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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1371079
審判番号 不服2019-14843  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-06 
確定日 2021-02-12 
事件の表示 特願2015-554966「光学用熱可塑性樹脂、および成形体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日国際公開、WO2015/098980〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2015-554966号(以下「本件出願」という。)は、2014年(平成26年)12月24日(先の出願に基づく優先権主張 2013年(平成25年)12月27日)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成30年 4月20日付け:拒絶理由通知書
平成30年 6月21日提出:意見書、手続補正書
平成30年11月30日付け:拒絶理由通知書
平成31年 2月 1日提出:意見書、手続補正書
令和 元年 7月30日付け:補正の却下の決定(平成31年2月1日にした手続補正が却下された。)
令和 元年 7月30日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 元年11月 6日提出:審判請求書、手続補正書
令和 2年 7月31日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。)
令和 2年 9月25日提出:意見書
令和 2年 9月25日提出:手続補正書(この手続補正書による補正を、以下「本件補正」という。)

第2 本願発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。なお、本件補正により請求項1及び請求項2は削除されており、本願発明は、本件補正前の請求項3に係る発明に対応するものである。
「【請求項1】
メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルを構成単位に有し、
前記メタクリル酸エステルが、(i)メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよびメタクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される少なくとも1種と、(ii)メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチルと、(iii)メタクリル酸メチルとを含み、
前記アクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸n-ブチルからなる群から選択される少なくとも1種であり、
光学用熱可塑性樹脂のモノマーの総量100重量%において、(i)メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよびメタクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される少なくとも1種の含有量は0.1?10重量%、(ii)メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチルの含有量は30?50重量%、(iii)メタクリル酸メチルの含有量は40?60重量%、前記アクリル酸エステルの含有量は1?5重量%であり、
配向複屈折が-1.7×10^(-4)から1.7×10^(-4)(ただし、前記配向複屈折は、未延伸の膜厚125μmの原反フィルムから25mm×90mmの試験片を切り出し、両短辺を保持してガラス転移温度+30℃にて2分保った後、2倍に長さ方向へ200mm/分の速度で一軸延伸して得られた延伸フィルムについて、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA-WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0°にて測定したものである)、光弾性定数が-2×10^(-12)から2×10^(-12)Pa^(-1)、である光学用熱可塑性樹脂を含有し、溶融押出又は射出成形用である光学用樹脂組成物。」

第3 拒絶の理由
当審拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由は、理由3として、本願出願の請求項3に係る発明(当合議体注:本件補正前のもの)は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1:特許第4624845号公報
引用文献2:特開2011-168681号公報
引用文献3:特開2010-241961号公報
引用文献4:特開2012-82358号公報
(当合議体注:引用文献1は主引用例であり、引用文献2?4は、周知技術を例示するものである。)

