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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1370823
審判番号 不服2019-14263  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-25 
確定日 2021-02-03 
事件の表示 特願2017-549369「マルチセル発光ダイオードを用いたバックライトユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月29日国際公開、WO2016/209025、平成30年 9月27日国内公表、特表2018-528598〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)6月24日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年(平成27年)6月26日、韓国、パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年(平成27年)7月3日、韓国、パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年(平成27年)7月16日、韓国、パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年(平成27年)7月22日、韓国、パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年(平成27年)7月30日、韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成29年12月27日 手続補正書の提出
平成30年12月14日付け 拒絶理由通知
平成31年 4月15日 意見書・手続補正書の提出
令和 元年 6月18日付け 拒絶査定
令和 元年10月25日 本件審判請求・手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?17に係る発明は、令和元年10月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「 【請求項1】
複数のブロック、及び前記複数のブロック上に配置される複数のMJT LED(multi junction technology light emitting diode)を含む印刷回路基板;
前記各ブロックの駆動制御のための信号を生成するバックライト制御モジュールを含むバックライトモジュール;
駆動IC;
複数のFET(field effect transistors);及び
前記駆動ICに配置され、前記複数のFETのオン/オフ機能を制御するFET制御部を含み、
前記各ブロックは少なくとも一つのMJT LEDを含み、
前記バックライト制御モジュールは、前記各ブロックのオン/オフ制御及びディミング制御のための駆動制御部を含み、
前記各MJT LEDは、
単一の成長基板上に互いに離隔して整列され、第1発光セル及び第2発光セルを含む複数の発光セルを含み、前記各発光セルは、下部半導体層、前記下部半導体層上に位置する上部半導体層、及び前記下部半導体層と前記上部半導体層との間に位置する活性層を含み、
前記第1発光セル上に位置し、前記第1発光セルと電気的に接続される反射層;
前記第1発光セルを前記第2発光セルと電気的に接続する上部電極;
前記第1発光セルの側面から前記上部電極を絶縁させる第1絶縁層;及び
前記上部電極上に整列される第1パッド及び第2パッド;を含み、
前記複数の発光セルは互いに直列に接続され、
前記第1パッドは入力発光セルに電気的に接続され、前記第2パッドは出力発光セルに電気的に接続され、 前記複数のFETの個数は前記ブロックの個数と同一であり、
前記FET制御部は、前記複数のFETのオン/オフ制御を通じて前記各ブロックのオン/オフ機能を制御し、
前記駆動ICは、前記複数のFETのうち少なくとも一つを含む、
バックライトユニット。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1:特開2009-204825号公報
引用文献2:特開2013-16706号公報
引用文献3:国際公開第2012/046496号
引用文献4:特開2014-157948号公報

第4 引用文献の記載、及び、引用発明の認定
(1)引用文献1:特開2009-204825号公報

(ア)
原査定において引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2009-204825号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審で付加。以下同様。)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLED(Light Emitting Diode)ライトを有するバックライトと、前記LEDライトからの光の透過率を変えることで階調を表現する画素の集合でなる表示領域を有する表示パネルと、それぞれの前記画素の階調を制御する第1の制御手段と、それぞれの前記LEDライトの明るさを制御する第2の制御手段とを有し、前記複数のLEDライトは、前記表示パネルの前記表示領域と重畳する領域に配置されている表示装置であって、
前記表示装置の周辺の照度を測定する照度測定手段を有し、
前記第2の制御手段は、前記照度測定手段で測定した照度があらかじめ定められた値よりも高い場合は、すべての前記LEDライトの明るさを同じ明るさに決定し、前記照度測定手段で測定した照度があらかじめ定められた値よりも低い場合は、前記第1の制御手段によって制御された前記画素の階調に基づいてそれぞれの前記LEDライトの明るさを決定することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記バックライトは、前記表示パネルの前記表示領域と重畳する領域を複数のブロックに分割し、複数の前記ブロックのそれぞれに1つ以上の前記LEDライトを配置してなり、
前記第2の制御手段は、前記照度測定手段で測定した照度があらかじめ定められた値よりも低い場合、前記ブロックごとに、前記表示領域のうちの前記ブロックと重畳する部分領域に含まれる前記画素の階調の平均値に基づいてそれぞれの前記LEDライトの明るさを決定することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記LEDライトの明るさは、前記LEDライトに加える電流の大きさによって制御されることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、LEDライトがマトリクス状に配置された直下型のバックライトを有する液晶表示装置に適用して有効な技術に関するものである。」

「【0004】
また、前記LEDバックライトは、前記液晶表示パネルの表示領域と重畳する領域に、複数の前記LEDライトがマトリクス状に配置されており、それぞれの前記LEDライトの明るさ(輝度)は、加える電流の大きさによって制御される。そのため、前記LEDバックライトを有する液晶表示装置は、たとえば、ローカルディミングまたは単にディミングと呼ばれる局所的な輝度制御(以下、ローカルディミング制御という。)が容易であるという利点もある。
【0005】
前記ローカルディミング制御は、たとえば、前記LEDバックライトの前記表示領域と重畳する領域を複数のブロックに分割し、複数の前記ブロックの輝度を、前記ブロックごとに独立して制御する方法である(たとえば、特許文献1を参照。)。このとき、前記LEDバックライトは、複数の前記ブロックのそれぞれに1つ以上の前記LEDライトを配置しておく。またこのとき、それぞれの前記ブロックの輝度は、たとえば、前記表示領域の前記ブロックと重畳する部分領域に含まれる画素の階調の平均値に基づいて決定する。そして、決定した輝度が高いブロックの前記LEDライトには大きな電流を加え、決定した輝度が低いブロックの前記LEDライトには小さな電流を加えることで、ブロックごとに輝度を制御する。」

