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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1371081
審判番号 不服2019-15594  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-20 
確定日 2021-02-12 
事件の表示 特願2016- 66387「電子機器、文字入力制御方法、及び文字入力プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017-183923〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は、平成28年3月29日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年 5月30日付け:拒絶理由通知書
令和元年 8月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和元年 8月14日付け:拒絶査定(原査定)
令和元年11月20日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和元年11月20日にされた手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
令和元年11月20日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。)

「【請求項1】
複数の第1キーが対応付けられた第1キー領域と複数の第2キーが対応付けられた第2キー領域とを含むタッチスクリーンと、
前記タッチスクリーンの前記第1キー領域と前記第2キー領域で検出したキーに対する操作に基づいて文字入力処理を実行するコントローラと、
前記タッチスクリーンに積層され、前記第1キー領域と重なる領域に前記第1キーを表示し、前記第2キー領域と重なる領域に前記第2キーを表示するディスプレイと、
を備え、
前記第1キー領域は、前記タッチスクリーンの第1の縁に沿った領域であり、
複数の前記第1キーは、前記第1の縁に指を沿わせて動かすときの位置に並び、
前記第2キー領域は、前記タッチスクリーンの前記第1の縁とは異なる第2の縁に沿った領域であり、
複数の前記第2キーは、前記第2の縁に指を沿わせて動かすときの位置に並び、
前記第1キーは、少なくとも1つの第2キーが紐付けられており、
前記コントローラは、前記第1キーへの接触を検知すると、前記第1キー領域に前記第1キーを表示させた状態で、接触を検知した前記第1キーに対応付けられた前記第2キーのそれぞれに紐付けられた少なくとも1つの文字を前記第2キー領域に表示させる電子機器。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和元年8月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
複数の第1キーが対応付けられた第1キー領域と複数の第2キーが対応付けられた第2キー領域とを含むタッチスクリーンと、
前記タッチスクリーンの前記第1キー領域と前記第2キー領域で検出したキーに対する操作に基づいて文字入力処理を実行するコントローラと、
を備え、
前記第1キー領域は、前記タッチスクリーンの第1の縁に沿った領域であり、
複数の前記第1キーは、前記第1の縁に指を沿わせて動かすときの位置に並び、
前記第2キー領域は、前記タッチスクリーンの前記第1の縁とは異なる第2の縁に沿った領域であり、
複数の前記第2キーは、前記第2の縁に指を沿わせて動かすときの位置に並ぶ電子機器。」

2 補正の適否
本件補正の上記補正事項は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数の第1キーが対応付けられた第1キー領域と複数の第2キーが対応付けられた第2キー領域とを含むタッチスクリーン」について、「前記第1キー領域と重なる領域に前記第1キーを表示し、前記第2キー領域と重なる領域に前記第2キーを表示するディスプレイ」が「積層され」ている構成であることを限定し、「複数の第1キー」について、「前記第1キーは、少なくとも1つの第2キーが紐付けられており」と限定し、「前記タッチスクリーンの前記第1キー領域と前記第2キー領域で検出したキーに対する操作に基づいて文字入力処理を実行するコントローラ」について「前記コントローラは、前記第1キーへの接触を検知すると、前記第1キー領域に前記第1キーを表示させた状態で、接触を検知した前記第1キーに対応付けられた前記第2キーのそれぞれに紐付けられた少なくとも1つの文字を前記第2キー領域に表示させる」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項など
ア 引用文献1、引用発明について
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、特開2006-148536号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付与した。以下同様。)

