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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1371972
審判番号 不服2019-13084  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-01 
確定日 2021-03-10 
事件の表示 特願2016-543587号「医療用ステッチング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月9日国際公開、WO2015/102954、平成29年1月12日国内公表、特表2017-500966号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年12月31日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 7月25日 :翻訳文提出
平成30年 8月24日付け:拒絶理由の通知
平成31年 1月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 5月29日付け:拒絶査定
令和 元年10月 1日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出

第2 令和元年10月1日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年10月1日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
(a)取っ手部分と、
(b)前記取っ手部分の一方端部に連結される針要素と、
(c)先端部を有する縫合糸とを備え、
前記針要素は、
(b1)組織に挿入される挿入部と、
(b2)前記挿入部に設けられ、前記縫合糸の先端部と係合するように構成される糸引込み部とを含み、
前記針要素の糸引込み部と前記縫合糸の先端部とは解放可能に係合され、
前記針要素の挿入部は、前記糸引込み部を収容し、かつ前記縫合糸の先端部と前記糸引込み部とが係合している場合に前記縫合糸の少なくとも一部分を包囲する包囲部を備える、医療用ステッチング装置。
【請求項2】
前記針要素の糸引込み部は、前記縫合糸の先端部と磁気的に係合する、請求項1に記載の医療用ステッチング装置。
【請求項3】
前記針要素の糸引込み部は、前記縫合糸の先端部と機械的に係合する、請求項1に記載の医療用ステッチング装置。
【請求項4】
前記針要素の糸引込み部は、化学結合によって前記縫合糸の先端部と係合する、請求項1に記載の医療用ステッチング装置。
【請求項5】
前記針要素の糸引込み部及び前記縫合糸の先端部は、それぞれ、マグネットを備える、請求項1に記載の医療用ステッチング装置。
【請求項6】
前記糸引込み部は、前記糸引込み部に前記縫合糸の先端部を磁気的に連結させることによって、前記縫合糸の先端部と係合するマグネットを備える、請求項1に記載の医療用ステッチング装置。
【請求項7】
前記針要素の糸引込み部及び前記縫合糸の先端部は、それぞれ、嵌合機械的係合を備える、請求項1に記載の医療用ステッチング装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の平成31年1月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
(a)取っ手部分と、
(b)前記取っ手部分の一方端部に連結される針要素と、
(c)先端部を有する縫合糸とを備え、
前記針要素は、
(b1)組織に挿入される挿入部と、
(b2)前記挿入部に設けられ、前記縫合糸の先端部と係合するように構成される糸引込み部とを含む、医療用ステッチング装置の操作方法であって、
前記針要素の挿入部を、前記組織に穿刺する工程と、
前記組織に穿刺された前記針要素の糸引込み部を、前記縫合糸の先端部と係合する工程と、
前記縫合糸の先端部と係合した前記針要素を、前記組織から引抜く工程とを備える、医療用ステッチング装置の操作方法。
【請求項2】
前記針要素は、前記縫合糸と解放可能に係合する、請求項1に記載の医療用ステッチング装置の操作方法。
【請求項3】
前記針要素は、前記縫合糸と磁気的に係合する、請求項1又は2に記載の医療用ステッチング装置の操作方法。
【請求項4】
前記針要素は、前記縫合糸と機械的に係合する、請求項1又は2に記載の医療用ステッチング装置の操作方法。
【請求項5】
前記針要素は、化学結合によって前記縫合糸と係合する、請求項1又は2に記載の医療用ステッチング装置の操作方法。
【請求項6】
(a)先端部を有する縫合要素と、
(b)1)材料に挿入される挿入部と、2)前記挿入部に設けられ、前記縫合要素の先端部と係合するように構成された糸引込み部とを含む、針要素とを備える、針システムであって、
前記針要素の糸引込み部と前記縫合要素の先端部とは解放可能に係合され、
前記針要素の先端部は、前記糸引込み部を収容し、かつ前記縫合要素の先端部と前記糸 引込み部とが係合している場合に前記縫合要素の少なくとも一部分を内包する包囲部を備える、針システム。
【請求項7】
前記針要素の糸引込み部及び前記縫合要素の先端部は、それぞれ、マグネットを備える、請求項6に記載の針システム。
【請求項8】
前記糸引込み部は、前記糸引込み部に前記縫合要素の先端部を磁気的に連結させることによって、前記縫合要素の先端部と係合するマグネットを備える、請求項6に記載の針システム。
【請求項9】
前記針要素の糸引込み部及び前記縫合要素の先端部は、それぞれ、嵌合機械的係合を備える、請求項6?8の何れかに記載の針システム。

