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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1372112
審判番号 不服2020-9483  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-06 
確定日 2021-03-30 
事件の表示 特願2016- 39575「静電潜像現像用トナー」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月 7日出願公開、特開2017-156543、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2016-39575号(以下「本件出願」という。)は、平成28年3月2日を出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和元年 8月26日付け:拒絶理由通知書
令和元年10月30日提出:意見書、手続補正書
令和2年 1月20日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和2年 3月 3日提出:意見書、手続補正書
令和2年 4月23日付け:補正の却下の決定
令和2年 4月23日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年 7月 6日提出:審判請求書

2 原査定の概要
原査定(令和2年4月23日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
本件出願の請求項1?7に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものを含む。

引用文献1:特開2015-184466号公報
引用文献2:特開2012-18391号公報
引用文献3:特開2012-255957号公報
引用文献4:特開2015-121661号公報
引用文献5:特開2008-76648号公報
引用文献6:特開2008-15136号公報
引用文献7:特開2004-163612号公報
引用文献8:特開平10-39536号公報
引用文献9:特開2012-163634号公報
(当合議体注:主引用例は引用文献1?4であり、引用文献5?9は、請求項1?7に対しての周知技術を例示する文献として引用されたものである。)

3 本願発明
本件出願の請求項1?請求項7に係る発明は、令和元年10月30日にした手続補正(以下「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1?請求項7に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「 【請求項1】
コア・シェル構造を有するトナー母体粒子と、外添剤と、を含有する静電潜像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子が、ビニル系樹脂を含有するコア粒子と、前記コア粒子の表面を被覆率60?99%の範囲内で被覆するシェルとを有し、
前記シェルが、非晶性ポリエステル樹脂を含有し、
前記外添剤が、架橋したビニル系樹脂粒子を含有し、
前記架橋したビニル系樹脂粒子が、個数平均粒径が30?300nmの範囲内であり、前記架橋したビニル系樹脂粒子が、架橋性ビニル単量体由来の構造単位を含む架橋樹脂と、非架橋性ビニル単量体由来の構造単位を含む非架橋性樹脂とを含有し、
前記非架橋性ビニル単量体が、スチレン及びメタクリル酸メチルであり、かつ、前記架橋性ビニル単量体由来の構造単位の含有量が、前記非架橋性ビニル単量体100質量%に対して5?30質量%の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
【請求項2】
前記コア粒子の表面を前記シェルが、被覆率70?95%の範囲内で被覆していることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項3】
前記コア粒子が、結晶性樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項4】
前記結晶性樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項3に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項5】
前記結晶性樹脂が、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントとが結合してなる結晶性樹脂であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項6】
前記架橋したビニル系樹脂粒子の平均粒径が、50?200nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項7】
前記架橋したビニル系樹脂粒子が、前記静電潜像現像用トナー全体に対して、0.05?3.0質量%の範囲内含有されていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。」

第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されている特開2015-184466号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す。

ア 「【請求項1】
非晶性ポリエステル樹脂と、前記非晶性ポリエステル樹脂よりもガラス転移温度が3℃以上15℃以下高いスチレン-アクリル共重合樹脂と、を含有し、
X線光電子分光装置(XPS)により測定される表面に存在する樹脂成分に占める前記スチレン-アクリル共重合樹脂の割合が5atom%以上30atom%以下である静電荷像現像用トナー。
・・・中略・・・
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真プロセスは、情報化社会における機器の発達や通信網の充実により、複写機のみならず、オフィスのネットワークプリンター、パソコンのプリンター、オンデマンド印刷のプリンター等にも広く利用され、白黒、カラーを問わず、高画質、高速化、高信頼性、小型化、軽量化、省エネルギー性能がますます強く要求されてきている。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、黒点の発生が抑制される静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
即ち、請求項1に係る発明は、
非晶性ポリエステル樹脂と、前記非晶性ポリエステル樹脂よりもガラス転移温度が3℃以上15℃以下高いスチレン-アクリル共重合樹脂と、を含有し、
X線光電子分光装置(XPS)により測定される表面に存在する樹脂成分に占める前記スチレン-アクリル共重合樹脂の割合が5atom%以上30atom%以下である静電荷像現像用トナー。」