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献1として引用され、先の出願前に頒布された刊行物である特許第4624845号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、配向複屈折と光弾性複屈折の双方ともに非常に小さい光学樹脂(光学ポリマー)並びに同樹脂の光学部材(光学素子、光学部品等)への応用に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の光学関連機器で用いられるフィルム状、板状、レンズ状等の光学部材(例えば、液晶表示装置で用いられるフィルムや基板、プリズムシート等;光ディスクの信号読み取り用レンズ系中のレンズ、プロジェクションスクリーン用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等)を構成する材料として、光透過性の樹脂が汎用されており、一般に「光学樹脂」あるいは「光学ポリマー」と呼ばれている。
【0003】
光学樹脂で光学部材を構成する場合に考慮しなければならない重要な光学的特性の1つに複屈折性がある。即ち、光学樹脂が大きな複屈折性を持つことは、多くの場合好ましくない。特に、上記の例示した用途(液晶表示装置、光ディスク装置、プロジェクションスクリーン等)においては、複屈折性を持つフィルム、レンズ等が光路中に存在すると、像質や信号読み取り性能への悪影響を及ぼすため、複屈折性をできるだけ小さく抑えた光学樹脂で構成された光学部材の使用が望まれる。また、カメラ用のレンズ、眼鏡レンズ等においても、複屈折性は小さい方が望ましいことも言うまでもないことである。
【0004】
ところで、当技術分野において良く知られているように、光学ポリマー(以下、単に「ポリマー」と適宜略称)が示す複屈折には、その主因が主鎖の配向にある「配向複屈折」と、応力に起因する「光弾性複屈折」(通常、“光弾性”と略称される)がある。配向複屈折及び光弾性の符号は、ポリマーの化学構造に由来し、それぞれのポリマーに固有の性質である。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、光透過性のポリマーへの添加物とその添加濃度の選択、あるいは、共重合の組み合わせと組成比の選択により、配向複屈折及び光弾性複屈折の内の一方をほぼ消去することは従来技術で知られているが、配向複屈折と光弾性複屈折の双方を同時にほぼ消去する適当な手法は未提案であった。そのため、従来の光学樹脂を各種光学部材(透光シート、レンズ、プリズムシート等)の構成材料に用いた場合、いずれかの複屈折により短所が現れることが避けられなかった。
【0018】
即ち、これら光学部材の製造過程に一般的に含まれている延伸成形、押出成形、射出成形等のプロセスにより配向複屈折性が現出することを防ごうとして、「配向複屈折」を相殺する最適添加濃度あるいは共重合比を選択すると光弾性複屈折性の減殺が不十分となり、その光学部材が組み付けられた状態で受ける各種外力により、光弾性複屈折が現れる。また、光弾性複屈折を減殺するに適した添加濃度あるいは共重合比を選べば、上記のプロセスにより配向複屈折性の減殺が不十分となる。
【0019】
本発明は、このような従来技術の欠点を克服し、光学樹脂材料の配向複屈折性と光弾性複屈折性を同時に減殺し、ほぼ消去する手法を提案するもので、配向複屈折性と光弾性複屈折性のいずれも減殺され、ほぼ消去された光学樹脂材料並びに同材料を用いた光学部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、2元系以上の共重合系を含む3成分以上の複合成分系を持つ光学材料について、それら複合成分系の成分の組み合わせ及び成分比(組成比)を、該光学材料が配向複屈折性と光弾性複屈折性の双方が同時に相殺されるように選択する手法を導入することで、上記課題の解決を可能たらしめたものである。ここで複合成分系の一部は共重合系を構成しない添加物(低分子有機化合物)であっても良く、また、すべて共重合系であっても良い。」

(3)「【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、光学樹脂材料の配向複屈折性と光弾性複屈折性を同時に減殺し、ほぼ消去することができる。また、配向複屈折性と光弾性複屈折性が同時に減殺され、ほぼ消去された光学樹脂材料を光学部材の構成材料に用いることにより、製造工程に押出成形、延伸成形、射出成形等、ポリマー主鎖の配向が起るようなプロセスが含まれていても配向複屈折を殆ど示さず、且つ、外力等により弾性変形があっても光弾性複屈折が殆ど現出しない光学部材を提供することができる。
【0027】
更に、本発明に係る光学樹脂は、光学用接着剤あるいは粘着剤の構成成分に用いることで、光学用接着剤あるいは粘着剤が光路中に存在する状態となっても(例えばレンズ同士を光学用接着剤で貼り合わせた場合)、配向複屈折や光弾性複屈折により光路あるいは偏光状態を乱すことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
既述の通り、本発明は、3成分系以上の複合系を利用して、配向複屈折と光弾性複屈折を同時に減殺するものであるが、典型的には3成分系を利用し次の(i)、(ii)のいずれかの手法を採用する。
(i)2元系の共重合系に低分子有機化合物を添加することにより配向複屈折と光弾性複屈折を同時に相殺し、消去する。
(ii)3元系の共重合系で成分比(共重合比)を調整することで配向複屈折と光弾性複屈折を同時に相殺し、消去する。
そこで先ず、上記(i)、(ii)の典型例に即して、本発明が導入した上記手法により、配向複屈折性と光弾性複屈折性の同時相殺を行う手順について、図1?図3を順次参照して説明する。」

