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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1370728
審判番号 不服2020-5051  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-14 
確定日 2021-02-16 
事件の表示 特願2015- 48532「撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月29日出願公開、特開2015-188077、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月11日(優先権主張平成26年3月13日)の出願であって、平成30年2月23日に手続補正がされるとともに上申書が提出され、平成30年11月30日付けで拒絶理由通知がされ、平成31年1月22日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、令和1年6月25日付けで最後の拒絶理由通知がされ、令和1年8月22日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、令和2年1月24日付けで令和1年8月22日付けの手続補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和2年4月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 令和2年1月24日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1.令和2年1月24日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
令和1年8月22日付けの補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1-5に係る発明は、引用文献1-4に記載の発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、独立特許要件を満たさないから、令和1年8月22日付けの補正は却下すべきものである。

引用文献等一覧
1.特開2012-253368号公報
2.特開平1-239879号公報
3.特開平9-246514号公報(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2012/176422号(周知技術を示す文献)

2.原査定(令和2年1月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-3、6に係る発明は、上記引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、本願請求項4、5に係る発明は、上記引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3、4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ順に「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、令和2年4月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、そのうちの本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
受光部と、第1のトランジスタと、第1の回路と、を有し、
前記受光部は、前記第1のトランジスタと電気的に接続され、
前記第1のトランジスタは、前記第1の回路と電気的に接続され、
前記受光部は、第1の領域と、第2の領域と、第1の電極と、第2の電極と、を有し、
前記第1の電極は、前記第1の領域上に位置し、
前記第2の電極は、前記第2の領域上に位置し、
前記受光部の第1の領域及び前記受光部の第2の領域と、前記第1のトランジスタは、互いに重なる領域を有し、
前記第1の領域と、前記第2の領域と、前記第1の電極と、前記第2の電極は、平面視において櫛歯形状を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域は、互いに噛み合うように配置され、
前記第1の電極と前記第2の電極は、互いに噛み合うように配置されることを特徴とする撮像装置。」

本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトダイオードと、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、を有し、
前記フォトダイオードは、半導体層を含み、
前記半導体層は、n型の領域と、p型の領域と、を有し、
前記n型の領域と、前記p型の領域とは、同一面に接して設けられ、
前記第1のトランジスタは、前記フォトダイオードによって生成された電気信号を転送する機能を有し、
前記第2のトランジスタは、前記転送された電気信号を増幅する機能を有し、
前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとの間、及び、前記第1のトランジスタと前記フォトダイオードとの間には、絶縁層が設けられ、
前記第1のトランジスタは、酸化物半導体を有し、
前記n型の領域及び前記p型の領域の一方は、前記第1のトランジスタと重なることを特徴とする半導体装置。」

「【技術分野】
【0001】
技術分野は、フォトセンサ及びフォトセンサを有する半導体装置に関する。また、それらの駆動方法に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォトセンサにおいて、光検出の精度を向上させることを目的の一とする。
【0007】
また、フォトセンサの回路構成について、新規なレイアウト又は構造を提供することを目的の一とする。特に、受光面積を広くすることを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、光を電気信号に変換する受光素子と、電気信号を転送する第1のトランジスタと、電気信号を増幅する第2のトランジスタとを有し、受光素子はシリコン半導体を用いて形成され、第1のトランジスタは酸化物半導体を用いて形成されている半導体装置である。
【0009】
また、受光素子は横型接合タイプのフォトダイオードであり、受光素子が有するn層又はp層と、第1のトランジスタとが重なって形成されている。
・・・
【発明の効果】
【0013】
フォトセンサにおいて、電気信号を転送する第1のトランジスタを酸化物半導体を用いて形成することで、第1のトランジスタのオフ状態でのリーク電流を低減でき、光検出の精度を向上させることができる。
【0014】
また、受光素子が有するn層又はp層と、第1のトランジスタとが重なって形成されることで、受光素子の受光面積を大きくすることができる。そのため、受光感度を高めることができ、光検出の精度を向上させることができる。
【0015】
また、受光領域上に設けられた配線を透光性を有する材料を用いて形成することで、受光面積を広げることができる。そのため、受光感度を高めることができ、光検出の精度を向上させることができる。」