「【0041】
図1は、本発明を適用した携帯情報端末1の外観の例を示す斜視図である。
【0042】
図1に示すように、携帯情報端末1の面1Aには、その広い範囲を占めるようにタッチパネル式ディスプレイ11が設けられ、タッチパネル式ディスプレイ11の周りには各種の操作に用いられるボタンが設けられている。携帯情報端末1のユーザは、面1Aを自分自身に向けた状態で、すなわち、面1Aを正面として携帯情報端末1を利用する。
【0043】
携帯情報端末1の筐体はユーザが両手で把持可能な大きさのものとされている。ユーザは、面1Aを正面として、側面1Bを左手で、側面1C(側面1Bと平行な面)を右手でそれぞれ包むように把持し、そのとき面1A側にくる左右の手の親指を使って、タッチパネル式ディスプレイ11の周囲に設けられているボタンを押すなどして各種の操作を行う。また、ユーザは、タッチパネル式ディスプレイ11を親指で直接押したり(タップしたり)、用意されているスライラスの先端で押すなどして各種の操作を行う。
【0044】
例えば、ユーザは、タッチパネル式ディスプレイ11に表示される、所定の文字が割り当てられたキーを左右の親指で操作することによって、電子メールとして送る文章を入力したり、検索するコンテンツのタイトルを入力したりすることができる。
【0045】
図2に、ユーザにより両手で把持されている状態の携帯情報端末1を示す。
【0046】
ユーザは、携帯情報端末1の筐体を図2に示すように両手で把持したまま、左右の親指で、タッチパネル式ディスプレイ11の周囲に設けられているボタンを押したり、親指の届く、タッチパネル式ディスプレイ11の縁付近に表示されているボタンを直接押したりすることができる。
【0047】
ここで、携帯情報端末1を用いた日本語の文字入力について説明する。
【0048】
図3は、タッチパネル式ディスプレイ11に表示される、文字が何も入力されていない初期状態の画面の例を示す図である。
【0049】
図3に示すように、例えば、初期状態の画面には、タッチパネル式ディスプレイ11の縁11Aに沿ってキー21-1乃至21-5の5つのキーが配列して表示され、縁11Aに対向する縁11Bに沿って、キー21-6乃至21-10の5つのキーが配列して表示される。これらのキー21-1乃至21-10は、個人差はあるが、携帯情報端末1が一般的に対象としているユーザが、筐体を両手で把持したときに、その親指が届く位置に表示される。
【0050】
図3においては省略されているが、タッチパネル式ディスプレイ11には、写真や映画の画像、そのとき起動しているメーラなどの各種のアプリケーションの画面の画像などの各種の画像が、図3の向きに沿って(図3の上方に画像の上の部分、下方に画像の下の部分がくるように)表示される。すなわち、タッチパネル式ディスプレイ11に表示される画像の向きを基準として、縁11Aは左側の縁であり、縁11Bは右側の縁である。
【0051】
キー21-1乃至21-10のキートップには、50音の各行の第一音の文字である「あ」、「か」、「さ」、「た」、「な」、「は」、「ま」、「や」、「ら」、「わ」がそれぞれ表示されている。
【0052】
すなわち、図3の状態では、キー21-1には「あ」行の文字が割り当てられ、キー21-2には「か」行の文字が割り当てられている。また、キー21-3には「さ」行の文字が割り当てられ、キー21-4には「た」行の文字が割り当てられ、キー21-5には「な」行の文字が割り当てられている。同様に、キー21-6には「は」行の文字が割り当てられ、キー21-7には「ま」行の文字が割り当てられている。また、キー21-8には「や」行の文字が割り当てられ、キー21-9には「ら」行の文字が割り当てられ、キー21-10には「わ」行の文字が割り当てられている。ここで、キーに割り当てられる文字には、各行の清音の文字の他、濁音の文字、半濁音の文字、文章の作成に用いられる符号類が含まれる。
【0053】
例えば、キー21-1を押したとき、キー21-6乃至21-10に「あ」行の文字である「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」が割り当てられるように、1つのキーを押したとき、それぞれのキーに割り当てられる文字が切り替わるから(キートップの表示が切り替わるから)、ユーザは、左右の親指を使ってキー21-1乃至21-5のいずれかとキー21-6乃至21-10のいずれかを交互に押すなどして複数のキー操作を組合せ、1つの文字を入力することができる(マルチストローク方式)。
【0054】
ユーザにより入力された文字は、例えば、図4に示すように、タッチパネル式ディスプレイ11の上方(図の上方)に形成される文字表示領域24に表示される。図4の例においては、「こんにちは」の文字が入力されている。
【0055】
このように、文字入力のために表示されるキーがタッチパネル式ディスプレイ11の縁に沿って配列して表示されるため、例えば、タッチパネル式ディスプレイ11に写真や映画の画像などが表示されている場合でも、キーの表示がそれらの表示の妨げになることが少ない。
【0056】
図3や図4に示すように、各キーがタッチパネル式ディスプレイ11の縁に沿って配列して表示されるのではなく、例えば、50音の各文字が1対1に割り当てられたキーが全て表示されるとした場合、その表示がタッチパネル式ディスプレイ11の表示領域の広い範囲を占めてしまい、写真や映画の画像を見ながら文字を入力することが困難になるが、そのようなことを最小限に抑えることができる。
【0057】
また、それぞれのキーがユーザの親指の届く範囲に表示されることから、携帯情報端末1の筐体を両手で把持したまま、効率的に文字を入力することができる。親指の届かない、タッチパネル式ディスプレイ11の中央付近にまでキーが表示されるものとすると、そのキーを押すためには、ユーザは、一度、筐体を片手に持ち替え、空いた方の手の指でそれを押すなどの動作が必要になるが、そのような動作を行うことなく、文字を入力することができる。
【0058】
さらに、タッチパネル式ディスプレイ11の縁に沿って一次元的に並んでキーが表示されるため、ユーザの指の動きは上下方向(図3の上下方向)の動きだけとなり、例えば、タッチパネル式ディスプレイ11の縁付近より内側にもキーが表示され、上下方向だけでなく、左右方向にも指を動かす必要がある場合に較べて指の移動距離が少なくて済む。このことも、効率的な文字の入力を可能なものとしている。