(4)「【0042】
[3元系の共重合系の共重合組成を調整することにより配向複屈折と光弾性複屈折を同時に相殺し、消去する方法]
[1]モノマー1、モノマー2(但し、いずれも一般表記で、前述したモノマー1、モノマー2と同一であるとの趣旨の表記ではない)及びモノマー3を用意し、モノマー1とモノマー2の共重合系(共重合体1)、並びに、モノマー1とモノマー3の共重合系(共重合体2)を構成することを考える。共重合体1からなり、異なる共重合組成の複数の共重合体フィルムを作製する。また、共重合体2からなり、異なる共重合組成の複数の共重合体フィルムも作製する。それらを一軸延伸し、生じた配向複屈折を測定する。但し、既述したと同様に、一軸延伸の際には、フィルム内での共重合体分子の主鎖の配向度が適値になるように一軸延伸の条件を調整する。主鎖の配向度は周知の赤外二色法により測定可能であり、一軸延伸後に配向度を各フィルムについて実測し、適値から外れたフィルムはここで除外する。
・・・(中略)・・・
【0052】
以上が前出の(i)、(ii)の典型例について、本発明が導入した手法により配向複屈折性と光弾性複屈折性の同時相殺を行う手順の概略であるが、この手順の考え方を「3元系以上の共重合体と低分子有機化合物の組み合わせ」や、「4元系以上の共重合体」に拡張することも可能である。なお、以下の記述では「低分子有機化合物」を「低分子」等と適宜略記する。
・・・(中略)・・・
【0080】
また、未知数が独立な方程式数より多いのであるから、未知数の一部に適当な値を仮定して、残りの未知数を決定していくという手法も許容されることも同様である。具体的な計算方法についての例を簡単に記しておく。
●[4元系共重合]について;
[1]例えばα_(1)をある正の値に仮定する。
[2]すると、未知数が1つ減ったことになり、[3元系共重合]の場合と同様に、α_(2)、α_(3)、α_(4)は、方程式(227)?(229)を解くことで求めることができる。全ての未知数が正の値となる組み合わせが存在すれば、それが求めるべき組成(の1つ)である。もしも、そのような解が得られない場合は、上記α_(1)の値を別の正値に変更して、α_(2)、α_(3)、及びα_(4)を計算し直す。」

(5)「【実施例】
【0085】
以下、2つの実施例(実施例1及び実施例2)について説明する。実施例1は、上述した(i)の手法、即ち、2元系の共重合系に低分子有機化合物を添加することにより、配向複屈折と光弾性複屈折を同時に相殺し、消去する手法を適用した例である。また、実施例2は、上述した(ii)の手法、即ち、3元系の共重合系で成分比(共重合比)を調整することで配向複屈折と光弾性複屈折を同時に相殺し、消去する手法を適用した例である。なお、ここでの説明における式番号としては、便宜上、前出の0021に後続させて0022以下を使用する。
・・・(中略)・・・
【0101】
[実施例2]
先ず、ガラス製のサンプル管を用意し、同サンプル管にメチルメタクリレート(MMA)と2,2,2-trifluoroethyl methacrylate(3FMA)を合計30g、パーブチルO(日本油脂(株))をモノマーに対し0.5wt%、n-ブチルメルカプタンをモノマーに対し0.3wt%入れた。モノマーの比率(重量比)は、MMA/3FMA=100/0、80/20、60/40、40/60、20/80、0/100のものをそれぞれ調整した。
・・・(中略)・・・
【0104】 この時、延伸温度、延伸速度などを調整し、共重合体の配向度が0.03となるようにした。その時の延伸条件は[実施例1]の表1と同様である。延伸後のフィルムの複屈折を自動複屈折測定装置ABR-10A(ユニオプト(株))を用いて測定した。延伸後のフィルムの配向度の測定は、赤外吸収二色法により行い、配向度がほぼ0.03であることを確認したものを残した。 MMAとベンジルメタクリレート(BzMA)の共重合体についても、上述の一連の試料作製及び測定を同様の態様で行った。その時の延伸条件を表4に示す。
【0105】
【表4】

