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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C12N
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C12N
管理番号 1371050
審判番号 訂正2020-390086  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2020-09-16 
確定日 2021-01-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6749836号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6749836号の明細書を、本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6749836号に係る出願(特願2016-545930号)は、平成27年1月9日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 2014年1月10日 米国、2014年5月2日 米国)として出願されたものであって、その請求項1?24に係る発明について令和2年8月14日に特許権の設定登録がなされた。
これについて、令和2年9月16日に本件訂正審判が請求された。

第2 請求の趣旨および訂正の内容
本件審判の請求の趣旨は、特許第6749836号の明細書を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、訂正することを認める、との審決を求めるものである。
そして、本件審判の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、概ね、以下のとおりである。

「配列表における配列番号65のアミノ酸配列(4492残基のアミノ酸からなる。具体的なアミノ酸配列の記載は省略する。)を正しいアミノ酸配列(2332残基のアミノ酸からなる。具体的なアミノ酸配列の記載は省略する。)に訂正する。」(以下、「訂正事項1」という。)

第3 当審の判断
1 願書に添付した特許請求の範囲及び明細書の記載事項
願書に添付した特許請求の範囲及び明細書には、次の事項が記載されている。下線は当審による。

(1)特許請求の範囲
ア 「第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含むキメラタンパク質であって、
前記第1のポリペプチド鎖は、
(i)第VIII因子(「FVIII」)タンパク質、
(ii)第1の免疫グロブリン(「Ig」)定常領域、および
(iii)前記FVIIIタンパク質に挿入された第1のXTEN配列
を含み、ここで、前記第1のXTEN配列は、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応するアミノ酸745のすぐ下流に挿入されており、
前記第1のXTEN配列が、配列番号8のアミノ酸配列を含み、
前記第2のポリペプチド鎖は、
(iv)フォンウィルブランド因子(「VWF」)のD’ドメインとD3ドメインを含むVWFタンパク質、
(v)第2のIg定常領域、
(vi)前記VWFタンパク質と前記第2のIg定常領域とを連結する第2のXTEN配列、および
(vii)トロンビン切断可能リンカー
を含み、
前記トロンビン切断可能リンカーは、前記第2のXTEN配列を前記第2のIg定常領域に連結しており、前記リンカーは、配列番号88のアミノ酸配列を含み、
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1のIg定常領域および前記第2のIg定常領域の間の共有結合によって前記第2のポリペプチド鎖に連結されている、キメラタンパク質。」(請求項1)

(2)明細書
イ 「FVIIIのポリペプチド及びポリヌクレオチドの配列は、多数の機能的な断片、変異体及び修飾型と同様に既知である。ヒトのFVIII配列(完全長)の例を以下に示す。
【表3-1】

・・・

【表3-2】

」(【0144】)
ウ 「ネイティブのヒト成熟FVIIIの配列は配列番号65として提示されている。ネイティブのFVIIIタンパク質は以下の式:A1-a1-A2-a2-B-a3-A3-C1-C2を有し、式中、A1、A2及びA3は構造的に関連する「Aドメイン」であり、Bは「Bドメイン」であり、C1及びC2は構造的に関連する「Cドメイン」であり、a1、a2及びa3は酸性スペーサー領域である。配列番号65における一次アミノ酸配列の位置を参照して、ヒトFVIIIのA1ドメインはAla1からほぼArg336まで伸び、a1スペーサー領域はほぼMet337からほぼVal374まで伸び、A2ドメインはほぼAla375からほぼTyr719まで伸び、a2スペーサー領域はほぼGlu720からほぼArg740まで伸び、BドメインはほぼSer741からほぼArg1648まで伸び、a3スペーサー領域はほぼGlu1649からほぼArg1689まで伸び、A3ドメインはほぼSer1690からほぼLeu2025まで伸び、C1ドメインはほぼGly2026からほぼAsn2072まで伸び、C2ドメインはほぼSer2073からほぼTyr2332まで伸びる。」(【0146】)
エ 「ヒトのFVIII遺伝子は単離され、哺乳類細胞で発現されている(・・・Vehar,G.A.ら,Nature,312:337-342(1984)・・・)。」(【0147】)
オ 「一実施形態では、FVIII(またはキメラタンパク質のFVIII部分)は、配列番号67のアミノ酸1?1438または配列番号65のアミノ酸1?2332(シグナル配列なしで)のFVIIIアミノ酸配列または配列番号64のアミノ酸1?19及び配列番号67の1?1438または配列番号64のアミノ酸1?19及び配列番号65のアミノ酸1?2332(シグナル配列を伴った)のFVIIIアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であってもよく、その際、FVIIIは凝固活性を有し、たとえば、補因子として第IX因子を活性化し、第X因子を活性化された第X因子に変換する。」(【0150】)
カ 「
<210> 65
<211> 4492
<212> PRT
<213> Artificial Sequence

<220>
<223> Mature Factor VIII

<400> 65

Ala Thr Arg Arg Tyr Tyr Leu Gly Ala Val Glu Leu Ser Trp Asp Tyr
1 5 10 15
・・・
Gln Asp Leu Tyr
4490
」(配列表の配列番号65)

2 訂正事項1についての判断
(1)訂正の目的について
審判請求人は、訂正事項1は特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである旨説明しているので、以下に検討する。
ヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列である配列番号65(上記摘記事項ア、イ)については、明細書の【0144】に、2332残基のアミノ酸配列が記載されており(上記摘記事項イ)、配列表に、4492残基のアミノ酸配列が記載されている(上記摘記事項カ)。そして、後者は、そのN末端側に、前者の1?2160番目のアミノ酸残基(Ala1?Ser2160)が付加されている点で、両者は相違している。
ここで、明細書の【0146】、【0150】には、ヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列である配列番号65が2332残基のアミノ酸配列であることが記載されている(上記摘記事項ウ、オ)。
また、明細書の【0147】において引用されている(上記摘記事項エ)、本件特許の優先日の時点で公知の文献である、「ヒト第VIII因子の構造」と題する甲第1号証(Vehar,G.A.ら,Nature,312:337-342(1984)、以下、「甲1」という。)には、ヒト第VIII因子について、「成熟タンパク質は2332残基のアミノ酸を含む。」と記載されており(第337頁右欄下から第7?6行目。甲1は英語で記載されているため、当審による翻訳文で示す。)、本件特許の優先日の時点で公知の文献である、「第VIII因子のBドメインの機能的役割」と題する甲第2号証(Pipe, S.W.,Haemophilia, 15:1187-1196(2009)、以下、「甲2」という。)にも、「第VIII因子の遺伝子は26個のエクソンで構成され、それは、19残基のアミノ酸であるシグナルペプチドと2332残基のアミノ酸である成熟タンパク質であるポリペプチド鎖をコードしている。」と記載されている(第1187頁右欄第5?7行目。甲2は英語で記載されているため、当審による翻訳文で示す。)。
さらに、甲1には、


」と記載されており(甲1の図3)、甲1に記載されている、このヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列は、明細書の【0144】に記載されている配列番号65のアミノ酸配列と同一である。
そうすると、ヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列である配列番号65は、明細書の【0144】に記載されている配列番号65のアミノ酸配列が正しく、配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列は誤記であると理解できる。
よって、配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列を、明細書の【0144】に記載されている配列番号65のアミノ酸配列へと訂正する、上記訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものである。

また、審判請求人は、訂正事項1は特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある旨説明しているので、以下に検討する。
ヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列である配列番号65について、配列表の記載内容(配列番号65は、4492残基のアミノ酸からなる。)は、明細書の【0146】および【0150】の記載内容(配列番号65は、2332残基のアミノ酸からなる、)や【0147】において引用された甲1及び甲2の記載内容(ヒト成熟第VIII因子は2332残基のアミノ酸からなる。)との関係において、不合理を生じている。
よって、配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列を、明細書の【0144】に記載されている配列番号65のアミノ酸配列へと訂正する、上記訂正事項1は、上記不合理を正し、この不明瞭な記載を訂正により明瞭とするものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。

(2)新規事項を追加するものではないこと
訂訂正事項1による訂正後の配列表の配列番号65のアミノ酸配列は、願書に最初に添付した外国語書面(国際公開第2015/106052号)の明細書の[0157]の表3の配列番号65のアミノ酸配列の記載と一致する。

また、訂正事項1による訂正後の配列表の配列番号65のアミノ酸配列は、願書に添付した明細書の【0144】の表3の配列番号65のアミノ酸配列の記載と一致する。

したがって、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあっては、外国語書面)に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でもあるから、特許法第126条第5項に規定される要件に適合する。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列は、上記(1)のとおり、願書に添付された特許請求の範囲及び明細書の記載、ならびに、本願特許の優先日における当業者の技術常識から、誤記であることが明らかであり、かつ、正しい記載も自明である。
訂正事項1は、配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列の誤記を正しい記載にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

また、上記(1)のとおり、配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列を、明細書の【0144】に記載されている配列番号65のアミノ酸配列へ訂正する、上記訂正事項1は、ヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列である配列番号65のアミノ酸配列についての不合理を正し、明瞭にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

