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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1370883
異議申立番号 異議2020-700789  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-03-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-14 
確定日 2021-02-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第6685709号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6685709号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6685709号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成27年12月1日に出願した特願2015-234897号であって、令和2年4月3日にその特許権の設定登録がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和2年10月14日に特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。

2 本件特許の請求項1に係る発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(A?Gの符号は、当審にて分説して付した。)。

(本件発明)
「【請求項1】
A 所定の遊技を行う遊技機であって、
B 決定条件が成立したときに複数種類の有利量のうちのいずれかを付与可能な有利量付与手段と、
C 前記有利量付与手段が付与した有利量に基づいて有利状態に制御する有利状態制御手段と、
D 前記有利量付与手段が有利量を付与するときに、当該有利量に関する表示制御を行う表示制御手段と、を備え、
E 前記表示制御は、
前記有利状態において残りの有利量を特定可能に表示する第1表示制 御と、
前記残りの有利量を秘匿表示する第2表示制御と、を含み、
F 前記残りの有利量が規定量となったときに特定演出が実行され、
G 前記表示制御手段は、前記第1表示制御および前記第2表示制御のいずれが行われているときにも、前記残りの有利量が所定量に到達してから前記規定量となるまでは前記残りの有利量を特定態様で表示する表示制御を行う、遊技機。」

3 特許異議申立ての理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、証拠方法として甲第1号証を提出し、本件発明は、甲第1号証に記載された甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第113条第2号の規定に該当し、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである(以下、「理由1」という。)旨を主張する。

(証拠方法)
甲第1号証:特開2000-300765号公報

4 甲第1号証に記載の発明
(1)記載事項
甲第1号証には、「遊技機」の発明に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0109】図1に示すように、パチンコ機1の遊技盤2には、作動口3及び大入賞口4が設けられている。作動口3は、遊技球5の通路を備えており、その通路入口には羽根6が開閉可能に支持されている。
・・・
【0117】図2(a)、(b)等に示すように、特別図柄表示装置13の表示部13aでは、各図柄列14?16の図柄変動(回転変動)が、遊技球5の作動口3への入賞に基づいて開始させられる。また、大当たり図柄、外れリーチ図柄、外れ図柄の中から1つが選択され、これが停止図柄として設定される。停止図柄とは、各図柄列14?16が図柄変動を停止したときに表示される図柄である。本実施の形態では、図柄変動は、左図柄列14、右図柄列16、中図柄列15の順に停止させられるが、これはあくまでも1例にすぎず、別の順序で停止させられるようにしてもよい。」

イ 「【0165】さて、上記再変動処理を行った後、制御装置24は、次に、ステップS140において、図柄17A?17H、17Kの組合せが大当たりの組合せであるか否かを判定する。なお、この際には、停止図柄の差替えが正しく行われたか否かの確認も行われる。そして、この判定条件が満たされていない場合には、後述する「残り回数報知処理ルーチン」へ移行し、その後「特別電動役物制御ルーチン」を終了する。また、図柄17A?17H、17Kの組合せが大当たりの組合せである場合には、ステップS150において、ラウンドカウンタCRを「0」にクリヤする。なお、このとき、制御装置24によって大当たり報知表示がなされる。さらには、前記残り回数Nについて、クリヤ処理が実行される。
【0166】次に、制御装置24は、ステップS155において、モード判定処理を実行する。より詳しくは、図12の「モード判定処理ルーチン」に示すように、ステップS1551において、大当たり図柄が「7」のゾロ目(図柄17Gのゾロ目)であるか否かを判定する。そして、大当たり図柄が「7」のゾロ目の場合には、ステップS1552に移行し、大当たり終了後において、遊技モードを、所定(残り)回数Nとして「150回」の付与された確変モードとするべく遊技モードフラグXKHを「3」に設定し、その後の処理を一旦終了する。また、ステップS1551において否定判定された場合には、ステップS1553において、大当たり図柄が「3」のゾロ目(図柄17Cのゾロ目)であるか否かを判定する。そして、大当たり図柄が「3」のゾロ目の場合には、ステップS1554に移行し、大当たり終了後において、遊技モードを、所定回数Nとして「100回」の付与された確変モードとするべく遊技モードフラグXKHを「2」に設定し、その後の処理を一旦終了する。
【0167】さらに、ステップS1553において否定判定された場合には、ステップS1555に移行する。ステップS155において、制御装置24は、大当たり図柄が「1」又は「5」のゾロ目(図柄17Aのゾロ目又は図柄17Eのゾロ目)であるか否かを判定する。そして、大当たり図柄が「1」又は「5」のゾロ目の場合には、ステップS1556に移行し、大当たり終了後において、遊技モードを、所定回数Nとして「50回」の付与された確変モードとするべく遊技モードフラグXKHを「1」に設定し、その後の処理を一旦終了する。また、大当たり図柄が「1」又は「5」のゾロ目でない場合には、ステップS1557へ移行する。
【0168】ステップS1557において、制御装置24は、大当たり終了後において遊技モードを通常モードとするべく遊技モードフラグXKHを「0」に設定し、その後の処理を一旦終了する。
【0169】このように、「モード判定処理ルーチン」では、大当たり図柄に応じて次回の遊技モードとして、通常モード又は確変モードのいずれかが選択される。但し、確変モードにおいては、大当たり図柄に応じて付与される所定回数Nが異なっている。」