・・・(中略)・・・
【0112】
MMAの比率:α=55.5wt%
3FMAの比率:β=38.0wt%
BzMAの比率:γ=6.5wt%
実際にこの組成比で3元系共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)を合成し、その配向複屈折と光弾性複屈折を測定した。また、無添加ポリマーとの複屈折性の差異を示すための比較例として、PMMA単体を用意した。そして、これらサンプル及び比較例について、配向複屈折と光弾性複屈折を測定した。配向複屈折を測定するにあたっては、予め前述の装置を用いて種々の延伸条件下で一軸延伸を行い、複数の配向度のものを用意した。
【0113】
その結果を図7(a)に示す。図7(a)において、プロット点◆は3元共重合体(P(MMA/3FMA/BzMA)=55.5/38.0/6.5)の配向複屈折値を表わし、プロット点▲はPMMA単体の配向複屈折値を表わしている。グラフの横軸は、配向度を表わし、縦軸は配向複屈折を表わしている。
【0114】
一方、光弾性複屈折を測定する際には、前述の装置を用いて種々の主応力差を与え、光弾性複屈折を測定した。その結果を図7(b)に示す。図6(b)において、プロット点◆は3元共重合体(P(MMA/3FMA/BzMA)=55.5/38.0/6.5)の光弾性複屈折値を表わし、プロット点▲はPMMA単体の光弾性複屈折値を表わしている。グラフの横軸は、与えられた主応力差、縦軸は光弾性複屈折を表わしている。図7(b)に示した結果から、両者の光弾性複屈折値を求めてみると、表5のようになった。
【0115】
また、最も一般的に使用されている光学樹脂の一つであるポリカーボネート樹脂として、シグマアルドリッチジャパン株式会社から購入したポリビスフェノールAカーボネートを用意し、これを射出成形し、円柱状(直径18mm、長さ5mm)の光弾性測定用サンプルを作製し、上述したと同様の測定方法で光弾性を測定した。その結果は図7(b)中にプロット点■で併記した。この測定から求めた光弾性定数は81.78×10^(-12)(Pa^(-1))である。なお、光弾性定数は、通常、「×10^(-12)(Pa^(-1))」で表すが、これは古くから慣例的に光弾性定数を表すために用いられてきた単位 Brewsterと、
1 Brewster = 1×10^(-12)(Pa^(-1))
の関係にあることに由来する。
【0116】
【表5】

これら図7(a)、(b)及び表4(当合議体注:「表4」は、「表5」の誤記である。)が示す結果から、本実施例によっても、配向複屈折、光弾性複屈折ともに、通常の用途ではほとんどゼロとみなせるほど非常に小さい値となっているポリマーが得られることが確認された。比較的光弾性定数の絶対値が小さいPMMAと比べても、これらの光弾性定数の絶対値が非常に小さな値であった。
【0117】
以上のようにして作成される光学樹脂材料を用いて、周知の製造工程により所望の形状と寸法を持つ光学部材を製造すれば、従来技術の説明で述べたような、配向自体が起らないようにするための追加工程や、熱歪みを除去するための処理などを要せずに、配向複屈折、光弾性複屈折のいずれも殆ど示さない非屈折性の光学部材が得られる。例えば、延伸成形により液晶表示装置用の透光シートやプリズムシートの基板部分を製造した場合、それらを液晶表示装置に組み込んだ状態で外力(圧縮応力、曲げの応力等)がかかっても、光弾性複屈折は殆ど現れない。配向複屈折も、殆ど現れない。
【0118】
また、例えばレンズ形状に対応した金型を用いた射出成形により、光ディスク読み取り光学系用のレンズを製造した場合、やはり、従来技術の説明で述べたような、配向自体が起らないようにするための追加工程や、熱歪みを除去するための処理などを要せずに、それを読み取り光学系に組み込んだ状態で外力(圧縮応力、曲げの応力等)がかかっても、光弾性複屈折が殆ど現れないようにすることができる。また、配向複屈折も殆ど現れない。
【0119】
押出成形を使用して製造される任意形状の光学部材についても、上記手法で配向複屈折と光弾性複屈折を同時に減殺した樹脂を用いれば、やはり、配向複屈折と光弾性複屈折のいずれも殆ど現れない。このような諸利点は、従来技術に係る光学樹脂材料では得られなかったものである。」

(6)「【図7】



2 引用文献1に記載された発明
引用文献1の実施例2に関する【0112】、【0116】?【0119】の記載に基づけば、引用文献1には、次の「光学樹脂材料」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)であって、
MMA(メチルメタクリレート)の比率:α=55.5wt%
3FMA(2,2,2-trifluoroethyl methacrylate)の比率:β=38.0wt%
BzMA(ベンジルメタクリレート)の比率:γ=6.5wt%、であり、
光弾性定数が、0.119×10^(-12)Pa^(-1)であり、
金型を用いた射出成形や押出成形において、配向複屈折、光弾性複屈折のいずれも殆ど現れない、
光学樹脂材料。」

