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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F |
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管理番号 | 1370714 |
審判番号 | 不服2019-10688 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-08-09 |
確定日 | 2021-01-27 |
事件の表示 | 特願2017-209206「光バルブを備えた液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月10日出願公開、特開2018- 72839〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年10月30日(パリ条約による優先権主張2016年10月31日、大韓民国)の出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。 平成30年 9月 3日付け:拒絶理由の通知 平成30年12月10日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 4月 1日付け:拒絶査定 (同年同月9日謄本送達) 令和 元年 8月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 元年 8月26日 :審判請求書の手続補正書(方式)の提出 令和 2年 4月 3日付け:拒絶理由の通知 令和 2年 7月 6日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和2年7月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 バックライトユニットと、 前記バックライトユニットの前面に配置され、複数の第1の単位画素領域を備えた光バルブパネルと、 前記光バルブパネルの前面に配置され、複数の第2の単位画素領域を備えた画像情報パネルを含み、 前記第1の単位画素領域の辺と、前記第2の単位画素領域の辺が、互いに平行にならないように交錯配置されて、前記第1の単位画素領域と前記第2の単位画素領域が重畳し、 前記第2の単位画素領域は、正方形形状を有し、 前記第1の単位画素領域は、前記第2の単位画素領域の正方形形状を45度回転させた菱形形状を有し、 前記第1の単位画素領域と前記第2の単位画素領域との重畳形状が不規則性を有するように、前記第1の単位画素領域の前記菱形形状の頂点が前記第2の単位画素領域の前記正方形形状の辺に対してずらされるように配置され、 前記第1の単位画素領域の前記菱形形状の頂点にあって、ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタを含み、前記ソース電極はE字形状を有し、前記ドレイン電極は逆C字形状を有する、液晶表示装置。」 第3 拒絶の理由 令和2年4月3日付けで当審が通知した請求項1、2に係る発明に対する進歩性の拒絶の理由の概要は、本件出願の請求項1、2に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 引用文献1.特開2007-310376号公報 引用文献2.特開2016-133633号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3.特開2008-116485号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4.特開2009-42630号公報(周知技術を示す文献) 第4 引用文献について 1 引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。 (1)「【請求項5】 それぞれが一対の透明基板に挟まれた液晶層を有する第1の液晶表示素子と第2の液晶表示素子とが、双方の液晶表示素子の各画素表示領域が互いに対応して配置されるように積層された液晶表示装置において、 前記第1及び第2の液晶表示素子のそれぞれは、各画素表示領域内の電極が少なくとも1つの屈曲部を形成しており、前記第2の液晶表示素子の屈曲部は、前記第1の液晶表示素子の屈曲部との間で平行な部分がなくなるように、前記第1の液晶表示素子の屈曲部を所定角度回転させた向きに配置されていることを特徴とする液晶表示装置。 【請求項6】 前記所定角度が、0°より大きく180°より小さい、請求項5に記載の液晶表示装置。」 (2)「【0007】 積層された複数の液晶表示素子を有する液晶表示素子において、各液晶表示素子を同一信号で駆動すると、プロジェクタのような、光が液晶パネルのパネル面にほぼ垂直な方向に通過させ、スクリーンに投影するタイプの液晶表示装置では特に問題はないが、直視型液晶表示装置のバックライトのように、拡散光を光源として用いるタイプでは、積層された複数の液晶パネル間の離隔距離によって視差が生じ、見る角度によって下層側の液晶パネルである画素を通過した光が、上層側の液晶パネルの対応する画素を通過しないとう問題が発生する。