ウ 「【0175】より詳しくは、図13の「モード報知処理ルーチン」に示すように、ステップS2501において、制御装置24は、現在の遊技モードフラグXKHが「0」でないか、つまり「1」、「2」又は「3」であるか否かを判定し、肯定判定された場合には、遊技モードが確変モードとなった旨の表示を行うべくステップS2502へ移行する。ステップS2502においては、表示部13aにおいて、遊技モードが確変モードである旨の画面を表示し、遊技者にそれを報知する。また、これとともに、ステップS2503において、表示部13a上部において、所定(残り)回数Nを表示し、その後の処理を一旦終了する。例えば、遊技モードフラグXKHが「3」の場合には、残り回数Nとして「150回」の表示がなされ、遊技モードフラグXKHが「2」の場合には、残り回転数として「100回」の表示がなされ、遊技モードフラグXKHが「1」の場合には、残り回転数として「50回」の表示がなされる。」

エ 「【0177】さて、次に、上記ステップS260の残り回数報知処理について説明する。すなわち、図14は、残り回数報知処理を示すフローチャートである。処理がこのルーチンに移行すると、制御装置24はまずステップS2601において、現在の遊技モードフラグXKHが「0」でないか、つまり「1」、「2」又は「3」である(確変モード中である)か否かを判定する。そして、否定判定された場合(通常モードの場合)には、何らの処理をも行うことなくその後の処理を一旦終了する。また、肯定判定された場合には、ステップS2602において、今回の内部乱数カウンタCIの値が予め定められた所定値たる「0」であるか否かを判定する。そして、肯定判定された(この場合には、「7」「1」「4」の図柄で停止されている)場合には、強制的に確変モードを終了させるべく、後述するステップS2610へと移行する。
【0178】一方、内部乱数カウンタCIの値が「0」でない場合には、ステップS2603において、現在の残り回数Nが「0」となっているか否かを判定する。そして、残り回数Nが未だ「0」になっていない場合には、ステップS2604において、ステップS908でデクリメントされた残り回数Nを表示部13aの一部に表示し、その後の処理を一旦終了する。
【0179】また、ステップS2603において、現在の残り回数Nが「0」となった場合には、ステップS2605において、内部乱数カウンタCIの値が「100」?「199」の範囲内にあるか否かを判定する。また、これとともに、この時点で図15(b)に示すように、残り回数Nが「0」となった旨を表示部13aの一部に表示する。そして、内部乱数カウンタCIの値が「100」?「199」の範囲内にある場合には、ステップS2606において、残り回数Nを増加させるべく、残り回数に「30」を加算した値を、新たな残り回数Nとして設定する。さらに続くステップS2607において、残り回数Nが増加した旨を表示部13aの一部に表示する(図16(b)参照)。従って、残り回数Nが一旦「0」となったとしても、8分の1の確率で、「30」回の残り回数Nの増加が行われることとなる。そして、制御装置24はその後の処理を一旦終了する。
【0180】また、ステップS2605において、内部乱数カウンタCIの値が「100」?「199」の範囲内にない場合には、ステップS2608において、内部乱数カウンタCIの値が「300」?「399」の範囲内にあるか否かを判定する。そして、内部乱数カウンタCIの値が「300」?「399」の範囲内にある場合には、ステップS2609において、残り回数Nを増加させるべく、残り回数に「50」を加算した値を、新たな残り回数Nとして設定する。さらに続くステップS2607において、残り回数Nが増加した旨を表示部13aの一部に表示する。そして、その後の処理を一旦終了する。
【0181】これに対し、ステップS2608において、内部乱数カウンタCIの値が「300」?「399」の範囲内にない場合には、確変モードを終了させるべく、ステップS2610へ移行する。前記ステップS2602又はステップS2610から移行して、ステップS2610においては、遊技モードを確変モードから通常モードへと切り換えるべく、遊技モードフラグXKHを「0」に設定するとともに、遊技者に確変モードの終了を報知するべく、その旨を表示部13aに表示し(図16(a)参照)、その後の処理を一旦終了する。」

