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審決分類 審判 全部申し立て 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明  C04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 4号2号請求項の限定的減縮  C04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C04B
管理番号 1371675
異議申立番号 異議2019-700351  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-26 
確定日 2020-12-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6416074号発明「高デンプンおよび高分散剤レベルで形成された石膏ウォールボードの微小構造特徴」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6416074号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?19〕について訂正することを認める。 特許第6416074号の請求項2?7、9、12?19に係る特許を維持する。 特許第6416074号の請求項1、8、10、11に対する特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6416074号の請求項1?19に係る特許についての出願は、2008年(平成20年)9月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年10月2日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2010-528049号の一部を、平成25年6月4日に新たな特許出願とした特願2013-117709号の一部を、平成27年11月6日に新たな特許出願としたものであって、平成30年10月12日にその特許権の設定登録がされ、同年10月31日に特許掲載公報の発行がされたものである。
そして、本件特許の請求項1?19に係る特許に対して、平成31年4月26日付けで、特許異議申立人金澤毅(以下、「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。
その後の経緯(提出書類等)は、概略、以下のとおりである。
令和 1年 7月17日付け 取消理由通知
同年10月21日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年12月 2日 意見書(申立人)
令和 2年 1月24日付け 訂正拒絶理由通知
同年 3月19日 意見書(特許権者)
同年 4月21日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 7月27日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年11月 4日 意見書(申立人)

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年7月27日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
なお、令和1年10月21日付けの訂正請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記固化石膏コアは、水、スタッコ、起泡剤、並びに、紙繊維及び/又はガラス繊維を含むスラリーから形成され、」と記載されているのを
「前記固化石膏コアは、水、スタッコ、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、並びに、紙繊維及び/又はガラス繊維を含むスラリーから形成され、
前記起泡剤は、Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下であり、」に訂正する(請求項2を引用する請求項4?7、9、12?19も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記固化石膏コアは、水、起泡剤、及びスタッコを含むスラリーから形成され、」と記載されているのを
「前記固化石膏コアは、水、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、及びスタッコを含むスラリーから形成され、
前記起泡剤は、Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下であり、」に訂正する(請求項3を引用する請求項4?7、9、12?19も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1から3のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2又は3に記載の」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1から4のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から4のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1から3のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2又は3に記載の」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「前記スラリーは、さらに、アルファ化デンプンを含み、」と記載されているのを削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1から6のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から6のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項8に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項11を削除する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1から11のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7及び9のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項13に
「請求項1から12のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9及び12のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項14に
「請求項1から13のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、12、及び13のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項15に
「請求項1から14のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、及び12から14のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項16に
「請求項1から15のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、及び12から15のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項17に
「請求項1から16のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、及び12から16のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項18に
「請求項1から17のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、及び12から17のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項19に
「請求項1から18のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、及び12から18のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(21)訂正事項21
明細書の段落【0086】に
「少なくとも約50ミクロン以下?約200ミクロン」と記載されているのを
「約50ミクロン?約200ミクロン」に訂正する。

なお、訂正前の請求項4?19は、訂正前の請求項1?3を引用し、これら請求項1?19は一群の請求項を構成するところ、上記訂正事項1?20に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1?19を訂正の単位として請求されたものである。
また、上記訂正事項21に係る明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4号の規定に従い、この一群の請求項1?19を訂正の単位として請求されたものである。

2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1、9、11及び12について
訂正事項1、9、11及び12は、それぞれ、訂正前の請求項1、8、10及び11を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2及び3について
訂正事項2及び3は、それぞれ、訂正前の請求項2及び3のスラリーの組成を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。そして、願書に添付された明細書には、「スタッコ、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、任意によりガラス繊維、および適切な量の石鹸の泡を含む石膏含有スラリーを用いて形成された石膏ウォールボード」(段落【0012】)、「HYONIC 25 ASおよびPFM 33石鹸(・・・)のブレンドを用いた・・・例えば、試験ボード4は、HYONIC 25AS/HYONIC PFM 33の70/30重量/重量ブレンドで調製した。」(段落【0064】)、及び、「HYONIC 25 ASおよびPFM 33石鹸の95/5重量/重量ブレンド。」(段落【0078】の表8欄外)と記載されていることからして、訂正事項2及び3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものである。

(3)訂正事項4?6、8、13?20について
訂正事項4?6、8、13?20は、それぞれ、訂正前の請求項4?7、12?19における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項7について
訂正事項7は、上記訂正事項2及び3によって訂正された請求項2及び3における「アルファ化デンプン・・・を含むスラリー」と重複する記載を削除するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項10について
訂正事項10は、上記訂正事項9によって削除された訂正前の請求項8における選択的引用請求項との引用関係を明らかにするとともに、その選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項21について
訂正事項21は、訂正前の明細書の段落【0086】の「一般に、試験ボードNo.14における気泡間の平均壁厚は、少なくとも約50ミクロン以下?約200ミクロンであった。」との記載における「?」の前の「少なくとも約50ミクロン以下」が不明瞭な記載であるところ、当該記載と対をなす同段落の「対照的に、対照ボードAにおける気泡間の平均壁厚は一般に約20?30ミクロンであった。」との記載における「?」の前が下限値であることに基づき、明瞭な記載に訂正するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?19〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の本件発明
上記第2で検討したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項2?7、9、12?19に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項2?7、9、12?19に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ、「本件発明2」などという。)。

「【請求項2】
2枚のカバーシートの間に配置された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、スタッコ、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、並びに、紙繊維及び/又はガラス繊維を含むスラリーから形成され、
前記起泡剤は、Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下であり、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
前記壁は、走査型電子顕微鏡画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚を有し、
前記気泡は、走査型電子顕微鏡画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下であり、
前記石膏結晶マトリックスは、ASTM C-473に基づいて、前記固化石膏コアの平均コア硬度が少なくとも11ポンド(約5kg)となるように形成されており、
前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m^(3))から35pcf(約560kg/m^(3))である、
ことを特徴とする軽量石膏ボード。
【請求項3】
2枚のカバーシートの間に配置された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、及びスタッコを含むスラリーから形成され、
前記起泡剤は、Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下であり、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
前記壁は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚を有し、
前記気泡は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下であり、
前記石膏結晶マトリックスは、ASTM C-473に基づいて、前記固化石膏コアの平均コア硬度が少なくとも11ポンド(約5kg)となるように形成されており、
前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m^(3))から35pcf(約560kg/m^(3))である、
ことを特徴とする軽量石膏ボード。
【請求項4】
前記軽量石膏ボードの密度は、24pcf(約380kg/m^(3))?35pcf(約560kg/m^(3))である、請求項2又は3に記載の軽量石膏ボード。
【請求項5】
前記軽量石膏ボードの密度は、31pcf(約500kg/m^(3))以下である、請求項2から4のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項6】
前記軽量石膏ボードの密度は、24pcf(約380kg/m^(3))?31pcf(約500kg/m^(3))である、請求項2又は3に記載の軽量石膏ボード。
【請求項7】
前記アルファ化デンプンは、スタッコの重量に基づいて0.5重量%?10重量%の量で存在する、請求項2から6のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項9】
前記ナフタレンスルホン酸分散剤はスタッコの重量に基づいて0.1重量%?3重量%の量で存在する、請求項2から7のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項12】
前記気泡の前記平均孔径は直径で10ミクロンから100ミクロンの間である、請求項2から7及び9のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項13】
前記気泡の前記平均孔径は直径で20ミクロンから100ミクロンの間である、請求項2から7、9及び12のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項14】
前記気泡の前記平均孔径は直径で50ミクロンから100ミクロンの間である、請求項2から7、9、12、及び13のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項15】
前記壁の前記平均壁厚は50ミクロンから200ミクロンの間である、請求項2から7、9、及び12から14のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項16】
前記壁の前記平均壁厚は70ミクロンから120ミクロンの間である、請求項2から7、9、及び12から15のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項17】
前記壁は、走査型電子顕微鏡画像を用いて孔径を計測したとき、(i)100ミクロン超の直径の孔径を有する気泡、(ii)50ミクロン?100ミクロンの直径の孔径を有する気泡、及び(iii)50ミクロン未満の直径の孔径を有する気泡を画定する、請求項2から7、9、及び12から16のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項18】
前記固化石膏コアは、0.7?1.3の範囲の水/スタッコ比を用いて形成される、請求項2から7、9、及び12から17のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項19】
前記軽量石膏ボードは、1/2インチ(約1.3cm)の厚さの前記軽量石膏ボードで、1000lb/MSF(約5kg/m^(2))?1400lb/MSF(約6.8kg/m^(2))の乾燥重量を有する、請求項2から7、9、及び12から18のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。」

2 取消理由(決定の予告)の概要について
訂正前の請求項2?7、9、12?19に係る発明に対して、令和2年4月21日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

(1)取消理由1
訂正前の請求項3には、「前記壁は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚を有し、前記気泡は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下であり」と記載されているところ、願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当該平均膜厚及び気泡直径は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて、具体的にどのような手順で壁厚及び気泡直径を測定して算出した数値であるのか明らかでない。
よって、訂正前の請求項3に係る発明及びこれを引用する同請求項4?7、9、12?19に係る発明は明確でないから、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)取消理由2
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】、【0012】及び【0015】の記載からみて、石膏ウォールボードが実施例の微細構造及び特性を有するためには、石膏スラリーに、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸及びトリメタリン酸ナトリウムを含有することが重要といえるから、発明の詳細な説明の実施例に基づき、「水、スタッコ、及び起泡剤を含むスラリー」が、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸及びトリメタリン酸ナトリウムを含有することを特定しない訂正前の請求項2?7、9、12?19に係る発明にまで拡張又は一般化できない。
よって、訂正前の請求項2?7、9、12?19に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(3)取消理由3
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0086】の「試験ボードNo.14における気泡間の平均壁厚は、少なくとも約50ミクロン以下?約200ミクロンであった。」との記載は、試験ボードNo.14の気泡間の平均壁厚が、約50?200μmの範囲であることを示しているのかどうかが明らかでないため、発明の詳細な説明の記載は、当業者が訂正前の請求項2?7、9、12?19に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
したがって、訂正前の請求項2?7、9、12?19に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(4)取消理由4
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0084】の「実施例8と同様に、試験ボードNo.14を調製するためのプラント試験からのキャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)を走査電子顕微鏡検査(SEM)により分析した。」との記載における「試験ボードNo.14」と「キャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)」との関係が明らかでないため、発明の詳細な説明の記載は、当業者が訂正前の請求項2?7、9、12?19に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
したがって、訂正前の請求項2?7、9、12?19に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(5)取消理由5
訂正前の請求項2?7、9、12?19に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、または、下記の引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、訂正前の請求項2?7、9、12?19に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。

(引用文献一覧)
引用文献1:米国特許出願公開第2007/0048490号明細書
(甲第1号証)
引用文献2:米国特許第6342284号明細書
引用文献3:米国特許第6632550号明細書

3 引用文献の記載事項について
(1)引用文献1の記載事項
ア 「[0010] Gypsum wallboard made in accordance with the invention has high strength, yet much lower weight than conventional wallboards. ・・・」
(当審仮訳:[0010]本発明により製造される石膏ウォールボードは、従来のウォールボードより遙かに軽量にもかかわらず強さは大きい。・・・)
イ 「[0023] The rehydration of calcium sulfate hemihydrate (stucco) and consequent hardening requires a specific, theoretical amount of water (1 1/2 moles water/mole of stucco) to form calcium sulfate dihydrate crystals. However, the commercial process generally calls for excess water. This excess process water produces evaporative water voids in the gypsum crystal matrix which are generally substantially irregular in shape, and also are linked to other water voids, forming irregular channels in a generally continuous network between set gypsum crystals. In contrast, air (bubble) voids are introduced into the gypsum slurry using soap foam. The air voids are generally spherical/round in shape, and also are generally separated from other air voids and thus generally discontinuous. The water voids can be distributed within the walls of the air voids (see, for example, FIGS. 8-10).」
(当審仮訳:[0023]硫酸カルシウム半水和物(スタッコ)の再水和およびその結果の硬化は、硫酸カルシウム2水和物の結晶を形成するために、特定の理論量の水(スタッコ1モルあたり1-1/2モルの水)を要する。しかし、工業上のプロセスは、一般に過剰の水を必要とする。この過剰のプロセスの水は、石膏結晶マトリックス中に蒸発性の水空隙を生じ、それらは、一般に実質的に不規則な形状をとり、そしてまた他の水空隙と結合し、硬化石膏結晶間のほぼ連続的な網状構造中に不規則なチャンネルを形成する。逆に、空気(気泡)空隙は、石けんフォームを使用して石膏スラリー中に導入される。空気空隙は、一般に、形状が球状かまたは円く、そしてまた一般に他の空気空隙から離れており、従って一般に不連続である。水空隙は、空気空隙の壁内に分布している(例えば図8-10参照)。)
ウ 「EXAMPLE 1
[0049] Sample Gypsum Slurry Formulations
[0050] Gypsum slurry formulations are shown in Table 1 below. All values in Table 1 are expressed as weight percent based on the weight of dry stucco. Values in parentheses are dry weight in pounds (lb/MSF).


