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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q |
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管理番号 | 1371938 |
審判番号 | 不服2020-4028 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-03-25 |
確定日 | 2020-10-05 |
事件の表示 | 特願2019-131243「カバー組立体」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,令和元年7月16日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 元年 9月 6日付け: 拒絶理由通知 令和 元年10月30日: 意見書の提出 令和 元年12月20日付け: 拒絶査定 令和 2年 3月25日: 拒絶査定不服審判の請求 令和 2年 5月 8日付け: 拒絶理由通知 令和 2年 6月23日: 意見書,手続補正書の提出 第2 本願発明 令和2年6月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである(下線は請求人による。)。 「筒体を周方向所定間隔で分割してできる複数の立体を各々の外形として有するとともに,収容空間部を内部に有する複数のカバーと, 前記複数のカバーが全体として筒体となるように配置された状態で,前記複数のカバーの内周面に囲まれるように位置する柱の中間部に対して,前記複数のカバーを取り付けるための取付機構と を備えるカバー組立体。」 第3 拒絶の理由 当審が令和2年5月8日付けで通知した拒絶理由のうちの理由1(新規性)の概要は,次のとおりのものである。 この出願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記1の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 1.特開2012-75240号公報 第4 引用文献の記載,引用発明 1 当審が通知した拒絶理由で引用された特開2012-75240号公報(以下「引用文献1」という。)には,次の記載がある(下線は当審による。)。 (1)「【0018】 次に,本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は,本発明の第一の実施形態に係る電柱用保護カバーが取り付けられた電柱の外観図である。図において,電柱1は,下端が地面Gに埋設されて立設されている。電柱1の上端には,架空地線2が架設されている。また,電柱1における架空地線2の下方には,高圧線3や,電話通信等のための通信線4が架設されており,高圧線3により送電される送電電力を変圧するための変圧器5も設置されている。 【0019】 架空地線2,変圧器5,及び通信線4には,これらを個々に接地させるために地中にまで延びる接地線6がそれぞれに接続されている。これら接地線6は,上端が前記各線,下端が地中に埋設された接地極7に接続されている。 【0020】 電柱用保護カバー9は,電柱1の外周面1aを地面Gから所定の高さ範囲で覆うものであり,電柱1の外周面1a全周を覆う円筒状のカバー本体10を備えている。カバー本体10は,その下端側の一部が電柱1とともに地面Gに埋設されており,地面Gに埋設されている埋設部分は,約75センチメートルの長さとされている。また,上端側である地上部分は,約200センチメートルの長さとされている。従って,カバー本体10の全体の長さとしては,約275センチメートルに設定されている。電柱用保護カバー9は,各接地線6における地面Gからの高さ約200センチメートルから地面Gより下方約75センチメートルの範囲を,内部に収納し保護している。 【0021】 図2は,カバー本体10の斜視図であり,図3(a)は,図2中,矢印A部分の断面図,図3(b)は,図2中,矢印B部分の断面図である。カバー本体10は,図に示すように,その内周面10aが電柱1の外周面1aに接する円筒形状に形成されており,具体的な材質としては,ポリカーボネートが用いられている。ポリカーボネートは,絶縁性及び耐久性に優れており,電柱用保護カバー9の材質として好適な性質を有している。 【0022】 カバー本体10は,互いに周方向に連結されて当該円筒形状のカバー本体10を構成する4つの分割部材11を備えている。各分割部材11は,円筒状のカバー本体10を周方向に4分割した形状とされている。各分割部材11には,それぞれ,電柱の軸方向(上下方向)に沿って当該分割部材11を貫通している収納空間12が形成されている。この収納空間12は,断面がカバー本体10の周方向に沿う円弧状に形成されており,電柱1の外周側に取り付けられる接地線6等の付帯物をカバー外側面10bよりも内側に収納する空間であり,電柱1の軸方向(上下方向)に貫通している。 【0023】 各分割部材11は,下端から所定の高さの範囲においては,図2及び図3(b)に示すように,内側面が電柱1に接する内周面10aである断面円弧状の内側壁11aと,内側壁11aよりも外周側に配置された断面円弧状の外周壁11bと,両壁11a,11bの周方向両端を繋ぐ柱部11cとによって構成されている。」 (2)「【0029】 図4に戻って,分割部材11の柱部11cには,周方向に貫通する複数の孔部14が形成されている。この孔部14には,各分割部材11を電柱1の外側に配置して連結し,カバー本体10として組み立てた後に,各分割部材11を電柱1に締め付けて固定するための固定バンド15が挿通される。」 (3)図1 (4)図2 (5)図4 2 電柱用保護カバー9は,電柱1の外周面1aを覆うものであり,電柱1の外周面1a全周を覆う円筒状のカバー本体10を備えている(段落【0020】)ところ,図1から,電柱用保護カバー9の下端よりも電柱1の下端の方が下に位置し,電柱用保護カバー9の上端よりも電柱1の上端の方が上に位置していることが見て取れる。そうすると,電柱用保護カバー9の電柱1に対する取り付け位置は,電柱1の中間部である。 3 上記1及び2から,引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「互いに周方向に連結されて円筒形状のカバー本体を構成する4つの分割部材(段落【0022】) を備え,電柱の外周面を覆い,電柱の中間部に取り付けられる,電柱用保護カバー(上記2)であって, 各分割部材は,断面円弧状の内側壁11aと,内側壁11aよりも外周側に配置された断面円弧状の外周壁11bと,両壁11a,11bの周方向両端を繋ぐ柱部11cとによって構成され(【0023】), 各分割部材にはそれぞれ収納空間が形成され(段落【0022】), 分割部材に形成された孔部に,各分割部材を電柱の外側に配置して連結し,カバー本体として組み立てた後に,各分割部材を電柱に締め付けて固定するための固定バンドが挿通される(段落【0029】), 電柱用保護カバー。」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「分割部材」は,「互いに周方向に連結されて円筒形状のカバー本体を構成する」から,筒体を周方向所定間隔で分割してできるものであるといえ,かつ,本願発明の「カバー」に相当する。 引用発明の「分割部材」が「4つ」であることは,複数であることに含まれる。 引用発明の「分割部材」は,「断面円弧状の内側壁11aと,内側壁11aよりも外周側に配置された断面円弧状の外周壁11bと,両壁11a,11bの周方向両端を繋ぐ柱部11cとによって構成され」るから,立体を外形として有するといえる。 引用発明の「分割部材」に「収納空間が形成され」ることは,本願発明の「カバー」が「収容空間部を内部に有する」ことに相当する。 引用発明の「電柱用保護カバー」は,「互いに周方向に連結されて円筒形状のカバー本体を構成する4つの分割部材を備え,電柱の外周面を覆い,電柱の中間部に取り付けられる」ものであるとともに,「分割部材に形成された孔部に,各分割部材を電柱の外側に配置して連結し,カバー本体として組み立てた後に,各分割部材を電柱に締め付けて固定するための固定バンドが挿通される」ものであるから,「固定バンド」は,「4つの分割部材」が全体として筒体となるように配置された状態で,「電柱の中間部」に対して「4つの分割部材」を取り付けられるためのものであり,取り付けられた状態では,電柱は「4つの分割部材」の内周面に囲まれるように位置するといえる。そして,引用発明の「電柱」,「固定バンド」はそれぞれ本願発明の「柱」,「取付機構」に含まれ,更に,引用発明の「4つの分割部材を備え」る「電柱用保護カバー」及び「固定バンド」からなる構成は,全体として本願発明の「カバー組立体」に相当する。 そうすると,本願発明と引用発明とは, 「筒体を周方向所定間隔で分割してできる複数の立体を各々の外形として有するとともに,収容空間部を内部に有する複数のカバーと, 前記複数のカバーが全体として筒体となるように配置された状態で,前記複数のカバーの内周面に囲まれるように位置する柱の中間部に対して,前記複数のカバーを取り付けるための取付機構と を備えるカバー組立体。」 である点で一致するから,本願発明は,引用文献1に記載された発明である。 第6 請求人の主張について 請求人は,令和2年6月23日提出の意見書において,引用文献1の電柱用保護カバー9は,電柱1の外周面1aを地面Gから所定の高さ範囲で覆うものであって,電柱1の中間部に取り付けられるものではない旨,主張する。 しかしながら,本願発明は,「柱の中間部に対して,前記複数のカバーを取り付ける」とは,「柱」に対する「複数のカバー」の取り付け位置が「柱の中間部」であるものとして,「柱」と「複数のカバー」との位置関係を特定するにすぎず,「複数のカバー」と地面との位置関係を何ら特定するものではない。したがって,請求人の上記主張は請求項の記載に基づいたものではなく,引用文献1の段落【0020】に電柱用保護カバー9が電柱1の外周面1aを地面Gから所定の高さ範囲で覆うものであることが記載されていることを理由に,引用発明が本願発明の「柱の中間部に対して,前記複数のカバーを取り付けるための取付機構」という構成と相違するということはできない。 よって,請求人の上記主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明は引用文献1に記載された発明であり,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-07-30 |
結審通知日 | 2020-07-31 |
審決日 | 2020-08-20 |
出願番号 | 特願2019-131243(P2019-131243) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(H01Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 新田 亮 |
特許庁審判長 |
北岡 浩 |
特許庁審判官 |
富澤 哲生 岡本 正紀 |
発明の名称 | カバー組立体 |
代理人 | 森本 聡二 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 徳本 浩一 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 田中 祐 |
代理人 | 中村 綾子 |