリエチレンイミン(MW=600)。
^(2) RA=アルカリ保存性(NaOHのg/投与量)
^(*)25?35%の活性スラリー(水溶液)として加えられるマイクロカプセル。コア/壁比の範囲は80/20?最大90/10であることができ、平均粒径は5μm?50μmの範囲であり、前述の実施例のいずれかにより精製することができる。マイクロカプセルの好適な組み合わせは、実施例1?21に提供される。
^(**)ポリビニルアルコールの単回投与量/サッシェ中の低水分液体洗剤」

イ.上記刊行物2には、和訳にして、次の記載がある。
摘記2a:請求項1、6及び17
「1.以下の工程を含む、20重量%よりも少ない水を含有する非水性布地処理組成物を調製するための方法。
a)カチオン性セルロースポリマー、水及び任意の溶媒を含むプレミックスの供給;
b)少なくとも1種のアニオン性界面活性剤のプリミックスへの混合;及び
c)これに続く非イオン性界面活性剤の添加;
ここで工程a)からc)は順々に行われる。…
6.カチオン性セルロースポリマーが、850,000ダルトン未満の分子量を有する、前記請求項の方法。…
17.請求項2?15の何れか一項に記載された方法で得られる液体単位用量布地処理製品。」

摘記2b:第10頁第31行?第11頁6行、第14頁第26?27行、第19頁第6行?第20頁第3行及び第25頁第26?28行
「適切な溶媒には、アルコール、エーテル、ポリエーテル、ポリオール、アルキルアミン、アルカノールアミン及び脂肪族アミン、アルキル(又は脂肪族)アミド、並びにそのモノ-及びジ-N-アルキル置換の誘導体、アルキル(又は脂肪族)カルボン酸の低級アルキルエステル、ケトン、アルデヒド、グリセリド、並びにアルコキシ化アルコールのような非イオン界面活性剤又はその混合物が含まれる。…
好ましいアニオン性界面活性剤は、線状アルキルベンゼンスルホネート(LAS)材料である。…
本発明の液体組成物はまた、アニオン性界面活性剤成分として脂肪酸を含むことができる。本発明での使用に好適な脂肪酸の例は、パルミトレイン酸、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、菜種油又はそれらの混合物に由来する純粋な又は硬化脂肪酸が挙げられる。飽和及び不飽和脂肪酸の混合物もここで使用することができる。
なお、脂肪酸は主に石鹸の形態で液体洗剤組成物中に存在するであろうことが認識されるであろう。適当なカチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、例えばテトラメチルアンモニウムからテトラデシルアンモニウムまでなど、のカチオンである。
脂肪酸の量は、本発明の最終液体組成物に望まれる特定の特性に依存して変化するであろう。存在する場合、脂肪酸混合物のレベルは、洗剤組成物の重量当たり0.1?30%、好ましくは0.5%?25%、より好ましくは10?20%が適当である。
好ましくはアニオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤混合物の全重量%は、全組成物の2?70重量%である。…
水溶性のポリビニルアルコールフィルム形成樹脂が、単位用量布地処理製品の包装材料として使用されるのが好ましい。」

摘記2c:第36頁第11行?第37頁第4行
「実施例2-非イオン性界面活性剤の異なるレベルでの本発明の方法を用いたカチオン性セルロース柔軟ポリマーを用いた非水性洗剤組成の調製
┌────────────┬───┬───┬───┬──────┐
│組成 │ 2A │ 2B │ 2C │ 2D │
├────────────┼───┼───┼───┼──────┤
│ポリマープレミックス │ │ │
│MPG │ … │19.70%│
│LR-400 │ … │ 0.5% │
│水 │ … │ 2.9% │
│グリセリン 1,26 │ … │ 2.9% │
│界面活性剤 │ │ │
│モノエタノールアミン │ … │ 11.3% │
│LAS酸型1L(受領品)│ … │ 53.8% │
│Prifac 5908 │ … │ - │
│LAS酸型1L(受領品)│ … │ - │
│Neodol 25-7E│ … │ 2.8% │
│微少量成分 │ │ │
│Dequest 2046(受領品) │ … │ 3.2% │
│香料を含む他の微小量成分│ … │ 2.9% │
│合計 │ … │ 100% │
│… │ … │ … │
└────────────┴───┴───┴───┴──────┘
表4-組成2A?Dの全界面活性剤の重量百分率での非イオン性界面活性剤のレベルの安定性及び粘度における効果の詳細」