このため、液晶表示装置を斜めから見ると、視差によって、複数の液晶パネルで見ている位置が異なり、特に画像のエッジ部分など、急激に輝度が変化する部分が二重に見えて、違和感が生じるという問題がある。 【0008】 図23(a)?(c)は、積層された液晶パネルでの画素の重なり状態を示しており、(a)は、液晶パネルの中央から向かって左側の画素を観察した状態を、(b)は中央正面からその直下の画素を観察した状態を、(c)は、中央から向かって右側の画素を観察した状態を示している。ここでは、2つの液晶パネルが積層されている場合を考える。同図(b)に示すように、正面中央では、積層された2つの液晶パネルの各画素の位置は一致しており、特に問題はない。しかし、(a)、(c)に示すように、左側及び右側を見た場合には、2つの液晶パネル間で画素が位置ずれを起こし、輝度低下が観察される。また、その際、画素の位置ズレによる輝度低下で暗くなる部分と、明るい部分とが周期的に並び、上下の液晶パネル内の配線又はブラックマトリクス同士が干渉しあうことで、モアレのような干渉縞が観察され、表示品位が低下するという問題もある。 【0009】 本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、積層された液晶表示素子を有する液晶表示装置で、積層された液晶表示素子間で発生する干渉による表示不具合を解消できる液晶表示装置を提供することを目的とする。」 (3)「【0016】 本発明の第2の視点の液晶表示装置では、第1及び第2の液晶表示素子の各画素は屈曲部を有しており、第2の液晶表示素子の屈曲部を、第1の液晶表示素子の屈曲部との間で平行な部分がなくなるように、第1の液晶表示素子の屈曲部を所定角度回転させた向きとする。このようにすることで、正面から見た際の第1及び第2の液晶表示素子における各画素の重なり具合と、斜めから見た際の第1及び第2の液晶表示素子における各画素の重なり具合との変化を少なくすることができ、正面視野と斜め視野とにおける表示輝度の差を小さくできる。また、第1の液晶表示素子の画素と、第2の液晶表示素子の画素とで、相互に平行する部分を排することで、斜めから観察した際の暗くなる部分と明るい部分との周期性を緩和することができ、モアレ現象による干渉縞の問題を解消できる。 【0017】 本発明の第2の視点の液晶表示装置では、前記所定角度が、0°より大きく180°より小さい構成を採用できる。また、この所定角度としては、ほぼ90°を採用できる。」 (4)「【0039】 本発明の液晶表示装置では、各液晶表示素子は、x方向の電極とy方向の電極と共通電極とを有し、前記x方向の電極と前記y方向の電極とが交差する点に画素電極が形成され、前記x方向の電極と前記y方向の電極と画素電極との間には、3端子からなる薄膜トランジスタ(TFT)に代表される非線形素子が配置され、駆動信号により擬似的なスタティック駆動が実施できるアクティブマトリクス駆動が実施されている構成を採用できる。」 (5)「【0081】 図16は、本発明の第2実施形態の液晶表示装置の断面構造を示している。本実施形態の液晶表示装置10aの断面構造は、図1に示す第1実施形態の液晶表示装置10から、光拡散層14を除いた構成となっている。本実施形態では、第1及び第2の液晶表示素子11、12の画素構造(形状)によって、斜め視野から見た際の干渉によるモアレ現象を解消する。以下では、第1及び第2の液晶表示素子11、12を、IPS方式の液晶表示素子として説明する。 【0082】 図17は、積層された液晶表示素子における1画素の平面構造を示している。同図は、例えば第1の液晶表示素子11内の1画素を示している。各画素は、方向301に沿って延びる信号線(ゲート線)21と、方向302に沿って延びるデータ線22とを有しており、その交点付近に、信号線21の電位に従ってそのオン/オフが制御されるトランジスタ24を有する。画素電極櫛歯25は、トランジスタ24を介してデータ線22に接続される。共通電極櫛歯26及び表層共通電極27は、それぞれ共通電極23に接続される。画素表示領域内では、画素電極櫛歯25と、共通電極櫛歯26及び表層共通電極27とが、基板平面内で対向する位置に形成されており、両電極間の電位差による電界により、液晶層が駆動される。 【0083】 画素電極櫛歯25、共通電極櫛歯26、及び、表層共通電極27は、方向302内で、1箇所だけ屈折した部分を有する。具体的には、画素電極櫛歯25、共通電極櫛歯26、及び、表層共通電極27は、紙面上側では、方向302に対して-15°(165°)の角度で傾斜し、下側では、方向302に対して+15°の角度で傾斜しており、画素表示領域内の方向302の中央部分で屈折している。この場合、画素形状は、屈折部分を有する形状となる。図17では、屈折部分(屈曲部)を1箇所としているが、この屈折部は、複数であってもよい。 【0084】 第2の液晶表示素子12についても、画素電極櫛歯、共通電極櫛歯、及び、表層共通電極を屈折させ、画素形状を屈折させる。このとき、第1の液晶表示素子11と第2の液晶表示素子12とで、屈折の方向を90°回転させる。