「【0022】
本発明に関わる液晶表示装置は、たとえば、図1(a)に示すように、液晶表示パネル1と直下型のLEDバックライト2とを有する。LEDバックライト2は、液晶表示パネル1の表示領域DAと重畳する領域RAに、複数のLEDライト(図示しない)がマトリクス状に配置されている。このとき、LEDバックライト2の領域RAは、たとえば、x方向の寸法がBx、y方向の寸法がByの36個のブロックQ_(ij)(1≦i≦6,1≦j≦6)に分割されており、それぞれのブロックQ_(ij)には、1個または複数個のLEDライトが配置されている。なお、図1(a)では、LEDバックライト2の領域RAを36個のブロックQ_(ij)に分割しているが、他の個数のブロックに分割してもよいことはもちろんである。
【0023】
また、1個の前記LEDライトは、たとえば、赤色発光のLEDチップ、緑色発光のLEDチップ、および青色発光のLEDチップを有する1つの発光部品であり、各LEDチップのアノードとカソードの間に電流を流すことで白色発光するライトである。また、前記1個の前記LEDライトは、たとえば、赤色発光のLEDチップを有する1つの発光部品、緑色発光のLEDチップを有する1つの発光部品、および青色発光のLEDチップを有する1つの発光部品の3つの発光部品を接続して一体化したものであってもよい。またさらに、1個の前記LEDライトは、たとえば、青色発光のLEDチップまたは近紫外発光のLEDチップと蛍光体とにより白色光を得る1つの発光部品であってもよい。
【0024】
前記LEDライトは、加える電流の大きさを変えることで明るさ(輝度)を制御できる。そのため、LEDバックライト2の領域RAをブロックQ_(ij)に分割した場合、たとえば、ブロックQ_(ij)ごとに、含まれるLEDライトに加える電流の大きさを変えることで、それぞれのブロックQ_(ij)の輝度を変えることができる。このとき、ブロックQ_(ij)から出射した光は、それぞれ、液晶表示パネル1の表示領域DAの部分領域P_(ij)に照射される。そのため、表示領域DAの部分領域P_(ij)のうちの、階調が低い画素が多い部分領域Pに光を照射するブロックQの輝度を低くし、階調が高い画素が多い部分領域P’に光を照射するブロックQ’の輝度を高くすると、表示領域DAに表示された映像または画像の局所的なコントラスト感を高めることができる。これが、ローカルディミング制御の原理である。」

「【実施例】
【0032】
図3(a)および図3(b)は、本発明による一実施例の液晶表示装置の概略構成を示す模式図である。
図3(a)は、本実施例の液晶表示装置の概略構成の一例を示す模式ブロック図である。図3(b)は、図3(a)のLED制御手段の概略構成の一例を示す模式ブロック図である。
【0033】
本実施例の液晶表示装置は、たとえば、図3(a)に示すように、液晶表示パネル1、LEDバックライト2、データドライバ3、走査ドライバ4、LED制御手段5、タイミングコントローラ6、および照度センサ7を有する。
【0034】
液晶表示パネル1は、透過型または半透過型の液晶表示パネルであり、たとえば、複数本の走査信号線GLと複数本の映像信号線DLを有する。このとき、液晶表示パネル1の表示領域DAは、たとえば、最も外側に配置された2本の走査信号線GLと、最も外側に配置された2本の映像信号線DLとで囲まれる領域に相当する。またこのとき、表示領域DAにおいて1つの画素が占有する領域は、隣接する2本の走査信号線GLと隣接する2本の映像信号線DLとで囲まれた領域に相当し、それぞれの画素が占有する領域には、たとえば、TFT素子、画素電極、および対向電極などが配置されている。
【0035】
なお、本実施例の液晶表示装置における液晶表示パネル1は、透過型または半透過型の液晶表示パネルであればよく、それぞれの画素の構成は、たとえば、従来の透過型または半透過型の液晶表示パネルにおける画素の構成と同じでよい。すなわち、それぞれの画素の構成は、たとえば、画素電極と対向電極との電位差により液晶分子の配向を制御して光の透過率を変えることで階調を表現できる構成であれば、どのような構成であってもよい。そのため、本実施例では、液晶表示パネル1における画素の構成などの詳細な説明を省略する。
【0036】
LEDバックライト2は、ローカルディミング制御が可能なバックライトであり、表示領域DAと重畳する領域に、複数のLEDライト201がマトリクス状に配置されている。このとき、それぞれのLEDライト201は、明るさ(輝度)の制御を独立して行えるようになっている。なお、1つのLEDライト201は、1個のLEDライトであってもよいし、複数個のLEDライトが直列または並列に接続されたLEDライト群であってもよい。
【0037】
データドライバ3は、たとえば、液晶表示パネル1の映像信号線DLに加える映像信号(階調信号)を生成する駆動回路である。
【0038】
走査ドライバ4は、たとえば、液晶表示パネル1の走査信号線GLに加える走査信号を生成する駆動回路である。
【0039】
LED制御手段5は、それぞれのLEDライト201の明るさ、すなわちそれぞれのLEDライト201に加える電流の大きさを制御する制御回路である。
・・・(中略)・・・
【0042】
また、LED制御手段5は、たとえば、図3(b)に示すように、LD制御判定手段501、電流値決定手段502、階調-電流対応データ503、および電流印加手段504とを有する。
・・・(中略)・・・
【0046】
電流印加手段504は、電流値決定手段502で決定したそれぞれのLEDライト201に加える電流の大きさに基づき、たとえば、タイミングコントローラ5からの電力I_(1)を利用して、それぞれのLEDライト201に加える電流I_(2)(電力)を生成し、それぞれのLEDライト201に供給する。」

(イ)
図1(a)、図1(b)、図3(a)、図3(b)は以下のものである。



以上の記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「複数のLED(Light Emitting Diode)ライトを有するバックライトと、前記LEDライトからの光の透過率を変えることで階調を表現する画素の集合でなる表示領域を有する表示パネルと、それぞれの前記画素の階調を制御する第1の制御手段と、それぞれの前記LEDライトの明るさを制御する第2の制御手段とを有し、前記複数のLEDライトは、前記表示パネルの前記表示領域と重畳する領域に配置されている表示装置であって、
前記表示装置の周辺の照度を測定する照度測定手段を有し、
前記第2の制御手段は、前記照度測定手段で測定した照度があらかじめ定められた値よりも高い場合は、すべての前記LEDライトの明るさを同じ明るさに決定し、前記照度測定手段で測定した照度があらかじめ定められた値よりも低い場合は、前記第1の制御手段によって制御された前記画素の階調に基づいてそれぞれの前記LEDライトの明るさを決定し、(【請求項1】)
前記バックライトは、前記表示パネルの前記表示領域と重畳する領域を複数のブロックに分割し、複数の前記ブロックのそれぞれに1つ以上の前記LEDライトを配置してなり、
前記第2の制御手段は、前記照度測定手段で測定した照度があらかじめ定められた値よりも低い場合、前記ブロックごとに、前記表示領域のうちの前記ブロックと重畳する部分領域に含まれる前記画素の階調の平均値に基づいてそれぞれの前記LEDライトの明るさを決定し、(【請求項2】)
前記LEDライトの明るさは、前記LEDライトに加える電流の大きさによって制御され、(【請求項3】)
1つのLEDライト201は、複数個のLEDライトが直列に接続されたLEDライト群であり、(【0036】)
LED制御手段5は、それぞれのLEDライト201の明るさ、すなわちそれぞれのLEDライト201に加える電流の大きさを制御する制御回路である(【0039】)
表示装置。」