3 引用文献2の記載
当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献2として引用され、先の出願前に頒布された刊行物である特開2011-168681号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものである。
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、フッ素系(メタ)アクリル樹脂の耐加熱分解性を改善し、フィルム外観が美麗で、自動車内装部材にも使用し得る、耐薬品性などフィルム諸物性のバランスを有する、フッ素系(メタ)アクリル樹脂単層および多層フィルムを提供することを主な目的とする。
・・・(中略)・・・
【0037】
上記含フッ素アルキル(メタ)アクリレートは、他の共重合可能なモノマー種と共重合してもよい。共重合可能なモノマー種としては、例えば、上記含フッ素アルキル(メタ)アクリレート樹脂のモノマー種・・・(中略)・・・が挙げられる。これらの単量体は2種以上が併用されてもよい。
【0038】
これらの中でも、耐加熱分解性、共重合が容易である点より、アクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。なかでも、アルキル基の炭素数が1?8であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。更には、アルキル基の炭素数が1?4であるものが耐薬品性および硬度の観点から特に好ましい。
【0039】
含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分は、耐薬品性および耐加熱分解性の観点から含フッ素アルキル(メタ)アクリレート80?100重量%および前記他の共重合可能なモノマー種0?20重量%からなる単量体成分を重合してなる重合体であることが好ましい。より好ましくは、含フッ素アルキル(メタ)アクリレート85?99重量%および他の共重合可能なモノマー種1?15重量%である。他の共重合可能なモノマー種としては、好ましくはアルキルエステルのアルキル鎖炭素数が1?8のアクリル酸エステルが0.1重量%?10重量%、より好ましくは1重量%?6重量%含有されることにより、含フッ素アルキル(メタ)アクリレートの耐加熱分解性がより向上し、表面硬度等のフィルム特性のバランスを奏することができる。含フッ素アルキル(メタ)アクリレートが80重量%未満では、フィルムの表面硬度、耐薬品性、上記の人が常用する化成品等に対する耐汚染性が低下する傾向がある。」

4 引用文献3の記載
当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献3として引用され、先の出願前に頒布された刊行物である特開2010-241961号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものである。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱性、柔軟性を有し、さらに強度等の物性が改良された硬化物を提供するための(メタ)アクリル系硬化性組成物に関する。
・・・(中略)・・・
【0078】
(メタ)アクリル酸重合体ブロック(a)を構成するこれらビニル系単量体は、単独またはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)に必要とされる特性や、後述するが、末端に反応性官能基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)との相溶性に応じて、好ましいものを選択することができる。また、メタクリル酸メチルの重合体は、熱分解によりほぼ定量的に解重合するが、それを抑えるために、アクリル酸エステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸2-メトキシエチルもしくはそれらの混合物、または、スチレンなどを共重合することができる。」