(当審仮訳:実施例1
[0049]サンプル石膏スラリー配合物
[0050]石膏スラリー配合物が以下の表1に示されている。表1中のすべての値は、乾燥スタッコの重量に基づく重量パーセントとして表記されている。括弧中の値は、ポンドでの乾燥重量(lb/MSF)である。

)
エ 「EXAMPLE 2
[0051] Preparation of Wallboards
[0052] Sample gypsum wallboards were prepared in accordance with U.S. Pat. No. 6,342,284 to Yu et al. and U.S. Pat. No. 6,632,550 to Yu et al., herein incorporated by reference. This includes the separate generation of foam and introduction of the foam into the slurry of all of the other ingredients as described in Example 5 of these patents.」
(当審仮訳:実施例2
[0051]ウォールボードの調製
[0052]サンプル石膏ウォールボードを、本明細書において参照により援用される、Yuらの米国特許第6342284号明細書及びYuらの米国特許第6632550号明細書に準拠して調製した。これらの特許の実施例5に記載されている、個別の泡の発生及び他の処方成分のすべてスラリーへの泡の導入が含まれる。)
オ 「EXAMPLE 6
[0067] 1/2 Inch Ultra-Light Weight Gypsum Wallboard Plant Production Trials
[0068] Further trials were performed (Trial Boards 3 and 4) using Formulation B (Example 1) as in Example 2, except that the pregelatinized corn starch was prepared with water at 10% concentration (wet starch preparation) and a blend of HYONIC 25 AS and PFM 33 soaps (available from GEO Specialty Chemicals, Lafayette, Ind.) was used. For example, Trial Board 3 was prepared with a blend of HYONIC 25 AS and PFM 33 ranging from 65-70% by weight of 25 AS, and the balance PFM 33. For example, Trial Board 4 was prepared with a 70/30 wt./wt. blend of HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33. The trial results are shown in Table 6 below.


(当審仮訳:実施例6
[0067]1/2インチ超軽量石膏ウォールボードプラント製造試験
[0068]さらなる試験(試験ボード3および4)を、配合物B(実施例1)を用いて、アルファ化コーンデンプンを10%濃度(湿潤デンプン調製)に水で調製すると共に、HYONIC 25 AS及びPFM 33石鹸(Lafayette,IndianaのGEO Specialty Chemicals製)のブレンドを用いたこと以外は、実施例2のとおり実施した。例えば、試験ボード3を、65?70重量%の範囲のHYONIC 25 ASでのHYONIC 25 AS及びPFM 33のブレンドと、残量のPFM 33とで調製した。例えば、試験ボード4は、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33の70重量/30重量ブレンドで調製した。試験結果が以下の表6に示されている。

)
カ 「EXAMPLE 7
[0070] Percentage Void Volume Calculation in 1/2 Inch Thick Gypsum Wallboard Core As A Function of Board Weight and Saw Cutting Results
[0071] Further trials were performed in order to determine void volumes and densities (Trial Boards No. 5 to 13) using Formulation B (Example 1) as in Example 2, except that the pregelatinized corn starch was prepared with water at 10% concentration (wet starch preparation), 0.5% glass fiber was used, and naphthalenesulfonate (DILOFLO) was used at a level of 1.2% by weight as a 45% aqueous solution. Soap foam was made using a soap foam generator and introduced into the gypsum slurry in an amount effective to provide the desired densities. In the present example, soap was used at a level from 0.25 lb/MSF to 0.45 lb/MSF. That is, the soap foam usage was increased or decreased as appropriate. In each sample, the wallboard thickness was 1/2 inch, and the core volume was assumed to be uniform at 39.1 ft^(3)/MSF. Void volumes were measured across 4 ft wide wallboard samples from which the front and back paper was removed. The front and back papers can have a thickness in the range 11-18 mil (each side). Void volumes/pore sizes and pore size distribution were determined by scanning electron microscopy (see Example 8 below) and X-ray CT-scanning technology (XMT).


(当審仮訳:実施例7
[0070]ボード重量及び鋸での切断結果の関数としての1/2インチ厚石膏ウォールボードコアにおける気泡容積割合計算
[0071]さらなる試験を、気泡容積及び密度(試験ボードNo.5?13)を測定するために、配合物B(実施例1)を用いて、アルファ化デンプンを10%濃度(湿潤デンプン調製)に水で調製し、0.5%ガラス繊維を用い、及びナフタレンスルホン酸(DILOFLO)を45%水溶液として1.2重量%のレベルで用いたこと以外は実施例2のとおり実施した。石鹸の泡発生機を用いて石鹸泡を形成し、所望の密度をもたらすために効果的な量で石膏スラリー中に導入した。本実施例において、石鹸は、0.25 lb/MSF?0.45 lb/MSFのレベルで用いた。すなわち、石鹸の泡の使用量は適切に増減した。各サンプルにおいて、ウォールボード厚は1/2インチであると共にコア容積は、39.1ft^(3)/MSFで均一であると仮定した。気泡容積を、表紙及び裏紙を除去した4ft幅のウォールボードサンプルにわたって計測した。表紙及び裏紙は、11?18milの範囲の厚さを有することが可能である(各面)。気泡容積/孔径及び孔径分布は、走査電子顕微鏡検査(以下の実施例8を参照のこと)及びX線CTスキャンテクノロジー(XMT)により測定した。

)
キ 「EXAMPLE 8
[0074] Determination of Air Bubble Void Sizes and Water Void Sizes in Trial Board No. 10, and Gypsum Cryst al Morphology
[0075] Cast gypsum cubes (2 inch×2 inch×2 inch) from the plant trial to prepare Trial Board No. 10 were analyzed by scanning electron microscopy (SEM). Air bubble voids and evaporative water voids were observed and measured, as well as gypsum crystal size and shape.
[0076] Three sample cubes were made and labeled 11:08, 11:30, and 11:50, respectively. FIGS. 1 to 3 illustrate the air bubble void sizes and distribution for each sample at 15×magnification. FIGS. 4 to 6 illustrate the air bubble void sizes and distribution for each sample at 50×magnification.
[0077] At higher magnifications, water voids were observed, for example in the generally substantially larger air bubble void walls, as shown in FIGS. 7 to 10 for sample cube 11:50, up to 10,000× magnification. Almost all of the gypsum crystals were needles; few platelets were observed. The density and packing of the needles varied on the surfaces of the air bubble voids. Gypsum needles were also observed in the water voids in the air bubble void walls.」
(当審仮訳:実施例8
[0074]試験ボードNo.10におけるエアバブル気泡サイズ及び水泡サイズの測定、並びに、石膏結晶形態学
[0075]試験ボードNo.10を準備するためのプラント試験からのキャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)を走査型電子顕微鏡(SEM)により分析した。気泡の空隙及び気化した水の空隙が観察され、石膏の結晶の大きさ及び形状が測定された。
[0076]3つのサンプルキューブを形成し、それぞれに、11:08、11:30、及び11:50とラベルを付した。FIG.1?3は、エアバブル気泡サイズ及び各サンプルについての分布を15×倍率で示す。FIG.4?6は、エアバブル気泡サイズ及び各サンプルについての分布を50×倍率で示す。
[0077]高い倍率で、例えば10000倍の倍率でサンプルキューブ11.50について図7-10で示されるように、一般に実質的に大きな気泡の空隙壁で水空隙が観察された。殆どすべての石膏結晶は針状であり、小板は殆ど観察されなかった。針状物の密度および詰め込みは、気泡空隙の表面で変化した。石膏の針状物は、また気泡空隙の壁の水空隙で観察された。)
ク 「1. A low dusting gypsum wallboard comprising:
a set gypsum core formed between two substantially parallel cover sheets, the set gypsum core having a total void volume from about 75% to about 95%.」(特許請求の範囲)
(当審仮訳:1.実質的に平行な2枚のカバーシート間に形成され、全空隙体積の割合が約75%?約95%である固化石膏コアを含む低ダスト石膏ウォールボード。)
ケ 「


(上記イ及びキの記載を踏まえると、石膏結晶マトリックスは、気泡(空気間隙)及び気泡(空気間隙)を画定し隔てる壁を有していることが見て取れる。)

4 取消理由(決定の予告)の検討
(1)取消理由1について
乙第1号証(J.D. Miller et al., MINERALS & METALLURGICAL PROCESSING, 2004年, Vol.21, No.3, p.113-124)には、石炭粒子の充填粒子層に対する三次元X線コーンビームマイクロCTによる三次元解析について、乙第2号証(Alvaro Videla et al., Particle & Particle Systems Characterization, 2006年, Vol.23, p.237-245)には、石炭粒子などの充填層に対するコーンビームマイクロトモグラフィー解析について、乙第9号証(Andreas Kayser et al., Oilfield Review, 2006年, Vol.18, No.1, p.4-13)には、岩石サンプル等のμCT技術について、それぞれ記載されていることからして、鉱物のX線CTスキャンテクノロジー(XMT)測定及び解析方法は、本件特許に係る特許出願の優先日時点での周知技術といえるから、石膏ボードの内部構造をXMT測定及び解析することも周知技術であったと推認できる。
また、測定手法や測定条件等による測定結果のずれを防止するために、基準試料を用いた校正処理を行うことは一般的に行われていることである。
そうしてみると、本件特許明細書には、石膏ボードの内部構造の具体的なXMT測定及び解析方法が記載されていないものの、その方法は、周知技術であるXMT測定及び解析方法を用いて、基準試料を用いた校正処理を行うと共に、本件特許明細書の段落【0084】、【0089】及び【0090】に記載された走査型電子顕微鏡画像を用いた測定及び解析手順に準じて実施されたものとみるのが自然である。
よって、取消理由1は理由がない。

(2)取消理由2について
本件発明2及び3の「スラリー」は、それぞれ、「水、スタッコ、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、並びに、紙繊維及び/又はガラス繊維を含むスラリー」及び「水、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、及びスタッコを含むスラリー」に訂正され、本件発明2?7、9、12?19における「スラリー」は、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸及びトリメタリン酸ナトリウムを含有することが特定された。
よって、取消理由2に理由はない。

(3)取消理由3について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0086】は、「試験ボードNo.14における気泡間の平均壁厚は、約50ミクロン?約200ミクロンであった。」と訂正され、試験ボードNo.14の気泡間の平均壁厚が、約50?200μmの範囲であることが明らかになった。
よって、取消理由3に理由はない。

(4)取消理由4について
発明の詳細な説明の段落【0084】の「実施例8と同様に、試験ボードNo.14を調製するためのプラント試験からのキャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)を走査電子顕微鏡検査(SEM)により分析した。」との記載における「キャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)」は、段落【0056】?【0057】、【0071】?【0074】のキャスト石膏キューブに関する記載からして、「試験ボードNo.14」から直接得たものでなく、「試験ボードNo.14」を調製するため「プラント配合物試験14」から、2インチ×2インチ×2インチの金型を用いて形成したものとみるのが自然であり、「試験ボードNo.14」と「キャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)」との関係は明確といえる。
よって、取消理由4に理由はない。

(5)取消理由5について
ア 引用文献1に記載された発明(引用1発明)について
上記3(1)ア?エ、カ?ケに摘示した記載事項を、表7の試験ボードNo.10に注目して整理すると、引用文献1には、
「2枚のカバーシートの間に形成された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、スタッコ、石鹸、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸、トリメタリン酸ナトリウム、ガラスファイバーを含み、スコットの重量に基づく重量%として、石鹸が0.03重量%、アルファ化デンプンが6.4重量%、ナフタレンスルホン酸が0.58重量%、トリメタリン酸ナトリウムが0.30重量%であり、水/スコット比が1.21である石膏スラリー配合物から形成され、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
ウォールボード厚が1/2インチであり、ボードの単位面積当たりの重量が1000 lb/MSFである軽量石膏ボード。」
の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているものと認められる。

イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と引用1発明との対比
引用1発明の「石鹸」、「ガラスファイバー」、「石膏スラリー配合物」は、それぞれ、本件発明2の「起泡剤」、「紙繊維及び/又はガラス繊維」、「スラリー」に相当する。
また、引用1発明の軽量石膏ボードの「ウォールボード厚が1/2インチであり、ボードの単位面積当たりの重量が1000 lb/MSFである」ことは、「密度」に換算すると、24pcf(=(1000 lb/1000ft^(2))/(1/24ft))となるから、本件発明2の「前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m^(3))から35pcf(約560kg/m^(3))である」ことを満足する。
したがって、本件発明2と引用1発明とは、
「2枚のカバーシートの間に配置された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、スタッコ、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、並びに、紙繊維及び/又はガラス繊維を含むスラリーから形成され、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m^(3))から35pcf(約560kg/m^(3))である、軽量石膏ボード」
である点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
本件発明2の起泡剤は、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」であるのに対して、引用1発明の石鹸は、具体的な成分が明らかでない点。
(相違点2)
本件発明2の壁は、「走査型電子顕微鏡画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚」であるのに対して、引用1発明の壁は、壁厚が明らかでない点。
(相違点3)
本件発明2の気泡は、「走査型電子顕微鏡画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下」であるのに対して、引用1発明の気泡は、大きさが明らかでない点。
(相違点4)
本件発明2の固化石膏コアは、「ASTM C-473に基づいて」、「平均コア硬度が少なくとも11ポンド(約5kg)」であるのに対して、引用1発明の固化石膏コアは、平均コア硬度が明らかでない点。