「【0018】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置の回路及びレイアウトについて説明する。
【0019】
図1は、フォトセンサの回路図の一例である。
【0020】
フォトセンサは、フォトダイオード100、トランジスタ101、トランジスタ102、トランジスタ103、及びトランジスタ104を有する。
【0021】
フォトダイオード100は、光を電気信号(電荷)に変換する機能を有する。フォトダイオードに限らず、フォトトランジスタ等の該機能を有する受光素子を用いてもよい。
【0022】
トランジスタ101は、変換された電気信号を転送し、トランジスタ103のゲートに供給する機能を有する。そのため、転送トランジスタとも呼ぶ。
・・・
【0026】
図1の回路では、トランジスタ101は、ゲートが配線106(電荷制御信号線とも呼ぶ)に電気的に接続され、ソース又はドレインの一方がフォトダイオード100の一方の電極に電気的に接続され、他方がトランジスタ102のソース又はドレインの一方及びトランジスタ103のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ102は、ゲートが配線107(リセット信号線とも呼ぶ)に電気的に接続され、ソース又はドレインの他方が配線108(電源供給線とも呼ぶ)に電気的に接続されている。トランジスタ103は、ソース又はドレインの一方が配線108に電気的に接続され、他方がトランジスタ104のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ104は、ゲートが配線109(選択信号線とも呼ぶ)に電気的に接続され、ソース又はドレインの他方が配線110(出力線とも呼ぶ)に電気的に接続されている。なお、フォトダイオード100の他方の電極は配線120に電気的に接続されている。配線120の電位は、固定電位(例えばグランド)又は可変とし、所望の電位とすればよい。
【0027】
図2は、フォトセンサのレイアウトの一例である。
【0028】
フォトセンサは、受光素子(フォトダイオード100)、4つのトランジスタ101?104を有している。フォトダイオード100は、横型接合タイプのpinフォトダイオードであり、n層201、i層202及びp層203を同一表面上に有する。そして、n層201上にトランジスタ101及びトランジスタ102が形成されている。受光領域ではないn層201上にトランジスタ101の一部又は全部が重なるようなレイアウトとすることで、受光面積を広くすることができる。
【0029】
なお、受光領域ではないp層203上にトランジスタ101を形成してもよい。また、フォトダイオード100は、i層を設けずpnフォトダイオードとしてもよい。
・・・
【0033】
図3?図6は、フォトセンサのレイアウトの他の一例であり、フォトダイオード100の受光面積が図2と異なる。
【0034】
なお、図3、図5及び図6は、フォトダイオード100の受光領域(ここではi層202)に重なる配線(導電層130)が透光性を有する材料で形成されている。光は、導電層130を透過してi層202に入射される。したがって、受光面積を広げることができる。
・・・
【0036】
更に、図3は、フォトダイオードのi層202に重なってトランジスタ101及びトランジスタ102が形成されている。これは、酸化物半導体が透光性を有することを利用するものであり、光は、トランジスタ101、トランジスタ102、及び導電層130を透過してi層202に入射される。したがって、受光面積を広げることができる。
【0037】
以上のように、受光面積を拡大することで受光感度を高めることができる。そのため、光検出の精度を向上させることができる。」

