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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A44C
管理番号 1372026
審判番号 不服2020-7890  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-09 
確定日 2021-03-30 
事件の表示 特願2017-246102「バンドおよび時計」拒絶査定不服審判事件〔令和元年7月11日出願公開、特開2019-111038、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成29年12月22日の出願であって、その手続は以下のとおりである。
令和元年10月8日付け(発送日:同年10月10日):拒絶理由通知書
令和元年12月3日:意見書、手続補正書の提出
令和2年3月12日付け(発送日:同年3月17日):拒絶査定
平成2年6月9日:審判請求書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和2年6月9日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
弾力を有する合成樹脂製のバンド本体と、
前記バンド本体と同じ合成樹脂で、かつ硬度が前記バンド本体の硬度よりも高い補強部と、
を備え、
前記補強部は前記バンド本体の端部に埋め込まれ、前記バンド本体と前記補強部との境界面は融合され、
前記補強部は、被取付部材に連結部材によって取り付けられた際に、前記被取付部材に対して接離可能に当接する回転止め部を備え、
前記回転止め部は、前記補強部の下面に突出して設けられていることを特徴とするバンド。
【請求項2】
請求項1に記載のバンドにおいて、前記補強部と前記バンド本体との前記境界面における前記バンド本体は、その肉厚が前記バンド本体の片側半分の厚さよりも薄く形成されていることを特徴とするバンド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバンドにおいて、前記補強部は、前記バンド本体の長手方向と直交する方向における中間部に、被取付部材の取付凸部が挿入して取り付けられる取付凹部が設けられていることを特徴とするバンド。
【請求項4】
請求項1?請求項3のいずれかに記載のバンドにおいて、前記回転止め部は、下側の肉厚が被取付部材側に位置する先端側に向けて次第に薄く形成されていることを特徴とするバンド。
【請求項5】
請求項1?請求項4のいずれかに記載のバンドにおいて、前記バンド本体と前記補強部は、頭部を備える連結部材により被取付部材に連結されることを特徴とするバンド。
【請求項6】
請求項1?請求項5のいずれかに記載のバンドを備えていることを特徴とする時計。」

第3 原査定の概要
原査定の概要は以下のとおりである。

この出願については、令和1年10月8日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。

備考
●理由(特許法第29条第2項)について
・請求項1、2
・引用文献等1、2

・請求項3
・引用文献等1-3

・請求項4
・引用文献等1-3

・請求項5、6
・引用文献等1-4

<引用文献等一覧>
1.特開2017-205260号公報
2.登録実用新案第3015249号公報
3.特開2009-156578号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010-281671号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献、引用発明
1 原査定の拒絶の理由に引用した特開2017-205260号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「バンドおよび時計」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は理解の一助のため当審で付した。

(1)「【0001】
この発明は、腕時計などの腕装着装置やバッグ、鞄、衣服などに用いられるバンドおよびそれを備えた時計に関する。」

(2)「【0007】
この発明が解決しようとする課題は、バンド本体に対する補強部材の取付強度を高め、補強部材に対するバンド本体の変形を確実に抑えることができるバンドおよびそれを備えた時計を提供することである。」

(3)「【0008】
この発明は、軟質材料のバンド本体と、このバンド本体の一端部に埋め込まれた硬質材料の補強部材と、を備え、この補強部材は、前記バンド本体の一端部にその端面から一部を露出させた状態で埋め込まれる本体部と、この本体部に前記バンド本体の長手方向と直交する方向に沿って設けられて連結部材が取り付けられる連結取付部と、前記バンド本体の一部が前記本体部に対して食い込む食込み部と、を備えていることを特徴とするバンドである。」

(4)「【0009】
この発明によれば、バンド本体の一部を補強部材の食込み部に食い込ませることができるので、バンド本体に対する補強部材の取付強度を高めることができると共に、補強部材に対するバンド本体の変形を確実に抑えることができる。」

