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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1371325
審判番号 不服2018-17447  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-27 
確定日 2021-02-17 
事件の表示 特願2015-561645「煙の排出を備えたアルゴンビームアシスト電気外科手術用ペンシル」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月12日国際公開、WO2014/138366、平成28年 3月24日国内公表、特表2016-508847〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)3月6日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2013年(平成25年)3月6日(US)米国)を国際出願日とする特許出願であって、平成29年3月8日に特許請求の範囲について手続補正され、平成30年1月25日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年5月30日に意見書および手続補正書が提出されたが、同年8月21日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年12月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。

第2 本願発明
本願の請求項1?20に係る発明は、平成30年5月30日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されたものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。

【請求項1】
外科手術用ペンシルであって、
内側に含有された導管および少なくとも1つの電気接点要素を有するハンドピースと、
導電性材料から構成された中空管状部材であって、前記ハンドピースの全長に沿って延在し、かつ前記ハンドピースの全長に沿って前記ハンドピースの内周面と前記中空管状部材の外周面との間に空間が存在するように前記導管内に同心状に含有され、および前記少なくとも1つの電気接点要素が前記中空管状部材と接触する、中空管状部材と、
スペーサを介して前記中空管状部材内に沿って同心状に懸吊して接続された電極と、
エネルギー源を前記少なくとも1つの電気接点に接続するための手段と、 凝固材料の供給を前記中空管状部材に提供するための手段と、
前記ハンドピースと前記中空管状部材との間の前記空間に真空を供給するための手段であって、前記中空管状部材の端部が前記真空が適用される前記ハンドピースの端部まで延在することで、前記ハンドピースの前記端部の内周面と前記中空管状部材の前記端部の前記外周面との間に位置する空間内に形成された真空を存在せしめる手段と
を含む外科手術用ペンシル。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献:米国特許第6458125号明細書

第4 引用文献の記載事項および引用発明等
1 引用文献に記載された事項
(ア)引用文献には、「Electro-surgical unit pencil apparatus and method therefor」(当審仮訳 電気外科用ユニットペンシル装置およびその方法)に関し、図1?11Dとともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「Also, in the past, it had not been possible to use an ESU pencil while operating both an argon beam coagulator and a smoke evacuation system simultaneously.」(1欄40?42)
(当審仮約
また、従来、アルゴンビーム凝固器と煙排出システムの両方を同時に動作させながら、ESUペンシルを使用することができなかった。)

「FIGS. 5 , 6 A-C, and 7 A-C depict an ESU-Argon beam coagulator pencil apparatus 121 with telescopic assembly 124 , in accordance with the present invention.」(8欄10?12行)
(当審仮約
図5、図6A-C、図7A-Cは、本発明の入れ子式アセンブリ124を有するESUアルゴンビーム凝固ペンシル装置121を図示している。)

「The handpiece 122 has a locking cap 101 coupled to the distal end of the handpiece 122 . An exhaust connector 113 is coupled to the proximal end of the handpiece 122 . The handpiece 122 is similar to the earlier mentioned handpiece 22 , except that the handpiece 122 has an additional hand switch 150 for regulating the supply of coagulating material to the inlet port 162 .」(8欄20-26行)
(当審仮訳
ハンドピース122は、ハンドピース122の遠位端に結合するロックキャップ101を備えている。排気コネクタ113は、ハンドピース122の近位端と結合している。ハンドピース122は、ハンドピース122が、入口162に凝縮性物質の供給を調整するための付加ハンドスイッチ150が設けられている点を除き、前述のハンドピース22と同様である。)

「The inside of the handpiece 122 is lined with a cylindrical conducting element 103 . On the outside of the handpiece 122 are two hand switches 104 and 150 . Handswitch 104 regulates the supply of RF energy from an RF source (not shown) via a cord 114 to the conducting element 103 . 」(8欄29-33行)
(当審仮訳
ハンドピース122の内部には、円筒状の導電性素子103が内張されている。ハンドピース122の外側には、2つのハンドスイッチ104および150がある。ハンドスイッチ104は、導電性素子103にコード114を介してRF電源(図示せず)からのRFエネルギーの供給を調整する。
)