ウ.上記刊行物3には、和訳にして、次の記載がある。
摘記3a:段落0001及び0111
「[0001]本発明は、洗濯用製品に関するものであり、特に単位用量布地処理システムに関するものである。…
[0111]組成物は、好ましくは、低レベルの水を含有する。このように、水は、0.1?10重量%、より好ましくは2?10重量%、最も好ましくは3?7重量%のレベルで存在するのが好ましく、組成物の全重量に基づく。」

エ.上記刊行物4には、次の記載がある。
摘記4a:段落0124?0125
「【0124】単位用量洗剤:…流体洗剤組成物は、水溶性パウチ材料内に封入される。…
【0125】製造プロセス:…例えば、一実施形態において、構造化剤プレミックスは、ジアミドゲル化剤を可溶化するための溶媒、好ましくは有機溶媒を含む。このことは、高濃度である及び/又はわずかな水(20重量%未満、好ましくは10重量%未満の水)を含む流体洗剤組成物を構造化する際に、実質的な利点となる。例としては、水溶性のパウチ材料の中にパッケージ化された流体洗剤組成物などである。」

(2)刊行物1に記載された発明
ア.刊1発明
摘記1aの「前記有益剤が、香料…からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の組成物。…前記組成物が…洗剤及び前記洗剤をカプセル化する水溶性被膜を含む単位用量洗剤である、請求項1に記載の組成物。」との記載、
摘記1bの「本発明は…カプセル化有益剤を含む組成物…に関する。…百分率及び比率は全て、特に指示しない限り、重量で計算される。百分率及び比率は全て、特に指示しない限り、組成物全体を基準にして計算される。」との記載、
摘記1cの「本発明の態様は、洗濯洗剤組成物…における本発明の粒子の使用を含む。」との記載、
摘記1fの「実施例31.液体洗濯配合物(HDL)…実施例の精製された香料マイクロカプセルを含有する製品配合物の非限定的な例は、以下の表に要約される。…【表35】…液体洗剤の例…K…C_(12)?C_(14)アルキルポリエトキシレート(7)…2.00…直鎖アルキルベンゼンスルホン酸…15.0…C_(12)?C_(18)脂肪酸…11.4…ポリクオタニウム10-カチオン性ヒドロキシルエチルセルロース…0.1…香料マイクロカプセル…0.75…香料…1.0…水100まで」との記載からみて、刊行物1には、実施例31のKの「液体洗濯配合物(HDL)」として、
『C_(12)?C_(14)アルキルポリエトキシレート(7)2.00重量%、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸15.0重量%、C_(12)?C_(18)脂肪酸11.4重量%、ポリクオタニウム10-カチオン性ヒドロキシルエチルセルロース0.1重量%、香料マイクロカプセル0.75重量%、香料1.0重量%、及び水を含む液体洗濯配合物である製品配合物。』についての発明(以下「刊1発明」という。)が記載されているといえる。