「【0045】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置の断面構造について説明する。
【0046】
図19は、図1?図18におけるフォトセンサの断面図である。
【0047】
図19では、絶縁表面を有する基板1001上に、フォトダイオード1002、トランジスタ1003、及びトランジスタ1004が設けられている。それぞれ、図1?図18におけるフォトダイオード100、トランジスタ103、及びトランジスタ101の断面構造の一例を示している。
【0048】
被検出物1201から発せられる光1202、被検出物1201により反射された光1202(外光など)、又は装置内部から発せられた光が被検出物1201で反射した光1202が、フォトダイオード1002に入射される。基板1001側の被検出物を撮像する構成としてもよい。
【0049】
基板1001は、絶縁性基板(例えばガラス基板又はプラスチック基板)、該絶縁性基板上に絶縁膜(例えば酸化珪素膜又は窒化珪素膜)を形成したもの、半導体基板(例えばシリコン基板)上に該絶縁膜を形成したもの、又は金属基板(例えばアルミニウム基板)上に該絶縁膜を形成したものを用いることができる。
【0050】
フォトダイオード1002は、横型接合タイプのpinフォトダイオードであり、半導体膜1005を有している。半導体膜1005は、p型の導電性を有する領域(p層1021)と、i型の導電性を有する領域(i層1022)と、n型の導電性を有する領域(n層1023)とを有している。なお、フォトダイオード1002は、pnフォトダイオードであっても良い。
【0051】
横型接合タイプのpinフォトダイオード又はpnフォトダイオードは、p型を付与する不純物と、n型を付与する不純物とを、それぞれ半導体膜1005の特定の領域に添加することで、形成することが出来る。
【0052】
フォトダイオード1002は、入射光から生成される電気信号の割合(量子効率)を向上させるために、結晶欠陥の少ない単結晶半導体(例えば単結晶シリコン)を用いて半導体膜1005を形成することが好ましい。
【0053】
トランジスタ1003は、トップゲート型の薄膜トランジスタであり、半導体膜1006、ゲート絶縁膜1007、及びゲート電極1008を有している。
【0054】
トランジスタ1003は、フォトダイオード1002から供給される電気信号を出力信号に変換する機能を有する。そのため、単結晶半導体(例えば単結晶シリコン)を用いて半導体膜1006を形成し、移動度の高いトランジスタとすることが好ましい。
・・・
【0056】
なお、半導体膜1005及び半導体膜1006は、非晶質半導体、微結晶半導体、多結晶半導体、酸化物半導体などを用いて形成することもできる。特に、単結晶半導体を用いることで移動度の高いトランジスタとすることが望ましい。また、半導体材料は、結晶性を向上させることが容易であるシリコン又はシリコンゲルマニウム等のシリコン半導体を用いることが好ましい。
・・・
【0062】
トランジスタ1004は、ボトムゲート型の逆スタガ構造の薄膜トランジスタであり、ゲート電極1010、ゲート絶縁膜1011、半導体膜1012、電極1013、電極1014を有する。また、トランジスタ1004上に絶縁膜1015を有する。
【0063】
ここでトランジスタ1004は、フォトダイオード1002及びトランジスタ1003の上方に絶縁膜1009を介して形成されていることを特徴とする。このようにトランジスタ1004をフォトダイオード1002と異なる表面上に形成することで、フォトダイオード1002の面積を広げることができる。
【0064】
また、トランジスタ1004の一部又は全部が、フォトダイオード1002のn層1023又はp層1021のいずれかと重なるように形成することが好ましい。このようにすることで、フォトダイオード1002の受光面積を拡大できる。pnフォトダイオードの場合も、トランジスタ1004の一部又は全部が、n層又はp層と重なるように形成することが好ましい。
【0065】
トランジスタ1004は、フォトダイオード1002が供給する電気信号をトランジスタ1003のゲートに累積し、また、当該電気信号を保持する機能を有する。そのため、酸化物半導体を用いて半導体膜1012を形成し、オフ電流が極めて低いトランジスタとすることが好ましい。」

「【0102】
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体装置の回路、レイアウト及び断面構造について、実施の形態1?3と異なる例を示す。
【0103】
図21は、フォトセンサの回路図の一例であり、図1の回路からトランジスタ101及びトランジスタ102を除いた構成である。
【0104】
そして、図22は、図21の回路におけるレイアウトの一例である。素子数が減るため、受光面積を広げることができる。
【0105】
また、図22では、pinフォトダイオード100のn層201に重なってトランジスタ103及びトランジスタ104が形成されているため、受光面積を広げることができる。また、構成する配線109等を透光性を有する材料で形成し、該配線109とi層202を重ねて形成することで、受光面積を広げることができる。」

「【0122】
(実施の形態7)
本実施の形態では、フォトセンサを用いた半導体装置の一例について説明する。
【0123】
図25は、フォトセンサを搭載したイメージセンサの一例である。フォトセンサ部5001及びフォトセンサ制御回路5002を有する。フォトセンサ部は、マトリクス状に配置された複数のフォトセンサ5003を有する。そして、フォトセンサ制御回路5002は、フォトセンサ読み出し回路5004及びフォトセンサ駆動回路5005を有する。ここでは、エリアセンサを示したが、ラインセンサとしてもよい。当該イメージセンサは、デジタルスチルカメラや携帯電話等に用いられる。
【0124】
フォトセンサ5003において、他の実施の形態で示したフォトセンサを適用することができる。
【0125】
また、図26は、フォトセンサを搭載した表示装置の一例である。表示パネル6000は、画素部6001、表示素子制御回路6002、及びフォトセンサ制御回路6003を有する。画素部6001は、マトリクス状に配置された画素6004を有し、画素6004内に表示素子6005及びフォトセンサ6006を有する。表示素子制御回路6002は、表示素子駆動回路6007、6008を有する。そして、フォトセンサ制御回路6003は、フォトセンサ読み出し回路6009及びフォトセンサ駆動回路6010を有する。当該表示装置は、タッチパネル等に用いられる。
・・・
【0130】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。」