オ 「【0210】15.また、残り回数Nに応じて、報知の方法を異ならせるようにしてもよい。例えば、残り回数Nが50回以上ある場合と、50回を下回った場合とで効果音を異ならせたり、ランプの点灯・点滅方法を異ならせたり、表示部13aの色彩・背景・キャラクタの表示方法、表示テンポ等や、効果音等のテンポ等を異ならせたりすること、或いは確変モード中の実際の図柄17A?17H、17Kの変動回数に関連性のある情報を報知すること等が考えられる。また、残り回数Nが残り少なくなった場合(例えば10回以下)には、カラータイマーが点滅する等して、どきどき感を促すこととしてもよい。上記のような構成とすることにより、報知方法が変動したことに基づいて、遊技者は残り回数Nがある値を下回ったことを知りうるため、より一層面白味が増し、興趣の向上に拍車がかけられる。
【0211】また、実際の残り回数Nを数値にて報知しないこととしてもよい。当該構成及び上記報知方法を異ならせる構成を採用することで、つまり、実際の残り回数Nが数値として報知されない場合には、残り回数Nに関し、上記異なった報知方法(報知方法の切換)が謎めいた部分を含んだものとなったり、遊技者があれこれ予想する機会が付与されたりして、さらに面白味が増す。さらに、残り回数Nが一定回数以下となったときにはじめて報知を行うようにしてもよい。」

カ 図12



キ 図14



(2)認定事項
ア 認定事項1
甲第1号証には、「【0166】・・・制御装置24は、ステップS155において、モード判定処理を実行する。より詳しくは、図12の「モード判定処理ルーチン」に示すように、ステップS1551において、大当たり図柄が「7」のゾロ目(図柄17Gのゾロ目)であるか否かを判定する。・・・また、ステップS1551において否定判定された場合には、ステップS1553において、大当たり図柄が「3」のゾロ目(図柄17Cのゾロ目)であるか否かを判定する。」、「【0167】さらに、ステップS1553において否定判定された場合には、ステップS1555に移行する。ステップS155において、制御装置24は、大当たり図柄が「1」又は「5」のゾロ目(図柄17Aのゾロ目又は図柄17Eのゾロ目)であるか否かを判定する。・・・また、大当たり図柄が「1」又は「5」のゾロ目でない場合には、ステップS1557へ移行する。」、「【0168】ステップS1557において、制御装置24は、大当たり終了後において遊技モードを通常モードとするべく遊技モードフラグXKHを「0」に設定し、その後の処理を一旦終了する。」と記載されており、図12(上記(1)記載事項のカ)の記載と併せると、甲第1号証には、大当たり図柄が「7」、「3」、「1」又は「5」のゾロ目でない場合には、大当たり終了後において遊技モードを通常モードとするべく遊技モードフラグXKHを「0」に設定する制御装置24を備えることが記載されていると認められる(【0166】?【0168】、図12)。

イ 認定事項2
甲第1号証には、「【0179】また、ステップS2603において、現在の残り回数Nが「0」となった場合には、ステップS2605において、内部乱数カウンタCIの値が「100」?「199」の範囲内にあるか否かを判定する。・・・・」、「【0180】また、ステップS2605において、内部乱数カウンタCIの値が「100」?「199」の範囲内にない場合には、ステップS2608において、内部乱数カウンタCIの値が「300」?「399」の範囲内にあるか否かを判定する。・・・」、「【0181】これに対し、ステップS2608において、内部乱数カウンタCIの値が「300」?「399」の範囲内にない場合には、確変モードを終了させるべく、ステップS2610へ移行する。・・・ステップS2610においては、遊技モードを確変モードから通常モードへと切り換えるべく、遊技モードフラグXKHを「0」に設定するとともに、遊技者に確変モードの終了を報知するべく、その旨を表示部13aに表示し(図16(a)参照)、その後の処理を一旦終了する。」と記載されており、図14(上記(1)記載事項のキ)の記載と併せると、甲第1号証には、現在の残り回数Nが「0」となった場合には、内部乱数カウンタCIの値が「100」?「199」、「300」?「399」の範囲内にない場合に、遊技モードを確変モードから通常モードへと切り換えるべく、遊技モードフラグXKHを「0」に設定するとともに、遊技者に確変モードの終了を報知するべく、その旨を表示部13aに表示することが記載されていると認められる(【0179】?【0181】、図14)。