5 引用文献4の記載
当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由において引用文献4として引用され、先の出願前に頒布された刊行物である特開2012-82358号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものである。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用フィルムに関するものであり、特に、フィルム成形時における熱劣化に起因するフィルム欠陥の少ない、紫外線吸収能を有する光学用フィルムに関する。
・・・(中略)・・・
【0004】
また、液晶表示装置と同様に、カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種撮影装置、CDやDVD等の光ピックアップ装置、プロジェクター等のOA機器等に使用される従来ガラスが用いられていたレンズも、軽量化を目的とした樹脂への置き換えが進んでいる。このようなプラスチックレンズは、温度や湿気等の使用環境による歪みによる焦点距離のズレの発生や射出成形等の加工時の応力発生等による位相差の影響を受けやすいため、外部応力により位相差が変化しにくい事がフィルムと同様に要求されている。これらを満足させる樹脂組成物として従来からのトリアセチルセルロースに代わり、透明性および耐熱性の高い(メタ)アクリル系樹脂の使用が検討されている。代表的な(メタ)アクリル系樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられるが、一般的に市販されているPMMAは、重合時や加工時における、樹脂の解重合防止や、流れ性改善のために、アクリル酸メチルが共重合されている。また、このような光学フィルムでは、必要に応じて、トリアジン系化合物に代表される紫外線吸収剤を添加し、紫外線吸収能を付与することもある。
・・・(中略)・・・
【0014】
本発明のアクリル系樹脂は、メチルメタクリレートのホモポリマーであることが望ましいが、メチルアクリレート単位を含む場合には、熱分解GC/MS分析で3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、含まれていないことがさらに好ましい。アクリル酸エステル単位の含有量が上記範囲内から外れた場合、樹脂のガラス転移温度が低くなったり、高温成形時のポリマー主鎖の開裂が起こりやすくなり、成形後のフィルム外観が悪くなったりする傾向がある。なお熱分解GC/MS分析測定は、得られたモノマー成分の面積比により、樹脂を構成するモノマー比を算出した。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
1 熱可塑性樹脂
引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」は、「MMA(メチルメタクリレート)」、「3FMA(2,2,2-trifluoroethyl methacrylate)」及び「BzMA(ベンジルメタクリレート)」を構成単位とするものである。
ここで、「MMA(メチルメタクリレート)」、「3FMA(2,2,2-trifluoroethyl methacrylate)」及び「BzMA(ベンジルメタクリレート)」は、いずれも、本願発明でいう「メタクリル酸エステル」に属する化合物である。また、引用発明の「BzMA(ベンジルメタクリレート)」は、本願発明の「メタクリル酸ベンジル」に相当する。さらに、引用発明の「3FMA(2,2,2-trifluoroethyl methacrylate)」は、本願発明の「メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル」に相当する。そして、引用発明の「MMA(メチルメタクリレート)」は、本願発明の「メタクリル酸メチル」に相当する。
以上より、引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」は、本願発明の「メタクリル酸エステル」における、「(i)メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよびメタクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される少なくとも1種と、(ii)メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチルと、(iii)メタクリル酸メチルとを含み」とする要件を満たしている。

また、引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」は、モノマー比が「MMA(メチルメタクリレート)の比率:α=55.5wt%」、「3FMA(2,2,2-trifluoroethyl methacrylate)の比率:β=38.0wt%」、「BzMA(ベンジルメタクリレート)の比率:γ=6.5wt%」の「光学樹脂材料」である。
ここで、引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」は、その材料からみて、熱可塑性を示すことは明らかである。
そうしてみると、引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」は、本願発明の「光学用熱可塑性樹脂」に相当する。また、引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」は、本願発明の「光学用熱可塑性樹脂」における、「モノマーの総量100重量%において、(i)メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよびメタクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される少なくとも1種の含有量は0.1?10重量%、(ii)メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチルの含有量は30?50重量%、(iii)メタクリル酸メチルの含有量は40?60重量%」とする要件を満たしている。

2 光弾性定数
引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」の光弾性定数は、「0.119×10^(-12)Pa^(-1)」である。
ここで、引用発明の「光弾性定数」と本願発明の「光弾性定数」は、概ね同等のもの(測定方法等を考慮しても同様の数値が得られるもの)と考えられる。
そうすると、引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」は、本願発明の「光学用熱可塑性樹脂」における、「光弾性定数が-2×10^(-12)から2×10^(-12)Pa^(-1)」とする要件を満たしている。

3 溶融押出又は射出成形用である光学用樹脂組成物
引用発明の「光学樹脂材料」は、「金型を用いた射出成形や押出成形において、配向複屈折、光弾性複屈折のいずれも殆ど現れない」ものである。
そうしてみると、引用発明の「光学樹脂材料」は、本願発明の「光学用樹脂組成物」に相当するとともに、本願発明の「溶融押出又は射出成形用である」という用途に適したものといえる。また、前記1で述べたとおりであるから、引用発明の「光学樹脂材料」と本願発明の「光学用樹脂組成物」とは、「メタクリル酸エステル」「を構成単位に有し」、「光学用熱可塑性樹脂を含有し」ている点で共通する。

4 一致点及び相違点
(1) 一致点
以上勘案すると、本願発明と引用発明とは、次の構成において一致する。
「メタクリル酸エステルを構成単位に有し、
前記メタクリル酸エステルが、(i)メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよびメタクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される少なくとも1種と、(ii)メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチルと、(iii)メタクリル酸メチルとを含み、
光学用熱可塑性樹脂のモノマーの総量100重量%において、(i)メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよびメタクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される少なくとも1種の含有量は0.1?10重量%、(ii)メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチルの含有量は30?50重量%、(iii)メタクリル酸メチルの含有量は40?60重量%であり、
光弾性定数が-2×10^(-12)から2×10^(-12)Pa^(-1)、である光学用熱可塑性樹脂を含有し、溶融押出又は射出成形用である光学用樹脂組成物。」