例えば、第1の液晶表示素子11が、図17に示すように、方向302内で1回屈折した画素形状を有する場合には、第2の液晶表示素子12では、画素電極櫛歯、共通電極櫛歯、及び、表層共通電極を、方向301内で屈折させ、画素形状を、画素表示領域の方向301に中央部分で屈折させる。 【0085】 図18(a)?(c)は、積層された液晶表示素子での画素の重なり状態を示しており、(a)は、液晶表示素子の中央から向かって左側の画素を観察した状態を、(b)は中央正面からその直下の画素を観察した状態を、(c)は、中央から向かって右側の画素を観察した状態を示している。同図では、第1の液晶表示素子11の画素41を実線で、第2の液晶表示素子12の画素42を点線で示している。なお、画素41、42における画素の輪郭及び画素内の屈折した直線は、画素形状を定める画素電極櫛歯25(図17)、共通電極櫛歯26、及び、表層共通電極27の何れかに対応しており、図18では、これらを区別せずに図示している。 【0086】 液晶表示装置10aを素子垂直方向から観察した場合には、図18(b)に示すように、第1の液晶表示素子11の画素41と、第2の液晶表示素子12の画素42とは、ほぼ同じ位置で重なり合う。視点をずらし、液晶表示装置10aを斜め方向から見ると、観察者から第1の液晶表示素子11までの距離と、第2の液晶表示素子12までの距離とが異なるため、正面中央から向かって左方向を見た場合には、同図(a)に示すように、画素41と画素42とがずれて見え、中央から右方向を見た場合には、同図(c)に示すように、画素41と画素42とがずれて見える。」 (6)「【0091】 なお、上記実施形態では、積層される液晶表示素子がIPS方式の液晶表示素子である例を用いて説明したが、液晶表示素子は、IPS方式には限定されない。積層される液晶表示素子は、TN方式やVA方式の液晶表示素子であってもよい。これらの方式でも、積層される液晶表示素子の間に光拡散層14(図1)を挿入することにより、或いは、屈折を有する画素を、90°回転させて重ねた構造を採用することで、正面視野と斜め視野とでの輝度の差を抑制でき、かつ、モアレの発生を防止することができる。第2実施形態では、画素の回転角を90°としたが、上側の液晶表示素子の画素と、下側の液晶表示装置の画素との間に平行な成分がなければよいため、回転角は、90°には限定されず、0°?180°の範囲の任意の角度、例えば90°付近の角度を採用することができる。」 (7)図16の記載から、バックライト光源13と、バックライト光源の前面に配置された第1の液晶表示素子11と、第1の液晶表示素子11の前面に配置された第2の液晶表示素子12とを含む液晶表示装置10aが、見て取れる。 (8)上記(5)を踏まえて、図17を見ると、図17の記載から、第1の液晶表示素子11の1画素の頂点付近にトランジスタ24を有することが、見て取れる。 (9)上記(5)を踏まえて、図18(b)を見ると、図18(b)の記載から、積層された液晶表示素子を中央正面からその直下の画素を観察した状態において、第1の液晶表示素子11の画素41の頂点が第2の液晶表示素子12の画素42の辺及び頂点に対して重ならないように規則性がなく重なり合うことが、見て取れる。 2 したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「バックライト光源と、 バックライト光源の前面に配置され、各画素表示領域が配置された第1の液晶表示素子と、 第1の液晶表示素子の前面に配置され、各画素表示領域が配置された第2の液晶表示素子とを含み、 前記第1及び第2の液晶表示素子のそれぞれは、各画素表示領域内の電極が少なくとも1つの屈曲部を形成しており、前記第2の液晶表示素子の屈曲部は、前記第1の液晶表示素子の屈曲部との間で平行な部分がなくなるように、前記第1の液晶表示素子の屈曲部を0°より大きく180°より小さい所定角度回転させた向きに配置され、 積層された液晶表示素子を中央正面からその直下の画素を観察した状態において、第1の液晶表示素子の画素41の頂点が第2の液晶表示素子の画素42の辺及び頂点に対して重ならないように規則性がなく重なり合い、 第1の液晶表示素子の画素41と、第2の液晶表示素子の画素42とで、相互に平行する部分を排することで、斜めから観察した際の暗くなる部分と明るい部分との周期性を緩和することができ、モアレ現象による干渉縞の問題を解消でき、 第1の液晶表示素子の1画素の頂点付近に3端子からなる薄膜トランジスタ(TFT)を有する、 液晶表示装置。」 第5 対比 1 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「バックライト光源」は、本願発明の「バックライトユニット」に、 引用発明の「バックライト光源の前面に配置され、各画素表示領域が配置された第1の液晶表示素子」は、本願発明の「前記バックライトユニットの前面に配置され、複数の第1の単位画素領域を備えた光バルブパネル」に、 引用発明の「第1の液晶表示素子の前面に配置され、各画素表示領域が配置された第2の液晶表示素子」は、本願発明の「前記光バルブパネルの前面に配置され、複数の第2の単位画素領域を備えた画像情報パネル」に、 引用発明の「『積層された液晶表示素子』について、『第1の液晶表示素子の画素41と、第2の液晶表示素子の画素42とで、相互に平行する部分を排することで、斜めから観察した際の暗くなる部分と明るい部分との周期性を緩和することができ、モアレ現象による干渉縞の問題を解消でき』ること」は、本願発明の「前記第1の単位画素領域の辺と、前記第2の単位画素領域の辺が、互いに平行にならないように交錯配置されて、前記第1の単位画素領域と前記第2の単位画素領域が重畳し」に、 引用発明の「液晶表示装置」は、本願発明の「液晶表示装置」に、 それぞれ相当する。 (2)引用発明の「積層された液晶表示素子を中央正面からその直下の画素を観察した状態において、第1の液晶表示素子の画素41の頂点が第2の液晶表示素子の画素42の辺及び頂点に対して重ならないように規則性がなく重なり合い」と、本願発明の「前記第1の単位画素領域と前記第2の単位画素領域との重畳形状が不規則性を有するように、前記第1の単位画素領域の前記菱形形状の頂点が前記第2の単位画素領域の前記正方形形状の辺に対してずらされるように配置され」は、「『前記第1の単位画素領域と前記第2の単位画素領域との重畳形状が不規則性を有するように、前記第1の単位画素領域の』『頂点が前記第2の単位画素領域の』『辺に対してずらされるように配置され』」の点で一致する。 (3)引用発明の「第1の液晶表示素子の1画素の頂点付近に3端子からなる薄膜トランジスタ(TFT)を有する」と、本願発明の「前記第1の単位画素領域の前記菱形形状の頂点にあって、ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタを含み」は、「『前記第1の単位画素領域の』『頂点にあって、ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタを含み』」の点で一致する。 2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「バックライトユニットと、 前記バックライトユニットの前面に配置され、複数の第1の単位画素領域を備えた光バルブパネルと、 前記光バルブパネルの前面に配置され、複数の第2の単位画素領域を備えた画像情報パネルを含み、 前記第1の単位画素領域の辺と、前記第2の単位画素領域の辺が、互いに平行にならないように交錯配置されて、前記第1の単位画素領域と前記第2の単位画素領域が重畳し、 前記第1の単位画素領域と前記第2の単位画素領域との重畳形状が不規則性を有するように、前記第1の単位画素領域の頂点が前記第2の単位画素領域の辺に対してずらされるように配置され、 前記第1の単位画素領域の頂点にあって、ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタを含む、液晶表示装置。」 【相違点1】 第1の単位画素領域及び第2の単位画素領域について、本願発明は「前記第2の単位画素領域は、正方形形状を有し、前記第1の単位画素領域は、前記第2の単位画素領域の正方形形状を45度回転させた菱形形状を有し、」「前記第1の単位画素領域の前記菱形形状の頂点が前記第2の単位画素領域の前記正方形形状の辺に対してずらされるように配置され」るのに対し、引用発明は「前記第1及び第2の液晶表示素子のそれぞれは、各画素表示領域内の電極が少なくとも1つの屈曲部を形成しており、前記第2の液晶表示素子の屈曲部は、前記第1の液晶表示素子の屈曲部との間で平行な部分がなくなるように、前記第1の液晶表示素子の屈曲部を0°より大きく180°より小さい所定角度回転させた向きに配置され、積層された液晶表示素子を中央正面からその直下の画素を観察した状態において、第1の液晶表示素子の画素41の頂点が第2の液晶表示素子の画素42の辺及び頂点に対して重ならないように規則性がなく重なり合」う点。 【相違点2】 薄膜トランジスタについて、本願発明は「第1の単位画素領域の前記菱形形状の頂点にあって、」「前記ソース電極はE字形状を有し、前記ドレイン電極は逆C字形状を有する」のに対し、引用発明は「第1の液晶表示素子の1画素の頂点付近」にあり、ソース電極及びドレイン電極の形状が明らかでない点。 第6 判断 1 相違点1について (1)液晶表示装置に関し、各表示画素の表示領域を正方形形状とすることは、周知技術(必要ならば、引用文献2(特に、図2参照。)、引用文献3(特に、【0046】、図6参照。)、引用文献4(特に、【0045】、図9参照。)を参照されたい。)である。 (2)引用文献1の液晶表示素子は、上記第4の1(6)に「IPS方式には限定されない。積層される液晶表示素子は、TN方式やVA方式の液晶表示素子であってもよい。」と摘記したように、各種方式の液晶表示素子に適用できることが示唆されている。 