「The telescopic assembly 124 (shown in greater detail in FIG. 6C ) is contained within the conducting element 103 . The telescopic assembly 124 is similar to the previously described telescopic assembly 24 . The outer diameter of the cylindrical tubing 109 , which forms the body of the telescopic assembly 124 , is marginally smaller than the diameter of the conducting element 103 , permitting the telescopic assembly 124 to slide along the longitudinal axis of the conducting element 103 .」(8欄35-43行)
(当審仮訳
入れ子式アセンブリ124(図6Cに詳細に示されている。)は、導電要素103内にある。入れ子式アセンブリ124は、前述した入れ子式アセンブリ24と同様である。入れ子式アセンブリ124の本体を形成する円筒型チューブ109の外径は、導電性要素103の直径よりもわずかに小さく、入れ子式アセンブリ124は、導電要素103の長手方向軸線に沿って摺動できるようになっている。)

「A thin hollow rod 105 is suspended inside the tubing 109 by means of two spacers 134 and 135 .」(8欄43、44行)
(当審仮訳
細い中空ロッド105が2つのスペーサ134および135によって、チューブ109の内側に吊り下げられている。)
「 The socket 108 is located inside the distal end of the rod 105 . The spacers 136 and 137 suspend the socket 108 inside the rod 105 . The electrode 112 is removably coupled with this socket 108 . Alternatively, the electrode 112 could be integral with this socket 108 . The rod 105 , and the spacers 135 , 136 , and 137 are made of conducting material. 」(8欄48-53行)
(当審仮訳
ソケット108は、ロッド105の遠位端内に配置されている。スペーサ136および137は、ロッド105の内部にソケット108を吊り下げる。電極112は、ソケット108と取り外し可能に連結されている。あるいは、電極112は、ソケット108と一体とすることができる。ロッド105、スペーサ135、136および137は、導電材料で作成されている。)

「 The conductor cap 106 has an electrical contact with the spacer 135 . The spacer 135 is located at the proximal end on the inside of the tubing 109 . The conductor cap 106 has a plurality of tangs 123 that provide an electrical link between the conductor cap 106 and the conducting element 103 . 」(8欄下から8行-下から3行)
(当審仮訳
導電キャップ106は、スペーサ135と電気的に接触する。スペーサ135は、チューブ109の内側近位端に配置されている。導電キャップ106は、導電キャップ106と導電性素子103との間の電気的結合を行う複数の突起部123を有している。)

「At the proximal end of the connector 113 are two ports the exhaust port 164 and the inlet port 162. The exhaust port 164 is connected to a suction source (not shown) via tubing (not shown), and the inlet port 162 is connected to an argon supply (not shown).Inside the inlet port 162 is a long, narrow, tubular member 160 , whose distal end is inserted into the proximal end of the rod 105 . The outer diameter of the tubular member 160 is marginally less than the inner diameter of the rod 105 such that a substantially air-tight, yet slidable connection is made between the tubular member 160 and the rod 105 when the tubular member 160 is partially inserted into the rod 105 .」(10欄11-22行)
(当審仮訳
コネクタ113の近位端には、排気口164と入口162の2ポートが設けられている。排気口164は、配管(図示せず)を介して吸引源(図示せず)に接続され、入口162は、アルゴン供給源(図示せず)に接続されている。
入口162の内側には、細長い管状部材160が設けられ、その遠位端は、ロッド105の近位端に挿入される。管状部材160の外径は、ロッド105に部分的に挿入されるときに、筒状部材160およびロッド105は実質的に気密であるが、摺動可能あるように、管状部材160の外径は、ロッド105の内径よりもわずかに小さい。)