・・・中略・・・
【0062】
次に、ユーザ操作に応じて切り替えられる文字の割り当てについて説明する。
【0063】
例えば、キー21-1乃至21-10に50音の各行の文字が割り当てられている状態で、図5の斜線で示すように、ユーザがキー21-2を左手の親指で押したとき(「か」行を選択したとき)、図6に示すように、キー21-1乃至21-5には、「が」、「ぎ」、「ぐ」、「げ」、「ご」の文字が割り当てられる。また、キー21-6乃至21-10には、「か」、「き」、「く」、「け」、「こ」の文字がそれぞれ割り当てられる。
【0064】
ユーザは、「か」行の文字を選択する左手の親指の操作に続けて、左手の親指でキー21-1乃至21-5のいずれかを押すことによって、「が」行の1つの文字を入力することができる。同様に、ユーザは、「か」行の文字を選択する左手の親指の操作に続けて、右手の親指でキー21-6乃至21-10のいずれかを押すことによって、「か」行の1つの文字を入力することができる。
【0065】
例えば、図6の状態で、図7の斜線で示すように、ユーザがキー21-10を右手の親指で押したとき(「こ」の文字を選択したとき)、図8に示すように、文字表示領域24には、ユーザが選択した「こ」の文字が入力される。
【0066】
また、このようにして1つの文字が入力されたとき、図8に示すように、キー21-1乃至21-10には50音の各行の文字が割り当てられた状態になる(文字の割り当ては初期状態に戻る)。
【0067】
さらに、図8の状態で、図9の斜線で示すように、ユーザがキー21-10を右手の親指で押したとき(「わ」行を選択したとき)、図10に示すように、キー21-1乃至21-5には、「わ」、「を」、「ん」、「ゎ」、「 (スペース)」がそれぞれ割り当てられる。また、キー21-6乃至21-10には、「、」、「。」、「-」、「・」、「!」がそれぞれ割り当てられる。
【0068】
例えば、図10の状態で、図11の斜線で示すように、ユーザがキー21-3を左手の親指で押したとき(「ん」の文字を選択したとき)、図12に示すように、文字表示領域24には、先に入力した「こ」の文字に続けて、ユーザがいま選択した「ん」の文字が入力される。このとき、「こ」の文字を入力した直後の図9の状態と同様に、キー21-1乃至21-10には各行の文字が割り当てられた状態になる。
【0069】
同様にして、ユーザは、図12の状態でキー21-5を左手の親指で押して「な」行を選択したとき、キー21-6乃至21-10には「な」行の文字(「な」、「に」、「ぬ」、「ね」、「の」)がそれぞれ割り当てられるから、そのキー21-6乃至21-10の中からキー21-7を右手の親指で押すことによって「に」の文字を入力することができる。
【0070】
また、ユーザは、「に」の文字に続けて、キー21-4を左手の親指で押して「た」行を選択したとき、キー21-6乃至21-10には「た」行の文字(「た」、「ち」、「つ」、「て」、「と」)がそれぞれ割り当てられるから、そのキー21-6乃至21-10の中からキー21-7を右手の親指で押すことによって「ち」の文字を入力することができる。
【0071】
さらに、ユーザは、「ち」の文字に続けて、キー21-6を右手の親指で押して「は」行を選択したとき、キー21-1乃至21-5には「は」行の文字(「は」、「ひ」、「ふ」、「へ」、「ほ」)がそれぞれ割り当てられるから、そのキー21-1乃至21-6の中からキー21-1を左手の親指で押すことによって「は」の文字を入力することができる。
【0072】
以上の一連の操作により、ユーザは、図4に示すような「こんにちは」の文字を入力することができる。
【0073】
なお、領域23には、入力した文字を削除する機能の他、1つ前の画面に戻る機能も割り当てられている。例えば、ユーザにより「か」行が選択されたときに表示される図6の状態で領域23が押された場合、タッチパネル式ディスプレイ11の表示は図5の状態に戻る。
【0074】
このように、ユーザは、携帯情報端末1の文字入力の方式がマルチストローク方式である場合、複数のキーを組み合わせて、1つの文字を入力することができる。入力する文字が濁音の文字や符号などではない場合、左手の親指で「か」行を選択し、続けて右手の親指で「こ」の文字を選択したり、或いは、右手の親指で「わ」行を選択し、続けて左手の親指で「ん」の文字を選択したりするように、ユーザは、左右の親指を交互に動かすことによって文字を入力することができる。
【0075】
指の動きは上下方向の動きだけであるから、あるキーを押したときに、それぞれのキーにどの文字が割り当てられるのかを覚えておくことによって、ユーザは、連続的に、かつ直感的に文字を入力することができる。」
・・・中略・・・
【0080】
入出力インタフェース55には、LCD(Liquid Crystal Display)などよりなる表示部71にタッチパネル72が重畳して構成されるタッチパネル式ディスプレイ11、筐体の面1Aに設けられるボタンなどよりなる入力部56、ハードディスクなどより構成される記憶部57、および、無線LAN(Local Area Network)モジュールなどよりなり、ネットワークを介しての通信処理を行う通信部58が接続されている。
・・・中略・・・
【0082】
図14は、携帯情報端末1の機能構成例を示すブロック図である。図14に示す機能部は、図13のCPU51により所定のプログラムが実行されることによって実現される。
【0083】
キー表示制御部81は、タッチパネル72から供給されてくるデータ(ユーザにより押されたタッチパネル式ディスプレイ11上の位置を表すデータ)に基づいて表示部71に表示されるキーの表示を制御する。
【0084】
文字入力受付部82は、タッチパネル72から供給されてくるデータに基づいて、ユーザにより入力された文字を受け付け、それを表示部71の文字表示領域24に表示させる。また、文字入力受付部82は、ユーザにより入力された文字を表すデータを、メーラや、ファイルの検索を行うアプリケーションなどの、ユーザにより入力された文字に基づいて処理を行う各種のアプリケーションに出力する。」