図1-3、19、25は、以下のとおりのものである。


図19から、フォトダイオード1002のn層1023は、トランジスタ1004と重なり、トランジスタ1004の電極1013は、フォトダイオード1002のn層1023に接続され、当該n層1023の上に位置していることが、見てとれる。

したがって、上記引用文献1には、実施の形態3のフォトセンサ(図19)を適用した、実施の形態7の半導体装置(図25)として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「フォトセンサを搭載したイメージセンサであって、
フォトセンサ部及びフォトセンサ制御回路を有し、
フォトセンサ部は、複数のフォトセンサを有し、
フォトセンサ制御回路は、フォトセンサ読み出し回路を有し、
フォトセンサは、
フォトダイオードと、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタは、前記フォトダイオードの一方の電極に電気的に接続され、
前記フォトダイオードの他方の電極は所望の電位とされた配線に電気的に接続され、
前記フォトダイオードは、横型接合タイプのpinフォトダイオード又はpnフォトダイオードであり、半導体層を含み、
前記半導体層は、n型の領域と、p型の領域と、を有し、
前記n型の領域と、前記p型の領域とは、同一面に接して設けられ、
前記第1のトランジスタは、前記フォトダイオードによって生成された電気信号を転送する機能を有し、転送トランジスタとも呼ばれ、
前記n型の領域及び前記p型の領域の一方は、前記第1のトランジスタと重なり、
前記第1のトランジスタの電極は、前記n型の領域及び前記p型の領域の前記一方に接続され、その上に位置するイメージセンサ。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「〔産業上の利用分野〕
本発明は、モノリシック光受信器に関する。」(第1ページ右下欄第7?8行)

「本発明は暗電流が小さく、製造容易なモノリシック光受信器を提供することを目的とする。」(第2ページ左下欄第3?4行)

「〔課題を解決するための手段]
本発明に係るモノリシック光受信器は、半絶縁性のInP基板1上に、p型のInGaAsP系の第1の層と、p型のInPまたはInAlAsからなる第2の層とを積層し、この第2の層表面に接合型ダイオードと、第2の層表面または第2の層の一部を除去して表出した第1の層にMIS型FETを形成して、OEICを構成したものである。」(第2ページ左下欄第5?13行)