したがって、訂正事項1は、特許法第126条第6項に規定される要件に適合する。

(4)特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
訂正後の請求項1?24に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明でないとする理由は見出せない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第7項に規定される要件に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き第2号及び/又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項に規定される要件に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
第VIII因子キメラタンパク質及びその使用
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された配列表への言及
ASCIIテキストファイルにて電子的に提出された配列表(名称:2159_441PC02_SequenceListing_ST25.txt;サイズ:823,500バイト;作成日:2015年1月9日)の内容はその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
血友病Aは第VIII凝固因子(FVIII)をコードする遺伝子の欠損が原因で生じる出血性疾患であり、男児出生10,000人に1?2人が発症する。Grawら,Nat.Rev.Genet.6(6):488-501(2005).血友病Aに罹った患者は精製したFVIIIまたは組換えで製造されたFVIIIの点滴によって治療することができる。しかしながら、市販のFVIII製剤はすべて約8?12時間の半減期を有することが知られており、患者への頻繁な静脈内投与を必要とする。Weiner,M.A.及びCairo,M.S.,Pediatric Hematology Secrets,Lee,M.T.,12.Disorders of Coagulation,Elsevier Health Sciences,2001;Lillicrap,D.Thromb.Res.122,Suppl.4:S2-8(2008)を参照のこと。加えて、FVIIIの半減期を延長するために多数のアプローチが試みられている。たとえば、凝固因子の半減期を延長するための開発におけるアプローチには、PEG化、糖PEG化、及びアルブミンによる抱合が含まれる。Dumontら,Blood.119(13):3024-3030(2012年1月13日オンラインで公開)を参照のこと。しかしながら、使用されたタンパク質工学にかかわらず、現在開発中の長時間作用型のFVIII製剤は前臨床動物モデルにてたった約1.5?2時間の限定された半減期を有するにすぎないことが報告されている。上記を参照のこと。一貫した結果はヒトで実証されており、たとえば、rFVIIIFcは血友病Aの患者にてアドベイト(登録商標)と比べて約1.7倍まで半減期を改善することが報告された。上記参照。したがって、半減期の上昇は、軽微な改善にもかかわらず、他のT1/2律速因子の存在を示し得る。Liu,T.ら,2007,ISTH meeting,abstract#P-M-035;Henrik,A.ら,2011,ISTH meeting,abstract#P=MO-181;Liu,Tら,2011,ISTH meeting abstract#P-WE-131を参照のこと。
【0003】
血漿のフォンウィルブランド因子(VWF)はおよそ16時間(13?18時間の範囲)の半減期を有する。Goudemand,Jら,J.Thromb.Haemost.2005;3:2219-27。VWFの半減期は、多数の因子:VWFにおけるグリコシル化のパターン、ADAMTS-13(トロンボスポンジンモチーフを伴ったジスインテグリンとメタロプロテアーゼ-13)、及び種々の突然変異によって影響を受け得る
【0004】
血漿では、FVIIIの95?98%が完全長のVWFとの堅い非共有結合の複合体で循環している。この複合体の形成は生体内でのFVIIIの適当な血漿レベルの維持にとって重要である。Lentingら,Blood.92(11):3983-96(1998);Lentingら,J.Thromb.Haemost.5(7):1353-60(2007)。完全長の野生型FVIIIは大部分が、重鎖(MW 200kD)と軽鎖(MW 73kD)を有するヘテロ二量体として存在する。重鎖の372位と740位及び軽鎖の1689位でのタンパク質分解によりFVIIIが活性化されると、FVIIIに結合されたVWFが活性化されたFVIIIから取り外される。活性化されたFVIIIは活性化された第IX因子、カルシウム及びリン脂質と一緒に(「テナーゼ複合体」)第X因子の活性化を誘導し、大量のトロンビンを生成する。次いでトロンビンは次にフィブリノーゲンを切断して可溶性のフィブリン単量体を形成し、次いでそれは自然に重合して可溶性のフィブリンポリマーを形成する。トロンビンはまた第XIII因子も活性化し、それはカルシウムと一緒に可溶性のフィブリンポリマーを架橋し、安定化するのに役立ち、架橋された(不溶性の)フィブリンを形成する。活性化されたFVIIIはタンパク質分解によって循環から速やかにクリアランスされる。
頻繁な投与と投与スケジュールが原因で生じる不都合さとに起因して、あまり頻繁ではない投与で済むFVIII製剤、すなわち、半減期の限界の1.5?2倍より長い半減期を有するFVIII製剤を開発するニーズが依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Grawら,Nat.Rev.Genet.6(6):488-501(2005)
【非特許文献2】Dumontら,Blood.119(13):3024-3030
【非特許文献3】Goudemand,Jら,J.Thromb.Haemost.2005;3:2219-27
【非特許文献4】Lentingら,Blood.92(11):3983-96(1998)
【非特許文献5】Lentingら,J.Thromb.Haemost.5(7):1353-60(2007)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(i)第1の免疫グロブリン(「Ig」)定常領域またはその一部に融合された第VIII因子(「FVIII」)を含む第1のポリペプチドと(ii)中間のXTEN配列によって第2のIg定常領域またはその一部に融合されたフォンウィルブランド因子(「VWF」)のD’ドメイン及びD3ドメインを含むVWFタンパク質を含む第2のポリペプチドとを含むキメラタンパク質を提供し、その際、XTEN配列は288未満のアミノ酸残基を含有し、第1のポリペプチドは第2のポリペプチドに連結されるまたは会合する。特定の実施形態には、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、第2のポリペプチドにおけるXTEN配列は12アミノ酸?287アミノ酸の間の長さを有するアミノ酸配列から成る。
【0007】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、キメラタンパク質は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドを含み、融合タンパク質の第2のポリペプチドが少なくとも288アミノ酸を含有するXTEN配列を含む相当する融合タンパク質に比べて長い半減期を示す。一部の実施形態には、少なくとも288アミノ酸を含有するXTEN配列AE288が含まれる。一部の実施形態では、AE288は配列番号8である。
【0008】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、第2のポリペプチドのXTEN配列は約36、約42、約72、または約144のアミノ酸を含有する。一部の実施形態では、第2のポリペプチドのXTEN配列はAE42、AE72、AE144、AG42、AG72、またはAG144から選択される。
【0009】
一部の実施形態には本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、第2のポリペプチドのXTEN配列は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号58;配列番号59;配列番号14;配列番号60;配列番号61;配列番号62;または配列番号63から選択される。
【0010】
特定の実施形態では、第1のポリペプチドはさらに、FVIIIタンパク質を第1のIg定常領域またはその一部と連結する第2のXTEN配列を含む。開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、第1のポリペプチドは、FVIIIタンパク質の中での1以上の挿入部位に挿入される第3のXTEN配列を含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチドはさらに、FVIIIタンパク質の中での1以上の挿入部位に挿入される第2のXTEN配列を含む。特定の実施形態では、第1のポリペプチドは、FVIIIタンパク質を第1のIg定常領域またはその一部と連結する第3のXTEN配列を含む。
【0011】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、第2のXTEN配列、第3のXTEN配列、または第2と第3のXTEN配列はそれぞれ独立してAE42、AE72、AE864、AE576、AE288、AE144、AG864、AG576、AG288、及びAG144から選択される。一部の実施形態では、第2のXTEN配列、第3のXTEN配列、または第2と第3のXTEN配列はそれぞれ独立して配列番号8;配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号17;配列番号54;配列番号19;配列番号16;配列番号18;配列番号15;配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号14;配列番号60;配列番号61;配列番号62;または配列番号63から選択される。特定の実施形態では、第2のXTEN配列、第3のXTEN配列、または第2と第3双方のXTEN配列はそれぞれ独立してAE288またはAG288である。一部の実施形態では、第2のポリペプチドにおけるXTEN配列はリンカーによって第2のIg定常領域またはその一部に融合される。特定の実施形態では、リンカーは切断可能なリンカーである。
【0012】
一部の実施形態には本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、リンカーは、第XIa因子、第XIIa因子、カリクレイン、第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第IIa因子(トロンビン)、エラスターゼ-2、グランザイム-B、TEV、エンテロキナーゼ、プロテアーゼ3C、ソルターゼA、MMP-12、MMP-13、MMP-17、及びMMP-20から選択されるプロテアーゼによって切断可能である。一部の実施形態には、リンカーは因子IIa(トロンビン)によって切断可能である。
【0013】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、リンカーは、RRRR(配列番号102)、RKRRKR(配列番号103)、RRRRS(配列番号104)、TQSFNDFTR(配列番号1)、SVSQTSKLTR(配列番号3)、DFLAEGGGVR(配列番号4)、TTKIKPR(配列番号5)、LVPRG(配列番号6)、ALRPR(配列番号7)、KLTRAET(配列番号121)、DFTRVVG(配列番号122)、TMTRIVGG(配列番号123)、SPFRSTGG(配列番号124)、LQVRIVGG(配列番号125)、PLGRIVGG(配列番号126)、IEGRTVGG(配列番号127)、LTPRSLLV(配列番号128)、LGPVSGVP(配列番号129)、VAGDSLEE(配列番号130)、GPAGLGGA(配列番号131)、GPAGLRGA(配列番号132)、APLGLRLR(配列番号133)、PALPLVAQ(配列番号134)、ENLYFQG(配列番号:135)、DDDKIVGG(配列番号136)、LEVLFQGP(配列番号137)、LPKTGSES(配列番号138)、DKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号88)、及びIEPRSFS(配列番号194)から選択されるアミノ酸配列を含む1以上の切断部位を含む。一部の実施形態では、リンカーはTLDPRSFLLRNPNDKYEPFWEDEEK(配列番号146)を含む。特定の実施形態では、切断部位はLVPRG(配列番号6)のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、切断部位はIEPRSFS(配列番号194)のアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、切断部位はIEPRSFS(配列番号194)のアミノ酸配列を含み、切断部位はFVIIIの完全長a2領域ではない。一部の実施形態では、切断部位は少なくともIEPR(配列番号200)を含むFVIIIのa2領域の断片を含む。他の実施形態では、切断部位は少なくとも配列IEPR(配列番号200)を含むFVIIIのa2領域の断片を含み、切断部位は完全長a2領域ではない。特定の実施形態では、切断部位は本明細書で提供されるような、または当該技術で既知のようなトロンビン切断アッセイで切断可能である。
【0014】
一部の実施形態には本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、第1のIg定常領域またはその一部は第1のFc領域を含み、及び/または第2のIg定常領域またはその一部は第2のFc領域を含む。一部の実施形態では、第1のIg定常領域またはその一部及び第2のIg定常領域またはその一部はキメラタンパク質の半減期を延長する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドはリンカーによって融合される。特定の実施形態では、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは処理可能なリンカーによって融合される。一部の実施形態では、第1のIg定常領域またはその一部は第2のIg定常領域またはその一部と会合する。特定の実施形態では、第1のIg定常領域またはその一部は第2のIg定常領域またはその一部と共有結合によって会合する。一部の実施形態では、共有結合はジスルフィド結合である。
【0015】
開示されるのはまた、以下の式(a)?(hh)のそれぞれを含むキメラタンパク質である:
(a)FVIII-F1:F2-L2-X-L1-V;
(b)FVIII-F1:V-L1-X-L2-F2;
(c)F1-FVIII:F2-L2-X-L1-V;
(d)F1-FVIII:V-L1-X-L2-F2;
(e)FVIII-X2-F1:F2-L2-X1-L1-V;
(f)FVIII-X2-F1:V-L1-X1-L2-F2;
(g)FVIII(X2)-F1:F2-L2-X1-L1-V;
(h)FVIII(X2)-F1:V-L1-X1-L2-F2;
(i)F1-X2-F1:F2-L2-X1-L1-V;
(j)F1-X2-F1:V-L1-X1-L2-F2;
(k)V-L1-X-L2-F2-L3-FVIII-L4-F1;
(l)V-L1-X-L2-F2-L3-F1-L4-FVIII;
(m)F1-L4-FVIII-L3-F2-L2-X-L1-V;
(n)FVIII-L4-F1-L3-F2-L2-X-L1-V;
(o)FVIII-L4-F1-L3-V-L1-X-L2-F2;
(p)FVIII-L4-F1-L3-F2-L2-X-L1-V;
(q)F2-L2-X-L1-V-L3-F1-L4-FVIII;
(r)F2-L2-X-L1-V-L3-FVIII-L4-F1;
(s)V-L1-X1-L2-F2-L3-FVIII(X2)-L4-F1;
(t)V-L1-X1-L2-F2-L3-F1-L4-FVIII(X2);
(u)F1-L4-FVIII(X2)-L3-F2-L2-X1-L1-V;
(v)F-L4-FVIII(X2)-L3-V-L1-X1-L2-F2;
(w)FVIII(X2)-L4-F1-L3-V-L1-X1-L2-F2;
(x)FVIII(X2)-L4-F1-L3-F2-L2-X1-L1-V;
(y)F2-L2-X1-L1-V-L3-F1-L4-FVIII(X2);
(z)F2-L2-X1-L1-V-L3-FVIII(X2)-L4-F1;
(aa)V-L1-X2-L2-F2-L3-FVIII-L4-X2-L5-F1;
(bb)V-L1-X2-L2-F2-L3-F1-L5-X2-L4-FVIII;
(cc)F1-L5-X2-L4-FVIII-L3-F2-L2-X2-L1-V;
(dd)F1-L5-X2-L4-FVIII-L3-V-L1-X2-L2-F2;
(ee)FVIII-L5-X2-L4-F2-L3-V-L1-X1-L2-F1;
(ff)FVIII-L5-X2-L4-F2-L3-F1-L2-X1-L1-V;
(gg)F1-L2-X1-L1-V-L3-F2-L4-X2-L5-FVIII;又は
(hh)F1-L2-X1-L1-V-L3-FVIII-L5-X2-L4-F2;
式中、VはD’ドメイン及びD3ドメインを含むVWFタンパク質であり、XまたはX1は288未満のアミノ酸を含有する第1のXTEN配列であり、X2は第2のXTEN配列であり、FVIIIはFVIIIタンパク質を含み、FVIII(X2)はFVIIIタンパク質内の1以上の挿入部位に挿入された第2のXTEN配列を有するFVIIIタンパク質を含み、F1は第1のIg定常領域またはその一部であり、F2は第2のIg定常領域またはその一部であり、L1、L2、L3、L4またはL5は任意のリンカーであり、(-)はペプチド結合であり、(:)は共有結合または非共有結合である。
【0016】
一部の実施形態には本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、XまたはX1は12アミノ酸?287アミノ酸の間の長さのアミノ酸配列から成る。
【0017】
特定の実施形態では、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質はXまたはX1がAE288であることを除いて式を含む相当するキメラタンパク質に比べて長い半減期を示す。一部の実施形態では、AE288は配列番号8である。
【0018】
一部の実施形態には本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、式におけるXまたはX1は約36、約42、約72、または約144のアミノ酸を含有する。特定の実施形態では、式におけるXまたはX1はAE42、AE72、AE144、AG42、AG72、またはAG144から選択される。一部の実施形態では、式におけるXまたはX1は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号14;配列番号60;配列番号61;配列番号62;または配列番号63から選択される。特定の実施形態では、X2は、少なくとも約36アミノ酸、少なくとも約42アミノ酸、少なくとも約144アミノ酸、少なくとも約288アミノ酸、少なくとも約576アミノ酸、少なくとも約864アミノ酸の長さを有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、X2はAE42、AE72、AE864、AE576、AE288、AE144、AG864、AG576、AG288、及びAG144から選択される。一部の実施形態では、X2は、配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号17;配列番号54;配列番号19;配列番号16;配列番号18;配列番号15;配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号14;配列番号60;配列番号61;配列番号62;または配列番号:63から選択される。特定の実施形態では、X2はAE288またはAG288である。
【0019】
開示されるのはまた、XまたはX1及び/またはX2を含まないキメラタンパク質に比べて長い半減期を示すXまたはX1及び/またはX2を含む、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質である。一部の実施形態では、L1及び/またはL2は切断可能なリンカーである。特定の実施形態では、L4及び/またはL5は切断可能なリンカーである。特定の実施形態では、リンカーは、第XIa因子、第XIIa因子、カリクレイン、第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第IIa因子(トロンビン)、エラスターゼ-2、グランザイム-B、TEV、エンテロキナーゼ、プロテアーゼ3C、ソルターゼA、MMP-12、MMP-13、MMP-17、及びMMP-20から選択されるプロテアーゼによって切断可能である。一部の実施形態には、リンカーは第IIa因子(トロンビン)によって切断可能である。
【0020】
一部の実施形態には本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、リンカーは、RRRR(配列番号102)、RKRRKR(配列番号103)、RRRRS(配列番号104)、TQSFNDFTR(配列番号2)、SVSQTSKLTR(配列番号3)、DFLAEGGGVR(配列番号4)、TTKIKPR(配列番号5)、LVPRG(配列番号6)、ALRPR(配列番号7)、KLTRAET(配列番号121)、DFTRVVG(配列番号122)、TMTRIVGG(配列番号123)、SPFRSTGG(配列番号124)、LQVRIVGG(配列番号125)、PLGRIVGG(配列番号126)、IEGRTVGG(配列番号127)、LTPRSLLV(配列番号128)、LGPVSGVP(配列番号129)、VAGDSLEE(配列番号130)、GPAGLGGA(配列番号131)、GPAGLRGA(配列番号132)、APLGLRLR(配列番号133)、PALPLVAQ(配列番号134)、ENLYFQG(配列番号135)、DDDKIVGG(配列番号136)、LEVLFQGP(配列番号137)、及びLPKTGSES(配列番号138)から選択されるアミノ酸配列を含む1以上の切断可能な部位を含む。一部の実施形態では、リンカーはTLDPRSFLLRNPNDKYEPFWEDEEK(配列番号146)を含む。特定の実施形態では、リンカーはLVPRG(配列番号6)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、リンカーはFVIIIのa1領域、FVIIIのa2領域、FVIIIのa3領域またはそれらの任意の組み合わせを含む。特定の実施形態では、リンカーはFVIIIのa2領域の断片を含む。a2領域の断片は場合によっては配列DKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号88)を含むことができる。さらに他の実施形態では、IEPRSFS(配列番号194)の配列を有する断片を含むFVIIIのa2領域のさらに小さな断片を使用することができる。特定の一実施形態では、リンカーはIEPRSFS(配列番号194)のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、リンカーはIEPRSFS(配列番号194)のアミノ酸配列を含み、その際、リンカーはFVIIIの完全長a2領域ではない。
【0021】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、FVIIIのa2領域は、ISDKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号106)またはDKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号88)のいずれかに対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、a1領域はISMKNNEEAEDYDDDLTDSEMDVVRFDDDNSPSFIQIRSV(配列番号107)に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、a3領域はISEITRTTLQSDQEEIDYDDTISVEMKKEDFDIYDEDENQSPRSFQ(配列番号108)に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、F1は第1のFc領域を含み、及び/またはF2は第2のFc領域を含む。
【0022】
一部の実施形態には、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、F1及びF2を含むキメラタンパク質はF1及びF2を含まないキメラタンパク質に比べて長い半減期を示す。特定の実施形態では、L3は処理可能なリンカーである。一部の実施形態では、VWFタンパク質は非共有結合によってFVIIIタンパク質と会合する。一部の実施形態では、キメラタンパク質の半減期は、VWFタンパク質及び/またはXTEN配列を含まないFVIIIタンパク質に比べて、または野生型FVIIIに比べて延長される。特定の実施形態では、キメラタンパク質の半減期は、VWFタンパク質またはXTEN配列を含まないFVIIIタンパク質よりも、または野生型FVIIIよりも少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、または少なくとも約12倍長く延長される。
【0023】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、キメラタンパク質の半減期は、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、少なくとも約34時間、少なくとも約35時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、少なくとも約72時間、少なくとも約84時間、少なくとも約96時間、または少なくとも約108時間である。一部の実施形態では、キメラタンパク質の半減期はHemAマウスにて約40時間である。特定の実施形態では、VWFタンパク質はVWFクリアランス受容体に実質的に結合しない。一部の実施形態では、VWFタンパク質は、1以上のプロテアーゼ切断からFVIIIタンパク質を保護することができ、活性化からFVIIIタンパク質を保護することができ、FVIIIタンパク質の重鎖及び/または軽鎖を安定化することができ、または1以上のスカベンジャー受容体によるFVIIIタンパク質のクリアランスを防ぐことができる。
【0024】
一部の実施形態には、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、VWFタンパク質はFVIIIタンパク質上のVWF結合部位を遮蔽することまたは遮断することによって内在性のVWFがFVIIIタンパク質に結合するのを阻害するまたは妨ぐ。特定の実施形態では、VWF結合部位はFVIIIタンパク質のA3ドメインまたはC2ドメイン、またはA3ドメイン及びC2ドメインの双方に位置する。一部の実施形態では、VWF結合部位は配列番号65のアミノ酸1669?1689及び2303?2332に相当するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第1のIg定常領域またはその一部及び第2のIg定常領域またはその一部は同一である、または異なっている。特定の実施形態では、FVIIIタンパク質は、少なくとも2つのXTEN配列、少なくとも3つのXTEN配列、少なくとも4つのXTEN配列、少なくとも5つのXTEN配列、または少なくとも6つのXTEN配列に連結される、及び/またはそれらと共に挿入される。
【0025】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、FVIIIタンパク質は、A1ドメイン、a1酸性領域、A2ドメイン、a2酸性領域、Bドメイン、A3ドメイン、a3酸性領域、C1ドメイン、C2ドメイン、それらの1以上の断片、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるFVIIIの1以上のドメインを含む。
【0026】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、FVIIIタンパク質における1以上の挿入部位は、A1ドメイン、a1酸性領域、A2ドメイン、a2酸性領域、A3ドメイン、Bドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるFVIIIの1以上のドメインの範囲内に、またはA1ドメインとa1酸性領域、a1酸性領域とA2ドメイン、A2ドメインとa2酸性領域、a2酸性領域とBドメイン、BドメインとA3ドメイン、A3ドメインとC1ドメイン、C1ドメインとC2ドメイン、及びそれらの組み合わせから成る群から選択されるFVIIIタンパク質の1以上のドメインの間に、またはA1ドメインとa1酸性領域、a1酸性領域とA2ドメイン、A2ドメインとa2酸性領域、a2酸性領域とBドメイン、BドメインとA3ドメイン、A3ドメインとC1ドメイン、C1ドメインとC2ドメイン、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるFVIIIタンパク質の2つのドメインの間に位置付けられる。一部の実施形態では、FVIIIタンパク質における1以上の挿入部位は、表7、表8、表9及び表10におけるアミノ酸残基から成る群から選択される1以上のアミノ酸である。特定の実施形態では、FVIIIタンパク質における挿入部位は、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応するアミノ酸745のすぐ下流に位置付けられる。一部の実施形態では、FVIIIタンパク質における挿入部位は、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応する残基1656及び残基1900のすぐ下流に位置付けられる。一部の実施形態では、FVIIIタンパク質における挿入部位は、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応する残基26、1656及び1900のすぐ下流である。特定の実施形態では、FVIIIタンパク質における挿入部位は、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応する残基403及び745のすぐ下流である。一部の実施形態では、FVIIIタンパク質における挿入部位は、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応する残基745及び1900のすぐ下流である。特定の実施形態では、FVIIIタンパク質における挿入部位は、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応する残基18及び745のすぐ下流である。一部の実施形態では、FVIIIタンパク質は二重鎖FVIIIアイソフォームである。一部の実施形態では、FVIIIタンパク質は単鎖FVIIIアイソフォームである。特定の実施形態では、FVIIIタンパク質はBドメインまたはその一部を含む。一部の実施形態では、FVIIIタンパク質はSQBドメインを欠失させたFVIIIである。
【0027】
一部の実施形態には、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、単鎖FVIIIアイソフォームは、完全長の成熟第VIII因子ポリペプチド(配列番号65)に対応する残基1648、残基1645、若しくは双方の残基、またはSQ BDD第VIII因子(配列番号67)の残基754、残基751、若しくは双方の残基に相当する残基にて少なくとも1つのアミノ酸置換を含有する。特定の実施形態では、アミノ酸置換はアルギニン以外のアミノ酸である。一部の実施形態では、二重鎖FVIIIアイソフォームは、FVIIIの重鎖を含む第1の鎖とFVIIIの軽鎖を含む第2の鎖を含み、その際、重鎖と軽鎖は金属結合によって互いに会合する。特定の実施形態では、D’ドメインは配列番号21のアミノ酸764?866に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、D3ドメインは配列番号21のアミノ酸867?1240に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、VWFタンパク質は単量体である。
【0028】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、それは、少なくとも2つのVWFタンパク質、少なくとも3つのVWFタンパク質、少なくとも4つのVWFタンパク質、少なくとも5つのVWFタンパク質、または少なくとも6つのVWFタンパク質を含む。特定の実施形態では、VWFタンパク質は配列番号21のアミノ酸764?1240に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VWFタンパク質は配列番号21のアミノ酸764?1240から本質的に成る、または成る。特定の実施形態では、VWFタンパク質は配列番号21の残基1099、残基1142、または残基1099と1142の双方に相当する残基で少なくとも1つのアミノ酸置換を含有する。一部の実施形態では、VWFタンパク質は配列番号21の残基1099、残基1142、または残基1099と1142の双方に相当する残基について置換されるシステイン以外のアミノ酸を含有する。特定の実施形態では、VWFタンパク質はさらにVWFのD1ドメイン、D2ドメイン、またはD1とD2のドメインを含む。
【0029】
一部の実施形態には、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、VWFタンパク質はさらに、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、D4ドメイン、B1ドメイン、B2ドメイン、B3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、CKドメイン、それらの1以上の断片、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるVWFドメインを含む。
【0030】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、VWFタンパク質は、(1)VWFのD’ドメイン及びD3ドメイン若しくはその断片、(2)VWFのD1、D’及びD3のドメイン若しくはその断片、(3)VWFのD2、D’及びD3のドメイン若しくはその断片、(4)VWFのD1、D2、D’及びD3のドメイン若しくはその断片、または(5)VWFのD1、D2、D’、D3及びA1のドメイン若しくはその断片から本質的に成る、またはそれから成る。
【0031】
一部の実施形態には、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質が含まれ、その際、VWFタンパク質はさらに、VWFタンパク質に操作可能に連結されるVWFまたはFVIIIのシグナルペプチドを含む。
【0032】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、リンカーの1以上は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1200、1400、1600、1800、または2000のアミノ酸残基の長さを有する。一部の実施形態では、リンカーの1以上は、約1?約2000のアミノ酸残基の長さを有する。特定の実施形態では、リンカーの1以上はGly/Serペプチドを含む。一部の実施形態では、Gly/Serペプチドは、(Gly_(4)Ser)_(n)(配列番号94)またはS(Gly_(4)Ser)_(n)(配列番号164)の式を有し、その際、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10から成る群から選択される正の整数である。特定の実施形態では、(Gly_(4)Ser)_(n)リンカーは(Gly_(4)Ser)_(3)(配列番号100)または(Gly_(4)Ser)_(4)(配列番号165)である。一部の実施形態では、リンカーは、20のアミノ酸、35のアミノ酸、48のアミノ酸、73のアミノ酸または95のアミノ酸を含む。特定の実施形態では、切断可能なリンカーはSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSLVPRGSGG(配列番号166)である。
【0033】
一部の実施形態では、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質はポリシアル化され、PEG化され、またはHES化される。
【0034】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質であり、その際、第1のポリペプチドは、FVIII161(配列番号69)、FVIII169(配列番号70)、FVIII173(配列番号72)、FVIII195(配列番号73)、FVIII196(配列番号74)、FVIII199(配列番号75)、FVIII201(配列番号76)、FVIII203(配列番号77)、FVIII204(配列番号78)、FVIII205(配列番号79)、FVIII266(配列番号80)、FVIII267(配列番号81)、FVIII268(配列番号82)、FVIII269(配列番号83)、FVIII271(配列番号84)、FVIII272(配列番号85)、またはFVIII282(配列番号159)に対して少なくとも約80%、90%、95%、99%または100%同一であることを含み、第2のポリペプチドはVWF057(配列番号152)またはVWF059(配列番号197)のいずれかに対して少なくとも約80%、90%、95%、99%または100%同一であることを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチドはFVIII169(配列番号70)を含み、第2のポリペプチドはVWF057(配列番号152)を含む。他の実施形態では、第1のポリペプチドはFVIII169(配列番号70)を含み、第2のポリペプチドはVWF059(配列番号197)を含む。さらに別の実施形態では、第1のポリペプチドはFVIII169(配列番号70)を含み、第2のポリペプチドはVWF062(配列番号199)を含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質はそれを必要とする対象からの出血を防ぐ及び/または止めるのに有効である。
【0035】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットである。一部の実施形態では、本明細書で記載されるようなポリヌクレオチドはさらにPC5またはPC7をコードするポリヌクレオチド鎖を含む。
【0036】
一部の実施形態には、本明細書で記載されるようなポリヌクレオチドと該ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの該セットに操作可能に連結される1以上のプロモータとを含むベクターが含まれる。
【0037】
一部の実施形態では、本明細書で記載されるようなベクターはさらにPC5またはPC7をコードするポリヌクレオチド鎖を含む追加のベクターを含む。
【0038】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞である。一部の実施形態では、宿主細胞は哺乳類細胞である。特定の実施形態では、哺乳類細胞はHEK293細胞、CHO細胞及びBHK細胞から選択される。
【0039】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞、及び薬学上許容可能なキャリアを含む医薬組成物である。一部の実施形態では、キメラタンパク質は野生型FVIIIタンパク質に比べて延長された半減期を有する。特定の実施形態では、キメラタンパク質の半減期は、野生型FVIIIよりも少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、または少なくとも約12倍長く延長される。
【0040】
一部の実施形態には、本明細書で記載されるような組成物が含まれ、その際、キメラタンパク質の半減期は、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、少なくとも約34時間、少なくとも約35時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、少なくとも約72時間、少なくとも約84時間、少なくとも約96時間、または少なくとも約108時間である。特定の実施形態では、キメラタンパク質の半減期は、HemAマウスにて約40時間である。一部の実施形態では、本明細書で記載されるような組成物は、局所投与、眼内投与、非経口投与、クモ膜下投与、硬膜下投与、及び経口投与から成る群から選択される経路によって投与される。特定の実施形態では、非経口投与は静脈内投与または皮下投与である。
【0041】
一部の実施形態では、本明細書で記載されるような組成物を用いてそれを必要とする対象にて出血性疾患または出血性の状態を治療する。特定の実施形態では、出血性疾患または出血性の状態は、出血性凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、出血、筋肉への出血、口腔出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸郭内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、腸腰筋鞘における出血及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。一部の実施形態では、対象は手術を受けるように計画される。特定の実施形態では、治療は予防的なものである、または要求に応じたものである。
【0042】
開示されるのはまた、キメラタンパク質の半減期を延長するまたは増やす方法であり、その際、該方法は、それを必要とする対象に、本明細書で記載されるような有効量のキメラタンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を加えることを含み、VWFタンパク質、XTEN配列、第1のIg定常領域若しくはその一部、または第2のIg定常領域若しくはその一部がキメラタンパク質の半減期を増す。
【0043】
一部の実施形態には、本明細書で記載されるような有効量のキメラタンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を投与することを含むそれを必要とする対象にて出血性の疾患または障害を治療する方法が含まれ、その際、出血性の疾患または障害は、出血性凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、出血、筋肉への出血、口腔出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸郭内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、及び腸腰筋鞘から成る群から選択される。一部の実施形態では、対象は動物である。特定の実施形態では、動物はヒトである。一部の実施形態では、対象は血友病Aを患っている。特定の実施形態では、治療は予防的なものである、または要求に応じたものである。一部の実施形態では、有効量は0.1μg/kg?500mg/kgである。
【0044】
開示されるのはまた、本明細書で記載されるような方法であり、その際、本明細書で記載されるようなキメラタンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物は、局所投与、眼内投与、非経口投与、クモ膜下投与、硬膜下投与、及び経口投与から成る群から選択される経路によって投与される。特定の実施形態では、非経口投与は、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与及び皮内投与から成る群から選択される。
【0045】
一部の実施形態には、本明細書で記載されるようなポリヌクレオチドまたはベクターで1以上の宿主細胞に形質移入することと、該宿主細胞にてキメラタンパク質を発現させることとを含む、該キメラタンパク質を作製する方法が含まれる。一部の実施形態では、本明細書で記載されるような方法はさらに、キメラタンパク質を単離することを含む。特定の実施形態では、キメラタンパク質は対象にて出血を止めること及び/または出血を予防することに有効である。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
キメラタンパク質であって、(i)第1の免疫グロブリン(「Ig」)定常領域またはその一部に融合された第VIII因子(「FVIII」)タンパク質を含む第1のポリペプチドと、(ii)中間のXTEN配列によって第2のIg定常領域またはその一部に融合されたフォンウィルブランド因子(「VWF」)のD’ドメインとD3ドメインを含むVWFタンパク質を含む第2のポリペプチドとを含み、その際前記XTEN配列が288未満のアミノ酸残基を含有し、第1のポリペプチドが第2のポリペプチドに連結されるまたは会合される、前記キメラタンパク質。
(項目2)
第2のポリペプチドにおけるXTEN配列が12アミノ酸?287アミノ酸の間の長さを有するアミノ酸配列から成る項目1に記載のキメラタンパク質。
(項目3)
融合タンパク質の第2のポリペプチドが少なくとも288のアミノ酸を含有するXTEN配列を含む第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む相当する前記融合タンパク質と比べて、キメラタンパク質が長い半減期を示す項目1または2に記載のキメラタンパク質。
(項目4)
少なくとも288のアミノ酸を含有するXTEN配列がAE288である項目3に記載のキメラタンパク質。
(項目5)
AE288が配列番号8である項目4に記載のキメラタンパク質。
(項目6)
第2のポリペプチドのXTEN配列が約36、約42、約72、または約144のアミノ酸を含有する項目1?5のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目7)
第2のポリペプチドのXTEN配列が、AE42、AE72、AE144、AG42、AG72、またはAG144から選択される項目6に記載のキメラタンパク質。
(項目8)
第2のポリペプチドのXTEN配列が、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号14;配列番号60;配列番号61;配列番号62;配列番号63から選択される項目7に記載のキメラタンパク質。
(項目9)
第1のポリペプチドがさらに、FVIIIタンパク質を第1のIg定常領域またはその一部と連結する第2のXTEN配列を含む項目1?8のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目10)
第1のポリペプチドがFVIIIタンパク質内での1以上の挿入部位で挿入される第3のXTEN配列を含む項目9に記載のキメラタンパク質。
(項目11)
第1のポリペプチドがさらに、FVIIIタンパク質内での1以上の挿入部位で挿入される第2のXTEN配列を含む項目1?8のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目12)
第1のポリペプチドがFVIIIタンパク質を第1のIg定常領域またはその一部と連結する第3のXTEN配列を含む項目11に記載のキメラタンパク質。
(項目13)
第2のXTEN配列、第3のXTEN配列、または第2と第3のXTEN配列がそれぞれ独立してAE42、AE72、AE864、AE576、AE288、AE144、AG864、AG576、AG288、及びAG144から選択される項目9?12のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目14)
第2のXTEN配列、第3のXTEN配列、または第2と第3のXTEN配列がそれぞれ独立して配列番号8;配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号17;配列番号54;配列番号19;配列番号16;配列番号18;配列番号15;配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号14;配列番号60;配列番号61;配列番号62;または配列番号63から選択される項目13に記載のキメラタンパク質。
(項目15)
第2のXTEN配列、第3のXTEN配列、または第2と第3のXTEN配列双方がそれぞれ独立してAE288またはAG288である項目13または14に記載のキメラタンパク質。
(項目16)
第2のポリペプチドにおけるXTEN配列が、リンカーによって第2のIg定常領域またはその一部に融合される項目1?15のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目17)
リンカーが切断可能なリンカーである項目16に記載のキメラタンパク質。
(項目18)
リンカーが、第XIa因子、第XIIa因子、カリクレイン、第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第IIa因子(トロンビン)、エラスターゼ-2、グランザイム-B、TEV、エンテロキナーゼ、プロテアーゼ3C、ソルターゼA、MMP-12、MMP-13、MMP-17、及びMMP-20から選択されるプロテアーゼによって切断可能である項目17に記載のキメラタンパク質。
(項目19)
リンカーが第IIa因子(トロンビン)によって切断可能である項目18に記載のキメラタンパク質。
(項目20)
リンカーが、RRRR(配列番号102)、RKRRKR(配列番号103)、RRRRS(配列番号104)、TQSFNDFTR(配列番号2)、SVSQTSKLTR(配列番号3)、DFLAEGGGVR(配列番号4)、TTKIKPR(配列番号5)、LVPRG(配列番号6)、ALRPR(配列番号7)、KLTRAET(配列番号121)、DFTRVVG(配列番号122)、TMTRIVGG(配列番号123)、SPFRSTGG(配列番号124)、LQVRIVGG(配列番号125)、PLGRIVGG(配列番号126)、IEGRTVGG(配列番号127)、LTPRSLLV(配列番号128)、LGPVSGVP(配列番号129)、VAGDSLEE(配列番号130)、GPAGLGGA(配列番号131)、GPAGLRGA(配列番号132)、APLGLRLR(配列番号133)、PALPLVAQ(配列番号134)、ENLYFQG(配列番号135)、DDDKIVGG(配列番号:136)、LEVLFQGP(配列番号:137)、及びLPKTGSES(配列番号138)から選択されるアミノ酸配列を含む1以上の切断部位を含む項目17に記載のキメラタンパク質。
(項目21)
リンカーがTLDPRSFLLRNPNDKYEPFWEDEEK(配列番号146)を含む項目17に記載のキメラタンパク質。
(項目22)
切断部位がLVPRG(配列番号6)のアミノ酸配列を含む項目20に記載のキメラタンパク質。
(項目23)
第1のIg定常領域またはその一部が第1のFc領域を含み、及び/または第2のIg定常領域またはその一部が第2のFc領域を含む項目1?22のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目24)
第1のIg定常領域またはその一部及び第2のIg定常領域またはその一部がキメラタンパク質の半減期を延長する項目23に記載のキメラタンパク質。
(項目25)
第1のポリペプチドと第2のポリペプチドがリンカーによって融合される項目1?24のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目26)
第1のポリペプチドと第2のポリペプチドが処理可能なリンカーによって融合される項目25に記載のキメラタンパク質。
(項目27)
第1のIg定常領域またはその一部が第2のIg定常領域またはその一部に会合される項目1?24のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目28)
第1のIg定常領域またはその一部が共有結合によって第2のIg定常領域またはその一部に会合される項目27に記載のキメラタンパク質。
(項目29)
共有結合がジスルフィド結合である項目28に記載のキメラタンパク質。
(項目30)
キメラタンパク質であって、以下の式(a)?(hh):
(a)FVIII-F1:F2-L2-X-L1-V;
(b)FVIII-F1:V-L1-X-L2-F2;
(c)F1-FVIII:F2-L2-X-L1-V;
(d)F1-FVIII:V-L1-X-L2-F2;
(e)FVIII-X2-F1:F2-L2-X1-L1-V;
(f)FVIII-X2-F1:V-L1-X1-L2-F2;
(g)FVIII(X2)-F1:F2-L2-X1-L1-V;
(h)FVIII(X2)-F1:V-L1-X1-L2-F2;
(i)F1-X2-F1:F2-L2-X1-L1-V;
(j)F1-X2-F1:V-L1-X1-L2-F2;
(k)V-L1-X-L2-F2-L3-FVIII-L4-F1;
(l)V-L1-X-L2-F2-L3-F1-L4-FVIII;
(m)F1-L4-FVIII-L3-F2-L2-X-L1-V;
(n)FVIII-L4-F1-L3-F2-L2-X-L1-V;
(o)FVIII-L4-F1-L3-V-L1-X-L2-F2;
(p)FVIII-L4-F1-L3-F2-L2-X-L1-V;
(q)F2-L2-X-L1-V-L3-F1-L4-FVIII;
(r)F2-L2-X-L1-V-L3-FVIII-L4-F1;
(s)V-L1-X1-L2-F2-L3-FVIII(X2)-L4-F1;
(t)V-L1-X1-L2-F2-L3-F1-L4-FVIII(X2);
(u)F1-L4-FVIII(X2)-L3-F2-L2-X1-L1-V;
(v)F-L4-FVIII(X2)-L3-V-L1-X1-L2-F2;
(w)FVIII(X2)-L4-F1-L3-V-L1-X1-L2-F2;
(x)FVIII(X2)-L4-F1-L3-F2-L2-X1-L1-V;
(y)F2-L2-X1-L1-V-L3-F1-L4-FVIII(X2);
(z)F2-L2-X1-L1-V-L3-FVIII(X2)-L4-F1;
(aa)V-L1-X2-L2-F2-L3-FVIII-L4-X2-L5-F1;
(bb)V-L1-X2-L2-F2-L3-F1-L5-X2-L4-FVIII;
(cc)F1-L5-X2-L4-FVIII-L3-F2-L2-X2-L1-V;
(dd)F1-L5-X2-L4-FVIII-L3-V-L1-X2-L2-F2;
(ee)FVIII-L5-X2-L4-F2-L3-V-L1-X1-L2-F1;
(ff)FVIII-L5-X2-L4-F2-L3-F1-L2-X1-L1-V;
(gg)F1-L2-X1-L1-V-L3-F2-L4-X2-L5-FVIII;又は
(hh)F1-L2-X1-L1-V-L3-FVIII-L5-X2-L4-F2;
のそれぞれを含み、式中、VはD’ドメイン及びD3ドメインを含むVWFタンパク質であり、XまたはX1は288未満のアミノ酸を含有する第1のXTEN配列であり、X2は第2のXTEN配列であり、FVIIIはFVIIIタンパク質を含み、FVIII(X2)はFVIIIタンパク質内の1以上の挿入部位に挿入された第2のXTEN配列を
有するFVIIIタンパク質を含み、F1は第1のIg定常領域またはその一部であり、F2は第2のIg定常領域またはその一部であり、L1、L2、L3、L4またはL5は任意のリンカーであり、(-)はペプチド結合であり、(:)は共有結合または非共有結合である、前記キメラタンパク質。
(項目31)
XまたはX1が12アミノ酸?287アミノ酸の間の長さのアミノ酸配列から成る項目30に記載のキメラタンパク質。
(項目32)
XまたはX1がAE288であることを除いて式を含む相当するキメラタンパク質に比べて長い半減期を示す項目30または31に記載のキメラタンパク質。
(項目33)
AE288が配列番号8である項目32に記載のキメラタンパク質。
(項目34)
式におけるXまたはX1が約36、約42、約72または約144のアミノ酸を含有する項目30?33のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目35)
式におけるXまたはX1が、AE42、AE72、AE144、AG42、AG72、またはAG144から選択される請求書34に記載のキメラタンパク質。
(項目36)
式におけるXまたはX1が、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号14;配列番号60;配列番号61;配列番号62;または配列番号63から選択される請求書34に記載のキメラタンパク質。
(項目37)
X2が、少なくとも約36のアミノ酸、少なくとも約42のアミノ酸、少なくとも約144のアミノ酸、少なくとも約288のアミノ酸、少なくとも約576のアミノ酸、または少なくとも約864のアミノ酸の長さを有するアミノ酸配列を含む項目30?36のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目38)
X2が、AE42、AE72、AE864、AE576、AE288、AE144、AG864、AG576、AG288、及びAG144から選択される項目37に記載のキメラタンパク質。
(項目39)
X2が、配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号17;配列番号54;配列番号19;配列番号16;配列番号18;配列番号15;配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号14;配列番号60;配列番号61;配列番号62;または配列番号63から選択される項目37に記載のキメラタンパク質。
(項目40)
X2がAE288またはAG288である項目37に記載のキメラタンパク質。
(項目41)
XまたはX1及び/またはX2を含むキメラタンパク質が、XまたはX1及び/またはX2を含まないキメラタンパク質に比べて長い半減期を示す項目30?40のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目42)
L1及び/またはL2が切断可能なリンカーである項目30?41のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目43)
L4及び/またはL5が切断可能なリンカーである項目30?41のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目44)
リンカーが、第XIa因子、第XIIa因子、カリクレイン、第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第IIa因子(トロンビン)、エラスターゼ-2、グランザイム-B、TEV、エンテロキナーゼ、プロテアーゼ3C、ソルターゼA、MMP-12、MMP-13、MMP-17、及びMMP-20から選択されるプロテアーゼによって切断可能である項目42または43に記載のキメラタンパク質。
(項目45)
リンカーが第IIa因子(トロンビン)によって切断可能である項目42または43に記載のキメラタンパク質。
(項目46)
リンカーが、RRRR(配列番号102)、RKRRKR(配列番号103)、RRRRS(配列番号104)、TQSFNDFTR(配列番号1)、SVSQTSKLTR(配列番号3)、DFLAEGGGVR(配列番号4)、TTKIKPR(配列番号5)、LVPRG(配列番号6)、ALRPR(配列番号7)、KLTRAET(配列番号121)、DFTRVVG(配列番号122)、TMTRIVGG(配列番号123)、SPFRSTGG(配列番号124)、LQVRIVGG(配列番号125)、PLGRIVGG(配列番号126)、IEGRTVGG(配列番号127)、LTPRSLLV(配列番号128)、LGPVSGVP(配列番号129)、VAGDSLEE(配列番号130)、GPAGLGGA(配列番号131)、GPAGLRGA(配列番号132)、APLGLRLR(配列番号133)、PALPLVAQ(配列番号134)、ENLYFQG(配列番号135)、DDDKIVGG(配列番号:136)、LEVLFQGP(配列番号:137)、及びLPKTGSES(配列番号138)から選択されるアミノ酸配列を含む1以上の切断部位を含む項目42または43に記載のキメラタンパク質。
(項目47)
リンカーがTLDPRSFLLRNPNDKYEPFWEDEEK(配列番号146)を含む項目42または43に記載のキメラタンパク質。
(項目48)
リンカーがLVPRG(配列番号6)のアミノ酸配列を含む項目42または43に記載のキメラタンパク質。
(項目49)
リンカーが、FVIIIのa1領域、FVIIIのa2領域、FVIIIのa3領域、またはそれらの任意の組み合わせを含む項目42または43に記載のキメラタンパク質。
(項目50)
FVIIIのa2領域が、ISDKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号106)に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む項目49に記載のキメラタンパク質。
(項目51)
a1領域が、ISMKNNEEAEDYDDDLTDSEMDVVRFDDDNSPSFIQIRSV(配列番号107)に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む項目49に記載のキメラタンパク質。
(項目52)
a3領域が、ISEITRTTLQSDQEEIDYDDTISVEMKKEDFDIYDEDENQSPRSFQ(配列番号108)に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む項目49に記載のキメラタンパク質。
(項目53)
F1が第1のFc領域を含み、及び/またはF2が第2のFc領域を含む項目30?52のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目54)
F1及びF2を含むキメラタンパク質が、F1及びF2を含まないキメラタンパク質に比べて長い半減期を示す項目30?53のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目55)
L3が処理可能なリンカーである項目30?54のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目56)
VWFタンパク質が非共有結合によってFVIIIタンパク質に会合する項目1?55のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目57)
VWFタンパク質及び/またはXTEN配列を含まないFVIIIタンパク質に比べて、または野生型FVIIIに比べて、キメラタンパク質の半減期が延長される項目1?56のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目58)
キメラタンパク質の半減期が、VWFタンパク質またはXTEN配列を含まないFVIIIタンパク質よりも、または野生型FVIIIよりも少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、または少なくとも約12倍長く延長される項目57に記載のキメラタンパク質。
(項目59)
キメラタンパク質の半減期が、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、少なくとも約34時間、少なくとも約35時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、少なくとも約72時間、少なくとも約84時間、少なくとも約96時間、または少なくとも約108時間である項目57に記載のキメラタンパク質。
(項目60)
キメラタンパク質の半減期がHemAマウスにて約40時間である項目57に記載のキメラタンパク質。
(項目61)
VWFタンパク質が実質的にVWFクリアランス受容体に結合しない項目1?60のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目62)
VWFタンパク質が、1以上のプロテアーゼ切断からFVIIIタンパク質を保護することができ、活性化からFVIIIタンパク質を保護することができ、FVIIIタンパク質の重鎖及び/または軽鎖を安定化することができ、または1以上のスカベンジャー受容体によるFVIIIタンパク質のクリアランスを防ぐことができる項目1?61のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目63)
VWFタンパク質が、FVIIIタンパク質上のVWF結合部位を遮蔽するまたは遮断することによって内在性のVWFがFVIIIタンパク質に結合するのを阻害するまたは妨ぐ項目1?62のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目64)
VWF結合部位がFVIIIタンパク質のA3ドメインまたはC2ドメインまたはA3ドメインとC2ドメイン双方に位置する項目63に記載のキメラタンパク質。
(項目65)
VWF結合部位が、配列番号65のアミノ酸1669?1689及び2303?2332に相当するアミノ酸配列を含む項目63に記載のキメラタンパク質。
(項目66)
第1のIg定常領域またはその一部及び第2のIg定常領域またはその一部が同一であるまたは異なる項目1?65のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目67)
FVIIIタンパク質が、少なくとも2つのXTEN配列、少なくとも3つのXTEN配列、少なくとも4つのXTEN配列、少なくとも5つのXTEN配列または少なくとも6つのXTEN配列に連結される、及び/または挿入される項目1?66のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目68)
FVIIIタンパク質が、A1ドメイン、a1酸性領域、A2ドメイン、a2酸性領域、Bドメイン、A3ドメイン、a3酸性領域、C1ドメイン、C2ドメイン、それらの1以上の断片、及びそれらの組み合わせから選択されるFVIIIの1以上のドメインを含む項目1?67のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目69)
FVIIIタンパク質における1以上の挿入部位が、A1ドメイン、a1酸性領域、A2ドメイン、a2酸性領域、Bドメイン、a3酸性領域、C1ドメイン、C2ドメイン、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるFVIIIの1以上のドメインの範囲内に、またはA1ドメインとa1酸性領域、a1酸性領域とA2ドメイン、A2ドメインとa2酸性領域、a2酸性領域とBドメイン、BドメインとA3ドメイン、A3ドメインとC1ドメイン、C1ドメインとC2ドメイン、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されるFVIIIタンパク質の1以上のドメインの間に、またはA1ドメインとa1酸性領域、a1酸性領域とA2ドメイン、A2ドメインとa2酸性領域、a2酸性領域とBドメイン、BドメインとA3ドメイン、A3ドメインとC1ドメイン、C1ドメインとC2ドメイン、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるFVIIIタンパク質の2つのドメインに間に位置付けられる項目10?68のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目70)
FVIIIタンパク質における1以上の挿入部位が、表7、表8、表9、及び表10におけるアミノ酸残基から成る群から選択される1以上のアミノ酸である項目10?68のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目71)
FVIIIタンパク質における挿入部位が、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応するアミノ酸745のすぐ下流に位置する項目70に記載のキメラタンパク質。
(項目72)
FVIIIタンパク質における挿入部位が、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応する残基1656及び残基1900のすぐ下流に位置する項目10?68のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目73)
FVIIIタンパク質における挿入部位が、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応する残基26、1656及び1900のすぐ下流である項目10?68のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目74)
FVIIIタンパク質における挿入部位が、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応する残基403及び745のすぐ下流である項目10?68のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目75)
FVIIIタンパク質における挿入部位が、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応する残基745及び1900のすぐ下流である項目10?68のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目76)
FVIIIタンパク質における挿入部位が、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応する残基18及び745のすぐ下流である項目10?68のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目77)
FVIIIタンパク質が二重鎖FVIIIアイソフォームである項目1?76のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目78)
FVIIIタンパク質が単鎖FVIIIアイソフォームである項目1?76のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目79)
FVIIIタンパク質がBドメインまたはその一部を含む項目1?78のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目80)
FVIIIタンパク質がSQ Bドメインを欠失させたFVIIIである項目79に記載のキメラタンパク質。
(項目81)
単鎖FVIIIアイソフォームが、完全長成熟第VIII因子ポリペプチド(配列番65)に対応する残基1648、残基1645若しくは双方の残基に相当する残基にて、またはSQ BDD第VIII因子(配列番号67)の残基754、残基751若しくは双方の残基に相当する残基にて少なくとも1つのアミノ酸置換を含有する項目78または79に記載のキメラタンパク質。
(項目82)
アミノ酸置換がアルギニン以外のアミノ酸である項目81に記載のキメラタンパク質。
(項目83)
二重鎖FVIIIアイソフォームが、FVIIIの重鎖を含む第1の鎖とFVIIIの軽鎖を含む第2の鎖とを含み、前記重鎖と前記軽鎖が金属結合で互いに会合する項目77に記載のキメラタンパク質。
(項目84)
D’ドメインが、配列番号21のアミノ酸764?866に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列含む項目1?83のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目85)
D3ドメインが、配列番号21のアミノ酸867?1240に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列含む項目1?84のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目86)
VWFタンパク質が単量体である項目1?85のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目87)
少なくとも2つのVWFタンパク質、少なくとも3つのVWFタンパク質、少なくとも4つのVWFタンパク質、少なくとも5つのVWFタンパク質、または少なくとも6つのVWFタンパク質を含む項目1?86のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目88)
VWFタンパク質が、配列番号21のアミノ酸764?1240に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む項目1?87のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目89)
VWFタンパク質が、配列番号21のアミノ酸764?1240から本質的に成る、またはそれから成る項目88に記載のキメラタンパク質。
(項目90)
VWFタンパク質が、配列番号21の残基1099、残基1142、または残基1099と1142の双方に相当する残基にて少なくとも1つのアミノ酸置換を含有する項目1?89のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目91)
VWFタンパク質が、配列番号21の残基1099、残基1142、または残基1099と1142の双方に相当する残基にて置換されるシステイン以外のアミノ酸を含有する項目1?89のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目92)
VWFタンパク質がさらに、VWFのD1ドメイン、D2ドメインまたはD1とD2のドメインを含む項目1?91のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目93)
VWFタンパク質がさらに、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、D4ドメイン、B1ドメイン、B2ドメイン、B3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、CKドメイン、それらの1以上の断片、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるVWFドメインを含む項目1?92のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目94)
VWFタンパク質が、(1)VWFのD’ドメイン及びD3ドメイン若しくはその断片、(2)VWFのD1、D’及びD3のドメイン若しくはその断片、(3)VWFのD2、D’及びD3のドメイン若しくはその断片、(4)VWFのD1、D2、D’及びD3のドメイン若しくはその断片、または(5)VWFのD1、D2、D’、D3及びA1のドメイン若しくはその断片から本質的に成る、またはそれから成る項目1?92のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目95)
VWFタンパク質がさらに、VWFタンパク質に操作可能に連結されるVWFまたはFVIIIのシグナルペプチドを含む項目1?94のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目96)
リンカーの1以上が、少なくともおよそ10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1200、1400、1600、1800、または2000のアミノ酸残基の長さを有する項目16?95のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目97)
リンカーの1以上が、およそ1?およそ2000アミノ酸残基の長さを有する項目16?95のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目98)
リンカーの1以上が、Gly/Serペプチドを含む項目96または97に記載のキメラタンパク質。
(項目99)
Gly/Serペプチドが(Gly4Ser)n(配列番号94)またはS(Gly4Ser)n(配列番号164)の式を有し、nが1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10から成る群から選択される正の整数である項目98に記載のキメラタンパク質。
(項目100)
(Gly4Ser)nリンカーが(Gly4Ser)3(配列番号100)または(Gly4Ser)4(配列番号165)である項目99に記載のキメラタンパク質。
(項目101)
リンカーが、20アミノ酸、35アミノ酸、48アミノ酸、73アミノ酸、または95アミノ酸を含む項目16?100のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目102)
切断可能なリンカーがSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSLVPRGSGG(配列番号166)である項目17?29及び42?101のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目103)
ポリシアル化、PEG化またはHES化される項目1?102のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目104)
第1のポリペプチドが、FVIII161(配列番号69)、FVIII169(配列番号70)、FVIII173(配列番号72)、FVIII195(配列番号73)、FVIII196(配列番号74)、FVIII199(配列番号75)、FVIII201(配列番号76)、FVIII203(配列番号77)、FVIII204(配列番号78)、FVIII205(配列番号79)、FVIII266(配列番号80)、FVIII267(配列番号81)、FVIII268(配列番号82)、FVIII269(配列番号83)、FVIII271(配列番号84)、FVIII272(配列番号85)またはFVIII282(配列番号159)に対して少なくとも約80%、90%、95%、99%または100%同一であるものを含み、第2のポリペプチドがVWF057(配列番号152)に対して少なくとも約80%、90%、95%、99%または100%同一であるものを含む項目1?20のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目105)
第1のポリペプチドがFVIII169(配列番号70)を含み、第2のポリペプチドがVWF057(配列番号152)を含む項目104に記載のキメラタンパク質。
(項目106)
キメラタンパク質が、それを必要とする対象からの出血を防ぐ及び/または止めるのに有効である項目1?105のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目107)
項目1?106のいずれか1項に記載のキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセット。
(項目108)
PC5またはPC7をコードするポリヌクレオチド鎖をさらに含む項目107に記載のポリヌクレオチド。
(項目109)
項目107または108に記載のポリヌクレオチドと前記ポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドのセットに操作可能に連結された1以上のプロモータとを含むベクター。
(項目110)
PC5またはPC7をコードするポリヌクレオチド鎖を含む追加のベクターをさらに含む項目109に記載のベクター。
(項目111)
項目107または108に記載のポリヌクレオチド、または項目109または110に記載のベクターを含む宿主細胞。
(項目112)
哺乳類細胞である項目111に記載の宿主細胞。
(項目113)
哺乳類細胞が、HEK293細胞、CHO細胞及びBHK細胞から選択される項目112に記載の宿主細胞。
(項目114)
項目1?106のいずれか1項に記載のキメラタンパク質、項目107若しくは108に記載のポリヌクレオチド、項目109若しくは110に記載のベクター、または項目111?113のいずれか1項に記載の宿主細胞と、薬学上許容可能なキャリアとを含む医薬組成物。
(項目115)
野生型FVIIIタンパク質に比べてFVIIIタンパク質が延長された半減期を有する項目114に記載の組成物。
(項目116)
キメラタンパク質の半減期が、野生型FVIIIよりも少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、または少なくとも約12倍長く延長される項目114または115に記載の組成物。
(項目117)
キメラタンパク質の半減期が、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、少なくとも約34時間、少なくとも約35時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、少なくとも約72時間、少なくとも約84時間、少なくとも約96時間、または少なくとも約108時間である項目114または115に記載の組成物。
(項目118)
キメラタンパク質の半減期が、HemAマウスにて約40時間である項目114または115に記載の組成物。
(項目119)
局所投与、眼内投与、非経口投与、クモ膜下投与、硬膜下投与、及び経口投与から成る群から選択される経路によって投与される項目114?118のいずれか1項に記載の組成物。
(項目120)
非経口投与が、静脈内投与または皮下投与である項目119に記載の組成物。
(項目121)
それを必要とする対象にて出血性の疾患または状態を治療するのに使用される項目114?120のいずれか1項に記載の組成物。
(項目122)
出血性の疾患または状態が、出血性凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、出血、筋肉への出血、口腔出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸郭内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、腸腰筋鞘における出血及びそれらの組み合わせから成る群から選択される項目121に記載の組成物。
(項目123)
対象は手術を受けることが予定されている項目121または122に記載の組成物。
(項目124)
治療が予防的なもの、または要求に応じたものである項目114?123のいずれか1項に記載の組成物。
(項目125)
キメラタンパク質の半減期の延長方法または増加方法であって、前記方法が、それを必要とする対象に、項目1?106のいずれか1項に記載のキメラタンパク質、項目107若しくは108に記載のポリヌクレオチド、項目109若しくは110に記載のベクター、項目111?113のいずれか1項に記載の宿主細胞、または項目114?124に記載のいずれか1項に記載の組成物の有効量を加えることを含み、その際、VWFタンパク質、XTEN配列、第1のIg定常領域またはその一部及び第2のIg定常領域またはその一部がキメラタンパク質の半減期を増加させる、前記延長方法または増加方法。
(項目126)
それを必要とする対象における出血性の疾患または障害の治療方法であって、有効量の項目1?106のいずれか1項に記載のキメラタンパク質、項目107若しくは108に記載のポリヌクレオチド、項目109若しくは110に記載のベクター、項目111?113のいずれか1項に記載の宿主細胞、または項目114?124のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含み、前記出血性の疾患または障害が、出血性凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、出血、筋肉への出血、口腔出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸郭内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、及び腸腰筋鞘における出血から成る群から選択される、前記治療方法。
(項目127)
対象が動物である項目125または126に記載の方法。
(項目128)
動物がヒトである項目127に記載の方法。
(項目129)
対象が血友病Aを患っている項目127または128に記載の方法。
(項目130)
治療が予防的なものまたは要求に応じたものである項目126?129のいずれか1項に記載の方法。
(項目131)
有効量が、約0.1μg/kg?500mg/kgである項目126?130のいずれか1項に記載の方法。
(項目132)
局所投与、眼内投与、非経口投与、クモ膜下投与、硬膜下投与、及び経口投与から成る群から選択される経路によって、項目1?106のいずれか1項に記載のキメラタンパク質、項目107若しくは108に記載のポリヌクレオチド、項目109若しくは110に記載のベクター、項目111?113のいずれか1項に記載の宿主細胞、または項目114?124のいずれか1項に記載の組成物を投与する項目125?131のいずれか1項に記載の方法。
(項目133)
非経口投与が、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、及び皮内投与から成る群から選択される項目132に記載の方法。
(項目134)
キメラタンパク質の作製方法であって、項目107若しくは108に記載のポリヌクレオチドまたは項目109若しくは110に記載のベクターによって1以上の宿主細胞に形質移入することと、宿主細胞にてキメラタンパク質を発現させることとを含む、前記作製方法。
(項目135)
キメラタンパク質を単離することをさらに含む項目134に記載の方法。
(項目136)
キメラタンパク質が対象における出血を止める及び/または妨げることに有効である項目124?135のいずれか1項に記載の方法。
(項目137)
リンカーが、FVIIIのa2領域またはその断片を含む項目19に記載のキメラタンパク質。
(項目138)
リンカーが、DKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号88)に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%
、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む、項目137に記載のキメラタンパク質。
(項目139)
リンカーが、アミノ酸配列IEPR(配列番号200)またはIEPRSFS(配列番号194)を含む項目19に記載のキメラタンパク質。
(項目140)
リンカーがFVIIIの完全長a2領域ではない項目138または139に記載のキメラタンパク質。
(項目141)
リンカーがFVIIIのa2領域の断片を含む項目42または43に記載のキメラタンパク質。
(項目142)
リンカーが、配列番号88、139、140、141、142、143、144、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、及び200から選択されるアミノ酸配列を含む項目141に記載のキメラタンパク質。
(項目143)
リンカーがアミノ酸配列IEPR(配列番号200)またはIEPRSFS(配列番号194)を含む項目142に記載のキメラタンパク質。
(項目144)
リンカーがFVIIIの完全長のa2領域ではない項目141?143のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
(項目145)
キメラタンパク質であって、
(i)第VIII因子(「FVIII」)タンパク質が288アミノ酸の長さのXTEN配列を含む、第1の免疫グロブリン(「Ig」)定常領域またはその一部に融合された前記FVIIIタンパク質を含む第1のポリペプチドと
(ii)中間の144アミノ酸のXTEN配列によって第2のIg定常領域またはその一部に融合されたフォンウィルブランド因子(「VWF」)のD’ドメインとD3ドメインを含むVWFタンパク質を含む第2のポリペプチドとを含み、
第1のポリペプチドが第1及び第2の定常領域を介して第2のポリペプチドに連結されるまたは会合する、前記キメラタンパク質。
(項目146)
144アミノ酸のXTEN配列と第2のIg定常領域との間で切断可能なリンカーをさらに含む項目145に記載のキメラタンパク質。
(項目147)
切断可能なリンカーがトロンビンによって切断可能である項目146に記載のキメラタンパク質。
(項目148)
切断可能なリンカーがIEPR(配列番号200)またはIEPRSFS(配列番号194)を含むアミノ酸配列を有する項目146または147に記載のキメラタンパク質。
(項目149)
切断可能なリンカーがIEPR(配列番号200)またはIEPRSFS(配列番号194)を含むアミノ酸配列を有し、前記リンカーがFVIIIの完全長のa2領域ではない項目146または147に記載のキメラタンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】XTENがFVIIIタンパク質内での挿入部位で挿入される、Fc領域に融合されたFVIIIタンパク質(A1?A2部分的または完全なB-A3-C1-C2)を含む第1のポリペプチドと、D’D3ドメインを含むVWFタンパク質と288未満のアミノ酸を有するXTENとトロンビン切断可能なリンカーと第2のFc領域を含む第2のポリペプチドとを含むキメラタンパク質の模式図である。FVIIIタンパク質におけるXTENの挿入及び/またはVWFタンパク質への融合が、流体力学半径を増すことによって及び受容体が介在するクリアランスを阻止することによってキメラタンパク質の半減期を延長する。VWFのD’D3ドメインは内在性VWFとのFVIIIの相互作用を阻止し、FVIIIタンパク質を安定化し、キメラタンパク質の半減期を延長する。FcドメインはD’D3ドメインをFVIIIタンパク質と共有結合させ、FcRn介在性のリサイクル経路を介してキメラタンパク質の半減期を延長することができる。トロンビン切断可能なリンカーは、FVIIIの活性化の際、D’D3ドメインの解放を可能にし、FVIIIとVWFのD’D3ドメインとの間での正確な配置を保証する。
【図2】FVIII-XTEN-Fc:D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体について3つのプラスミド発現系を示す図である;第1のプラスミドはXTENがBドメインに挿入される単鎖FVIII-XTEN-Fcをコードするヌクレオチド配列を含み;第2のプラスミドはXTEN配列が288未満のアミノ酸を含むD1D2D’D3-XTEN-Fcをコードするヌクレオチド配列を含み;第3のプラスミドはプロペプチドプロセッシング酵素であるPACEをコードするヌクレオチド配列を含む。3つのプラスミドから3つのポリペプチドが発現されると、細胞内プロセッシングによってD’D3ドメインからVWFのD1D2ドメインをプロセッシングすることができる。得られる複合体は、3つの産物、FVIII-XTEN/D’D3ヘテロ二量体である第1の分子と副産物であるD’D3-XTEN-Fcのホモ二量体である第2の分子と別の副産物、すなわち、FVIII(XTEN)-Fcである第3の分子を含有する。
【図3】ヘテロ二量体の半減期の延長に対するXTEN挿入の追加の効果を示す図である。FVIII169はFc領域に融合されたBドメインを欠失したFVIIIタンパク質を含み、その際、XTEN配列(たとえば、AE288)は成熟完全長FVIIIに対応するアミノ酸745にて挿入される。FVIII205はFc領域に融合されたBドメインを欠失させたFVIIIタンパク質を含み、その際、XTEN配列(たとえば、AE144)は成熟完全長FVIIIに対応するアミノ酸18にて挿入され、別のXTEN配列(たとえば、AE288)は成熟完全長FVIIIに対応するアミノ酸745にて挿入される。VWF031はトロンビン切断可能なリンカーによってFc領域に融合されたVWFのD’ドメインとD3ドメインとを含む(XTENなし)。VWF034はAE288に融合されたVWFのD’ドメイン及びD3ドメインとFc領域とを含む。FVIII169/VWF031(逆三角形)の半減期はHemAマウスにて16.7時間であり、FVIII205/VWF031(丸)の半減期はHemAマウスにて29.4時間であり、FVIII169/VWF034(四角)の半減期はHemマウスにて31.1時間である。
【図4】AE144XTENは、VWFのD’D3ドメインとFcドメインとの間に挿入されるとAE288XTENよりも良好な半減期の延長を付与することを示す図である。たとえば、VWF169/VWF034(四角)の半減期はHemAマウスで31.1時間である一方で、FVIII169/VWF057(丸)の半減期はHemAマウスにて42時間である。VWF057はAE144に融合されたVWFのD’D3ドメインとFc領域とを含む。
【図5】キメラタンパク質ヘテロ二量体の半減期の延長にFcドメインが必要であることを示す図である。FVIII205/VWF031(丸)の半減期を、FcRn結合部位に変異を含有する(IHH三連変異Fc)ので、FcRn経路を介してリサイクルすることができないFVIII263/VWF050(四角)とHemAマウス内で比べると、FVIII263/VWF050の半減期(23時間)はFVIII205/VWF031のそれ(29.4時間)より短い。このことは半減期の延長にFc領域が必要であることを示している。
【図6A】HemAマウスの尾クリップモデルにおけるBドメインを欠失させたFVIII(SQ BDDFVIII)と比べたFVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体の類似の急性期有効性を示す図である。マウスに75IU/kgを投与し、aPTTアッセイによって活性を測定した。SQ BDDFVIIIを丸で示す一方でFVIII169/VWF034を四角で示し、FVIII169/VWF057を菱形で示し、溶媒を逆三角形で示す。FVIII169、VWF034及びVWF057の詳細な構築物は本明細書の他のどこかで示す。
【図6B】37.5IU/kgの用量でHemAマウスにてBドメインを欠失させたFVIII(SQ BDDFVIII)と比べたFVIII169/VWF034の急性有効性を示す図であり、活性はaPTTアッセイにょって測定した。各処理群におけるマウスの失血中央値(uL)を横線で示し、C57/BL6マウスにおける失血(uL)を白抜き三角形として示し、37.5IU/kgのrBDD-FVIIIを投与した後の失血(μL)を白抜き丸として示し、37.5IU/kgのFVIII169/VWF034を投与した後の失血(uL)を白抜き四角として示し、溶媒の投与の後の失血(uL)を逆三角形として示す。
【図7】(A,B)rFVIII169/VWF057ヘテロ二量体は尾静脈横断面出血モデルにおいてHemAマウスにさらに長い保護を提供することを示す図である。(A)尾損傷の72時間前にrFVIII169/VWF057を投与されたマウス(四角)、尾損傷の48時間前にSQ BDD-FVIIIを投与されたマウス(菱形)、尾損傷の24時間前にSQ BDD-FVIIIを投与されたマウス(逆三角形)及び溶媒を投与されたマウス(丸)における再出血のデータを示す図である。活性はaPTTアッセイによって測定した。X軸は時間を示し、Y軸は非出血の比率を示す。(B)図7Aで示したマウスの4つのカテゴリーにおける相当する生存率を示す図である。尾損傷の72時間前に12IU/kgのFVIII169/VWF057を投与されたマウスは、尾損傷の24時間前にSQ BDD-FVIII処理を受けたマウスと比べて再出血での類似の保護及び類似の生存を示した。
【図8】(A)損傷の24時間前でのrBDD-FVIIIと比較した96時間前にrFVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体を受け取ったマウスにおける匹敵する再出血データを示す図である。黒四角は損傷の24時間前にFVIII169/VWF034を受け取ったマウスにおける再出血データを示し、白抜き四角は損傷の96時間前にFVIII169/VWF034を受け取ったマウスにおける再出血データを示し、黒菱形は損傷の24時間前にFVIII169/VWF057を受け取ったマウスにおける再出血データを示し、白抜き菱形は損傷の96時間前にFVIII169/VWF057を受け取ったマウスにおける再出血データを示し、黒丸は損傷の24時間前にrBDD-FVIIIを受け取ったマウスにおける再出血データを示し、白抜き丸は損傷の48時間前にrBDD-FVIIIを受け取ったマウスにおける再出血データを示し、黒逆三角形は溶媒を受け取ったマウスにおける再出血データを示す。X軸は時間を示し、Y軸は非出血の比率を示す。(B)損傷の24時間前でのrBDD-FVIIIと比較した96時間前にrFVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体を受け取ったマウスにおける生存曲線を示す図である。X軸は時間を示し、Y軸は生存の比率を示す。記号は図8Aと同じである。
【図9】代表的なFVIII-VWFヘテロ二量体及びFVIII169、FVIII286、VWF057、VWF059、及びVWF062の構築物の模式図を示す。たとえば、FVIII169構築物は、Fc領域に融合されたR1648A置換を伴ったBドメインを欠失させたFVIIIタンパク質を含み、その際、XTEN配列(たとえば、AE288)は成熟完全長FVIII(A1-a1-A2-a2-288XTEN-a3-A3-C1-C2-Fc)に対応するアミノ酸745にて挿入される。FVIII286構築物は、Fc領域に融合されたR1648置換を伴ったBドメインを欠失させたFVIIIタンパク質を含み、その際、XTEN配列(たとえば、AE288)は、FVIIIとFcの間で追加のa2領域を伴った成熟完全長FVIII(A1-a1-A2-a2-288XTEN-a3-A3-C1-C2-a2-Fc)に対応するアミノ酸745にて挿入される。VWF057は、LVPRGトロンビン部位(「LVPRG」;配列番号6)を含むVWFリンカーとGSリンカー(「GS」)を介してFc領域に連結されたVWFタンパク質のD’D3ドメイン(D’D3ドメインにて2つのアミノ酸置換、すなわち、C336AとC379Aを伴った)を含むVWF-Fc融合構築物であり、その際、XTEN配列(すなわち、AE144)はD’D3ドメインとVWFリンカーの間に挿入される(D’D3-144XTEN-GS+LVPRG-Fc)。VWF059は、VWFのリンカーとしてのFVIIIの酸性領域2(a2)を介してFc領域に連結されたVWFタンパク質のD’D3ドメイン(D’D3ドメインにて2つのアミノ酸置換、すなわち、C336AとC379Aを伴った)を含むVWF-Fc融合構築物であり、その際、XTEN配列(すなわち、AE144)はD’D3ドメインとVWFリンカーの間に挿入される。VWF062は、Fc領域に連結されたVWFタンパク質のD’D3ドメイン(D’D3ドメインにて2つのアミノ酸置換、すなわち、C336AとC379Aを伴った)を含むVWF-Fc融合構築物であり、その際、XTEN配列(すなわち、AE144)はD’D3ドメインとFc領域の間に挿入される(D’D3-144XTEN-Fc)。
【図10】FVIII/VWFヘテロ二量体の構築物、たとえば、FVIII169/VWF057、FVIII169/VWF059、FVIII169/VWF059A、及びFVIII169/VWF073を表す模式図である。矢印は、トロンビン切断可能な部位を導入するために任意のリンカーが付加される部位を示す。FVIII169/VWF057はLVPRG(配列番号6)を含むリンカーを有する。FVIII169/VWF059はFVIIIのa2領域
【化1A】