(2) 相違点
本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
(相違点1)
「光学用熱可塑性樹脂」が、本願発明は、「未延伸の膜厚125μmの原反フィルムから25mm×90mmの試験片を切り出し、両短辺を保持してガラス転移温度+30℃にて2分保った後、2倍に長さ方向へ200mm/分の速度で一軸延伸して得られた延伸フィルムについて、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA-WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0°にて測定したものである」「配向複屈折が-1.7×10^(-4)から1.7×10^(-4)」であるのに対し、引用発明は、上記測定条件で測定したときの配向屈折率の値が明らかでない点。

(相違点2)
「光学用熱可塑性樹脂」が、本願発明は、「アクリル酸エステルを構成単位に有し」、「アクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸n-ブチルからなる群から選択される少なくとも1種であり」、「アクリル酸エステルの含有量は1?5重量%であ」るのに対し、引用発明はアクリル酸エステルを構成単位に有しない点。

第6 判断
上記相違点について、判断する。
1 相違点1について
引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」に関して、引用文献1の【0112】及び【0116】には、それぞれ「実際にこの組成比で3元系共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)を合成し、その配向複屈折と光弾性複屈折を測定した。」及び「図7(a)、(b)及び表4が示す結果から、本実施例によっても、配向複屈折、光弾性複屈折ともに、通常の用途ではほとんどゼロとみなせるほど非常に小さい値となっているポリマーが得られることが確認された。」と記載されている。そして、図7(a)から看取される配向複屈折は、0.0×10^(-4)に近い(-1.0×10^(-4)に遠く及ばない)値である。
そうしてみると、本願発明における測定条件で測定したときの配向屈折率についても、「-1.7×10^(-4)から1.7×10^(-4)」の範囲内にある蓋然性が極めて高いといえる。
したがって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

仮に、上記測定条件で測定したときの配向屈折率が「-1.7×10^(-4)から1.7×10^(-4)」の範囲内にないとしても、引用文献1の【0019】には、「本発明は、このような従来技術の欠点を克服し、光学樹脂材料の配向複屈折性と光弾性複屈折性を同時に減殺し、ほぼ消去する手法を提案するもので、配向複屈折性と光弾性複屈折性のいずれも減殺され、ほぼ消去された光学樹脂材料並びに同材料を用いた光学部材を提供することを目的としている。」と記載されている。そうすると、引用文献1の【0042】?【0052】に記載された「光学樹脂材料の配向複屈折性と光弾性複屈折性を同時に減殺し、ほぼ消去する手法」を参考にして試行を繰り返すことにより、本願発明における測定条件で測定したときの配向屈折率が「-1.7×10^(-4)から1.7×10^(-4)」の範囲内となる「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」を得ることは、引用文献1の記載が示唆する範囲内の当業者における通常の創意工夫といえる。

2 相違点2について
メタクリル系樹脂は、一般的に熱により解重合が起こりやすいことは周知の課題であり、解重合を防止するために、アクリル酸エステルを共重合させることは周知技術である。例えば、引用文献2には、「フッ素アルキル(メタ)アクリレート」と「共重合可能なモノマー種」(段落【0037】)について、「これらの中でも、耐加熱分解性、共重合が容易である点より、アクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。」(段落【0038】)及び「他の共重合可能なモノマー種としては、好ましくはアルキルエステルのアルキル鎖炭素数が1?8のアクリル酸エステルが0.1重量%?10重量%、より好ましくは1重量%?6重量%含有されることにより、含フッ素アルキル(メタ)アクリレートの耐加熱分解性がより向上」(段落【0039】)と記載されている。また、引用文献3には「また、メタクリル酸メチルの重合体は、熱分解によりほぼ定量的に解重合するが、それを抑えるために、アクリル酸エステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸2-メトキシエチルもしくはそれらの混合物、または、スチレンなどを共重合することができる。」(段落【0078】)と記載されている。さらに、引用文献4には、「代表的な(メタ)アクリル系樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられるが、一般的に市販されているPMMAは、重合時や加工時における、樹脂の解重合防止や、流れ性改善のために、アクリル酸メチルが共重合されている。」(段落【0004】)及び「本発明のアクリル系樹脂は、メチルメタクリレートのホモポリマーであることが望ましいが、メチルアクリレート単位を含む場合には、熱分解GC/MS分析で3%以下であることが好ましく」(段落【0014】)と記載されている。
そうすると、引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」において、解重合を防止するために、「MMA(メチルメタクリレート)」の一部を、例えば、「1重量%」や「3重量%」の「アクリル酸メチル」に置き換えて、相違点2に係る本願発明の構成を具備したものとすることは、周知技術を心得た当業者が容易に想到し得たことである。