そして、上記記載事項ア?キ及び認定事項1、2より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(a?gの符号は、本件発明のA?Gの符号に概ね対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号等は、甲第1号証における引用箇所又は認定事項を示す。)。

(甲1発明)
「a 特別図柄表示装置13の表示部13aでは、各図柄列14?16の図柄変動(回転変動)が、遊技球5の作動口3への入賞に基づいて開始させられるパチンコ機1であって(【0109】、【0117】)、
b、c 図柄17A?17H、17Kの組合せが大当たりの組合せであるか否かを判定し、図柄17A?17H、17Kの組合せが大当たりの組合せである場合には、「モード判定処理ルーチン」において、
大当たり図柄が「7」のゾロ目の場合には、大当たり終了後において、遊技モードを、所定(残り)回数Nとして「150回」の付与された確変モードとするべく遊技モードフラグXKHを「3」に設定し、
大当たり図柄が「3」のゾロ目の場合には、大当たり終了後において、遊技モードを、所定回数Nとして「100回」の付与された確変モードとするべく遊技モードフラグXKHを「2」に設定し、
大当たり図柄が「1」又は「5」のゾロ目の場合には、大当たり終了後において、遊技モードを、所定回数Nとして「50回」の付与された確変モードとするべく遊技モードフラグXKHを「1」に設定し(【0165】、【0166】、【0167】)、
大当たり図柄が「7」、「3」、「1」又は「5」のゾロ目でない場合には、大当たり終了後において遊技モードを通常モードとするべく遊技モードフラグXKHを「0」に設定する制御装置24を備え(認定事項1)、
「モード判定処理ルーチン」では、大当たり図柄に応じて次回の遊技モードとして、通常モード又は確変モードのいずれかが選択され(【0169】)、
d 制御装置24は、「モード報知処理ルーチン」において、現在の遊技モードフラグXKHが「0」でないか、つまり「1」、「2」又は「3」であるか否かを判定し、肯定判定された場合には、遊技モードが確変モードとなった旨の表示を行うべく、表示部13aにおいて、遊技モードが確変モードである旨の画面を表示し、遊技者にそれを報知するとともに、表示部13a上部において、所定(残り)回数Nを表示し、
例えば、遊技モードフラグXKHが「3」の場合には、残り回数Nとして「150回」の表示がなされ、遊技モードフラグXKHが「2」の場合には、残り回転数として「100回」の表示がなされ、遊技モードフラグXKHが「1」の場合には、残り回転数として「50回」の表示がなされ(【0175】)、
e 制御装置24は、残り回数報知処理において、確変モード中であるか否かを判定し、残り回数Nが未だ「0」になっていない場合には、デクリメントされた残り回数Nを表示部13aの一部に表示し(【0177】、【0178】)、
f 現在の残り回数Nが「0」となった場合には、内部乱数カウンタCIの値が「100」?「199」、「300」?「399」の範囲内にない場合に、遊技モードを確変モードから通常モードへと切り換えるべく、遊技モードフラグXKHを「0」に設定するとともに、遊技者に確変モードの終了を報知するべく、その旨を表示部13aに表示し(認定事項2)、
g 確変モード中の残り回数Nが残り少なくなった場合(例えば10回以下)には、カラータイマーが点滅する(【0210】)、パチンコ機1(【0109】)。」

5 対比
本件発明と甲1発明とを、分説に従い対比する。
(1)甲1発明の構成aの「特別図柄表示装置13の表示部13aでは、各図柄列14?16の図柄変動(回転変動)が、遊技球5の作動口3への入賞に基づいて開始させられる」ことは、本件発明の構成Aの「所定の遊技を行う」ことに相当する。
よって、甲1発明の構成aの「特別図柄表示装置13の表示部13aでは、各図柄列14?16の図柄変動(回転変動)が、遊技球5の作動口3への入賞に基づいて開始させられるパチンコ機1」は、本件発明の構成Aの「所定の遊技を行う遊技機」に相当する。