(5)「【0015】
このバンド5は、図1?図4に示すように、バンド本体7の一端部7aが補強部材8 と共に腕時計ケース1のバンド取付部6に後述する連結部材であるばね棒11によって取り付けられるように構成されている。この場合、バンド本体7は、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの弾力性を有する軟質材料で形成されている。補強部材8は、金属または硬質の合成樹脂などの硬質材料で形成され、バンド本体7の一端部7aにインサート成型によって埋め込まれるように構成されている。」

(6)「【0033】
また、補強部材8には、図2?図5に示すように、腕時計ケース1のバンド取付部6にバンド本体7が取り付けられた際に、ばね棒11を中心とするバンド本体7の回転を規制する回転規制部14が設けられている。この回転規制部14は、補強部材8の本体部10におけるバンド本体7の一端部7aの端面から露出する露出面に設けられている。すなわち、この回転規制部14は、腕時計ケース1の外面に当接する第1当接部14aと、腕時計ケース1の下面に当接する第2当接部14bと、を備えている。
【0034】
これにより、バンド5は、図1?図4に示すように、バンド本体7の一端部7aが腕時計ケース1のバンド取付部6における一対の取付突起部6a間に配置されてばね棒11によって取り付けられた際に、回転規制部14の第1当接部14aが腕時計ケース1の外周面に当接し、回転規制部14の第2当接部14bが腕時計ケース1の下面に当接することにより、バンド本体7の一端部7aの端面と腕時計ケース1の外面との間に隙間が生じないように構成されている。」

(7)「【0035】
次に、このような腕時計のバンド5を製作する場合について説明する。
この場合には、予め、補強部材8を製作する。このとき、補強部材8が例えば金属である場合には、切削加工によって形成する。また、補強部材8が硬質の合成樹脂である場合には、補強部材8の射出成型用の金型で成型する。
【0036】
すなわち、補強部材8が硬質の合成樹脂である場合には、バンド本体7の一端部7aの端面から露出する補強部材8の露出面に凹部10aが補強部材8の内部に食い込んで形成されることにより、補強部材8を射出成型用の金型(図示せず)で成型する際に、補強部材8の内部に食い込んだ凹部10aによって補強部材8にヒケが生じないように形成することができる。
【0037】
これにより、補強部材8は、図5に示すように、本体部10、連結取付部12、および切欠き部13が一体に形成される。このときには、本体部10に凹部10aと回転規制部14の第1当接部14aと回転規制部14の第2当接部14bとがそれぞれ形成され、連結取付部12に連結挿入孔12aが形成される。
【0038】
この補強部材8をバンド本体7の一端部7aにインサート成型する際には、補強部材8の連結取付部12の連結挿入孔12aにばね棒11のパイプ11aと同じ外径のスライドピン(図示せず)を挿入させて連結取付部12の両側に突出させ、この状態でバンド本体7の成型用の金型(図示せず)内に補強部材8を配置する。このときには、補強部材8の本体部10に設けられた凹部10aに金型の一部を挿入させる。これにより、補強部材8が金型内に精度良く正確に位置規制される。
【0039】
この状態で、バンド本体7の成型用の金型内に軟質の合成樹脂を充填させて硬化させると、補強部材8が埋め込まれたバンド本体7が形成される。このときには、金型内に充填された軟質の合成樹脂が、補強部材8の本体部10の一面を除いて、補強部材8のほぼ全体を覆った状態で、補強部材8の食込み部である切欠き部13に充填されると共に、補強部材8の両側部にも充填される。
【0040】
そして、バンド本体7の成型用の金型を離型してバンド本体7を取り出すと、バンド本体7の一端部7aに補強部材8が埋め込まれたバンド5が得られる。このバンド5は、バンド本体7の一端部7aの端面から補強部材8の本体部10の一面、つまり本体部10に設けられた回転規制部14の第1当接部14aと第2当接部14bとが露出した状態で、補強部材8がバンド本体7の一端部7a内に強固に固定されている。」