イ.実E発明
摘記1a、1b、及び1cの記載、並びに摘記1fの「実施例33:液体単位用量」の【表38】の「E」のものは、液体組成物を、区画#45の30gと、区画#46の5gとの2区画に分けて封入しているものであるところ、Eの液体組成物全体に含まれる成分の割合は、
アルキルベンゼンスルホン酸が、(10.0×30.0+20.0×5.0)÷(30.0+5.0)=11.4%、
アルキルサルフェートが、(2.0×30.0+0×5.0)÷(30.0+5.0)=1.7%、
C_(12?14)アルキル7-エトキシレートが、(0×30.0+17.0×5.0)÷(30.0+5.0)=2.4%、
C_(12?18)脂肪酸が、(0×30.0+18.0×5.0)÷(30.0+5.0)=2.6%、
水が、(5×30.0+11×5.0)÷(30.0+5.0)=5.9%、
香料マイクロカプセルが、(1.3×30.0+1.3×5.0)÷(30.0+5.0)=1.3%、
香料が、(0.6×30.0+0×5.0)÷(30.0+5.0)=0.5%と計算されるので、刊行物1には、実施例33のEの「液体単位用量」として、
『C_(12)?C_(14)アルキル7-エトキシレート2.4重量%、アルキルベンゼンスルホン酸11.4重量%、アルキルサルフェート1.7重量%、C_(12)?C_(18)脂肪酸2.6重量%、香料マイクロカプセル1.3重量%、香料0.5重量%、及び水5.9重量%を含む液体洗濯配合物である製品配合物。』についての発明(以下「実E発明」という。)が記載されているといえる。
(なお、当該「実E発明」は、本1発明の記載に即して、
『液体組成物を含む水溶性洗濯単位用量物品であって、前記液体組成物は、
-アニオン性界面活性剤(15.7重量%)と、
-非イオン性界面活性剤(2.4重量%)と、
-水(5.9重量%)と、を含み、
前記アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホネートを含み、
前記非イオン性界面活性剤は、式R(EO)_(n)で示す脂肪アルコールエトキシレート(ただし、Rは12?14個の炭素原子のアルキル鎖を示し、(EO)はエチレンオキシドモノマーの1単位を示し、nは7の平均値を有する)を含み、
前記アニオン性界面活性剤の総量と前記非イオン性界面活性剤の重量比が6.5:1であり、
前記液体組成物は、15.7重量%の前記アニオン性界面活性剤と、2.4重量%の前記非イオン性界面活性剤とを含み、
前記液体組成物は、0.5重量%の香料と1.3重量%の封入香料とを含み、
前記界面活性剤の総量と水との比が3.07:1であることを特徴とする、単位用量物品。』に相当する。)

(3)対比
本1発明と刊1発明とを対比する。
刊1発明の「C_(12)?C_(14)アルキルポリエトキシレート(7)」は、本1発明の「非イオン性界面活性剤」に相当するとともに、本1発明の「式R(EO)_(n)」において、Rが12?14の炭素原子のアルキル差を示し、nが7の平均値を示すものに該当することから、本1発明の「前記非イオン性界面活性剤は、式R(EO)_(n)で示す脂肪アルコールエトキシレート(ただし、Rは4?30個の炭素原子のアルキル鎖を示し、(EO)はエチレンオキシドモノマーの1単位を示し、nは0.5?20の平均値を有する)」に相当する。
刊1発明の「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸」と「C_(12)?C_(18)脂肪酸」は、本願請求項3の「前記アニオン性界面活性剤は、脂肪酸を含む」との記載を参酌するに、本1発明の「アニオン性界面活性剤」に相当するとともに、本1発明の「前記アニオン性界面活性剤は、線状アルキルベンゼンスルホネートを含み」に相当する。
刊1発明の「水を含む」は、本1発明の「水と、を含み」に相当する。
刊1発明の「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸15.0重量%」と「C_(12)?C_(18)脂肪酸11.4重量%」の合計量は、15.0+11.4=26.4重量%となることから、本1発明の「20?60重量%の前記アニオン性界面活性剤」に相当し、
刊1発明の「C_(12)?C_(14)アルキルポリエトキシレート(7)2.00重量%」は、本1発明の「0.5?7.5重量%の前記非イオン性界面活性剤」に相当し、
刊1発明の「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸15.0重量%」と「C_(12)?C_(18)脂肪酸11.4重量%」の合計量の「C_(12)?C_(14)アルキルポリエトキシレート(7)2.00重量%」に対する比は、(15.0+11.4):2.00=13.2:1となることから、本1発明の「前記アニオン性界面活性剤の総量と前記非イオン性界面活性剤の重量比が5:1?20:1であり」に相当する。
刊1発明の「香料マイクロカプセル0.75重量%、香料1.0重量%」は、本1発明の「前記液体組成物は、0.1重量%?5重量%の香料と0.1重量%?5重量%の封入香料とを含み」に相当する。
刊1発明の「液体洗濯配合物である製品配合物」と、本1発明の「液体組成物を含む水溶性洗濯単位用量物品」は、両者とも「液体組成物を含む洗濯用物品」である点において共通する。

してみると、本1発明と刊1発明は『液体組成物を含む洗濯用物品であって、前記組成物は、-アニオン性界面活性剤と、-非イオン性界面活性剤と、-水と、を含み、前記アニオン性界面活性剤は、線状アルキルベンゼンスルホネートを含み、前記非イオン性界面活性剤は、式R(EO)_(n)で示す脂肪アルコールエトキシレート(ただし、Rは4?30個の炭素原子のアルキル鎖を示し、(EO)はエチレンオキシドモノマーの1単位を示し、nは0.5?20の平均値を有する)を含み、前記アニオン性界面活性剤の総量と前記非イオン性界面活性剤の重量比が5:1?20:1であり、前記液体組成物は、20?60重量%の前記アニオン性界面活性剤と、0.5?7.5重量%の前記非イオン性界面活性剤とを含み、前記液体組成物は、0.1重量%?5重量%の香料と0.1重量%?5重量%の封入香料とを含む、洗濯用物品。』という点において一致し、次の(α)及び(β)の点において相違する。