を含むリンカーを有する。FVIII169/VWF059Aは切り詰められたFVIIIのa2領域
【化1B】

を含むリンカーを有する。FVIII169/VWF073はIEPRSFS(配列番号194)から成るFVIIIのa2領域の断片を含むVWF073構築物(配列番号175)内でリンカーを有する。
【図11】FVIII169/VWF057及びFVIII-Fc対照のトロンビン消化に続くSDS-PAGE画像を示す。(A)抗D3抗体(AB96340)によるSDS-PAGEゲルの染色を示す。矢印は、切断されていない完全長のFVIII169/VWF057である「LCFc:D’D3-XTEN-Fc」及びトロンビンによる切断に続いて得られる断片である「D’D3-144XTEN」を強調する。(B)抗HC抗体(GMA012)によるSDS-PAGEゲルの染色を示す。矢印は、FVIIIの重鎖(「HC」)及びFVIIIのA2ドメインを強調する。(C)はパネル(A)とパネル(B)の重ね合わせを示す。各パネルの上に示す時点で試料を回収した。矢印は関連するタンパク質を指す。
【図12】FVIII169/VWF059のトロンビン消化に続くSDS-PAGE画像を示す。(A)抗D3抗体(AB96340)によるSDS-PAGEゲルの染色を示す。矢印は、切断されていない完全長のFVIII169/VWF059である「LCFc:D’D3-XTEN-Fc」及びトロンビンによる切断に続いて得られる断片である「D’D3-144XTEN」を強調する。(B)抗HC抗体(GMA012)によるSDS-PAGEゲルの染色を示す。矢印は、切断されていない完全長のFVIII169/VWF059;トロンビンによる切断に続いて得られる断片であるD’D3-144XTEN-a3、及びFVIIIのA2ドメインである「A2」を強調する。(C)はパネル(A)とパネル(B)の重ね合わせを示す。各パネルの上に示す時点で試料を回収した。
【図13】BDD-FVIII対照で処理したHemAマウス(四角)と比べたFVIII169/VWF059で処理したHemAマウス(丸)の急性有効性を示す図である。尾クリップに続いて失血値を測定した。p=0.9883
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、2つのポリペプチドを含むキメラタンパク質を指向し、第1のポリペプチドは第1のIg定常領域に融合されたFVIIIタンパク質を含み、第2のポリペプチドはXTEN配列によって第2のIg定常領域またはその一部に融合されたVWFタンパク質を含み、その際、該XTEN配列は288未満のアミノ酸を含有する。
I.定義
【0048】
用語「a」または「an」の実体はその実体の1以上を指すことが言及されるべきである;たとえば、「aヌクレオチド配列」は1以上のヌクレオチド配列を表すように理解される。そのようなものとして、「a」(または「an」)、「1以上」及び「少なくとも1つの」は本明細書では相互変換可能に使用することができる。
【0049】
さらに「及び/または」は本明細書で使用される場合、他を伴ってまたは他を伴わずに2つの特定された特徴または成分のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。従って、用語「及び/または」は本明細書で「A及び/またはB」のような語句で使用されるとき、「A及びB」、「AまたはB」(単独)、「A」(単独)と「B」(単独)を含むように意図される。同様に、用語「及び/または」は「A、B及び/またはC」のような語句で使用されるとき、以下の態様:A、B及びC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);C(単独)のそれぞれを包含するように意図される。
【0050】
態様が、述語「comprising」によって本明細書で記載される場合はどんな場合も、「consisting of」及び/または「consisting essentially of」という点で記載される別の類似の態様も提供されることが理解される。
【0051】
特に定義されない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語はすべて本開示が関連する当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。たとえば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,第2版,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,第3版,1999,Academic Press;and the Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,改訂,2000,Oxford University Pressは本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0052】
単位、接頭辞及び記号は国際単位系(SI)が許容した形態で示される。数値範囲は範囲を定義する数を含む。指示されない限り、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシの配向で記述される。本明細書で提供される見出しは本開示の種々の態様の限定ではなく、それは全体としての明細書を参照して得られる。従って、直下で定義される用語はその全体で明細書を参照することによってさらに完全に定義される。
【0053】
用語「約」は、およそ、大まかに、ほぼ、またはその領域でを意味するように本明細書で使用される。用語「約」が数値範囲と併せて使用される場合、それは、示される数値の上下の境界を拡大することによってその範囲を改変する。一般に、用語「約」は、たとえば、10パーセントの上下(高いまたは低い)の分散によって言及される値の上下で数値を改変することができる。
【0054】
用語「ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド」は複数の核酸と同様に単一の核酸も包含し、単離された核酸分子または構築物、たとえば、メッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは従来のホスホジエステル結合または従来ではない結合(たとえば、ペプチド核酸(PNA)にて見いだされるようなアミド結合)を含む。用語「核酸」はポリヌクレオチドに存在する任意の1以上の核酸断片、たとえば、DNAまたはRNAの断片を指す。「単離された」核酸またはポリヌクレオチドによって、ネイティブな環境から取り出されている核酸分子、DNAまたはRNAが意図される。たとえば、ベクターに含有される第VIII因子ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは本発明の目的で単離されたと見なされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種の宿主細胞にて維持される組換えポリヌクレオチドまたは溶液にて他のポリヌクレオチドから(部分的にまたは実質的に)精製された組換えポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたRNA分子には本発明のポリヌクレオチドの生体内のまたは試験管内のRNA転写物が挙げられる。本発明に係る単離されたポリヌクレオチドまたは核酸にはさらに、合成で製造されたそのような分子が挙げられる。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、たとえば、プロモータ、エンハンサ、リボソーム結合部位、または転写終結シグナルのような調節エレメントを含むことができる。
【0055】
本明細書で使用されるとき、「コーディング領域」または「コーディング配列」は、アミノ酸に翻訳可能なコドンから成るポリヌクレオチドの部分である。「停止コドン」(TAG、TGAまたはTAA)は通常、アミノ酸に翻訳されないけれども、それはコーディング領域の一部であると見なされてもよいが、隣接配列、たとえば、プロモータ、リボソーム結合部位、転写ターミネータ、イントロン等はコーディング領域の一部ではない。コーディング領域の境界は通常、得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端の開始コドン及び得られるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする3’末端の翻訳停止コドンによって決定される。本発明の2以上のコーディング領域は、単一のポリヌクレオチド構築物、たとえば、単一のベクターに、または別々のポリヌクレオチド構築物、たとえば、別々の(異なる)ベクターに存在することができる。その結果、要するに、単一のベクターがたった1つのコーディング領域を含有することができ、または2以上のコーディング領域を含むことができ、たとえば、単一のベクターが以下で記載されるような結合ドメインA及び結合ドメインBを別々にコードすることができるということになる。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチドまたは核酸は、本発明の結合ドメインをコードする核酸に融合されたまたは融合されていない非相同のコーディング領域をコードすることができる。非相同のコーディング領域には限定しないで、たとえば、分泌シグナルペプチドまたは非相同の機能的ドメインのような特定されたエレメントまたはモチーフが挙げられる。
【0056】
哺乳類細胞によって分泌される特定のタンパク質は、成長しているタンパク質鎖が粗面小胞体を横切った搬出がいったん開始されると成熟タンパク質からは切断される分泌シグナルペプチドに会合する。当業者は、シグナルペプチドが一般にポリペプチドのN末端に融合され、完全なまたは「完全長」のポリペプチドから切断されてポリペプチドの分泌された形態または「成熟」形態を生じることを知っている。特定の実施形態では、それに操作可能に会合するポリペプチドの分泌を指図する能力を保持するネイティブなシグナルペプチドまたはその配列の機能的誘導体。或いは、異種の哺乳類のシグナルペプチド、たとえば、ヒトの組織プラスミノーゲン活性因子(TPA)またはマウスのβ-グルクロニダーゼのシグナルペプチドまたはまたはそれらの機能的な誘導体を使用することができる。
【0057】
用語「下流」はヌクレオチド配列を指す場合、核酸またはヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列に対して3’に位置することを意味する。特定の実施形態では、下流のヌクレオチド配列は転写の出発点に続く配列に関係する。たとえば、遺伝子の翻訳開始コドンは転写の開始部位の下流に位置する。用語「下流」はポリペプチド配列を指す場合、アミノ酸またはアミノ酸挿入部位が参照アミノ酸のC末端に位置することを意味する。たとえば、成熟野生型FVIIIタンパク質に対応するアミノ酸745のすぐ下流の挿入部位は、挿入部位が成熟野生型FVIIIタンパク質に対応するアミノ酸745とアミノ酸746の間であることを意味する。
【0058】
用語「上流」は参照ヌクレオチド配列に対して5’に位置するヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、上流のヌクレオチド配列はコーディング領域または転写の開始点の5’側に位置する配列に関する。たとえば、ほとんどのプロモータは転写の開始部位の上流に位置する。
【0059】
本明細書で使用されるとき、用語「調節性領域」は、コーディング領域の上流(5’非コーディング配列)、コーディング領域の範囲内、またはコーディング領域の下流(3’非コーディング配列)に位置し、且つ会合するコーディング領域の転写、RNAプロセッシング、安定性または翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。調節性領域には、プロモータ、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセッシング部位、エフェクター結合部位及びステム/ループ構造が挙げられ得る。コーディング領域が真核細胞での発現を意図されるのであれば、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列は普通、コーディング配列に対して3’に位置するであろう。
【0060】
遺伝子産物、たとえば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、1以上のコーディング領域に操作可能に会合させたプロモータ及び/または転写若しくは翻訳の制御エレメントを含むことができる。操作可能な会合では、遺伝子産物、たとえば、ポリペプチドのためのコーディング領域は、調節性領域の影響下または制御下で遺伝子産物の発現をセットするような方法で1以上の調節性領域と会合する。たとえば、プロモータ機能の誘導がコーディング領域によってコードされる遺伝子産物をコードするmRNAの転写を生じるのであれば、且つ、プロモータとコーディング領域の間での結合の性質が遺伝子産物の発現を指図するプロモータの能力を妨害しないまたは転写されるDNA鋳型の能力を妨害しないのであれば、コーディング領域とプロモータは「操作可能に会合する」。プロモータに加えた他の転写制御エレメント、たとえば、エンハンサ、オペレータ、リプレッサ及び転写終結シグナルも遺伝子産物の発現を指図するようにコーディング領域と操作可能に会合させることができる。
【0061】
種々の転写制御領域が当業者に既知である。これらには限定しないで、サイトメガロウイルス由来のプロモータとエンハンサの断片(イントロンAと併せた前初期プロモータ)、サルウイルス40(初期プロモータ)及びレトロウイルス(たとえば、ラウス肉腫ウイルス)のような、しかし、これらに限定されない脊椎動物細胞で機能する転写制御領域が挙げられる。他の転写制御領域には、たとえば、アクチン、ヒートショックプロテイン、ウシ成長ホルモン、及びウサギβ-グロビンのような脊椎動物遺伝子由来のもの、と同様に真核細胞にて遺伝子発現を制御することが可能である他の配列が挙げられる。追加の好適な転写制御領域には、組織特異的なプロモータ及びエンハンサと同様にリンホカイン誘導性のプロモータ(たとえば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモータ)が挙げられる。
【0062】
同様に、種々の翻訳制御エレメントが当業者に既知である。これらには、リボソーム結合部位、翻訳の開始コドン及び終結コドン、及びピコルナウイルスに由来するエレメント(特に内部リボソーム侵入部位、またはCITE配列とも呼ばれるIRES)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
用語「発現」は本明細書で使用されるとき、それによってポリヌクレオチドが遺伝子産物、たとえば、RNAまたはポリペプチドを生じる過程を指す。それには、限定しないで、ポリヌクレオチドのメッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、小分子ヘアピンRNA(shRNA)、小分子干渉RNA(siRNA)または他の任意のRNA産物への転写、およびmRNAのポリペプチドへの翻訳が含まれる。発現は「遺伝子産物」を生じる。本明細書で使用されるとき、遺伝子産物は、核酸、たとえば、遺伝子の転写によって生じるメッセンジャーRNA、または転写物から翻訳されるポリペプチドのいずれかであることができる。本明細書で記載される遺伝子産物にはさらに、転写後修飾、たとえば、ポリアデニル化若しくはスプライシングを伴った核酸、または翻訳後修飾、たとえば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、若しくはタンパク質分解切断を伴ったポリペプチドが含まれる。
【0064】
「ベクター」は、宿主細胞への核酸のクローニング及び/または宿主細胞への核酸の移動のための媒体を指す。ベクターは、連結された断片のレプリコンをもたらすように別の核酸断片が連結されてもよいレプリコンであってもよい。「レプリコン」は、生体内での複製の自律単位として機能する、すなわち、それ自体の制御下で複製可能である遺伝エレメント(たとえば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。用語「ベクター」には、試験管内で、生体外でまたは生体内で核酸を細胞内に導入するためのウイルス性及び非ウイルス性双方の媒体が含まれる。たとえば、プラスミド、修飾された真核細胞ウイルスまたは修飾された細菌ウイルスを含む多数のベクターが当該技術で既知であり、使用されている。ポリヌクレオチドの好適なベクターへの挿入は、相補性付着末端を有する選択されたベクターに適当なポリヌクレオチド断片をライゲーションすることによって達成することができる。
【0065】
ベクターは、ベクターを取り込んでいる細胞の選択または特定を提供する選択可能なマーカーまたはレポーターをコードするように操作されてもよい。選択可能なマーカーまたはレポーターの発現によってベクターに含有される他のコーディング領域を取り込み、発現する宿主細胞の特定及び/または選択が可能になる。当該技術で既知であり、使用される選択可能なマーカー遺伝子の例には、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミド等に耐性を提供する遺伝子;及び表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節性遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子等が挙げられる。当該技術で既知であり、使用されるレポーターの例には、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、-ガラクトシダーゼ(LacZ)、-グルクロニダーゼ(Gus)等が挙げられる。選択可能なマーカーはレポーターであるとも見なされる。
【0066】
用語「プラスミド」は、細胞の中心的な代謝の一部ではない遺伝子を運ぶことが多く、普通、環状二本鎖のDNA分子の形態である染色体外のエレメントである。そのようなエレメントは、任意の供給源に由来する、自律的に複製する配列、ゲノムが統合する配列、ファージまたはヌクレオチドの配列、線状、環状、または超らせん状の一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAであってもよく、多数のヌクレオチド配列は、適当な3’非翻訳配列と共に選択された遺伝子産物についてのプロモータ断片とDNA配列を細胞に導入することが可能である独特な構築物に連結されているまたは組み換えられている。
【0067】
使用することができる真核細胞のウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、及びポックスウイルス、たとえば、ワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。非ウイルスベクターには、プラスミド、リポソーム、電気的に荷電した脂質(サイトフェクチン)、DNA/タンパク質複合体、及びバイオポリマーが挙げられる。
【0068】
「クローニングベクター」は、順次複製し、プラスミド、ファージまたはコスミドのように複製開始点を含み、連結された断片の複製をもたらすように別の核酸断片が連結されてもよい核酸の単位長さである「レプリコン」を指す。特定のクローニングベクターは一方の細胞型、たとえば、細菌では複製が可能であり、他方、たとえば、真核細胞では発現が可能である。クローニングベクターは通常、当該核酸配列の挿入のためにベクター及び/または1以上の複数のクローニング部位を含む細胞の選択に使用することができる1以上の配列を含む。
【0069】
用語「発現ベクター」は、宿主細胞への挿入に続いて挿入された核酸配列の発現を可能にするように設計された媒体を指す。挿入された核酸配列は、上述のような調節性領域と操作可能な関係で配置される。
【0070】
ベクターは、当該技術で周知の方法、たとえば、形質移入、エレクトロポレーション、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈澱、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体によって宿主細胞に導入される。
【0071】
「培養」、「培養すること」及び「培養すること」は本明細書で使用されるとき、細胞の増殖または分裂を可能にするまたは生きている状態で細胞を維持するのを可能にする試験管内の条件下で細胞をインキュベートすることを意味する。「培養された細胞」は本明細書で使用されるとき、試験管内で増殖させる細胞を意味する。
【0072】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリペプチド」は単一の「ポリペプチド」と同様に複数の「ポリペプチド」を包含するように意図され、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって線状に連結された単量体(アミノ酸)で構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2以上のアミノ酸の任意の鎖(単数)または鎖(複数)を指し、特定の長さの産物を指さない。従って、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」または2以上のアミノ酸の鎖(単数)または鎖(複数)を指すのに使用されるその他の用語は、「ポリペプチド」の定義の範囲内に含められ、用語「ポリペプチド」はそれらの用語の代わりに、またはそれらの用語と相互変換可能に使用することができる。用語「ポリペプチド」はまた、限定しないでグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、または天然に存在しないアミノ酸による修飾を含む、ポリペプチドの発現後修飾の産物を指すようにも意図される。ポリペプチドは、天然の生物供給源に由来することができ、または組換え技法で製造することもできるが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されない。それは化学合成を含む方法で生成することができる。
【0073】
「単離された」ポリペプチドまたはその断片、変異体または誘導体はその自然環境にはないポリペプチドを指す。精製の特定のレベルは必要とされない。たとえば、単離されたポリペプチドは単にそのネイティブなまたは天然の環境から取り出すことができる。好適な技法によって分離され、分画され、部分的にまたは実質的に精製されているネイティブのまたは組換えのポリペプチドと同様に、宿主細胞にて発現される組換えで作出されたポリペプチド及びタンパク質は本発明の目的では単離されたと見なされる。
【0074】
本発明に含められるのはまた、ポリペプチドの断片または変異体及びそれらの組み合わせである。用語「断片」または「変異体」は本発明のポリペプチド結合ドメインまたは結合分子を指す場合、参照ポリペプチドの特性(たとえば、FcRn結合ドメインまたはFc変異体に対するFcRn結合親和性、FVIII変異体についての凝固活性、またはVWF断片に対するFVIII結合活性)の少なくとも幾つかを保持するポリペプチドを含む。ポリペプチドの断片は、本明細書の他のどこかで議論される特異抗体断片に加えて、欠失断片と同様にタンパク質分解断片を含むが、天然に存在する完全長のポリペプチド(成熟ポリペプチド)を含まない。本発明のポリペプチド結合ドメインまたは結合分子の変異体には上述のような断片が含まれ、及びアミノ酸の置換、欠失または挿入のために変化したアミノ酸配列を持つポリペプチドも含まれる。変異体は天然に存在することができる、または天然に存在することができない。天然に存在しない変異体は当該技術で既知の変異誘発法を用いて作出することができる。変異体ポリペプチドは保存的なまたは非保存的なアミノ酸の置換、欠失または付加を含むことができる。
【0075】
本明細書で使用される用語「VWFタンパク質(単数)」または「VWFタンパク質(複数)」は、FVIIIと相互作用し、且つ、完全長VWFによって通常FVIIIに提供される少なくとも1以上の特性、たとえば、FVIIIaへの早すぎる活性を防ぐこと、早すぎるタンパク質分解を防ぐこと、早すぎるクリアランスをもたらすリン脂質膜との会合を防ぐこと、裸のFVIIIを結合することができるが、VWFが結合したFVIIIを結合することができないFVIIIクリアランス受容体への結合を防ぐこと、及び/またはFVIIIの重鎖と軽鎖の相互作用を安定化することを保持するVWF断片を意味する。
【0076】
「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。塩基性側鎖(たとえば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術で定義されている。従って、ポリペプチドにおけるアミノ酸が同一の側鎖ファミリーに由来する別のアミノ酸で置き換えられるならば、置換は保存的であると見なされる。別の実施形態では、アミノ酸の鎖は、側鎖ファミリーのメンバーの順及び/または組成で異なる構造的に類似する鎖によって保存的に置き換えることができる。
【0077】
当該技術で既知であるように、2つのポリペプチド間での「配列同一性」は一方のポリペプチドのアミノ酸配列を第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。本明細書で議論される場合、任意の特定のポリペプチドが別のポリペプチドに対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるかどうかは、たとえば、BESTFITプログラム(Wisconsin配列解析パッケージ,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI53711)のような、しかし、これに限定されない当該技術で既知の方法及びコンピュータプログラム/ソフトウエアを用いて決定することができる。BESTFITはSmith及びWaterman,Advances in Applied Mathematics,2:482-489(1981)のローカル相同性アルゴリズムを用いて2つの配列間の相同性の最良のセグメントを見いだす。BESTFITまたは他の配列比較プログラムを用いて特定の配列が本発明に係る参照配列に対して、たとえば、95%同一であるかどうかを決定する場合、パラメータは当然、同一性の比率が参照ポリペプチド配列の完全長にわたって算出され、参照配列におけるアミノ酸の総数の5%までの相同性でのギャップが許されるように設定される。
【0078】
本明細書で使用されるとき、VWF配列またはFVIIIタンパク質配列における「に対応するアミノ酸」または「同等のアミノ酸」は、第1のVWFまたはFVIIIの配列と第2のVWFまたはFVIIIの配列との間の同一性または類似性を最大化するように配列比較によって特定される。第2のVWFまたはFVIIIの配列における同等のアミノ酸を特定するのに使用される数は第1のVWFまたはFVIIIの配列における対応するアミノ酸を特定するのに使用される数に基づく。
【0079】
本明細書で使用されるとき、用語「挿入部位」は、異種の部分を挿入することができる位置のすぐ上流である、FVIIIポリペプチド、またはその断片、変異体または誘導体における位置を指す。「挿入部位」は数として特定され、その数は挿入部位が相当する成熟ネイティブFVIII(配列番号65)におけるアミノ酸の番号であり、それは挿入の位置のすぐN末端側である。たとえば、語句「a3は配列番号65のアミノ酸1656に相当する挿入部位でXTENを含む」は、異種の部分が配列番号65のアミノ酸1656とアミノ酸1657に相当する2つのアミノ酸の間に位置することを示す。
【0080】
語句「アミノ酸のすぐ下流」は本明細書で使用されるとき、アミノ酸の末端カルボキシル基のすぐ隣の位置を指す。同様に、語句「アミノ酸のすぐ上流」はアミノ酸の末端アミン基のすぐ隣の位置を指す。従って、語句「挿入部位の2つのアミノ酸間」は本明細書で使用されるとき、XTENまたは他の任意のポリペプチドが2つの隣接するアミノ酸間に挿入される位置を指す。従って、語句「アミノ酸のすぐ下流に挿入される」及び「挿入部位の2つのアミノ酸間に挿入される」は「挿入部位で挿入される」と同義で使用される。
【0081】
用語「挿入された」、「挿入される」、「に挿入された」または文法的に関連する用語は本明細書で使用されるとき、ネイティブな成熟ヒトFVIIIにおける類似の位置に比べたキメラポリペプチドにおけるXTENの位置を指す。本明細書で使用されるとき、その用語はネイティブな成熟ヒトFVIIIに比べた組換えFVIIIポリペプチドの特徴を指すのであって、キメラポリペプチドが作製された方法または工程を示す、暗示するまたは推察するものではない。たとえば、本明細書で提供されるキメラポリペプチドを参照して、語句「XTENはFVIIIポリペプチドの残基745のすぐ下流に挿入される」は、キメラポリペプチドがネイティブな成熟ヒトFVIIIにおけるアミノ酸745に相当するアミノ酸のすぐ下流で、たとえば、ネイティブな成熟ヒトFVIIIのアミノ酸745と746に相当するアミノ酸によって結合されたXTENを含むことを意味する。
【0082】
「融合」タンパク質または「キメラ」タンパク質は、自然界では天然に結合することはない第2のアミノ酸配列に連結された第1のアミノ酸配列を含む。通常別のタンパク質に存在するアミノ酸配列を融合ポリペプチドで一緒にすることができ、または通常同じタンパク質に存在するアミノ酸配列を融合ポリペプチドにて、たとえば、本発明の第VIII因子ドメインのIgFcドメインとの融合にて新しい配置に置くことができる。融合タンパク質は、たとえば、化学合成によって、またはペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを創り、翻訳することによって創り出される。キメラタンパク質はさらに、共有結合、非ペプチド結合または非共有結合によって第1のアミノ酸配列と会合する第2のアミノ酸配列を含むことができる。
【0083】
本明細書で使用されるとき、用語「半減期」は特定のポリペプチドの生体内での生物学的な半減期を指す。半減期は、対象に投与された量の半分が動物の循環及び/または他の組織から消えるのに必要とされる時間によって表されてもよい。所与のポリペプチドのクリアランス曲線を時間の関数として構築する場合、曲線は普通、迅速なαフェーズと長いβフェーズを伴う二相性である。αフェーズは通常、脈管間隙内と脈管間隙外の間での投与されたFcポリペプチドの平衡を表し、部分的にはポリペプチドのサイズによって決定される。βフェーズは通常、脈管間隙内でのポリペプチドの異化を表す。一部の実施形態では、FVIII及びFVIIIを含むキメラタンパク質は単相性であるので、αフェーズを有さず、単一のβフェーズだけを有する。従って、特定の実施形態では、用語、半減期は本明細書で使用されるとき、βフェーズにおけるポリペプチドの半減期を指す。ヒトにおけるヒト抗体の典型的なβフェーズの半減期は21日である。
【0084】
用語「連結される」は本明細書で使用されるとき、それぞれ、第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に共有結合で連結されるまたは非共有結合で連結される第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列は第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に直接連結することができ、または並置することができ、または代わりに、介在配列が第1の配列を第2の配列に共有結合することができる。用語「連結される」は、C末端またはN末端での第2のアミノ酸配列への第1のアミノ酸配列の融合を意味するだけでなく、第2のアミノ酸配列(またはそれぞれ第1のアミノ酸配列)における2つのアミノ酸への第1のアミノ酸配列(または第2のアミノ酸配列)全体の挿入も含む。一実施形態では、第1のアミノ酸配列はペプチド結合またはリンカーによって第2のアミノ酸配列に連結することができる。第1のヌクレオチド配列はホスホジエステル結合またはリンカーによって第2のヌクレオチド配列に連結することができる。リンカーは、ペプチドまたはポリペプチド(ポリペプチド鎖のための)またはヌクレオチドまたはヌクレオチド鎖(ヌクレオチド鎖のための)または化学部分(ポリペプチド鎖及びポリヌクレオチド鎖の双方)であることができる。用語「リンカー」はハイフン(-)によっても示される。
【0085】
本明細書で使用されるとき、用語「と会合する」は、第1のアミノ酸鎖と第2のアミノ酸鎖との間で形成される共有結合または非共有結合を指す。一実施形態では、用語「と会合する」は共有結合、非ペプチド結合または非共有結合を意味する。この会合はコロン、すなわち、(:)によって示すことができる。別の実施形態では、それはペプチド結合を除く共有結合を意味する。たとえば、アミノ酸システインは、第2のシステイン残基上のチオール基とジスルフィド結合または架橋を形成することができるチオール基を含む。ほとんどの天然に存在するIgG分子では、CH1領域とCL領域はジスルフィド結合によって会合し、2つの重鎖は、Kabat番号付け方式を用いて239と242(EU番号付け方式の226位と229位)に相当する位置で2つのジスルフィド結合によって会合する。共有結合の例には、ペプチド結合、金属結合、水素結合、ジスルフィド結合、シグマ結合、pi結合、デルタ結合、グリコシジル結合、アグノスチック結合、屈曲結合、双極性結合、Piバックグランド、二重結合、三重結合、四重結合、五重結合、六重結合、抱合、超抱合、芳香族性、ハプト数性、または反結合性が挙げられるが、これらに限定されない。非共有結合の非限定例には、イオン結合(たとえば、カチオン/pi結合または塩結合)、金属結合、水素結合(たとえば、二水素結合、二水素錯体、低バリア水素結合、または対称性水素結合)、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、機械的結合、ハロゲン結合、金原子間結合、インターカレーション、スタッキング、エントロピー力または化学極性が挙げられる。
【0086】
本明細書で使用される「単量体/二量体ハイブリッド」は、ジスルフィド結合によって互いに会合する第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖を含むキメラタンパク質を指し、その際、第1の鎖は凝固因子、たとえば、第VIII因子とFc領域を含み、第2の鎖は凝固因子を含まずに第2のFc領域を含む、本質的にそれから成る、またはそれから成る。従って、単量体/二量体ハイブリッド構築物はたった1つの凝固因子を有する単量体態様と2つのFc領域を有する二量体態様を含むハイブリッドである。
【0087】
本明細書で使用されるとき、用語「切断部位」または「酵素切断部位」は、酵素によって認識される部位を指す。特定の酵素切断部位は、細胞内プロセッシング部位を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、そのような部位の切断が凝固形成の部位で生じるように凝固カスケードの間に活性化される酵素によって切断される酵素切断部位を有する。例となるそのような部位には、たとえば、トロンビン、第XIa因子または第Xa因子によって認識されるものが挙げられる。例となるFXIaの切断部位には、たとえば、TQSFNDFTR(配列番号1)及びSVSQTSKLTR(配列番号3)が挙げられる。例となるトロンビンの切断部位には、たとえば、DFLAEGGGVR(配列番号4)、TTKIKPR(配列番号5)、LVPRG(配列番号6)、ALRPR(配列番号7)、ISDKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号106)、DKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号88)、及びIEPRSFS(配列番号194)が挙げられる。他の酵素切断部位は当該技術で既知であり、本明細書の他のどこかで記載されている。
【0088】
本明細書で使用されるとき、用語「プロセッシング部位」または「細胞内プロセッシング部位」は、ポリペプチドの翻訳の後機能する酵素についての標的であるポリペプチドにおける酵素切断部位の種類を指す。一実施形態では、そのような酵素はゴルジ内腔からゴルジを横断した区画の輸送の間に機能する。細胞内のプロセッシング酵素は細胞からのタンパク質の分泌に先立ってポリペプチドを切断する。そのようなプロセッシング部位の例には、たとえば、エンドペプチダーゼのPACE/フーリン(PACEは対合した塩基性アミノ酸切断酵素についての頭字語である)によって標的とされるものが挙げられる。これらの酵素はゴルジ膜に局在し、配列モチーフArg-[任意の残基]-(LysまたはArg)-Argのカルボキシ末端側でタンパク質を切断する。本明細書で使用されるとき、酵素の「フーリン」ファミリーには、たとえば、PCSK1(PC1/Pc3としても知られる)、PCSK2(PC2としても知られる)、PCSK3(フーリンまたはPACEとしても知られる)、PCSK4(PC4としても知られる)、PCSK5(PC5またはPC6としても知られる)、PCSK6(PACE4としても知られる)、またはPCSK7(PC7/LPC、PC8、またはSPC7としても知られる)が挙げられる。他のプロセッシング部位は当該技術で既知である。
【0089】
1を超えるプロセッシング部位または切断部位を含む構築物では、そのような部位は同一であってもよいし、または異なっていてもよいことが理解されるであろう。
【0090】
用語「フーリン」はEC番号3.4.21.75に相当する酵素である。フーリンは、PACE(対形成塩基性アミノ酸切断酵素)としても知られるサブチリシン様の前駆タンパク質転換酵素である。フーリンは不活性な前駆体タンパク質を生物学的に活性のあるタンパク質の変換するその区分を欠失させる。その細胞内輸送の間に、VWFのプロペプチドはフーリン酵素によって成熟VWF分子から切断することができる。一部の実施形態では、フーリンはVWFのD’D3からD1D2を切断する。他の実施形態では、フーリンをコードするヌクレオチド配列は、D1D2ドメインがフーリンによって細胞内で切り離しされ得るようにVWF断片をコードするヌクレオチド配列と一緒に発現させることができる。
【0091】
1を超えるプロセッシング部位または切断部位を含む構築物では、そのような部位は同一であってもよいし、または異なっていてもよいことが理解されるであろう。
【0092】
「処理可能なリンカー」は本明細書で使用されるとき、本明細書の他のどこかで記載される少なくとも1つの細胞内プロセッシング部位を含むリンカーを指す。
【0093】
止血障害は本明細書で使用されるとき、フィブリン血栓を形成する能力の損傷によりまたはフィブリン血栓を形成できないために、自然にまたは外傷の結果として出血する傾向を特徴とする遺伝的に継承されたまたは後天性の状態を意味する。そのような障害の例には血友病が挙げられる。3つの主な形態は、血友病A(第VIII因子の欠損)、血友病B(第IX因子の欠損、または「クリスマス病」)、及び血友病C(第XI因子の欠損、軽い出血傾向)である。他の止血障害には、たとえば、フォンウィルブランド病、第XI因子の欠損(PTAの欠損)、第XII因子の欠損、フィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子または第XIII因子における欠陥または構造的異常、GPIbにおける欠陥若しくは欠損であるベルナール・スリエ症候群が挙げられる。VWFに対する受容体であるGPIbは欠陥があることがあり得、一次血栓形成(一次止血)の欠如及び高い出血傾向、及びGlanzman及びNaegeliの血小板無力症(Glanzmanの血小板無力症)をもたらし得る。肝不全(急性及び慢性型)では、肝臓による凝固因子の不十分な産生があり、これが出血のリスクを高め得る。
【0094】
本発明のキメラ分子は予防的に使用することができる。本明細書で使用されるとき、用語「予防的な治療」は出血症状の出現に先立つ分子の投与を指す。一実施形態では、一般的な止血剤を必要とする対象は手術を受けているまたは受けようとしている。本発明のキメラタンパク質は予防剤として手術に先立ってまたは手術後に投与することができる。本発明のキメラタンパク質を手術中または手術後に投与して急性期出血症状の出現を制御することができる。手術には、肝臓移植、肝臓切除術、歯科処置または幹細胞移植を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0095】
本発明のキメラタンパク質は要求に応じた治療でも使用される。用語「要求に応じた治療」は出血症状の出現の兆候に対応したまたは出血を起こし得る活動の前のキメラ分子の投与を指す。態様の1つでは、手術後のような出血が始まるときに、または手術前のような出血が予想されるときに要求に応じた治療が対象に与えられ得る。別の態様では、接触型スポーツのような出血のリスクを高める活動に先立って要求に応じた治療が与えられ得る。
【0096】
本明細書で使用されるとき、用語「急性出血」は根底にある原因に関わりのない出血症状の出現を指す。たとえば、対象は、外傷、尿毒症、遺伝的な出血性障害(たとえば、第VII因子の欠損)、血小板の障害、または凝固因子に対する抗体の発生による耐性を有してもよい。
【0097】
治療する、治療、治療することは本明細書で使用されるとき、たとえば、疾患または状態の重症度の軽減;疾患経過の持続時間の低減;疾患または状態に関連する1以上の症状の改善;疾患または状態を必ずしも治癒させることなく疾患または状態の対象に有益な効果を提供すること、または疾患または状態に関連する1以上の症状の予防を指す。一実施形態では、用語「治療すること」または「治療」は、本発明のキメラタンパク質またはVWF断片を投与することによって対象にてFVIIIのトラフ濃度を少なくとも約1IU/dL、2IU/dL、3IU/dL、4IU/dL、5IU/dL、6IU/dL、7IU/dL、8IU/dL、9IU/dL、10IU/dL、11IU/dL、12IU/dL、13IU/dL、14IU/dL、15IU/dL、16IU/dL、17IU/dL、18IU/dL、19IU/dL、または20IU/dLで維持することを意味する。別の実施形態では、治療することまたは治療は、FVIIIのトラフ濃度を約1?約20IU/dL、約2?約20IU/dL、約3?約20IU/dL、約4?約20IU/dL、約5?約20IU/dL、約6?約20IU/dL、約7?約20IU/dL、約8?約20IU/dL、約9?約20IU/dL、または約10?約20IU/dLの間で維持することを意味する。疾患または状態の治療または治療することには、対象におけるFVIII活性を非血友病対象のFVIII活性の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%に匹敵するレベルで維持することも含まれ得る。治療に必要とされる最小限のトラフ濃度は1以上の既知の方法によって測定することができ、各人について調整(増減)することができる。
II.キメラタンパク質
【0098】
本発明は、FVIIIの半減期限定因子、すなわち、内在性のVWFがFVIIIタンパク質に会合するのを妨げるまたは阻害することによって、XTEN配列に融合されたVWFタンパク質を用いたキメラタンパク質の半減期を延長することを指向する。内在性のVWFは非共有結合複合体でFVIIIの約95%?約98%に会合する。内在性のVWFはFVIIIの半減期限定因子である一方で、FVIIIタンパク質に結合した内在性のVWFは様々な方法でFVIIIを保護することも知られている。たとえば、完全長のVWF(約250kDaを有する多量体としての)は、プロテアーゼ切断及びFVIIIの活性化からFVIIIを保護し、FVIIIの重鎖及び/または軽鎖を安定化し、且つスカベンジャー受容体によるFVIIIのクリアランスを防ぐことができる。しかし、同時に、内在性のVWFは、飲作用を防ぐことによって及びVWFクリアランス経路を介して系からFVIII/VWF複合体をクリアランスすることによってFVIIIの半減期を限定する。理論に束縛されない一方で、内在性のVWFは、半減期延長因子に融合されたキメラタンパク質の半減期が野生型FVIIIの半減期の約2倍より長くなるのを妨ぐ半減期限定因子であると考えられる。従って、本発明は、D’ドメインとD3ドメインを含むVWFタンパク質(たとえば、VWF断片)を用いて内在性のVWFとFVIIIタンパク質との間の相互作用を妨げることまたは阻害すること、と同時にIg定常領域またはその一部との組み合わせでXTEN配列を用いることによって得られるFVIIIタンパク質の半減期を増やすことを指向する。特に、本発明は、さらに短いXTEN配列(すなわち、288未満のアミノ酸を含有するXTEN、すなわち、288アミノ酸よりも短いXTEN)がキメラタンパク質の半減期を延長することにおいてさらに良好であることを示す。
【0099】
一実施形態では、本発明は、(i)第1のIg定常領域またはその一部に融合されたFVIIIタンパク質を含む第1のポリペプチドと、(ii)中間のXTEN配列によって第2のIg定常領域またはその一部に融合されたVWFのD’ドメインとD3ドメインを含むVWFタンパク質を含む第2のポリペプチドを含むキメラタンパク質を指向し、その際、XTEN配列は288未満のアミノ酸残基を含有し、第1のポリペプチドは第2のポリペプチドに連結され、または会合される。別の実施形態では、第2のポリペプチドにおけるXTEN配列は12アミノ酸?287アミノ酸の間の長さを有するアミノ酸配列から成る。他の実施形態では、キメラタンパク質は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む相当する融合タンパク質と比べて長い半減期を示し、その際、第2のポリペプチドは少なくとも288のアミノ酸、たとえば、AE288、たとえば、配列番号8を含有するXTEN配列を含む。さらに他の実施形態では、第2のポリペプチドにおけるXTEN配列は、少なくとも約36、少なくとも約42、少なくとも約72、または少なくとも約144のアミノ酸、しかし、288未満のアミノ酸、たとえば、AE42、AE72、AE144(AE144、AE144_2A、AE144_3B、AE144_4A、AE144_5A、AE144_6B)、AG42、AG72、またはAG144(AG144、AG144_A、AG144_B、AG144_C、AG144_F)、たとえば、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号14;配列番号60;配列番号61;配列番号62;または配列番号63を含有する。
【0100】
本発明のキメラタンパク質はさらに、FVIIIタンパク質を第1のIg定常領域またはその一部と連結する第2のXTEN配列を含むことができる。
【0101】
特定の実施形態では、本発明は、(i)第1のIg定常領域またはその一部に融合されたFVIIIタンパク質を含む第1のポリペプチドと、(ii)中間の第1のXTEN配列によって第2のIg定常領域またはその一部に融合されたVWFのD’ドメインとD3ドメインを含むVWFタンパク質を含む第2のポリペプチドを含むキメラタンパク質を指向し、その際、XTEN配列は288未満のアミノ酸残基を含有し、第1のポリペプチドは第2のポリペプチドに連結され、または会合され、第1のポリペプチドはさらに、FVIIIタンパク質内での1以上の挿入部位で挿入される、またはFVIIIタンパク質及び/または第1のIg定常領域またはその一部に融合される第2のXTEN配列を含む。従って、一実施形態では、第2のXTEN配列はFVIIIタンパク質内の1以上の挿入部位にて挿入される。別の実施形態では、第2のXTEN配列はFVIIIタンパク質またはIg定常領域またはその一部に融合される。他の実施形態では、第2のXTEN配列はFVIIIタンパク質内の1以上の挿入部位にて挿入され、第3のXTEN配列はFVIIIタンパク質及び/または第1のIg定常領域またはその一部に融合される。
【0102】
第2及び/または第3のXTEN配列は任意の長さのXTENアミノ酸であることができる。たとえば、第2及び/または第3のXTEN配列は、本明細書の他のどこかで開示され、たとえば、AE42、AE72、AE864、AE576、AE288、AE144、AG864、AG576、AG288、及びAG144、たとえば、配列番号8;配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号17;配列番号54;配列番号19;配列番号16;配列番号18;配列番号15;配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号14;配列番号60;配列番号61;配列番号62または配列番号63である。特定の実施形態では、第2及び/または第3のXTEN配列はAE288またはAG288、たとえば、配列番号8または19である。
【0103】
特定の実施形態では、本発明は、(i)任意のXTEN配列(X2)がFVIIIタンパク質内の1以上の挿入部位で挿入されるまたはFVIIIタンパク質若しくは第1のIg定常領域またはその一部に融合される、任意のリンカーによって第1のIg定常領域またはその一部に融合されるFVIIIタンパク質を含む第1のポリペプチドと、(ii)VWFタンパク質と第2のIg定常領域またはその一部との間のXTEN配列(X1)によって第2のIg定常領域またはその一部に融合されたVWFのD’ドメインとD3ドメインを含むVWFタンパク質を含む第2のポリペプチドを含むキメラタンパク質を指向し、その際、XTEN配列(X1)は288未満のアミノ酸残基を含有し、リンカーによってVWFタンパク質に融合され、且つ第1のポリペプチドと第2のポリペプチドは会合する。一部の実施形態では、本発明は、(i)任意のXTEN配列(X2)がFVIIIタンパク質内の1以上の挿入部位で挿入されるまたはFVIIIタンパク質若しくは第1のIg定常領域またはその一部に融合される、任意のリンカーによって第1のIg定常領域またはその一部に融合されるFVIIIタンパク質を含む第1のポリペプチドと、(ii)VWFタンパク質と第2のIg定常領域またはその一部との間のXTEN配列(X1)によって第2のIg定常領域またはその一部に融合されたVWFのD’ドメインとD3ドメインを含むVWFタンパク質を含む第2のポリペプチドとを含むキメラタンパク質を指向し、その際、XTEN配列(X1)は288未満のアミノ酸残基を含有し、リンカーによって第2のIg定常領域またはその一部に融合され、且つ第1のポリペプチドと第2のポリペプチドは会合する。他の実施形態では、XTEN配列(X1)をVWFタンパク質または第2のIg定常領域またはその一部に融合するリンカーは切断可能なリンカーである。切断可能なリンカーの非限定例は本明細書の他のどこかで示される。特定の実施形態では、リンカーはトロンビン切断可能なリンカーである。
【0104】
一部の実施形態では、キメラタンパク質は2つのポリペプチド鎖であり、第1の鎖は上述した第1のポリペプチドを含み、第2の鎖は上述した第2のポリペプチドを含む。たとえば、2つのポリペプチド鎖は、(i)単鎖FVIIIタンパク質と、第1のIg定常領域またはその一部と、FVIIIタンパク質内の1以上の挿入部位で挿入されるまたはFVIIIタンパク質もしくは第1のIg定常領域またはその一部に融合される任意のXTEN配列とを含む第1の鎖と、(ii)中間のXTEN配列(X1)によって第2のIg定常領域またはその一部に融合されるVWFタンパク質を含む第2の鎖とを含み、その際、XTEN配列(X1)は288未満のアミノ酸を含有する。
【0105】
特定の実施形態では、キメラタンパク質は2つのポリペプチド鎖であり、第1の鎖はFVIIIタンパク質の重鎖を含み、且つ第2の鎖は、N末端からC末端まで、FVIIIタンパク質の軽鎖と、FVIIIタンパク質内の1以上の挿入部位に挿入されるまたはFVIIIタンパク質若しくは第1の定常領域またはその一部に融合される任意のXTEN配列と、第1のIg定常領域またはその一部と、任意のリンカー(たとえば、処理可能なリンカー)とVWFタンパク質とXTEN配列(X1)と第2の任意のリンカー(たとえば、切断可能なリンカー)と第2のIg定常領域またはその一部とを含む。
【0106】
他の実施形態では、キメラタンパク質は3つのポリペプチド鎖、(i)FVIIIタンパク質の重鎖を含む第1の鎖と、(ii)FVIIIタンパク質の軽鎖と第1のIg定常領域またはその一部とFVIIIタンパク質の重鎖又は軽鎖の中での1以上の挿入部位で挿入されるまたはFVIIIタンパク質若しくは第1のIg定常領域またはその一部に融合される任意のXTEN配列とを含む第2の鎖と、(iii)中間のXTEN配列(X1)によって第2のIg定常領域またはその一部に融合されるVWFタンパク質を含む第3の鎖であり、その際、第1の鎖と第2の鎖は非共有結合、たとえば、金属結合によって会合し、且つ第2の鎖と第3の鎖は共有結合、たとえば、ジスルフィド結合によって会合する。
【0107】
さらに他の実施形態では、キメラタンパク質は、N末端からC末端まで、単鎖FVIIIタンパク質と、FVIIIタンパク質内の1以上の挿入部位で挿入されるまたはFVIIIタンパク質若しくは第1のIg定常領域またはその一部に融合される任意のXTEN配列と、第1のIg定常領域またはその一部と、任意のリンカー(たとえば、処理可能なリンカー)と、VWFタンパク質と、XTEN配列(X1)と、第2の任意のリンカー(たとえば、切断可能なリンカー)と、第2のIg定常領域またはその一部とを含む単鎖である。
【0108】
特定の実施形態では、キメラタンパク質は以下の式(a)?(hh):
(a)FVIII-F1:F2-L2-X-L1-V;
(b)FVIII-F1:V-L1-X-L2-F2;
(c)F1-FVIII:F2-L2-X-L1-V;
(d)F1-FVIII:V-L1-X-L2-F2;
(e)FVIII-X2-F1:F2-L2-X1-L1-V;
(f)FVIII-X2-F1:V-L1-X1-L2-F2;
(g)FVIII(X2)-F1:F2-L2-X1-L1-V;
(h)FVIII(X2)-F1:V-L1-X1-L2-F2;
(i)F1-X2-F1:F2-L2-X1-L1-V;
(j)F1-X2-F1:V-L1-X1-L2-F2;
(k)V-L1-X-L2-F2-L3-FVIII-L4-F1;
(l)V-L1-X-L2-F2-L3-F1-L4-FVIII;
(m)F1-L4-FVIII-L3-F2-L2-X-L1-V;
(n)FVIII-L4-F1-L3-F2-L2-X-L1-V;
(o)FVIII-L4-F1-L3-V-L1-X-L2-F2;
(p)FVIII-L4-F1-L3-F2-L2-X-L1-V;
(q)F2-L2-X-L1-V-L3-F1-L4-FVIII;
(r)F2-L2-X-L1-V-L3-FVIII-L4-F1;
(s)V-L1-X1-L2-F2-L3-FVIII(X2)-L4-F1;
(t)V-L1-X1-L2-F2-L3-F1-L4-FVIII(X2);
(u)F1-L4-FVIII(X2)-L3-F2-L2-X1-L1-V;
(v)F-L4-FVIII(X2)-L3-V-L1-X1-L2-F2;
(w)FVIII(X2)-L4-F1-L3-V-L1-X1-L2-F2;
(x)FVIII(X2)-L4-F1-L3-F2-L2-X1-L1-V;
(y)F2-L2-X1-L1-V-L3-F1-L4-FVIII(X2);
(z)F2-L2-X1-L1-V-L3-FVIII(X2)-L4-F1;
(aa)V-L1-X2-L2-F2-L3-FVIII-L4-X2-L5-F1;
(bb)V-L1-X2-L2-F2-L3-F1-L5-X2-L4-FVIII;
(cc)F1-L5-X2-L4-FVIII-L3-F2-L2-X2-L1-V;
(dd)F1-L5-X2-L4-FVIII-L3-V-L1-X2-L2-F2;
(ee)FVIII-L5-X2-L4-F2-L3-V-L1-X1-L2-F1;
(ff)FVIII-L5-X2-L4-F2-L3-F1-L2-X1-L1-V;
(gg)F1-L2-X1-L1-V-L3-F2-L4-X2-L5-FVIII;または
(hh)F1-L2-X1-L1-V-L3-FVIII-L5-X2-L4-F2;の1つを含み、
式中、VはD’ドメイン及びD3ドメインを含むVWFタンパク質であり、XまたはX1は288未満のアミノ酸を含有する第1のXTEN配列であり、X2は第2のXTEN配列であり、FVIIIはFVIIIタンパク質を含み、
FVIII(X2)はFVIIIタンパク質内の1以上の挿入部位で挿入される第2のXTEN配列を有するFVIIIタンパク質を含み、
F1は第1のIg定常領域またはその一部であり、
F2は第2のIg定常領域またはその一部であり、
L1、L2、L3、L4またはL5は任意のリンカーであり、
(-)はペプチド結合であり、
(:)は共有結合または非共有結合である。
【0109】
一実施形態では、XまたはX1は12アミノ酸?287アミノ酸の間の長さを有するアミノ酸配列から成る。別の実施形態では、キメラタンパク質は式を含む相当する融合タンパク質と比べて長い半減期を示し、その際、XまたはX1はAE288、たとえば、配列番号8である。
【0110】
他の実施形態では、式におけるXまたはX1は、少なくとも約36、少なくとも約42、少なくとも約72、または少なくとも約144アミノ酸、しかし、288未満のアミノ酸、たとえば、AE42、AE72、AE144(AE144、AE144_2A、AE144_3B、AE144_4A、AE144_5A、AE144_6B)、AG42、AG72、またはAG144(AG144、AG144_A、AG144_B、AG144_C、AG144_F)、たとえば、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号14;配列番号60;配列番号61;配列番号62;または配列番号63を含有する。
【0111】
さらに他の実施形態では、X2は、少なくとも約36アミノ酸、少なくとも42アミノ酸、少なくとも144アミノ酸、少なくとも288アミノ酸、少なくとも576アミノ酸、または少なくとも864アミノ酸、たとえば、AE42、AE72、AE864、AE576、AE288、AE144、AG864、AG576、AG288、またはAG144、たとえば、配列番号9;配列番号10;配列番号15;配列番号16;配列番号8;配列番号11;配列番号17;配列番号18、配列番号19、または配列番号14の長さを有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、X2はAE288またはAG288、たとえば、配列番号8または19である。
【0112】
特定の実施形態では、XまたはX1及び/もしくはX2を含むキメラタンパク質はXまたはX1及び/もしくはX2を含まないキメラタンパク質に比べて延長された半減期を有する。他の実施形態では、L1及び/またはL2は切断可能なリンカーである。さらに他の実施形態では、L4及び/またはL5は切断可能なリンカーである。
II.A.フォンウィルブランド因子(VWF)タンパク質
【0113】
VWF(F8VWFとしても知られる)は血液血漿に存在する大きな多量体糖タンパク質であり、内皮(バイベル・パラーデ小体にて)、巨核球(血小板のα顆粒)及び内皮細胞下の結合組織にて構成的に産生される。塩基性VWF単量体は2813のアミノ酸のタンパク質である。単量体はどれも皆、特定の機能を持つ多数の特定のドメイン、D’/D3ドメイン(第VIII因子に結合する)、A1ドメイン(血小板GPIb受容体、ヘパリン及び/またはおそらくコラーゲンに結合する)、A3ドメイン(コラーゲンに結合する)、C1ドメイン(これが活性化されるとRGDドメインが血小板のインテグリンαIIbβ3に結合する)、タンパク質のC末端における「システインノット」ドメイン(VWFが血小板由来増殖因子(PDGF)、形質転換増殖因子-β(TGFβ)及びβ-ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(βHCG)とともに共有する)を含有する。
【0114】
一実施形態では、VWFタンパク質はVWF断片である。用語「VWF断片」は本明細書で使用されるとき、内在性VWFのFVIIIへの結合を阻害することが可能であるD’ドメイン及びD3ドメインを含む機能的なVWF断片を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、VWF断片はFVIIIタンパク質に結合する。別の実施形態では、VWF断片はFVIIIタンパク質上のVWF結合部位を遮断し、それによって内在性のVWFとのFVIIIタンパク質の相互作用を阻害する。VWF断片には、VWFのこれらの活性を保持する誘導体、変異体、突然変異体または類似体が挙げられる。
【0115】
ヒトVWFについての2813単量体アミノ酸配列はGenbankにて受入番号_NP_000543.2_として報告されている。ヒトVWFをコードするヌクレオチド配列はGenbankにて受入番号_NM_000552.3_として報告されている。ヒトVWFのヌクレオチド配列は配列番号20として指定されている。配列番号21は完全長VWFのアミノ酸配列である。VWFの各ドメインを表1にて列記する。
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】