(8)「【0050】
また、このときには、バンド本体7の一端部7aの端面から露出した補強部材8の露出面である回転規制部14がバンド本体7の一端部7aにおける両側部の端面と同一面上に位置して形成されていることにより、補強部材8の回転規制部14が腕時計ケース1の外面にバンド本体7の一端部7aにおける両側部の端面と共に対面して当接する。これにより、バンド5はばね棒11を中心とする回転が規制される。」

(9)「【0055】
このように、この腕時計のバンド5によれば、軟質材料のバンド本体7の一端部7aにインサート成型によって埋め込まれた硬質材料の補強部材8が、バンド本体7の一端部7aにその端面から一部を露出させた状態で埋め込まれる本体部10と、この本体部10にバンド本体7の長手方向と直交する方向に沿って設けられてばね棒11が取り付けられる連結取付部12と、インサート成型時にバンド本体7の一部7eが本体部10に対して食い込む切欠き部13と、を備えているので、バンド本体7に対する補強部材8の取付強度を高めて、補強部材8に対するバンド本体7の変形を確実に抑えることができる。」

(10)「【0067】
また、この腕時計のバンド5では、補強部材8をバンド本体7の一端部7aにインサート成型する際に、インサート成型用の金型の一部を補強部材8の凹部10aに挿入させることができるので、補強部材8をインサート成型用の金型内に正確にかつ確実に位置規制することができる。
【0068】
このため、この腕時計のバンド5では、バンド本体7の一端部7aに対して補強部材8を正確に位置規制することができるので、バンド本体7の一端部7aにおける両側部を均一な肉厚で形成することができると共に、腕時計ケース1の外面に対面するバンド本体7の一端部7aにおける両側部の各端面をバンド本体7の一端部7aから露出する補強部材8の露出面と同一平面に形成することができる。
【0069】
これにより、この腕時計のバンド5では、バンド本体7の一端部7aを腕時計ケース1のバンド取付部6にばね棒11によって取り付けた際に、バンド本体7の一端部7aの端面と腕時計ケース1の外面との間に隙間が生じないようにすることができ、これによっても腕時計ケース1とバンド5との一体感を得ることができる。
【0070】
さらに、この腕時計のバンド5では、補強部材8にばね棒11を中心とするバンド本体7の回転を規制する回転規制部14が設けられていることにより、ばね棒11を中心にバンド本体7が回転するのを確実に規制することができ、これによりバンド本体7が軟質材料で形成されていても、バンド本体7の一端部7aの端面と腕時計ケース1の外面との間に隙間が生じないようにすることができ、これによっても腕時計ケース1とバンド5との一体感を得ることができる。
【0071】
すなわち、この回転規制部14は、腕時計ケース1の外周面に当接する第1当接部14aと、腕時計ケース1の下面に当接する第2当接部14bと、を備えているので、第1当接部14aをバンド取付部6の一対の取付突起部6a間に位置する腕時計ケース1の外周面に当接させ、第2当接部14bを腕時計ケース1の下部外周の下面に当接させることができ、これによりばね棒11を中心とするバンド5の回転を確実に阻止できると共に、腕時計ケース1の外面とバンド本体7の一端部7aの端面との間に隙間が生じないようにすることができる。」