「【図2】



「【図3】



「【図4】



「【図5】



「【図6】



「【図7】



「【図8】



「【図9】



「【図10】



「【図11】



「【図12】



「【図14】



(イ)上記記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「携帯情報端末1の面1Aには、LCD(Liquid Crystal Display)などよりなる表示部71にタッチパネル72が重畳して構成される、タッチパネル式ディスプレイ11が設けられ、(【0042】、【0080】)
携帯情報端末1の機能部は、CPU51により所定のプログラムが実行されることによって実現され、(【0082】、【図14】)
キー表示制御部81は、タッチパネル72から供給されてくるデータ(ユーザにより押されたタッチパネル式ディスプレイ11上の位置を表すデータ)に基づいて表示部71に表示されるキーの表示を制御し、(【0083】)
文字入力受付部82は、タッチパネル72から供給されてくるデータに基づいて、ユーザにより入力された文字を受け付け、それを表示部71の文字表示領域24に表示させ、また、文字入力受付部82は、ユーザにより入力された文字を表すデータを、メーラや、ファイルの検索を行うアプリケーションなどの、ユーザにより入力された文字に基づいて処理を行う各種のアプリケーションに出力し、(【0084】)
携帯情報端末1の筐体はユーザが両手で把持可能な大きさのものとされ、ユーザは、面1Aを正面として、側面1Bを左手で、側面1C(側面1Bと平行な面)を右手でそれぞれ包むように把持し、ユーザは、タッチパネル式ディスプレイ11を親指で直接押したり(タップしたり)、用意されているスライラスの先端で押すなどして各種の操作を行い、(【0043】)
例えば、ユーザは、タッチパネル式ディスプレイ11に表示される、所定の文字が割り当てられたキーを左右の親指で操作することによって、電子メールとして送る文章を入力したり、検索するコンテンツのタイトルを入力したりすることができ、(【0044】)
タッチパネル式ディスプレイ11に表示される、初期状態の画面には、タッチパネル式ディスプレイ11の縁11Aに沿ってキー21-1乃至21-5の5つのキーが配列して表示され、縁11Aに対向する縁11Bに沿って、キー21-6乃至21-10の5つのキーが配列して表示され、これらのキー21-1乃至21-10は、ユーザが、筐体を両手で把持したときに、その親指が届く位置に表示され、(【0048】?【0049】)
タッチパネル式ディスプレイ11に表示される画像の向きを基準として、縁11Aは左側の縁であり、縁11Bは右側の縁であり、(【0050】)
キー21-1乃至21-10のキートップには、50音の各行の第一音の文字である「あ」、「か」、「さ」、「た」、「な」、「は」、「ま」、「や」、「ら」、「わ」がそれぞれ表示され、(【0051】、【図3】)
キー21-1には「あ」行の文字が割り当てられ、キー21-2には「か」行の文字が割り当てられ、キー21-3には「さ」行の文字が割り当てられ、キー21-4には「た」行の文字が割り当てられ、キー21-5には「な」行の文字が割り当てられ、キー21-6には「は」行の文字が割り当てられ、キー21-7には「ま」行の文字が割り当てられ、キー21-8には「や」行の文字が割り当てられ、キー21-9には「ら」行の文字が割り当てられ、キー21-10には「わ」行の文字が割り当てられており、キーに割り当てられる文字には、各行の清音の文字の他、濁音の文字、半濁音の文字、文章の作成に用いられる符号類が含まれ、(【0052】)
例えば、キー21-1を押したとき、キー21-6乃至21-10に「あ」行の文字である「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」が割り当てられるように、1つのキーを押したとき、それぞれのキーに割り当てられる文字が切り替わるから(キートップの表示が切り替わるから)、ユーザは、左右の親指を使ってキー21-1乃至21-5のいずれかとキー21-6乃至21-10のいずれかを交互に押すなどして複数のキー操作を組合せ、1つの文字を入力することができ、(【0053】)
ユーザにより入力された文字は、タッチパネル式ディスプレイ11の上方に形成される文字表示領域24に表示される、(【0054】、【図4】)
携帯情報端末1であって、
ユーザがキー21-2を左手の親指で押したとき(「か」行を選択したとき)、(【0063】、【図5】)
キー21-1乃至21-5には、「が」、「ぎ」、「ぐ」、「げ」、「ご」の文字が割り当てられ、キー21-6乃至21-10には、「か」、「き」、「く」、「け」、「こ」の文字がそれぞれ割り当てられ、(【0063】、【図6】)
ユーザは、「か」行の文字を選択する左手の親指の操作に続けて、右手の親指でキー21-6乃至21-10のいずれかを押すことによって、「か」行の1つの文字を入力することができ、(【0064】)
例えば、ユーザがキー21-10を右手の親指で押したとき(「こ」の文字を選択したとき)、(【0065】、【図7】)
文字表示領域24には、ユーザが選択した「こ」の文字が入力され、(【0065】、【図8】)
また、このようにして1つの文字が入力されたとき、キー21-1乃至21-10には50音の各行の文字が割り当てられた状態になり(文字の割り当ては初期状態に戻る)、(【0066】、【図8】)
さらに、ユーザがキー21-10を右手の親指で押したとき(「わ」行を選択したとき)、(【0067】、【図9】)
キー21-1乃至21-5には、「わ」、「を」、「ん」、「ゎ」、「(スペース)」がそれぞれ割り当てられ、キー21-6乃至21-10には、「、」、「。」、「-」、「・」、「!」がそれぞれ割り当てられ、(【0067】、【図10】)
例えば、ユーザがキー21-3を左手の親指で押したとき(「ん」の文字を選択したとき)、(【0068】、【図11】)
文字表示領域24には、先に入力した「こ」の文字に続けて、選択した「ん」の文字が入力され、このとき、「こ」の文字を入力した直後の状態と同様に、キー21-1乃至21-10には各行の文字が割り当てられた状態になり、(【0068】、【図12】)
同様にして、ユーザは、キー21-5を左手の親指で押して「な」行を選択したとき、キー21-6乃至21-10には「な」行の文字(「な」、「に」、「ぬ」、「ね」、「の」)がそれぞれ割り当てられるから、そのキー21-6乃至21-10の中からキー21-7を右手の親指で押すことによって「に」の文字を入力することができ、(【0069】)
また、ユーザは、「に」の文字に続けて、キー21-4を左手の親指で押して「た」行を選択したとき、キー21-6乃至21-10には「た」行の文字(「た」、「ち」、「つ」、「て」、「と」)がそれぞれ割り当てられるから、そのキー21-6乃至21-10の中からキー21-7を右手の親指で押すことによって「ち」の文字を入力することができ、(【0070】)
さらに、ユーザは、「ち」の文字に続けて、キー21-6を右手の親指で押して「は」行を選択したとき、キー21-1乃至21-5には「は」行の文字(「は」、「ひ」、「ふ」、「へ」、「ほ」)がそれぞれ割り当てられるから、そのキー21-1乃至21-6の中からキー21-1を左手の親指で押すことによって「は」の文字を入力することができ、(【0071】)
以上の一連の操作により、ユーザは、「こんにちは」の文字を入力することができる、(【0072】)
携帯情報端末1。」

イ 周知技術について
(ア)特開2009-99067号公報(以下、「文献2」という。)には、図14とともに、次の記載がある。
「【0045】
図14は、この親子関係となる選択ボタンを利用した文字入力画面の一例を表す図である。ここでは、50音について「行」を親とし当該行に含まれる「語」を子としてて階層化しボタン表示を行うことを特徴とする。すなわち、図14(a)にあるように、例えば親ボタンとして左のタッチセンサに沿って「あ行」ボタン、「か行」ボタン、・・・、「文字種」ボタン、「変換」ボタンなどが表示される。そして例えば「は行」ボタンが選択されると、今度は右のタッチセンサに沿って"は行の文字"である「は」、「ひ」、「ふ」、「へ」、「ほ」、「゛」、「゜」といったボタンが表示され、右側のタッチセンサで選択した文字が入力される、という具合である。」