「Referring to FIGS. 5 , 6 A-C, and 7 A-C, a major additional feature introduced in this embodiment is the argon beam, whose activation is controlled through the hand switch 150 . The argon beam is conveyed to the site of the surgical procedure through the inlet port 162 , the tubular member 160 , the rod 105 , conduit 152 and finally the mouth 154 . The unique shape of the mouth 154 of the conduit 152 shields the argon beam from the exhaust suction, as will be explained below.
Smoke and other fluids from the operation site are removed through the smoke duct 155 by coupling a suction source (not shown) to the exhaust port 164 . Smoke and other fluids from the operation site are sucked into the smoke duct 155 through the annular space between the mouth 154 of the conduit 152 and the tip 117 of the nozzle 151 . 」(13欄50-58行)
(当審仮訳
図5、図6A-図6C、および7A-7Cを参照すると、実施形態で導入される主要な付加的な特徴は、その起動がスイッチ150により制御されるアルゴンビームを含む。アルゴンビームは、入口162、管状部材160、ロッド105、導管152、および、最終的に口部154を介して外科的処置の部位に搬送される。導管152の口部154の独特な形状により、以下に説明されるように、アルゴンビームを排気吸引から保護するものである。
手術部位からの煙や他の流体は、吸引源(図示せず)と排気口164を接続する煙ダクト155を通って除去される。手術部位から煙や他の流体が導管152の口部154とノズル151の先端117との間の環状空間を通って煙ダクト155内に吸引される。)

「The smoke is conveyed from the operation site through the smoke duct 155 , the tubing 109 , the handpiece 122 , the exhaust connector 113 , and through the exhaust port 164 .」(14欄30-33行)
(当審仮訳
煙は、煙ダクト155、チューブ109、ハンドピース122、排気コネクタ113を通って手術部位から排気口164を通って排気される。)

FIG.5




FIG.6A-6C




FIG.7A-7D



(イ)上記摘記事項および図面から、引用文献には、次の技術的事項が記載されているといえる。
a 「電極112は、ソケット108と一体とすることができる」ことから、電極112は、ソケット108と一体化した電極112であるといえる。また、「スペーサ136および137は、ロッド105の内部にソケット108を吊り下げる。」との記載並びに図5および図7Cから、ソケット108と一体化した電極112は、スペーサ136および137を介して、ロッド105内に沿って同心状に吊り下げられているといえる。
また、図5の記載から、ハンドピース122の内側にチューブ109が含有されていると認められる。
また、「細い中空ロッド105が2つのスペーサ134および135によって、チューブ109の内側に吊り下げられている。」との記載および図6Cの記載から、スペーサ135は、ロッド105と接触していると認められる。
b 「排気コネクタ113は、ハンドピース122の近位端と結合している。」との記載から、排気コネクタ113とハンドピース122は別の部材であることが理解でき、さらにそれを踏まえると、図5のロッド105はハンドピース122の遠位端から近位端まで延在しているといえる。すなわち、ロッド105は、ハンドピースのほぼ全長に沿って延在しているといえる。
c 図5、図6Cおよび図7Cの記載から、ロッド105は、ハンドピース122の内周面とロッド105の外周面との間に空間が存在するように、チューブ109内に同心状に設けられているといえる。
d 「ハンドスイッチ104は、導電性素子103にコード114を介してRF電源(図示せず)からのRFエネルギーの供給を調整する」こと、および「導電キャップ106は、スペーサ135と電気的に接触する。スペーサ135は、チューブ109の内側近位端に配置されている。導電キャップ106は、導電キャップ106と導電性素子103との間の電気的結合を行う複数の突起部123を有している」ことから、コード114は、RF電源からのRFエネルギーをスペーサ135に供給するために、RF電源と導電性素子103に接続している、すなわち、RF電源をスペーサ135に接続するためのものといえる。
e 「手術部位からの煙や他の流体は、吸引源(図示せず)と排気口164を接続する煙ダクト155を通って除去される。手術部位から煙や他の流体が導管152の口部154とノズル151の先端117との間の環状空間を通って煙ダクト155内に吸引される。」および「煙は、煙ダクト155、チューブ109、ハンドピース122、排気コネクタ113を通って手術部位から排気口164を通って排気される。」、「管状部材160の外径は、ロッド105に部分的に挿入されるときに、筒状部材160およびロッド105は実質的に気密である」並びに図5のハンドピース122の端部とロッド105の端部との位置関係から、吸引源は、排気コネクタ113の近位端に設けられた排気口164に接続されるとともに、ロッド105の端部が吸引されるハンドピース122の端部までほぼ延在することで、ハンドピース122の前記端部の内周面と前記ロッド105の前記端部の前記外周面との間に位置する空間内に形成された真空を存在せしめているといえる。
f ハンドピース122について、「排気コネクタ113は、ハンドピース122の近位端と結合している」および「煙は、煙ダクト155、チューブ109、ハンドピース122、排気コネクタ113を通って手術部位から排気口164を通って排気される。」と記載されており、引用文献は、排気コネクタ113とハンドピース122とは別の部材として記載している。
そうしてみると、ハンドピースは排気コネクタ113を含まないと考えるのが相当である。