「〔実 施 例〕
以下本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
第1図は上記一実施例の構造を示す要部断面図であって、本実施例では同図の左側のP^(+)PN^(+)型(PIN型と考えてよい)のPDと、右側のnチャネルMIS型FETとを同-チップ上に集積して、プレーナ型のモノリシックOEICを構成した。
同図において、1は半絶縁性のInPからなる基板(以後InP基板と略記する)、2はp型のInGaAs?InGaAsPからなる第1の層、3はp型のInPもしくはInAlAsからなる第2の層、4はSiをドープしたn型領域、5はZnをドープしたp型領域、6は複数個のストライプ状AuGe膜を共通接続して櫛型状としたn型に対する電極(以後n電極と称する)、7は複数個のストライプ状AuZn膜を共通接続して櫛型状としたp型に対する電極(以後p電極と称する)、8はSiをドープしたn型の領域でソース領域およびドレイン領域、9はAuGeからなるソースおよびドレイン電極、10はSiO_(2)からなるゲート絶縁膜、11はPtからなるゲート電極である。
本実施例では図示したように、半絶縁性基板1上に、InGaAsP系の第1の層2と、その上にInPまたはInAlAsからなる第2の層3が積層され、これに接合型のダイオードとMIS型のFETとを集積した構成としている。
上記第1の層2として用いるInGaAsP系化合物半導体は、バンドギャップが0.75?1.4 eV程度であるので、1.3μmというような長波長帯に対して光吸収特性を有するが、バンドギャップが小さいのでショットキ接触を形成した場合に暗電流が大きくなる。第2の層3として用いるInP、InAlAsのバンドギャップは 1.4eV、1.45eV程であり、ショットキ接触の暗電流は小さいが、長波長帯で光吸収特性を有しない。
そこで本実施例では所望の長波長帯に適合するバンドギャップを有するInGaAsP系で第1の層2を形成し、この第1の層(審決注:「第2の層」は誤記と認定した。)をPDの光吸収層とし、その上にバンドギャップの大きいInPまたはInAlAsからなる第2の層3を設けて、PDを接合型で形成して暗電流をより小さくし、且つこれをFETの活性層として用いたものである。このような構成としたことにより、暗電流が小さい長波長帯のOEICを作成することができる。
本実施例では上記n型領域4(審決注:「6」は誤記と認定した。)およびp型領域5(審決注:「7」は誤記と認定した。)が、p型のInP層からなる第2の層3を貫通して、先端がその下層のp型のInGaAsからなる第1の層2内に到達する如く形成した。上記n型領域6、p壁領域7はしいて第2の層3を貫通する必要はないが、素子の応答特性を考慮すると図示したように第2の層3を貫通し、第1の層2に到達していることが望ましい。
暗電流に関しては、PDを本実施例の如く接合型とすることによって、バリア高さをショットキ接触の場合より大きくできるので、暗電流がより小さくなる。
またFETは、p型の第2の層3を活性層として用いているので、チャネルはn型であり高速性を存する。
ゲート絶縁膜10はSiO_(2)膜以外にAl_(2)O_(3)膜或いはSiN膜等でも良く、化学気相成長(CVD)法、或いはプラズマCVD法等を用いて形成できる。
以上のようにして作成した本実施例のOEICは、表面にメサ構造を作る必要がなく、プレーナ型であるので、製造工程が容易であり、しかもダイオードとFETが同一の層を共通に使用するので、膜成長工程は両者共通にでき、従って構造および製造方法ともに簡単化される。
上記第1図(a)においてはPDをP^(+)PN^(+)構造とした例を示したが、これは実質的にPIN型と考えてよい。」(第2ページ右下欄第13行?第3ページ右下欄第9行)

第1図は、以下のとおりのものである。


したがって、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「P^(+)PN^(+)型(PIN型と考えてよい)のPDとnチャネルMIS型FETとを同一チップ上に集積した、プレーナ型のモノリシックOEICから構成される光受信器において、
半絶縁性基板1上に、p型のInGaAsP系の第1の層2と、その上にp型のInPまたはInAlAsからなる第2の層3が積層され、これに接合型のダイオードとMIS型のFETとを集積した構成とされ、
InGaAsP系の第1の層2は、所望の長波長帯に適合するバンドギャップを有し、この第1の層をPDの光吸収層とし、その上にバンドギャップの大きいInPまたはInAlAsからなる第2の層3を設けて、PDを接合型で形成して暗電流をより小さくし、且つこれをFETの活性層として用いたものであり、
n型領域4およびp型領域5が、p型のInP層からなる第2の層3を貫通して、先端がその下層のp型のInGaAsからなる第1の層2内に到達する如く形成され、
n電極6は複数個のストライプ状AuGe膜を共通接続して櫛型状とされ、p電極7は複数個のストライプ状AuZn膜を共通接続して櫛型状とされた、モノリシック光受信器。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「イメージセンサ」、「フォトダイオード」、「フォトセンサ読み出し回路」は、それぞれ、本願発明1における「撮像装置」、「受光部」、「第1の回路」に相当し、引用発明における「第1のトランジスタ」は、本願発明1における「第1のトランジスタ」に対応する。
また、引用発明における「前記フォトダイオード」が有する「n型の領域」、「p型の領域」、「前記フォトダイオードの一方の電極」、「前記フォトダイオードの他方の電極」は、それぞれ、本願発明1における「前記受光部」が有する「第1の領域」、「第2の領域」、「第1の電極」、「第2の電極」に相当する。

イ 引用発明において、「前記第1のトランジスタは、前記フォトダイオードの一方の電極に電気的に接続され」るから、本願発明1と引用発明とは、「前記受光部は、前記第1のトランジスタと電気的に接続され」る点で一致する。