「【図14】



上記【図14】のa)を参照すると、左のタッチセンサに沿った左側の表示領域に、「あ行」ボタン、「か行」ボタン、・・・、「文字種」ボタン、「変換」ボタンなどが表示され、「は行」ボタンが選択されて、右のタッチセンサに沿った右側の表示領域に、"は行の文字"である「は」、「ひ」、「ふ」、「へ」、「ほ」、「゛」、「゜」といったボタンが表示された文字入力画面において、左のタッチセンサに沿った左側の表示領域に、「あ行」ボタン、「か行」ボタン、・・・、「文字種」ボタン、「変換」ボタンなどが表示された状態であることが、図示されていると認められる。

そうしてみると、文献2には、以下の技術的事項が記載されているといえる。

「親子関係となる選択ボタンを利用した文字入力画面であって、
50音について「行」を親とし当該行に含まれる「語」を子としてて階層化しボタン表示を行うことを特徴とし、
親ボタンとして左のタッチセンサに沿った左側の表示領域に、「あ行」ボタン、「か行」ボタン・・・、「文字種」ボタン、「変換」ボタンなどが表示され、
例えば「は行」ボタンが選択されると、「あ行」ボタン、「か行」ボタン・・・、「は行」ボタンなどが左側の表示領域に表示された状態で、右のタッチセンサに沿った右側の表示領域に、「は行」の文字である「は」、「ひ」、「ふ」、「へ」、「ほ」といったボタンが表示され、
右側のタッチセンサで選択した文字が入力される、文字入力画面。」

(イ)特開2006-33425号公報(以下、「文献3」という。)には、図とともに、次の記載がある。
「【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、仮名入力方法において、ディスプレイに仮名の各行あ段の上位タッチキー群を表示し、この上位タッチキー群からタッチ操作により1つの上位タッチキーを選択したときに、上記ディスプレイに、選択された行の仮名の下位タッチキー群を表示し、この下位タッチキー群からタッチ操作により1つの下位タッチキーを選択したときに、この下位タッチキーが表示していた仮名を入力することを特徴とする。
また、仮名入力装置において、ディスプレイと、制御手段とを備え、この制御手段は、ディスプレイに仮名の各行あ段の上位タッチキー群を表示し、上位タッチキー群からタッチ操作により1つの上位タッチキーが選択されたときに、上記ディスプレイに、選択された上位タッチキーが表示していた行の仮名の下位タッチキー群を表示し、この下位タッチキー群からタッチ操作で1つの下位タッチキーが選択されたときに、この下位タッチキーが表示していた文字を入力することを特徴とする。
【0005】
上記方法および装置では、仮名を表示したタッチキーのタッチ操作により仮名を入力できるので、熟練を要さない。また、ディスプレイに仮名50音をそのまま表示せずに済み、表示するタッチキー数が少ないので、比較的大きなタッチキーとすることができ、見易くなる。さらに、基本的に2回のタッチ操作で仮名を入力できるので、操作も簡単である。
【0006】
好ましくは、上記ディスプレイは、互いに区分けされた第1,第2の領域を有し、第1領域には上位タッチキー群を表示し、第2領域には選択された行の下位タッチキー群を表示する。これによれば、表示さらたタッチキーが上位タッチキー群に属するか下位タッチキー群に属するかを即座に判別でき、操作性が良い。
【0007】
好ましくは、あ行,か行,さ行,た行,な行,は行,ま行,ら行が選択された場合には、ディスプレイにあ段,い段,う段,え段,お段の5つの下位タッチキーを左右に一列をなしてこの順に表示し、か行,さ行,た行,は行が選択された場合には、さらにその下に濁音の5つの下位タッチキーを一列をなして表示し、は行が選択された場合には、さらに濁音の下位タッチキーの下に半濁音の5つの下位タッチキーを一列をなして表示する。これによれば、濁音,半濁音の仮名でも、2回のタッチ操作で入力することができる。また、濁音,半濁音の仮名のタッチキーが清音の仮名のタッチキー下にそれぞれ一列をなして表示されているので、タッチキーを判別し易く、操作性が良い。」

「【図4】



「【図8】



「【図9】



上記【図4】、【図8】、【図9】を参照すると、ディスプレイの左側領域である第1領域(23x)に上位タッチキー群を表示させた状態で、ディスプレイの右側領域である第2領域(23y)に選択された行の下位タッチキー群を表示することが、図示されていると認められる。

そうしてみると、文献3には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
「ディスプレイに仮名の各行あ段の上位タッチキー群を表示し、この上位タッチキー群からタッチ操作により1つの上位タッチキーを選択したときに、上記ディスプレイに、選択された行の仮名の下位タッチキー群を表示し、この下位タッチキー群からタッチ操作により1つの下位タッチキーを選択したときに、この下位タッチキーが表示していた仮名を入力する仮名入力方法であって、
上記ディスプレイは、互いに区分けされた第1,第2の領域を有し、ディスプレイの左側領域である第1領域に上位タッチキー群を表示した状態で、ディスプレイの右側領域である第2領域には選択された行の下位タッチキー群を表示する、仮名入力方法。」

(ウ)上記(ア)および(イ)からみて、以下の技術的事項は本願出願日前において周知な技術であったと認められる。

「文字入力画面の左側領域に「あ行」ボタン、「か行」ボタン・・・、「は行」ボタンなどの上位のボタンが列をなして表示されている状態において、例えば、「は行」ボタンが選択された場合に、前記左側領域の「あ行」ボタン、「か行」ボタン・・・、「は行」ボタンなどを表示させた状態で、選択された「は行」ボタンに対応付けられた下位のボタンに紐付けられた「は行」の文字である「は」、「ひ」、「ふ」、「へ」、「ほ」といった文字を文字入力画面の右側領域に列をなして表示させる表示制御手段」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「タッチパネル式ディスプレイ11」は、「LCD(Liquid Crystal Display)などよりなる表示部71にタッチパネル72が重畳して構成される」ことから、引用発明の「表示部71」は、「タッチパネル72」に積層されていると認められる。
そうしてみると、引用発明の「タッチパネル72」及び「表示部71」は、それぞれ本件補正発明の「タッチスクリーン」及び「ディスプレイ」に対応し、引用発明の「表示部71」と本件補正発明の「ディスプレイ」は、「前記タッチスクリーンに積層され」ている点で共通する。