【表1-6】

【表1-7】

【表1-8】

【表1-9】

【表1-10】

【表1-11】

【表1-12】

【0116】
VWFタンパク質は本明細書で使用されるとき、VWFのD’ドメインとD3ドメインを含むVWF断片であることができ、その際、VWF断片は第VIII因子(FVIII)に結合し、内在性VWF(完全長VWF)のFVIIIへの結合を阻害する。D’ドメインとD3ドメインを含むVWF断片はさらにA1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、D1ドメイン、D2ドメイン、D4ドメイン、B1ドメイン、B2ドメイン、B3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、CKドメイン、それらの1以上の断片、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されるVWFドメインを含むことができる。一実施形態では、VWF断片は、(1)VWFのD’及びD3ドメインまたはそれらの断片、(2)VWFのD1、D’及びD3ドメインまたはそれらの断片、(3)VWFのD2、D’及びD3ドメインまたはそれらの断片、(4)VWFのD1、D2、D’及びD3ドメインまたはそれらの断片、または(5)VWFのD1、D2、D’、D3及びA1ドメインまたはそれらの断片を含む、それから本質的に成る、または成る。本明細書で記載されるVWF断片はVWFクリアランス受容体に結合する部位を含有しない。別の実施形態では、本明細書で記載されるVWF断片は配列番号21のアミノ酸764?1274ではない。本発明のVWF断片はVWF断片に連結されるまたは融合される任意の他の配列を含むことができる。たとえば、本明細書で記載されるVWF断片はさらにシグナルペプチドを含むことができる。
【0117】
一実施形態では、D’ドメイン及びD3ドメインを含むVWF断片はFVIIIタンパク質に結合するまたはそれと会合する。FVIIIタンパク質に結合するまたはそれと会合することによって、本発明のVWF断片はプロテアーゼ切断及びFVIIIの活性化からFVIIIを保護し、FVIIIの重鎖及び軽鎖を安定化し、スカベンジャー受容体によるFVIIIのクリアランスを妨げる。別の実施形態では、VWF断片はFVIIIタンパク質に結合し、または会合し、FVIIIタンパク質のリン脂質及び活性化されたタンパク質Cへの結合を阻止するまたは妨げる。内在性の完全長VWFによるFVIIIタンパク質の結合を妨げるまたは阻害することによって本発明のVWF断片はVWFクリアランス受容体によるFVIIIのクリアランスを低下させるので、キメラタンパク質の半減期を延長する。したがって、キメラタンパク質の半減期の延長は、FVIIIタンパク質へのVWFクリアランス受容体の結合部位を欠いているVWF断片との結合または会合、及びVWFクリアランス受容体の結合部位を含有する内在性VWFからのVWF断片によるFVIIIタンパク質の遮蔽または保護による。VWF断片に結合したまたはそれによって保護されたFVIIIタンパク質はFVIIIタンパク質の再利用を可能にすることもできる。完全長VWF分子に含有されるVWFクリアランス経路受容体結合部位を排除することによって、本発明のFVIII/VWFヘテロ二量体はVWFクリアランス経路から遮蔽され、さらにFVIIIの半減期を延長する。
【0118】
一実施形態では、本発明で有用なVWFタンパク質はVWFのD’ドメインとD3ドメインを含み、その際、D’ドメインは配列番号21のアミノ酸764?866に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であり、その際VWFタンパク質は内在性VWFのFVIIIへの結合を妨げるまたは阻害する。別の実施形態では、VWFタンパク質はVWFのD’ドメインとD3ドメインを含み、その際、D3ドメインは配列番号21のアミノ酸867?1240に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であり、その際VWFタンパク質は内在性VWFのFVIIIへの結合を妨げるまたは阻害する。一部の実施形態では、本明細書で記載されるVWFタンパク質は、配列番号21のアミノ酸764?1240に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、VWFのD’ドメインとD3ドメインを含み、それらから本質的に成り、またはそれらから成り、その際、VWFタンパク質は内在性VWFのFVIIIへの結合を妨げるまたは阻害する。他の実施形態では、VWFタンパク質は、配列番号21のアミノ酸23?1240に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、D1、D2、D’及びD3のドメインを含み、それらから本質的に成り、またはそれらから成り、その際、VWFタンパク質は内在性VWFのFVIIIへの結合を妨げるまたは阻害する。さらに他の実施形態では、VWFタンパク質はさらに、それに操作可能に連結されたシグナルペプチドを含む。
【0119】
一部の実施形態では、本発明で有用なVWFタンパク質は、(1)D’D3ドメイン、D1D’D3ドメイン、D2D’D3ドメインまたはD1D2D’D3ドメインと、(2)約10アミノ酸までの(たとえば、配列番号21のアミノ酸764?1240から配列番号21のアミノ酸764?1250までの任意の配列)、約15アミノ酸までの(たとえば、配列番号21のアミノ酸764?1240から配列番号21のアミノ酸764?1255までの配列)、約20アミノ酸までの(たとえば、配列番号21のアミノ酸764?1240から配列番号21のアミノ酸764?1260までの配列)、約25アミノ酸までの(たとえば、配列番号21のアミノ酸764?1240から配列番号21のアミノ酸764?1265までの配列)、または約30アミノ酸までの(たとえば、配列番号21のアミノ酸764?1240から配列番号21のアミノ酸764?1260までの配列)追加のVWF配列とから本質的に成る、または成る。特定の実施形態では、D’ドメインとD3ドメインを含むまたはそれらから本質的に成るVWFタンパク質は配列番号21のアミノ酸764?1274でもないし、完全長の成熟VWFでもない。一部の実施形態では、D1D2ドメインはD’D3ドメインとトランスで発現される。一部の実施形態では、D1D2ドメインはD’D3ドメインとシスで発現される。
【0120】
他の実施形態では、D1D2ドメインに連結されたD’D3ドメインを含むVWFタンパク質はさらに、細胞内の切断部位、たとえば、(PACE(フーリン)またはPC5による切断部位)を含み、発現の際、D’D3ドメインからのD1D2ドメインの切断を可能にする。細胞内の切断部位の非限定例は本明細書の他のどこかで開示されている。
【0121】
さらに他の実施形態では、VWFタンパク質はD’ドメイン及びD3ドメインを含むが、(1)配列番号21に対応するアミノ酸1241?2813、(2)配列番号21に対応するアミノ酸1270?アミノ酸2813、(3)配列番号21に対応するアミノ酸1271?アミノ酸2813、(4)配列番号21に対応するアミノ酸1272?アミノ酸2813、(5)配列番号21に対応するアミノ酸1273?アミノ酸2813、(6)配列番号21に対応するアミノ酸1274?アミノ酸2813、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されるアミノ酸配列を含まない。
【0122】
さらに他の実施形態では、本発明のVWFタンパク質はD’ドメイン、D3ドメイン及びA1ドメインに相当するアミノ酸配列を含む、それから本質的に成るまたはそれから成り、その際、該アミノ酸配列は配列番号21のアミノ酸764?1479に対して少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であり、その際、VWFタンパク質は内在性VWFのFVIIIへの結合を妨げる。特定の実施形態では、VWFタンパク質は配列番号21のアミノ酸764?1274ではない。
【0123】
一部の実施形態では、本発明のVWFタンパク質はD’ドメインとD3ドメインを含むが、(1)A1ドメイン、(2)A2ドメイン、(3)A3ドメイン、(4)D4ドメイン、(5)B1ドメイン、(6)B2ドメイン、(7)B3ドメイン、(8)C1ドメイン、(9)C2ドメイン、(10)CKドメイン、(11)CKドメイン及びC2ドメイン、(12)CKドメイン、C2ドメイン、及びC1ドメイン、(13)CKドメイン、C2ドメイン、C1ドメイン、B3ドメイン、(14)CKドメイン、C2ドメイン、C1ドメイン、B3ドメイン、B2ドメイン、(15)CKドメイン、C2ドメイン、C1ドメイン、B3ドメイン、B2ドメイン、及びB1ドメイン、(16)CKドメイン、C2ドメイン、C1ドメイン、B3ドメイン、B2ドメイン、B1ドメイン、及びD4ドメイン、(17)CKドメイン、C2ドメイン、C1ドメイン、B3ドメイン、B2ドメイン、B1ドメイン、D4ドメイン、及びA3ドメイン、(18)CKドメイン、C2ドメイン、C1ドメイン、B3ドメイン、B2ドメイン、B1ドメイン、D4ドメイン、A3ドメイン、及びA2ドメイン、(19)CKドメイン、C2ドメイン、C1ドメイン、B3ドメイン、B2ドメイン、B1ドメイン、D4ドメイン、A3ドメイン、A2ドメイン、及びA1ドメイン、並びに(20)それらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つのVWFドメインを含まない。
【0124】
さらに他の実施形態では、VWFタンパク質はD’D3ドメインと1以上のドメインまたはモジュールを含む。そのようなドメインまたはモジュールの例には、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるZhourら,Blood published online,April,6,2012:DOI,10.1182/blood-2012-01-405134にて開示されたドメイン及びモジュールが挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、VWFタンパク質はD’D3ドメインと、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、D4Nモジュール、VWD4モジュール、C8-4モジュール、TIL-4モジュール、C1モジュール、C2モジュール、C3モジュール、C4モジュール、C5モジュール、C5モジュール、C6モジュール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される1以上のドメインまたはモジュールとを含むことができる。
【0125】
さらに他の実施形態では、VWFタンパク質は異種部分に連結され、その際、該異種部分はVWFタンパク質のN末端若しくはC末端に連結され、またはVWFタンパク質にて1以上のアミノ酸(たとえば、1以上のXTEN挿入部位)のすぐ下流に挿入される。たとえば、VWFタンパク質における異種部分の挿入部位はD’ドメイン、D3ドメイン、またはその双方であることができる。異種部分は半減期延長因子であることができる。
【0126】
特定の実施形態では、本発明で有用なVWFタンパク質は、多量体、たとえば、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、またはさらに高次の多量体を形成する。他の実施形態では、VWFタンパク質はたった1つのVWFタンパク質を有する単量体である。一部の実施形態では、本発明のVWFタンパク質は1以上のアミノ酸の置換、欠失、付加または修飾を有することができる。一実施形態では、VWFタンパク質は、VWFタンパク質がジスルフィド結合を形成できないように、または二量体若しくは多量体を形成できないようにアミノ酸の置換、欠失、付加または修飾を含むことができる。別の実施形態では、アミノ酸の置換はD’ドメインとD3ドメインの範囲内である。特定の実施形態では、本発明で有用なVWFタンパク質は、配列番号21に対応する残基1099、残基1142、または残基1099と1142双方に相当する残基で少なくとも1つのアミノ酸の置換を含有する。少なくとも1つのアミノ酸の置換は野生型のVWFでは天然に存在しない任意のアミノ酸であることができる。たとえば、アミノ酸の置換は、システイン以外の任意のアミノ酸、たとえば、イソロイシン、アラニン、ロイシン、アスパラギン、リジン、アスパラギン酸、メチオニン、フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、プロリン、セリン、チロシン、アルギニンまたはヒスチジンであることができる。別の例では、アミノ酸の置換は、VWFタンパク質が多量体を形成するのを妨げるまたは阻害する1以上のアミノ酸を有する。
【0127】
特定の実施形態では、本明細書で有用なVWFタンパク質はさらにFVIIIとの相互作用を改善するように、たとえば、FVIIIに対する結合親和性を改善するように修飾され得る。非限定例として、VWFタンパク質は、配列番号21のアミノ酸764に相当する残基でセリン残基を含み、配列番号21のアミノ酸773に相当する残基でリジン残基を含む。残基764及び/または773はVWFタンパク質のFVIIIに対する結合親和性に寄与する。他の実施形態では、本発明で有用なVWFタンパク質は、他の修飾を有することができ、たとえば、タンパク質をPEG化する、グリコシル化する、HES化するまたはポリシアル化することができる。
II.B.XTEN配列
【0128】
本明細書で使用されるとき、「XTEN配列」は、主として小さな親水性アミノ酸で構成される、天然に存在しない、実質的に非反復の配列を持つ延長した長さのポリペプチドを指し、該配列は生理的条件下で低次の二次構造若しくは三次構造を持つ、または二次構造若しくは三次構造を持たない。キメラタンパク質の相手として、XTENは、キャリアとして役立つことができ、VWFタンパク質または本発明のFVIII配列に連結されてキメラタンパク質を創り出す場合、特定の望ましい薬物動態特性、物理化学的特性及び薬学特性を付与する。そのような望ましい特性には、高い薬物動態パラメータ及び溶解度特性が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用されるとき、「XTEN」は具体的には抗体または軽鎖若しくは重鎖の単鎖抗体若しくはFc断片のような抗体断片を排除する。
【0129】
本発明は、XTEN配列がVWFタンパク質及び/または第2のIg定常領域またはその一部に融合される場合、長いXTEN配列に比べて改善された半減期延長特性を提供する短いXTEN配列を提供する。従って、VWFタンパク質及び/または第2のIg定常領域またはその一部に融合されたXTEN配列は長さ288未満のアミノ酸を含有し、すなわち、288アミノ酸よりも短い。一実施形態では、VWFタンパク質及び/または第2のIg定常領域またはその一部に融合されたXTEN配列は、12アミノ酸?287アミノ酸の間の長さを有するアミノ酸配列から成る。別の実施形態では、VWFタンパク質及び/または第2のIg定常領域またはその一部に融合されたXTEN配列は少なくとも約36アミノ酸、少なくとも約42アミノ酸、少なくとも約72アミノ酸、少なくとも約144アミノ酸、しかし、288未満のアミノ酸を含む。他の実施形態では、VWFタンパク質及び/または第2のIg定常領域またはその一部に融合されたXTEN配列は、AE36、AG36、AE42、AG42、AE72、AG72、AE144、またはAG144から選択される。一実施形態では、VWFタンパク質及び/または第2のIg定常領域またはその一部に融合されたXTEN配列は、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号14に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列であり、その際、キメラタンパク質はXTEN配列を含まないキメラタンパク質に比べて改善された半減期を示す。
【0130】
本発明のキメラタンパク質はさらに追加の(第2、第3またはそれ以上)XTEN配列を含むことができる。追加のXTEN配列はさらにFVIIIタンパク質または第1のIg定常領域またはその一部に融合することができる。追加のXTEN配列は任意の長さであることができる。たとえば、FVIIIタンパク質または第1のIg定常領域またはその一部に融合された追加のXTEN配列は、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1200、1400、1600、1800、または2000より大きいアミノ酸残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。特定の実施形態では、追加のXTEN配列は、約20を超えて約3000までのアミノ酸残基、約30を超えて約2500までの残基、約40を超えて約2000までの残基、約50を超えて約1500までの残基、約60を超えて約1000までの残基、約70を超えて約900までの残基、約80を超えて約800までの残基、約90を超えて約700までの残基、約100を超えて約600までの残基、約110を超えて約500までの残基、または約120を超えて約400までの残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。
【0131】
XTEN配列(すなわち、VWFタンパク質及び/または第2のIg定常領域またはその一部に融合されたXTEN配列、またはFVIIIタンパク質及び/または第1のIg定常領域またはその一部に融合された若しくはFVIIIタンパク質内の1以上の挿入部位に挿入されたXTEN配列)は、9?14アミノ酸残基の1以上の配列モチーフまたは該配列モチーフに対して少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むことができ、その際、該モチーフは、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、グルタミン酸(E)及びプロリン(P)から成る群から選択される4?6種類のアミノ酸を含む、それらから本質的に成るまたはそれらから成る。US2010-0239554A1を参照のこと。
【0132】
一部の実施形態では、XTEN配列は、重複しない配列モチーフを含み、配列の少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約91%、または少なくとも約92%、または少なくとも約93%、または少なくとも約94%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%または約100%が表2Aから選択される単一のモチーフファミリーから選択される重複しない配列の複数の単位から成り、結果的にファミリー配列を生じる。本明細書で使用されるとき、「ファミリー」は、XTENが表2Aにある単一モチーフのカテゴリー、すなわち、AD、AE、AF、AG、AM、AQ、BC、またはBD XTENのみから選択されるモチーフを有し、且つ、ファミリーモチーフに由来しないXTENにおける任意の他のアミノ酸を選択して、たとえば、コードしているヌクレオチドによって制限部位を取り込ませる、切断配列を取り込ませる、またはFVIII若しくはVWFへの良好な結合を達成するのに必要な特性を達成することを意味する。XTENファミリーの一部の実施形態では、XTEN配列は、ADモチーフファミリー、またはAEモチーフファミリー、またはAFモチーフファミリー、またはAGモチーフファミリー、またはAMモチーフファミリー、またはAQモチーフファミリー、またはBCファミリー、またはBDファミリーの重複しない配列モチーフの複数の単位を含み、得られるXTENは上述の相同性の範囲を示す。他の実施形態では、XTENは表2Aのモチーフファミリーの2以上に由来するモチーフ配列の複数の単位を含む。これらの配列を選択して、以下でさらに完全に記載される、電荷、親水性のような特性、二次構造の欠如、またはモチーフのアミノ酸組成によって付与される反復性の欠如を含む所望の物理的/化学的な特徴を達成する。この段落の上文で記載された実施形態では、本明細書で記載される方法を用いてXTENに取り込まれたモチーフを選択し、組み立てて、約36?約3000アミノ酸残基のXTENを達成することができる。
【表2A-1】

【表2A-2】

【0133】
一部の実施形態では、本発明で使用されるXTEN配列は、AE42、AG42、AE48、AM48、AE72、AG72、AE108、AG108、AE144、AF144、AG144、AE180、AG180、AE216、AG216、AE252、AG252、AE288、AG288、AE324、AG324、AE360、AG360、AE396、AG396、AE432、AG432、AE468、AG468、AE504、AG504、AF504、AE540、AG540、AF540、AD576、AE576、AF576、AG576、AE612、AG612、AE624、AE648、AG648、AG684、AE720、AG720、AE756、AG756、AE792、AG792、AE828、AG828、AD836、AE864、AF864、AG864、AM875、AE912、AM923、AM1318、BC864、BD864、AE948、AE1044、AE1140、AE1236、AE1332、AE1428、AE1524、AE1620、AE1716、AE1812、AE1908、AE2004A、AG948、AG1044、AG1140、AG1236、AG1332、AG1428、AG1524、AG1620、AG1716、AG1812、AG1908、及びAG2004から成る群から選択される配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。US2010-0239554A1を参照のこと。
【0134】
一実施形態では、XTEN配列は、AE42(配列番号9)、AE72(配列番号10)、AE144_2A(配列番号55)、AE144_3B(配列番号56)、AE144_4A(配列番号57)、AE144_5A(配列番号58)、AE144_6B(配列番号59)、AG144_A(配列番号60)、AG144_B(配列番号61)、AG144_C(配列番号62)、AG144_F(配列番号63)、AE864(配列番号15)、AE576(配列番号16)、AE288(配列番号8)、AE288_2(配列番号54)、AE144(配列番号11)、AG864(配列番号17)、AG576(配列番号18)、AG288(配列番号19)、AG144(配列番号14)及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。別の実施形態では、XTEN配列は、AE42(配列番号9)、AE72(配列番号10)、AE144_2A(配列番号55)、AE144_3B(配列番号56)、AE144_4A(配列番号57)、AE144_5A(配列番号58)、AE144_6B(配列番号59)、AG144_A(配列番号60)、AG144_B(配列番号61)、AG144_C(配列番号62)、AG144_F(配列番号63)、AE864(配列番号15)、AE576(配列番号16)、AE288(配列番号8)、AE288_2(配列番号54)、AE144(配列番号11)、AG864(配列番号17)、AG576(配列番号18)、AG288(配列番号19)、AG144(配列番号14)及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。具体的な実施形態では、XTEN配列はAE288である。本発明の特定のXTEN配列のアミノ酸配列は表2Bに示される。
【表2B-1】

【表2B-2】

【表2B-3】

【表2B-4】

【表2B-5】

【0135】
XTEN成分が、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、グルタミン酸(E)及びプロリン(P)から選択されるアミノ酸の4、5または6種類から成るアミノ酸の100%未満を有する、または表3の配列モチーフ若しくは表4及び13?17のXTEN配列から成る配列の100%未満を有するそれらの態様では、XTENのその他のアミノ酸残基は他の任意の14の天然のL-アミノ酸から選択されるが、XTEN配列が少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%親水性アミノ酸を含有するように親水性アミノ酸から優先的に選択される。グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、グルタミン酸(E)及びプロリン(P)ではないXTENアミノ酸は、XTEN配列全体にわたって散在する、配列モチーフ内にまたはその間に位置する、またはXTEN配列の1以上の短いストレッチに集中して、たとえば、XTENとFVIIIまたはVWFとの間でリンカーを創り出す。XTEN成分がグリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、グルタミン酸(E)及びプロリン(P)以外のアミノ酸を含むような場合では、得られる配列が一般に二次構造を欠く、たとえば、本明細書で開示される方法によって測定されるとき、2%を超えるαらせんまたは2%を超えるβシートを有さないように、アミノ酸の約2%未満または約1%未満は疎水性残基であることが好まれる。XTENの構築ではあまり好まれない疎水性残基には、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、バリン及びメチオニンが挙げられる。さらに、以下のアミノ酸:システイン(ジスルフィドの形成及び酸化を回避するために)、メチオニン(酸化を回避するために)、アルギニン及びグルタミン(脱アミド化を回避するために)の5%未満、又は4%未満、又は3%未満、又は2%未満、又は1%未満を含有するように、または全く含有しないようにXTEN配列を設計することができる。従って、一部の実施形態では、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、グルタミン酸(E)及びプロリン(P)に加えて他のアミノ酸を含むXTEN成分は、Chou-Fasmanのアルゴリズムによって測定されたときαらせん及びβシートに寄与する残基の5%未満を伴った配列を有し、且つGORアルゴリズムによって測定されたとき少なくとも90%または少なくとも約95%以上のランダムコイル形成を有する。
【0136】
さらなる実施形態では、本発明で使用されるXTEN配列は、本発明のキメラタンパク質の物理的なまたは化学的な特性、たとえば、薬物動態に影響を与える。本発明で使用されるXTEN配列は、以下の有利な特性:構造的な柔軟性、高い水溶解性、程度の高いプロテアーゼ耐性、低い免疫原性、哺乳類の受容体に対する低い結合、または大きな流体力学(またはストーク)半径の1以上を示すことができる。具体的な実施形態では、本発明のFVIIIタンパク質に連結されたXTEN配列は、たとえば、長い終末相半減期または広い曲線下面積(AUC)のように薬物動態特性を高めるので、本明細書で開示されるキメラタンパク質は野生型FVIIIに比べて長い時間生体内に留まる。さらなる実施形態では、本発明で使用されるXTEN配列は、長い終末相半減期または広い曲線下面積(AUC)のように薬物動態特性を高めるので、FVIIIタンパク質は野生型FVIIIに比べて長い時間生体内に留まる。
【0137】
本発明の一実施形態は、Fc領域に融合されたFVIIIタンパク質とFc領域に融合されたVWFタンパク質とを含むFVIII/VWF融合タンパク質であり、その際、XTEN配列(たとえば、AE288)はFVIII部分内に挿入され、288未満のアミノ酸を有するXTEN配列(たとえば、AE144)はVWF部分とFc部分との間に挿入される。実施例にて記載されるように、VWF部分とFc部分との間での288未満のアミノ酸を有するXTENの挿入は、VWF部分とFc部分との間での288のアミノ酸を有するXTENの挿入よりもキメラタンパク質の薬物動態に対して大きな効果を有する。たとえば、FVIII/VWF融合タンパク質におけるVWF部分とFc部分との間での288未満のアミノ酸を有するXTEN配列の挿入は、288のアミノ酸を有するXTENに比べてキメラタンパク質の終末相半減期を増すことができる。一部の実施形態では、終末相半減期は、288のアミノ酸を有するXTEN配列の挿入に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%増加する。特定の一実施形態では、終末相半減期は、288のアミノ酸を有するXTEN配列の挿入に比べて少なくとも約35%増加する。288未満のアミノ酸を有するXTEN配列の挿入はキメラタンパク質のAUC値を高めることもできる。一部の実施形態では、AUC値は、288のアミノ酸を有するXTENの挿入に比べて少なくとも約50%、少なくとも約100%、または少なくとも約200%高められる。特定の一実施形態では、AUCは約2倍高められる。288未満のアミノ酸を有するXTEN配列の挿入はまた、キメラタンパク質のクリアランスを減らすこともできる。たとえば、クリアランスは288のアミノ酸を有するXTEN配列の挿入に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%または少なくとも約30%減らすことができる。288未満のアミノ酸を有するXTEN配列の挿入は、288のアミノ酸を有するXTENの挿入に比べて平均滞留時間(MRT)を増やすことができ、及び/または定常状態での分布の見かけの容積(Vss)を減らすことができる。
【0138】
種々の方法及びアッセイを用いてXTEN配列を含むタンパク質の物理的/化学的な特性を測定することができる。そのような方法には、分析用遠心分離、EPR、HPLC-イオン交換、HPLC-サイズ排除、HPLC-逆相、光散乱、キャピラリー電気泳動、円偏光二色性、示差走査熱量測定、蛍光、HPLC-イオン交換、HPLC-サイズ排除、IR、NMR、ラマン分光法、屈折測定、及びUV/可視光分光法が挙げられるが、これらに限定されない。追加の方法はAmauら,Prot.Expr.and Purif.48,1-13(2006)にて開示されている。
【0139】
本発明に従って使用することができるXTEN配列の追加の例は、US2010/0239554A1、US2010/0323956A1、US2011/0046060A1、US2011/0046061A1、US2011/0077199A1、またはUS2011/0172146A1、またはWO2010091122A1、WO2010144502A2、WO2010144508A1、WO2011028228A1、WO2011028229A1、WO2011028344A2、またはWO20130122617A1にて開示されている。
II.C.第VIII因子(FVIII)タンパク質
【0140】
「FVIIIタンパク質」は本明細書で使用されるとき、特定されない限り、凝固における正常な役割で機能的なFVIIIポリペプチドを意味する。用語、FVIIIタンパク質には、凝固経路における完全長野生型の第VIII因子の機能を保持する、その機能的な断片、変異体、類似体または誘導体が含まれる。「FVIIIタンパク質」はFVIIIポリペプチド(またはタンパク質)またはFVIIIと相互変換可能に使用される。FVIIIの機能の例には、凝固を活性化する能力、第IX因子の補因子として作用する能力、またはCa^(2+)とリン脂質の存在下で第IX因子とテナーゼ複合体を形成し、次いで第X因子を活性化された形態Xaに変換する能力が挙げられるが、これらに限定されない。FVIIIタンパク質は、ヒト、ブタ、イヌ、ラットまたはマウスのFVIIIタンパク質であることができる。加えて、ヒト由来のFVIIIと他の種のFVIIIの比較によって、機能に必要とされる可能性がある保存された残基が特定されている(Cameronら,Thromb.Haemost.79:317-22(1998);US6,251,632)。
【0141】
凝固系の機能を評価する多数の試験:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験、発色アッセイ、ROTEMアッセイ、プロトロンビン時間(PT)試験(INRを測定するのにも使用される)、フィブリノーゲン試験(Clauss法によることが多い)、血小板計数、血小板機能試験(PFA-100によることが多い)、TCT、出血時間、混合試験(患者の血漿が正常な血漿と混合されれば異常が是正するかどうか)、凝固因子アッセイ、抗リン脂質抗体、D-二量体、遺伝試験(たとえば、第V因子ライデン、プロトロンビン変異G20210A)、希釈ラッセルクサリヘビ蛇毒時間(dRVVT)、その他の血小板機能試験、トロンボエラストグラフィ(TEGまたはSonoclot)、トロンボエラストメトリ(TEM(登録商標)、たとえば、ROTEM(登録商標))またはオイグロブリン溶解時間(ELT)が利用可能である。
【0142】
aPTT試験は、「固有の」(接触活性化経路とも言う)及び共通の凝固経路双方の有効性を測定する性能指標である。この試験を一般に使用して市販の組換え凝固因子、たとえば、FVIIIまたはFIXの凝固活性を測定する。外来性の経路を測定するプロトロンビン試験(PT)と併せてそれを使用する。
【0143】
ROTEM解析は、止血の全体的な動態:凝固時間、血餅形成、血餅安定性及び溶解に関する情報を提供する。トロンボエラストメトリにおける様々なパラメータは、血漿凝固系の活性、血小板機能、線維素溶解、またはこれらの相互作用に影響を与える多数の因子に依存する。このアッセイは二次止血の全体像を提供することができる。
【0144】
FVIIIのポリペプチド及びポリヌクレオチドの配列は、多数の機能的な断片、変異体及び修飾型と同様に既知である。ヒトのFVIII配列(完全長)の例を以下に示す。
【表3-1】