イ 「【0028】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態の静電荷像現像用トナー(以下、本実施形態に係るトナーと称することがある)は、非晶性ポリエステル樹脂と、前記非晶性ポリエステル樹脂よりもガラス転移温度が3℃以上15℃以下高いスチレン-アクリル共重合樹脂と、を含有し、X線光電子分光装置(XPS)により測定される表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン-アクリル共重合樹脂の割合が5atom%以上30atom%以下とされたトナーである。
・・・中略・・・
【0031】
本実施形態において、トナー表面に非晶性ポリエステル樹脂の領域とスチレン-アクリル共重合樹脂の領域とが個別に存在しているか否かは、例えば、下記方法により観測される。
トナー表面を走査型顕微鏡で観察することである程度のスチレン-アクリル共重合樹脂の領域の判断ができる。また、トナーをビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と硬化剤を用いて包埋したのち、切削用サンプルを作製する。次にダイヤモンドナイフを用いた切削機、例えばUltracutUCT(Leica社製)を用い‐100℃のもと厚み80nm以上130nm以下の薄片試料を作製する。その試料を超高分解能電界放出型走査顕微鏡、例えばS-4800(日立ハイテクノロジーズ社製)にて観察することによりスチレン-アクリル共重合樹脂の領域の判断ができる。
【0032】
本実施形態においては、X線光電子分光装置(XPS)により測定される本実施形態に係るトナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン-アクリル共重合樹脂の割合が5atom%以上30atom%以下とされる。トナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン-アクリル共重合樹脂の割合が5atom%未満であると、トナーの保管性が劣化することがある。一方、トナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン-アクリル共重合樹脂の割合が30atom%を超えると、黒点の発生が抑制出来ないことがある。トナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン-アクリル共重合樹脂の割合は5atom%以上25atom%以下が好ましく、5atom%以上20atom%以下が更に好ましい。
【0033】
X線光電子分光装置(XPS)によるトナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン-アクリル共重合樹脂の割合は、トナー表面のC1Sスペクトル強度をスチレン-アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及び離形剤のそれぞれのC1Sスペクトル強度より最小二乗法波形分離処理により分離し、トナー表面のC1S強度に対する波形分離により求められたスチレン-アクリル樹脂強度の比により求められる。
・・・中略・・・
【0072】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
・・・中略・・・
【0077】
(外添剤)
・・・中略・・・
【0079】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。」

