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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1371094
審判番号 不服2020-6989  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-22 
確定日 2021-02-12 
事件の表示 特願2015-224101「固体撮像ユニット、及び、これを用いた固体撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開、特開2017- 92383〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月16日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年 7月 4日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 9月 6日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 2月17日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 2年 5月22日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和 2年 5月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 2年 5月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
光電変換を行う複数の固体撮像素子と、
前記固体撮像素子が所定の配置規則に従い隣接する前記固体撮像素子と千鳥形状をなすように搭載された回路基板と、を備える固体撮像ユニットを複数備えた固体撮像装置であって、
前記固体撮像ユニットに2つの前記固体撮像素子が実装されており、
各固体撮像素子が千鳥形状をなすように前記複数の固体撮像ユニットを配置し、
複数の前記固体撮像素子のうち、1つの前記固体撮像素子を第1固体撮像素子、該第1固体撮像素子に隣接する前記固体撮像素子を第2固体撮像素子とした際に、
前記配置規則は、前記第1固体撮像素子の一端と当該一端に近接対向する前記第2固体撮像素子の端とが第1距離だけ離れていることを特徴とする固体撮像装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和 元年 9月 6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
光電変換を行う複数の固体撮像素子と、
前記固体撮像素子が所定の配置規則に従い隣接する前記固体撮像素子と千鳥形状をなすように搭載された回路基板と、を備える固体撮像ユニットを複数備えた固体撮像装置であって、
前記固体撮像ユニットに2つの前記固体撮像素子が実装されており、
各固体撮像素子が千鳥形状をなすように前記複数の固体撮像ユニットを配置したことを特徴とする固体撮像装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数の固体撮像素子」の「配置規則」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2001-45222号公報(平成13年2月16日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)
「【0014】
【発明の実施の形態】図1は本発明のイメージセンサ16に使用する前記読取り部としての配線基板7の上面図、図2は本発明のイメージセンサ16の概略図である。図3は遮光部材Sの構成を示し、図4は配線基板7の詳細図、図5はイメージセンサ16の寸法図である。図6はベアチップ型CCDをセラミック基板等によりパッケージしたCCDパッケージ体17、図7はCCDパッケージ体17を搭載した配線基板18を示す。
【0015】図1のガラエポ基板からなる配線基板7によれば、その受光面上に2個のベアチップ型CCD9、10を千鳥状に一次元配列し、しかも、ベアチップ型CCD9、10の各端部を一次元配列の方向にわたって重ねている。双方の重なり部分11にある画素数は5個以上であればよい。また、双方のベアチップ型CCD9、10に個別に駆動回路D1、D2を接続している。」

(イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「イメージセンサ16において、配線基板7の受光面上に2個のベアチップ型CCD9、10を千鳥状に一次元配列すること」
「2個のベアチップ型CCD9、10を千鳥状に一次元配列する際、ベアチップ型CCD9、10の各端部を一次元配列の方向にわたって重なる、重なり部分11を有すること」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2015-5827号公報(平成27年1月8日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサユニット、画像読取装置および画像形成装置に関する。特に、大型原稿などを読み取るイメージセンサユニット、画像読取装置および画像形成装置に関する。」
「【0011】
以下、本発明を適用できる実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、後述するイメージセンサユニットと、このイメージセンサユニットが適用される画像読取装置および画像形成装置について説明する。なお、以下に説明する各図では、必要に応じてイメージセンサユニットの主走査方向をX方向、副走査方向をY方向、主走査方向および副走査方向に直交する方向をZ方向で示している。画像読取装置および画像形成装置では、イメージセンサユニットが読取対象物としての原稿Dに光を照射し、反射光を電気信号に変換することで画像を読み取る(反射読取)。なお、読取対象物は原稿Dに限られず、その他の読取対象物に対しても適用可能である。また、透過読取であっても適用可能である。」
「【0017】
(第1の実施形態)
次に、図4および図5を参照して、イメージセンサユニット1の各構成部材について説明する。
図4は、イメージセンサユニット1を備えた画像読取部110の一部の構成を示す断面図である。図5は、イメージセンサユニット1の分解斜視図である。
イメージセンサユニット1は、カバーガラス2、光源3、集光体としてのロッドレンズアレイ6、センサ基板部91、光電変換素子としてのセンサチップ30およびこれらを収容する支持体としてのフレーム7などを備えている。これらの構成部材のうち、カバーガラス2およびフレーム7は、大型の原稿Dの読取長に対応させて主走査方向に長く形成されている。」
「【0054】
また、本実施形態では、個々のセンサチップ30(センサチップ50)を主走査方向(長手方向)に直線状、具体的には一直線状に配列する場合について説明した。しかしながら、この場合に限られず、個々のセンサチップを千鳥状に配列する場合でも、同様に適用することができる。
図11は、他の実施形態のセンサ基板部93の平面図である。センサ基板60A、60B、60Cの実装面上にはそれぞれ複数(図11ではそれぞれ4つ)のセンサチップ70(70_(1)?70_(4)、70_(5)?70_(8)、70_(9)?70_(12))が、センサ基板60A、60B、60C上に実装されている。図11では、センサ基板60A上に実装された個々のセンサチップ70_(1)?70_(4)が、交互に幅方向にずれることで千鳥状に配列されている。また、センサ基板60B、60Cも同様に、個々のセンサチップ70_(5)?70_(8)、70_(9)?70_(12)が、千鳥状に配列されている。このように、直線状に配列するとは、一直線状に限られず、直線状と近似できる千鳥状に配列する場合も含む。
【0055】
また、本実施形態では、隣接するセンサ基板10(センサ基板40)同士を接続する際、センサチップ30_(1)?30_(4)、30_(5)?30_(8)(センサチップ50_(1)?50_(4)、50_(5)?50_(8)、50_(9)?50_(12))が直線、具体的には一直線になるように接続する場合について説明した。しかしながら、この場合に限られず、センサ基板上の複数のセンサチップを一つのセンサチップとして見た際、センサチップが千鳥状になるようにセンサ基板同士を接続する場合でも、同様に適用することができる。
図12は、他の実施形態のセンサ基板部94の平面図である。センサ基板80A、80B、80Cの実装面上にはそれぞれ複数(図12ではそれぞれ4つ)のセンサチップ90(90_(1)?90_(4)、90_(5)?90_(8)、90_(9)?90_(12))が、センサ基板80A、80B、80C上に一直線状に配列された状態で実装されている。図12では、センサ基板80A上に実装されたセンサチップ90_(1)?90_(4)と、センサ基板80B上に実装されたセンサチップ90_(5)?90_(8)とが、副走査方向にずれている。また、センサ基板80B上に実装されたセンサチップ90_(5)?90_(8)と、センサ基板80C上に実装されたセンサチップ90_(9)?90_(12)とが、副走査方向にずれている。したがって、センサ基板80A、80B、80Cを接続する際、センサチップ90_(1)?90_(4)、90_(5)?90_(8)、90_(9)?90_(12)をそれぞれ一つのセンサチップとして見た場合に、センサチップが千鳥状になるようにセンサ基板同士が接続される。
【符号の説明】
【0056】
1:イメージセンサユニット 2:カバーガラス 3:光源 4r、4g、4b:発光素子 5:基板 6:ロッドレンズアレイ(集光体) 7:フレーム(支持体) 10(10A、10B):センサ基板 11(11A、11B):実装面 12:接着剤 13:側端部 14:基板本体 15:最側端部 16:基端 18:側端部 19:基板本体 20:最側端部 21:基端 23:空間 26:固定部材 27:当接面 28:ねじ 30(30_(1)?30_(8)):センサチップ(光電変換素子) 31(31A、31B):フォトダイオード 32:パッド 32A、32B:入出力パッド 33A、33B:最先端部 40(40A、40B、40C):センサ基板 50(50_(1)?50_(12)):センサチップ(光電変換素子) 60(60A、60B、60C):センサ基板 70(70_(1)?70_(12)):センサチップ(光電変換素子) 80(80A、80B、80C):センサ基板 90(90_(1)?90_(12)):センサチップ(光電変換素子)91?94:センサ基板部 100:画像読取装置(MFP) 110:画像読取部(画像読取手段) 120:画像形成部(画像形成手段)」
「【図11】