(2)甲1発明の構成b、cの「図柄17A?17H、17Kの組合せが大当たりの組合せである場合に」及び「大当たり終了後において」「付与された確変モード」の「所定(残り)回数Nとして」の「50回」、「100回」、「150回」は、それぞれ本件発明の構成Bの「決定条件が成立したときに」及び「複数種類の有利量のうちのいずれか」に相当する。
また、甲1発明の構成b、cの「制御装置24」は、「遊技モードフラグXKH」を「1」、「2」、「3」のいずれかに設定することにより、「所定(残り)回数Nとして」「50回」、「100回」、「150回」のいずれかを設定するものであると認められる。
よって、甲1発明の構成b、cの「図柄17A?17H、17Kの組合せが大当たりの組合せである場合に」「大当たり終了後において」「付与された確変モード」の「所定(残り)回数Nとして」の「50回」、「100回」、「150回」を設定する「制御装置24」は、本件発明の構成Bの「決定条件が成立したときに複数種類の有利量のうちのいずれかを付与可能な有利量付与手段」に相当する。

(3)甲1発明の構成b、cにおいて、「大当たり終了後において」「付与された確変モード」の「所定(残り)回数Nとして」の「50回」、「100回」、「150回」は、本件発明の構成Cの「前記有利量付与手段が付与した有利量」に相当する。また、甲1発明の構成b、cの「確変モード」は、本件発明の構成Cの「有利状態」に相当する。
よって、甲1発明の構成b、cにおいて、「大当たり終了後において、遊技モードを、所定(残り)回数Nとして「150回」の付与された確変モード」、「所定(残り)回数Nとして「100回」の付与された確変モード」又は「所定(残り)回数Nとして「50回」の付与された確変モード」「とする」「制御装置24」は、本件発明の構成Cの「前記有利量付与手段が付与した有利量に基づいて有利状態に制御する有利状態制御手段」に相当する。

(4)甲1発明の構成b、c、dの「制御装置24」は、「大当たり終了後において」「付与された確変モード」の「所定(残り)回数Nとして」「50回」、「100回」、「150回」を設定してから、「「モード報知処理ルーチン」において、現在の遊技モードフラグXKHが「0」でないか、つまり「1」、「2」又は「3」であるか否かを判定し、肯定判定された場合には、遊技モードが確変モードとなった旨の表示を行うべく、表示部13aにおいて、遊技モードが確変モードである旨の画面を表示し、遊技者にそれを報知するとともに、表示部13a上部において、所定(残り)回数Nを表示」するものである。
してみると、甲1発明の構成b、c、dの「制御装置24」が、「大当たり終了後において」「付与された確変モード」の「所定(残り)回数Nとして」「50回」、「100回」、「150回」を設定するときは、本件発明の構成Dの「前記有利量付与手段が有利量を付与するとき」に相当する。
また、甲1発明の構成dの「表示部13a上部において、所定(残り)回数Nを表示」することは、本件発明の構成Dの「当該有利量に関する表示」をすることに相当する。また、甲1発明の構成dの「制御装置24」が、当該表示の制御を行うことは自明である。
よって、甲1発明の構成b、c、dの、「大当たり終了後において」「付与された確変モード」の「所定(残り)回数Nとして」「50回」、「100回」、「150回」を設定するときに、「表示部13a上部において、所定(残り)回数Nを表示」する「制御装置24」は、本件発明の構成Dの「前記有利量付与手段が有利量を付与するときに、当該有利量に関する表示制御を行う表示制御手段」に相当する。

(5)甲1発明の構成eの「確変モード中」、「デクリメントされた残り回数N」は、それぞれ本件発明の構成Eの「前記有利状態において」、「残りの有利量」に相当する。
また、甲1発明の構成eにおいて、「デクリメントされた残り回数N」が「表示部13aの一部に表示」されることにより、遊技者は「デクリメントされた残り回数N」を特定できることは明らかであるから、甲1発明の構成eの「確変モード中」「デクリメントされた残り回数Nを表示部13aの一部に表示」することは、本件発明の構成Eの「前記有利状態において残りの有利量を特定可能に表示する第1表示制御」に相当する。