(イ)引用発明において、「タッチパネル式ディスプレイ11の縁11Aに沿ってキー21-1乃至21-5の5つのキーが配列して表示され、縁11Aに対向する縁11Bに沿って、キー21-6乃至21-10の5つのキーが配列して表示され」ているところ、引用発明の「キー21-1乃至21-5の5つのキー」及び「キー21-6乃至21-10の5つのキー」は、それぞれ本件補正発明の「複数の第1キー」及び「複数の第2キー」に対応する。

(ウ)引用発明において、「タッチパネル72から供給されてくるデータ(ユーザにより押されたタッチパネル式ディスプレイ11上の位置を表すデータ)に基づいて表示部71に表示されるキーの表示を制御し」ており、「ユーザは、タッチパネル式ディスプレイ11を親指で直接押したり(タップしたり)、用意されているスライラスの先端で押すなどして各種の操作を行い」、「タッチパネル式ディスプレイ11に表示される、所定の文字が割り当てられたキーを左右の親指で操作する」ものであり、例えば、「キー21-1には「あ」行の文字が割り当てられ」、「キー21-1を押したとき、キー21-6乃至21-10に「あ」行の文字である「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」が割り当てられるように、1つのキーを押したとき、それぞれのキーに割り当てられる文字が切り替わるから(キートップの表示が切り替わるから)、ユーザは、左右の親指を使ってキー21-1乃至21-5のいずれかとキー21-6乃至21-10のいずれかを交互に押すなどして複数のキー操作を組合せ、1つの文字を入力することができ」るものである。
このことからみて、引用発明の「タッチパネル72」は、「縁11Aに沿ってキー21-1乃至21-5の5つのキーが配列して表示され」る領域と重なる領域に、「ユーザにより押された位置がキー21-1乃至21-5のいずれのキーであるのかを検出する領域」を含むものと認められ、同様に、「縁11Aに対向する縁11Bに沿って、キー21-6乃至21-10の5つのキーが配列して表示され」る領域と重なる領域に、「ユーザにより押された位置がキー21-6乃至21-10のいずれのキーであるのかを検出する領域」を含むものと認められる。
ここで、上記「ユーザにより押された位置がキー21-1乃至21-5のいずれのキーであるのかを検出する領域」及び上記「ユーザにより押された位置がキー21-6乃至21-10のいずれのキーであるのかを検出する領域」は、それぞれ「キー21-1乃至21-5の5つのキーが対応付けられた領域」及び「キー21-6乃至21-10の5つのキーが対応付けられた領域」といえるから、上記「ユーザにより押された位置がキー21-1乃至21-5のいずれのキーであるのかを検出する領域」及び上記「ユーザにより押された位置がキー21-6乃至21-10のいずれのキーであるのかを検出する領域」は、それぞれ本件補正発明の「第1キー領域」及び「第2キー領域」に対応する。
そうしてみると、引用発明の「タッチパネル72」と本件補正発明の「タッチスクリーン」は、「複数の第1キーが対応付けられた第1キー領域と複数の第2キーが対応付けられた第2キー領域とを含む」点で共通する。
また、引用発明の「表示部71」と本件補正発明の「ディスプレイ」は、「前記タッチスクリーンに積層され、前記第1キー領域と重なる領域に前記第1キーを表示し、前記第2キー領域と重なる領域に前記第2キーを表示する」点で共通する。

(エ)引用発明において、「携帯情報端末1の機能部は、CPU51により所定のプログラムが実行されることによって実現され」るものであるところ、引用文献1の図14を参照すると、引用発明の「CPU51により所定のプログラムが実行されることによって実現され」る「機能部」は、キー表示制御部81と文字入力受付部82からなるものと理解できるから、キー表示制御部81と文字入力受付部82の機能は、「CPU51により所定のプログラムが実行されることによって実現され」るものといえる。
そして、引用発明の「キー表示制御部81は、タッチパネル72から供給されてくるデータ(ユーザにより押されたタッチパネル式ディスプレイ11上の位置を表すデータ)に基づいて表示部71に表示されるキーの表示を制御し」、「文字入力受付部82は、タッチパネル72から供給されてくるデータに基づいて、ユーザにより入力された文字を受け付け、それを表示部71の文字表示領域24に表示させ、また、文字入力受付部82は、ユーザにより入力された文字を表すデータを、メーラや、ファイルの検索を行うアプリケーションなどの、ユーザにより入力された文字に基づいて処理を行う各種のアプリケーションに出力」するものであり、例えば、「キー21-1には「あ」行の文字が割り当てられ」、「キー21-1を押したとき、キー21-6乃至21-10に「あ」行の文字である「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」が割り当てられるように、1つのキーを押したとき、それぞれのキーに割り当てられる文字が切り替わるから(キートップの表示が切り替わるから)、ユーザは、左右の親指を使ってキー21-1乃至21-5のいずれかとキー21-6乃至21-10のいずれかを交互に押すなどして複数のキー操作を組合せ、1つの文字を入力することができ」るものであるから、引用発明のキー表示制御部81と文字入力受付部82からなる「機能部」を実現する「CPU51」は、「タッチパネル72」の「ユーザにより押された位置がキー21-1乃至21-5のいずれのキーであるのかを検出する領域」と「ユーザにより押された位置がキー21-6乃至21-10のいずれのキーであるのかを検出する領域」で検出したキーに対する操作に基づいて文字入力処理を実行するものと認められる。
そうしてみると、引用発明の「CPU51」は本件補正発明の「コントローラ」に対応し、両者は「前記タッチスクリーンの前記第1キー領域と前記第2キー領域で検出したキーに対する操作に基づいて文字入力処理を実行する」点で共通する。