(イ)相違点の検討
まず、相違点1について検討すると、引用文献1には、上記3(1)オに摘示したとおり、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33が65重量/35重量の石鹸ブレンド、及び、同70重量/30重量の石鹸ブレンドを用いることが記載されているものの、引用1発明の石鹸が、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」である起泡剤であるといえないから、上記相違点1は実質的なものである。
次に、当該相違点1に係る本件発明2の特定事項の容易想到性について検討すると、引用文献1?3には、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33が70重量/30重量を超える石鹸ブレンドを使用することは記載されていなし、また、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33のブレンド割合を調整するとの技術思想も記載されていないから、引用1発明において、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」である起泡剤を使用することは、当業者が容易に想到できたものといえない。
したがって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明2は、引用文献1に記載された発明といえず、また、引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)申立人の主張について
申立人は、引用文献1に、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33が70重量/30重量の石鹸ブレンドを用いることが記載されていることを根拠にして、引用1発明の石鹸は、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」である起泡剤を用いている蓋然性が高いこと、及び、仮にそうでないとしても、引用1発明の石鹸として、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」である起泡剤を用いていることは、当業者であれば適宜なし得る設計事項に過ぎない旨を主張している(令和2年11月4日付け意見書(申立人)第6頁下から4行?第7頁下から2行)。
しかしながら、上記(イ)で検討したとおり、引用文献1には、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33が70重量/30重量を超える石鹸ブレンドを使用することは記載されていなし、また、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33のブレンド割合を調整するとの技術思想も記載されていないから、上記主張は採用できない。

ウ 本件発明3について
(ア)本件発明3と引用1発明との対比
引用1発明の「石鹸」、「石膏スラリー配合物」は、それぞれ、本件発明3の「起泡剤」、「スラリー」に相当する。
また、引用1発明の軽量石膏ボードの「ウォールボード厚が1/2インチであり、ボードの単位面積当たりの重量が1000 lb/MSFである」ことは、上記イ(ア)で検討したとおり、「密度」に換算すると、24pcfとなるから、本件発明3の「前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m^(3))から35pcf(約560kg/m^(3))である」を満足する。
したがって、本件発明3と引用1発明とは、
「2枚のカバーシートの間に配置された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、及びスタッコを含むスラリーから形成され、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m^(3))から35pcf(約560kg/m^(3))である、軽量石膏ボード」
である点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点5)
本件発明3の起泡剤は、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」であるのに対して、引用1発明の石鹸は、具体的な成分が明らかでない点。
(相違点6)
本件発明3の壁は、「X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚」であるのに対して、引用1発明の壁は、壁厚が明らかでない点。
(相違点7)
本件発明3の気泡は、「X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下」であるのに対して、引用1発明の気泡は、大きさが明らかでない点。
(相違点8)
本件発明3の固化石膏コアは、「ASTM C-473に基づいて」、「平均コア硬度が少なくとも11ポンド(約5kg)」であるのに対して、引用1発明の固化石膏コアは、平均コア硬度が明らかでない点。

(イ)相違点の検討
まず、相違点5について検討すると、当該相違点5は、上記イ(イ)において検討した相違点1と同じ事項であるから、当該相違点1と同様に、相違点5は実質的なものであるし、また、相違点5に係る本件発明3の特定事項は容易想到の事項ということはできない。
したがって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明3は、引用文献1に記載された発明といえず、また、引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

エ 本件発明4?7、9、12?19について
本件発明4?7、9、12?19は、本件発明2又は3を引用するものであって、本件発明2又は3の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記イ及びウと同様の理由により、引用文献1に記載された発明といえず、また、引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

オ 小括
以上の検討のとおりであるから、取消理由5に理由はない。

5 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反に係る申立理由について
申立人は、発明の詳細な説明の実施例12において、試験ボード14の壁厚の平均値は、段落【0090】の手法により一意に定まるはずなのに、「少なくとも50ミクロン以下?200ミクロン」(段落【0086】)と記載されており、平均壁厚が正しく測定評価されていないため、試験ボード14が、発明の詳細な説明に記載された「ボード重量を軽量化しながら石膏ウォールボードの強度を高める」(段落【0008】)との課題(以下、「本件課題」という。)を解決できるか明らかでないし、また、試験ボード14が本件課題を解決できたとしても、訂正前の請求項2及び3に係る発明の特定事項を充足することにより、本件課題を解決できる合理的な理由も示されていないため、同請求項2?7、9、12?19に係る発明にまで拡張又は一般化できるとは認められないから、同請求項2?7、9、12?19に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたものである旨を主張している(特許異議申立書第12頁第6行?第13頁第9行、第57頁下から6行?第60頁下から5行)。
この点について検討するに、発明の詳細な説明の段落【0084】には、「試験ボードNo.14を調製するためのプラント試験からのキャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)を走査電子顕微鏡検査(SEM)により分析した。」と記載され、この「キャスト石膏キューブ」は、上記4(4)で検討したとおり、「試験ボードNo.14」を調製するため「プラント配合物試験14」から金型を用いて別途形成したものといえるから、段落【0086】に記載された「試験ボードNo.14における気泡間の平均壁厚は、約50ミクロン?約200ミクロンであった。」とは、試験ボードNo.14とは別に形成された複数のキャスト石膏キューブのそれぞれの平均壁厚が約50ミクロン?約200ミクロンの範囲内であったことを示しているものといえる。
したがって、試験ボード14の壁厚は正しく測定評価されているといえるから、試験ボード14は、本件課題を解決できたものといえる。
次に、試験ボード14から本件発明2?7、9、12?19への拡張又は一般化について検討する。
発明の詳細な説明には、コア硬度のASTM規格が11 lbであること(段落【0065】の表6欄外の付記b)や、通常の対照ボードのボード重量が1587 lb/MSF(石膏ボード密度は約38pcf)であること(段落【0049】の表2)が記載されていることからして、本件発明2及び3の固化石膏コアの平均コア硬度が11ポンド(約5kg)以上であり、軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m^(3))から35pcf(約560kg/m^(3))であれば、試験ボード14と同様に、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、発明の詳細な説明には、「スタッコ、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、任意によりガラス繊維、および適切な量の石鹸の泡を含む石膏含有スラリーを用いて形成された石膏ウォールボードは大きい気泡容積をもたらし、ここで、気泡を囲う(従って、気泡の間の)壁は、実質的により厚いと共に強化された表面を有し、従って、従来のウォールボード中に見られる気泡よりも強いことが予想外に見出された。大きい気泡容積はボード密度および重量を低減させると共に、より厚い強化された壁は、固化石膏コアの微小構造を強化することによってウォールボードをより強くする。」(段落【0012】)ことが記載されていることからして、固化石膏コアを形成するためのスラリー組成、起泡剤の種類と混合割合、及び、結晶マトリックス内の気泡の孔径や気泡間の平均壁厚は、固化石膏コアの平均コア硬度及び軽量石膏ボードの密度に関連する事項といえるから、起泡剤の混合割合、気泡の孔径、あるいは、気泡間の平均壁厚が、試験ボード14と異なる値であったとしても、固化石膏コアの平均コア硬度、及び、軽量石膏ボードの密度が、本件発明2又は3の数値範囲内であれば、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
そうしてみると、本件発明2?7、9、12?19は、試験ボード14から拡張又は一般化できたものと当業者が認識できるものである。
よって、申立人の主張する上記申立理由に理由はない。

(2)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反に係る申立理由について
申立人は、訂正前の請求項2に係る発明で規定する「平均膜厚」の測定方法は、本件特許明細書段落【0090】に記載されているものの、同段落の「顕微鏡写真の水平縁部および垂直縁部」がどこを示しているのか明らかでないし、また、走査型電子顕微鏡で撮影する断面の位置や、走査型電子顕微鏡の機種の違いによる視野の広さにより、気泡及び気泡間の壁の大きさや数が大きく変化して、「平均膜厚」が変動するため、これら条件を特定しない訂正前の請求項2に係る発明は明確といえないから、訂正前の請求項2、4?7、9、12?19に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたものである旨を主張している(特許異議申立書第14頁第12?18行、第63頁下から4行?第64頁第25行)。
この点について検討するに、上記「顕微鏡写真の水平縁部および垂直縁部」は、例えば、図14の50×倍率での走査型電子顕微鏡写真の上下左右のそれぞれの端部を示していることは明らかである。
また、石膏ボードにおける気泡及び気泡間の壁の大きさや数は、巨視的に均一に分布しているものであるから、断面の位置や視野の広さによって、「平均膜厚」は変動するものといえないし、さらに、微視的に不均一に分布しているとしても、本件特許明細書段落【0090】の方法では、無作為な位置で撮影した10枚の走査型電子顕微鏡写真を用いて「平均膜厚」を算出しているから、断面の位置や視野の広さが「平均壁厚」に影響するともいえない。
よって、申立人の主張する上記申立理由に理由はない。

(3)特許法第36条第4項第1号所定の規定違反に係る申立理由について
申立人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、石膏結晶マトリックスに含まれる気泡を画定し隔てる壁の「平均膜厚」の具体的な制御方法が開示されておらず、訂正前の請求項2?7、9、12?19に係る発明を当業者が実施できる程度に記載されていないから、同請求項2?7、9、12?19に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたものである旨を主張している(特許異議申立書第14頁下から3行?第15頁第8行、第64頁下から3行?第65頁第16行)。
この点について検討するに、発明の詳細な説明に記載された試験ボード14(実施例10?12)と試験ボード10(実施例7、8)の走査型電子顕微鏡写真(図14と図4?6)を比較すれば、石膏結晶マトリックス内の壁の「平均膜厚」は、起泡剤の種類や混合割合によって制御できると当業者であれば認識できるから、申立人の主張する上記申立理由に理由はない。