(6)甲1発明の構成fの「現在の残り回数Nが「0」となった場合」及び「遊技者に確変モードの終了を報知するべく、その旨を表示部13aに表示」することは、それぞれ本件発明の構成Fの「前記残りの有利量が規定量となったとき」及び「特定演出が実行され」ることに相当する。
よって、甲1発明の構成fの「現在の残り回数Nが「0」となった場合」に「遊技者に確変モードの終了を報知するべく、その旨を表示部13aに表示」することは、本件発明の構成Fの「前記残りの有利量が規定量となったときに特定演出が実行され」ることに相当する。

(7)甲1発明の構成gの「残り回数Nが残り少なくなった場合(例えば10回以下)には、カラータイマーが点滅する」との構成は、「残り回数N」が「10回」となってから「残り回数N」が「0」となるまで、「カラータイマーが点滅する」ことを特定していると認められる。
そうすると、甲1発明の構成gにおいて、「残り回数N」が「10回」となること、「残り回数N」が「0」となることは、それぞれ本件発明の構成Gの「前記残りの有利量が所定量に到達」すること、「前記規定量となる」ことに相当する。
よって、甲1発明の構成gにおいて、「残り回数N」が「10回」となってから「残り回数N」が「0」となるまでは、本件発明の構成Gの「前記残りの有利量が所定量に到達してから前記規定量となるまで」に相当する。
また、甲1発明の構成gの「カラータイマーが点滅する」ことは、本件発明の構成Gの「特定態様で表示する」ことに相当する。
さらに、甲1発明の構成b?fからみて、「制御装置24」が「パチンコ機1」の表示制御を行っていることから、甲1発明の構成gにおいて、「制御装置24」が「カラータイマーが点滅する」表示制御を行うと認められる。
また、甲1発明の構成gにおいて、「残り回数N」が「10回」となってから「残り回数N」が「0」となるまでの表示が、「確変モード中」「デクリメントされた残り回数Nを表示部13aの一部に表示」する(上記(5)で説示したとおり、本件発明の構成Eの「第1表示制御」に相当。)ことが行われているときになされることは明らかである。
よって、甲1発明の構成gにおいて、「制御装置24」は、「確変モード中」「デクリメントされた残り回数Nを表示部13aの一部に表示」することが行われているときに「残り回数N」が「10回」となってから「残り回数N」が「0」となるまで「カラータイマーが点滅する」表示制御を行うことは、本件発明の構成Gの「前記表示制御手段は、前記第1表示制御が行われているときに」、「前記残りの有利量が所定量に到達してから前記規定量となるまでは」「特定態様で表示する表示制御を行う」ことに相当する。

(8)甲1発明の構成gの「パチンコ機1」は、本件発明の構成Gの「遊技機」に相当する。

そうすると、本件発明と甲1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「A 所定の遊技を行う遊技機であって、
B 決定条件が成立したときに複数種類の有利量のうちのいずれかを付与可能な有利量付与手段と、
C 前記有利量付与手段が付与した有利量に基づいて有利状態に制御する有利状態制御手段と、
D 前記有利量付与手段が有利量を付与するときに、当該有利量に関する表示制御を行う表示制御手段と、を備え、
E’前記表示制御は、
前記有利状態において残りの有利量を特定可能に表示する第1表示制 御を含み、
F 前記残りの有利量が規定量となったときに特定演出が実行され、
G’前記表示制御手段は、前記第1表示制御が行われているときに、前記残りの有利量が所定量に到達してから前記規定量となるまでは特定態様で表示する表示制御を行う、遊技機。」

(相違点1)(構成E)
本件発明は、「表示制御」が「第1表示制御と、」「前記残りの有利量を秘匿表示する第2表示制御と、を含」むのに対し、甲1発明は、「確変モード中」「デクリメントされた残り回数Nを表示部13aの一部に表示」する(本件発明の構成Eの「第1表示制御」に相当。)ものの、上記の「前記残りの有利量を秘匿表示する第2表示制御と、を含」まない点。