(オ)引用発明において、「タッチパネル式ディスプレイ11の縁11Aに沿ってキー21-1乃至21-5の5つのキーが配列して表示され、縁11Aに対向する縁11Bに沿って、キー21-6乃至21-10の5つのキーが配列して表示され」、「タッチパネル式ディスプレイ11に表示される画像の向きを基準として、縁11Aは左側の縁であり、縁11Bは右側の縁であり」、また、「タッチパネル式ディスプレイ11」は、「LCD(Liquid Crystal Display)などよりなる表示部71にタッチパネル72が重畳して構成される」ことから、「タッチパネル式ディスプレイ11の縁11A」(左側の縁)に沿った領域は、「タッチパネル72の左側の縁に沿った領域」でもある。同様に、「タッチパネル式ディスプレイ11」の「縁11Aに対向する縁11B」(右側の縁)に沿った領域は、「タッチパネル72の前記左側の縁とは異なる右側の縁に沿った領域」でもある。
ここで、「タッチパネル72」における上記「ユーザにより押された位置がキー21-1乃至21-5のいずれのキーであるのかを検出する領域」は、「縁11Aに沿ってキー21-1乃至21-5の5つのキーが配列して表示され」る領域と重なる領域であるから、「タッチパネル72の左側の縁に沿った領域」であり、同様に、上記「ユーザにより押された位置がキー21-6乃至21-10のいずれのキーであるのかを検出する領域」は、「タッチパネル72の前記左側の縁とは異なる右側の縁に沿った領域」であるといえる。
そうしてみると、引用発明と本件補正発明において、「前記第1キー領域は、前記タッチスクリーンの第1の縁に沿った領域であり」、「前記第2キー領域は、前記タッチスクリーンの前記第1の縁とは異なる第2の縁に沿った領域である」点で共通する。

(カ)引用発明において、「キー21-1乃至21-10は、ユーザが、筐体を両手で把持したときに、その親指が届く位置に表示され」ることから、引用発明の「キー21-1乃至21-5の5つのキー」は、「タッチパネル72」の左側の縁に親指を沿わせて動かすときの位置に並び、「キー21-6乃至21-10の5つのキー」は、「タッチパネル72」の右側の縁に親指を沿わせて動かすときの位置に並ぶものと認められる。
そうしてみると、引用発明と本件補正発明において、「複数の前記第1キーは、前記第1の縁に指を沿わせて動かすときの位置に並び」、「複数の前記第2キーは、前記第2の縁に指を沿わせて動かすときの位置に並ぶ」点で共通する。

(キ)引用発明において、「キー21-1には「あ」行の文字が割り当てられ、キー21-2には「か」行の文字が割り当てられ、キー21-3には「さ」行の文字が割り当てられ、キー21-4には「た」行の文字が割り当てられ、キー21-5には「な」行の文字が割り当てられ」、「例えば、キー21-1を押したとき、キー21-6乃至21-10に「あ」行の文字である「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」が割り当てられるように、1つのキーを押したとき、それぞれのキーに割り当てられる文字が切り替わる」ことや、「ユーザがキー21-2を左手の親指で押したとき(「か」行を選択したとき)、キー21-1乃至21-5には、「が」、「ぎ」、「ぐ」、「げ」、「ご」の文字が割り当てられ、キー21-6乃至21-10には、「か」、「き」、「く」、「け」、「こ」の文字がそれぞれ割り当てられ」ること、更に「ユーザは、キー21-5を左手の親指で押して「な」行を選択したとき、キー21-6乃至21-10には「な」行の文字(「な」、「に」、「ぬ」、「ね」、「の」)がそれぞれ割り当てられる」ことからみて、引用発明の「キー21-1乃至21-5の5つのキー」のそれぞれのキーは、「キー21-6乃至21-10の5つのキー」のうち少なくとも1つのキーが「紐付けられて」いるといえる。

(ク)引用発明において、「機能部」を実現する「CPU51」は、「タッチパネル72から供給されてくるデータ(ユーザにより押されたタッチパネル式ディスプレイ11上の位置を表すデータ)に基づいて表示部71に表示されるキーの表示を制御し」、例えば、「キー21-1には「あ」行の文字が割り当てられ」、「キー21-1を押したとき、キー21-6乃至21-10に「あ」行の文字である「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」が割り当てられるように、1つのキーを押したとき、それぞれのキーに割り当てられる文字が切り替わる」ものである。
このことから、引用発明の「機能部」を実現する「CPU51」は、前記「キー21-1乃至21-5の5つのキー」のいずれかのキーへの接触を検知すると、接触を検知した前記キーに対応付けられた前記「キー21-6乃至21-10の5つのキー」のそれぞれに紐付けられた少なくとも1つの文字(「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」等)を前記「キー21-6乃至21-10の5つのキーが対応付けられた領域」に表示させる処理を実行しているといえる。
そうしてみると、引用発明の「CPU51」と本件補正発明の「コントローラ」は、「前記第1キーへの接触を検知すると、接触を検知した前記第1キーに対応付けられた前記第2キーのそれぞれに紐付けられた少なくとも1つの文字を前記第2キー領域に表示させる」点で共通する。

(ケ)引用発明の「携帯情報端末1」は、後述する相違点を除き、本件補正発明の「電子機器」に対応するといえる。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「複数の第1キーが対応付けられた第1キー領域と複数の第2キーが対応付けられた第2キー領域とを含むタッチスクリーンと、
前記タッチスクリーンの前記第1キー領域と前記第2キー領域で検出したキーに対する操作に基づいて文字入力処理を実行するコントローラと、
前記タッチスクリーンに積層され、前記第1キー領域と重なる領域に前記第1キーを表示し、前記第2キー領域と重なる領域に前記第2キーを表示するディスプレイと、
を備え、
前記第1キー領域は、前記タッチスクリーンの第1の縁に沿った領域であり、
複数の前記第1キーは、前記第1の縁に指を沿わせて動かすときの位置に並び、
前記第2キー領域は、前記タッチスクリーンの前記第1の縁とは異なる第2の縁に沿った領域であり、
複数の前記第2キーは、前記第2の縁に指を沿わせて動かすときの位置に並び、
前記第1キーは、少なくとも1つの第2キーが紐付けられており、
前記コントローラは、前記第1キーへの接触を検知すると、接触を検知した前記第1キーに対応付けられた前記第2キーのそれぞれに紐付けられた少なくとも1つの文字を前記第2キー領域に表示させる電子機器。」