【表3-2】

【表4-1】

【表4-2】

【表4-3】

【0145】
FVIIIポリペプチドには、完全長FVIII、N末端でMetを外した完全長FVIII、成熟FVIII(シグナルペプチドを外した)、N末端で追加のMetを伴った成熟FVIII、及び/またはBドメインを完全にまたは部分的に欠失させたFVIIIが含まれる。特定の実施形態では、FVIII変異体には、部分欠失または完全欠失いずれかのBドメインの欠失が含まれる。
【0146】
ネイティブのヒト成熟FVIIIの配列は配列番号65として提示されている。ネイティブのFVIIIタンパク質は以下の式:A1-a1-A2-a2-B-a3-A3-C1-C2を有し、式中、A1、A2及びA3は構造的に関連する「Aドメイン」であり、Bは「Bドメイン」であり、C1及びC2は構造的に関連する「Cドメイン」であり、a1、a2及びa3は酸性スペーサー領域である。配列番号65における一次アミノ酸配列の位置を参照して、ヒトFVIIIのA1ドメインはAla1からほぼArg336まで伸び、a1スペーサー領域はほぼMet337からほぼVal374まで伸び、A2ドメインはほぼAla375からほぼTyr719まで伸び、a2スペーサー領域はほぼGlu720からほぼArg740まで伸び、BドメインはほぼSer741からほぼArg1648まで伸び、a3スペーサー領域はほぼGlu1649からほぼArg1689まで伸び、A3ドメインはほぼSer1690からほぼLeu2025まで伸び、C1ドメインはほぼGly2026からほぼAsn2072まで伸び、C2ドメインはほぼSer2073からほぼTyr2332まで伸びる。特定のタンパク質分解切断部位以外に、FVIIIのドメイン及び領域の間での境界の位置の指定は様々な文献参照で変化し得る。従って、本明細書で言及される境界は用語「ほぼ」の使用によって近似として指定される。
【0147】
ヒトのFVIII遺伝子は単離され、哺乳類細胞で発現されている(Toole,J.J.ら,Nature,312:342-347(1984);Gitschier,J.ら,Nature,312:326-330(1984);Wood,W.I.ら,Nature,312:330-337(1984);Vehar,G.A.ら,Nature,312:337-342(1984);WO87/04187;WO88/08035;WO88/03558;及びUS4,757,006))。FVIIIのアミノ酸配列はUS4,965,199で示されたようなcDNAから推定された。加えて、部分的にまたは完全にBドメインを欠失させたFVIIIはUS4,994,371及びUS4,868,112にて示されている。一部の実施形態では、ヒトFVIIIのBドメインはUS5,004,803にて示されたようにヒトの第V因子のBドメインで置き換えられる。ヒトの第VIII因子をコードするcDNA配列及びアミノ酸配列はUS2005/0100990のそれぞれ配列番号1及び2にて示されている。
【0148】
ブタのFVIII配列は、Toole,J.J.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,83:5939-5942(1986)にて公開されている。さらに、ブタ脾臓のcDNAライブラリに由来するFVIII配列のPCR増幅から得られたブタの完全なcDNA配列は、Healey,J.F.ら,Blood,88:4209-4214(1996)にて報告されている。ドメインすべて、サブユニットすべて及び特定のアミノ酸配列の置換を有するハイブリッドのヒト/ブタFVIIIは、Lollar及びRungeによるUS5,364,771にて、及びWO93/20093にて開示された。さらに最近、ブタFVIIIのA1及びA2ドメインのヌクレオチド配列及び相当するアミノ酸配列、並びに対応するヒトのドメインについて置換されたブタのA1及び/またはA2ドメインを持つキメラFVIIIはWO94/11503にて報告された。US5,859,204、Lollar,J.S.もブタcDNA及び推定されたアミノ酸配列を開示している。US6,458,563はBドメインを欠失させたブタFVIIIを開示している。
【0149】
US5,859,204、Lollar,J.S.は低下した抗原性及び低下した免疫反応性を有するFVIIIの機能的な変異体を報告している。US6,376,463、Lollar,J.S.は低下した免疫反応性を有するFVIIIの変異体も報告している。SaenkoらのUS2005/0100990はFVIIIのA2ドメインにおける機能的な変異を報告している。
【0150】
一実施形態では、FVIII(またはキメラタンパク質のFVIII部分)は、配列番号67のアミノ酸1?1438または配列番号65のアミノ酸1?2332(シグナル配列なしで)のFVIIIアミノ酸配列または配列番号64のアミノ酸1?19及び配列番号67の1?1438または配列番号64のアミノ酸1?19及び配列番号65のアミノ酸1?2332(シグナル配列を伴った)のFVIIIアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であってもよく、その際、FVIIIは凝固活性を有し、たとえば、補因子として第IX因子を活性化し、第X因子を活性化された第X因子に変換する。FVIII(またはキメラタンパク質のFVIII部分)は、配列番号67のアミノ酸1?1438または配列番号65のアミノ酸1?2332(シグナル配列を含まず)のFVIIIアミノ酸配列と同一であってもよい。FVIIIはさらにシグナル配列を含んでもよい。
【0151】
FVIIIの「Bドメイン」は本明細書で使用されるとき、ヒト完全長FVIIIの内部アミノ酸配列同一性及びタンパク分解切断の部位、たとえば、残基Ser741?Arg1648によって定義される当該技術で既知のBドメインと同一である。ヒトの他のFVIIIのドメインは、以下のアミノ酸残基:A1,残基Ala1?Arg372;A2,残基Ser373?Arg740;A3,残基Ser1690?Asn2019;C1,残基Lys2020?Asn2172;C2,残基Ser2173?Tyr2332によって定義される。A3-C1-C2配列は、残基Ser1690?Tyr2332を含む。残りの配列である残基Glu1649?Arg1689は普通、a3酸性領域と呼ばれる。ブタ、マウス及びイヌのFVIIIについてBドメインを含むドメインすべての境界の位置も当該技術で既知である。一実施形態では、FVIIIのBドメインを欠失させる(「Bドメインを欠失させた第VIII因子」または「BDD-FVIII」)。BDD-FVIIIの例はREFACTO(登録商標)(組換えBDD-FVIII)であり、それは表5(BDD-FVIII重鎖は二重下線を引き、Bドメインはイタリック体であり、BDD-FVIII軽鎖は標準文字である)における配列の第VIII因子部分と同じ配列を有する。表6(配列番号68)をコードするヌクレオチド配列を表6にて示す。
【表5-1】

【表5-2】

【表6-1】

【表6-2】

【0152】
「Bドメインを欠失させたFVIII」は、US6,316,226、US6,346,513、US7,041,635、US5,789,203、US6,060,447、US5,595,886、US6,228,620、US5,972,885、US6,048,720、US5,543,502、US5,610,278、US5,171,844、US5,112,950、US4,868,112、及びUS6,458,563にて開示された完全なまたは部分的な欠失を有してもよい。一部の実施形態では、本発明のBドメインを欠失させたFVIIIの配列はUS6,316,226(US6,346,513も)の第4欄第4行?第5欄第28行及び実施例1?5にて開示された欠失のいずれか1つを含む。別の実施形態では、Bドメインを欠失させた第VIII因子は、S743/Q1638 Bドメインを欠失させた第VIII因子(SQ BDD FVIII)(たとえば、アミノ酸744?アミノ酸1637の欠失を有する第VIII因子、たとえば、配列番号65のアミノ酸1?743及びアミノ酸1638?2332を有する、すなわち、配列番号67を有する第VIII因子)である。一部の実施形態では、本発明のBドメインを欠失させたFVIIIは、US5,789,203(US6,060,447、US5,595,886及びUS6,228,620も)の第2欄第26?51行及び実施例5?8にて開示された欠失を有する。一部の実施形態では、Bドメインを欠失させた第VIII因子は、US5,972,885の第1欄第25行?第2欄第40行;US6,048,720の第6欄第1?22行及び実施例1;US5,543,502の第2欄第17?46行;US5,171,844の第4欄第22行?第5欄第36行;US5,112,950の第2欄第55?68行、図2及び実施例1;US4,868,112の第2欄第2行?第19欄第21行及び表2;US7,041,635の第2欄第1行?第3欄第19行、第3欄第40行?第4欄第67行、第7欄第43行?第8欄第26行及び第11欄第5行?第13欄第39行;またはUS6,458,563の第4欄第25?53行にて記載された欠失を有する。一部の実施形態では、Bドメインを欠失させたFVIIIはBドメインのほとんどの欠失を有するが、WO91/09122にて開示されたように、一次翻訳産物の2つのポリペプチド鎖への生体内でのタンパク質分解プロセッシングに必須であるBドメインのアミノ末端の配列を依然として含有する。一部の実施形態では、Bドメインを欠失させたFVIIIはアミノ酸747?1638の欠失によって、すなわち、Bドメインの実際完全な欠失によって構築される。Hoeben,R.C.ら.J.Biol.Chem.265(13):7318-7323(1990)。Bドメインを欠失させた第VIII因子はまたFVIIIのアミノ酸771?1666またはアミノ酸868?1562の欠失を含有してもよい。Meulien,P.ら.Protein Eng.2(4):301-6(1988)。本発明の一部である追加のBドメインの欠失には、アミノ酸982?1562または760?1639(Tooleら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1986),83、5939-5942))、797?1562(Eatonら.Biochemistry,(1986),25:8343-8347))、741?1646(Kaufman(WO87/04187))、747-1560(Sarverら、DNA,(1987),6:553-564))、741?1648(Pasek(PCT88/00831))、または816?1598または741?1648(Lagner(Behring Inst.Mitt.(1988)No82:16-25、EP295597))の欠失が挙げられる。他の実施形態では、BDD-FVIIIには、1以上のN結合グリコシル化部位、たとえば、完全長FVIII配列のアミノ酸配列に対応する残基757、784、828、900、963または任意で943を保持するBドメインの断片を含有するFVIIIポリペプチドが挙げられる。Bドメインの断片の例には、Miao,H.Z.ら,Blood,103(a):3412-3419(2004),Kasuda,Aら,J.Thromb.Haemost.6:1352-1359(2008),及びPipe,S.W.ら,J.Thromb.Haemost.9:2235-2242(2011)にて開示されたようなBドメインの226アミノ酸または163アミノ酸が含まれる(すなわち、Bドメインの最初の226アミノ酸または163アミノ酸が保持される)。さらに他の実施形態では、BDD-FVIIIはさらに、残基309で点突然変異(PheからSer)を含んでBDD-FVIIIタンパク質の発現を改善する。Miao,H.Z.ら,Blood,103(a):3412-3419(2004)を参照のこと。さらに他の実施形態では、BDD-FVIIIには、Bドメインの部分を含有するが、1以上のフーリン切断部位(たとえば、Arg1313及びArg1648)を含有しないFVIIIポリペプチドが含まれる。Pipe,S.W.ら,J.Thromb.Haemost.9:2235-2242(2011)を参照のこと。前述の欠失のそれぞれは任意のFVIII配列にて行われてもよい。
【0153】
一部の実施形態では、FVIIIは部分的なBドメインを有する。一部の実施形態では、部分的なBドメインを伴ったFVIIIタンパク質はFVIII198である。FVIII198は部分的なBドメインを含有する単鎖FVIIIFc分子-226N6である。数226はFVIIIのBドメインのN末端226アミノ酸を表し、N6はBドメインにおける6つのN-グリコシル化部位を表す。
【0154】
一実施形態では、アミノ酸1648(完全長の第VIII因子または配列番号65における)でのアルギニン、アミノ酸754(S743/Q1638Bドメインを欠失させた第VIII因子または配列番号67における)でのアルギニン、または相当するアルギニン残基(他の変異体における)の直後でFVIIIが切断され、それによって重鎖及び軽鎖を生じる。別の実施形態では、FVIIIは、金属イオンが介在する非共有結合によって連結されるまたは会合する重鎖及び軽鎖を含む。
【0155】
他の実施形態では、FVIIIは、アミノ酸1648(完全長の第FVIII因子または配列番号65における)でのアルギニン、アミノ酸754(S743/Q1638Bドメインを欠失させた第FVIII因子または配列番号67における)でのアルギニン、または相当するアルギニン残基(他の変異体における)の直後で切断されていない単鎖FVIIIである。単鎖FVIIIは1以上のアミノ酸置換を含んでもよい。一実施形態では、アミノ酸置換は、完全長の成熟第VIII因子ポリペプチド(配列番号65)の残基1648、残基1645またはその双方、またはSQ BDD第VIII因子(配列番号67)の残基754、残基751またはその双方にて存在する。アミノ酸置換は、アルギニン以外のアミノ酸、たとえば、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、セレノシステイン、セリン、チロシン、ヒスチジン、オルニチン、ピロリジン、またはタウリンであることができる。
【0156】
FVIIIはトロンビンによって切断され、次いでFVIIIaとして活性化され、活性化された第IX因子(FIXa)の補因子として役立つことができる。そして活性化されたFIXは活性化されたFVIIIと一緒にXase複合体を形成し、第X因子を活性化された第X因子(FXa)に変換する。活性化については、FVIIIは、アミノ酸372、740及び1689(Bドメインを欠失させたFVIII配列におけるアミノ酸372、740及び795に対応する)にて3つのアルギニン残基の後でトロンビンによって切断され、切断は50kDaのA1鎖と43kDaのA2鎖と73kDaのA3-C1-C2鎖を有するFVIIIaを生成する。一実施形態では、本発明で有用なFVIIIタンパク質は活性のないFVIIIである。別の実施形態では、FVIIIタンパク質は活性のあるFVIIIである。
【0157】
VWFタンパク質に連結されたまたは会合させたFVIIIポリペプチドを有するタンパク質は、配列番号65または67に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列を含むことができ、その際、配列は、FVIIIの凝固活性、たとえば、補因子としての第IX因子を活性化して第X因子を活性化された第X因子(FXa)に変換する活性を有する。
【0158】
「ハイブリッド」または「キメラ」のポリペプチド及びタンパク質は本明細書で使用されるとき、第1のポリペプチド鎖、たとえば、288未満のアミノ酸を有するXTEN配列と第1のIg定常領域またはその一部に融合されたVWFタンパク質と、第2のポリペプチド鎖、たとえば、第2のIg定常領域またはその一部に融合されたFVIIIタンパク質の組み合わせを含み、それによってヘテロ二量体を形成する。一実施形態では、ハイブリッドにおける第1のポリペプチドと第2のポリペプチドは、たとえば、電荷/電荷のまたは疎水性の相互作用のようなタンパク質/タンパク質の相互作用を介して互いに会合する。別の実施形態では、第1のポリペプチドはVWFタンパク質/XTEN-Fc融合タンパク質を含み、第2のポリペプチドはFVIII-Fc融合タンパク質を含んで、ハイブリッドをヘテロ二量体にし、その際、XTENは288未満のアミノ酸を含有する。他の実施形態では、第1のポリペプチドはVWFタンパク質/XTEN-Fc融合タンパク質を含み、第2のポリペプチドはFVIII(X)-Fc融合タンパク質を含んで、ハイブリッドをヘテロ二量体にし、その際、XTENは288未満のアミノ酸を含有する。第1のポリペプチドと第2のポリペプチドは、たとえば、第1のFc領域と第2のFc領域の間でのジスルフィド結合のような共有結合を介して会合することができる。第1のポリペプチドと第2のポリペプチドはさらに、VWF断片とFVIIIタンパク質の間での結合によって互いに会合することができる。
【0159】
本発明で有用なFVIIIタンパク質は、FVIIIの凝固活性に影響を与えない1以上の追加のXTEN配列を有するFVIIIを含むことができる。そのようなXTEN配列はFVIIIタンパク質のC末端若しくはN末端に融合することができ、またはFVIIIタンパク質における1以上の2つのアミノ酸残基の間に挿入することができるが、挿入はFVIIIの凝固活性またはFVIIIの機能に影響を与えない。一実施形態では、挿入はFVIIIタンパク質の薬物動態特性(たとえば、半減期)を改善する。別の実施形態では、挿入は、複数の挿入、たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9または10の挿入であることができる。挿入部位の例には、表7、8、9、10、11、12、13、14、15に載せられた部位、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
1以上のXTEN配列に連結されるFVIIIタンパク質はFVIII(X2)またはFVIII_((a→b))-X-FVIII_((c→d))として表すことができ、その際、FVIII_((a→b))は、アミノ酸残基「a」からアミノ酸残基「b」までのFVIIIタンパク質の第1の部分を含み、それから本質的に成り、またはそれから成り;X2は1以上のXTEN配列を含み、それから本質的に成り、またはそれから成り;FVIII_((c→d))はアミノ酸残基「c」からアミノ酸残基「d」までのFVIIIタンパク質の第2の部分を含み、それから本質的に成り、またはそれから成る。
「a」はFVIIIタンパク質の第1の部分のN末端アミノ酸残基であり;
「b」はFVIIIタンパク質の第1の部分のC末端アミノ酸残基であるが、XTEN配列が挿入される挿入部位の2つのアミノ酸のN末端アミノ酸残基でもあり;
「c」はFVIIIタンパク質の第2の部分のN末端アミノ酸残基であるが、XTEN配列が挿入される挿入部位の2つのアミノ酸のC末端アミノ酸残基でもあり;
「d」はFVIIIタンパク質のC末端アミノ酸残基であり、及び
その際、FVIIIタンパク質の第1の部分とFVIIIタンパク質の第2の部分は互いに同一ではなく、FVIIIタンパク質がFVIIIの凝固活性を有するようにともに十分な長さである。
【0161】
一実施形態では、FVIIIタンパク質の第1の部分とFVIIIタンパク質の第2の部分は配列番号65(完全長成熟FVIII配列)または配列番号67(Bドメインを欠失させたFVIII)の断片、たとえば、それぞれN末端部分及びC末端部分である。特定の実施形態では、FVIIIタンパク質の第1の部分はFVIIIタンパク質のA1ドメインとA2ドメインを含む。FVIIIタンパク質の第2の部分はA3ドメインとC1ドメインと、任意でC2ドメインとを含む。さらに他の実施形態では、FVIIIタンパク質の第1の部分はA1ドメインとA2ドメインを含み、FVIIIタンパク質の第2の部分はBドメインの一部と、A3ドメインとC1ドメインと、任意でC2ドメインとを含む。さらに他の実施形態では、FVIIIタンパク質の第1の部分はFVIIIタンパク質のA1ドメインとA2ドメインと、FVIIIドメインのBドメインの一部とを含み、FVIIIタンパク質の第2の部分はA3ドメインとC1ドメインと、任意でC2ドメインとを含む。さらに他の実施形態では、FVIIIタンパク質の第1の部分はFVIIIタンパク質のA1ドメインとA2ドメインと、Bドメインの第1の部分とを含む。FVIIIタンパク質の第2の部分は、Bドメインの第2の部分とA3ドメインとC1ドメインと、任意でC2ドメインとを含む。一部の実施形態では、2つのアミノ酸(「b」及び「c」)は、表7、8、9、10、11、12、13、14及び15で示されるアミノ酸残基挿入部位の任意の1以上であることができる。たとえば、「b」は1以上のXTEN配列が挿入されるまたは連結される部位のすぐ上流のアミノ酸残基であることができ、「c」は1以上のXTEN配列が挿入されるまたは連結される部位のすぐ下流のアミノ酸残基であることができる。一部の実施形態では、「a」はFVIIIタンパク質の最初の成熟アミノ酸配列であり、「d」はFVIIIタンパク質の最後のアミノ酸配列である。たとえば、FVIII_((a→b))は、配列番号67(Bドメインを欠失させたFVIIIのアミノ酸配列)または配列番号65(完全長FVIII)のアミノ酸1?745に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列であることができ、FVIII_((c→d))はそれぞれ配列番号67のアミノ酸746?1438または配列番号65のアミノ酸1641?2332であることができる。
【0162】
一部の態様では、FVIIIタンパク質の挿入部位は、N末端、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、Bドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、C末端であるFVIIIタンパク質の1以上のドメイン、またはそれらの2以上の組み合わせ、またはA1ドメインとa1酸性領域、a1酸性領域とA2ドメイン、A2ドメインとa2酸性領域、a2酸性領域とBドメイン、BドメインとA3ドメイン、及びA3ドメインとC1ドメイン、C1ドメインとC2ドメイン、またはそれらの任意の組み合わせであるFVIIIタンパク質の2つのドメイン間に位置する。たとえば、XTEN配列が挿入され得る挿入部位は、N末端とA1ドメイン、N末端とA2ドメイン、N末端とA3ドメイン、N末端とBドメイン、N末端とC1ドメイン、N末端とC2ドメイン、N末端とC末端、A1とA2のドメイン、A1とA3のドメイン、A1とBのドメイン、A1とC1のドメイン、A1とC2のドメイン、A1ドメインとC末端、A2とA3のドメイン、A2とBのドメイン、A2とC1のドメイン、A2とC2のドメイン、A2ドメインとC末端、A3とBのドメイン、A3とC1のドメイン、A3とC2のドメイン、A3ドメインとC末端、BとC1のドメイン、BとC2のドメイン、BドメインとC末端、C1とC2のドメイン、C1とC末端、C2ドメイン、及びC末端、及びそれらの2以上の組み合わせから成る群から選択される。挿入部位の非限定例は表7、8、9、10、11、12、13、14及び15でリストにされている。
【0163】
XTEN配列がFVIIIタンパク質における1以上のアミノ酸(たとえば、1以上のXTEN挿入部位)のすぐ下流に挿入される、またはC末端若しくはN末端に連結されるFVIIIタンパク質は、XTEN配列への連結またはそれによる挿入の後、FVIIIの活性を保持する。挿入がFVIIIの活性に影響を与えない(すなわち、FVIIIタンパク質が凝固特性を依然として保持する)ようにXTEN配列はFVIIIタンパク質に1回、1回を超えて、2回、3回、4回、5回または6回挿入することができる。
【0164】
本発明で有用なFVIIIタンパク質は、任意のリンカーによってFVIIIタンパク質のN末端若しくはC末端で1以上のXTENポリペプチドに連結することができ、または1以上の任意のリンカーによってFVIIIタンパク質における1以上のアミノ酸(たとえば、1以上のXTEN挿入部位)のすぐ下流に挿入される。一実施形態では、XTEN配列が挿入される2つのアミノ酸残基またはXTEN配列が連結されるアミノ酸残基は、表7、表8、表9及び表10における残基及びそれらの組み合わせから成る群から選択される配列番号65(完全長の成熟FVIII)の2または1のアミノ酸残基に相当する。
【0165】
他の実施形態では、少なくとも1つのXTEN配列が本明細書で開示される1以上のXTEN挿入部位またはそれらの組み合わせに挿入される。態様の1つでは、少なくとも1つのXTEN配列が表7で開示された1以上のアミノ酸にて開示された1以上のXTEN挿入部位に挿入される。
【表7-1】

【表7-2】

【表7-3】

【表7-4】

【表7-5】

【0166】
一部の実施形態では、1以上のXTEN配列が、配列番号65に対応するアミノ酸32、220、224、336、339、399、416、603、1656、1711、1725、1905、または1910、またはそれらの組み合わせから上下の約6つのアミノ酸の範囲内に挿入される。
【表8】

【0167】
他の実施形態では、1以上のXTEN配列は、表9における1以上の挿入部位から成る群から選択されるヒトの完全長成熟FVIIIに対応する1以上のアミノ酸のすぐ下流に挿入される。
【表9】

【0168】
さらに他の実施形態では、1以上のXTENがFVIIIのBドメインに挿入される。一例では、XTENは配列番号65に対応するアミノ酸740と1640の間に挿入され、その際、アミノ酸740と1640の間のFVIII配列は任意で存在しない。別の例では、XTENは配列番号65に対応するアミノ酸741と1690の間に挿入され、その際、アミノ酸740と1690の間のFVIII配列は任意で存在しない。他の例では、XTENは配列番号65に対応するアミノ酸741と1648の間に挿入され、その際、アミノ酸741と1648の間のFVIII配列は任意で存在しない。さらに他の例では、XTENは配列番号65に対応するアミノ酸743と1638の間に挿入され、その際、アミノ酸743と1638の間のFVIII配列は任意で存在しない。さらに他の例では、XTENは配列番号65に対応するアミノ酸745と1656の間に挿入され、その際、アミノ酸745と1656の間のFVIII配列は任意で存在しない。一部の例では、XTENは配列番号65に対応するアミノ酸745と1657の間に挿入され、その際、アミノ酸745と1657の間のFVIII配列は任意で存在しない。特定の例では、XTENは配列番号65に対応するアミノ酸745と1667の間に挿入され、その際、アミノ酸745と1667の間のFVIII配列は任意で存在しない。さらに他の例では、XTENは配列番号65に対応するアミノ酸745と1686の間に挿入され、その際、アミノ酸745と1686の間のFVIII配列は任意で存在しない。一部の他の例では、XTENは配列番号65に対応するアミノ酸747と1642の間に挿入され、その際、アミノ酸747と1642の間のFVIII配列は任意で存在しない。さらに他の例では、XTENは配列番号65に対応するアミノ酸751と1667の間に挿入され、その際、アミノ酸751と1667の間のFVIII配列は任意で存在しない。
【0169】
一部の実施形態では、1以上のXTENは、表10におけるアミノ酸残基から成る群から選択される挿入部位のアミノ酸のすぐ下流の1以上のアミノ酸に挿入される。
【表10-1】

【表10-2】

【0170】
一実施形態では、1以上のXTEN挿入部位は、FVIIIタンパク質の1以上の表面に露出した柔軟なループ構造(たとえば、許容ループ)内に位置する。たとえば、少なくとも1つのXTEN配列を、組換えタンパク質の凝固促進活性または生体内にて若しくは試験管内で宿主細胞にて発現される組換えタンパク質の能力を排除することなく少なくとも1つのXTENポリペプチドを挿入することができる少なくとも2つの「許容ループ」を含む各FVIIIの「A」ドメインに挿入することができる。許容ループは、幾つかある特質の中で特に、高い表面露出または溶媒露出及び配座柔軟性を伴った少なくとも1つのXTEN配列の挿入を可能にする領域である。A1ドメインは許容ループ-1(A1-1)領域と許容ループ-2(A1-2)領域を含み、A2ドメインは許容ループ-1(A2-1)領域と許容ループ-2(A2-2)領域を含み、A3ドメインは許容ループ-1(A3-1)領域と許容ループ-2(A3-2)領域を含む。
【0171】
態様の1つでは、FVIIIのA1ドメインにおける第1の許容ループ(A1-1)はβ鎖1とβ鎖2の間に位置し、FVIIIのA1ドメインにおける第2の許容ループ(A1-2)はβ鎖11とβ鎖12の間に位置する。FVIIIのA2ドメインにおける第1の許容ループ(A2-1)はβ鎖22とβ鎖23の間に位置し、FVIIIのA2ドメインにおける第2の許容ループ(A2-2)はβ鎖32とβ鎖33の間に位置する。FVIIIのA3ドメインにおける第1の許容ループ(A3-1)はβ鎖38とβ鎖39の間に位置し、FVIIIのA3ドメインにおける第2の許容ループ(A3-2)はβ鎖45とβ鎖46の間に位置する。特定の態様では、A1-1を含む表面に露出した柔軟なループ構造は、配列番号65のおよそアミノ酸15からおよそアミノ酸45までの、たとえば、配列番号65のおよそアミノ酸18からおよそアミノ酸41までのヒトのネイティブな成熟FVIIIの領域に相当する。他の態様では、A1-2を含む表面に露出した柔軟なループ構造は、配列番号65のおよそアミノ酸201からおよそアミノ酸232までの、たとえば、配列番号65のおよそアミノ酸218からおよそアミノ酸229までのヒトのネイティブな成熟FVIIIの領域に相当する。さらに他の態様では、A2-1を含む表面に露出した柔軟なループ構造は、配列番号65のおよそアミノ酸395からおよそアミノ酸421までの、たとえば、配列番号65のおよそアミノ酸397からおよそアミノ酸418までのヒトのネイティブな成熟FVIIIの領域に相当する。さらに他の実施形態では、A2-2を含む表面に露出した柔軟なループ構造は、配列番号65のおよそアミノ酸577からおよそアミノ酸635までの、たとえば、配列番号65のおよそアミノ酸595からおよそアミノ酸607までのヒトのネイティブな成熟FVIIIの領域に相当する。特定の態様では、A3-1を含む表面に露出した柔軟なループ構造は、配列番号65のおよそアミノ酸1705からおよそアミノ酸1732までの、たとえば、配列番号65のおよそアミノ酸1711からおよそアミノ酸1725までのヒトのネイティブな成熟FVIIIの領域に相当する。さらに他の態様では、A3-2を含む表面に露出した柔軟なループ構造は、配列番号65のおよそアミノ酸1884からおよそアミノ酸1917までの、たとえば、配列番号65のおよそアミノ酸1899からおよそアミノ酸1911までのヒトのネイティブな成熟FVIIIの領域に相当する。
【0172】
別の実施形態では、少なくとも1つのXTEN配列が挿入される1以上のアミノ酸はa3ドメイン、たとえば、完全長の成熟FVIIIポリペプチドに対応するアミノ酸1649?1689の範囲内に位置する。特定の実施形態では、XTEN配列は配列番号65(完全長の成熟FVIII)のアミノ酸1656とアミノ酸1657の間に挿入される。特定の実施形態では、配列番号65に対応するアミノ酸1656のすぐ下流に挿入されるXTEN配列を含むFVIIIタンパク質はさらに、配列番号65に対応するアミノ酸745からアミノ酸1656までの欠失を含む。
【0173】
一部の実施形態では、1以上のXTEN挿入についての1以上の挿入部位は、
(1)アミノ酸3、(2)アミノ酸18、(3)アミノ酸22、(4)アミノ酸26、(5)アミノ酸32、 (6)アミノ酸40、(7)アミノ酸60、(8)アミノ酸65、(9)アミノ酸81、(10)アミノ酸116、(11)アミノ酸119、(12)アミノ酸130、(13)アミノ酸188、(14)アミノ酸211、(15)アミノ酸216、(16)アミノ酸220、(17)アミノ酸224、(18)アミノ酸230、(19)アミノ酸333、(20)アミノ酸336、(21)アミノ酸339、(22)アミノ酸375、(23)アミノ酸399、(24)アミノ酸403、(25)アミノ酸409、(26)アミノ酸416、(26)アミノ酸442、(28)アミノ酸487、(29)アミノ酸490、(30) アミノ酸494、(31)アミノ酸500、(32)アミノ酸518、(33)アミノ酸599、(34)アミノ酸603、(35)アミノ酸713、(36)アミノ酸745、(37)アミノ酸1656、(38)アミノ酸1711、(39)アミノ酸1720、(40)アミノ酸1725、(41)アミノ酸1749、(42)アミノ酸1796、(43)アミノ酸1802、(44)アミノ酸1827、(45)アミノ酸1861、(46)アミノ酸1896、(47)アミノ酸1900、(48)アミノ酸1904、(49)アミノ酸1905、(50)アミノ酸1910、(51)アミノ酸1937、(52)アミノ酸2019、(53)アミノ酸2068、(54)アミノ酸2111、(55)アミノ酸2120、(56)アミノ酸2171、(57)アミノ酸2188、(58)アミノ酸2227、(59)アミノ酸2277、及び (60)それらの2以上の組み合わせから成る群から選択される成熟完全長FVIIIに対応する1以上のアミノ酸のすぐ下流である。
【0174】
一実施形態では、本発明で有用なFVIIIタンパク質は、2つのXTEN配列、第1のXTEN挿入部位に挿入される第1のXTEN配列と第2のXTEN挿入部位に挿入される第2のXTEN配列とを含む。第1のXTEN挿入部位及び第2のXTEN挿入部位の非限定例は表11に載せられている。
【表11-1】

【表11-2】

【0175】
FVIIIタンパク質に挿入されるまたは連結される2つのXTENは同一であることができ、または異なることができる。一部の実施形態では、本発明で有用なFVIIIタンパク質は、配列番号65に対応するアミノ酸745のすぐ下流に挿入された第1のXTEN配列と配列番号65に対応するアミノ酸2332(C末端)のすぐ下流に挿入された第2のXTEN配列とを含む。他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸18、26、40、1656または1720のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸403のすぐ下流に挿入される。さらに他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸18、26または40のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸599のすぐ下流に挿入される。さらに他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1656のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸18、26、40、399、403、1725、1720、1900または2332のすぐ下流に挿入される。特定の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1900のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸18、26または40のすぐ下流に挿入される。一部の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸18、26または40のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸399のすぐ下流に挿入される。他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸18、26または40のすぐ下流に挿入される。さらに他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸18のすぐ下流に挿入される。特定の実施形態では、2つのXTEN配列、配列番号65に対応するアミノ酸745のすぐ下流に挿入された第1のXTEN配列と配列番号65に対応するアミノ酸2332のすぐ下流に挿入された第2のXTEN配列とを含み、FVIIIタンパク質は、その際、FVIIIタンパク質はさらに、配列番号65に対応するアミノ酸745から配列番号65に対応するアミノ酸1685までの欠失;配列番号65に対応するアミノ酸1680での変異若しくは置換、たとえば、Y1680F;配列番号65に対応するアミノ酸1648での変異若しくは置換、たとえば、R1648A;または配列番号65に対応するアミノ酸1648と配列番号65に対応するアミノ酸1680での少なくとも2つの変異若しくは置換、たとえば、R1648AとY1680Fを有する。具体的な実施形態では、FVIIIタンパク質は、2つのXTEN配列、配列番号65に対応するアミノ酸1656のすぐ下流に挿入された第1のXTEN配列と配列番号65に対応するアミノ酸2332のすぐ下流に挿入された第2のXTEN配列とを含み、その際、FVIIIタンパク質はさらに、配列番号65に対応するアミノ酸745からアミノ酸1656の欠失を有する。
【0176】
特定の実施形態では、FVIIIタンパク質は、3つのXTEN配列、第1のXTEN挿入部位に挿入された第1のXTEN配列と、第2のXTEN配列挿入部位に挿入された第2のXTEN配列と、第3のXTEN挿入部位に挿入された第3のXTEN配列とを含む。第1のXTEN配列、第2のXTEN配列及び第3のXTEN配列は同一であることができ、または異なることができる。第1、第2及び第3の挿入部位は、本明細書で開示される挿入部位のいずれか1つの群から選択することができる。一部の実施形態では、3つのXTEN配列を含むFVIIIタンパク質はさらに、たとえば、配列番号65に対応するアミノ酸1648での変異または置換、たとえば、R1648Aを含むことができる。たとえば、第1、第2及び第3のXTEN挿入部位の非限定例は表12にてリストにされている。
【表12】

【0177】
一部の実施形態では、FVIIIタンパク質は、3つのXTEN配列、配列番号65に対応するアミノ酸26のすぐ下流に挿入された第1のXTEN配列と配列番号65に対応するアミノ酸403の下流に挿入された第2のXTEN配列と配列番号65に対応するアミノ酸1656、1720または1900の下流に挿入された第3のXTEN配列とを含む。他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸26のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1656の下流に挿入され、第3のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720または1900の下流に挿入される。さらに他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸26のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720の下流に挿入され、第3のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1900の下流に挿入される。さらに他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸403のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1656の下流に挿入され、第3のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720または1900の下流に挿入される。他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸403または1656のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720の下流に挿入され、第3のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1900の下流に挿入される。他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸18、26、40、399、403、1711、1720、1725、1900、1905または1910のすぐ下流に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸745の下流に挿入され、第3のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸2332の下流に挿入される。
【0178】
他の実施形態では、本発明のFVIIIタンパク質は4つのXTEN配列、第1の挿入部位に挿入された第1のXTEN配列と第2の挿入部位に挿入された第2のXTEN配列と第3の挿入部位に挿入された第3のXTEN配列と第4の挿入部位に挿入された第4のXTEN配列とを含む。第1、第2、第3及び第4のXTEN配列は同一であることができ、異なることができ、またはそれらの組み合わせであることができる。一部の実施形態では、4つのXTEN配列を含むFVIIIタンパク質はさらに、たとえば、配列番号65に対応するアミノ酸1648での変異または置換、たとえば、R1648Aを含むことができる。第1、第2、第3及び第4のXTEN挿入部位の非限定例は表13にてリストにされている。
【表13-1】

【表13-2】

【表13-3】

【0179】
一部の実施形態では、FVIIIタンパク質は5つのXTEN配列、第1の挿入部位に挿入された第1のXTEN配列と第2の挿入部位に挿入された第2のXTEN配列と第3のXTEN挿入部位に挿入された第3のXTEN配列と第4のXTEN挿入部位に挿入された第4のXTEN配列と第5のXTEN挿入部位に挿入された第5のXTEN配列とを含む。第1、第2、第3、第4、第5のXTEN配列は同一であることができ、異なることができ、またはそれらの組み合わせであることができる。第1、第2、第3、第4、及び第5の挿入部位の非限定例は表14にてリストにされている。
【表14】

【0180】
特定の実施形態では、FVIIIタンパク質は、6つのXTEN配列、第1のXTEN挿入部位に挿入された第1のXTEN配列と第2のXTEN挿入部位に挿入された第2のXTEN配列と第3のXTEN挿入部位に挿入された第3のXTEN配列と第4のXTEN挿入部位に挿入された第4のXTEN配列と第5のXTEN挿入部位に挿入された第5のXTEN配列と第6のXTEN挿入部位に挿入された第6のXTEN配列とを含む。第1、第2、第3、第4、第5または第6のXTEN配列は同一であることができ、異なることができ、またはそれらの組み合わせであることができる。6つのXTEN挿入部位の例には、表15にてリストにされた挿入部位が挙げられるが、これらに限定されない。
【表15】