(4)特許法第17条の2第3項所定の規定違反に係る申立理由について
申立人は、平成30年3月5日付けで手続補正された請求項2及び3の「前記気泡」が「(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下であ」るとの特定事項は、本件特許の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に明示的に記載されたものでなく、また、自明な事項ともいえないから、訂正前の請求項2?7、9、12?19に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしてない補正をした特許出願に対してされたものである旨を主張している(特許異議申立書第17頁第6?14行、第68頁第5行?第71頁下から2行)。
この点について検討するに、上記特定事項の「大多数」が、広辞苑によれば、「ほとんど全てといってよいほどの多い数。または半数以上」を意味していることから、上記特定事項は、直径が100ミクロン以下の気泡が半数以上から100%付近であることを示しているといえる。
そして、本件特許の願書に最初に添付された明細書の段落【0022】には、「平均気泡(バブル)サイズは直径約100ミクロン未満であることが好ましい。」と記載され、当該記載の「平均気泡(バブル)サイズは直径約100ミクロン未満である」ことには、気孔分布における直径100ミクロン以下の気孔の割合が半数付近であることから100%付近であることまでを含むものであるから、上記特定事項は、本件特許の願書に最初に添付した明細書特許請求の範囲及び図面に記載した事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、申立人の主張する上記申立理由に理由はない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項2?7、9、12?19に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項2?7、9、12?19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1、8、10及び11に係る特許に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高デンプンおよび高分散剤レベルで形成された石膏ウォールボードの微小構造特徴
【技術分野】
【0001】
この出願は2006年11月2日出願の米国特許出願第11/592,481号明細書の一部継続出願であって、これは2006年6月7日出願の米国特許出願第11/449,177号明細書の一部継続出願であって、および、これはまた、2006年6月2日出願の米国特許出願第11/445,906号明細書の一部継続出願であって、これらの各々は、2005年6月9日に出願の米国仮特許出願第60/688,839号明細書の利益を主張する。前述の特許出願の各々の全開示は、参照により本明細書に援用されている。
【0002】
本発明は、強化高密度化表面を備える著しく厚い壁を有する大型の気泡を含む微小構造を有する軽量石膏ウォールボードに関する。本発明はまた、この微小構造を有する軽量ウォールボードを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
石膏(硫酸カルシウム二水和物)は、一定の特性により、石膏ウォールボードなどの工業製品および建築製品の形成における使用にきわめて一般的とされている。石膏は豊富であると共に一般に安価な原料であり、これは、脱水プロセスおよび再水和プロセスを介して、有用な形状に、キャストされ、成形され、または、他の方法で形成されることが可能である。石膏ウォールボードおよび他の石膏製品が形成される基材は、硫酸カルシウム(CaSO_(4)・2H_(2)O)の二水和物形態の熱転換により1-1/2水分子が除去されて製造される、通例「スタッコ」と呼ばれる硫酸カルシウム(CaSO_(4)・1/2H_(2)O)の半水和物形態である。
【0004】
石膏ウォールボードなどの従来の石膏含有製品は低価格および易加工性などの多くの利点を有するが、製品が切断またはドリルされると相当量の石膏粉塵が生成される可能性がある。このような製品の形成に用いられるスラリーにおける処方成分としてデンプンを用いる石膏含有製品の形成において種々の改良が達成されてきている。のりのようなアルファ化デンプンは、石膏ウォールボードを含む石膏含有製品の曲げ強さおよび圧縮強度を高めることが可能である。公知の石膏ウォールボードがデンプンを約10lbs/MSF未満のレベルで含有する。
【0005】
スラリーの適切な流動性を確保するために、アルファ化デンプンを含有する石膏スラリー中において相当量の水を用いる必要もある。残念ながら、この水のほとんどは最終的には乾燥により除去されなければならず、これは、乾燥プロセスにおいて用いられる燃料のコストが高いために費用がかかる。この乾燥ステップはまた長い時間を要する。ナフタレンスルホン酸分散剤の使用はスラリーの流動度を高めることが可能であり、それ故、水要求量の問題が克服されることが見出された。加えて、使用レベルが十分に高い場合には、ナフタレンスルホン酸分散剤はアルファ化デンプンと架橋して、乾燥後に石膏結晶に一緒に結合することが可能であり、それ故、石膏複合体の乾燥強度を高めることが可能であることもまた見出された。それ故、アルファ化デンプンとナフタレンスルホン酸分散剤との組み合わせは、固化した石膏結晶を一緒に結合するのり様効果をもたらす。トリメタリン酸塩は、石膏スラリーの水要求量に影響を与えると過去においては認識されていない。しかしながら、本発明者らは、特定の分散剤の存在下にトリメタリン酸塩のレベルをこれまで知られていないレベルにまで高めることで、高デンプンレベルの存在下であっても予想外に少ない水の量で適切なスラリー流動性を達成することが可能となることを発見した。これは、次いで、乾燥のための燃料使用量が低減され、ならびに、その後の水除去プロセスステップに関連するプロセス時間が短縮されるために、当然のことながら非常に望ましい。それ故、本発明者らはまた、石膏ボードの乾燥強度は、ウォールボードの形成に用いられるスラリーにおいて、ナフタレンスルホン酸分散剤をアルファ化デンプンと組み合わせて用いることにより増大させることが可能であることも発見した。
【0006】
本発明の石膏ウォールボードは、表面板を有さない吸音板またはタイルとは区別されるべきである。また、本発明のウォールボードは、ポリスチレンを軽量凝集体として含む吸音板またはタイルとは区別されるべきである。重要なことに、前述の吸音板およびタイルは、石膏ウォールボードに適用されるASTM規格の多くに適合しない。例えば、公知の吸音板は、本発明のものを含む石膏ウォールボードに要求される曲げ強さは有さない。反対に、吸音板またはタイルをASTM規格に適合させるためには、吸音板またはタイルの露出した表面が、石膏ウォールボードには望ましくないであろう中空の気泡または凹部を有することが求められ、釘引抜き耐性および表面硬度特性に悪影響を及ぼすであろう。
【0007】
粉塵の発生が、すべてのウォールボードを設置する際の潜在的な問題である。石膏ウォールボードが、例えば、切断、鋸引き、ルータ加工、スナッピング、釘打あるいはねじ込み、またはドリリングにより加工される場合、相当の量の石膏粉塵が発生する可能性がある。本開示の目的に関して、「粉立(dusting)」および「粉塵発生」とは、例えば、ウォールボードの切断、鋸引き、ルータ加工、けがき/スナッピング、釘打あるいはねじ込み、またはドリリングによる石膏含有製品の加工の最中の、風媒性の粉塵の周囲の作業空間への放出を意味する。加工はまた、一般に、通常のボードの取り扱いを含むことが可能であり、輸送、運搬および設置中のボードの偶発的なスナッピングおよびガウジングで生じる粉塵が含まれる。このような粉塵発生が顕著に低減された低密度ウォールボードを製造するための方法を見出すことができれば、これは、技術分野に対する特に有用な寄与を表すであろう。
【0008】
しかも、ボード重量を軽量化しながら石膏ウォールボードの強度を高める方法を見出すことができれば、これもまた、技術分野に対する特に有用な寄与となろう。公知のウォールボード製品中の気泡は、気泡間の壁厚が平均約20?30ミクロンであって比較的薄い壁を有する。増大された厚さの壁および強化高密度化表面、従って、高い壁強度を有する気泡を含む微小構造を有する、新規のジャンルの石膏ウォールボードを提供することが可能であれば、当該技術分野に対する重要で、かつ、有用な寄与がなされるであろう。さらに、気泡間の壁の厚さおよび表面密度を増加させながら気泡サイズを大きくして、高い強度および取り扱い特性を有する低密度ウォールボードを製造する方法を見出すことができれば、これは、技術分野に対するさらに他の重要な寄与を表すこととなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般に、2枚の実質的に平行なカバーシートの間に形成された固化石膏コアを含む軽量石膏ウォールボードを含み、固化石膏コアは、少なくとも約30ミクロン?約200ミクロンの平均厚および強化高密度化表面を有する壁を備える、固化石膏コア全体にわたって分散された気泡を有する。固化石膏コアは、水、スタッコ、スタッコの重量に基づいて約0.5重量%?約10重量%の量で存在するアルファ化デンプン、スタッコの重量に基づいて約0.2重量%?約2重量%の量で存在するナフタレンスルホン酸分散剤、スタッコの重量に基づいて約0.1重量%?約0.4重量%の量で存在するトリメタリン酸ナトリウム、および任意により、スタッコの重量に基づいて約0.2重量%以下の量で存在するガラス繊維を含む石膏含有スラリーから形成されている。最後に、石鹸の泡が、約27pcf?約30pcfの固化石膏コア密度をもたらすために効果的な量で存在するであろう。「pcf」という用語は、1立方フィート当たりのポンド(lb/ft^(3))として定義される。
【0010】
本発明に基づいて形成された石膏ウォールボードは、高い強度を有しながら、従来のウォールボードよりもかなり軽い重量を有する。加えて、本発明の実施形態に基づいて形成された軽量石膏ウォールボードは、ウォールボードコアの微小構造を一緒に強化する強化された表面を有する著しく厚い壁を有する大型の気泡を有し、際立った強度および取り扱い特性を有するウォールボードを提供することが見出された。加えて、際立った強度および取り扱い特性を有するこのような軽量石膏ボードの形成方法を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態を示す15×倍率でのキャスト石膏キューブサンプル(11:08)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態を示す15×倍率でのキャスト石膏キューブサンプル(11:30)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態を示す15×倍率でのキャスト石膏キューブサンプル(11:50)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態を示す50×倍率でのキャスト石膏キューブサンプル(11:08)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態を示す50×倍率でのキャスト石膏キューブサンプル(11:30)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態を示す50×倍率でのキャスト石膏キューブサンプル(11:50)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態を示す500×倍率でのキャスト石膏キューブサンプル(11:50)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態を示す2,500×倍率でのキャスト石膏キューブサンプル(11:50)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態を示す10,000×倍率でのキャスト石膏キューブサンプル(11:50)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態を示す10,000×倍率でのキャスト石膏キューブサンプル(11:50)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】図11は、固化石膏コアにおける気泡分布、気泡サイズ、気泡間の平均壁厚および壁の強化された表面を示す、15×倍率での対照ボードのサンプルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】図12は、本発明の実施形態に基づく固化石膏コアにおける気泡分布、気泡サイズ、気泡間の平均壁厚および壁の強化された表面を示す、15×倍率での本発明に基づくウォールボードのサンプルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】図13は、固化石膏コアにおける気泡分布、気泡サイズ、気泡間の平均壁厚および壁の強化された表面を示す、50×倍率での図11の対照ボードのサンプルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】図14は、本発明の実施形態に基づく固化石膏コアにおける気泡分布、気泡サイズ、気泡間の平均壁厚および壁の強化された表面を示す、50×倍率での図12のウォールボードのサンプルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】図15は、本発明の実施形態に基づく固化石膏コアにおける気泡間の平均壁厚および微小構造特徴を示す、500×倍率での図12のウォールボードのサンプルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】図16は、本発明の実施形態に基づく固化石膏コアにおける気泡間の平均壁厚および微小構造特徴を示す、250×倍率での図12のウォールボードのサンプルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図17】図17は、本発明の実施形態に基づく固化石膏コアにおける気泡間の平均壁厚および微小構造特徴を示す、500×倍率での図16のウォールボードのサンプルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図18】図18は、本発明の実施形態に基づく固化石膏コアにおける気泡間の平均壁厚および微小構造特徴を示す、1,000×倍率での図16のウォールボードのサンプルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図19】図19は、本発明の実施形態に基づく固化石膏コアにおける気泡間の平均壁厚および微小構造特徴を示す、2,500×倍率での図16のウォールボードのサンプルの走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
スタッコ、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、任意によりガラス繊維、および適切な量の石鹸の泡を含む石膏含有スラリーを用いて形成された石膏ウォールボードは大きい気泡容積をもたらし、ここで、気泡を囲う(従って、気泡の間の)壁は、実質的により厚いと共に強化された表面を有し、従って、従来のウォールボード中に見られる気泡よりも強いことが予想外に見出された。大きい気泡容積はボード密度および重量を低減させると共に、より厚い強化された壁は、固化石膏コアの微小構造を強化することによってウォールボードをより強くする。その結果、本発明に基づいて形成された仕上軽量ウォールボードは、際立った釘引抜き強度、曲げ強さ、コア/エッジ硬度、および他の非常に望ましい特性を有する。さらに、好ましい一実施形態において、本発明に基づいて形成された1/2インチ仕上軽量石膏ウォールボードの乾燥重量は、約27pcf?約30pcfの低ボードコア密度を有して、約1150lb/MSF?約1260lb/MSFの範囲であることが可能である。
【0013】
石鹸の泡の導入は、平均で、直径約100ミクロン未満であるが、一般に、直径約10ミクロン超、および、好ましくは直径約20ミクロン超、およびより好ましくは直径約50ミクロン超であることが可能である小さな気泡(バブル)をもたらす。本発明は、これらの小さいエアバブルが、蒸発性の水泡(一般に直径約5ミクロン以下、通常は直径約2ミクロン未満)と共に、一般に、仕上ウォールボード製品における固化石膏コア全体に均等に分布されていることを必要とする。例えば、固化石膏コアは約75%?約95%、および、好ましくは約80%?約92%の総気泡容積を有することが可能であり、ここで、総気泡容積の少なくとも60%が約10ミクロン超の平均直径を有する気泡を含み、総気泡容積の少なくとも10%が約5ミクロン未満の平均直径を有する水泡を含む。気泡および水泡として約80%?約92%の固化石膏コアの総気泡容積(総コア気泡容積)を有する、この様式で調製された低密度ボードコアは、粉塵発生が顕著に低減されると共に風媒性とならないように、ボードの切断、鋸引き、ルータ加工、スナッピング、釘打あるいはねじ込み、またはドリリングに曝された気泡中に、相当の量の微細な粉塵および他のデブリを捕捉すると考えられている。より好ましくは、本ウォールボードの固化石膏コアは、平均で直径約50ミクロン?直径約300ミクロンの範囲にある気泡を有することが可能である。
【0014】
一実施形態においては、気泡の壁は、平均で、平均厚約30ミクロン超、約200ミクロン以下を有する。好ましくは、気泡の壁厚は、平均で少なくとも約50ミクロンである。より好ましくは、気泡の壁厚は、平均で、約70ミクロン?約120ミクロンである。加えて、図15?19に示されているとおり、より小さい結晶サイズ(特にきわめて小さい、きわめて微細な針としての)および結晶のより高密度の充填は、より厚い気泡壁を形成する役割を有する。
【0015】
壁の表面の強化は、アルファ化デンプン/分散剤/トリメタリン酸ナトリウムが、ボードの最初の乾燥の最中に気泡表面に移行して壁表面の針の隙間を埋め、これにより、表面を緻密化することでもたらされると考えられている。これは固化石膏コアの微小構造を強化し、高い強度および増強された取り扱い特質を有するウォールボードをもたらす。得られる強化高密度化表面は、例えば、図15中の「A」で見ることが可能であり、ここで、図示された高密度化領域は壁の表面に沿って延びる。この強化された表面は、移行したアルファ化デンプン、分散剤、およびトリメタリン酸ナトリウムを含むと考えられている一方で、本発明者らは、この説明に束縛されることは意図しておらず、強化された表面はこれらの物質の全3種未満を含んでいてもよく、実際に、異なる供給源またはメカニズムに由来していてもよいと認識する。
【0016】
好ましい実施形態において、軽量石膏ウォールボードは、2枚の実質的に平行なカバーシートの間に形成された固化石膏コア、固化石膏コア全体にわたって分散された気泡を有する固化石膏コアを含み、気泡は、強化高密度化表面を有する厚くされた壁により画定されている。好ましい固化石膏コアは、水、スタッコ、スタッコの重量に基づいて約0.5重量%?約10重量%の量で存在するアルファ化デンプン、スタッコの重量に基づいて約0.2重量%?約2重量%の量で存在するナフタレンスルホン酸分散剤、スタッコの重量に基づいて約0.1重量%?約0.4重量%の量で存在するトリメタリン酸ナトリウム、および任意によりスタッコの重量に基づいて約0.2重量%以下の量で存在するガラス繊維を含む石膏含有スラリーから形成されている。
【0017】
硫酸カルシウム半水和物(スタッコ)の再水和および結果的な硬化は、特定の理論量の水(1-1/2モル水/1モルのスタッコ)を、硫酸カルシウム二水和物結晶を形成するために必要とする。しかしながら、商業的プロセスは、一般に、過剰量の水を要求する。この過剰量のプロセス水は、一般に実質的に不規則な形状であると共に、他の水泡と相互に連続もしている石膏結晶マトリックス中に蒸発性の水泡をもたらして、固化石膏結晶の間の一般に連続的なネットワーク中に不規則なチャネルを形成する。対照的に、気泡(バブル)は、石鹸の泡を用いて石膏スラリー中に導入される。これらの気泡は、一般に、球状/丸い形状であると共に、一般に他の気泡からは分離されていて、それ故、一般に非連続的でもある。これらの水泡は、気泡の壁中に分布されていることが可能である(例えば、図8?10を参照のこと)。
【0018】
粉塵捕捉の効力は固化石膏コアの組成に応じる。ナフタレンスルホン酸分散剤は、使用レベルが十分に高ければ、アルファ化デンプンに架橋して乾燥後に石膏結晶を一緒に結合し、それ故、石膏複合体の乾燥強度を高めることが可能であることが見出された。
【0019】
さらに、ここにきて、アルファ化デンプンとナフタレンスルホン酸分散剤との組み合わせ(有機相)は、固化石膏結晶を一緒に結合する際にのり様効果をもたらし、ならびに、この配合物が特定の気泡容積および気泡分布と組み合わされる場合、仕上ウォールボードのけがき/スナッピングの際にはより大きなサイズの破片が発生することが、予想外に見出された。この結果は、本発明の増大された壁厚および強化された高密度化壁表面微小構造によってさらに強調される。より大きな石膏破片は、一般に、風媒性の低い粉塵をもたらす。対照的に、従来のウォールボード配合物が用いられる場合、より小さな破片が発生し、それ故、より多くの粉塵が発生する。例えば、従来のウォールボードは、鋸での切断の際に、約20?30ミクロンの平均直径、および、約1ミクロンの最小直径を有する粉塵破片を発生させる可能性がある。対照的に、本発明の石膏ウォールボードは、鋸での切断の際に、約30?50ミクロンの平均直径、および、約2ミクロンの最小直径を有する粉塵破片を発生させ;けがき/スナッピングは、さらに大きな破片をもたらすことが可能である。
【0020】
より軟質のウォールボードにおいては、粉塵は、水泡および気泡の両方において捕捉されることが可能である(例えば、単一の結晶粉塵としての小さい石膏針の捕捉)。より硬質のウォールボードは、固化石膏コアのより大きな塊または破片がこれらのボードの加工で発生するために、気泡における粉塵の捕捉が好まれる。この場合、粉塵破片は水泡に対しては大きすぎるが、気泡中には閉じ込められる。本発明の一実施形態によれば、固化石膏コア中における好ましい気泡/孔径分布を導入することにより、粉塵の捕捉の増大を達成することが可能である。空気および水泡の分布として、小さいおよび大きい気泡サイズの分布を有することが好ましい。一実施形態においては、好ましい気泡分布は、石鹸の泡を用いて調製することが可能である。以下の実施例6および7を参照のこと。
【0021】
固化石膏コア中の気泡(約10ミクロン超)対水泡(約5ミクロン未満)の比は、約1.8:1?約9:1の範囲であることが可能である。固化石膏コア中の気泡(約10ミクロン超)対水泡(約5ミクロン未満)の好ましい比は、約2:1?約3:1の範囲であることが可能である。一実施形態においては、固化石膏コア中の気泡/孔径分布は、計測された全気泡のパーセンテージとして、約10?30%の約5ミクロン未満の気泡?約70?90%の約10ミクロン超の気泡の範囲であるべきである。換言すると、固化石膏コア中の気泡(10ミクロン超)対水泡(5ミクロン未満)の比は、約2.3:1?約9:1の範囲である。好ましい実施形態において、固化石膏コア中の気泡/孔径分布は、計測された全気泡のパーセンテージとしての、約30?35%の約5ミクロン未満の気泡?約65?70%の約10ミクロン超の気泡の範囲であるべきである。換言すると、固化石膏コア中の気泡(10ミクロン超)対水泡(5ミクロン未満)の比は約1.8:1?約2.3:1の範囲である。
【0022】
平均気泡(バブル)サイズは直径約100ミクロン未満であることが好ましい。好ましい実施形態において、固化石膏コア中の気泡/孔径分布は:約100ミクロン超(20%)、約50ミクロン?約100ミクロン(30%)、および約50ミクロン未満(50%)である。すなわち、好ましい気泡/孔径中央値は約50ミクロンである。
【0023】
気泡は、発泡低密度固化石膏コアとカバーシートとの間の結合強度を低減させる可能性がある。容積基準で複合体石膏ボードの半分超が泡による気泡から構成され得るため、泡は、発泡低密度固化石膏コアと紙カバーシートとの間の接合に干渉する可能性がある。これは、上面カバーシートあるいは底面カバーシートの一方、または、上面カバーシートおよび底面カバーシートの両方の石膏コア接触面上に、これらのカバーシートのコアへの適用に先立って、非発泡(または低発泡)接合性高密度層を任意により設けることにより対処される。この非発泡、代替的には、低発泡接合性高密度層配合物は、典型的には、石鹸がまったく添加されないか、または、実質的に少ない量の石鹸(泡)が添加されることとなること以外は、石膏スラリーコア配合物と同一となる。任意により、この接合性層を形成するために、泡をコア配合物から機械的に除去することが可能であり、または、異なる無泡配合物を発泡低密度固化石膏コア/表紙界面に適用することが可能である。
【0024】
石鹸泡は、固化石膏コアにおける気泡(バブル)サイズおよび分布を導入することおよび制御すること、ならびに、固化石膏コアの密度を制御することが好ましい。石鹸の好ましい範囲は、約0.2lb/MSF?約0.7lb/MSFであり;石鹸のより好ましいレベルは約0.45lb/MSF?約0.5lb/MSFである。
【0025】
石鹸泡は、所望の密度をもたらすために効果的な量、および、制御された様式で添加されなければならない。プロセスを制御するために、オペレータは、ボード形成ラインのヘッドを監視して、エンベロープの充填状態を維持しなければならない。エンベロープの充填状態が維持されない場合には、スラリーは必要な容積を充填することができないために、中空のエッジを有するウォールボードがもたらされてしまう。エンベロープ容積の充填状態は、石鹸の使用量を増やして、ボードの製造中のエアバブルの破裂を防止(エアバブルのより良好な保持のために)することにより、または、空気発泡速度を高めることにより維持される。それ故、一般に、エンベロープ容積は、石鹸の使用量を増減することにより、または、空気発泡速度を増減することにより制御されると共に調節される。ヘッド制御の技術分野は、石鹸の泡を添加してスラリー容積を増加させることによる、または、石鹸の泡の使用量を増やしてスラリー容積を低減させることによる、テーブル上での「動的スラリー」への調節を含む。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、スタッコ、アルファ化デンプン、およびナフタレンスルホン酸分散剤を含有する石膏含有スラリーから形成された仕上石膏含有製品が提供されている。ナフタレンスルホン酸分散剤は、乾燥スタッコの重量に基づいて約0.1%?3.0重量%の量で存在する。アルファ化デンプンは、配合物中の乾燥スタッコの重量に基づいて少なくとも約0.5重量%以下?約10重量%の量で存在する。スラリー中において用いられ得る他の処方成分としては、バインダ、防水剤、紙繊維、ガラス繊維、クレイ、殺生剤、および促進剤が挙げられる。本発明は、新たに配合された石膏含有スラリーに石鹸の泡を添加して、例えば石膏ウォールボードといった仕上石膏含有製品の密度を低減させること、ならびに、固化石膏コア中の小さい気泡(バブル)および水泡の形態での、約75%?約95%、および、好ましくは約80%?約92%の総気泡容積の導入により粉立を制御することが必要である。好ましくは、平均孔径分布は、約1ミクロン(水泡)?約40?50ミクロン(気泡)であろう。
【0027】
場合により、約0.5重量%以下?約10重量%アルファ化デンプン、約0.1重量%以下?約3.0重量%ナフタレンスルホン酸分散剤、および最低でも少なくとも約0.12重量%以下?約0.4重量%トリメタリン酸塩(すべては石膏スラリー中に用いられる乾燥スタッコの重量に基づく)の組み合わせは、石膏スラリーの流動度を予想外に、かつ、顕著に増加させる。これは、石膏ウォールボードなどの石膏含有製品の形成に用いられるために十分な流動性を有する石膏スラリーを製造するために必要とされる水の量を実質的に低減させる。標準的な配合物(トリメタリン酸ナトリウムとして)の少なくとも約2倍であるトリメタリン酸塩のレベルが、ナフタレンスルホン酸分散剤の分散剤活性を増進させると考えられている。
【0028】
ナフタレンスルホン酸分散剤は、本発明に基づいて調製された石膏含有スラリー中に用いられなければならない。本発明において用いられるナフタレンスルホン酸分散剤としては、ナフタレンスルホン酸およびホルムアルデヒドの縮合物であるポリナフタレンスルホン酸およびその塩(ポリナフタレンスルホン酸塩)および誘導体が挙げられる。特に望ましいポリナフタレンスルホン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸ナトリウムおよびカルシウムが挙げられる。ナフタレンスルホン酸塩の平均分子量は、約3,000?27,000の範囲であることが可能であるが、分子量は、約8,000?22,000であり、より好ましくは分子量は約12,000?17,000であることが好ましい。市販の製品としては、より高分子量の分散剤は、低分子量分散剤より高い粘度、および、より低固形分含有量を有する。有用なナフタレンスルホン酸塩としては、Cleveland,OhioのGEO Specialty Chemicals製のDILOFLO;Lexington,MassachusettsのHampshire Chemical Corp.製のDAXAD;および、Lafayette,IndianaのGEO Specialty Chemicals製のLOMAR Dが挙げられる。ナフタレンスルホン酸塩は、例えば35?55重量%固形分含有量の範囲で水溶液として用いられることが好ましい。例えば約40?45重量%固形分含有量の範囲で、水溶液の形態のナフタレンスルホン酸塩を用いることが最も好ましい。代替的に、適切な場合には、ナフタレンスルホン酸塩は、例えばLOMAR Dなどの乾燥固体または粉末形態で用いられることが可能である。
【0029】
本発明において有用なポリナフタレンスルホン酸塩は、一般構造(I):
【化1】