(相違点)
本件補正発明では、前記第1キーへの接触を検知すると、「前記第1キー領域に前記第1キーを表示させた状態で」、接触を検知した前記第1キーに対応付けられた前記第2キーのそれぞれに紐付けられた少なくとも1つの文字を「前記第2キー領域に表示させる」のに対し、引用発明では、「1つのキーを押したとき、それぞれのキーに割り当てられる文字が切り替わる」ものであり、例えば、「ユーザがキー21-2を左手の親指で押したとき(「か」行を選択したとき)」、「キー21-1乃至21-5には、「が」、「ぎ」、「ぐ」、「げ」、「ご」の文字が割り当てられ、キー21-6乃至21-10には、「か」、「き」、「く」、「け」、「こ」の文字がそれぞれ割り当てられ」るように、「キー21-1乃至21-5」に割り当てられる文字が切り替わるものである点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
上記(2)イ(ウ)に示したように、「文字入力画面の左側領域に「あ行」ボタン、「か行」ボタン・・・、「は行」ボタンなどの上位のボタンが列をなして表示されている状態において、例えば、「は行」ボタンが選択された場合に、前記左側領域の「あ行」ボタン、「か行」ボタン・・・、「は行」ボタンなどを表示させた状態で、選択された「は行」ボタンに対応付けられた下位のボタンに紐付けられた「は行」の文字である「は」、「ひ」、「ふ」、「へ」、「ほ」といった文字を文字入力画面の右側領域に列をなして表示させる表示制御手段」は、本願出願日前において周知な技術であったと認められる。
そして、引用発明のような情報端末に採用される表示入力画面について、ユーザの操作性等を検討して最良な入力環境を提供するような設計変更を試みることは、特段の技術的な阻害要因がない限り、当業者が通常の創作活動の範囲内で成し得ることであるところ、引用発明に上記周知技術を適用することを妨げるような技術的な阻害要因は見当たらない。
してみれば、引用発明に上記周知技術を適用して、「「あ」行の文字」、「「か」行の文字」、「「さ」行の文字」、「「た」行の文字」、「「な」行の文字」が割り当てられたキー21-1乃至21-5の内のキー21-2を左手の親指で押したとき(「か」行を選択したとき)、キー21-1乃至21-5は、「「あ」行の文字」」、「「か」行の文字」、「「さ」行の文字」、「「た」行の文字」、「「な」行の文字」が割り当てられた状態のままで、「「か」、「き」、「く」、「け」、「こ」の文字」が割り当てられたキー21-6乃至21-10の5つのキーが縁11Aに対向する縁11Bに沿って配列されるようにする、すなわち、本件補正発明に係る相違点の構成とすることは、当業者が容易に成し得たことである。

そして、相違点を勘案してみても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から、予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は,特許法17条の2第6項で準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
令和元年11月20日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし23に係る発明は、令和元年8月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の理由は、以下のとおりである。

理由1(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

理由2(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)
・請求項1-7、9-13、15及び21-23
・引用文献等 1

●理由2(進歩性)
・請求項8
・引用文献等 1-2

・請求項14
・引用文献等 1及び3

・請求項16及び19-20
・引用文献等 1

・請求項17-18
・引用文献等 1及び4

<引用文献等一覧>
1.特開2006-148536号公報
2.特開2012-113685号公報
3.特開2003-271294号公報
4.特開2015-219543号公報

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)(ア)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の発明を特定するために必要な事項である「タッチスクリーン」について、「タッチスクリーンに積層され、前記第1キー領域と重なる領域に前記第1キーを表示し、前記第2キー領域と重なる領域に前記第2キーを表示するディスプレイ」の限定を削除し、「複数の第1キー」について、「前記第1キーは、少なくとも1つの第2キーが紐付けられており」という限定を削除し、「コントローラ」について「前記コントローラは、前記第1キーへの接触を検知すると、前記第1キー領域に前記第1キーを表示させた状態で、接触を検知した前記第1キーに対応付けられた前記第2キーのそれぞれに紐付けられた少なくとも1つの文字を前記第2キー領域に表示させる」という限定を削除するものである。

本願発明と引用発明を対比すると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。

(一致点)
「複数の第1キーが対応付けられた第1キー領域と複数の第2キーが対応付けられた第2キー領域とを含むタッチスクリーンと、
前記タッチスクリーンの前記第1キー領域と前記第2キー領域で検出したキーに対する操作に基づいて文字入力処理を実行するコントローラと、
を備え、
前記第1キー領域は、前記タッチスクリーンの第1の縁に沿った領域であり、
複数の前記第1キーは、前記第1の縁に指を沿わせて動かすときの位置に並び、
前記第2キー領域は、前記タッチスクリーンの前記第1の縁とは異なる第2の縁に沿った領域であり、
複数の前記第2キーは、前記第2の縁に指を沿わせて動かすときの位置に並ぶ電子機器。」

そうしてみると、本願発明と引用発明との間に相違点は認められない。
また、本願発明は、表現上の差違を考慮したとしても引用発明から容易になし得たものと認められる。

そうすると、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明ついて検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-12-02 
結審通知日 2020-12-08 
審決日 2020-12-22 
出願番号 特願2016-66387(P2016-66387)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 113- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 富澤 哲生
▲吉▼田 耕一
発明の名称 電子機器、文字入力制御方法、及び文字入力プログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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