(2)引用文献2:特開2013-16706号公報

原査定において引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2013-16706号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、LED用絶縁反射基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(以下、LEDという)を備えた光源モジュール用プリント回路基板が、例えば液晶TVなどの表示装置のバックライト用光源モジュールに好適に使用されている。」

(3)引用文献3:国際公開第2012/046496号
原査定において引用され、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である国際公開第2012/046496号(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。

「本発明は、光源ユニット、該光源ユニットを備えるバックライトユニット、及び該バックライトユニットを備える薄型ディスプレイ装置に関する。」(第1頁第1-2行)
「なお、本第1の実施形態においては、ローカルディミングを採用する光源ユニット100は、光源グループ毎にON、OFF制御するように構成されている。より具体的には、1個の光源110からなる5つの光源グループP、Q、R、S、Tで1つの光源ユニット100が構成されると共に、光源グループP、Q、R、S、T毎にON、OFF制御される。しかしながら、必ずしもこのような構成に限るものではない。」(第13頁第25-第14頁第2行)

(4)引用文献4:特開2014-157948号公報

原査定において引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2014-157948号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を積層した半導体発光層が形成された半導体発光素子及び該半導体発光素子を備える発光装置に関する。」

「【0025】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は実施の形態1の半導体発光素子の断面構造の一例を示す断面図であり、図2は実施の形態1の半導体発光素子の平面構造の一例を示す模式図である。なお、図1は半導体発光素子の断面構造を便宜的に示すものであり、実際の寸法を正確に表すものではない。
【0026】
本実施の形態の半導体発光素子(以下、「LEDチップ」、「発光素子」ともいう。)は、複数の発光素子が形成されたウエハを所定の寸法で直方体状に切断して各発光素子を分離したものであり、例えば、LEDチップである。図1及び図2において、1はサファイア基板である。サファイア基板1(以下、「基板」という。)は平面視が矩形状であって、光透光性を有し、縦横寸法は、例えば、500μm×1000μmである。なお、寸法はこれに限定されるものではない。
【0027】
図1に示すように、半導体発光素子は、基板1の一面にn型半導体層2、活性層(不図示)及びp型半導体層3を積層した半導体発光層(LED構造)を相互に分離して2つ形成してある。それぞれの半導体発光層を第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)と称する。
【0028】
各半導体発光層は、基板1上に、AlNバッファ層(不図示)、約1μmの厚みのアンドープGaN層(不図示)、n型半導体層2、活性層(不図示)、p型半導体層3がこの順に積層してある。n型半導体層2は、例えば、約1μm程度のn-GaN(窒化ガリウム)層、n-AlGaInNクラッド層などから成る。また、活性層は、GaN/InGaN-MQW(Multi-quantum Well、多重量子井戸層)型活性層などから成る。また、p型半導体層3は、p-AlGaInN層、約0.2μm程度のp-GaN層、コンタクト層としてのp-InGaN層などから成る。なお、アンドープGaN層を形成しない構成であってもよい。
【0029】
半導体発光層の活性層は発光面に相当する領域であり、半導体発光層で発生する熱も活性層及び活性層の近傍の領域が最も多い。本実施の形態では、発光面又は放熱部分としての半導体発光層は、例えば、n型半導体層2、活性層(不図示)及びp型半導体層3が重畳する領域であり、平面視では図2の符号31、32で示す領域である。
【0030】
各半導体発光層のp型半導体層3の表面には、電流拡散層4を形成してある。電流拡散層4は、例えば、導電性の透明膜であるITO膜(インジウム錫酸化膜)である。
【0031】
各半導体発光層の電流拡散層4の表面には、p型の反射膜5を形成してある。反射膜5は、Ag合金等からなり、例えば、250nm程度の膜厚を有する。なお、反射膜5の膜厚は250nmに限定されない。
【0032】
図1に示すように、第1の半導体発光層(図1の右側のLED構造)の反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2が露出している部分には、後述の第1の電極7との絶縁を確保するとともに、反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2を保護するための保護膜9を形成してある。保護膜9は、例えば、SiO_(2 )膜などである。
【0033】
図1に示すように、第2の半導体発光層(図1の左側のLED構造)の反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2が露出している部分には、後述の第2の電極8との接続面を除いて、反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2を保護するための保護膜9を形成してある。
【0034】
第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)は、配線層6により接続されている。配線層6は、例えば、真空蒸着によりCr/Ni/Auを成膜し、リフトオフ法でパターニングを行うことで形成することができる。
【0035】
図1に示すように、配線層6は、第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)を直列に接続、すなわち、2個のLEDを直列に接続した構造とするように形成されている。なお、配線層6を適宜形成することにより、第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)を並列に接続してもよく、あるいは第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)を逆並列に接続してもよい。
【0036】
図1に示すように、第1の半導体発光層(図1の右側のLED構造)上には、n型半導体層2に接続された第1の電極7を形成してある。また、第2の半導体発光層(図1の左側のLED構造)上には、反射膜5及び電流拡散層4を介してp型半導体層3に接続された第2の電極8を形成してある。
【0037】
第1の電極7及び第2の電極8は、半導体発光素子を実装する実装基板との接合に用いる半田(例えば、Pbフリー半田)が接合される接合面となる。
【0038】
なお、第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)との間に配線層6を形成することにより、第1の電極7及び第2の電極8の間には、直列接続された2個のLEDを形成してある。なお、配線層6を適宜形成することにより、第1の電極7及び第2の電極8の間に並列接続された2個のLED、あるいは逆並列された2個のLEDを形成することもできる。
【0039】
第1の電極7及び第2の電極8の半田接続面を除く部分は、保護膜10を成膜してある。保護膜10は、例えば、SiO_(2 )膜などである。」


図1は以下のものである。



「保護膜9」について、「反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2を保護するための保護膜9を形成し」、「保護膜9は、例えば、SiO_(2 )膜などである。」(【0032】)と記載されており、図1を参照すると、「配線層6」と「第1の半導体発光層(図1の右側のLED構造)」の「p型半導体層3及びn型半導体層2」とは、「保護膜9」を挟んで形成されており、「保護膜9」は「p型半導体層3及びn型半導体層2」の側面から、「配線層6」を絶縁させるものであることが理解できる。