ウ 引用発明において、「フォトセンサ部」の「フォトセンサ」が有する「前記第1のトランジスタ」は、「前記フォトダイオードによって生成された電気信号を転送する機能を有し、転送トランジスタとも呼ばれ」、「フォトセンサ制御回路」は、「フォトセンサ読み出し回路を有」するものであるところ、「転送トランジスタ」とは、「フォトセンサ読み出し回路」、すなわち、「フォトセンサで得られた電気信号の読み出し回路」に電気的に接続されるものであることは技術常識であるから、本願発明1と引用発明とは、「前記第1のトランジスタは、前記第1の回路と電気的に接続され」る点で一致する。

エ 本願発明1の「前記受光部は、第1の領域と、第2の領域と、第1の電極と、第2の電極と、を有し、前記第1の電極は、前記第1の領域上に位置し、前記第2の電極は、前記第2の領域上に位置し、前記受光部の第1の領域及び第2の領域の一方と、前記第1のトランジスタは、互いに重なる領域を有する」と、引用発明の「前記第1のトランジスタは、前記フォトダイオードの一方の電極に電気的に接続され、前記フォトダイオードの他方の電極は所望の電位とされた配線に電気的に接続され、前記フォトダイオードは、横型接合タイプのpinフォトダイオード又はpnフォトダイオードであり、半導体層を含み、前記半導体層は、n型の領域と、p型の領域と、を有し」、「前記n型の領域及び前記p型の領域の一方は、前記第1のトランジスタと重なり、前記第1のトランジスタの電極は、前記n型の領域及び前記p型の領域の前記一方に接続され、その上に位置する」とを対比する。

引用発明において、「前記第1のトランジスタは、前記フォトダイオードの一方の電極に電気的に接続され」、「前記n型の領域及び前記p型の領域の一方は、前記第1のトランジスタと重なり、前記第1のトランジスタの電極は、前記n型の領域及び前記p型の領域の前記一方に接続され」るものであるところ、「前記フォトダイオードの一方の電極」は、「前記第1のトランジスタの電極」と同一の電極であることが明らかであるから、引用発明において、「前記フォトダイオードの一方の電極」は、「前記n型の領域及び前記p型の領域の前記一方」の上に位置し、「前記n型の領域及び前記p型の領域の一方と、前記第1のトランジスタは、互いに重なる領域」を有するといえる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記受光部は、第1の領域と、第2の領域と、第1の電極と、第2の電極と、を有し、前記第1の電極は、前記第1の領域上に位置」する点で一致し、「前記受光部の第1の領域及び前記受光部の第2の領域の一方と、前記第1のトランジスタは、互いに重なる領域を有する」点で共通する。

オ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「受光部と、第1のトランジスタと、第1の回路と、を有し、
前記受光部は、前記第1のトランジスタと電気的に接続され、
前記第1のトランジスタは、前記第1の回路と電気的に接続され、
前記受光部は、第1の領域と、第2の領域と、第1の電極と、第2の電極と、を有し、
前記第1の電極は、前記第1の領域上に位置し、
前記受光部の第1の領域及び前記受光部の第2の領域の一方と、前記第1のトランジスタは、互いに重なる領域を有する撮像装置。」

<相違点>
<相違点1>
本願発明1は、「前記第2の電極は、前記第2の領域上に位置し」という構成を備えるのに対し、引用発明は、そのような構成について特定されていない点。

<相違点2>
本願発明1は、「前記受光部の第1の領域及び前記受光部の第2の領域と、前記第1のトランジスタは、互いに重なる領域を有し」という構成を備えるのに対し、引用発明は、「前記n型の領域及び前記p型の領域の一方と、前記第1のトランジスタは、互いに重なる領域」を有するといえるものの、本願発明1の上記のような構成を備えていない点。

<相違点3>
本願発明1は、「前記第1の領域と、前記第2の領域と、前記第1の電極と、前記第2の電極は、平面視において櫛歯形状を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域は、互いに噛み合うように配置され、
前記第1の電極と前記第2の電極は、互いに噛み合うように配置される」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。

引用文献1には、「フォトセンサが含む半導体層の『n型の領域』と、『p型の領域』と、『フォトダイオードの一方の電極』と、『フォトダイオードの他方の電極』」が、「平面視において櫛歯形状」を有し、「『n型の領域』と『p型の領域』」は、「互いに噛み合うように配置され」、「『フォトダイオードの一方の電極』と『フォトダイオードの他方の電極』」は、「互いに噛み合うように配置される」という構成は記載されていない。
一方、引用文献2に記載された技術的事項は、「n電極6は複数個のストライプ状AuGe膜を共通接続して櫛型状とされ、p電極7は複数個のストライプ状AuZn膜を共通接続して櫛型状とされた」ものであるから、引用文献2には、「n型領域4と、p型領域と、n電極6と、p電極7は、平面視において櫛歯形状を有し」という構成が記載されていると解される。