2 引用発明
上記1(ア)、(イ)より、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「ESUアルゴンビーム凝固ペンシル装置121であって、
内側に含有されるチューブ109および導電材料で作成されたスペーサ135を有するハンドピース122と、導電材料で作成された細い中空のロッド105であって、前記ハンドピース122のほぼ全長に沿って延在し、かつ前記ハンドピース122の全長に沿って前記ハンドピースの内周面と前記細い中空ロッド105の外周面との間に空間が存在するように前記チューブ109に同心状に含有され、および前記スペーサ135が前記細い中空ロッド105と接触する、ロッド105と、
RF電源をスペーサ135に接続するためのコード114と、
スペーサ136および137を介して前記ロッド105内に沿って同心状に吊り下げられて接続されたソケット108と一体化した電極112と、
アルゴンの供給を前記ロッド105に提供するためのアルゴン供給源と、
ハンドピース122の近位端に設けられた排気コネクタ113の近位端に設けられた排気口に接続される吸引源であって、
前記ロッド105の端部が吸引されるハンドピース122の端部までほぼ延在することで、ハンドピース122の前記端部の内周面と前記ロッド105の前記端部の前記外周面との間に位置する空間内に形成された真空を存在せしめている吸引源を含むESUアルゴンビーム凝固ペンシル装置121。」