以上をまとめると、引用文献4の(実施の形態1)及び図1には、次の技術事項(以下「引4技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「半導体発光素子(以下、「LEDチップ」、「発光素子」ともいう。)(【0026】)は、
基板1の一面にn型半導体層2、活性層及びp型半導体層3を積層した半導体発光層(LED構造)を相互に分離して2つ形成してあり、(【0027】)
各半導体発光層は、基板1上に、n型半導体層2、活性層、p型半導体層3がこの順に積層してあり、(【0028】)
各半導体発光層のp型半導体層3の表面には、電流拡散層4を形成してあり、電流拡散層4は、例えば、導電性の透明膜であるITO膜(インジウム錫酸化膜)であり、(【0030】)
各半導体発光層の電流拡散層4の表面には、p型の反射膜5を形成してあり、反射膜5は、Ag合金等からなり、(【0031】)
第1の半導体発光層の反射膜5、電流拡散層4、p型半導体層3及びn型半導体層2が露出している部分には、保護膜9を形成してあり、保護膜9は、例えば、SiO_(2 )膜であり(【0032】)
第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)は、配線層6により接続されており(【0034】)
配線層6は、第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)を直列に接続、すなわち、2個のLEDを直列に接続した構造とするように形成されており、【0035】
第1の電極7及び第2の電極8の半田接続面を除く部分は、保護膜10を成膜してあり、保護膜10は、例えば、SiO_(2 )膜などであり【0039】
保護膜9は、p型半導体層3及びn型半導体層2の側面から、配線層6を絶縁させるものである(上記ウ)
半導体発光素子。」

(5)引用文献5:特開2010-267481号公報

本願の優先日前に国内において頒布された特開2010-267481号公報(以下「引用文献5」という。)には、第3図とともに以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、直列接続された発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を直列接続したLEDチェーンを複数有するバックライトモジュールと、複数のLEDチェーンを駆動するバックライト駆動ICを有するバックライト装置、および、バックライト装置と、光源からの光の透過率を調整することで映像の表示を行う表示パネルを有する表示装置に関する。」

「【0026】
図3は本実施例における、バックライト駆動部105とバックライトモジュール100の接続形態を表した図である。
【0027】
バックライトモジュール100には、複数のLED101が格子状に配置されている。
本実施例では、複数個のLED101が直列に接続されたLEDチェーン116と、LEDチェーン116の最終段のLEDのカソード端子側に直列接続された抵抗素子115とでLEDチェーン116と抵抗素子115の直列回路が構成される。なお、抵抗素子115はLEDチェーン116の先頭(初段)である入力端子側のアノード端子側に接続してもよい。ここで、抵抗素子115の抵抗値は最小で0Ωを接続可能な構造とする。LEDチェーン116は、バックライトモジュール100内に、並列に複数個、配置され、LEDチェーン116の入力側(初段側)は、全て短絡して、電源回路110に接続され、電源電圧106が供給される。各LEDチェーン116の出力端側(最終段側)は、それぞれ、バックライト駆動IC111に入力される。
【0028】
バックライト駆動部105は、LED101に対して電源電圧106を供給する電源回路110と、各LEDチェーン116の出力端子が接続されるバックライト駆動IC111を備える。各LEDチェーン116の出力端子は、それぞれ、FETスイッチ113のドレイン端子に接続され、FET113のソース端子はGNDに接地される。FETスイッチ113のゲート端子114には、パルス幅変調制御を行うPWM制御部112に接続される。パルス幅変調とは、LEDチェーン116に対して、電流を供給する期間を制御することである。LED101の発光量は、LED101に流れる電流値と電流が流れる時間に比例するため、パルス幅変調により、電流供給時間を制御することで、発光量を制御可能である。
【0029】
バックライト駆動IC111には、このFETスイッチ113が複数個配置され、各LEDチェーン116に接続される。PWM制御部112は、各LEDチェーン116のパルス幅変調を個別制御することで、LEDチェーン116毎のエリア調光を実現する。」


図3は以下のものである。



以上をまとめると、引用文献5の【0026】-【0029】及び図3には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「電源回路110に、複数のLED101からなるLEDチェーン116と、FET113とを直列に接続し、FETスイッチ113のゲート端子114は、PWM制御部112に接続され(【図3】)、パルス幅変調は、LEDチェーン116に対して、電流を供給する期間を制御することであり、LED101の発光量は、LED101に流れる電流値と電流が流れる時間に比例するため、パルス幅変調により、電流供給時間を制御することで、発光量を制御可能である、【0028】
バックライト制御回路。」

(6)引用文献6:特開2008-304694号公報

本願の優先日前に国内において頒布された特開2008-304694号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED:LightEmitting Diode)を光源とする内照式看板に関するものであり、特に、LED照明光のグラデーション調整に特徴を有する内照式看板に関する。」

「【0014】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る内照式看板に内蔵するLEDモジュール11の模式的回路構成図を示す。
【0015】
本発明の第1の実施の形態に係る内照式看板に内蔵するLEDモジュール11は、図1に示すように、電源電圧Vccと接地電位との間に直列接続された複数のLED1,LED2,LED3と、トランジスタQD1とを備える。トランジスタQD1のベースには、後述するマイクロコンピュータ26からの制御信号V_(CTL1)が入力される。図1に示すように、電源電圧Vccと接地電位との間に直列接続された複数のLED1,LED2,LED3とトランジスタQD1との間には、過電流保護用の抵抗R1が接続されていてもよい。
【0016】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る内照式看板に内蔵する複数のLEDモジュールおよび制御系の模式的回路構成図を示す。
【0017】
図2において、各LEDモジュール11は、直列接続された1個のLED列と1個のトランジスタで構成される例が示されている。また、制御系は、電源電圧Vccを供給する電源100と、電源100に接続されたマイクロコンピュータ26によって構成される。
【0018】
複数のLEDモジュール11は、電源電圧Vccと接地電位との間に並列に接続されている。各LEDモジュール11内の各トランジスタQD1,QD2,…のベースには、マイクロコンピュータ26から制御信号が供給される。すなわち、図2の回路構成では、各LEDモジュール11に直接パルス電圧が印加されるのではなく、マイクロコンピュータ26からの制御信号によってLEDモジュールに内蔵されたトランジスタを駆動することによって、各LEDモジュール11が駆動されている。
【0019】
図3(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る内照式看板において、内蔵するLEDモジュールの明るさとオンデューティ比との関係を示す模式図であり、図3(b)は、4個のLEDモジュール11の積層構成と、各LEDモジュール11のオンデューティ比と明るさとの関係を示す。
【0020】
本発明の第1の実施の形態に係る内照式看板においては、図3(a)に示すように、各トランジスタのベースにマイクロコンピュータ26から供給される制御信号を、例えば、パルス幅変調(PWM:PulseWidth Modulation)制御信号とすることによって、オンデューティが0%?100%の範囲で可変にすることができる。或いはまた、パルス数変調(PNM:PulseNumber Modulation)制御信号とすることによっても、オンデューティが0%?100%の範囲で可変にすることができる。
【0021】
マイクロコンピュータ26から供給される制御信号は、例えば、0V?約5V程度のパルス電圧波形であり、発振周波数は人の目でちらつきが感じられない、例えば、1kHzとする。このパルス電圧波形のオンデューティを0?100%に可変にすることによって、明るさを0?100%に調光することが可能である。また、マイクロコンピュータ26の出力ポート数を増やすことにより、1つのマイクロコンピュータ26で、複数のLEDモジュール11を制御することができる。」