引用文献2の【図11】から、各センサチップ70が千鳥状に配列されるようにセンサ基板60A、60B、60Cを配置することが見てとれる。
また、同【図11】から、1つのセンサチップ70(例えば70_(2))の一端(X方向の右端)と、当該一端に近接対向する隣接するセンサチップ70(例えば70_(3))の端(X方向の左端)とが、X方向にずれた位置にあり、ずれた距離だけ離れていることが見てとれる。

(イ)上記(ア)から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「センサチップ(光電変換素子)70_(1)?70_(12)を備え、
センサ基板60A、60B、60Cの実装面上にはそれぞれ複数(図11ではそれぞれ4つ)のセンサチップ70(70_(1)?70_(4)、70_(5)?70_(8)、70_(9)?70_(12))が、センサ基板60A、60B、60C上に実装されている、画像読取装置に適用されるイメージセンサユニットであって、
センサ基板60A上に実装された個々のセンサチップ70_(1)?70_(4)が、交互に幅方向にずれることで千鳥状に配列され、センサ基板60B、60Cも同様に、個々のセンサチップ70_(5)?70_(8)、70_(9)?70_(12)が、千鳥状に配列され、
各センサチップ70が千鳥状に配列されるようにセンサ基板60A、60B、60Cを配置し、
1つのセンサチップ70(例えば70_(2))の一端(X方向の右端)と、当該一端に近接対向する隣接するセンサチップ70(例えば70_(3))の端(X方向の左端)とが、X方向にずれた位置にあり、ずれた距離だけ離れているイメージセンサユニット。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「画像読取装置に適用されるイメージセンサユニット」は、本件補正発明の「固体撮像装置」に対応する。

(イ)引用発明の「センサチップ(光電変換素子)70_(1)?70_(12)」は、本件補正発明の「光電変換を行う複数の固体撮像素子」に相当する。

(ウ)引用発明では、「センサ基板60A上に実装された個々のセンサチップ70_(1)?70_(4)が、交互に幅方向にずれることで千鳥状に配列され、センサ基板60B、60Cも同様に、個々のセンサチップ70_(5)?70_(8)、70_(9)?70_(12)が、千鳥状に配列され」るものであるから、引用発明の「センサ基板60A、60B、60C」は、それぞれ、本件補正発明の「前記固体撮像素子が所定の配置規則に従い隣接する前記固体撮像素子と千鳥形状をなすように搭載された回路基板」に相当し、引用発明の「センサチップ70(70_(1)?70_(4)、70_(5)?70_(8)、70_(9)?70_(12))」と「センサ基板60A、60B、60C」とを備えたものが、本件補正発明の複数の「固体撮像ユニット」に相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「固体撮像ユニットを複数備えた固体撮像装置」である点で一致する。

(エ)引用発明では、「センサ基板60A、60B、60Cの実装面上にはそれぞれ複数(図11ではそれぞれ4つ)のセンサチップ70」が実装されるものであり、本件補正発明と引用発明とは、「前記固体撮像ユニットに」複数の「前記固体撮像素子が実装」される点で共通する。

(オ)引用発明では、「各センサチップ70が千鳥状に配列されるようにセンサ基板60A、60B、60Cを配置」することから、本件補正発明と引用発明とは、「各固体撮像素子が千鳥形状をなすように前記複数の固体撮像ユニットを配置」する点で一致する。