(α)洗濯用物品が、本1発明においては「水溶性洗濯単位用量物品」であるのに対して、刊1発明は「水溶性」の「単位用量物品」ではない点。

(β)界面活性剤の総量と水との比が、本1発明においては「3:1?20:1」であるのに対して、刊1発明においては、このような比にない点。

(4)判断
ア.上記(α)の相違点について
刊行物1の請求項24(摘記1a)の「洗剤及び前記洗剤をカプセル化する水溶性被膜を含む単位用量洗剤である…組成物。」との記載、及び同段落0329(摘記1g)の「実施例33:液体単位用量…液体組成物がPVAフィルム内に封入される単位容量の実施例である。」との記載にあるように、刊行物1記載の発明は、洗剤組成物を「水溶性被膜を含む単位用量洗剤」の形態にすることを想定した発明であるから、刊1発明の「液体洗濯配合物である製品配合物」を「液体組成物を含む水溶性洗濯単位用量物品」の形態にすることは、刊行物1の記載に基づき、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

イ.上記(β)の相違点について
刊行物1の段落0329?0330(摘記1g)の「実施例33」のFの区画番号48の具体例は、総計100重量部に対して、界面活性剤の総量55重量部と水9重量部を用いたもの(界面活性剤の総量と水との比が6.1:1のもの)であり、また、同じく「実施例33」のEの具体例は、区画番号45と46の総計100重量部に対して、界面活性剤の総量18.1重量部と水5.9重量部を用いたもの(界面活性剤の総量と水との比が3.1:1のもの)であり、
刊行物2の請求項1及び17(摘記2a)の「20重量%よりも少ない水を含有する非水性布地処理組成物を調製するための方法…で得られる液体単位用量布地処理製品。」との記載、及び第37頁の「2D」の「水…2.9%」との記載、
刊行物3の段落0001及び0111(摘記3a)の「洗濯用製品…単位用量布地処理システム…組成物は、好ましくは、低レベルの水を含有する。…水は、…最も好ましくは3?7重量%のレベルで存在するのが好ましく、組成物の全重量に基づく。」との記載、並びに
刊行物4の段落0124?0125(摘記4a)の「単位用量洗剤…わずかな水(20重量%未満、好ましくは10重量%未満の水)を含む流体洗剤組成物…水溶性のパウチ材料の中にパッケージ化された流体洗剤組成物」との記載にあるように、
水溶性のパウチ材料にパッケージ化された流体洗剤組成物に含まれる水の量が「20重量%未満、好ましくは10重量%未満」の僅かな量であることが好ましいことは普通に知られている。
してみると、刊1発明の「水を含む液体洗濯配合物である製品配合物」を「液体組成物を含む水溶性洗濯単位用量物品」の形態にした場合の水分量を「20重量%未満、好ましくは10重量%未満」の僅かな量として、刊行物1の「実施例33」の具体例のように「界面活性剤の総量と水との比」が「6.1:1」又は「3.1:1」の液体単位用量とすることは、刊行物1?4の記載に基づき、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

ウ.本1発明の効果について
本願明細書の段落0006には「芳香剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の洗剤組成物内での比率を丁寧に調整することで、芳香剤を洗い工程中により布地に定着させられる」との記載がなされ、同段落0136には、アニオン性界面活性剤と非イオン界面活性剤の重量比を約11.5:1の比率に「丁寧に調整」した例B?C及びE?Gのものが、約2.5:1に調整した例A及びDのものに比べて「香料の定着結果」が良好であることが記載されている。
しかしながら、当該効果が「例B?C及びE?G」と類似する組成以外の本1発明の広範な範囲の全てにおいて得られるといえる根拠は見当たらない。
また、刊1発明は、本1発明の「芳香剤」と「アニオン性界面活性剤」と「非イオン性界面活性剤」の重量比を満たす組成にあって、その「水」の量の違いにより「香料の定着性」が顕著に異なるともいえない。
したがって、本1発明に格別の効果があるとはいえない。