「【0037】
例えば、図2のバイポーラトランジスタQD1,QD2…に代えて、MOS(MetalOxide Semiconductor)型、MIS(Metal InsulatorSemiconductor)型などの電界効果トランジスタ(FET:Field EffectTransistor)用いてもよい。また、図2の抵抗R1,R2に代えて、定電流源を用いてもよい。」


図2は、以下のものである。


以上をまとめると、引用文献6には次の技術事項が記載されている。
「電源電圧Vccと接地電位との間に直列接続された複数のLED1,LED2,LED3と、トランジスタQD1とを備え、トランジスタQD1のベースには、マイクロコンピュータ26からの制御信号V_(CTL1)が入力され(【0015】)、バイポーラトランジスタQD1,QD2…に代えて、MOS(Metal Oxide Semiconductor)型の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を用いてもよい(【0037】)、パルス電圧波形のオンデューティを0?100%に可変にすることによって、明るさを0?100%に調光することが可能な、LEDの明るさ制御回路。(【0021】)」


(7)引用文献7:特開2008-96902号公報

本願の優先日前に国内において頒布された特開2008-96902号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を表示するための透過型の表示部に光を照射する発光装置およびそれを備えた映像表示装置に関するものである。」

「【0027】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る映像表示装置の外観図である。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る映像表示装置の構成を示す図である。
【0028】
図1および図2を参照して、映像表示装置1は、液晶パネル12と、バックライト装置(発光装置)2と、映像回路部11と、電源部13とを備える。バックライト装置2は、光源部51と、駆動部22と、拡散板23とを含む。
・・・(中略)・・・
【0030】
光源部51は、液晶パネル12の映像表示面の裏側に配置される。光源部51は、光源回路21a?24aおよび21b?24bを含む。光源回路21a?24aおよび21b?24bは、それぞれLED基板(発光素子用基板)212a1?212a4および212b1?212b4を含む。LED基板212a1?212a4および212b1?212b4は、直列接続された5個のLED(発光素子)211が直線状に実装(配置)される矩形状の基板である。LED211はたとえば白色LEDである。LED基板212a1?212a4および212b1?212b4は、LED211の配置方向が液晶パネル12の行方向と略平行になるように液晶パネル12の列方向に並列に配置される。なお、図1では、簡単のためにLED基板212a4および212b4は示していない。以下、LED基板212a1?212a4および212b1?212b4をLED基板212と総称する場合がある。また、光源回路21a?24aで構成されるグループをグループaと呼び、光源回路21b?24bで構成されるグループをグループbと呼ぶ。
・・・(中略)・・・
【0035】
図2を参照して、映像表示装置1は、映像回路部11と、透過型の液晶パネル12と、バックライト装置2と、ソースドライバ121と、ゲートドライバ122と、電源部13とを備える。映像回路部11は、映像信号入力端子111と、画像処理部112と、タイミングコントローラ(T-CON)113とを含む。バックライト装置2は、タイミング生成部(制御部)14と、光源部51と、駆動部22とを含む。光源部51は、光源回路21a?24aおよび21b?24bを含む。駆動部22は、発光制御スイッチSW21a?SW24aおよびSW21b?SW24bと、LED駆動IC(Integrated Circuit)61および62とを含む。LED駆動IC61および62は、それぞれ、出力端子T1?T4と、定電流回路K1?K4とを含む。定電流回路K1およびK2は、駆動回路部DV1を構成し、定電流回路K3およびK4は、駆動回路部DV2を構成する。」

「【0052】
発光制御スイッチSW21a?SW24aおよびSW21b?SW24bは、LED基板212と定電流回路とを接続する経路の途中に設けられる。発光制御スイッチSW21a?SW24aおよびSW21b?SW24bは、外部から受けた電圧に基づいて端子間の導通および非導通が切り替え可能なスイッチであり、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)およびバイポーラトランジスタ等の能動素子で実現される。発光制御スイッチSW21a?SW24aおよびSW21b?SW24bは、それぞれタイミング生成部14から受けた発光制御信号CONTAおよびCONTBに基づいてオン状態およびオフ状態を切り替えることにより、駆動回路部から光源回路21a?24aおよび21b?24bにおけるLED211へそれぞれ電流を供給するか否かを切り替える。
【0053】
図3は、タイミング生成部14の構成を示す機能ブロック図である。
図3を参照して、タイミング生成部14は、クロック生成部141と、カウンタ142と、鋸波発生器143と、単極双投(single pole double transfer)スイッチ144と、コンパレータ145および146とを含む。」

「【0072】
また、本発明の第1の実施の形態に係るバックライト装置では、タイミング生成部14は、1フィールド期間を分割した複数個の発光期間の長さをそれぞれ設定する。すなわち、タイミング生成部14におけるコンパレータ145および146が用いる設定値VCOMP1およびVCOMP2を変更することにより、発光制御信号CONTAのパルス幅t1および発光制御信号CONTBのパルス幅t2を調整し、バックライト装置の輝度を任意に変更することができる。ここで、バックライト装置の輝度は、映像信号および周囲環境その他の条件に応じて手動もしくは自動で調整する。たとえば周囲環境が暗い場合にはバックライト装置の輝度を下げ、明るい色が多く含まれる映像信号を表示する場合にはバックライト装置の輝度を高くすることができる。」