第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ESUアルゴンビーム凝固ペンシル装置121」は、その文言の意味、機能または構成等からみて、本願発明の「外科手術用ペンシル」に相当する。
以下同様に「ハンドピース122」は「ハンドピース」に、「チューブ109」は「導管」に、「スペーサ135」は「少なくとも1つの電気接点要素」に、「ロッド105」は「中空管状部材」に、「コード114」は「エネルギー源を前記少なくとも1つの電気接点に接続するための手段」に、「電極112」は「電極」に、「アルゴン」は「凝固材料」に、「アルゴン供給源」は「凝固材料の供給を前記中空管状部材に提供するための手段」に、「吸引源」は「真空を存在せしめる手段」にそれぞれ相当することは明らかである。
引用発明の「ハンドピース122の近位端に設けられた排気コネクタ113の近位端に設けられた排気口に接続される吸引源であって、前記ロッド105の端部が吸引されるハンドピース122の端部までほぼ延在することで、ハンドピース122の前記端部の内周面と前記中空管状部材の前記端部の前記外周面との間に位置する空間内に形成されれた真空を存在せしめている」態様は、本願発明の「ハンドピースと前記中空管状部材との間の前記空間に真空を供給するための手段であって、前記中空管状部材の端部が前記真空が適用される前記ハンドピースの端部まで延在することで、前記ハンドピースの前記端部の内周面と前記中空管状部材の前記端部の前記外周面との間に位置する空間内に形成され」ている態様と「ハンドピースと前記中空管状部材との間の前記空間に真空を供給するための手段であって、前記中空管状部材の端部が前記真空が適用される前記ハンドピースの端部までほぼ延在することで、前記ハンドピースの前記端部の内周面と前記中空管状部材の前記端部の前記外周面との間に位置する空間内に形成され」ている限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「外科手術用ペンシルであって、
内側に含有された導管および少なくとも1つの電気接点要素を有するハンドピースと、
導電性材料から構成された中空管状部材であって、前記ハンドピースの全長に沿って延在し、かつ前記ハンドピースのほぼ全長に沿って前記ハンドピースの内周面と前記中空管状部材の外周面との間に空間が存在するように前記導管内に同心状に含有され、および前記少なくとも1つの電気接点要素が前記中空管状部材と接触する、中空管状部材と、
スペーサを介して前記中空管状部材内に沿って同心状に懸吊して接続された電極と、
エネルギー源を前記少なくとも1つの電気接点に接続するための手段と、 凝固材料の供給を前記中空管状部材に提供するための手段と、
前記ハンドピースと前記中空管状部材との間の前記空間に真空を供給するための手段であって、前記中空管状部材の端部が前記真空が適用される前記ハンドピースの端部までほぼ延在することで、前記ハンドピースの前記端部の内周面と前記中空管状部材の前記端部の前記外周面との間に位置する空間内に形成された真空を存在せしめる手段とを含む外科手術用ペンシル。
真空を存在せしめる手段とを含む外科手術用ペンシル。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
中空管状部材の端部とハンドピースの端部との位置関係について、本願発明では、「中空管状部材」が「ハンドピースの全長に沿って延在し」、かつ、「中空管状部材の端部」が「ハンドピースの端部まで延在」しているのに対して、引用発明では、「ロッド105」が「ハンドピース122のほぼ全長に沿って延在」し、かつ「ロッド105の端部」が「吸引されるハンドピース122の端部までほぼ延在」しているとはいえるものの、ロッド105の端部とハンドピース122の端部の正確な位置関係は不明である点(以下、「相違点1」という。)。

2 判断
(1)相違点の検討
上記相違点1について検討すると、ロッド105の端部の位置を吸引されるハンドピース122の端部の位置と一致させること、すなわち、ロッド105をハンドピースの全長に沿って延在させることは、他の部品との関係や製造の精度等を考慮して行い得る設計上の微差であるし、そのことによる格別な効果を見い出せないから、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項の範囲内である。

請求人は、請求書において、「一方で、仮に、請求項1に係るハンドピースを(イ)「handpiece 122」のうち「exhaust connector 113」より先端側の部分と対応づけた場合、hollow rod 105は、排気ポート164まで延在していない。すなわち、hollow rod 105は、「真空が適用される前記ハンドピースの端部まで延在する」ものではなく、請求項1に係る中空管状部材とは相違する。」、「引用文献1は、請求項1に係る発明の上記特徴を開示も示唆もしていない。このため、引用発明1は、切断および凝固中に生成される煙および壊死組織片を手術部位から効率よく排出するという効果を奏することはできない。」((3.3)本願発明と引用発明との対比)と主張する。
当該主張について検討すると、引用文献の「手術部位からの煙や他の流体は、吸引源(図示せず)と排気口164を接続する煙ダクト155を通って除去される。手術部位から煙や他の流体が導管152の口部154とノズル151の先端117との間の環状空間を通って煙ダクト155内に吸引される。」との記載を踏まえると、引用発明において、切断および凝固中に生成される煙等を効率よく排出できるか否かは、導管152の口部154とノズル151の先端117との位置関係により決定されるものであり、ロッド105と排気口164との位置関係が大きな影響を及ぼすとは考えられないから、当該請求人の主張は失当である。

(2)小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-07-01 
結審通知日 2020-07-07 
審決日 2020-09-30 
出願番号 特願2015-561645(P2015-561645)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 利充  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 倉橋 紀夫
莊司 英史
発明の名称 煙の排出を備えたアルゴンビームアシスト電気外科手術用ペンシル  
代理人 森廣 亮太  
代理人 金井 廣泰  

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