2.補正の適否
本件補正前の請求項1に係る発明の対象は、請求項1の末尾の記載から見て「医療用ステッチング装置の操作方法」であり、その発明のカテゴリーは「方法」の発明である。
一方、本件補正後の請求項1に係る発明の対象は、請求項1の末尾から見て「医療用ステッチング装置」であり、その発明のカテゴリーは「物」の発明である。
つまり、本件補正により、特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーが変更されたことになる。
しかし、特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーを変更する補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの事項を目的とする補正ともいえない。
よって、本件補正は特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

なお、本件補正後の請求項1が本件補正前の請求項6を補正したものであるとした場合についても、念のため以下検討する。
本件補正前の請求項6に係る発明は「針システム」に係る発明であるところ、補正後の請求項1に係る発明は「医療用ステッチング装置」に係る発明である。
ここで、後者の「医療用ステッチング装置」は前者の「針システム」に対して、針要素が一方端部に連結される取っ手部分に係る構成を付加したものであるが、当該取っ手部分に係る構成は「針システム」の発明特定事項ではなく、当該取って部分に係る構成を加入し「針システム」を「医療用ステッチング装置」とすることは、発明特定事項を概念的により下位の発明特定事項とすることにはあたらない。
よって、本件補正後の請求項1は、補正前の請求項6に発明特定事項を直列的に付加して限定したものとはいえず、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正にあたらないし、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの事項を目的とする補正ともいえない。
また、仮に本件補正が、補正後の請求項1に係る発明が補正前の請求項6に係る発明に発明特定事項を直列的に付加する補正であり特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するとしても、本件補正前の請求項6の従属項は請求項7ないし9(補正後の請求項5ないし7)であるところ、当該請求項6を補正した請求項1には上記従属項以外に請求項2ないし4という新たな従属項が加えられているから、本件補正は請求項数を増加させる補正に該当し、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの事項を目的とする補正ともいえない。
よって、本件補正後の請求項1が、補正前の請求項6を補正するものであるとしても、本件補正は特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

3.小活
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和元年1月25日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「(a)取っ手部分と、
(b)前記取っ手部分の一方端部に連結される針要素と、
(c)先端部を有する縫合糸とを備え、
前記針要素は、
(b1)組織に挿入される挿入部と、
(b2)前記挿入部に設けられ、前記縫合糸の先端部と係合するように構成される糸引込み部とを含む、医療用ステッチング装置の操作方法であって、
前記針要素の挿入部を、前記組織に穿刺する工程と、
前記組織に穿刺された前記針要素の糸引込み部を、前記縫合糸の先端部と係合する工程と、
前記縫合糸の先端部と係合した前記針要素を、前記組織から引抜く工程とを備える、医療用ステッチング装置の操作方法。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。
(産業上の利用可能性)この出願の請求項1?5に係る発明は、産業上利用することができる発明に該当しないから、 特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。

3.当審の判断
本願発明は、請求項1の末尾の記載から見て「医療用ステッチング装置の操作方法」に係る発明であるから方法の発明にあたり、「前記針要素の挿入部を、前記組織に穿刺する工程」及び「前記縫合糸の先端部と係合した前記針要素を、前記組織から引抜く工程」を含み、当該各工程は、通常医師により行われる対象組織に対して外科的処置を施す工程にあたるから、本願発明は手術する方法の発明に該当する。
そして、当該外科的処置の対象組織には通常人体の組織も含まれ、請求項1中には手術の対象から人体は除外する旨の記載はない。
よって、本願発明は、人体に対して外科的処置を施す方法であり、人間を手術する方法の発明に該当する。
もっとも、「医療機器の作動方法」は、医療機器自体に備わる機能を方法として表現したものであり、人間を手術する方法の発明に該当しない。
しかし、本願発明は「医療用ステッチング装置の操作方法」であるが、上記のとおり「前記針要素の挿入部を、前記組織に穿刺する工程」及び「前記縫合糸の先端部と係合した前記針要素を、前記組織から引抜く工程」を含んでおり、当該各工程は通常医師により行われる機器を操作する工程にあたり、医療機器自体に備わる機能を方法として表現したものとはいえない。
よって、本願発明を「医療機器の作動方法」であるとすることはできない。
以上のとおりであるから、本願発明は人間を手術する方法の発明にあたり、産業上利用することができる発明に該当しない。

第4 むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明(本願発明)は産業上利用することができる発明に該当せず、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-10-08 
結審通知日 2020-10-13 
審決日 2020-10-26 
出願番号 特願2016-543587(P2016-543587)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (A61B)
P 1 8・ 572- Z (A61B)
P 1 8・ 14- Z (A61B)
P 1 8・ 573- Z (A61B)
P 1 8・ 571- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮部 愛子  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 宮崎 基樹
井上 哲男
発明の名称 医療用ステッチング装置  
代理人 特許業務法人アイミー国際特許事務所  

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