図2は、以下のものである。


以上をまとめると、引用文献7には次の技術事項が記載されている。

「電源部13に、直列接続された5個のLED(発光素子)211と、発光制御スイッチSW21a?SW24aおよびSW21b?SW24bとを、直列に接続し(【図2】)、発光制御スイッチSW21a?SW24aおよびSW21b?SW24bは、外部から受けた電圧に基づいて端子間の導通および非導通が切り替え可能なスイッチであり、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)およびバイポーラトランジスタ等の能動素子で実現される(【0052】)、発光制御信号CONTAのパルス幅t1および発光制御信号CONTBのパルス幅t2を調整し、バックライト装置の輝度を任意に変更するバックライト装置の輝度を調整する制御回路。(【0072】)

第5 当審の判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。

本願発明の「複数のブロック、及び前記複数のブロック上に配置される複数のMJT LED(multi junction technology light emitting diode)を含む印刷回路基板;」との特定事項について
(ア)
引用発明は「バックライトは、前記表示パネルの前記表示領域と重畳する領域を複数のブロックに分割し、複数の前記ブロックのそれぞれに1つ以上の前記LEDライトを配置してな」るものである。ここで、引用発明の「複数のブロック」は、本願発明の「複数のブロック」に相当する。また、引用発明の「LEDライト」は、本願発明の「LED」に相当する。また、引用発明の「LEDライト」は「複数の前記ブロックのそれぞれに1つ以上」「配置してな」るから、「バックライト」上に複数備えられている。
(イ)
したがって、引用発明の「バックライト」は、本願発明の上記特定事項と、「複数のブロック、及び前記複数のブロック上に配置される複数のLEDを含む」点で共通する。


本願発明の「前記各ブロックの駆動制御のための信号を生成するバックライト制御モジュールを含むバックライトモジュール;」との特定事項について
(ア)
引用発明は、「複数のブロックのそれぞれに」配置された「1つ以上のLEDライト」について、「それぞれのLEDライトの明るさを制御する第2の制御手段」を備えており、引用発明の「第2の制御手段」は、各ブロックの駆動制御(明るさ制御)のための信号を生成しているから、本願発明の「バックライト制御モジュール」に相当する。
(イ)
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項と「ブロックの駆動制御のための信号を生成するバックライト制御モジュール」を備える点で一致する。


本願発明の「駆動IC; 複数のFET(field effect transistors);及び前記駆動ICに配置され、前記複数のFETのオン/オフ機能を制御するFET制御部を含み、」との特定事項について、引用発明は、これらの特定事項を備えていない。


本願発明の「前記各ブロックは少なくとも一つのMJT LEDを含み、」との特定事項について
(ア)
上記アで示したとおり、引用発明の「LEDライト」は「複数の前記ブロックのそれぞれに1つ以上」「配置してな」るものである。
(イ)
したがって、本願発明と引用発明は、「各ブロックは少なくとも一つのLEDを含」む点で共通する。


本願発明の「前記バックライト制御モジュールは、前記各ブロックのオン/オフ制御及びディミング制御のための駆動制御部を含み、」との特定事項について
(ア)
引用発明の「第2の制御手段」は「それぞれのLEDライトの明るさを制御」しているところ、「ブロックごとに、表示領域のうちのブロックと重畳する部分領域に含まれる画素の階調の平均値に基づいてそれぞれのLEDライトの明るさを決定」しており、これは引用文献1の【0005】にも記載されているとおり「ディミング制御」である。
(イ)
したがって、引用発明の「第2の制御手段」は、本願発明の上記特定事項と「バックライト制御モジュールは、各ブロックのディミング制御のための駆動制御部を含み」で共通する。


本願発明の「前記各MJT LEDは、
単一の成長基板上に互いに離隔して整列され、第1発光セル及び第2発光セルを含む複数の発光セルを含み、前記各発光セルは、下部半導体層、前記下部半導体層上に位置する上部半導体層、及び前記下部半導体層と前記上部半導体層との間に位置する活性層を含み、
前記第1発光セル上に位置し、前記第1発光セルと電気的に接続される反射層;
前記第1発光セルを前記第2発光セルと電気的に接続する上部電極;
前記第1発光セルの側面から前記上部電極を絶縁させる第1絶縁層;及び
前記上部電極上に整列される第1パッド及び第2パッド;を含み、
前記複数の発光セルは互いに直列に接続され、
前記第1パッドは入力発光セルに電気的に接続され、前記第2パッドは出力発光セルに電気的に接続され、」との特定事項について
(ア)
引用発明において「1つのLEDライト201」は、「複数個のLEDライトが直列に接続されたLEDライト群」であることが特定されている。
また、各「LEDライト」は、LEDであるから、「n型半導体層」と、「p型半導体層」と、「n型半導体層とp型半導体層との間に位置する活性層」を備えるものである。
そうすると、引用発明の各「LEDライト」における「n型半導体層」、「p型半導体層」、「n型半導体層とp型半導体層との間に位置する活性層」は、それぞれ、本願発明の「発光セル」における「下部半導体層」、「下部半導体層上に位置する上部半導体層」、「下部半導体層と上部半導体層との間に位置する活性層」に相当する。
(イ)
したがって、引用発明の「1つのLEDライト201」は、本願発明の「各MJT LED」と、「複数の発光セルを含み、前記各発光セルは、下部半導体層、前記下部半導体層上に位置する上部半導体層、及び前記下部半導体層と前記上部半導体層との間に位置する活性層を含み」、「複数の発光セルは互いに直列に接続され」ている点で共通する。


本願発明の「前記複数のFETの個数は前記ブロックの個数と同一であり、前記FET制御部は、前記複数のFETのオン/オフ制御を通じて前記各ブロックのオン/オフ機能を制御し、前記駆動ICは、前記複数のFETのうち少なくとも一つを含む、」との特定事項について、引用発明は、このような構成を備えていない。


本願発明の「バックライトユニット。」との特定事項について
(ア)
引用発明の「バックライト」は、本願発明の「バックライトユニット」に相当する。
(イ)
したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備えている。


以上をまとめると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、次の各点で相違する。
(一致点)
「複数のブロック、及び前記複数のブロック上に配置される複数のLED;
前記各ブロックの駆動制御のための信号を生成するバックライト制御モジュールを含むバックライトモジュール;を含み
前記各ブロックは少なくとも一つのLEDを含み、
前記バックライト制御モジュールは、前記各ブロックのディミング制御のための駆動制御部を含み、
前記各LEDは、
複数の発光セルを含み、前記各発光セルは、下部半導体層、前記下部半導体層上に位置する上部半導体層、及び前記下部半導体層と前記上部半導体層との間に位置する活性層を含み、
前記複数の発光セルは互いに直列に接続される
バックライトユニット。」