なお、以上のとおり変更してなる引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」は、3元共重合体ではなく、4元共重合体ということになる。
しかしながら、引用文献1の【0052】には、「本発明が導入した手法により配向複屈折性と光弾性複屈折性の同時相殺を行う手順…の考え方を…「4元系以上の共重合体」に拡張することも可能である。」と記載されている(【0080】等に具体的手法も開示されている。)。また、上記例示のとおり、「MMA(メチルメタクリレート)」の一部を「アクリル酸メチル」に置き換えたとしても、前記「第5 対比」において一致点とした事項や、相違点1の判断において容易想到とした事項に、その判断結果を左右するほどの大きな変化がもたらされるとは思われない。

3 本願発明の効果について
本件出願の明細書の【0017】には、発明の効果として、「本発明の光学用熱可塑性樹脂によれば、配向複屈折と光弾性複屈折の両方ともに非常に小さく、透明性および色調に優れ、熱安定性が高いために熱分解に由来する外観不良が少ない成形体、たとえば光学フィルム、さらには、光学等方性、透明性、色調に優れた光学用途向け射出成形体を提供できる。」と記載されている。
しかしながら、このような効果は、引用発明において、アクリル酸エステルを構成単位に有する構成としたものが奏する効果として、当業者が予測し得たものである。

4 請求人の令和2年9月25日提出の意見書の主張について
請求人は、同意見書の「(5)理由3(進歩性)について」「(イ)動機付けの不在について」「(ロ)予想外の効果について」において、「引用文献1では、P(MMA/3FMA/BzMA)の3元共重合体において、解重合の問題があることは記載も示唆もされていません。」、「引用文献1には、引用発明に上記周知技術を適用する動機付けが示されておりません。」、「引用文献2?4では3FMAの単独重合体やMMAの単独重合体に熱分解又は解重合の問題があることは記載されていますが、いずれの文献にも、P(MMA/3FMA/BzMA)の3元共重合体において、解重合の問題があることは記載も示唆もされていません。」、「引用文献2?4を考慮しても、引用発明のP(MMA/3FMA/BzMA)の3元共重合体に対し周知技術を適用する動機付けが存在していないと思料します。」、「仮に、引用発明のP(MMA/3FMA/BzMA)の3元共重合体において周知技術を適用したとしても、本願発明が奏する効果は、引用文献1?4から予想できるものではありません。」、「補正後の請求項1に係る発明では、P(MMA/3FMA/BzMA)などの3元共重合体に、特定のアクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル)を特定量(1?5重量%)共重合することによって、当該3元共重合体が示す小さい複屈折性を保持しながら解重合を抑制することができ、小さい複屈折性(配向複屈折と光弾性定数がともに小さい)と良好な外観(発泡やダイラインの抑制)を兼ね備えた溶融押出フィルム又は射出成形体を製造できるという効果を奏するものです。」旨主張している。
しかしながら、メタクリル系樹脂は熱により解重合が起こりやすいことが周知であるから、解重合を懸念した当業者ならば、引用発明の「3元共重合体P(MMA/3FMA/BzMA)」にアクリル酸エステルを導入することを試みると考えられる。
そして、上記1?2で述べたとおり、引用発明において、上記相違点1?2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。また、引用発明において、アクリル酸エステルを構成単位に有する構成とすることによって、良好な熱安定性を有し、熱分解に由来する外観不良が少ない成形体が得られることも、周知技術に基づき予測可能なことであって格別なものではない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-11-18 
結審通知日 2020-11-24 
審決日 2020-12-16 
出願番号 特願2015-554966(P2015-554966)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小西 隆後藤 大思  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
神尾 寧
発明の名称 光学用熱可塑性樹脂、および成形体  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  
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