【0181】
特定の例では、第1のXTEN配列は配列番号65(完全長の成熟FVIII)に対応するアミノ酸26と27の間に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720と1721の間に挿入される。別の例では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸403と404の間に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720と1721の間に挿入される。一部の例では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1656と1657の間に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720と1721の間に挿入される。他の例では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸26と27の間に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1656と1657の間に挿入され、第3のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720と1721の間に挿入される。さらに他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸403と404の間に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1656と1657の間に挿入され、第3のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720と1721の間に挿入される。さらに他の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸403と404の間に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1656と1657の間に挿入され、第3のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720と1721の間に挿入される。特定の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸26と27の間に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720と1721の間に挿入され、第3のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1900と1901の間に挿入される。一部の実施形態では、第1のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸26と27の間に挿入され、第2のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1656と1657の間に挿入され、第3のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1720と1721の間に挿入され、第4のXTEN配列は配列番号65に対応するアミノ酸1900と1901の間に挿入される。
【0182】
特定の実施形態では、XTEN配列は、完全長の第VIII因子のアミノ酸745と746の間に、またはBドメインを欠失させた第VIII因子の相当する挿入部位に挿入される。
【0183】
一部の実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、2つのポリペプチド配列、FVIII-161(配列番号69)、FVIII-169(配列番号70)、FVIII-170(配列番号71)、FVIII-173(配列番号72);FVIII-195(配列番号73);FVIII-196(配列番号74)、FVIII199(配列番号75)、FVIII-201(配列番号76);FVIII-203(配列番号77)、FVIII-204(配列番号78)、FVIII-205(配列番号79)、FVIII-266(配列番号80)、FVIII-267(配列番号81)、FVIII-268(配列番号82)、FVIII-269(配列番号83)、FVIII-271(配列番号84)またはFVIII-272(配列番号85)から選択される配列に対して少なくとも約80%、90%、95%または100%同一であるアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド配列と、VWF031(配列番号86)、VWF034(配列番号87)またはVWF-036から選択される配列に対して少なくとも約80%、90%、95%または100%同一であるアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド配列とを含む。
II.D.Ig定常領域またはその一部
【0184】
本発明のキメラタンパク質はまた、2つのIg定常領域またはその一部、任意のリンカーによってFVIIIタンパク質に融合された第1のIg定常領域またはその一部と、288未満のアミノ酸を有するXTEN配列を介してVWFタンパク質に融合された第2のIg定常領域またはその一部も含む。Ig定常領域またはその一部は、XTEN配列及びVWFタンパク質との組み合わせでキメラタンパク質の薬物動態特性または薬物力学的特性を改善することができる。特定の実施形態では、Ig定常領域またはその一部は、Ig定常領域またはその一部に融合された分子の半減期を延長する。
【0185】
Ig定常領域はCH(定常重鎖)と示されたドメイン(CH1、CH2等)で構成される。アイソタイプ(すなわち、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE)に応じて、定常領域は3または4のCHドメインで構成され得る。一部のアイソタイプ(たとえば、IgG)の定常領域はヒンジ領域も含有する。Janewayら.2001,Immunobiology,Garland Publishing,N.Y.,N.Y.を参照のこと。
【0186】
本発明のキメラタンパク質を作製するためのIg定常領域またはその一部は多数の異なる供給源から得られてもよい。一部の実施形態では、Ig定常領域またはその一部はヒトのIgに由来する。しかしながら、Ig定常領域またはその一部は、たとえば、齧歯類(たとえば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(たとえば、チンパンジー、サル)の種を含む別の哺乳類のIgに由来してもよい。さらに、Ig定常領域またはその一部は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含むIgクラス及びIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含むIgアイソタイプに由来してもよい。一実施形態では、ヒトのアイソタイプIgG1が使用される。
【0187】
種々のIg定常領域の遺伝子配列(たとえば、ヒトの定常領域の遺伝子配列)が公的にアクセスできる供託物の形態で利用可能である。特定のエフェクター機能を有する(またはエフェクター機能を欠いている)、または免疫原性を低下させる特定の修飾を持つ定常領域のドメイン配列を選択することができる。抗体または抗体をコードする遺伝子の多数の配列が公開されており、好適なIg定常領域の配列(たとえば、ヒンジ、CH2及び/またはCH3の配列またはその一部)は当該技術で認識された技法を用いてこれらの配列から導出することができる。前述の方法を用いて得られた遺伝物質を次いで変化させ、または合成して本発明のポリペプチドを得てもよい。本発明の範囲が定常領域のDNA配列の対立遺伝子、変異体及び突然変異を包含することがさらに十分に理解されるであろう。
【0188】
たとえば、ポリメラーゼ鎖反応及び当該ドメインを増幅するように選択されるプライマーを用いてIg定常領域またはその一部の配列をクローニングすることができる。抗体からIg定常領域またはその一部の配列をクローニングするには、ハイブリドーマ、脾臓またはリンパ系細胞からmRNAを単離し、DNAに逆転写し、PCRによって抗体遺伝子を増幅することができる。PCR増幅法は、US4,683,195;US4,683,202;US4,800,159;US4,965,188;及びたとえば、「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」,Innisら編,Academic Press,San Diego,CA(1990);Hoら.1989.Gene,77:51;Hortonら.1993.Methods Enzymol.217:270にて詳細に記載されている。コンセンサス定常領域プライマーによって、または公開された重鎖及び軽鎖のDNA及びアミノ酸の配列に基づいたさらに特異的なプライマーによってPCRを開始してもよい。上述のように、PCRも用いて抗体の軽鎖及び重鎖をコードするDNAクローンを単離してもよい。この場合、コンセンサスプライマーまたは、たとえば、マウスの定常領域プローブのようなさらに大きな相同プローブによってライブラリをスクリーニングしてもよい。抗体遺伝子の増幅に好適な多数のプライマーセットが当該技術で既知である(たとえば、精製抗体のN末端配列に基づく5’プライマー(Benhar及びPastan.1994.Protein Engineering,7:1509);cDNA末端の迅速増幅(Ruberti,F.ら.1994.J.Immunol.Methods,173:33);抗体のリーダー配列(Larrickら.1989,Biochem.Biophys.Res.Commun.160:1250))。抗体配列のクローニングはさらに、参照によって本明細書に組み入れられる1995年1月25日に出願されたNewmanらのUS5,658,570に記載されている。
【0189】
本明細書で使用されるIg定常領域は、ドメインすべてとヒンジ領域またはその一部を含むことができる。一実施形態では、Ig定常領域またはその一部はCH2ドメインと、CH3ドメインと、ヒンジ領域、すなわち、Fc領域またはFcRnの結合相手とを含む。
【0190】
本明細書で使用されるとき、「Fc領域」は、ネイティブなIgのFc領域に相当する、すなわち、その2つの重鎖の各Fcドメインの二量体会合によって形成されるようなポリペプチドの部分として定義される。ネイティブなFc領域は別のFc領域とホモ二量体を形成する。それに対して、用語「遺伝的に融合されたFc領域」または「単鎖Fc領域」(scFc領域)は単一のポリペプチド鎖の中で遺伝的に連結された(すなわち、単一の連続的な遺伝配列)Fcドメインから構成される合成の二量体Fc領域を指す。
【0191】
一実施形態では、「Fc領域」はパパイン切断部位(すなわち、IgGにおける残基216、重鎖定常領域の最初の残基を114であると見なして)のすぐ上流のヒンジ領域で開始して抗体のC末端で終了する単一Ig重鎖の部分を指す。従って、完全なFcドメインは少なくともヒンジドメインとCH2ドメインとCH3ドメインを含む。
【0192】
Igのアイソタイプに応じたIg定常領域のFc領域はCH2、CH3、CH4のドメインと同様にヒンジ領域を含むことができる。IgのFc領域を含むキメラタンパク質は、高い安定性、増加した血清半減期(Caponら,1989,Nature,337:525)と同様に新生児Fc受容体(FcRn)のようなFc受容体への結合(US6,086,875;US6,485,726;US6,030,613;WO03/077834;US2003-0235536A1)を含む幾つかの望ましい特性をキメラタンパク質に与え、それらはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0193】
Ig定常領域またはその一部はFcRnの結合相手であることができる。FcRnは成人の上皮組織で活性があり、腸管の内腔、肺気道、鼻表面、膣表面、結腸及び直腸の表面で発現される(US6,485,726)。FcRnの結合相手はFcRnに結合するIgの一部である。
【0194】
FcRnはヒトを含む幾つかの哺乳類の種から単離されている。ヒトFcRn、サルFcRn、ラットFcRn及びマウスFcRnの配列が知られている(Storyら.1994,J.Exp.Med.180:2377)。FcRnは相対的に低いpHでIgGを結合し(しかし、他のIgクラス、たとえば、IgA、IgM、IgD及びIgEを結合しない)、内腔から漿膜の方向に細胞を横切ってIgGを能動的に輸送し、次いで間質液で見いだされる相対的に高いpHでIgGを解放する。それは、肺及び腸の上皮(Israelら.1997,Immunology,92:69)、腎近位尿細管上皮(Kobayashiら.2002,Am.J. Physiol.Renal Physiol.282:F358)、と同様に鼻上皮、膣表面及び胆道系表面を含む成人の上皮組織(US6,485,726;US6,030,613;US6,086,875;WO03/077834;US2003-0235536A1)で発現される。
【0195】
本発明で有用なFcRnの結合相手は、IgG全体、IgGのFc断片、及びFcRn受容体の完全な結合領域を含む他の断片を含む、FcRn受容体が特異的に結合することができる分子を包含する。FcRn受容体に結合するIgGのFc部分の領域はX線結晶学に基づいて記載されている(Burmeisterら.1994,Nature,372:379)。FcRnとのFcの主な接触領域はCH2ドメインとCH3ドメインの接合部の近傍である。Fc-FcRnの接触はすべて単一Ig重鎖の中である。FcRnの結合相手にはIgG全体、IgGのFc断片、及びFcRn受容体の完全な結合領域を含むIgGの他の断片が挙げられる。主要な接触部位には、CH2ドメインのアミノ酸残基248、250?257、272、285、288、290?291、308?311、及び314並びにCH3ドメインのアミノ酸残基385?387、428、及び433?436が含まれる。IgまたはIgの断片、または領域のアミノ酸の番号付けに対する参照はすべてKabatら.1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Public Health,Bethesda,Md.に基づく。
【0196】
FcRnに結合するFc領域またはFcRnの結合相手はFcRnによって上皮バリアを横切って効果的に行き来することができるので、所望の治療用分子を全身性に投与する非侵襲性の手段を提供する。さらに、Fc領域またはFcRnの結合相手を含む融合タンパク質はFcRnを発現している細胞によって細胞に取り込まれる。ただし、分解についてマークされる代わりに、これらの融合タンパク質は循環で再び再利用されるので、これらタンパク質の生体内での半減期を増加させる。特定の実施形態では、Ig定常領域の一部が、ジスルフィド結合または他の非特異的な相互作用を介して別のFc領域または別のFcRnの結合相手と会合して二量体及びさらに高次の多量体を形成するFc領域または別のFcRnの結合相手である。
【0197】
2つのFcRn受容体が単一のFc分子を結合することができる。結晶学的データは、各FcRn分子がFcホモ二量体の単一のポリペプチドを結合することを示唆している。一実施形態では、FcRnの結合相手、たとえば、IgGのFc断片を生物学的に活性のある分子に連結することは、生物学的に活性のある分子を経口で、頬内で、舌下で、直腸に、膣内に、鼻に投与されるエアロゾルとして、または肺の経路を介して、又は眼の経路を介して送達する手段を提供する。別の実施形態では、キメラタンパク質は侵襲的に、たとえば、皮下に、静脈内に投与することができる。
【0198】
FcRnの結合相手の領域は、FcRn受容体が特異的に結合することができ、結果的にFc領域のFcRn受容体による能動的な輸送を伴う分子またはその一部である。特異的に結合することは、生理的な条件下で相対的に安定である複合体を形成する2つの分子を指す。特異的な結合は、普通、中程度から高い結合能を伴って低い親和性を有する非特異的な結合と区別して高い親和性と中程度から低い結合能を特徴とする。通常、親和性定数KAが10^(6)M^(-1)より高い、または10^(8)M^(-1)より高い場合、結合は特異的であると見なされる。必要に応じて、結合条件を変化させることによって特異的な結合に実質的に影響を及ぼすことなく非特異的結合を減らすことができる。たとえば、分子の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合させる時間、ブロッキング剤(たとえば、血清アルブミン、乳カゼイン)の濃度等のような適当な結合条件は、日常の技法を用いて技量のある熟練者によって最適化され得る。
【0199】
特定の実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、それでもなお、Fc領域にFc受容体(FcR)結合特性を付与するのに十分である1以上の短縮したFc領域を含む。たとえば、FcRnに結合するFc領域の部分(すなわち、FcRn結合部分)は、IgG1のおよそアミノ酸282?438から、EU番号付け(CH2ドメインのアミノ酸248、250?257、272、285、288、290?291、308?311、及び314並びにCH3ドメインのアミノ酸残基385?387、428、及び433?436である一次接触部位と共に)を含む。従って、本発明のFc領域はFcRn結合部分を含んでもよい、またはそれから成ってもよい。FcRn結合部分は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意のアイソタイプの重鎖に由来してもよい。一実施形態では、ヒトのアイソタイプIgG1の抗体に由来するFcRn結合部分が使用される。別の実施形態では、ヒトのアイソタイプIgG4の抗体に由来するFcRn結合部分が使用される。
【0200】
別の実施形態では、「Fc領域」には、Fcドメインのアミノ酸配列またはFcドメインに由来するアミノ酸配列が挙げられる。特定の実施形態では、Fc領域は、ヒンジ(たとえば、上部、中部及び/または下部のヒンジ領域)ドメイン(EU番号付けに従って抗体Fc領域のおよそアミノ酸216?230)、CH2ドメイン(EU番号付けに従って抗体Fc領域のおよそアミノ酸231?340)、CH3ドメイン(EU番号付けに従って抗体Fc領域のおよそアミノ酸341?438)、CH4ドメイン、またはその変異体、一部または断片の少なくとも1つを含む。他の実施形態では、Fcドメインは完全なFc領域(すなわち、ヒンジドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメイン)を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、CH3ドメイン(またはその一部)に融合されたヒンジドメイン(またはその一部)、CH2ドメイン(またはその一部)に融合されたヒンジドメイン(またはその一部)、CH3ドメイン(またはその一部)に融合されたCH2ドメイン(またはその一部)、ヒンジドメイン(またはその一部)とCH3ドメイン(またはその一部)の双方に融合されたCH2ドメイン(またはその一部)を含む、から本質的に成る、または成る。さらに他の実施形態では、Fc領域は少なくともCH2ドメインの一部(たとえば、CH2ドメインのすべてまたは一部)を欠く。特定の実施形態では、Fc領域はEU番号221?447に相当するアミノ酸を含むまたはそれらから成る。
【0201】
本明細書でF、F1またはF2として示されるFc領域は多数の異なる供給源から得てもよい。一実施形態では、ポリペプチドのFc領域はヒトのIgに由来してもよい。しかしながら、Fc領域は、たとえば、齧歯類(たとえば、マウス、ラット、ウサギまたはモルモット)または非ヒト霊長類(たとえば、チンパンジー、サル)の種を含む別の哺乳類種のIgに由来してもよい。さらに、Fcドメインまたはその一部のポリペプチドは、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含むIgクラス並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むIgアイソタイプに由来してもよい。別の実施形態では、ヒトのアイソタイプIgG1が使用される。
【0202】
特定の実施形態では、Fc変異体は、当該野生型Fcドメインを含むFc領域によって付与される少なくとも1つのエフェクター機能における変化(たとえば、Fc受容体(たとえば、FcγRI、FcγRIIまたはFcγRIII)または補体タンパク質(たとえば、C1q)に結合する、または抗体依存性の細胞傷害性(ADCC)、貪食作用または補体依存性の細胞傷害性(CDCC)を誘発するFc領域の能力の改善または低減)を付与する。他の実施形態では、Fc変異体は操作されたシステイン残基を提供する。
【0203】
本発明のFc領域は、エフェクター機能及び/またはFcR若しくはFcRnの結合にて変化(たとえば、向上または低減)を付与することが知られている当該技術で認識されたFc変異体を採用してもよい。具体的には、本発明の結合分子には、たとえば、そのそれぞれが参照によって本明細書に組み入れられる国際PCT公開、WO88/07089A1、WO96/14339A1、WO98/05787A1、WO98/23289A1、WO99/51642A1、WO99/58572A1、WO00/09560A2、WO00/32767A1、WO00/42072A2、WO02/44215A2、WO02/060919A2、WO03/074569A2、WO04/016750A2、WO04/029207A2、WO04/035752A2、WO04/063351A2、WO04/074455A2、WO04/099249A2、WO05/040217A2、WO04/044859、WO05/070963A1、WO05/077981A2、WO05/092925A2、WO05/123780A2、WO06/019447A1、WO06/047350A2及びWO06/085967A2;米国特許公開US2007/0231329、US2007/0231329、US2007/0237765、US2007/0237766、US2007/0237767、US2007/0243188、US20070248603、US20070286859、US20080057056;またはUS5,648,260;US5,739,277;US5,834,250;US5,869,046;US6,096,871;US6,121,022;US6,194,551;US6,242,195;US6,277,375;US6,528,624;US6,538,124;US6,737,056;US6,821,505;US6,998,253;US7,083,784;US7,404,956,及びUS7,317,091にて開示されたアミノ酸位置の1以上における変化(たとえば、置換)が含まれてもよい。一実施形態では、特定の変化(たとえば、当該技術で開示された1以上のアミノ酸の特定の置換)は開示されたアミノ酸位置の1以上で行われてもよい。別の実施形態では、開示されたアミノ酸位置の1以上での異なる変化(たとえば、開示されたアミノ酸位置の1以上での異なる置換)が行われてもよい。
【0204】
たとえば、部位特異的変異誘発のような十分に認識された手段に従ってIgGのFc領域またはFcRnの結合相手を修飾してFcRnが結合するであろう修飾されたIgGまたはFcの断片またはそれらの部分を得ることができる。そのような修飾には、FcRnの接触部位から離れた修飾と同様にFcRnへの結合を保護するまたは増強さえする接触部位内での修飾が挙げられる。たとえば、ヒトIgG1のFc(Fcγ1)における以下の単一のアミノ酸残基:P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、P331A、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A、D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A,Q438A,K439A,S440A,S444A,及びK447Aは、FcRnに対するFcの結合親和性を有意に失うことなく置換されることができ、その際、P238Aは238位でアラニンによって置換された野生型プロリンを表す。一例として、具体的な実施形態は高度に保存されたN-グリコシル化部位を取り外すN297A変異を組み入れる。アラニンに加えて、上記で特定された位置にて野生型アミノ酸について他のアミノ酸が置換されてもよい。Fcに変異を1つずつ導入してネイティブのFcとは区別される100を超えるFc領域を生じてもよい。さらに、これらの個々の変異の2、3またはそれ以上の組み合わせを一緒に導入して数百以上のFc領域を生じてもよい。さらに、本発明の構築物のFc領域の1つを変異させてもよく、構築物の他のFc領域を全く変異させなくてもよく、またはそれら双方を変異させてもよいが、変異は異なる。
【0205】
特定の上記変異はFc領域またはFcRnの結合相手に新しい官能性を付与してもよい。たとえば、一実施形態は、高度に保存されたN-グリコシル化部位を取り外すN297Aを組み入れる。この変異の効果は、免疫原性を低下させ、それによってFc領域の循環する半減期を向上させること、及びFcRnに対する親和性を損なうことなく、Fc領域がFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB及びFcγIIIAに結合できなくすることである。(Routledgeら.1995,Transplantation,60:847;Friendら.1999,Transplantation,68:1632;Shieldsら.1995,J.Biol.Chem.276:6591)。上述の変異から生じる新しい官能性のさらなる例として、場合によっては、FcRnに対する親和性は野生型のそれを超えて上昇し得る。この上昇した親和性は、上昇した「オン」速度、低下した「オフ」速度、または上昇した「オン」速度と低下した「オフ」速度双方を反映してもよい。FcRnに対する上昇した親和性を付与すると考えられる変異の例には、T256A、T307A、E380A及びN434Aが挙げられるが、これらに限定されない(Shieldsら.2001,J.Biol.Chem.276:6591)。
【0206】
さらに、少なくとも3つのヒトFcγ受容体が低いヒンジ領域、一般にアミノ酸234?237の範囲内でIgG上の結合部位を認識すると思われる。従って、新しい官能性と潜在的に低下した免疫原性の別の例は、たとえば、ヒトIgG1のアミノ酸233?236「ELLG」をIgG2由来の相当するアミノ酸「PVA」(アミノ酸1つ欠失)に置き換えることによるこの領域の変異から生じてもよい。そのような変異が導入されていると、種々のエフェクター機能に介在するFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIはIgG1に結合しないであろうことが示されている。Ward及びGhetie,1995,Therapeutic Immunology,2:77並びにArmourら.1999,Eur.J.Immunol.29:2613。
【0207】
一実施形態では、Ig定常領域またはその一部、たとえば、Fc領域は、配列PKNSSMISNTP(US5,739,277の配列番号89または配列番号3)を含み、且つ任意でさらにHQSLGTQ(配列番号90)、HQNLSDGK(配列番号91)、HQNISDGK(配列番号92)またはVISSHLGQ(配列番号93)(またはそれぞれUS5,739,277配列番号11、1、2及び31)から選択される配列を含むポリペプチドである。
【0208】
別の実施形態では、免疫グロブリンの定常領域またはその一部は、別の免疫グロブリンの定常領域またはその一部と共に1以上のジスルフィド結合を形成するヒンジ領域またはその一部におけるアミノ酸配列を含む。免疫グロブリンの定常領域またはその一部によるジスルフィド結合は、内在性のVWFがVWF断片を置き換えないように且つFVIIIに結合しないようにFVIIIを含む第1のポリペプチドとVWF断片を含む第2のポリペプチドとを一緒に配置する。従って、第1の免疫グロブリンの定常領域またはその一部と第2の免疫グロブリンの定常領域またはその一部との間でのジスルフィド結合は内在性VWFとFVIIIタンパク質との間の相互作用を妨害する。VWFとFVIIIタンパク質との間の相互作用の阻害は、キメラタンパク質の半減期が2倍の限度を越えるのを可能にする。ヒンジ領域またはその一部はさらにCH1、CH2、CH3の1以上のドメイン、その断片及びそれらの任意の組み合わせにさらに連結することができる。特定の実施形態では、免疫グロブリンの定常領域またはその一部はヒンジ領域とCH2である。
【0209】
特定の実施形態では、Igの定常領域またはその一部はヘミグリコシル化される。たとえば、2つのFc領域またはFcRnの結合相手を含むキメラタンパク質は、第1のグリコシル化されたFc領域(たとえば、グリコシル化されたCH2領域)またはFcRnの結合相手と、第2のグリコシル化されないFc領域(たとえば、グリコシル化されないCH2領域)またはFcRnの結合相手とを含有する。一実施形態では、リンカーはグリコシル化されたFc領域とグリコシル化されないFc領域との間に割り込んでもよい。別の実施形態では、Fc領域またはFcRnの結合相手は完全にグリコシル化され、すなわち、Fc領域のすべてがグリコシル化される。他の実施形態では、Fc領域はグリコシル化されない、すなわち、Fc分子のいずれもグリコシル化されない。
【0210】
特定の実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、Igの定常領域またはその一部(たとえば、Fc変異体)に対するアミノ酸置換を含み、それは、Ig定常領域の抗原には無関係のエフェクター機能、特にタンパク質の循環する半減期を変化させる。
【0211】
そのようなタンパク質は、これらの置換を欠くタンパク質と比べたとき、FcRnへの上昇したまたは低下した結合を示すので、それぞれ血清にて上昇したまたは低下した半減期を示す。FcRnに対して改善された親和性を持つFc変異体は、長い血清半減期を有することが期待され、そのような分子は、たとえば、慢性の疾患または障害を治療するために投与されるポリペプチドの長い半減期が所望される場合、哺乳類を治療する方法にて有用な適用を有する(たとえば、US7,348,004、US7,404,956及びUS7,862,820を参照のこと)。対照的に、低下したFcRnの結合親和性を持つFc変異体は短い半減期を有することが予想され、そのような分子も、たとえば、短縮された循環時間が有利であり得る哺乳類への投与について、たとえば、生体内での診断用画像化について、または長期間循環に存在する場合、出発ポリペプチドが毒性の副作用を有する状況で有用である。低下したFcRnの結合親和性を持つFc変異体はまた、胎盤を通過しそうにないので、妊娠女性における疾患または障害の治療で有用である。加えて、低下したFcRnの結合親和性が所望であり得る他の適用には、脳、腎臓及び/または肝臓への局在が所望である適用が挙げられる。例となる一実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、脈管構造からの腎臓糸球体の上皮を横切る輸送を低下させる。別の実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、脳から脈管性間隙への脳血管関門(BBB)を横切る輸送を低下させる。一実施形態では、変化したFcRn結合を持つタンパク質は、Ig定常領域の「FcRn結合ループ」の中で1以上のアミノ酸置換を有する少なくとも1つのFc領域またはFcRnの結合相手(たとえば、1または2のFc領域またはFcRnの結合相手)を含む。FcRn結合ループは、野生型完全長のFc領域のアミノ酸残基280?299(EU番号付けに従って)で構成される。他の実施形態では、変化したFcRn結合親和性を有する本発明のキメラタンパク質におけるIg定常領域またはその一部は、15ÅのFcRn「接触ゾーン」内で1以上のアミノ酸置換を有する少なくとも1つのFc領域またはFcRnの結合相手を含む。本明細書で使用されるとき、15ÅのFcRn「接触ゾーン」には、野生型完全長Fc部分の以下の位置:243?261、275?280、282?293、302?319、336?348、367、369、372?389、391、393、408、424、425?440(EU番号付け)での残基が挙げられる。他の実施形態では、変化したFcRnの結合親和性を有する本発明のIg定常領域またはその一部は、以下のEU位置:256、277?281、283?288、303?309、313、338、342、376、381、384、385、387、434(たとえば、N434AまたはN434K)、及び438のいずれか1つに相当するアミノ酸位置での1以上のアミノ酸置換を有する少なくとも1つのFc領域またはFcRnの結合相手を含む。FcRnの結合活性を変えた例となるアミノ酸置換は、参照によって本明細書に組み入れられる国際公開番号WO05/047327にて開示されている。
【0212】
本発明で使用されるFc領域またはFcRnの結合相手はまた、キメラタンパク質のグリコシル化を変化させる当該技術で認識されたアミノ酸置換も含んでもよい。たとえば、VWF断片またはFVIIIタンパク質に連結されたキメラタンパク質のFc領域またはFcRnの結合相手は、低下したグリコシル化(たとえば、N-又はO-結合グリコシル化)をもたらす変異を有するFc領域を含んでもよく、または野生型Fc部分の変化した糖型(たとえば、フコースの少ないグリカンまたはフコースを含まないグリカン)を含んでもよい。
【0213】
一実施形態では、本発明の処理されていないキメラタンパク質は、本明細書で記載されるIgの定常領域またはその一部から独立して選択されるその構成定常領域またはその一部の2以上を有する遺伝的に融合されたFc領域(すなわち、scFc領域)を含んでもよい。一実施形態では、二量体Fc領域のFc領域は同一である。別の実施形態では、Fc領域の少なくとも2つは異なる。たとえば、本発明のタンパク質のFc領域またはFcRnの結合相手は、同じ数のアミノ酸残基を含み、またはそれらは、1以上のアミノ酸残基(たとえば、およそ5アミノ酸残基(たとえば、1、2、3、4、または5のアミノ酸残基)、およそ10残基、およそ15残基、およそ20残基、およそ30残基、およそ40残基、またはおよそ50残基)の長さで異なってもよい。さらに他の実施形態では、本発明のタンパク質のFc領域またはFcRnの結合相手は、1以上のアミノ酸位置で異なってもよい。たとえば、Fc領域またはFcRnの結合相手の少なくとも2つがおよそ5アミノ酸の位置(たとえば、1、2、3、4、または5のアミノ酸の位置)、およそ10の位置、およそ15の位置、およそ20の位置、およそ30の位置、およそ40の位置、またはおよそ50の位置)で異なってもよい。
II.E.リンカー
【0214】
本発明のキメラタンパク質はさらに1以上のリンカーを含む。リンカーの種類の1つは、切断可能なリンカーであり、それは、生体内で、たとえば、凝固の部位にて対象に投与されると種々のプロテアーゼによって切断され得る。一実施形態では、切断可能なリンカーは、部分の、たとえば、VWFタンパク質のXTEN配列からの切断を可能にするので、凝固カスケードの部位でキメラタンパク質からの切断を可能にし、それによって活性化されたFVIII(FVIIIa)がそのFVIIIa活性を有するのを可能にする。リンカーの別の種類は、処理可能なリンカーであり、それは細胞内切断部位を含有するので宿主細胞における細胞内プロセッシング酵素によって切断されることができ、ポリペプチドの好都合な発現及びキメラタンパク質の形成を可能にする。
【0215】
キメラタンパク質における2つのタンパク質の間で1以上のリンカーが存在することができる。一実施形態では、キメラタンパク質は、(i)FVIIIタンパク質と(ii)第1のIgの定常領域またはその一部とを含む第1のポリペプチドと、(iii)VWFタンパク質と(iv)リンカー(たとえば、切断可能なリンカー)と(v)XTEN配列と(vi)第2のIgの定常領域またはその一部とを含む第2のポリペプチドを含む。別の実施形態では、キメラタンパク質は、(i)FVIIIタンパク質と(ii)第1のIgの定常領域またはその一部とを含む第1のポリペプチドと、(iii)VWFタンパク質と(iv)XTEN配列と(v)リンカー(たとえば、切断可能なリンカー)と(vi)第2のIgの定常領域またはその一部とを含む第2のポリペプチドを含む。他の実施形態では、キメラタンパク質は、(i)FVIIIタンパク質と(ii)第1のIgの定常領域またはその一部とを含む第1のポリペプチドと、(iii)VWFタンパク質と(iv)第1のリンカー(たとえば、切断可能なリンカー)と(v)XTEN配列と(vi)第2のリンカー(たとえば、切断可能なリンカー)と(vii)第2のIgの定常領域またはその一部とを含む第2のポリペプチドを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチドはさらに、リンカー、たとえば、FVIIIタンパク質と第1のIg定常領域との間で切断可能なリンカーを含む。
【0216】
特定の実施形態では、キメラタンパク質は、(i)FVIIIタンパク質と(ii)第1のIgの定常領域またはその一部とを含む第1のポリペプチドと、(iii)リンカー(たとえば、切断可能なリンカー)と、(iv)VWFタンパク質と、(v)XTEN配列と(vi)第2のIgの定常領域またはその一部とを含む単鎖を含む。他の実施形態では、キメラタンパク質は、(i)FVIIIタンパク質と(ii)第1のIgの定常領域またはその一部と、(iii)第1のリンカー(たとえば、切断可能なリンカー)と(iv)VWFタンパク質と、(v)第2のリンカー(たとえば、切断可能なリンカー)と(vi)XTEN配列と(vii)第2のIgの定常領域またはその一部とを含む単鎖を含む。処理可能なリンカーはキメラタンパク質が宿主細胞で発現された後、処理され得る;ので宿主細胞で産生されるキメラタンパク質は2または3のポリペプチド鎖を含む最終形態であることができる。
【0217】
本発明で有用なリンカーは任意の有機分子を含むことができる。一実施形態では、リンカーはポリマー、たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)またはヒドロキシエチルデンプン(HES)を含む。別の実施形態では、リンカーはアミノ酸配列を含む。リンカーは少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、または2000のアミノ酸を含むことができる。リンカーは、1?5のアミノ酸、1?10のアミノ酸、1?20のアミノ酸、10?50のアミノ酸、50?100のアミノ酸、100?200のアミノ酸、200?300のアミノ酸、300?400のアミノ酸、400?500のアミノ酸、500?600のアミノ酸、600?700のアミノ酸、700?800のアミノ酸、800?900のアミノ酸、または900?1000のアミノ酸を含むことができる。一実施形態では、リンカーはXTEN配列を含む。XTENの追加の例は本発明に従って使用することができ、US2010/0239554A1、US2010/0323956A1、US2011/0046060A1、US2011/0046061A1、US2011/0077199A1、またはUS2011/0172146A1、またはWO2010091122A1、WO2010144502A2、WO2010144508A1、WO2011028228A1、WO2011028229A1、またはWO2011028344A2にて開示されている。別の実施形態では、リンカーはPAS配列である。
【0218】
一実施形態では、リンカーはポリマー、たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)またはヒドロキシエチルデンプン(HES)である。別の実施形態では、リンカーはアミノ酸配列である。リンカーは少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、または2000のアミノ酸を含むことができる。リンカーは、1?5のアミノ酸、1?10のアミノ酸、1?20のアミノ酸、10?50のアミノ酸、50?100のアミノ酸、100?200のアミノ酸、200?300のアミノ酸、300?400のアミノ酸、400?500のアミノ酸、500?600のアミノ酸、600?700のアミノ酸、700?800のアミノ酸、800?900のアミノ酸、または900?1000のアミノ酸を含むことができる。
【0219】
リンカーの例は当該技術で周知である。一実施形態では、リンカーは配列G_(n)を含む。リンカーは配列(GA)_(n)を含むことができる。リンカーは配列(GGS)_(n)を含むことができる。その他の実施形態では、リンカーは配列(GGGS)_(n)(配列番号101)を含む。さらに他の実施形態では、リンカーは配列(GGS)_(n)(GGGGS)_(n)(配列番号95)を含む。これらの例では、nは1?100の整数であってもよい。他の例では、nは1?20、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20からの整数であってもよい。リンカーの例には、GGG、SGGSGGS(配列番号96)、GGSGGSGGSGGSGGG(配列番号97)、GGSGGSGGGGSGGGGS(配列番号98)、GGSGGSGGSGGSGGSGGS(配列番号99)、またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号100)が挙げられるが、これらに限定されない。リンカーはVWFタンパク質活性または第VIII因子の凝固活性を排除しないまたは低下させない。任意で、リンカーは、たとえば、立体障害の効果を低下させ、VWFタンパク質または第VIII因子タンパク質をその標的結合部位にさらにアクセス可能にすることによって、VWFタンパク質活性または第VIII因子の凝固活性を向上させる。
【0220】
一実施形態では、キメラタンパク質に有用なリンカーは15?25アミノ酸の長さである。別の実施形態では、キメラタンパク質に有用なリンカーは15?20アミノ酸の長さである。一部の実施形態では、キメラタンパク質についてのリンカーは10?25アミノ酸の長さである。他の実施形態では、キメラタンパク質についてのリンカーは15アミノ酸の長さである。さらに他の実施形態では、キメラタンパク質についてのリンカーは(GGGGS)_(n)(配列番号94)であり、その際、Gはグリシンを表し、Sはセリンを表し、nは1?20からの整数である。
II.F.切断部位
【0221】
切断可能なリンカーは、別の分子から分子を1つ解放するために、化学的に(たとえば、エステル結合の加水分解)、酵素的に(たとえば、プロテアーゼ切断配列の組み入れ)、または光分解で(たとえば、3-アミノ-3-(2-ニトロフェニル)プロピオン酸(ANP)のような発色団)切断されることが可能である部分を取り込むことができる。
【0222】
一実施形態では、切断可能なリンカーはN末端またはC末端またはその双方で1以上の切断部位を含む。別の実施形態では、切断可能なリンカーは1以上の切断可能な部位から本質的に成るまたはそれらから成る。他の実施形態では、切断可能なリンカーは、本明細書で記載される異種のアミノ酸リンカー配列、またはポリマー及び1以上の切断可能な部位を含む。
【0223】
特定の実施形態では、切断可能なリンカーは宿主細胞にて切断され得る1以上の切断部位(すなわち、細胞内プロセッシング部位)を含む。切断部位の非限定例には、RRRR(配列番号102)、RKRRKR(配列番号103)及びRRRRS(配列番号104)が挙げられる。
【0224】
一部の実施形態では、切断可能なリンカーは、FVIIIに由来するa1領域と、FVIIIに由来するa2領域と、FVIIIに由来するa3領域と、X-V-P-R(配列番号105)を含むトロンビン切断可能部位と、PAR1非活性部位相互作用モチーフとを含み、その際、Xは脂肪族アミノ酸またはそれらの任意の組み合わせである。完全長のFVIIIに対応するGlu720?Arg740に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%または100%同一であるアミノ酸配列を含むa2領域を含み、その際、a2領域はトロンビンによって切断されることが可能である。特定の実施形態では、本発明の切断可能なリンカーは、ISDKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号106)を含むa2領域を含む。他の実施形態では、本発明で有用な切断可能なリンカーは、完全長のFVIIIに対応するMet337?Arg372に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%または100%同一であるアミノ酸配列を含むa1領域を含み、その際、a1領域はトロンビンによって切断されることが可能である。特定の実施形態では、a1領域はISMKNNEEAEDYDDDLTDSEMDVVRFDDDNSPSFIQIRSV(配列番号107)を含む。一部の実施形態では、本発明の切断可能なリンカーは、完全長のFVIIIに対応するGlu1649?Arg1689に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%または100%同一であるアミノ酸配列を含むa3領域を含み、その際、a3領域はトロンビンによって切断されることが可能である。具体的な実施形態では、本発明の切断可能なリンカーはa3領域を含み、a3領域はISEITRTTLQSDQEEIDYDDTISVEMKKEDFDIYDEDENQSPRSFQ(配列番号108)を含む。
【0225】
他の実施形態では、切断可能なリンカーは、X-V-P-R(配列番号105)を含むトロンビン切断可能部位と、PAR1非活性部位相互作用モチーフとを含み、その際、PAR1非活性部位相互作用モチーフはS-F-L-L-R-N(配列番号109)を含む。PAR1非活性部位相互作用モチーフはさらにP、P-N、P-N-D、P-N-D-K(配列番号110)、P-N-D-K-Y(配列番号111)、P-N-D-K-Y-E(配列番号112)、P-N-D-K-Y-E-P(配列番号113)、P-N-D-K-Y-E-P-F(配列番号114)、P-N-D-K-Y-E-P-F-W(配列番号115)、P-N-D-K-Y-E-P-F-W-E(配列番号116)、P-N-D-K-Y-E-P-F-W-E-D(配列番号117)、P-N-D-K-Y-E-P-F-W-E-D-E(配列番号118)、P-N-D-K-Y-E-P-F-W-E-D-E-E(配列番号119)、P-N-D-K-Y-E-P-F-W-E-D-E-E-S(配列番号120)またはそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸配列を含むことができる。一部の実施形態では、脂肪族アミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンから選択される。
【0226】
他の実施形態では、切断可能なリンカーは、切断可能なリンカーを含むキメラタンパク質が対象に投与された後、プロテアーゼによって切断される1以上の切断部位を含む。一実施形態では、切断部位は、第XIa因子、第XIIa因子、カリクレイン、第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第IIa因子(トロンビン)、エラスターゼ-2、MMP-12、MMP-13、MMP-17、及びMMP-20から成る群から選択されるプロテアーゼによって切断される。別の実施形態では、切断部位は、FXIa切断部位(たとえば、KLTR↓AET(配列番号121))、FXIa切断部位(たとえば、DFTR↓VVG(配列番号122))、FXIIa切断部位(たとえば、TMTR↓IVGG(配列番号123))、カリクレイン切断部位(たとえば、SPFR↓STGG(配列番号124))、FVIIa切断部位(たとえば、LQVR↓IVGG(配列番号125))、FIXa切断部位(たとえば、PLGR↓IVGG(配列番号126))、FXa切断部位(たとえば、IEGR↓TVGG(配列番号:127))、FIIa(トロンビン)切断部位(たとえば、LTPR↓SLLV(配列番号128))、エラスターゼ-2切断部位(たとえば、LGPV↓SGVP(配列番号129))、グランザイム-B切断(たとえば、VAGD↓SLEE(配列番号130))、MMP-12切断部位(たとえば、GPAG↓LGGA(配列番号131))、MMP-13切断部位(たとえば、GPAG↓LRGA(配列番号132))、MMP-17切断部位(たとえば、APLG↓LRLR(配列番号133))、MMP-20切断部位(たとえば、PALP↓LVAQ(配列番号134))、TEV切断部位(たとえば、ENLYFQ↓G(配列番号135))、エンテロキナーゼ切断部位(たとえば、DDDK↓IVGG(配列番号136))、プロテアーゼ3C(PRESCISSION(商標))切断部位(たとえば、LEVLFQ↓GP(配列番号137))、及びソルターゼA切断部位(たとえば、LPKT↓GSES)(配列番号138)から成る群から選択される。特定の実施形態では、FXIa切断部位には、たとえば、TQSFNDFTR(配列番号1)及びSVSQTSKLTR(配列番号3)が挙げられるが、これらに限定されない。トロンビンの切断部位の非限定例には、たとえば、DFLAEGGGVR(配列番号4)、TTKIKPR(配列番号5)、LVPRG(配列番号6)、DKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号88)またはIEPRSFS(配列番号194)が挙げられ、及びALRPR(配列番号7)(たとえば、ALRPRVVGGA(配列番号145))を含む、それから本質的に成る、またはそれから成る配列が挙げられる。
【0227】
特定の実施形態では、切断部位は、TLDPRSFLLRNPNDKYEPFWEDEEK(配列番号146)である。別の実施形態では、切断部位は、DKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号88)またはその断片を含む。特定の一実施形態では、切断部位はIEPRSFS(配列番号194)を含む。別の実施形態では、切断部位はEPRSFS(配列番号195)を含み、その際、切断部位はFVIIIの完全長a2領域ではない。さらに別の実施形態では、切断部位はIEPR(配列番号200)を含む。別の実施形態では、切断部位はIEPR(配列番号200)を含み、その際、切断部位はFVIIIの完全長a2領域ではなく、またはFVIIIの完全長a2領域を含まない。他の実施形態では、切断部位は、DKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号88)、KNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号139)、NTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号140)、TGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号141)、GDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号142)、DYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号143)、YYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号144)、YEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号176)、EDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号177)、DSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号178)、SYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号179)、YEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号180)、EDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号181)、DISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号182)、ISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号183)、SAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号184)、AYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号185)、YLLSKNNAIEPRSFS(配列番号186)、LLSKNNAIEPRSFS(配列番号187)、LSKNNAIEPRSFS(配列番号188)、SKNNAIEPRSFS(配列番号189)、KNNAIEPRSFS(配列番号190)、NNAIEPRSFS(配列番号191)、NAIEPRSFS(配列番号192)、AIEPRSFS(配列番号193)、またはIEPRSFS(配列番号194)を含む。他の実施形態では、切断部位は、DKNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号88)、KNTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号139)、NTGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号140)、TGDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号141)、GDYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号142)、DYYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号143)、YYEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号144)、YEDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号176)、EDSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号177)、DSYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号178)、SYEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号179)、YEDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号180)、EDISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号181)、DISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号182)、ISAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号183)、SAYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号184)、AYLLSKNNAIEPRSFS(配列番号185)、YLLSKNNAIEPRSFS(配列番号186)、LLSKNNAIEPRSFS(配列番号187)、LSKNNAIEPRSFS(配列番号188)、SKNNAIEPRSFS(配列番号189)、KNNAIEPRSFS(配列番号190)、NNAIEPRSFS(配列番号191)、NAIEPRSFS(配列番号192)、AIEPRSFS(配列番号193)、またはIEPRSFS(配列番号194)を含み、その際、切断部位は完全長のFVIIIa2領域ではない。特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、本明細書で提供されるような、または当該技術で知られるようなトロンビン切断アッセイにおいて切断可能である。
III.ポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞
【0228】
本発明で提供されるのはまた、本発明のキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。一実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は単一のポリヌクレオチド鎖によってコードすることができる。別の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は2つの異なるポリヌクレオチド、すなわち、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列によってコードされる。別の実施形態では、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列は2つの異なるポリヌクレオチド(たとえば、異なるベクター)上にある。
【0229】
本発明は、単一のポリペプチド鎖(たとえば、FVIII(X2)-F1-L3-F2-L2-X1-L1-V)をコードするポリヌクレオチドを含み、その際、FVIII(X2)は、XTEN配列が1以上の挿入部位に挿入され、F1が第1のIg定常領域またはその一部、たとえば、第1のFc領域を含み、L1が第1のリンカーを含み、VがVWFタンパク質を含み、X1が長さ288未満のアミノ酸を有するXTEN配列を含み、L2が第2のリンカーを含み、L3が第3のリンカーを含み、F2が第2のIg定常領域またはその一部、たとえば、第2のFc領域を含むFVIIIタンパク質を含む。本発明はまた、2つのポリヌクレオチド、第1のIg定常領域またはその一部に融合されたFVIIIタンパク質を含む第1のポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と、VWFタンパク質と長さ288未満のアミノ酸を有するXTEN配列と第2のIg定常領域またはその一部を含む第2のポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチド配列とを含む。一部の実施形態では、2つのポリペプチド鎖または3つのポリペプチド鎖を含むキメラタンパク質は、単一のポリヌクレオチド鎖によってコードされることができ、次いで2または3(以上)のポリペプチド鎖に処理され得る。さらに他の実施形態では、これらのポリペプチド鎖を含むキメラタンパク質は2つまたは3つのポリヌクレオチド鎖によってコードされることができる。
【0230】
他の実施形態では、ポリヌクレオチドのセットはさらに、タンパク質転換酵素をコードする追加のヌクレオチド鎖(たとえば、キメラポリペプチドが単一のポリヌクレオチド鎖によってコードされる第2のヌクレオチド鎖、またはキメラタンパク質が2つのポリヌクレオチド鎖によってコードされる第3のヌクレオチド鎖)を含む。タンパク質転換酵素は、前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン5型(PCSK5またはPC5)、前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン7型(PCSK7またはPC5)、酵母Kex2、前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン3型(PACEまたはPCSK3)、及び2以上のそれらの組み合わせから成る群から選択することができる。一部の実施形態では、タンパク質転換酵素はPACE、PC5またはPC7である。具体的な実施形態では、タンパク質転換酵素はPC5またはPC7である。PCT/US2011/043568を参照のこと。
【0231】
本明細書で使用されるとき、発現ベクターは、適当な宿主細胞に導入される際、挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳に必要なエレメント、またはRNAウイルスベクターの場合、複製及び翻訳に必要なエレメントを含有する核酸構築物を指す。発現ベクターには、プラスミド、ファージミド、ウイルス及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0232】
本発明の発現ベクターは、本明細書で記載されるキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むであろう。一実施形態では、FVIIIタンパク質と第1のIg定常領域とを含む第1のポリペプチド、VWFタンパク質と288未満のアミノ酸を有するXTEN配列と第2のIg定常領域またはその一部とを含む第2のポリペプチド、またはその双方のための1以上のコーディング配列は発現制御配列に操作可能に連結される。本明細書で使用されるとき、2つの核酸配列は各成分の核酸配列がその官能性を保持するのを可能にするような方法で共有結合される場合、それらは操作可能に連結される。コーディング配列と遺伝子発現制御配列は、遺伝子発現制御配列の影響下または制御下にコーディング配列の発現または転写及び/または翻訳を置くような方法で共有結合される場合、それらは操作可能に連結されると言われる。5’遺伝子発現配列でのプロモータの導入がコーディング配列の転写を生じるのであれば、且つ、2つのDNA配列間の結合の性質が(1)フレームシフト変異の導入を生じない、(2)コーディング配列の転写を指図するプロモータ領域の能力を妨害しない、または(3)タンパク質に翻訳する相当するRNA転写物の能力を妨害しないのであれば、2つのDNA配列は操作可能に連結されると言われる。従って、得られる転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳されるように遺伝子発現配列がコーディング核酸配列の転写に影響を与えることが可能であったならば、遺伝子発現配列はそのコーディング核酸配列に操作可能に連結される。
【0233】
遺伝子発現制御配列は本明細書で使用されるとき、それが操作可能に連結されるコーディング核酸の効率的な転写及び翻訳を促進する、たとえば、プロモータ配列またはプロモータ/エンハンサの組み合わせのような調節性のヌクレオチド配列である。遺伝子発現制御配列は、たとえば、哺乳類またはウイルスのプロモータ、たとえば、構成的なまたは誘導性のプロモータであってもよい。構成的な哺乳類のプロモータには、以下の遺伝子:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼのためのプロモータ、βアクチンのプロモータ、及び他の構成的なプロモータが挙げられるが、これらに限定されない。真核細胞にて構成的に機能する例となるウイルスのプロモータには、たとえば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルのウイルス(たとえば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長い末端反復(LTR)、及び他のレトロウイルスに由来するプロモータ、及び単純性ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼのプロモータが挙げられる。他の構成的なプロモータは当業者に既知である。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモータには誘導性のプロモータも挙げられる。誘導性のプロモータは誘導剤の存在下で発現される。たとえば、メタロチオネインのプロモータを誘導して特定の金属イオンの存在下で転写及び翻訳を促進する。他の誘導性のプロモータは当業者に既知である。
【0234】
一般に、遺伝子発現制御配列は、それぞれ転写及び翻訳の開始に関与する5’非転写配列及び5’非翻訳配列、たとえば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等を必要に応じて含むべきである。特に、そのような5’非転写配列は、操作可能に連結されたコーディング核酸の転写制御のためのプロモータ配列を含むプロモータ領域を含むであろう。遺伝子発現配列は任意で所望のようにエンハンサ配列または上流アクチベータ配列を含む。
【0235】
ウイルスベクターには、以下のウイルス:モロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス、及びラウス肉腫ウイルスのようなレトロウイルス;アデノウイルス、アデノ関連ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプステイン・バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;及びレトロウイルスのようなRNAウイルスに由来する核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない。当該技術で周知の他のベクターを容易に採用することができる。特定のウイルスベクターは、非必須の遺伝子が当該遺伝子で置き換えられている非細胞変性の真核ウイルスに基づく。非細胞変性のウイルスにはレトロウイルスが挙げられ、その生活環には、ゲノムのウイルスRNAのDNAへの逆転写とそれに続く宿主細胞DNAへのプロウイルスの組み込みが関与する。レトロウイルスはヒトの遺伝子療法試験のために認可されている。最も有用なのは、複製欠損している(すなわち、所望のタンパク質の合成を指図できるが、感染性粒子を製造することができない)それらのレトロウイルスである。そのような遺伝的に変化させたレトロウイルスの発現ベクターは生体内での遺伝子の効率の高い導入について一般的な有用性を有する。複製欠損のレトロウイルスを作製する標準的なプロトコール(外来性の遺伝材料のプラスミドへの組み入れ、パッケージ細胞株のプラスミドによる形質移入、パッケージ細胞株による組換えレトロウイルスの産生、組織培養培地からのウイルス粒子の回収、及びウイルス粒子による標的細胞の感染を含む)は、Kriegler,M.,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,W.H.Freeman Co.,New York(1990)及びMurry,E.J.,Methods in Molecular Biology,Vol.7,Humana Press,Inc.,Cliffton,N.J.(1991)にて提供されている。
【0236】
一実施形態では、ウイルスは二本鎖DNAウイルスであるアデノ関連ウイルスである。アデノ関連ウイルスは複製欠損であるように操作することができ、広い範囲の細胞型及び種を感染させることができる。それはさらに、たとえば、熱安定性及び脂質溶媒安定性;造血細胞を含む多様な系列の細胞での高い形質導入頻度;重複感染阻害の欠如のような利点を有するので、複数シリーズの形質導入が可能である。報告によれば、アデノ関連ウイルスは部位特異的な方法でヒトの細胞DNAに組み込むことができ、それによって挿入変異の可能性及びレトロウイルス感染の挿入遺伝子発現の特徴の変動性を出来るだけ小さくする。加えて、野生型のアデノ関連ウイルスの感染が選択圧の非存在下で組織培養にて100継代を超えて続けられているということは、アデノ関連ウイルスのゲノムの組み込みが相対的に安定な事象であることを示している。アデノ関連ウイルスは染色体外の方法でも機能することができる。
【0237】
他のベクターにはプラスミドベクターが挙げられる。プラスミドベクターは当該技術で広範に記載されており、当業者に周知である。たとえば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989を参照のこと。ここ数年、プラスミドベクターは、それらが宿主ゲノム内で複製できず、宿主ゲノムに組み込まれないので生体内で細胞に遺伝子を送達するのに特に有利であることが見いだされている。しかしながら、宿主細胞に適合するプロモータを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内で操作可能にコードされた遺伝子からペプチドを発現することができる。業者から市販されている一部の一般的に使用されるプラスミドには、pBR322、pUC18、pUC19、種々のpcDNAプラスミド、pRC/CMV、種々のpCMVプラスミド、pSV40、及びpBlueScriptが挙げられる。具体的なプラスミドの追加の例には、すべてInvitrogen(Carlsbad、CA.)に由来するpcDNA3.1、カタログ番号V79020;pcDNA3.1/hygro、カタログ番号V87020;pcDNA4/myc-His、カタログ番号V86320;及びpBudCE4.1、カタログ番号V53220が挙げられる。他のプラスミドは当業者に周知である。さらに、標準の分子生物学の技法を用いてプラスミドを特注で設計してDNAの特定の断片を取り除いてもよく及び/または加えてもよい。
【0238】
本発明のタンパク質を産生するのに使用されてもよい昆虫の発現系の1つでは、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして用いて外来性の遺伝子を発現させる。ウイルスはSpodoptera frugiperdaの細胞で増殖する。コーディング配列をウイルスの非必須領域(たとえば、多面体遺伝子)にクローニングし、ACNPVプロモータ(たとえば、多面体プロモータ)の制御下に置く。コーディング配列の上手くいった挿入は、多面体遺伝子の不活化と非閉塞性の組換えウイルス(すなわち、多面体遺伝子によるそのためにコードされたタンパク質様のコートを欠くウイルス)の産生を生じるであろう。次いでこれらの組換えウイルスを用い、挿入された遺伝子が発現されるSpodoptera frugiperdaの細胞を感染させる(たとえば、Smithら.(1983),J.Virol.46:584;US4,215,051を参照のこと。)。この発現系のさらなる例は、Ausubelら.,編.(1989),Current Protocols in Molecular Biology,Vol.2,Greene Publish.Assoc.& Wiley Interscienceにて見いだされ得る。
【0239】
本発明のタンパク質を発現させるのに使用することができる他の系は「GS発現系」とも呼ばれるグルタミン合成酵素遺伝子発現系である(Lonza Biologics PLC,Berkshire UK)。この発現系はUS5,981,216にて詳細に記載されている。
【0240】
哺乳類の宿主細胞では、多数のウイルスに基づく発現系が利用されてもよい。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、コーディング配列はアデノウイルスの転写/翻訳制御複合体、たとえば、後期プロモータ及び三部リーダー配列にライゲーションされてもよい。次いで試験管内または生体内の組換えによってこのキメラ遺伝子をアデノウイルスのゲノムに挿入してもよい。ウイルスゲノムの非必須領域(たとえば、領域E1またはE3)における挿入は、感染させた宿主にて生存でき、ペプチドを発現させることができる組換えウイルスを生じるであろう。たとえば、Logan及びShenk(1984),Proc.Natl.Acad.Sci.USA.81:3655)を参照のこと。或いは、ワクシニア7.5Kプロモータが使用されてもよい。たとえば、Mackettら.(1982),Proc.Natl.Acad.Sci.USA.79:7415;Mackettら.(1984),J.Virol.49:857;Panicaliら.(1982),Proc.Natl.Acad.Sci.USA.79:4927を参照のこと。
【0241】
製造の効率を高めるために、酵素切断部位によって分離される本発明のタンパク質の複数の単位をコードするようにポリヌクレオチドを設計することができる。ポリペプチドの単位を回収するために得られたポリペプチドを(たとえば、適当な酵素による処理によって)切断することができる。これは単一のプロモータによって動かされるポリペプチドの収率を高めることができる。適当なウイルス発現系で使用されると、mRNAによってコードされた各ポリペプチドの翻訳は、たとえば、リボソーム内部侵入部位IRESによって転写物にて内部に向けられる。従って、ポリシストロン性の構築物は、単一の大きなポリシストロン性のmRNAの転写を指図し、その後、それは複数の個々のポリペプチドの翻訳を指図する。このアプローチはポリタンパク質の産生及び酵素的プロセッシングを排除し、単一のプロモータによって動かされるポリペプチドの収率を有意に高め得る。
【0242】
形質転換で使用されるベクターは普通、形質転換体を特定するのに使用される選択可能なマーカーを含有するであろう。細菌の系では、これには、たとえば、アンピシリンまたはカナマイシンのような抗生剤の耐性遺伝子を挙げることができる。培養された哺乳類細胞で使用するための選択可能なマーカーには、たとえば、ネオマイシン、ハイグロマイシン及びメソトレキセートのような薬剤に耐性を付与する遺伝子が挙げられる。選択可能なマーカーは、増幅可能な選択可能なマーカーであってもよい。増幅可能な選択可能なマーカーの1つはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子である。Simonsen,C.C.ら.(1983),Proc.Natl.Acad.Sci.USA.80:2495-9.選択可能なマーカーはThilly,(1986),Mammalian Cell Technology,Butterworth Publishers,Stoneham,Mass.にて概説されており、選択可能なマーカーの選択は当業者のレベルの十分に範囲内である。
【0243】
選択可能なマーカーは、当該遺伝子のように同時に別々のプラスミドで細胞に導入されてもよく、またはそれらは同じプラスミドで導入されてもよい。同じプラスミドならば、選択可能なマーカー及び当該遺伝子は異なるプロモータまたは同一プロモータの制御下にあってもよく、後者の配置は2シストロン性のメッセージを生じる。この種の構築物は当該技術で既知である(たとえば、US4,713,339)。
【0244】
発現ベクターは、組換えで作出されたタンパク質の容易な精製を可能にするタグをコードすることができる。例には、タグを付けた融合タンパク質が産生されるようにlacZコーディング領域とインフレームで、発現されるタンパク質のコーディング配列がベクターにライゲーションされるベクターpUR278(Rutherら.(1983),EMBO J.2:1791)が挙げられるが、これらに限定されず;pGEXベクターを用いてグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを伴った本発明のタンパク質を発現させてもよい。これらのタンパク質は普通可溶性であり、グルタチオン/アガロースビーズに吸着させ、その後、遊離のグルタチオンの存在下で溶出することによって細胞から容易に精製することができる。ベクターは、精製後のタグの容易な取り外しのために切断部位(トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼまたはPRESCISSION PROTEASE(商標)(Pharmacia,Peapack,N.J.))を含む。
【0245】
次いで発現ベクター(単数)またはベクター(複数)が好適な標的細胞にて形質移入されるまたは同時形質移入され、それはポリペプチドを発現するであろう。当該技術で既知の形質移入法には、リン酸カルシウム沈澱(Wiglerら.(1978),Cell,14:725)、エレクトロポレーション(Neumannら.(1982),EMBO J.1:841)、及びリポソーム系試薬が挙げられるが、これらに限定されない。原核細胞及び真核細胞の双方を含む種々の宿主発現ベクター系を利用して本明細書で記載されるタンパク質を発現させてもよい。これらには、適当なコーディング配列を含有する組換えのバクテリオファージDNAまたはプラスミドDNAの発現ベクターで形質転換された細菌(たとえば、大腸菌);適当なコーディング配列を含有する組換えの酵母または真菌の発現ベクターで形質転換された酵母または糸状菌のような微生物;適当なコーディング配列を含有する組換えのウイルス発現ベクター(たとえば、バキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞系;適当なコーディング配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(たとえば、カリフラワーモザイクウイルスまたはタバコモザイクウイルス)で感染させた、または組換えプラスミド発現ベクター(たとえば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または哺乳類細胞(たとえば、HEK293、CHO、Cos、HeLa、HKB11、及びBHK細胞)を含む動物細胞系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0246】
一実施形態では、宿主細胞は真核細胞である。本明細書で使用されるとき、真核細胞は明確な核を有する任意の動物細胞または植物細胞を指す。動物の真核細胞には、脊椎動物、たとえば、哺乳類の細胞、及び無脊椎動物、たとえば、昆虫の細胞が挙げられる。植物の真核細胞には限定しないで酵母細胞を挙げることができる。真核細胞は、原核細胞、たとえば、細菌とははっきりと異なる。
【0247】
特定の実施形態では、真核細胞は哺乳類細胞である。哺乳類細胞は哺乳類に由来する任意の細胞である。哺乳類細胞には、哺乳類細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、哺乳類細胞はヒト細胞である。別の実施形態では、哺乳類細胞はHEK293細胞であり、それはヒト胚性腎臓細胞株である。HEK293細胞は、CRL-1533としてAmerican Type Culture Collection、Manassas、VAから入手可能であり、293-H細胞、カタログ番号11631-017または293-F細胞、カタログ番号11625-019としてInvitrogen(Carlsbad、Calif.)から入手可能である。一部の実施形態では、哺乳類細胞は網膜に由来するヒト細胞株であるPER.C6(登録商標)細胞である。PER.C6(登録商標)細胞はCrucell(Leiden,オランダ)から入手可能である。他の実施形態では、哺乳類細胞はチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞である。CHO細胞はAmerican Type Culture Collection、Manassas、VAから入手可能である(たとえば、CHO-K1;CCL-61)。さらに他の実施形態では、哺乳類細胞は幼若ハムスター腎臓(BHK)細胞である。BHK細胞はAmerican Type Culture Collection、Manassas、VAから入手可能である(たとえば、CRL-1632)。一部の実施形態では、哺乳類細胞はHKB11細胞であり、それはHEK293細胞とヒトB細胞株のハイブリッド細胞株である。Meiら,Mol.Biotechnol.34(2):165-78(2006)。
【0248】
一実施形態では、FVIII(X2)-Fc融合コーディング配列、VWFタンパク質-L1-X1-L2-Fcコーディング配列、またはその双方と、選択可能なマーカー、たとえば、ゼオシン耐性とを含むプラスミドがキメラタンパク質の作出のためにHEK293細胞に形質移入される。
【0249】
別の実施形態では、FVIII-Fc融合コーディング配列、VWFタンパク質-L1-X-L2-Fcコーディング配列、またはその双方と、選択可能なマーカー、たとえば、ゼオシン耐性とを含むプラスミドがキメラタンパク質の作出のためにHEK293細胞に形質移入される。
【0250】
一部の実施形態では、FVIII(X2)-Fc融合コーディング配列と第1の選択可能なマーカー、たとえば、ゼオシン耐性遺伝子を含む第1のプラスミドと、VWFタンパク質-L1-X1-L2-Fcコーディング配列と第2の選択可能なマーカー、たとえば、ネオマイシン耐性遺伝子を含む第2のプラスミドと、タンパク質変換酵素のコーディング配列と第3の選択可能なマーカー、たとえば、ハイグロマイシン耐性遺伝子を含む第3のプラスミドとが、たとえば、キメラタンパク質を作出するために、HEK293細胞に同時形質移入される。第1と第2のプラスミドは、同じ量(すなわち、1:1のモル比)で導入することができ、または、それらは等しくない量で導入することができる。
【0251】
さらに他の実施形態では、FVIII-Fc融合コーディング配列と第1の選択可能なマーカー、たとえば、ゼオシン耐性遺伝子とを含む第1のプラスミドと、VWFタンパク質/L1-X-L2-Fcコーディング配列と第2の選択可能なマーカー、たとえば、ネオマイシン耐性遺伝子とを含む第2のプラスミドと、タンパク質変換酵素コーディング配列と第3の選択可能なマーカー、たとえば、ハイグロマイシン耐性遺伝子とを含む第3のプラスミドとをキメラタンパク質の産生のためにHEK293細胞にて同時形質移入する。第1と第2のプラスミドは等量(すなわち、1:1のモル比)で導入することができ、またはそれらは等しくない量で導入することができる。
【0252】
さらに他の実施形態では、FVIII(X2)-Fc融合コーディング配列と第1の選択可能なマーカー、たとえば、ゼオシン耐性遺伝子とを含む第1のプラスミドと、VWFタンパク質/L1-X-L2-Fcコーディング配列と第2の選択可能なマーカー、たとえば、ネオマイシン耐性遺伝子とを含む第2のプラスミドと、タンパク質変換酵素コーディング配列と第3の選択可能なマーカー、たとえば、ハイグロマイシン耐性遺伝子とを含む第3のプラスミドとをキメラタンパク質の産生のためにHEK293細胞にて同時形質移入する。第1と第2のプラスミドは等量(すなわち、1:1のモル比)で導入することができ、またはそれらは等しくない量で導入することができる。
【0253】
特定の実施形態では、FVIII(XTENを伴ったまたは伴わない)-F1-L3-F2-L2-X-L1-Vコーディング配列と第1の選択可能なマーカー、たとえば、ゼオシン耐性遺伝子とを含む第1のプラスミドと、タンパク質変換酵素コーディング配列と第2の選択可能なマーカー、たとえば、ハイグロマイシン耐性遺伝子とを含む第2のプラスミドとをキメラタンパク質の産生のためにHEK293細胞にて同時形質移入する。FVIII(X)-F1コーディング配列とV-L2-X-L1-F2コーディング配列とのためのプロモータは異なることができ、またはそれらは同一であることができる。
【0254】
さらに他の実施形態では、形質移入される細胞は安定的に形質移入される。当業者に既知の従来の技法を用いてこれらの細胞を安定な細胞株として選択し、維持することができる。
【0255】
本発明のDNA構築物のタンパク質を含有する宿主細胞は適当な増殖培地で増殖する。本明細書で使用されるとき、用語「適当な増殖培地」は細胞の増殖に必要とされる栄養を含有する培地を意味する。細胞の増殖に必要とされる栄養には、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル及び増殖因子が挙げられる。任意で、培地は1以上の選択因子を含有することができる。任意で、培地は仔ウシ血清またはウシ胎児血清(FCS)を含有することができる。一実施形態では、培地は実質的にIgGを含有しない。増殖培地は一般に、たとえば、薬剤選抜によって、またはDNA構築物における選択可能なマーカーによって補完される若しくはDNA構築物とともに同時形質移入される必須栄養素の欠乏によって、DNA構築物を含有する細胞を選抜するであろう。培養される哺乳類細胞は一般に市販の血清含有培地または無血清培地(たとえば、MEM、DMEM、DMEM/F12)にて増殖する。一実施形態では、培地はCD293(Invitrogen,Carlsbad,CA.)である。別の実施形態では、培地はCD17(Invitrogen,Carlsbad,CA.)である。使用される特定の細胞株に適した培地の選択は当業者のレベルの範囲内である。
【0256】
キメラタンパク質の2つのポリペプチド鎖を同時発現させるために、双方の鎖の発現を可能にする条件下で宿主細胞を培養する。本明細書で使用されるとき、培養することは少なくとも定限時、試験管内で生きている細胞を維持することを指す。維持することは生きている細胞の集団の増加を含むことができるが、それを含むことが必要ではない。たとえば、培養で維持される細胞は、集団で静止することができるが、依然として生きており、所望の生成物、たとえば、組換えタンパク質または組換え融合タンパク質を産生することが可能である。真核細胞を培養するのに好適な条件は当該技術で周知であり、それには、培養培地、培養補完物、温度、pH、酸素飽和等の適当な選択が含まれる。商業目的では、培養することには、振盪器フラスコ、ローラーボトル、中空繊維型バイオリアクター、撹拌タンク型バイオリアクター、エアリフト型バイオリアクター、波型バイオリアクター等を含む種々の型の規模拡大システムの使用が含まれ得る。
【0257】
細胞培養条件を選択してVWF断片のFVIIIタンパク質との会合を可能にする。VWF断片及び/またはFVIIIタンパク質の発現を可能にする条件にはビタミンKの供給源の存在が含まれる。たとえば、一実施形態では、安定的に形質移入されたHEK293細胞は4mMのグルタミンで補完されたCD293培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)またはOptiCHO培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)にて培養される。
【0258】
態様の1つでは、本発明は、(a)キメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞に形質移入することと、(b)キメラタンパク質を発現させるのに好適な、キメラタンパク質が発現される条件下で培養培地にて宿主細胞を培養することとを含む、本発明のキメラタンパク質を発現させ、作製し、または産生させる方法を指向する。
【0259】
さらなる実施形態では、第1のIg定常領域またはその一部に連結されたFVIIIタンパク質及び/またはXTEN配列によって第2のIg定常領域またはその一部に融合されたVWFタンパク質を含有するタンパク質産物が培地に分泌される。培地を細胞から分離し、濃縮し、濾過し、次いで2または3のアフィニティカラム、たとえば、プロテインAカラム及び1または2の陰イオン交換カラムを通す。
【0260】
特定の態様では、本発明は本明細書で記載される方法によって産生されるキメラタンパク質に関する。
【0261】
試験管内の製造は、規模拡大が大量の所望の変化した本発明のポリペプチドを生じるのを可能にする。組織培養の条件下での哺乳類細胞の培養の技法は当該技術で既知であり、それには、たとえば、エアリフト型リアクター若しくは連続撹拌型リアクターにおける均質浮遊培養、または中空繊維、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズ若しくはセラミックカートリッジにおける固定化された若しくは捕捉された細胞培養が挙げられる。必要に応じて及び/または所望ならば、普通のクロマトグラフィ法、たとえば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)、DEAEセルロース上のクロマトグラフィまたはアフィニティクロマトグラフィによってポリペプチドの溶液を精製することができる。
IV.医薬組成物
【0262】
本発明のキメラタンパク質を含有する組成物は好適な薬学上許容可能なキャリアを含有してもよい。たとえば、それらは、活性化合物を作用部位への送達のために設計された製剤に処理するのを円滑にする賦形剤及び/または補助剤を含有してもよい。
【0263】
ボーラス注射による非経口投与(すなわち、静脈内、皮下または筋肉内)のために医薬組成物を製剤化することができる。注射用製剤は、単位剤形、たとえば、保存剤を加えたアンプルまたは複数回投与容器で提示され得る。組成物は、懸濁液、溶液、または油性媒体若しくは水性媒体におけるエマルジョンのような形態を取ることができ、懸濁剤、安定剤及び/または分散剤のような製剤化剤を含有することができる。或いは、有効成分は、好適な媒体、たとえば、発熱物質を含まない水と共に構成するための粉末形態であることができる。
【0264】
非経口投与に好適な製剤には、水溶性形態、たとえば、水溶性の塩での活性化合物の水溶液も挙げられる。加えて、適当な油性の注射用懸濁液としての活性化合物の懸濁液を投与してもよい。好適な親油性の溶媒または媒体には、脂肪油、たとえば、ゴマ油、または合成の脂肪酸エステル、たとえば、オレイン酸エチル若しくはトリグリセリドが挙げられる。水性の注射用懸濁液は、たとえば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール及びデキストランを含む、懸濁液の粘度を高める物質を含有してもよい。任意で、懸濁液は安定剤も含有してもよい。リポソームを用いて、細胞または間質腔への送達のために本発明の分子を被包することができる。例となる薬学上許容可能なキャリアは生理的に適合性の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等である。一部の実施形態では、組成物は、等張剤、たとえば、糖類、たとえば、マンニトール、ソルビトールのような多価アルコール、または塩化ナトリウムを含む。他の実施形態では、組成物は、たとえば、湿潤剤、または軽微な量の湿潤剤若しくは乳化剤のような補助物質、有効成分の保存可能期間または有効性を向上させる保存剤または緩衝液のような薬学上許容可能な物質を含む。
【0265】
本発明の組成物は、たとえば、液体(たとえば、注射用及び点滴用の溶液)、分散液、懸濁液、半固形及び固形の剤形を含む種々の形態であってもよい。好まれる形態は投与の方法及び治療適用に左右される。
【0266】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高い薬剤濃度に好適な他の秩序構造として製剤化することができる。無菌の注射用溶液は、必要に応じて、1または組み合わせでの上記で列挙された成分と共に必要な量の有効成分を適当な溶媒に組み込むこと、その後濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、上記で列挙された基礎分散媒と必要とされる他の成分を含有する無菌媒体に有効成分を組み込むことによって調製される。無菌の注射用溶液のための無菌の粉末の場合、好まれる調製方法は、前もって無菌濾過した溶液から有効成分に加えて追加の所望の成分の粉末を得る真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適正な流動性は、たとえば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合、必要とされる粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の延長された吸収は、吸収を遅らせる作用剤、たとえば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0267】
徐放性の製剤または用具によって有効成分を製剤化することができる。そのような製剤及び用具の例には、インプラント、経皮貼付剤、及びマイクロカプセル化送達方式が挙げられる。生分解性で生体適合性のポリマー、たとえば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。そのような製剤及び用具の調製方法は当該技術で既知である。たとえば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,編,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照のこと。
【0268】
注射用のデポー製剤は、たとえば、ポリラクチド-ポリグリコリドのような生分解性ポリマーにて薬剤のマイクロカプセル化マトリクスを形成することによって作製することができる。薬剤のポリマーに対する比及び採用されるポリマーの性質に応じて、薬剤放出の速度を制御することができる。他の例となる生分解性ポリマーはポリオルソエステル及びポリ無水物である。注射用デポー製剤は、リポソームまたはマイクロエマルジョンに薬剤を捕捉させることによっても調製することができる。
【0269】
補足の活性化合物を組成物に組み込むことができる。一実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、別の凝固因子、またはその変異体、断片、類似体または誘導体と共に製剤化される。たとえば、凝固因子には、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、フィブリノーゲン、フォンウィルブランド因子または組換え可溶性組織因子(rsTF)または上記のいずれかの活性化された形態が挙げられるが、これらに限定されない。止血剤の凝固因子には、抗線溶剤、たとえば、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸も挙げることができる。
【0270】
最適な所望の応答を提供するように投与計画を調整してもよい。たとえば、単回でボーラス投与してもよく、幾つかの分割した用量を、時間をかけて投与してもよく、または治療状況の要件によって示されるように用量を比例的に増減してもよい。投与の容易さ及び投与量の均一性のために単位剤形で非経口組成物を製剤化することは有利である。たとえば、RemingtonのPharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,Easton,Pa.1980)を参照のこと。
【0271】
活性化合物に加えて、液状の剤形は、たとえば、水、エチルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステルのような不活性成分を含有してもよい。
【0272】
好適な医薬品のキャリアの非限定例は、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesにも記載されている。賦形剤の一部の例には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、コムギ、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。組成物はまたpH緩衝化試薬、及び湿潤剤または乳化剤も含有することができる。
【0273】
経口投与については、医薬組成物は従来の手段によって調製される錠剤またはカプセルの形態を取ることができる。組成物は、液体、たとえば、シロップまたは懸濁液として調製することもできる。液体は、懸濁剤(たとえば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素添加食用脂肪)、乳化剤(レシチンまたはアカシア)、非水性媒体(たとえば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分画化植物油)、及び保存剤(たとえば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を含むことができる。製剤はまた風味剤、着色剤及び甘味剤も含むことができる。或いは、組成物は水または別の好適な媒体と共に構成するための乾燥製品として提示され得る。
【0274】
頬内投与については、組成物は従来のプロトコールに従って錠剤またはトローチ剤の形態を取ってもよい。
【0275】
吸入による投与については、本発明に従って使用するための化合物は、賦形剤を伴った若しくは伴わない霧状にしたエアロゾルの形態で、または任意で高圧ガス、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素または他の好適な気体を伴った加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は計測した量を送達するための弁を提供することによって決定することができる。吸入具または吸入器で使用するための、たとえば、化合物とラクトースまたはデンプンのような好適な粉末基剤の粉末ミックスを含有するゼラチンのカプセル及びカートリッジを製剤化することができる。
【0276】
医薬組成物は、たとえば、ココアバターまたは他のグリセリドのような従来の坐薬基剤を含有する坐薬または停留浣腸として直腸投与のために製剤化することもできる。
【0277】
一実施形態では、医薬組成物は、キメラタンパク質、該キメラタンパク質をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、または該ベクターを含む宿主細胞と薬学上許容可能なキャリアとを含む。キメラタンパク質におけるFVIIIタンパク質は野生型FVIIIタンパク質に比べて、またはVWF断片を含まない相当するFVIIIタンパク質に比べて延長した半減期を有する。一実施形態では、キメラタンパク質の半減期は、野生型FVIIIよりも少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、または少なくとも約12倍長く延長される。別の実施形態では、第VIII因子の半減期は少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、少なくとも約34時間、少なくとも約35時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、少なくとも約72時間、少なくとも約84時間、少なくとも約96時間、または少なくとも約108時間である。
【0278】
一部の実施形態では、組成物は、局所投与、眼内投与、非経口投与、クモ膜下投与、硬膜下投与、及び経口投与から成る群から選択される経路によって投与される。非経口投与は静脈内投与または皮下投与であることができる。
【0279】
他の実施形態では、組成物を用いてそれを必要とする対象にて出血性の疾患または状態を治療する。出血性の疾患または状態は、出血性凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、出血、筋肉への出血、口腔出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸郭内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、腸腰筋鞘における出血及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。さらに他の実施形態では、対象は手術を受けるように計画される。さらに他の実施形態では、治療は予防的なもの、または要求に応じたものである。
V.遺伝子治療
【0280】
本発明のそのキメラタンパク質は、哺乳類、たとえば、ヒト対象にて生体内で産生させることができ、出血性凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、出血、筋肉への出血、口腔出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸郭内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、及び腸腰筋鞘における出血から成る群から選択される出血性の疾患または障害の治療に対して遺伝子治療のアプローチを使用することは治療上有益である。一実施形態では、出血性の疾患または障害は血友病である。別の実施形態では、出血性の疾患または障害は血友病Aである。これには、好適な発現制御配列に操作可能に連結された好適なキメラタンパク質をコードする核酸の投与が関与する。特定の実施形態では、これらの配列はウイルスベクターに組み込まれる。そのような遺伝子治療に好適なウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプステインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純性ヘルペスウイルスベクター、及びアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターが挙げられる。ウイルスベクターは複製欠損のウイルスベクターであることができる。他の実施形態では、アデノウイルスベクターはそのE1遺伝子及びE3遺伝子にて欠失を有する。アデノウイルスベクターを使用する場合、哺乳類は選択可能なマーカーをコードする核酸に曝露されなくてもよい。他の実施形態では、配列は当業者に既知の非ウイルスベクターに組み込まれる。
VI.キメラタンパク質の使用方法
【0281】
本発明は、本明細書で記載されるキメラタンパク質を用いてFVIIIタンパク質への内在性のVWFの結合を妨げるまたは阻害する方法を指向する。本発明はまた、XTEN及びIg定常領域またはその一部に連結されたFVIIIタンパク質を有するキメラタンパク質を使用する方法を指向する。
【0282】
本発明の態様の1つは、内在性のVWFからFVIII上のVWF結合部位を遮断するまたは遮蔽することによって内在性のVWFとのFVIIIの相互作用を妨げることまたは阻害すること、と同時に、半減期延長剤でもあることができるIg定常領域またはその一部との組み合わせでXTEN配列を用いてキメラタンパク質の半減期を延長することを指向する。一実施形態では、本発明は野生型FVIIIよりも長い半減期を有するFVIIIタンパク質を構築する方法を指向する。方法にて有用なキメラタンパク質は本明細書で記載される1以上のキメラタンパク質を含む。
【0283】
本発明の別の態様は、野生型FVIIIよりも長い半減期を有するFVIIIタンパク質を含むキメラタンパク質を、それを必要とする対象に投与する方法を含み、その際、該方法は、本明細書で記載されるキメラタンパク質を該対象に投与することを含む。
【0284】
一実施形態では、本発明は、XTEN配列とIg定常領域またはその一部を用いて、FVIIIタンパク質とVWFタンパク質とを含むキメラタンパク質の半減期を改善する方法を指向し、それはFVIIIタンパク質との内在性のVWFの相互作用を妨げるまたは阻害する。XTEN配列に連結され(たとえば、FVIII(X))、次いでXTENとIg定常領域またはその一部に融合されたVWFタンパク質に結合されたまたは会合させたFVIIIタンパク質は、VWFのクリアランス経路から遮断されるまたは保護されるので、VWFタンパク質に結合されないFVIIIタンパク質に比べて低下したクリアランスを有する。従って、遮蔽されたFVIIIタンパク質は、XTEN配列とVWFタンパク質との結合されないまたは会合されないFVIIIタンパク質に比べて半減期の最大延長を有する。特定の実施形態では、VWFタンパク質に会合したまたはVWFタンパク質によって保護された且つXTEN配列に連結されたFVIIIタンパク質はVWFクリアランス受容体によってクリアランスされない。他の実施形態では、VWFタンパク質に会合したまたはVWFタンパク質によって保護された且つXTEN配列に連結されたFVIIIタンパク質は、VWFタンパク質に会合しないまたはVWFタンパク質によって保護されない且つXTEN配列に連結されないFVIIIタンパク質よりも系からゆっくりクリアランスされる。
【0285】
態様の1つでは、XTEN配列に連結されたFVIIIタンパク質またはXTENに連結されたVWFタンパク質に結合したまたは会合したFVIIIタンパク質を含むキメラタンパク質は、VWFタンパク質がVWFクリアランス受容体結合部位を含有しないので循環からの低下したクリアランスを有する。VWFタンパク質は、VWFクリアランス経路を介してVWFタンパク質に結合したまたは会合したFVIIIの系からのクリアランスを妨げるまたは阻害する。本発明にとって有用なVWFタンパク質はまた、内在性VWFによって提供される少なくとも1以上のVWF様のFVIII保護特性も提供する。特定の実施形態では、VWFタンパク質またはXTEN配列は1以上のFVIIIクリアランス受容体結合部位も覆い隠すことができ、それによってそれ自体のクリアランス経路によるFVIIIのクリアランスを妨げる。
【0286】
一部の実施形態では、VWFタンパク質またはXTEN配列による内在性VWFへのFVIIIタンパク質の結合の妨害または阻害は試験管内または生体内であることができる。
【0287】
提供されるのはまた、それを必要とする対象に本明細書で記載されるキメラタンパク質を投与することを含むキメラタンパク質の半減期を増す方法である。完全長のVWFに結合したまたは会合した非活性化FVIIIの半減期は血漿にて約12?14時間である。循環中にVWFがほとんどないVWD3型では、FVIIIの半減期はたったの6時間でしかなく、低下した濃度のFVIIIのためにそのような患者では軽度から中程度の血友病Aの症状を招く。本発明のVWF断片またはXTEN配列に連結したまたは会合したキメラタンパク質の半減期は、完全長のVWFに結合したまたは会合した非活性化FVIIIの半減期よりも少なくとも約1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3.0倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、または4.0倍長く増すことができる。
【0288】
一実施形態では、FVIIIタンパク質と第1のIg定常領域またはその一部とを含む第1のポリペプチドと、VWFタンパク質と288未満のアミノ酸を有するXTENとIg定常領域またはその一部とを含む第2のポリペプチドとを含むキメラタンパク質は、XTEN配列または野生型FVIIIを含まない同じ第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む相当するキメラタンパク質よりも少なくとも約2倍、2.5倍、3.0倍、3.5倍、4.0倍、4.5倍、5.0倍、5.5倍、6.0倍、7倍、8倍、9倍、または10倍長い半減期を示す。別の実施形態では、FVIIIタンパク質と第1のIg定常領域またはその一部とを含む第1のポリペプチドと、VWFタンパク質と288未満のアミノ酸を有するXTENとIg定常領域またはその一部とを含む第2のポリペプチドとを含むキメラタンパク質は、XTEN配列または野生型FVIIIを含まない同じ第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む相当するキメラタンパク質よりも約2?約5倍、約3?約10倍、約5?約15倍、約10?約20倍、約15?約25倍、約20?約30倍、約25?約35倍、約30?約40倍、約35?約45倍長い半減期を示す。具体的な実施形態では、本発明のキメラタンパク質の半減期は、FVIIIとVWFの二重ノックアウトマウスにおける野生型FVIIIの半減期よりも少なくとも約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40倍長く、増える。
【0289】
特定の実施形態では、キメラタンパク質はマウスにて約40時間の半減期を示す。
【0290】
一部の実施形態では、キメラタンパク質の半減期は内在性VWFに会合したFVIIIの半減期よりも長い。他の実施形態では、キメラタンパク質の半減期は、野生型FVIIIまたは内在性VWFと会合したFVIIIタンパク質の半減期の少なくとも約1.5倍、2倍、2.5倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4.0倍、4.5倍、または5.0倍である。
【0291】
一部の実施形態では、本発明の結果、キメラタンパク質の半減期は、VWFタンパク質を含まないFVIIIタンパク質または野生型FVIIIに比べて延長される。本発明のキメラタンパク質の半減期は、VWFタンパク質を含まないキメラタンパク質または野生型FVIIIの半減期よりも少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、または少なくとも約12倍長い。一実施形態では、FVIIIの半減期は、野生型FVIIIの半減期よりも約1.5倍?約20倍、約1.5倍?約15倍、または約1.5倍?約10倍長い。別の実施形態では、FVIIIの半減期は、野生型FVIIIまたはVWFタンパク質を含まないFVIIIタンパク質に比べて、約2倍?約10倍、約2倍?約9倍、約2倍?約8倍、約2倍?約7倍、約2倍?約6倍、約2倍?約5倍、約2倍?約4倍、約2倍?約3倍、約2.5倍?約10倍、約2.5倍?約9倍、約2.5倍?約8倍、約2.5倍?約7倍、約2.5倍?約6倍、約2.5倍?約5倍、約2.5倍?約4倍、約2.5倍?約3倍、約3倍?約10倍、約3倍?約9倍、約3倍?約8倍、約3倍?約7倍、約3倍?約6倍、約3倍?約5倍、約3倍?約4倍、約4倍?約6倍、約5倍?約7倍、または約6倍?約8倍延長される。他の実施形態では、本発明のキメラタンパク質の半減期は、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、少なくとも約34時間、少なくとも約35時間、少なくとも約36時間、少なくとも約40時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、少なくとも約72時間、少なくとも約84時間、少なくとも約96時間、または少なくとも約108時間である。さらに他の実施形態では、本発明のキメラタンパク質の半減期は、約15時間?約2週間、約16時間?約1週間、約17時間?約1週間、約18時間?約1週間、約19時間?約1週間、約20時間?約1週間、約21時間?約1週間、約22時間?約1週間、約23時間?約1週間、約24時間?約1週間、約36時間?約1週間、約48時間?約1週間、約60時間?約1週間、約24時間?約6日間、約24時間?約5日間、約24時間?約4日間、約24時間?約3日間、または約24時間?約2日間である。
【0292】
一部の実施形態では、対象当たりの本発明のキメラタンパク質の平均半減期は、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間(1日間)、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約40時間、約44時間、約48時間(2日間)、約54時間、約60時間、約72時間(3日間)、約84時間、約96時間(4日間)、約108時間、約120時間(5日間)、約6日間、約7日間(1週間)、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、または約14日間である。
【0293】
加えて、本発明は、有効量のキメラタンパク質を投与することを含む、出血性の疾患または障害を治療するまたは予防する方法を提供する。一実施形態では、出血性の疾患または障害は、出血性凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、出血、筋肉への出血、口腔出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸郭内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、及び腸腰筋鞘における出血から成る群から選択される。具体的な実施形態では、出血性の疾患または障害は血友病Aである。
【0294】
本発明によって調製される内在性のVWFとのFVIIIタンパク質の相互作用を妨げるまたは阻害する、本明細書で記載されるVWFタンパク質との組み合わせでXTEN配列とIg定常領域またはその一部とを含むキメラタンパク質は、止血障害を有する対象を治療する方法及び一般的な止血剤を必要とする対象を治療する方法を含むが、これらに限定されない、当業者によって認識されるような多数の用途を有する。一実施形態では、本発明は、治療上有効な量のキメラタンパク質を投与することを含む、止血障害を有する対象を治療する方法に関する。
【0295】
キメラタンパク質におけるFVIIIタンパク質部分は、負に荷電したリン脂質表面で第IX因子に対する補因子として作用し、それによってXase複合体を形成することにより止血障害を治療するまたは予防する。活性化された凝固因子のリン脂質表面への結合は、この過程を血管損傷の部位に局在化させる。リン脂質表面では、第VIIIa因子が第IXa因子による第X因子の活性化の最大速度をおよそ200,000倍高め、トロンビン生成の大きな第2のバーストをもたらす。
【0296】
本発明のキメラタンパク質を用いて止血障害を治療することができる。本発明のキメラタンパク質の投与によって治療されてもよい止血障害には、血友病A、と同様に第VIII因子に関連する欠損または構造的な異常が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、止血障害は血友病Aである。
【0297】
本発明のキメラタンパク質を予防的に用いて止血障害の対象を治療することができる。本発明のキメラタンパク質を用いて止血障害の対象における急性出血の症状の出現を治療することができる。別の実施形態では、止血障害は欠陥のある凝固因子、たとえば、フォンウィルブランド因子の結末であってもよい。一実施形態では、止血障害は遺伝性の障害である。別の実施形態では、止血障害は後天的な障害である。後天的な障害は根底にある二次的な疾患または状態の結果生じ得る。無関係な状態は、たとえば、癌、自己免疫疾患または妊娠であり得るが、これらに限定されない。後天的な障害は加齢からまたは根底にある二次的な障害を治療する薬物(たとえば、癌の化学療法)から生じることができる。
【0298】
本発明はまた、先天的な止血障害を有していないが、たとえば、抗FVIII抗体の発生または手術によって結果的に止血障害を得てしまう二次的な疾患または状態を有する対象を治療する方法にも関する。従って、本発明は、本方法によって調製される治療上有効な量のキメラタンパク質を投与することを含む、一般的な止血剤を必要とする対象を治療する方法に関する。
【0299】
本発明はまた、有効量の、本明細書で記載されるキメラタンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを投与することを含む、FVIIIの免疫原性を減らす、またはFVIIIに対する低い免疫原性を誘導する方法にも関する。
【0300】
一実施形態では、一般的な止血剤を必要とする対象は手術を受けているまたは手術を受ける予定である。本発明のキメラタンパク質は予防的投薬計画として手術の前に、最中に、またはその後に投与することができる。本発明のキメラタンパク質を手術の前に、最中に、またはその後に投与して急性期出血症状の出現を制御することができる。
【0301】
本発明のキメラタンパク質を用いて、止血障害を有していない急性期出血症状の出現を有する対象を治療することができる。急性期出血症状の出現は、重篤な外傷、たとえば、手術、交通事故、創傷、裂傷銃撃、または制御されない出血を生じる他の外傷性の事象の結果生じ得る。出血症状の出現の非限定例には、出血性凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、出血、筋肉への出血、口腔出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸郭内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、腸腰筋鞘における出血及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0302】
予防的適用では、本発明のキメラタンパク質を含有する1以上の組成物またはそのカクテルをまだ疾患状態ではない患者に投与して、患者の抵抗性を高める、または疾患若しくは障害に関連する症状を軽減する。そのような量は「予防上有効な量」であると定義される。治療応用では、疾患の進行が低下するまたは終了するまで、且つ患者が疾患の症状の部分的なまたは完全な改善を示すまで、相対的に短い間隔で、相対的に高い投与量(たとえば、投与当たり約1?400mg/kgのポリペプチド、5?25mgの投与量は放射性免疫抱合体にさらに一般的に使用され、さらに高い用量が細胞毒素/薬剤修飾のポリペプチドに使用される)が必要とされることが多い。その後、予防的投薬計画が患者に投与され得る。
【0303】
一部の実施形態では、本発明のキメラタンパク質または組成物は、要求に応じた治療に使用され、それには、出血症状の出現、関節血症、筋肉出血、口腔出血、出血、筋肉への出血、口腔出血、外傷、頭部外傷(頭部の外傷)、消化管出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸郭内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、腸腰筋鞘における出血についての治療が含まれる。対象は、外科的予防法、手術前後の管理、または手術のための治療を必要としてもよい。そのような手術には、たとえば、小手術、大手術、抜歯、扁桃切除、鼠径ヘルニア切開術、滑膜切除、全膝置換、開頭術、骨接合術、外傷手術、頭蓋内手術、腹腔内手術、胸郭内手術、または関節置換手術が挙げられる。
【0304】
一実施形態では、本発明のキメラタンパク質は静脈内に、皮下に、筋肉内に、または粘膜表面を介して、たとえば、経口で、舌下に、頬内に、鼻内に、直腸に、膣内に、または肺の経路を介して投与される。本発明のVWF断片とFVIIIタンパク質とを含むキメラタンパク質は、出血の部位へのキメラタンパク質の徐放を可能にするバイオポリマー固形支持体に埋め込むことができ、若しくは連結することができ、または帯具/包帯に埋め込むことができる。キメラタンパク質の用量は対象及び使用される投与の特定の経路に応じて変化するであろう。投与量は0.1?100,000μg/体重kgの範囲であることができる。一実施形態では、投薬範囲は0.1?1,000μg/kgである。別の実施形態では、投薬範囲は0.1?500μg/kgである。タンパク質は連続的にまたは特定時限の間隔で投与することができる。試験管内のアッセイを用いて最適な用量範囲及び/または投与のスケジュールを決定してもよい。凝固因子の活性を測定する試験管内のアッセイ、たとえば、STA-CLOT VIIa-rTF凝固アッセイまたはROTEM凝固アッセイは当該技術で既知である。さらに、有効な用量は、動物モデル、たとえば、血友病イヌから得られた用量反応曲線から外挿されてもよい(Mountら.2002,Blood,99(8):2670)。
【0305】
今や本発明を詳細に記載してきたが、説明目的のみのために本明細書に含められ、本発明の限定であることは意図されない以下の実施例を参照して、本発明がさらに明瞭に理解されるであろう。本明細書で参照された特許、出版物及び論文はすべて参照によって明白に且つ具体的に本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0306】
実施例全体を通して、特に言及されない限り、以下の材料及び方法が使用された。
【0307】
材料及び方法
一般に、本発明の実践は、特に指示されない限り、化学、生物物理学、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学(特に、たとえば、抗体技術)、の従来の技法、及び電気泳動における標準の技法を採用する。たとえば、Sambrook,Fritsch及びManiatis,Molecular Cloning:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Antibody Engineering Protocols(Methods in Molecular Biology),510,Paul,S.,Humana,Pr.(1996);Antibody Engineering:A Practical Approach,(Practical Approach Series,169),McCafferty,Ed.,Irl,P.(1996);Antibodies:A Laboratory Manual,Harlowら,CS.H.L.Press,Pub.(1999);及びCurrent Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubelら,John Wiley & Sons(1992)を参照のこと。
実施例1:FVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体
【0308】
本発明は、IgGのFcドメインを介してフォンウィルブランド因子(VWF)タンパク質のD’D3ドメインに結合されるキメラFVIII分子を生成することを指向する。結合されたD’D3ドメインは内在性のVWF多量体とのFVIIIの相互作用を妨げる。キメラタンパク質の薬物動態を改善するために、この分子は他の半減期の延長技術を組み入れるためのプラットフォームとして役立つ。XTEN配列はFVIIIのBドメインに、及びD’D3とFc領域の間に組み込まれてFVIII/VWFヘテロ二量体の半減期を延ばした。
【0309】
D’D3とFcの間でのトロンビン切断部位はトロンビンによるFVIII分子の活性化の際、D’D3ドメインの解放を可能にする。
実施例2:FVIII-XTEN-Fc/D’D3-Fcヘテロ二量体のプラスミド構築VWF031におけるVWF050-IHH三重変異のクローニング
【0310】
FcにおけるIHH三重変異はFcRnとの相互作用を妨げるので、FcRn経路によるFc含有分子の再利用はない。Fcにおける3つの変異は、I253A、H310A、H435Aである。
【0311】
VWF050は、RsRIIとNot1の制限部位間でIHH三重変異を含有するFc断片によってVWF031プラスミドのFc領域を交換することによって生成した。VWF057のクローニング?144 AE XTEN+35aaトロンビン切断可能リンカーを伴ったVWF-Fcをクローニング
オリゴ
ESC155-VWF034における144 AE XTENのためのオリゴ-逆行
CCCCGCCACCGGATCCCCCGCCACCGGATCCCCCGCCACCGGATCCCCCGCCACCGGAACCTCCACCGCCGCTCGAGGCACCTTCTTCAGTGCTGGTGGGCGAGCCCGCTGGTGACCCTTCCTC
ESC156-VWF034における144 AE XTEN-GSリンカーのためのオリゴ-逆行
GGGGAAGAGGAAGACTGACGGTCCGCCCAGGAGTTCTGGAGCTGGGCACGGTGGGCATGTGTGAGTTTTGTCGCCTCCGCTGCCCCGGGGGACCAGGGATCCCCCGCCACCGGATCCCCCGCCACCGGATCCCCCGCCACCGGATCCCCCGCC
ESC157-VWF031における144 AE XTENのためのオリゴ-順行
GTGAAGCCTGCCAGGAGCCGATATCGGGCGCGCCAACATCAGAGAGCGCCACCCCTGAAAGTGGTCCCGGGAGCGAGCCAGC
【0312】
PCRを2回行ってトロンビン切断部位を伴った144AE-XTEN+35aaGSリンカーを得た。
【0313】
144-AE XTENコーディングDNAを鋳型とし、ESC157/ESC155のプライマー対を用いて第1のPCR反応を行った。この反応から得られた長さ約550bpのPCR産物を第2のPCR反応の鋳型として用い、ESC157/156のプライマー対を用いて増幅した。この反応は長さ約700bpの産物を生じた。次いでこの700bpのPCR産物とVWF034プラスミドをEcoRV-HFとRsRIIで消化した。消化から得たプラスミド主鎖。
【0314】
次いでVWF034を用いて700bpのPCR産物をライゲーションした。
VWF034でのVWF058-IHH三重変異のクローニング
【0315】
FcにおけるIHH三重変異はFcRnとの相互作用を妨げるので、FcRn経路によるFc含有分子の再利用はない。Fcにおける3つの変異はI253A、H310A、H435Aである。
【0316】
RsRIIとNot1の制限部位間でのIHH三重変異を含有するFc断片とVWF034のFc領域を交換することによってVWF058が生成された。
IHH三重変異を伴うFVIII-263-FVIII205のクローニング
【0317】
FcにおけるIHH三重変異はFcRnとの相互作用を妨げるので、FcRn経路によるFc含有分子の再利用はない。Fcにおける3つの変異はI253A、H310A、H435Aである。
【0318】
RsRIIとNot1の制限部位間でIHH三重変異を含有するFc断片によりFVIII205プラスミドのFc領域を交換することによってFVIII263を生成した。
Bドメインにおける144AEXTENを伴ったFVIII-282-FVIII-Fcのクローニング
ESC158-Bドメインにおける144AE-XTENのためのオリゴ-順行
AAGAAGCTTCTCTCAAAACGGCGCGCCAACATCAGAGAGCGCCACCCCTGAAAGTGGTCCCGGGAGCGAGCCAGCCACATCTGGGTCGGAAACGCCAGGC
ESC159-Bドメインにおける144AE-XTENのためのオリゴ-逆行
GGTATCATCATAATCGATTTCCTCTTGATCTGACTGAAGAGTAGTACGAGTTATTTCAGCTTGATGGCGTTTCAAGACTGGTGGGCTCGAGGCACCTTCTTCAGTGCTGGTGGGCGAGCCCGCTGGTGACCCTTCCTCAGTGGACGTAGG
【0319】
144-AE XTENコーディングDNAを鋳型とし、ESC158/ESC159のプライマー対を用いて第1のPCR反応を行った。この反応から長さ約550bpのPCR産物が得られ、次いでFVIII169プラスミドをAscIとCla1で消化した。次いで消化したFVIII169に由来するプラスミド主鎖を用いて、FVIII282を得るために550bpのPCR産物をライゲーションした。
IHH三重変異を伴ったFVIII-283-FVIII169のクローニング
【0320】
FcにおけるIHH三重変異はFcRnとの相互作用を妨げるので、FcRn経路によるFc含有分子の再利用はない。Fcにおける3つの変異はI253A、H310A、H435Aである。
【0321】
RsRIIとNot1の制限部位間でIHH三重変異を含有するFc断片とFVIII169プラスミドのFc領域を交換することによってFVIII283を生成した。
実施例3:HEK293細胞におけるFVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcの産生
【0322】
図2.FVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fc構築物の発現を示す模式図。ポリエチレンイミン(PEI)を用いてHEK293細胞にて3つのプラスミドの同時形質移入を行った。第1のプラスミドはFVIII-XTEN-Fcの発現を引き出し、第2のプラスミドはD1D2D’D3-XTEN-Fcを発現し、第3のプラスミドはPACE/フーリンの発現を引き出し、それはD1D2D’D3-XTEN-Fcからプロペプチド、すなわち、D1D2ドメインを酵素的に取り外すのに必要とされる。この3つのプラスミド発現系の産物には、FVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体と、D’D3-XTEN-Fcホモ二量体と、微量のFVIII-XTEN-Fcヘミ接合様の種が含まれる。
実施例4:FVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体の精製
【0323】
FVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体を精製するために、タンジェンシャルフロー(TFF)工程を用いて先ず馴化培地を10倍に濃縮した。次いでアフィニティクロマトグラフィ、その後脱塩カラムを用いて濾液における生成物をさらに精製した。分子の純度はHPLC/SECによって許容可能であったが、さらにウエスタンブロットによって確認した。FVIII活性アッセイ(実施例5)及びOD280測定によって測定したとき、分子の比活性はBドメインを欠失させたFVIIIに匹敵した。
実施例5:FVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体の比活性
【0324】
FVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体の活性は、FVIII発色アッセイ及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイによって測定した。SQ BDD-FVIII、rFVIII169/VWF034及びrFVIII169/VWF057の発色比活性及びaPTT比活性を表16に載せる。SQ BDD-FVIIIに比べて、我々はrFVIII169/VWF034及びrFVIII169/VWF057について匹敵する発色比活性及びaPTT比活性における60%の低下を観察した。
【表16】