(相違点1)
本願発明において、LEDは「単一の成長基板上に互いに離隔して整列され、第1発光セル及び第2発光セルを含む」「MJT LED(multi junction technology light emitting diode)」であることが特定され、各MJT LEDは「前記第1発光セル上に位置し、前記第1発光セルと電気的に接続される反射層;前記第1発光セルを前記第2発光セルと電気的に接続する上部電極; 前記第1発光セルの側面から前記上部電極を絶縁させる第1絶縁層;及び 前記上部電極上に整列される第1パッド及び第2パッド;を含み」、「前記第1パッドは入力発光セルに電気的に接続され、前記第2パッドは出力発光セルに電気的に接続され」ていることが特定されている一方、引用発明の「LEDライト201」は、「複数個のLEDライトが直列に接続されたLEDライト群であ」ることが特定されているにとどまる点。

(相違点2)
本願発明は、MJT LEDを含む「印刷回路基板」を備えるのに対して、引用発明の「LEDライト201」は何に配置されているか不明である点。

(相違点3)
本願発明は「駆動IC; 複数のFET(field effect transistors);及び
前記駆動ICに配置され、前記複数のFETのオン/オフ機能を制御するFET制御部を含み」、「前記バックライト制御モジュールは」(前記各ブロックの)「オン/オフ制御」「のための駆動制御部」を含み、「前記複数のFETの個数は前記ブロックの個数と同一であり」、「前記FET制御部は、前記複数のFETのオン/オフ制御を通じて前記各ブロックのオン/オフ機能を制御し」、「前記駆動ICは、前記複数のFETのうち少なくとも一つを含む」ことが特定されているのに対し、引用発明は、このような構成を備えていない点。

(相違点4)
本願発明は「バックライト制御モジュール」を含む「バックライトモジュール」を備えているのに対し、引用発明は、「第2の制御手段」(バックライト制御モジュール)を備えることは特定されているものの、「第2の制御手段」(バックライト制御モジュール)」を含む「バックライトモジュール」を備えることは特定されていない点。

2 判断
(1)相違点1

引用発明において「LEDライト201」は「複数個のLEDライトが直列に接続されたLEDライト群」であり、また、引用文献1の【0023】、【0036】には、「LEDライト201」について、複数の例が記載されていることから見て、引用発明におけるLEDライトは、特別な構成や態様が求められているわけではなく、一般的な発光機能を有するLEDを用いることが前提とされているといえる。

引4技術事項における「基板1の一面にn型半導体層2、活性層及びp型半導体層3を積層した半導体発光層(LED構造)を相互に分離して2つ形成」した「半導体発光素子」は、本願発明でいう、「単一の成長基板上に互いに離隔して整列され、第1発光セル及び第2発光セルを含む」ものである。
「MJT LED(multi junction technology light emitting diode」について本件明細書の【0204】において「「MJT LEDチップ」と言う用語は、一つのLEDチップ内に複数の発光セルが各配線によって互いに接続されているマルチ-セルLEDチップを意味する」と記載されており、このような意味と解される。
そして、引4技術事項において「相互に分離して2つ形成」された「半導体発光層(LED構造)」は、「配線層6」により「直列に接続、すなわち、2個のLEDを直列に接続した構造」となっており、これを「半導体発光素子」又は「LEDチップ」と呼んでいることから、引4技術事項の「半導体発光素子」は、本願発明でいう「MJT LED」であるといえる。

引4技術事項の「第1の半導体発光層」、「第2の半導体発光層」は、それぞれ、本願発明の「第1発光セル」、「第2発光セル」に相当する。
ここで、引4技術事項は、「各半導体発光層は、基板1上に、n型半導体層2、活性層、p型半導体層3がこの順に積層してあ」るから、引4技術事項の「n型半導体層2」、「活性層」、「p型半導体層3」は、それぞれ、本願発明の「下部半導体層」、「活性層」、「上部半導体層」に相当する。
そして、引4技術事項の「半導体発光素子」において、「各半導体発光層のp型半導体層3の表面」には、「例えば、導電性の透明膜であるITO膜(インジウム錫酸化膜)」である「電流拡散層4を形成してあ」り、「各半導体発光層の電流拡散層4の表面」には、「Ag合金等からな」る「p型の反射膜5」を形成してある。このとき、「p型半導体層3」、「電流拡散層4」、「p型の反射膜5」は、電気的に接続されていることは、明らかである。
そうすると、引4技術事項の「p型の反射膜5」は、本願発明における「第1発光セル上に位置し、前記第1発光セルと電気的に接続される反射層」であるといえる。

そして、引4技術事項において「第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)は、配線層6により接続されている」(【0034】)と記載されているから、引4技術事項の「配線層6」は、本願発明の「前記第1発光セルを前記第2発光セルと電気的に接続する上部電極」であるといえる。

引4技術事項において、「保護膜9」は「p型半導体層3及びn型半導体層2」の側面から、「配線層6」を絶縁させるものであるから、引4技術事項の「保護膜9」は、本願発明における「前記第1発光セルの側面から前記上部電極を絶縁させる第1絶縁層」であるといえる。

(ア)
引4技術事項の「半導体発光素子」は、「第1の電極7」と「第2の電極8」との間に電源から電圧を印加することで、「第1の半導体発光層(LED1)及び第2の半導体発光層(LED2)」を発光させるものであるところ、「第1の電極7」と電源とを接続する配線材、及び「第2の電極8」と電源とを接続する配線材が必要であることは、当業者において自明な事項である。
また、引4技術事項において「第1の電極7及び第2の電極8の半田接続面を除く部分は、保護膜10を成膜」してあり、「保護膜10」は「配線層6」の上に位置し、「保護膜10は、例えば、SiO_(2 )膜」であることから、配線材は、「保護膜10」を介して「配線層6」の上に設けるものである。
そうすると、これらの配線材は「配線層6」(本願発明の「上部電極」に相当)上にあるといえるから、引4技術事項の「半導体発光素子」は、本願発明の「上部電極上に整列される第1パッド及び第2パッドを含」むものであること明らかである。
(イ)
さらに、この時、引4技術事項の「第1の半導体発光層(LED1)」、「第2の半導体発光層(LED2)」は、それぞれ、本願発明の「入力発光セル」、「出力発光セル」に相当するといえる。
そうすると、引4技術事項の「半導体発光素子」は、本願発明の「前記上部電極上に整列される第1パッド及び第2パッドを含み、前記第1パッドは入力発光セルに電気的に接続され、前記第2パッドは出力発光セルに電気的に接続され」るとの構成を有していることは、当業者において自明な事項である。