上記(1)ないし(10)の記載事項及び図の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

[引用発明]
「シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの弾力性を有する軟質材料のバンド本体7と、
硬質の合成樹脂で形成されている補強部材8と、
を備え、
前記補強部材8は前記バンド本体7の端部に埋め込まれ、前記バンド本体7と前記補強部材8とは強固に固定され、
前記補強部材8は、腕時計ケース1のバンド取付部6にばね棒11によって取り付けられた際に、腕時計ケース1のバンド取付部6に対して当接する回転規制部14を備え、
前記回転規制部14は、前記補強部材8に設けられているバンド5。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、登録実用新案第3015249号公報(以下「引用文献2」という。)には、「時計バンド」に関して、段落【0007】ないし【0011】及び図1ないし3を参照すると、以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献2記載事項]
「時計バンド3の裏側の軟質部分2aを軟質のシリコンゴム又はウレタン樹脂から形成し、時計バンド3の表側、エンドピース4及び止孔併設部分5の硬質部分1aを硬質のシリコンゴム又はウレタンゴムから形成し、軟質部分2aと硬質部分1aとを熱加圧成型すること。」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2009-156578号公報(以下「引用文献3」という。)には、「バンド取付構造」に関して、段落【0022】及び【0025】ないし【0027】並びに図8及び9を参照すると、以下の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献3記載事項]
「バンド取付構造において、固定部材17は、取付部材14によってバンド取付部10に取り付けられた状態で、図8および図9に示すように、時計バンド2が押し下げられた際に、押え部25が切り起こされた箇所の両側に位置する平坦部18の一部がバンド取付部10の下面に当接することにより、図8に示す矢印X方向に回転するのを阻止すること。」

4 引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2010-281671号公報(以下「引用文献4」という。)には、「時計バンドの取付構造」に関して、段落【0015】、【0019】、【0024】及び【0026】並びに図1ないし3を参照すると、以下の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献4記載事項]
「時計バンドの取付構造において、腕時計ケース1のバンド取付部2には、時計バンド3がバンド取付部材4によって取り付けられ、バンド取付部材4は、頭部13aを有する第1のねじ部材と、頭部14aを有する第2のねじ部材14とを備えていること。」

5 参考文献
令和元年10月8日付けの拒絶理由通知において引用されたが原査定では引用されていない、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2015-39387号公報(以下「参考文献」という。)には、「バンド取付構造および腕時計」に関して、段落【0027】ないし【0029】及び図6を参照すると、以下の事項(以下「参考文献記載事項」という。)が記載されている。

[参考文献記載事項]
「バンド取付構造において、連結部材11を中心に緩衝部材16が回転する際に、その回転範囲を規制する回転規制部23を備え、この回転規制部23は、連結部材11を中心に緩衝部材16が時計バンド10の端部10aと共に押し下げられる方向に回転した際に、各アーム部17の薄肉部17aにおける下側に位置する規制突起部23bがケース本体2の当接突起部23cに下側から当接することにより、緩衝部材16の押し下げ方向への回転を規制して、時計バンド10の回転を規制すること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、その機能、構成又は技術的意義からみて、後者の「シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの弾力性を有する軟質材料」は前者の「弾力を有する合成樹脂製」に相当し、以下同様に、「バンド本体7」は「バンド本体」に、「補強部材8」は「補強部」に、「腕時計ケース1のバンド取付部6」は「被取付部材」に、「ばね棒11」は「連結部材」に、「回転規制部14」は「回転止め部」に、「バンド5」は「バンド」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「硬質の合成樹脂で形成されている」と、本願発明1の「バンド本体と同じ合成樹脂で、かつ硬度が前記バンド本体の硬度よりも高い」とは、「合成樹脂で、かつ硬度が前記バンド本体の硬度よりも高い」という限りにおいて一致する。
また、引用発明の「バンド本体7と前記補強部材8とは強固に固定され」と、本願発明1の「バンド本体と前記補強部との境界面は融合され」とは、「バンド本体と前記補強部とは強固に固定され」という限りにおいて一致する。
また、引用発明の「当接する」と、本願発明1の「接離可能に当接する」とは、「当接する」という限りにおいて一致する。
また、引用発明の「補強部材8に設けられている」と、本願発明1の「補強部の下面に突出して設けられている」とは、「補強部に設けられている」という限りにおいて一致する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。

[一致点]
「弾力を有する合成樹脂製のバンド本体と、
硬度が前記バンド本体の硬度よりも高い補強部と、
を備え、
前記補強部は前記バンド本体の端部に埋め込まれ、前記バンド本体と前記補強部とは強固に固定され、
前記補強部は、被取付部材に連結部材によって取り付けられた際に、前記被取付部材に対して当接する回転止め部を備え、
前記回転止め部は、前記補強部の下面に設けられているバンド。」