FVIII発色アッセイ
【0325】
DiaPharmaからのCOATEST SP FVIIIキット(製品#:K824086)を用いてFVIII活性を測定したが、インキュベートはすべて振盪しながら37℃のプレートヒーター上で行った。
【0326】
血液凝固第VIII因子についてのWHO第8回国際基準:07/350にコードされたC、濃縮物をアッセイ基準として用い、基準の範囲は100mIU/mL?0.78mIU/mLだった。プールした通常のヒト血漿アッセイの対照及び試験試料(1×Coatest緩衝液で希釈した)を2連でImmulon2HB96穴プレートに加えた(25μL/ウェル)。各添加間に5分間のインキュベートを伴って、新しく調製したIXa/FXリン脂質ミックス(50μL)と、25μLの25mMのCaCl_(2)と50μLのFXa基質を各ウェルに順に加えた。基質とのインキュベートの後、25μLの20%酢酸を加えて呈色反応を止め、SpectraMAXプラス(Molecular Devices)機器によってOD405の吸光度を測定した。SoftMax Proソフトウエア(バージョン5.2)によってデータを解析した。定量の最低レベル(LLOQ)は7.8mIU/mLである。
FVIIIのaPTTアッセイ
【0327】
SysmexCA-1500凝固アナライザにてFVIIIのaPTTアッセイを以下のように行った:先ず、aPTT緩衝液(50mMのトリス、100mMのNaCl、1%のHSA、pH7.4)における手動で希釈した50μLの試料、基準及び対照を機器によって反応キュベットに加え、その後、50μLのFVIII-欠損の血漿(George King Bio-Medical,製品#:0800)を加えた。37℃で1分間のインキュベートに続いて、50μLのaPTT試薬(Actin(登録商標)FSL活性化セファロプラスチン試薬-Dade Behring,参照#B4219-2)を反応混合物に加え、37℃で4分間インキュベートした。その後、50μLの20mMのCaCl_(2)(Dade Behring,参照#ORFO37)を加え、反応キュベットを直ちに4つの分光光度計のチャンネル位置の1つに移し、混合物における屈折光線の量を測定し、機器のソフトウエアのアルゴリズムによってそれを凝固の開始に変換した。報告された凝固時間は、CaCl_(2)の添加から凝固形成の開始までの時間の長さだった。WHO第8回国際FVIII基準を100mIU/mLから0.78mIU/mLまでの範囲にaPTT緩衝液で希釈することによってアッセイ基準を生成した。MSエクセルにてX軸としてのFVIII活性(mIU/mL)の対数(底10)に対してY軸としての凝固時間(秒で)として検量線をプロットし、この検量線の線形回帰直線についての式を用いて個々の試料の活性を算出した。アッセイ性能に基づいて、定量の下限(LLOQ)は7.8mIU/mLだった。
実施例6:ヘテロ二量体の半減期延長に対するXTEN挿入の相加効果
【0328】
半減期の延長のためにXTENの挿入をヘテロ二量体に組み込んだ。図3におけるrFVIII169/VWF031によって実証されたように、FVIIIのBドメインでの単一の288アミノ酸(aa)AE-XTENの挿入はHemAマウスにて16.7時間のヘテロ二量体の半減期を生じた。ヘテロ二量体の半減期をさらに改善するために、144aaまたは288aaの長さの第2のXTEN挿入をそれぞれFVIIIのA1ドメインにて、またはD’D3断片のすぐ下流でFVIII169/VWF031に組み込み、ヘテロ二量体の変異体をFVIII205/VWF031及びFVIII169/VWF034と命名した。
【0329】
200IU/kg用量での試験分子の単回静脈内投与によってFVIII欠損(HemA)マウスにてrFVIII169/VWF031、rFVIII205/VWF031及びrFVIII169/VWF034の半減期を評価した。図3にて示すような指定時点で血漿試料を回収し、FVIII発色アッセイによって試料のFVIII活性を測定し、WinNonlin-Phoenixプログラムを用いてPKのパラメータを算出し、表17に載せた。
【0330】
図3及び表17に示すように、FVIIIのA1ドメインにて、またはD’D3の下流にて第2のXTEN挿入を加えることはさらにヘテロ二量体の半減期をそれぞれ29.45または31.10時間に改善した。さらに、双方のXTEN挿入からクリアランス及びAUCにて2倍を超える改善も観察された。
【表17】