を有し、式中、nは>2であると共に、式中、Mはナトリウム、カリウム、カルシウム等である。
【0030】
好ましくは約45重量%水溶液としてのナフタレンスルホン酸分散剤は、石膏複合体配合物中に用いられる乾燥スタッコの重量に基づいて約0.5%?約3.0重量%の範囲で用いられ得る。ナフタレンスルホン酸分散剤のより好ましい範囲は、乾燥スタッコの重量に基づいて約0.5%?約2.0重量%であり、および最も好ましい範囲は、乾燥スタッコの重量に基づいて約0.7%?約2.0重量%である。対照的に、公知の石膏ウォールボードは、この分散剤を、乾燥スタッコの重量に基づいて約0.4重量%以下のレベルで含有する。
【0031】
換言すると、ナフタレンスルホン酸分散剤は、乾燥重量基準で、石膏複合体配合物中に用いられ得る乾燥スタッコの重量に基づいて約0.1%?約1.5重量%の範囲で用いられ得る。ナフタレンスルホン酸分散剤のより好ましい範囲は、乾燥固形分基準で、乾燥スタッコの重量に基づいて約0.25%?約0.7重量%であり、および、最も好ましい範囲(乾燥固形分基準で)は乾燥スタッコの重量に基づいて約0.3%?約0.7重量%である。
【0032】
石膏含有スラリーは、任意により、例えばトリメタリン酸ナトリウムといったトリメタリン酸塩を含有することが可能である。いずれかの好適な水溶性メタリン酸塩またはポリリン酸塩を本発明に基づいて用いることが可能である。2個のカチオンを有するトリメタリン酸塩である複塩を含む、トリメタリン酸塩が用いられることが好ましい。特に有用なトリメタリン酸塩としては、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸カリウム、トリメタリン酸カルシウム、トリメタリン酸ナトリウムカルシウム、トリメタリン酸リチウム、トリメタリン酸アンモニウム等、またはこれらの組み合わせが挙げられる。好ましいトリメタリン酸塩はトリメタリン酸ナトリウムである。水溶液としてのトリメタリン酸塩を、例えば、約10?15重量%固形分含有量の範囲で用いることが好ましい。本明細書において参照により援用される、Yuらへの米国特許第6,409,825号明細書に記載されているとおり、他の環式または非環式ポリリン酸塩もまた用いられることが可能である。
【0033】
トリメタリン酸ナトリウムは、一般に、石膏スラリー中に用いられる乾燥スタッコの重量に基づいて約0.05%?約0.08重量%の範囲で用いられるが、石膏含有組成物において公知の添加剤である。本発明の実施形態において、トリメタリン酸ナトリウム(または他の水溶性メタリン酸塩あるいはポリリン酸塩)は、石膏複合体配合物中に用いられる乾燥スタッコの重量に基づいて約0.10%?約0.4重量%の範囲で存在することが可能である。トリメタリン酸ナトリウム(または他の水溶性メタリン酸塩またはポリリン酸塩)の好ましい範囲は、石膏複合体配合物中に用いられる乾燥スタッコの重量に基づいて約0.12%?約0.3重量%である。
【0034】
スタッコにはαおよびβの2種の形態がある。これらの2種のタイプのスタッコは、異なるか焼手段により生成される。本発明においては、スタッコのβまたはα形態のいずれが用いられてもよい。
【0035】
特にアルファ化デンプンを含むデンプンが、本発明に基づいて調製される石膏含有スラリーにおいて用いられなければならない。好ましいアルファ化デンプンは、以下の典型的な分析値を有する例えばSt.Louis,MissouriのBunge Milling製のアルファ化コーンフラワーといったアルファ化コーンデンプンである:水分7.5%、タンパク質8.0%、油0.5%、粗繊維0.5%、灰分0.3%;0.48psiの生強度を有し;および35.0lb/ft^(3)の粗嵩密度を有する。アルファ化コーンデンプンは、石膏含有スラリーにおいて用いられる乾燥スタッコの重量に基づいて少なくとも約0.5重量%以下?約10重量%の量で用いられるべきである。より好ましい実施形態において、アルファ化デンプンは、石膏含有スラリー中において用いられる乾燥スタッコの重量に基づいて約0.5重量%?約4重量%の量で存在する。
【0036】
本発明者らは、乾燥強度(特にウォールボードにおける)の予想外の増加を、約0.1重量%?3.0重量%ナフタレンスルホン酸分散剤の存在下に、少なくとも約0.5重量%以下?約10重量%アルファ化デンプン(好ましくはアルファ化コーンデンプン)を用いることにより達成することが可能であることをさらに発見した(デンプンおよびナフタレンスルホン酸レベルは、配合物中に存在する乾燥スタッコの重量に基づく)。この予想外の結果は、水溶性トリメタリン酸塩またはポリリン酸塩の存在に関わらず達成することが可能である。
【0037】
加えて、アルファ化デンプンは、本発明に基づいて形成される乾燥石膏ウォールボードにおいて少なくとも約10lb/MSF以上のレベルで用いられることが可能であり、さらに、高い強度および低重量を達成することが可能であることが予想外に見出された。石膏ウォールボードにおける35?45lb/MSFもの高さのレベルのアルファ化デンプンが効果的であることが証明されている。例として、以下の表1および2に示されている配合物Bは45lb/MSFを含むが、それでもなお、優れた強度を有する1042lb/MSFのボード重量をもたらした。この例(配合物B)においては、45重量%水溶液としてのナフタレンスルホン酸分散剤を1.28重量%のレベルで用いた。
【0038】
ナフタレンスルホン酸分散剤とトリメタリン酸塩との組み合わせが、アルファ化コーンデンプン、および、任意により、紙繊維またはガラス繊維と組み合わされる場合に、本発明ではさらなる予想外の結果が達成され得る。これらの3種の処方成分を含有する配合物から形成された石膏ウォールボードは、高い強度および低い重量を有すると共に、製造における水要求量が少ないために経済的により望ましい。紙繊維の有用なレベルは、乾燥スタッコの重量に基づいて約2重量%以下の範囲であることが可能である。ガラス繊維の有用なレベルは、乾燥スタッコの重量に基づいて約2重量%以下の範囲であることが可能である。
【0039】
本明細書において参照により援用されるYuらへの米国特許第6,409,825号明細書に記載のとおり、促進剤を、本発明の石膏含有組成物において用いることが可能である。1種の望ましい耐熱性促進剤(HRA)は、粉末石膏(硫酸カルシウム二水和物)の乾式粉砕から形成されることが可能である。糖質、ブドウ糖、硼酸、およびデンプンなどの少量の添加剤(通常は約5重量%)をこのHRAを形成するために用いることが可能である。現在では糖質、またはブドウ糖が好ましい。他の有用な促進剤は、本明細書において参照により援用される米国特許第3,573,947号明細書に記載されている「天候安定性促進剤」または「天候安定促進剤」(CSA)である。
【0040】
水/スタッコ(w/s)比は、過剰量の水は最終的には加熱により除去されなければならないために重要なパラメータである。本発明の実施形態において、好ましいw/s比は約0.7?約1.3である。
【0041】
他の石膏スラリー添加剤としては、促進剤、バインダ、防水剤、紙繊維またはガラス繊維、クレイ、殺生剤、および他の公知の構成成分を挙げることが可能である。
【0042】
カバーシートは従来の石膏ウォールボードにあるような紙で形成されていてもよいが、当該技術分野において公知である他の有用なカバーシート材料(例えば、繊維状ガラスマット)が用いられてもよい。紙カバーシートは石膏ウォールボードに強度特質をもたらす。有用カバーシート紙としては、Chicago,IllinoisのUnited States Gypsum Corporation製のManila 7-plyおよびNews-Line 5-ply;Newport,IndianaのCaraustar製のGrey-Back 3-plyおよびManila Ivory 3-ply;Chicago,IllinoisのUnited States Gypsum Corporation製のManila厚紙およびMH Manila HT(高張力)紙が挙げられる。紙カバーシートは、上面カバーシートまたは表紙、および、底面カバーシートまたは裏紙を含む。好ましい裏カバーシート紙は5-ply News-Lineである。好ましい表カバーシート紙としては、MH Manila HT(高張力)紙およびManila 7-plyが挙げられる。
【0043】
繊維状マットもまた、カバーシートの一方または両方として用いられ得る。1種の有用な繊維状マットは、ガラス繊維のフィラメントが接着剤により一緒に接合されているガラス繊維マットである。繊維状マットは、ガラス繊維のフィラメントが接着剤によって一緒に接合されている不織ガラス繊維マットであることが好ましいであろう。最も好ましくは、不織ガラス繊維マットは、厚い樹脂コーティングを有するであろう。例えば、約1.2?2.0lb/100ft^(2)の重量を有すると共にマット重量の約40?50%が樹脂コーティングに由来する、Johns-Manville製のDuraglass不織ガラス繊維マットを用いることが可能である。他の有用な繊維状マットとしては、これらに限定されないが、織ガラスマットおよび非セルロース系布が挙げられる。
【0044】
以下の実施例が本発明をさらに説明する。これらは、本発明の範囲を如何様にも限定するとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0045】
実施例1
サンプル石膏スラリー配合物
石膏スラリー配合物が以下の表1に示されている。表1中のすべての値は、乾燥スタッコの重量に基づく重量パーセントとして表記されている。括弧中の値は、ポンドでの乾燥重量(lb/MSF)である。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例2
ウォールボードの調製
サンプル石膏ウォールボードを、本明細書において参照により援用される、Yuらへの米国特許第6,342,284号明細書およびYuらへの6,632,550号明細書に準拠して調製した。これらの特許の実施例5に記載されている、個別の泡の発生および他の処方成分のすべてスラリーへの泡の導入が含まれる。
【0048】
実施例1の配合物AおよびBを用いて形成した石膏ウォールボード、ならびに、通常の対照ボードに対するテスト結果が以下の表2に示されている。この実施例および以下の他の実施例のとおり、釘引抜き耐性、コア硬度、および曲げ強さテストをASTM C-473に準拠して実施した。追加的に、典型的な石膏ウォールボードはおよそ1/2インチ厚であり、約1600?1800ポンド/1,000平方フィートの材料またはlb/MSFの重量を有することに注目されたい。(「MSF」は、1000平方フィートについての技術分野における標準的な略記であり;箱、波型の媒体およびウォールボードについての面積計測値である。)
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示されているとおり、配合物AおよびBスラリーを用いて調製した石膏ウォールボードは、対照ボードと比して重量の顕著な低減を有する。表1を再度参照すると、配合物Aボード対配合物Bボードの比較が最も顕著である。水/スタッコ(w/s)比は配合物Aおよび配合物Bにおいて類似している。顕著に高いレベルのナフタレンスルホン酸分散剤もまた配合物Bにおいて用いられている。また、配合物Bにおいては、配合物Aの100%超の増加である約6重量%もの実質的により多量のアルファ化デンプンを用いたところ、これは、著しい強度の増加を伴った。そうであっても、必要とされる流動性をもたらすための水要求量は、配合物Bスラリーにおいては少ないままであり、配合物Aと比してその差は約10%である。両方の配合物における低い水要求量は、実質的により高いレベルのアルファ化デンプンの存在下においても石膏スラリーの流動度を高める、石膏スラリー中のナフタレンスルホン酸分散剤とトリメタリン酸ナトリウムとの組み合わせの相乗的効果による。
【0051】
表2に示されているとおり、配合物Bスラリーを用いて調製したウォールボードは、配合物Aスラリーを用いて調製したウォールボードと比して実質的に高い強度を有する。多量のナフタレンスルホン酸分散剤およびトリメタリン酸ナトリウムと組み合わせた多量のアルファ化デンプンの組み込みにより、配合物Bボードにおける釘引抜き耐性は、配合物Aボードより45%向上した。曲げ強さにおける相当の増加もまた配合物Aボードに比して配合物Bボードにおいて観察された。
【0052】
実施例3
1/2インチ石膏ウォールボード重量軽減試験
スラリー配合物およびテスト結果を含むさらなる石膏ウォールボード実施例(ボードC、DおよびE)が以下の表3に示されている。表3のスラリー配合物は、スラリーの主構成成分を含む。括弧中の値は、乾燥スタッコの重量に基づく重量パーセントとして表記されている。
【0053】
【表3】