(相違点2)(構成G)
本件発明は、「前記表示制御手段は、前記第1表示制御および前記第2表示制御のいずれが行われているときにも、前記残りの有利量が所定量に到達してから前記規定量となるまでは前記残りの有利量を特定態様で表示する表示制御を行う」のに対し、甲1発明は、「制御装置24」が、「確変モード中」「デクリメントされた残り回数Nを表示部13aの一部に表示」することが行われているときに「残り回数N」が「10回」となってから「残り回数N」が「0」となるまで「カラータイマーが点滅する」表示制御を行う(本件発明の「前記表示制御手段は、前記第1表示制御が行われているときに」、「前記残りの有利量が所定量に到達してから前記規定量となるまでは」「特定態様で表示する表示制御を行う」に相当。)ものの、「カラータイマー」の「点滅」は、「デクリメントされた残り回数N」(本件発明の「前記残りの有利量」に相当。)を表示するものではなく、また、上記(相違点1)に係る本件発明の「第2表示制御」を含まないことから、「第2表示制御」が行われているときに「も」「カラータイマー」の「点滅」が、「デクリメントされた残り回数N」を表示するものではない点。

6 理由1についての当審の判断
上記相違点1、2についてそれぞれ検討する。

(1)相違点1について
甲第1号証の段落【0211】には、「実際の残り回数Nを数値にて報知しないこととしてもよい。」こと(以下、「甲第1号証に記載された技術事項1」という。)、「さらに、残り回数Nが一定回数以下となったときにはじめて報知を行うようにしてもよい。」こと(以下、「甲第1号証に記載された技術事項2」という。)が記載されている。
そして、甲第1号証に記載された技術事項1において、「実際の残り回数Nを数値にて報知しないこと」は、本件発明の構成Eの「前記残りの有利量を秘匿表示する」ことに相当する。また、上記5(4)及び(5)の説示を踏まえると、「制御装置24」により「実際の残り回数N」の表示制御が行われることは明らかである。
そうすると、甲第1号証に記載された技術事項1の「実際の残り回数Nを数値にて報知しない」表示制御は、本件発明の構成Eの「前記残りの有利量を秘匿表示する第2表示制御」に相当する。
そして、遊技機の分野において、複数の異なる演出態様を備えることにより遊技者の興趣を高めることは、当業者が当然認識すべき課題であることを鑑みると、甲1発明において、甲第1号証に記載された技術事項1及び技術事項2を採用し、「確変モード中」「デクリメントされた残り回数Nを表示部13aの一部に表示」する構成に加えて、「確変モード中」「実際の残り回数Nを数値にて報知しない」表示制御を行い得るようにし、「残り回数Nが一定回数以下となったときにはじめて報知を行う」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、上記甲1発明において、甲第1号証に記載された技術事項1及び技術事項2を採用し、上記相違点1に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について
甲第1号証の段落【0210】には、「例えば、残り回数Nが50回以上ある場合と、50回を下回った場合とで効果音を異ならせたり、ランプの点灯・点滅方法を異ならせたり、表示部13aの色彩・背景・キャラクタの表示方法、表示テンポ等や、効果音等のテンポ等を異ならせたりすること、或いは確変モード中の実際の図柄17A?17H、17Kの変動回数に関連性のある情報を報知すること等が考えられる。」と記載され、その後に、「また、残り回数Nが残り少なくなった場合(例えば10回以下)には、カラータイマーが点滅する等して、どきどき感を促すこととしてもよい。」と記載されている。
そして、甲第1号証には、上記段落【0210】以外に「カラータイマー」に関する記載はないが、「カラータイマー」は時間の経過に応じて、「点滅する」ランプ等であると認められる。また、「カラータイマー」の「点滅」自体が数値により時間の経過量を表示できるものではないことは自明であるから、「デクリメントされた残り回数N」のように数値により残りの量を表示するものとは、残量を表示する/しないの観点で、全く異なるものであるといえる。
そうすると、甲1発明において、「デクリメントされた残り回数N」(本件発明の「前記残りの有利量」に相当。)を「カラータイマー」の「点滅」により表示できないことは明らかである。
さらに、上記甲1発明において、甲第1号証に記載された技術事項1及び技術事項2を採用して、「確変モード中」「実際の残り回数Nを数値にて報知しない」表示制御を行う構成とし、甲第1号証の段落【0211】の「残り回数Nが一定回数以下となったときにはじめて報知を行う」との記載に基づいて、「残り回数Nが一定回数」となってから「残り回数N」が「0」となるまで「カラータイマーが点滅する」表示制御を行うとしても、上記のとおり、「カラータイマー」の「点滅」自体が数値により時間の経過量を表示できるものではないから、「デクリメントされた残り回数N」を「カラータイマー」の「点滅」により表示できないことは明らかである。
よって、上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは、甲1発明、甲第1号証に記載された技術事項1及び技術事項2に基づいて、当業者が容易に想到し得たということはできない。