実施例7:D’D3とFcドメインの間に挿入されると144aaAE-XTENは288aaAE-XTENよりも良好な半減期の利益を付与される
【0331】
D’D3-XTEN-Fc鎖内でのXTEN挿入の最適な長さを特定する試みにて別のヘテロ二量体FVIII169/VWF057を構築し、XTEN挿入の長さを288aaから144aaに減らした。図4で示すように、rFVIII169/VWF034に比べて、rFVIII169/VWF057の半減期は31時間から42時間に増えた。rFVIII169/VWF057についても改善されたクリアランス及びAUCが観察され、データを表18に載せた。従って、FVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体のD’D3とFcドメインの間に挿入すると144aaAE-XTENはAE-288aaXTENよりも最適である。
【表18】

実施例8:Fcドメインはヘテロ二量体の半減期を延長する
【0332】
FcドメインはFcRnが介在する再利用経路を介してその融合タンパク質の半減期を延長する。ヘテロ二量体の半減期の延長に対するFcドメインの必要性を確認するために、野生型FcドメインをrFVIII205/VWF031における三重変異体(I253A/H310A/H435A;IHH)によって置き換えてrFVIII263/VWF050を形成し、rFVIII263/VWF050について表面プラスモン共鳴(Biacore)アッセイによってFcRn結合の完全な排除を確認した。FVIII263/VWF050の半減期をrFVIII205/VWF031と比べてHemAマウスにて評価した。図5及び表19にて示すようにrFVIII263/VWF050について上昇したクリアランス速度と同様に低下した半減期及びAUCが観察された。この結果はFVIIIとD’D3の共有結合を確保することに加えて、ヘテロ二量体の半減期の改善にはFcドメインも必要であることを実証した。
【表19】

実施例9:HemAマウスの尾クリップ出血モデルにおけるFVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体の急性期有効性
【0333】
HemAマウスの尾クリップ出血モデルを用いて主要なヘテロ二量体の急性期有効性を評価した。
【0334】
8?12週齢のオスHemAマウスを4つの処理群に無作為化し、それぞれSQ BDD-FVIII、rFVIII169/VWF034、rFVIII169/VWF057または媒体溶液の単回静脈内投与で処理した。FVIIIの発症時治療を模倣するために(正常なFVIII血漿レベルの50?100%を再構築するために)、選択されたFVIII処理用量はFVIIIのaPTTアッセイで測定したとき75IU/kgである。この用量レベルで、試験FVIII変異体はすべて投与の5分後、正常なマウス血漿FVIII活性の約70%を再構築するであろう。
【0335】
試験における各個々の動物の失血値を図6でプロットした。媒体処理動物に比べてFVIII処理群すべてについて失血値の有意な低下が認められた。3つのFVIII処理群の中で、失血の低下には統計的な有意差が見られなかったということは、ヘテロ二量体分子が要求に応じた治療についてSQ BDD-FVIIIと同様に潜在的に有効であり得ることを示唆している。
【0336】
試験における各個々の動物の失血値を図6でプロットした。媒体処理動物に比べてFVIII処理群すべてについて失血値の有意な低下が認められた。3つのFVIII処理群の中で、失血の低下には統計的な有意差が見られなかったということは、ヘテロ二量体分子が要求に応じた治療についてSQ BDD-FVIIIと同様に潜在的に有効であり得ることを示唆している。
【0337】
加えて、低用量(37.5IU/kg)のrBDD-FVIIIまたはrFVIII169/VWF034でHemAマウスを処理し、結果を図6Bに示す。75IU/kg用量と同様に、rFVIII169/VWF034は尾クリップ損傷後のHemAマウスに対してBDD-FVIIIと類似の保護を提供したということは、分子がHemAマウスにて正常な循環FVIIIレベルの約35%で重篤な出血症状の出現を治療するのに依然として有効であったことを示している。
【0338】
尾クリップの手順は以下のように実施した。手短には、尾損傷に先立って、50mg/kgのケタミン/0.5mg/kgのデクスメデトミジンのカクテルでマウスを麻酔し、37℃の加熱パッド上に置いて体温を維持した。次いでマウスの尾を37℃の生理食塩水に10分間浸して外側静脈を拡張させた。静脈の拡張の後、FVIII変異体または媒体溶液を、尾静脈を介して注射し、次いで投与の5分後、刃が真っすぐな#11外科用メスを用いて5mm離れた尾を切断した。流れた血液を13mLの37℃生理食塩水の中に30分間採取し、血液採取チューブの重量変化によって失血値を決定した:失血値=(採取チューブの最終重量-開始重量+0.10)mL。t検定(Mann-Whitney検定)及び一元ANOVA(KRUSKAL-Wallis検定、事後検定:Dunns多重比較検定)を用いて統計的解析を行った。
実施例10:HemAマウスの尾静脈横切開出血モデルにおけるFVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体の予防的有効性
【0339】
HemAマウスの尾静脈横切開(TVT)モデルにてFVIII169/VWF057の予防的有効性を調べた。TVTモデルはマウスの尾の外側静脈に損傷を導入することによって出血を誘導し、それは血友病出血障害の患者における自然発生的な出血症状の出現を模倣する。
【0340】
8?10週齢のオスHemAマウスを4つの処理群に無作為化し、尾静脈損傷の72時間前にFVIII169/VWF057で、または損傷の24時間若しくは48時間前にSQ BDD-FVIIIで処理した。媒体で処理した動物を陰性対照として使用した。損傷後24時間以内での再出血または過剰な失血による安楽死の事象を図7にてプロットした。
【0341】
図7にて示すように、損傷後限られた保護しか認められなかったTVTの48時間前にSQ BDD-FVIIIで処理したマウスとは異なって、尾損傷の72時間前にrFVIII169/VWF057の処理を受けたマウスが、TVTの24時間前にSQ BDD-FVIII処理を受けたマウスに比べて再出血に対する類似する保護及び生存を有したということは、rFVIII169/VWF057がTVTモデルにおけるHemAマウスに少なくとも3倍以上(たとえば、4倍)長い保護を提供できることを示している。従って、rFVIII169/VWF057は現在のFVIII予防法の治療回数を有意に減らし得る。
【0342】
同様に、尾静脈損傷の24時間前または96時間前にFVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体:rFVIII169/VWF034及びrFVIII169/VWF057でHemAマウスを処理した。処理の再出血及び生存のデータを損傷の24時間前または48時間前のrBDD-FVIII及び媒体によるデータと比較した。尾静脈損傷の24時間前にrBDD-FVIIIで処理したマウスにおける再出血が媒体で処理したマウスに類似する一方で、損傷の24時間前にヘテロ二量体で処理したマウスの再出血データは媒体処理群よりも有意に良好である。さらに、損傷の96時間前にヘテロ二量体で処理したマウスの再出血データは損傷の24時間前にrBDD-FVIII処理を受けたマウスに匹敵した。TVT損傷の24時間後での生存率に関しては、rBDD-FVIIIで処理したマウスの50%未満の生存率とは対照的に、損傷の24時間前にFVIII分子を投与した場合、FVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体処理によって90%超えるマウスがTVT損傷を切り抜けて生き残った。加えて、損傷の24時間前にrBDD-FVIII処理を受けたマウスと比べた場合、尾静脈損傷の96時間前にFVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体で処理したマウスにおける生存は、良好であった(rFVIII169/VWF034の場合)、または匹敵した(rFVIII169/VWF057の場合)。双方の再出血及び生存のデータはrBDD-FVIII処理に比べてFVIII-XTEN-Fc/D’D3-XTEN-Fcヘテロ二量体処理の4倍の有効性の延長を示した。
【0343】
HemAマウスの尾静脈横切開モデル
尾静脈横切開手順は以下のように実施した。50mg/kgのケタミンと0.125mg/kgのデクスメデトミジンと0.1mg/kgのブプレネックスを含有するカクテルでマウスを麻酔した。適切な麻酔の深さで、尾の直径がおよそ2.7mmの領域にて真っすぐな刃の11号の外科用刃でマウスの外側尾静脈を横切開した。流れる血液を温かい生理食塩水で洗い流し、傷の明瞭な観察を確保した。次いで次の24時間、処理したマウスを白紙の寝床で清潔なケージに単独で収容した。尾の再出血及びマウスの身体活動を観察し、尾損傷の12時間後まで時間毎に記録した。瀕死のマウスを直ちに安楽死させ、尾の損傷の24時間後、最終的な観察を行った。血友病患者における出血状況を模倣し、麻酔からの動物の完全な回復を確保するために、1mg/kgのアチパメゾール溶液を与えて尾静脈横切開の開始時でのデクスメデトミジンの効果を反転させた。一晩の疼痛管理のための12時間の観察期間の終了時に0.1mg/kgのブプレネックスの追加用量を投与した。データ解析のために時間対再出血及び時間対安楽死の生存曲線を生成し、ログランク(Mantel-Cox)検定を統計的評価に用いた。
実施例11:FVIII169/VWF059及び他の構築物の調製
【0344】
pSYN FVIII310のクローニング
N末端でBamH1部位に隣接し、C末端でCla1部位に隣接する合成DNA断片は商業的に作製された。この合成DNAを用いてpSYN FVIII169構築物(配列番号155)におけるBamH1からCla1までの領域を置き換えた。合成DNAとpSYN FVIII169DNAの双方をBamH1とCla1で二重消化し、消化した合成DNAを消化したpSYN FVIII169に挿入してpSYN FVIII310(配列番号168;表20)を創り出した。
【0345】
pSYN FVIII312をクローニングすること
N末端でBamH1部位に隣接し、C末端でAfe1部位に隣接する合成DNA断片は商業的に作製された。この合成DNAを用いてpSYN FVIII169構築物(配列番号155)におけるBamH1からAfe1までの領域を置き換えた。合成DNAとpSYN FVIII169DNAの双方をBamH1とAfe1で二重消化し、消化した合成DNAを消化したpSYN FVIII169に挿入してpSYN FVIII312(配列番号169;表20)を創り出した。pSYN FVIII312A(配列番号2;表20)をpSYN FVIII312から創り出してFVIIIとXTENの接合部でアミノ酸残基GAPをコードするAscI部位を取り除いた。
【表20-1】

【表20-2】

【0346】
pSYN VWF059及びVWF073をクローニングすること
D’D3-XTENとFcの間で異なるリンカー領域をコードする種々の合成DNA断片を作製した。これらの合成DNA断片をN末端でAsc1部位に及びC末端でNot1部位に隣接させた。これらの合成DNAを用いてpSYN VWF057構築物(配列番号152)のAsc1からNot1の領域を置き換えた。pSYN VWF059構築物(表21)はリンカー領域(配列番号13)を含み、それはFVIIIの酸性領域2(a2)全体を含む。この部位は、トロンビンによって切断されると報告され、FVIIIの活性化の際、D’D3XTENが放出される。pSYN VWF073構築物(表21)はFVIIIの酸性領域2(a2)のトロンビン切断部位(すなわち、IEPRSFS)(配列番号23)のみを含有する。合成DNA及びpSYN VWF057のDNA双方をAsc1及びNot1によって二重消化した。消化した合成DNAを消化したpSYN VWF057に挿入してpSYN VWF059及びpSYN VWF073を創り出した。EcoRV制限部位を取り除くことによってpSYN VWF059からpSYN VWF059A構築物(表21)を生成した。HEK293細胞にてFVIII169とVWF057またはVWF059とを同時発現させることによってFVIII169/VWF057及びFVIII169/VWF059のヘテロ二量体のタンパク質を生成した。
【表21】

実施例12:FcからのD’D3の放出を分析するためのFVIIIヘテロ二
量体のトロンビン消化
【0347】
トロンビン消化実験にて2つのFVIIIヘテロ二量体タンパク質を調べ、トロンビンによる切断の速度を検討した。この実験に用いた2つのヘテロ二量体はFVIIIFcと併せたFVIII169/VWF057ヘテロ二量体及びFVIII169/VWF059ヘテロ二量体だった。FVIII169/VWF057及びFVIII169/VWF059のヘテロ二量体は上述されている。3つの消化反応:(i)FVIIIFc、(ii)FVIII169/VWF057(図11)及び(iii)FVIII169/VWF059(図12)を行った。およそ22:1のFVIII:トロンビンのモル比で試験試料をヒトα-トロンビンで処理した。各反応は37℃の水槽でインキュベートした。示した各時点(t=5、15、30、45、60分)にて、22.5μLの試料を取り出し、22.5μLの非還元2×SDS負荷染料で反応を止め、3分間加熱した。次いで消化したタンパク質をSDS-PAGEゲル上で流した。LICORシステムを用い、抗FVIII重鎖(GMA012)及び抗VWF-D3(Ab96340)抗体を用いてウエスタンブロットを行った。
【0348】
図11に示すように、トロンビンへのFVIII169/VWF057の曝露は、切断生成物であるD’D3-144XTENのレベルの上昇に相関してD’D3-XTEN-Fcの検出レベルの緩慢な低下を生じた。切断されないFVIII169/VWF057が15分後残った。逆に図12は、5分後に切断されないFVIII169/VWF059がほとんど検出されないことによって明らかなように、FVIII169/VWF059はトロンビンによってさらに迅速に切断される。従って、FVIII169/VWF059はFVIII169/VWF057に比べてトロンビンの活性化の際、FcからのD’D3のさらに良好な解放を示した。
【0349】
並行した実験を行って質量分析法(MS)を用いてトロンビンの切断を検討した。MSによってFVIII169/VWF059は再び、VWF057に比べてFcからのD’D3のさらに良好な放出を示した。
実施例13:HemAマウスにおけるFVIII169/VWF059の生体内の評価
【0350】
FVIII169/VWF059の薬物動態プロファイル及び生体内の効能をさらに評価するために、150IU/kg用量での静脈内投与を介したFVIII169/VWF059でHemAマウスを処理した。注射の5分後、24、48、72、96及び120時間後に大静脈採血を介して血漿試料を採取した。FVIII発色アッセイによって血漿におけるFVIII活性を測定し、Phoenixプログラムを用いてPKパラメータを算出した。表22にて示すように、FVIII169/VWF057と比較して観察されたFVIII169/VWF059の類似のPKプロファイルは、a2トロンビン切断リンカーがヘテロ二量体のPKプロファイルに否定的な効果を有さないことを示している。
【表22】

【0351】
野生型BDD-FVIIIと比較してHemAマウスの尾クリップモデル(実施例9に記載)にてFVIII169/VWF059の急性期有効性を評価した。75IU/kgのFVIII169/VWF059またはBDD-FVIIIでHemAマウスを処理し、各実験マウスの失血値を図13にてプロットした。BDD-FVIIIに比べて、FVIII169/VWF059がHemAマウスに対して同じ程度の保護(p=0.9883)を提供したということは、FVIII169/VWF059が生体内で完全に機能的であることを示している。
FVIII-XTEN-Fc/D’D3-Fcヘテロ二量体のプラスミド構築物
【化1】

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【0352】
具体的な実施形態の前述の記載は、本発明の一般的な性質を完全に明らかにしているので、過度な実験を行うことなく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、当該技術の技量の範囲内の知識を適用することによって他の人々はそのような具体的な実施形態を容易に改変することができ、及び/または種々の応用に適用することができる。従って、本明細書で提示されている教示及び指針に基づいて、そのような適用及び改変は開示されている実施形態の同等物の意味及び範囲の中にあることが意図される。本明細書での表現及び用語は説明目的のためのものであって、限定目的ではないので、本明細書の用語または表現は教示及び指針に鑑みて技量のある熟練者によって解釈されるべきであることが理解されるべきである。
【0353】
本発明の他の実施形態は、本明細書で開示されている本明細書の検討事項及び本発明の実践から当業者に明らかであろう。本明細書及び実施例は例示のみと見なされることが意図され、本発明の真の範囲及び精神は以下のクレームによって示される。
【0354】
本明細書で引用されている特許及び出版物はすべてその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【配列表】






























































































































































































































































































































































































































































































 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-12-15 
結審通知日 2020-12-18 
審決日 2021-01-06 
出願番号 特願2016-545930(P2016-545930)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (C12N)
P 1 41・ 853- Y (C12N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山本 匡子  
特許庁審判長 長井 啓子
特許庁審判官 一宮 里枝
田村 聖子
登録日 2020-08-14 
登録番号 特許第6749836号(P6749836)
発明の名称 第VIII因子キメラタンパク質及びその使用  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 山本 健策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 健策  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 石川 大輔  
代理人 山本 秀策  
代理人 石川 大輔  

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