一般的に、部品の取り付け点数を減らし製造を容易なものとすることは、分野を問わず周知の課題であり、引用発明においても、このような課題を解決する動機を備えていることは明らかである。また、引4技術事項の「半導体発光素子」は、上記のような構成により単一の部品(チップ)を取り付けるだけで、複数の発光素子を備えることが可能となっているものであると共に、一般的な発光機能を有するLEDであるといえる。
したがって、引用発明のような、バックライト用の光源であって多数のLEDを取り付ける必要がある場合において、上記周知の課題を解決するために、引用発明における「複数個のLEDライトが直列に接続された」「LEDライト201」として、引4技術事項の「半導体発光素子」を採用することで、上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者にとって容易になしえることである。

したがって、引用発明において、引用文献4に記載の技術事項を採用することで、相違点1に係る構成を得ることは、当業者にとって容易になしえることである。

(2)相違点2
引用発明において、「LEDライト201」は、なんらかの基板に備えられていることは、当業者において自明な事項である。
そして、引用文献2に開示されているように、表示装置のバックライト用光源モジュールにおいて、LEDをプリント回路基板に備えることは文献を示すまでもなく周知技術であるから、引用発明においても、「LEDライト201」をプリント回路基板に備えるよう構成し、相違点2に係る構成を得ることは、当業者にとって容易になしえることである。
したがって、引用発明において、周知技術を採用することで、相違点2に係る構成を得ることは、当業者にとって容易になしえることである。

(3)相違点3

引用発明は、「それぞれのLEDライト201の明るさ、すなわちそれぞれのLEDライト201に加える電流の大きさを制御する制御回路である」「LED制御手段5」を備えているところ、引用文献1には、いかなる手段によりLEDライト201に加える電流の大きさを制御しているかは明記されていない。

一方、本願発明のバックライト制御は「複数のFETのオン/オフ制御を通じて前記各ブロックのオン/オフ機能を制御」するものであるところ、具体的には、本願の明細書【0221】-【0223】、【0230】の記載から、FETによりMJT LEDに電流を印可する/しない(オン/オフ)を制御し、電流を印可する時間の割合(パルス幅)を制御する、いわゆるPWM制御によりローカルディミングを行うものである。
そして、「オン/オフ制御」(PWM制御)により、加える電流の大きさを制御することは慣用的に用いられており(引用文献3、5)、そのための制御回路として、電源に、LEDとFETとを直列に接続し、FET制御部からFETにオン/オフの制御信号を入力するものは、周知技術である(引用文献5-7)。

ア及びイのとおり、引用発明の「LED制御手段5」は、LEDに流す電流の大きさを制御し発光強度を制御するものであることから、LEDの発光強度を制御する手段として、上記周知技術を採用し、引用発明の「LED制御手段5」において、相違点3に係る「複数のFET(field effect transistors)」、及び、「前記複数のFETのオン/オフ機能を制御するFET制御部」を設けることは、当業者にとって容易になしえることである。

そして、引用発明に、上記周知技術を適用するに際して、引用発明はローカルディミングのブロック毎にLEDの輝度を制御するものであることから、ローカルディミングのブロックの数と同じだけのFETが必要となるし、ローカルディミングを行うために、「各ブロック」の「オン/オフ制御」「のための駆動制御部」を備え、「FET制御部は、前記複数のFETのオン/オフ制御を通じて前記各ブロックのオン/オフ機能を制御」するように構成することも、当業者が自然に行うことである。

さらに、引用発明においてローカルディミングのブロックの数は、引用文献1の【0022】に「36個のブロック」が例示されているような多数であるから、多数のFETが必要であることは明らかである。そして、制御部をICによって実現することは文献を示すまでもなく周知の技術手段であることに鑑みれば、引用発明に上記周知技術を適用するに際し、部品点数を減らすためにこれら多数のFETや制御部を、ICとしてまとめることは、当業者が適宜なし得る設計的事項といえる。

したがって、引用発明において、上記周知技術に基づいて、相違点3に係る構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。

(4)相違点4
引用発明において、「第2の制御手段」を含む「バックライトモジュール」を備えることは特定されていないところ、各部材をモジュール化することは、例示するまでもない周知技術であるから、引用発明においても、「第2の制御手段」を含む「バックライトモジュール」を備えることは、当業者が適宜なし得る事項である。
したがって、引用発明において、相違点4に係る構成を得ることは、当業者が適宜なしえる事項である。

(5)
以上検討したとおり、引用発明において、相違点1?4に係る構成を備えることは、いずれも当業者にとって容易に想到し得たことである。

(6)作用効果について
本願発明が奏する作用効果は、引用発明、及び、引用文献4に記載された技術、並びに、周知技術に基づいて、当業者が容易に予測しうる程度のものである。

3 請求人の主張について
請求人は審判請求書の「3-3.拒絶査定に対する反論」において、「引用文献1の段落[0034]には、TFT素子(本願発明1におけるFETに相当すると想定)、ピクセル電極、対向電極などが、各ピクセルが占める領域に配置されていることが記載されています。すなわち、引用文献1に記載の発明(引用発明1)は、TFT素子がLED制御手段5ではなくピクセルが占める領域に配置されています。」、「本願発明1においては、複数のFETのうちの少なくとも1つのFETは、FET制御部が配置される駆動ICに含まれるのに対し、引用発明1においては、TFT素子は、ピクセルが占める領域に配置されるのであって、LED制御手段5が配置される駆動ICには含まれない点(相違点)で、両者は少なくとも相違します。」と主張している。
しかしながら、引用文献1に記載の「TFT素子」は、各画素の液晶に電圧をかけるためのスイッチであり、バックライト制御に利用するものではないから、本願発明のFETに相当するものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

4 小活
したがって、本願発明は、引用発明、及び、引用文献4に記載された技術事項、並びに、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-08-26 
結審通知日 2020-09-01 
審決日 2020-09-16 
出願番号 特願2017-549369(P2017-549369)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉岡 一也  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 田中 秀直
瀬川 勝久
発明の名称 マルチセル発光ダイオードを用いたバックライトユニット  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

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