そして、引用文献1と周知技術はともに液晶表示装置に関するものであり、そうすると、引用発明の第1の液晶表示素子の画素41の領域の形状および第2の液晶表示素子の画素42の領域の形状に、上記周知技術の一般的な形状を適用することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 (3)ここで、引用発明は「前記第1の液晶表示素子の屈曲部を0°より大きく180°より小さい所定角度回転させた向きに配置され、第1の液晶表示素子の画素と、第2の液晶表示素子の画素とで、相互に平行する部分を排することで、斜めから観察した際の暗くなる部分と明るい部分との周期性を緩和することができ、モアレ現象による干渉縞の問題を解消でき」と特定されていることから、引用発明の第1の液晶表示素子の画素41の領域の形状および第2の液晶表示素子の画素42の領域の形状を、正方形形状とする上記周知技術を適用する場合にも、第1の液晶表示素子を所定角度回転させ、第1の液晶表示素子の画素41と、第2の液晶表示素子の画素42とで、相互に平行する部分を排することで、モアレ現象による干渉縞の問題を解消できるようにすると解される。 その場合に、引用発明は「0°より大きく180°より小さい所定角度回転させた向きに配置され」と特定されているので、所定角度として「45°」は、当業者が適宜選択する事項にすぎない。 (4)以上より、引用発明に上記(3)を考慮して上記周知技術を適用し、第2の液晶表示素子の画素42の領域は、正方形形状を有し、第1の液晶表示素子の画素41の領域は、第2の液晶表示素子の画素42の領域の正方形形状に対して45°角度回転させた向きに配置した正方形形状を有し、積層された液晶表示素子を中央正面からその直下の画素を観察した状態において、第1の液晶表示素子の当該角度回転させた向きに配置した正方形形状の画素41の頂点が第2の液晶表示素子の正方形状の画素42の辺及び頂点に対して重ならないように規則性がなく重なり合うようにすること、つまり、相違点1に係る本願発明の構成にすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 2 相違点2について (1)引用発明に上記1(3)を考慮して上記1(2)の周知技術を適用し、「第1の液晶表示素子の1画素の頂点付近」を「第2の液晶表示素子の画素42の領域の正方形形状に対して45°角度回転させた向きに配置した正方形形状の第1の液晶表示素子の1画素の頂点付近」とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 (2)また、液晶表示装置に関し、薄膜トランジスタのソース電極はE字形状を有し、薄膜トランジスタのドレイン電極は逆C字形状を有するようになすことは、周知技術(必要ならば、国際公開第2011/142265号(特に、[0002]、[0085]-[0087]、図10F、図10G、図10H参照。)、特開2010-3723号公報(特に、【0002】、【0005】、【0027】、図1、図13参照。)を参照されたい。)である。 ア 国際公開第2011/142265号 図10F、図10G、図10H 【符号の説明】106・・・ソース電極、107・・・ドレイン電極 イ 特開2010-3723号公報 図13 【符号の説明】54・・・ソース電極、56・・・ドレイン電極 図1 【符号の説明】5・・・ソース電極、7・・・ドレイン電極 (3)そして、引用文献1と周知技術はともに液晶表示装置に関するものであり、そうすると、引用発明の3端子からなる薄膜トランジスタに、上記2(2)の周知技術のソース電極はE字形状、ドレイン電極は逆C字形状を適用することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 (4)以上より、引用発明に上記周知技術を適用し、相違点2に係る本願発明の構成にすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 3 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4 効果について そして、相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 5 まとめ 以上のとおりであるから、引用発明に上記周知技術を適用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 第7 審判請求人の主張について 審判請求人は、令和2年7月6日付けの意見書において、「それに対して、引用文献1の図17では、TFT24は信号線21とデータ線22の交差部付近にあるということを示すのみであり、E字型のソース電極や逆C字型のドレイン電極を示しておりません。」旨主張している。 しかしながら、E字型のソース電極や逆C字型のドレイン電極については、上記第6の2で検討したとおりである。 以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-08-20 |
結審通知日 | 2020-08-25 |
審決日 | 2020-09-09 |
出願番号 | 特願2017-209206(P2017-209206) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小濱 健太 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
野村 伸雄 近藤 幸浩 |
発明の名称 | 光バルブを備えた液晶表示装置 |
代理人 | 園田・小林特許業務法人 |