しかしながら、上記第4の1.のとおり、引用発明は、「イメージセンサ」に係る発明であり、上記第4の2.のとおり、引用文献2に記載された技術的事項は、「プレーナ型のモノリシックOEICから構成される光受信器」に係るものであり、両者は、「受光部」を有する点では共通し、技術分野の関連性が全くないとはいえないものの、技術分野が同一ではない。
また、上記第4の1.に摘記のとおり、引用文献1には、【発明が解決しようとする課題】として、段落【0006】には、「フォトセンサにおいて、光検出の精度を向上させることを目的の一とする。」と、段落【0007】には、「また、フォトセンサの回路構成について、新規なレイアウト又は構造を提供することを目的の一とする。特に、受光面積を広くすることを目的の一とする。」と記載されており、段落【0014】には、「受光素子が有するn層又はp層と、第1のトランジスタとが重なって形成されることで、受光素子の受光面積を大きくすることができる。そのため、受光感度を高めることができ、光検出の精度を向上させることができる。」と記載されているものの、引用文献2には、「本発明は暗電流が小さく、製造容易なモノリシ7り光受信器を提供することを目的とする。」と記載されており、引用発明と引用文献2に記載された技術的事項の課題の共通性を見いだすことはできない。

更に、引用発明において、「フォトセンサ」が有する「前記フォトダイオード」は、「『横型接合タイプ』のpinフォトダイオード又はpnフォトダイオードであり、半導体層を含み、前記半導体層は、n型の領域と、p型の領域と、を有し」という構成を有するものであり、また、引用文献1の段落【0050】に記載され、図19に示されるように、半導体膜1005は、p層1021と、i層1022と、n層1023とを有している。
一方、引用文献2に記載された技術的事項の「P^(+ )PN^(+ )型(PIN型と考えてよい)のPD」は、第1図に示されるように、光吸収層とされるp型(I型と考えてよい)の「第1の層2」の上に、「n型領域4およびp型領域5」が貫通するp型の「第2の層3」が積層され、「第2の層3表面に接合型のダイオード」が形成されており、すなわち、PDの「P^(+ )PN^(+ )型(PIN型と考えてよい)」のP型領域、I型領域、N型領域は、それぞれp型領域5、第1の層2、n型領域4からなるものであり、光吸収層とされ、I型と考えてよい第1の層2は、p型領域5とn型領域4が貫通する第2の層3とは別の層であり、PIN型構造は、横型ではない。

以上のとおりであるから、引用発明に、引用文献2に記載された技術的事項を適用する動機付けを見いだすことはできない。
よって、本願発明1は、相違点1、2について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5も、本願発明1の「前記第1の領域と、前記第2の領域と、前記第1の電極と、前記第2の電極は、平面視において櫛歯形状を有し、前記第1の領域と前記第2の領域は、互いに噛み合うように配置され、前記第1の電極と前記第2の電極は、互いに噛み合うように配置される」という構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
原査定の概要は、上記第2の2.のとおりであるところ、本願発明1ないし5は、「前記第1の領域と、前記第2の領域と、前記第1の電極と、前記第2の電極は、平面視において櫛歯形状を有し、前記第1の領域と前記第2の領域は、互いに噛み合うように配置され、前記第1の電極と前記第2の電極は、互いに噛み合うように配置される」という構成を有するものであり、上記のとおり、本願発明1ないし5は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また、引用文献3、4にも本願発明1の「前記第1の領域と、前記第2の領域と、前記第1の電極と、前記第2の電極は、平面視において櫛歯形状を有し、前記第1の領域と前記第2の領域は、互いに噛み合うように配置され、前記第1の電極と前記第2の電極は、互いに噛み合うように配置される」という構成について、記載も示唆もされていない。
よって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-01-27 
出願番号 特願2015-48532(P2015-48532)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴山 将隆  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 小田 浩
恩田 春香
発明の名称 撮像装置  

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