【0054】
表3に示されているとおり、ボードC、D、およびEを、対照ボードと比して、実質的に多量のデンプン、DILOFLO分散剤、およびトリメタリン酸ナトリウム(パーセンテージ基準で、デンプンおよび分散剤については約2倍の増加、ならびに、トリメタリン酸塩については2?3倍の増加)を有するスラリーから、w/s比を一定に維持しながら形成した。それにもかかわらず、ボード重量は、顕著に低減され、かつ、釘引抜き耐性により計測される強度は劇的に影響されていなかった。従って、本発明の実施形態のこの実施例においては、新規の配合(例えば、ボードDなど)は、同一のw/s比および適切な強度を維持しながら、有用で流動性のスラリー中に多量のデンプンを配合させることが可能である。
【0055】
実施例4
湿潤石膏キューブ強度テスト
Chicago,IllinoisのUnited States Gypsum Corp.製のSouthard CKSボードスタッコおよび実験室における水道水を用いて湿潤キューブ強度テストを行って、これらの湿潤圧縮強度を測定した。以下の実験室テスト手法を用いた。
【0056】
スタッコ(1000g)、CSA(2g)、および約70°Fの水道水(1200cc)を、各湿潤石膏キューブキャストのために用いた。アルファ化コーンデンプン(20g、スタッコ重量基準で2.0%)およびCSA(2g、スタッコ重量基準で0.2%)を、ナフタレンスルホン酸分散剤およびトリメタリン酸ナトリウムの両方を含有する水道水溶液との混合に先立って、先ず、プラスチックバッグ中でスタッコと完全に乾燥混合した。用いた分散剤はDILOFLO分散剤であった(表4に示されているとおり1.0?2.0%)。様々な量のトリメタリン酸ナトリウムもまた表4に示されているとおり用いた。
【0057】
乾燥処方成分および水溶液を、最初に、実験用Warningブレンダー中で組み合わせ、生成した混合物を10秒かけて飽和させ、次いで、この混合物を、スラリーを形成するために10秒間低速で混合した。このように形成したスラリーを、3つの2インチ×2インチ×2インチキューブ金型にキャストした。次いで、キャストキューブを金型から外し、計量し、およびプラスチックバッグ中にシールして、圧縮強度テストを実施する前の水分の損失を防止した。湿潤キューブの圧縮強度は、ATSマシーンを用いて計測すると共に、平方インチ当たりのポンド(psi)での平均として記録した。得られた結果は以下のとおりであった。
【0058】
【表4-1】