[相違点]
[相違点1]
補強部に関し、本願発明1は、「バンド本体と同じ合成樹脂で、かつ硬度が前記バンド本体の硬度よりも高い補強部」を備え、「前記補強部は前記バンド本体の端部に埋め込まれ、前記バンド本体と前記補強部との境界面は融合され」ているのに対し、引用発明の補強部材8は、バンド5と「同じ」合成樹脂からなるものではなく、バンド5と補強部材8との境界面は「融合され」るとは規定されていない点。

[相違点2]
回転止め部に関し、本願発明1は、「補強部は、被取付部材に連結部材によって取り付けられた際に、前記被取付部材に対して接離可能に当接する回転止め部を備え、前記回転止め部は、前記補強部の下面に突出して設けられている」のに対し、引用発明においては、回転規制部14は、補強部材8の下面に設けられているが、「接離可能」であるかどうか明らかではく、「下面に突出して」設けられていない点。

相違点について検討する。
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記「第4」の2ないし5で述べたとおり、引用文献2記載事項は、「時計バンド3の裏側の軟質部分2aを軟質のシリコンゴム又はウレタン樹脂から形成し、時計バンド3の表側、エンドピース4及び止孔併設部分5の硬質部分1aを硬質のシリコンゴム又はウレタンゴムから形成し、軟質部分2aと硬質部分1aとを熱加圧成型すること。」であり、引用文献3記載事項は、「バンド取付構造において、固定部材17は、取付部材14によってバンド取付部10に取り付けられた状態で、図8および図9に示すように、時計バンド2が押し下げられた際に、押え部25が切り起こされた箇所の両側に位置する平坦部18の一部がバンド取付部10の下面に当接することにより、図8に示す矢印X方向に回転するのを阻止すること。」であり、引用文献4記載事項は、「時計バンドの取付構造において、腕時計ケース1のバンド取付部2には、時計バンド3がバンド取付部材4によって取り付けられ、バンド取付部材4は、頭部13aを有する第1のねじ部材と、頭部14aを有する第2のねじ部材14とを備えていること。」であり、いずれも上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
なお、参考文献記載事項は、「バンド取付構造において、連結部材11を中心に緩衝部材16が回転する際に、その回転範囲を規制する回転規制部23を備え、この回転規制部23は、連結部材11を中心に緩衝部材16が時計バンド10の端部10aと共に押し下げられる方向に回転した際に、各アーム部17の薄肉部17aにおける下側に位置する規制突起部23bがケース本体2の当接突起部23cに下側から当接することにより、緩衝部材16の押し下げ方向への回転を規制して、時計バンド10の回転を規制すること。」というものであるが、参考文献記載事項の規制突起部23は、補強部の「下面に突出して」設けられているものではない。
また、引用発明において、「補強部は、被取付部材に連結部材によって取り付けられた際に、前記被取付部材に対して接離可能に当接する回転止め部を備え、前記回転止め部は、前記補強部の下面に突出して設けられている」ことは、本願の出願前の周知技術であったというべき証拠は無く、また、当業者が適宜決定し得た設計的な事項であるともいえない。
そうすると、引用発明において、引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項を参酌しても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできず、本願発明1が有する格別の作用効果(本願明細書の段落【0036】、【0044】、【0045】、【0057】、【0058】等の記載を参照。)を奏することはできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし6について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし6は、請求項1の記載を置換することなく直接又は間接的に引用するものであるから、本願発明2ないし6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2ないし6は、本願発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 小括
本願発明1ないし6は、原査定で引用された引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-15 
出願番号 特願2017-246102(P2017-246102)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A44C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高田 基史永冨 宏之  
特許庁審判長 北村 英隆
特許庁審判官 渡邊 豊英
金澤 俊郎
発明の名称 バンドおよび時計  

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