ウ 「【実施例】
【0133】
以下、実施例および比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0134】
(非晶性ポリエステル樹脂Aの作製)
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:10モル%
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:40モル%
テレフタル酸:40モル%
ドデセニルコハク酸無水物:5モル%
トリメリット酸無水物:5モル%
【0135】
上記モノマー成分を攪拌機、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管を備えた反応容器中に投入し、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、触媒として上記モノマー成分の合計量に対してジブチル錫オキサイドの1.0%を加え、窒素ガス気流下約190℃で約5時間撹拌反応させ、さらに温度を約240℃に上げて約6時間撹拌反応させた後、反応容器内を10.0mmHgまで減圧し、減圧下で約0.5時間攪拌反応させて、黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂Aを得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度は55℃であった。
次いで、得られた非晶性ポリエステル樹脂Aを、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水80%、ポリエステル樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5Kg/cm^(2)、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、非晶性ポリエステル樹脂分散液A(固形分20%)を得た。
・・・中略・・・
【0140】
(結晶性ポリエステル樹脂の作製)
セバシン酸50モル%、1,6-ヘキサンジオール50モル%、及び上記モノマー成分の合計量に対してジブチル錫オキサイドの0.3%をフラスコ内で混合し、減圧雰囲気下で240℃に加熱して6時間脱水縮合して結晶性ポリエステル樹脂を得た。
次に、コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械(株)製:BJ-30N)に、結晶性ポリエステル樹脂300部と、メチルエチルケトン(溶剤)160部と、イソプロピルアルコール(溶剤)100部とを入れ、水循環式恒温槽にて70℃に維持しながら、100rpmで攪拌混合しつつ樹脂を溶解させた(溶解液調製工程)。
その後攪拌回転数を150rpmにし、水循環式恒温槽を66℃に設定し、10%アンモニア水(試薬)17部を10分間かけて投入した後、66℃に保温されたイオン交換水を7部/分の速度で、合計900部滴下し転相させて、乳化液を得た。
すぐに、得られた乳化液800部とイオン交換水700部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械(株))にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1,100部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20%になるように調製した。
【0141】
(スチレン-アクリル共重合樹脂Aの作製)
スチレン(和光純薬工業(株)製) :413部
n-ブチルアクリレート(和光純薬工業(株)製) :87部
1,10-デカンジオールジアクリレート(新中村化学(株)製):2部
ドデカンチオール(和光純薬工業(株)製) :4部
【0142】
上記成分を混合溶解し、アニオン性界面活性剤ダウファックス(ダウ・ケミカル社製)4.5部をイオン交換水1050部に溶解した溶液を加えてフラスコ中で乳化し、10分間ゆっくりと混合撹拌しながら、さらに、過硫酸アンモニウム5部を溶解したイオン交換水50部を投入した。次に、フラスコ内の窒素置換を行った後、フラスコ内の溶液を撹拌しながらオイルバスで65℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、固形分34%のスチレン-アクリル共重合樹脂粒子分散液Aを得た。得られたスチレン-アクリル共重合樹脂Aのガラス転移温度は65℃であった。
・・・中略・・・
【0147】
<着色剤粒子分散液の調製>
カーボンブラック(キャボット製、Regal330) :250部
アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC):33部(有効成分60%、着色剤に対して8%)
イオン交換水:750部
上記成分をすべて投入した際に液面の高さが容器の高さの1/3程度になる大きさのステンレス容器に、イオン交換水を280部とアニオン系界面活性剤33部とを入れ、充分に界面活性剤を溶解させた後、前記固溶体顔料すべてを投入し、攪拌機を用いて濡れていない顔料がなくなるまで攪拌するとともに、充分に脱泡させた。脱泡後に残りのイオン交換水を加え、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、5000回転で10分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡した。脱泡後、再度ホモジナイザーを用いて、6000回転で10分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡した。続けて、分散液を高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで分散した。分散は、トータル仕込み量と装置の処理能力とから換算して25パス相当行った。得られた分散液を72時間放置して沈殿物を除去し、イオン交換水を加えて、固形分濃度を20%に調製し、着色剤粒子分散液を得た。
【0148】
<離型剤粒子分散液の調整>
ポリエチレン系ワックス(炭化水素系ワックス:商品名「ポリワックス725(ベイカーペトロライト(株)製)」): 270部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK、有効成分量:60%): 13.5部(有効成分として、離型剤に対して3.0%)
イオン交換水: 21.6部
上記成分を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザ)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、離型剤粒子分散液を得た。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20.0%になるように調整した。
【0149】
<硫酸アルミニウム水溶液の調製>
硫酸アルミニウム粉末(浅田化学工業(株)製:17%硫酸アルミニウム): 35部
イオン交換水: 2部
上記成分を容器へ投入し、30℃にて沈殿物が消失するまで攪拌混合して硫酸アルミニウム水溶液を調製した。
【0150】
[実施例1]
<トナー1の作製>
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A: 230部
スチレン-アクリル共重合樹脂分散液A: 44部