【0059】
【表4-2】

【0060】
表4に示されているとおり、本発明の約0.12?0.4%範囲にトリメタリン酸ナトリウムレベルを有するサンプル4?5、10?11、および17は、一般に、この範囲外でトリメタリン酸ナトリウムを有するサンプルと比して優れた湿潤キューブ圧縮強度を提供する。
【0061】
実施例5
1/2インチ軽量石膏ウォールボードプラント製造試験
さらなる試験を実施し(試験ボード1および2)、スラリー配合を含むテスト結果が以下の表5に示されている。表5のスラリー配合は、スラリーの主構成成分を含む。括弧中の値は、乾燥スタッコの重量に基づく重量パーセントとして表記されている。
【0062】
【表5】

【0063】
表5に示されているとおり、試験ボード1および2を、対照ボードと比して、わずかにw/s比を低減させながら、実質的に多量のデンプン、DILOFLO分散剤、およびトリメタリン酸ナトリウムを有するスラリーから形成した。それにもかかわらず、釘引抜き耐性および曲げ試験により計測した強度は維持されたかまたは向上されたと共に、ボード重量は顕著に低減した。従って、本発明の実施形態のこの実施例においては、新たな配合(例えば、試験ボード1および2など)は、実質的に同一のw/s比および適切な強度を維持しながら、有用で流動性のスラリー中に多量のトリメタリン酸塩およびデンプンを配合させることが可能である。
【0064】
実施例6
1/2インチ超軽量石膏ウォールボードプラント製造試験
さらなる試験(試験ボード3および4)を、配合物B(実施例1)を用いて、アルファ化コーンデンプンを10%濃度(湿潤デンプン調製)に水で調製すると共に、HYONIC 25 ASおよびPFM 33石鹸(Lafayette,IndianaのGEO Specialty Chemicals製)のブレンドを用いたこと以外は、実施例2のとおり実施した。例えば、試験ボード3を、65?70重量%の範囲のHYONIC 25 ASでのHYONIC 25 ASおよびPFM 33のブレンドと、残量のPFM 33とで調製した。例えば、試験ボード4は、HYONIC 25AS/HYONIC PFM 33の70/30重量/重量ブレンドで調製した。試験結果が以下の表6に示されている。
【0065】
【表6】

【0066】
2006年11月2日出願の親米国特許出願第11/592,481号明細書に見られるこの実施例に記載の配合物は、強化高密度化表面を有する著しく厚い壁を備える大型の気泡を有する以下の実施例7?9に記載の石膏ウォールボードをもたらすことに注目されたい。表6に示されているとおり、釘引抜きおよびコア硬度により計測した強度特質はASTM規格を超えていた。曲げ強さもまたASTM規格を超えて計測された。また、本発明の実施形態のこの実施例においては、新たな配合物(例えば、試験ボード3および4など)は、適切な強度を維持しながら、有用で流動性のスラリー中に多量のトリメタリン酸塩およびデンプンを配合させることが可能である。
【0067】
実施例7
ボード重量および鋸での切断結果の関数としての1/2インチ厚石膏ウォールボードコアにおける気泡容積割合計算
さらなる試験を、気泡容積および密度(試験ボードNo.5?13)を測定するために、配合物B(実施例1)を用いて、アルファ化コーンデンプンを10%濃度(湿潤デンプン調製)に水で調製し、0.5%ガラス繊維を用い、およびナフタレンスルホン酸(DILOFLO)を45%水溶液として1.2重量%のレベルで用いたこと以外は実施例2のとおり実施した。石鹸の泡発生機を用いて石鹸泡を形成し、所望の密度をもたらすために効果的な量で石膏スラリー中に導入した。本実施例において、石鹸は、0.25lb/MSF?0.45lb/MSFのレベルで用いた。すなわち、石鹸の泡の使用量は適切に増減した。各サンプルにおいて、ウォールボード厚は1/2インチであると共にコア容積は、39.1ft^(3)/MSFで均一であると仮定した。気泡容積を、表紙および裏紙を除去した4ft幅のウォールボードサンプルにわたって計測した。表紙および裏紙は、11?18milの範囲の厚さを有することが可能である(各面)。気泡容積/孔径および孔径分布は、走査電子顕微鏡検査(以下の実施例8を参照のこと)およびX線CTスキャンテクノロジー(XMT)により測定した。
【0068】
【表7】

【0069】
表7に示されているとおり、79.0%?92.1%の範囲で総コア気泡容積を有する試験ボードサンプルを形成し、これらは、それぞれ、28pcfから10pcf以上の範囲のボードコア密度に対応する。実施例として、81.8%の総コア気泡容積および23pcfのボードコア密度を有する試験ボード10の鋸での切断では、対照ボードよりも約30%少ない粉塵が発生した。追加の実施例として、約75?80%の総コア気泡容積よりも顕著に少ない、バインダ(分散剤を伴う、または伴わないデンプンとして)が少ない従来の配合でのウォールボードを形成した場合、切断、鋸引き、ルータ加工、スナッピング、釘打あるいはねじ込み、またはドリリングの際には、顕著に激しい粉塵発生が予期されることとなる。例えば、従来のウォールボードは、鋸での切断で、約20?30ミクロンの平均直径、および約1ミクロンの最小直径を有する粉塵破片を発生させる可能性がある。対照的に、本発明の石膏ウォールボードは、鋸での切断で、約30?50ミクロンの平均直径、および約2ミクロンの最小直径を有する粉塵破片を発生させ;けがき/スナッピングではさらに大きな破片を生じさせるであろう。
【0070】
石膏含有スラリーを形成するために用いられる数々の重要な構成成分、すなわち:スタッコ、ナフタレンスルホン酸分散剤、アルファ化コーンデンプン、トリメタリン酸ナトリウム、ならびに、ガラス繊維および/または紙繊維の組み合わせは、十分なおよび効果的な量の石鹸の泡と組み合わされて、ナイフでの切断、鋸での切断、けがき/スナッピング、ドリリング、および通常のボードの取り扱いの最中での石膏粉塵の形成をも劇的に低減する、有用な低密度石膏ウォールボードの製造において相乗的な効果を有することが可能であることが示された。
【0071】
実施例8
試験ボードNo.10におけるエアバブル気泡サイズおよび水泡サイズの測定、ならびに、石膏結晶形態学
試験ボードNo.10を調製するためのプラント試験からのキャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)を走査電子顕微鏡検査(SEM)により分析した。エアバブル気泡および蒸発性水泡、ならびに、石膏結晶サイズおよび形状を観察すると共に計測した。
【0072】
3つのサンプルキューブを形成し、それぞれに、11:08、11:30、および11:50とラベルを付した。図1?3は、エアバブル気泡サイズおよび各サンプルについての分布を15×倍率で示す。図4?6は、エアバブル気泡サイズおよび各サンプルについての分布を50×倍率で示す。
【0073】
より高倍率で、サンプルキューブ11:50について図7?10に示されているとおり、10,000×倍率以下で、例えば、一般に実質的により大きなエアバブル気泡壁中の水泡を観察した。ほとんどすべての石膏結晶が針であり;プレート状のものはほとんど観察されなかった。針の密度および充填は、エアバブル気泡の表面上で様々であった。石膏針は、エアバブル気泡壁中の水泡においても観察された。
【0074】
SEM結果は、本発明に基づいて形成された石膏含有製品において、気泡および水泡は、一般に、固化石膏コア全体に均一に分布されていることを実証している。観察した気泡サイズおよび気泡分布もまた、生成された石膏粉塵の相当の量が、通常のボードの取り扱いの際、ならびに、切断、鋸引き、ルータ加工、スナッピング、釘打あるいはねじ込み、またはドリリングの最中に曝された周囲の気泡中に捕捉されることとなると共に、風媒性とならないよう、気泡および水泡(総コア気泡容積)として十分な自由空間が形成されていることを実証する。
【0075】
実施例9
低粉塵石膏ウォールボードにおける粉塵捕捉
実施例7のとおり本発明の教示に基づいてウォールボードを調製した場合、ウォールボードの加工で生じる石膏粉塵は、少なくとも50重量%が直径約10ミクロンより大きい石膏破片を含むであろうことが予期される。切断、鋸引き、ルータ加工、けがき/スナッピング、釘打あるいはねじ込み、およびドリリングによるウォールボードの加工によって発生した粉塵の合計の少なくとも約30%以上が捕捉されるであろう。
【0076】
実施例10
追加の1/2インチ軽量石膏ウォールボードプラント製造試験配合物
実施例7?9は、大きい気泡容積を有する軽量ウォールボードをもたらす。残りの実施例は、実施例7?9のものに類似するが、ウォールボード微小構造の増大された壁厚および強化された高密度化気泡壁表面をもハイライトしている。これに関連して、実施例8の図5および6の顕微鏡写真は、本発明による大型の気泡および増大された厚さの壁の両方を含む微小構造を示すことに注目すべきである。
【0077】
それ故、以下の表8に示されているとおり、さらなるスラリー配合物(試験14)を調製した。表8のスラリー配合は、スラリーの主構成成分を含む。括弧中の値は、乾燥スタッコの重量に基づく重量パーセントとして表記されている。
【0078】
【表8】

【0079】
実施例11
追加の1/2インチ軽量石膏ウォールボードプラント製造試験
プラント試験配合物14および実施例10の対照配合物Aを用いて形成した石膏ウォールボード、ならびに、2種の従来の競合するボードについてのテスト結果が以下の表9に示されている。70°F/50%相対湿度で24時間のコンディショニングの後、ウォールボードサンプルを、釘引抜き耐性、エッジ/コア硬度、曲げ強さ、および16時間加湿接合についてテストした。釘引抜き耐性、エッジ/コア硬度、加湿たわみ、および曲げ強さテストをASTM C-473に準拠して実施した。不燃性をASTM E-136に準拠して実施した。表面燃焼特質テストをASTM E-84に準拠して実施して、延焼指数(Flame Spread Index)(FSI)を測定した。ボードサンプルを、走査電子顕微鏡検査(以下の実施例12を参照のこと)およびエネルギー分散分光法(EDS)により分析した。ボードサンプルはまた、X線CTスキャンテクノロジー(XMT)により分析されることが可能である。
【0080】
鋸での切断およびドリリングテストによる粉塵発生計測値。ドリリングによる粉塵発生を測定するために、ボール盤を用いて仕上ウォールボードサンプルに50個の孔をドリルして、得られた石膏粉塵を回収した。手鋸引きによる粉塵発生を測定するために、仕上ウォールボードの5つの1フィート長の切片を切り出して、得られた石膏粉塵を回収した。冠鋸引きによる粉塵発生を測定するために、4インチ径の5つの円を仕上ウォールボードサンプルに切り出して、得られた石膏粉塵を回収した。
【0081】
【表9】