(3)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書(以下、単に「申立書」という。)の15頁1行ないし16頁9行において、甲1発明について、以下のとおりに主張している。

「以上の記載事項、図示内容から、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

a 特別図柄表示装置13の表示部13aでは、各図柄列14?16の図柄変動(回転変動)が、遊技球5の作動口3への入賞に基づいて開始させられるパチンコ機であって(段落0107、段落0117、図1)、
・・・
e 表示部13a上部において、所定(残り)回数Nを表示し、また、実際の残り回数Nを数値にて報知しないこと(段落0175、段落0211)、
f 現在の残り回数Nが「0」となった場合には、遊技者に確変モードの終了を報知するべく、その旨を表示部13aに表示し(段落0179?段落0181、図14、図16(a))、
g 表示部13a上部において、所定(残り)回数Nを表示し、残り回数Nが残り少なくなった場合(例えば10回以下)には、カラータイマーが点滅する等すること、また、実際の残り回数Nを数値にて報知しないこととし、残り回数Nが一定回数以下となったときにはじめて報知を行うようにしてもよい(段落0175、段落0210、段落0211)、パチンコ機(段落0107、段落0117、図1)。」

しかしながら、上記6(1)で説示したとおり、甲1発明において、甲第1号証に記載された技術事項1及び技術事項2を採用し、「確変モード中」「デクリメントされた残り回数Nを表示部13aの一部に表示」する構成に加えて、「確変モード中」「実際の残り回数Nを数値にて報知しないこととし」「残り回数Nが一定回数以下となったときにはじめて報知を行う」ように構成することは、当業者が容易に想到することであると認められるものの、甲第1号証から両者の構成を含む引用発明を認定することは、当業者であっても困難であるといえる。
仮に、両者の構成を含む引用発明として、申立人が申立書において主張する甲1発明を認定した場合について、追加的に検討する。
申立人は、申立書の「ウ 本件特許発明と甲1発明との対比」において、本件特許発明と甲1発明との相違点が、
「(相違点)
本件特許発明の「前記表示制御手段は、前記第1表示制御および前記第2表示制御のいずれかが行われているときにも、前記残りの有利量が所定量に到達してから前記規定量となるまでは前記残りの有利量を特定態様で表示する表示制御を行う」のに対し、甲1発明の「前記表示制御手段は」、「前記第1表示制御が行われているとき、前記残りの有利量が所定量に到達してから前記規定量となるまでは前記残りの有利量を特定態様で表示する表示制御を行う」が、「前記第2表示制御が行われているときに、残りの有利量が一定回数以下となったときはじめて報知する」点で相違する。」(申立書21頁4行ないし13行)
と主張し、申立書の「エ 相違点の検討」において、
「甲1発明における「前記第2表示制御が行われているときに、残りの有利量が一定回数以下となったときはじめて報知する」点について検討する。 「残りの有利量が一定回数」については甲1号証の段落0211に記載されているが、直前の段落0210には残り回数を10回以下にすることが記載されている。したがって、一定回数を10回とすることは、当業者なら容易になし得ることである。また、「はじめて報知する」点について、それまで報知していなかったのであるから、報知について目立つ報知を行うことが必然であるから段落0210に記載のカラータイマー等(特定態様)の報知を採用し、残り10回(所定量)から0回(規定量)まで報知することは、当業者にとって容易である。」(申立書21頁15行ないし25行)と主張する。
しかしながら、仮に、申立人の主張のとおり、「はじめて報知する」点について、段落0210に記載のカラータイマー等(特定態様)の報知を採用し、残り10回(所定量)から0回(規定量)まで報知するように構成したとしても、上記6(2)において説示したとおり、「カラータイマー」の「点滅」自体が数値により時間の経過量を表示できるものではないから、「デクリメントされた残り回数N」を「カラータイマー」の「点滅」により表示できないことは明らかである。

してみれば、本件発明は甲第1号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

7 むすび
以上のことから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-01-19 
出願番号 特願2015-234897(P2015-234897)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金子 和孝  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 澤田 真治
▲高▼木 尚哉
登録日 2020-04-03 
登録番号 特許第6685709号(P6685709)
権利者 株式会社三共
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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