(カ)引用発明では、「1つのセンサチップ70(例えば70_(2))の一端(X方向の右端)と、当該一端に近接対向する隣接するセンサチップ70(例えば70_(3))の端(X方向の左端)とが、X方向にずれた位置にあり、ずれた距離だけ離れている」ものであり、「1つのセンサチップ70(例えば70_(2))」、「隣接するセンサチップ70(例えば70_(3))」、「X方向にずれた位置にあり、ずれた距離」は、それぞれ、本件補正発明の「第1固体撮像素子」、「第2固体撮像素子」、「第1距離」に対応し、本件補正発明と引用発明とは、「複数の前記固体撮像素子のうち、1つの前記固体撮像素子を第1固体撮像素子、該第1固体撮像素子に隣接する前記固体撮像素子を第2固体撮像素子とした際に、前記配置規則は、前記第1固体撮像素子の一端と当該一端に近接対向する前記第2固体撮像素子の端とが第1距離だけ離れている」点で一致する。

イ 上記アから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「光電変換を行う複数の固体撮像素子と、
前記固体撮像素子が所定の配置規則に従い隣接する前記固体撮像素子と千鳥形状をなすように搭載された回路基板と、を備える固体撮像ユニットを複数備えた固体撮像装置であって、
前記固体撮像ユニットに複数の前記固体撮像素子が実装されており、
各固体撮像素子が千鳥形状をなすように前記複数の固体撮像ユニットを配置し、
複数の前記固体撮像素子のうち、1つの前記固体撮像素子を第1固体撮像素子、該第1固体撮像素子に隣接する前記固体撮像素子を第2固体撮像素子とした際に、
前記配置規則は、前記第1固体撮像素子の一端と当該一端に近接対向する前記第2固体撮像素子の端とが第1距離だけ離れている、固体撮像装置。」

(相違点)
固体撮像ユニットに実装される複数の固体撮像素子について、本件補正発明では、「2つの前記固体撮像素子」であるのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点について
引用発明と引用文献1に記載の技術的事項とは、いずれも複数の固体撮像素子を基板上に千鳥状に配列する技術であり、引用発明は、「センサ基板60A、60B、60C」上に複数の「センサチップ70」を実装するものであることから、引用発明において、引用文献1の技術的事項を適用し、「センサ基板60A、60B、60C」上にそれぞれ2つの「センサチップ70」を実装するものとすること、すなわち、上記相違点に係る本件補正発明を構成することは、当業者が適宜なし得たことである。