【0082】
表9に示されているとおり、釘引抜き耐性、曲げ強さ、およびエッジ/コア硬度により計測した試験ボード14強度特質は、従来の競合するボードに対して優れていると共にASTM規格を超えていた。加湿たわみ(たるみ)は、従来の競合するボードに対して優れていると共にASTM規格を超えていた。加湿接合:優れた紙対コア接合(無破壊)に追加して、試験ボードNo.14は、表9に示されているとおり、接合強度について最良の結果を有していた。最後に、ASTM規格での不燃性テストへの合格に追加して、試験ボードNo.14は、ASTM規格下でクラス-A材料として判定された。
【0083】
加えて、試験ボードNo.14サンプルを、外観、シートの摺れ、曲げテスト、肩に載せた運搬、曲がり角での回転、エッジドラッグ、エッジドロップ、けがきおよびスナップ、やすりがけ(rasping)、孔の切断、スクリューでの取り付け、釘での取り付け、および10フィート半径について評価することにより、取り扱い、ステージング、および設置順序について査定した。評価の結論は、試験ボードNo.14の取り扱い特性は、対照ボードAおよび表9の他の従来の競合性石膏ボードと同等であるかまたはこれらを超えていた。
【0084】
実施例12
試験ボードNo.14におけるエアバブル表面特徴の測定、および石膏結晶形態学
実施例8と同様に、試験ボードNo.14を調製するためのプラント試験からのキャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)を走査電子顕微鏡検査(SEM)により分析した。エアバブル気泡および蒸発性水泡、ならびに、石膏結晶サイズおよび形状を観察すると共に計測した。
【0085】
SEM結果は、再度、本発明に基づいて形成された石膏含有製品において、気泡および水泡は、一般に、固化石膏コア全体に均一に分布されていることを実証している。観察した気泡サイズおよび気泡分布もまた、生成された石膏粉塵の相当の量が、通常のボードの取り扱いの際、ならびに、切断、鋸引き、ルータ加工、スナッピング、釘打あるいはねじ込み、またはドリリングの最中に曝された周囲の気泡中に捕捉されることとなると共に、風媒性とならないよう、気泡および水泡(総コア気泡容積)として十分な自由空間が形成されていることを実証する。
【0086】
図11?19のSEM結果は、実施例8のSEM顕微鏡写真に対応する高倍率で壁厚を示す。これらのSEM結果は、図13および14に示されているとおり、試験ボードNo.14および対照ボードAをそれぞれ比較して、以下の2つの向上点を実証する:1)試験ボード中のエアバブル気泡は対照ボード中のものよりも実質的に大きく、および2)試験ボード中の気泡間の平均壁厚は対照ボード中の気泡間の平均壁厚よりもかなり大きかった。一般に、試験ボードNo.14における気泡間の平均壁厚は、約50ミクロン?約200ミクロンであった。対照的に、対照ボードAにおける気泡間の平均壁厚は一般に約20?30ミクロンであった。追加的に、図15の500×顕微鏡写真は、気泡の壁に沿って顕微鏡写真の右方向に延びている強化高密度化表面「A」を示す。
【0087】
上述のとおり、より大きな気泡間の平均壁厚は、仕上ウォールボードに対してより高い強度、すなわち、より良好な釘引抜き耐性、より良好なコア/エッジ硬度、ならびに、例えばドリリング、切断および鋸引きの際の粉塵低減といったより良好な取り扱い特質を提供する。
【0088】
実施例13
平均気泡サイズ、壁厚および高密度化強化壁表面の存在の測定
コアサンプルは、テストされるべきウォールボードサンプルをけがくことにより調製されればよく、コアをスナッピングして適切なサイズのサンプルに分けた。次いで、例えば、けがきがなされた領域にわたって強制空気流を向けることにより、ゆるいデブリが除去される。次いで、コアサンプルが、従来の走査型電子顕微鏡写真技術を用いて取り付けられると共にコートされる。
【0089】
平均気泡サイズ
コアサンプルにおける無作為な位置で撮影した50×倍率での10枚の顕微鏡写真を準備する。これらの10枚の顕微鏡写真における気泡の各々にまたがる最大の断面距離を計測する。計測した距離を加算すると共に、平均最大断面距離を算出する。これが、サンプルの平均気泡サイズとなる。
【0090】
平均壁厚さ
コアサンプルにおける無作為な位置で撮影した50×倍率での10枚の顕微鏡写真を準備する。顕微鏡写真の水平縁部および垂直縁部が交差する気泡の各々間の距離を縁部に沿って計測する。すべての計測した距離を加算すると共に、平均距離を算出する。これがサンプルの平均壁厚である。
【0091】
高密度化強化壁表面
コアサンプルにおける無作為な位置で撮影した10枚の500×顕微鏡写真を準備する。これらの顕微鏡写真中に見られる拡大された気泡を、図15において特徴Aと識別されているもののような、気泡の縁に沿った太い白色のラインについて調べる。これらの太い白色のラインの存在が、サンプルにおける高密度化強化気泡壁表面の存在を示す。
【0092】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」および「an」および「the」という用語、ならびに、同様の指示対象の使用は、本明細書において他に示されていない限りにおいて、または、文脈により明らかに矛盾しない限りにおいて、単数形および複数形の両方をカバーすると理解される。本明細書における値の範囲の言及は、本明細書において他に示されていない限りにおいて、単に、その範囲内に属する個別の値の各々への個別の参照の省略的な方法のためと意図されており、および、各個別の値は、本明細書において個別に言及されたかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書において他に示されていない限りにおいて、または文脈により明らかに矛盾しない限りにおいて、いかなる好適な順番で実施されることも可能である。本明細書におけるいかなるおよびすべての例、または例示的な言い回し(例えば、「などの(such as)」)の使用は、単に、本発明をよりよく明らかにすることだけを意図し、特許請求されていない限りにおいて、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる言い回しも、特許請求されていないいずれかの構成要素を本発明の実施に必須として示すと解釈されるべきではない。
【0093】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書において、本発明を実施するための本発明者らに公知である最良の形態を含んで記載されている。例示の実施形態は単に例示であり、本発明の範囲を限定するとすべきではないことが理解されるべきである。
[付記1]
2枚の実質的に平行なカバーシートの間に形成された固化石膏コアを含み、固化石膏コアは固化石膏コア全体にわたって分散された気泡を有し、前記気泡は約30?約200ミクロンの平均厚を有する壁を有する石膏ウォールボード。
[付記2]
前記気泡の壁が約50?約200ミクロンの平均厚を有する、付記1に記載の石膏ウォールボード。
[付記3]
前記気泡の壁が強化高密度化表面を有する、付記1に記載の石膏ウォールボード。
[付記4]
前記固化石膏コアが:
水、スタッコ、スタッコの重量に基づいて約0.5重量%?約10重量%の量で存在するアルファ化デンプン、スタッコの重量に基づいて約0.2重量%?約2重量%の量で存在するナフタレンスルホン酸分散剤、スタッコの重量に基づいて約0.1重量%?約0.4重量%の量で存在するトリメタリン酸ナトリウム、およびスタッコの重量に基づいて0?約0.2重量%の量で存在するガラス繊維を含む石膏含有スラリーから形成されている、付記3に記載の石膏ウォールボード。
[付記5]
前記アルファ化デンプンが、スタッコの重量に基づいて約0.5重量%?約4重量%の量で存在している、付記4に記載の石膏ウォールボード。
[付記6]
水/スタッコ比が約0.7?約1.3である、付記4に記載の石膏ウォールボード。
[付記7]
前記カバーシートが紙を含む、付記1に記載の石膏ウォールボード。
[付記8]
少なくとも1枚のカバーシートが高張力紙である、付記7に記載の石膏ウォールボード。
[付記9]
少なくとも1枚のカバーシートが、繊維状マット、不織ガラス繊維マット、織ガラスマットおよび非セルロース系布からなる群から選択される、付記3に記載の石膏ウォールボード。
[付記10]
2枚の実質的に平行なカバーシートの間に形成された固化石膏コアを含み、前記固化石膏コアは固化石膏コア全体にわたって分散された気泡を有し、前記気泡は強化高密度化表面および約30?約200ミクロンの平均厚を有する壁を有し、ならびに、前記固化石膏コアは約27pcf?約30pcfの密度を有する、軽量石膏ウォールボード。
[付記11]
前記固化石膏コアが:
水、スタッコ、スタッコの重量に基づいて約0.5重量%?約10重量%の量で存在するアルファ化デンプン、スタッコの重量に基づいて約0.2重量%?約2重量%の量で存在するナフタレンスルホン酸分散剤、スタッコの重量に基づいて約0.1重量%?約0.4重量%の量で存在するトリメタリン酸ナトリウムおよびスタッコの重量に基づいて0?約0.2重量%の量で存在するガラス繊維を含む石膏含有スラリーから形成されている、付記10に記載の軽量石膏ウォールボード。
[付記12]
前記アルファ化デンプンが、スタッコの重量に基づいて約0.5重量%?約4重量%の量で存在している、付記11に記載の石膏ウォールボード。
[付記13]
少なくとも1枚のカバーシートが高張力紙である、付記10に記載の軽量石膏ウォールボード。
[付記14]
少なくとも1枚のカバーシートが、繊維状マット、不織ガラス繊維マット、織ガラスマットおよび非セルロース系布からなる群から選択される、付記10に記載の軽量石膏ウォールボード。
[付記15]
2枚の実質的に平行な紙カバーシートの間に形成された固化石膏コアを含み、前記固化石膏コアは固化石膏コア全体にわたって分散された気泡を有し、前記気泡は約70?約120ミクロンの平均厚を有する壁を有し、前記固化石膏コアは:
水、スタッコ、スタッコの重量に基づいて約3重量%の量で存在するアルファ化デンプン、スタッコの重量に基づいて約1.5重量%の量で存在するナフタレンスルホン酸分散剤の45重量%水溶液、スタッコの重量に基づいて約0.3重量%の量で存在するトリメタリン酸ナトリウムおよびスタッコの重量に基づいて0?約0.2重量%の量で存在するガラス繊維、ならびに、石鹸の泡を含む石膏含有スラリーから形成されており、
少なくとも1枚のカバーシートが高張力紙であり、
前記固化石膏コアが約29pcfの密度を有し、
ならびに、1/2インチ厚ボードについて約1200lb/MSFの乾燥重量、少なくとも約77lb/MSFの釘引抜き耐性、および少なくとも約11lb/MSFのコア硬度を有する軽量石膏ウォールボード。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
2枚のカバーシートの間に配置された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、スタッコ、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、並びに、紙繊維及び/又はガラス繊維を含むスラリーから形成され、
前記起泡剤は、Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下であり、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
前記壁は、走査型電子顕微鏡画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚を有し、
前記気泡は、走査型電子顕微鏡画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下であり、
前記石膏結晶マトリックスは、ASTM C-473に基づいて、前記固化石膏コアの平均コア硬度が少なくとも11ポンド(約5kg)となるように形成されており、
前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m^(3))から35pcf(約560kg/m^(3))である、
ことを特徴とする軽量石膏ボード。
【請求項3】
2枚のカバーシートの間に配置された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、及びスタッコを含むスラリーから形成され、
前記起泡剤は、Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下であり、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
前記壁は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚を有し、
前記気泡は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下であり、
前記石膏結晶マトリックスは、ASTM C-473に基づいて、前記固化石膏コアの平均コア硬度が少なくとも11ポンド(約5kg)となるように形成されており、
前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m^(3))から35pcf(約560kg/m^(3))である、
ことを特徴とする軽量石膏ボード。
【請求項4】
前記軽量石膏ボードの密度は、24pcf(約380kg/m^(3))?35pcf(約560kg/m^(3))である、請求項2又は3に記載の軽量石膏ボード。
【請求項5】
前記軽量石膏ボードの密度は、31pcf(約500kg/m^(3))以下である、請求項2から4のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項6】
前記軽量石膏ボードの密度は、24pcf(約380kg/m^(3))?31pcf(約500kg/m^(3))である、請求項2又は3に記載の軽量石膏ボード。
【請求項7】
前記アルファ化デンプンは、スタッコの重量に基づいて0.5重量%?10重量%の量で存在する、請求項2から6のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
前記ナフタレンスルホン酸分散剤はスタッコの重量に基づいて0.1重量%?3重量%の量で存在する、請求項2から7のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【請求項12】
前記気泡の前記平均孔径は直径で10ミクロンから100ミクロンの間である、請求項2から7及び9のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項13】
前記気泡の前記平均孔径は直径で20ミクロンから100ミクロンの間である、請求項2から7、9及び12のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項14】
前記気泡の前記平均孔径は直径で50ミクロンから100ミクロンの間である、請求項2から7、9、12、及び13のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項15】
前記壁の前記平均壁厚は50ミクロンから200ミクロンの間である、請求項2から7、9、及び12から14のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項16】
前記壁の前記平均壁厚は70ミクロンから120ミクロンの間である、請求項2から7、9、及び12から15のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項17】
前記壁は、走査型電子顕微鏡画像を用いて孔径を計測したとき、(i)100ミクロン超の直径の孔径を有する気泡、(ii)50ミクロン?100ミクロンの直径の孔径を有する気泡、及び(iii)50ミクロン未満の直径の孔径を有する気泡を画定する、請求項2から7、9、及び12から16のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項18】
前記固化石膏コアは、0.7?1.3の範囲の水/スタッコ比を用いて形成される、請求項2から7、9、及び12から17のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項19】
前記軽量石膏ボードは、1/2インチ(約1.3cm)の厚さの前記軽量石膏ボードで、1000lb/MSF(約5kg/m^(2))?1400lb/MSF(約6.8kg/m^(2))の乾燥重量を有する、請求項2から7、9、及び12から18のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-12-10 
出願番号 特願2015-218178(P2015-218178)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C04B)
P 1 651・ 574- YAA (C04B)
P 1 651・ 572- YAA (C04B)
P 1 651・ 113- YAA (C04B)
P 1 651・ 537- YAA (C04B)
P 1 651・ 121- YAA (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 手島 理伊藤 真明  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 宮澤 尚之
末松 佳記
登録日 2018-10-12 
登録番号 特許第6416074号(P6416074)
権利者 ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
発明の名称 高デンプンおよび高分散剤レベルで形成された石膏ウォールボードの微小構造特徴  
代理人 桜田 圭  
代理人 桜田 圭  
代理人 木村 満  
代理人 森川 泰司  
代理人 木村 満  
代理人 森川 泰司  

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