エ.審判請求人の主張について
令和2年4月27日付けの意見書の第5?6頁において、審判請求人は『従来の液体組成物を含む水溶性洗濯単位用量物品におきましては、含有される芳香剤成分が布地に適切に付着しないまま洗浄溶液といっしょに洗い流されてしまい、大部分が失われてしまうという問題がありました。この問題を解決するためには、液体組成物中に高濃度に芳香剤を添加することが考えられますが、物理的サイズが制限されている単位容量物品においては、これに含まれる芳香材料の濃度を上げようとすると、その他の成分の含有量を犠牲にすることになり、逆に布地の洗浄効果に悪影響を及ぼすことになります。上記のような状況において、本願発明の技術的課題は、通常の洗浄効果に悪影響を与えることなく、布地への芳香剤の定着効果を向上させることであります。このような本願発明の技術的課題につきましては、ご引用の刊行物1?5のいずれにも認識はされておりません。したがいまして、まず、課題が認識されていないところからは、刊行物中のいかなる記載を組み合わせたとしても、本願発明を想到するに至ることは不可能であるものと思料いたします。』と主張する。
しかしながら、刊行物1の段落0002(摘記1b)の「香料…等の有益剤は高価であり、…洗浄組成物…において高濃度で使用される場合、概して効果が弱い。…かかる有益剤が他の組成成分…と不適合であり得ることから、有益剤の保持力及び送達効率を改善することは困難である。」との記載にあるように、香料等の有益剤と、洗浄組成物の界面活性剤等の他の成分との適合性の関係から、香料による「芳香性」と洗浄剤による「洗浄性」との関係に二律背反的なトレードオフの関係があることは、当業者にとって周知の技術常識になっていたことが明らかなので、審判請求人の上記主張は採用できない。
また、同意見書の第6頁において、審判請求人は『刊行物1の実施例33のFの区画48の組成におけるアニオン性界面活性剤の総量(42.5%)と非イオン性界面活性剤(15%)の重量比は、2.83であり、本願発明の範囲(比の値で5?20)を大きく外れております。さらに、刊行物1において、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の重量比が本願発明の範囲に含まれる組成に着目すると、刊行物1のたとえば実施例31の組成例K(表35)および組成例M(表36)のいずれにおきましても、水の量が多すぎて、本願発明の課題を達成することは不可能であります。また、刊行物2?4についても同様であり、本願発明の構成要件を具備する組成例については開示も示唆もされてはおりません。』と主張する。
しかしながら、刊行物1に記載された発明の具体例としては、実施例31のKのようにアニオン性界面活性剤の総量(26.4重量%)と非イオン性界面活性剤(2.0重量%)の重量比が本1発明の範囲の「13.2:1」のものや、実施例33のE(実E発明)のようにアニオン性界面活性剤の総量(15.7重量%)と非イオン性界面活性剤(2.4重量%)の重量比が本1発明の範囲の「6.5:1」のものも記載されているのだから、刊行物1に記載された実施例33のFのものが、たまたま本1発明の範囲外にあるとしても、刊行物1に記載された発明の技術思想の範疇には、本1発明の数値範囲も含まれているといえるものである。そして、刊行物1に記載された「単位用量洗剤」の態様の場合の水の量が、刊行物1?4に記載のように少量であることが望ましいことも技術常識に過ぎない。このため、審判請求人の上記主張は採用できない。

オ.進歩性のまとめ
以上総括するに、本1発明は、刊行物1?4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許法第49条第4号の『その特許出願が第36条第6項に規定する要件を満たしていないとき』に該当し、また、同2号の『その特許出願に係る発明が第29条の規定により特許をすることができないものであるとき』に該当するから、その余の理由及び請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-08-25 
結審通知日 2020-08-28 
審決日 2020-09-08 
出願番号 特願2017-504373(P2017-504373)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C11D)
P 1 8・ 537- WZ (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安孫子 由美  
特許庁審判長 天野 斉
特許庁審判官 古妻 泰一
木村 敏康
発明の名称 洗濯洗剤組成物  
代理人 永井 浩之  
代理人 出口 智也  
代理人 末盛 崇明  
代理人 朝倉 悟  
代理人 小島 一真  
代理人 中村 行孝  
代理人 村田 卓久  

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