イ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「(3)本願発明が特許されるべき理由
・・・(略)・・・
(d)本願発明と引用発明との対比
原査定の引用文献1乃至引用文献5はこの記載に留まっており、これを越える記載は見当たりません。
引用文献1、2とも3個以上のCCDを使用する場合、引用文献1では図13、14に示されるように、引用文献2では図11に示されるように、一つの基板に一体としてCCDを配置する構造です。
このため、2つの固体撮像素子を搭載した固体撮像ユニットを組み合わせてブロック構造とすること、このような特徴に固体撮像装置を構成することについて引用文献1や引用文献2には記載が見当たらず、またこのような構成としようとする意識についても見当たりません。引用文献3乃至引用文献5にも見当たらないことは同様です。
また本願請求項1に係る発明のような、固体撮像装置の各固体撮像素子が千鳥形状をなすように複数の固体撮像ユニットを配置することについて記載は見当たらず、またこのような配置としようとする意識についても見当たりません。
このため、一つの配線基板7に複数のベアチップ型CCDを千鳥状にまたは階段状に一次元配列することを記載するに留まる引用文献1や、一つのセンサ基板にセンサチップ30(センサチップ50)を主走査方向(長手方向)に直線状(一直線状)に配列することを記載するに留まる引用文献2では、固体撮像素子の位置精度を所望の精度内に収めつつ、固体撮像装置の撮像範囲を拡大する、という本願発明の目的を達成することができません。
さらに引用文献1乃至引用文献5には、補正後の本願請求項1に係る発明の「複数の上記固体撮像素子のうち、1つの上記固体撮像素子を第1固体撮像素子、該第1固体撮像素子に隣接する上記固体撮像素子を第2固体撮像素子とした際に、上記配置規則は、上記第1固体撮像素子の一端と当該一端に近接対向する上記第2固体撮像素子の端とが第1距離だけ離れている」という、配置規則に該当する記載は見当たりません。
・・・(略)・・・
(4)むすび
拒絶の理由を発見しないとされている請求項6だけでなく、補正後の本願請求項1?5に係る発明は、引用文献1乃至引用文献3から当業者が容易に発明できるものではなく、引用文献1乃至引用文献4から当業者が容易に発明できるものではなく、引用文献1乃至引用文献5から当業者が容易に発明できるものでもなく、いずれも十分な特許性を備えているものと確信致します。
よって、請求の趣旨のとおりの審決を求めます。」と主張している。
しかしながら、引用発明は、「センサ基板60A上に実装された個々のセンサチップ70_(1)?70_(4)が、交互に幅方向にずれることで千鳥状に配列され、センサ基板60B、60Cも同様に、個々のセンサチップ70_(5)?70_(8)、70_(9)?70_(12)が、千鳥状に配列され、各センサチップ70が千鳥状に配列されるようにセンサ基板60A、60B、60Cを配置」するものであり、当該配列及び配置は、引用文献2の【図11】からも見てとれ、引用文献2には、「このように、直線状に配列するとは、一直線状に限られず、直線状と近似できる千鳥状に配列する場合も含む。」(段落【0054】)、「したがって、センサ基板80A、80B、80Cを接続する際、センサチップ90_(1)?90_(4)、90_(5)?90_(8)、90_(9)?90_(12)をそれぞれ一つのセンサチップとして見た場合に、センサチップが千鳥状になるようにセンサ基板同士が接続される。」(段落【0055】)と記載されていることから、引用文献2は、複数の固体撮像素子を搭載した固体撮像ユニットを組み合わせてブロック構造とすることや、固体撮像装置の各固体撮像素子が千鳥形状をなすように複数の固体撮像ユニットを配置することを意識するものといえる。
また、上記アのとおり、引用発明において、引用文献1の技術的事項を適用し、「センサ基板60A、60B、60C」上にそれぞれ2つの「センサチップ70」を実装するものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。
さらに、引用発明では、「1つのセンサチップ70(例えば70_(2))の一端(X方向の右端)と、当該一端に近接対向する隣接するセンサチップ70(例えば70_(3))の端(X方向の左端)とが、X方向にずれた位置にあり、ずれた距離だけ離れている」ものである。他にも、上記(2)ア(イ)のとおり、引用文献1には、「2個のベアチップ型CCD9、10を千鳥状に一次元配列する際、ベアチップ型CCD9、10の各端部を一次元配列の方向にわたって重なる、重なり部分11を有すること」との技術的事項が記載されているように、複数の固体撮像素子を千鳥状に配置する際、隣接する固体撮像素子同士に重なり部分を有するようにし、一方の固体撮像素子の端部と隣接する他方の固体撮像素子の端部とが所定の距離だけ離れるようにすることは、常套手段である。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(5)判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、引用発明において、引用文献1に記載された技術に基づいて、上記相違点に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和 2年 5月22日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和 元年 9月 6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2001-45222号公報
引用文献2:特開2015-5827号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「複数の固体撮像素子」の「配置規則」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)-(5)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-12-07 
結審通知日 2020-12-08 
審決日 2020-12-21 
出願番号 特願2015-224101(P2015-224101)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴山 将隆  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 脇水 佳弘
小田 浩
発明の名称 固体撮像ユニット、及び、これを用いた固体撮像装置  
代理人 下坂 直樹  
代理人 机 昌彦  

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