結晶性ポリエステル樹脂分散液: 25部
着色剤粒子分散液: 30部
離型剤粒子分散液: 40部
イオン交換水: 150部
アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax2A1): 3部
【0151】
上記成分を、温度計、pH計、攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、1.0%硝酸を加えてpHを4.0にした後、ホモジナイザー(IKAジャパン(株)製:ウルトラタラクスT50)にて5,000rpmで分散しながら、調製した硫酸アルミニウム水溶液を18部添加して3分間分散した。
その後、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.4μmになったところで温度を保持し、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A 100部を3分間で投入した。
30分間保持した後、1%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを8.5に調整した。その後、10℃ごとにpHが8.5になるように同様にして調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、保持した。光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、4時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水にて容器を35℃まで5分間かけて冷却した。
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去し、メッシュを通過したトナースラリーをアスピレータで減圧ろ過した。ろ紙上に残ったトナー粒子を手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー粒子量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した。引き続き、アスピレータで減圧ろ過し、ろ紙上に残ったトナー粒子を手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー粒子量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した後、再度アスピレータで減圧ろ過し、ろ液の電気伝導度を測定した。ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、トナー粒子を洗浄した。
洗浄されたトナー粒子を湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕いてから、35℃のオーブン中で40時間真空乾燥して、トナー粒子1を得た。
得られたトナー粒子1の体積平均径D50は6.3μmであった。
【0152】
<トナー1の作製>
トナー粒子1: 100部
シリカ粒子(日本アエロジル(株)製、商品名RY50) : 0.8部
上記組成をヘンシェルミキサーにより周速20m/sで15分間の混合を行い、トナー1を得た。
【0153】
<キャリアの作製>
スチレン-メチルメタクリレート共重合体(質量比:70/30): 5部
トルエン: 15部
カーボンブラック(キャボット製、Regal330): 1部
上記成分を混合し、10分間スターラーで撹拌させて被覆層形成用溶液を調製した。次に、この被覆液とフェライト粒子(体積平均粒子径:40μm)100部とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアを作製した。
【0154】
<現像剤1の作製>
トナー1の8部とキャリア92部をVブレンダーにて混合し、現像剤1を作製した。
【0155】
<評価>
トナー表面のスチレン-アクリル共重合樹脂成分量は、XPS(X線光電子分光)測定により求めた値とした。XPS測定は、測定装置として日本電子社製、JPS-9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を30mAに設定した。
上記条件で得られたC1Sスペクトルから、トナー表面のスチレン-アクリル共重合樹脂成分に起因する成分をピーク分離することによってトナー表面のスチレン-アクリル共重合樹脂成分量を定量した。測定されたC1Sスペクトルを、最小二乗法によるカーブフィッティングを用いてピークを各成分に分離した。分離のベースとなる成分スペクトルとしては、トナーの作製に用いたスチレン-アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂及び離型剤を単独に測定して得られたC1Sスペクトルを用いた。ピーク分離された樹脂成分の定量結果に基づいて、トナー表面の樹脂成分に占めるスチレン-アクリル共重合樹脂の割合を算出した。
【0156】
ガラス転移温度は、「DSC-20」(セイコー電子工業(株)製)を使用し、試料10mgを一定の昇温速度(10℃/min)で加熱して測定する。
【0157】
<画質評価>
上述のようにして得られた現像剤1を用い、DocuPrint P450d(富士ゼロックス社製)により、15℃,20%RHの環境下でハーフトーン50%のプリントサンプルを30000枚プリントアウトした。その後、上記環境で12時間放置後ハーフトーン50%の画像を3枚両面出力した。
<黒点の評価>
両面出力した3枚の画像における黒点のサイズを測定し、0.3mm以上の黒点が0個を◎、3個以下を○、6個以下を△、6個を超える場合を×と評価した。得られた結果を表1に示す。
【0158】
[実施例2]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aを255部に変更し、体積平均粒径が5.4μmになったところに投入する非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aを75部に変更する以外は実施例1の現像剤1と同様にして現像剤2を得た。現像剤2を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0159】
[比較例1]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aを280部に変更し、体積平均粒径が5.4μmになったところに投入する非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aを50部に変更する以外は実施例1の現像剤1と同様にして現像剤3を得た。現像剤3を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0160】
[実施例3]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aの230部を非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Bの210部に、スチレン-アクリル共重合樹脂分散液Aの44部をスチレン-アクリル共重合樹脂分散液Bの47部に変更し、体積平均粒径が5.4μmになったところに投入する分散液を非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Bの120部に変更する以外は実施例1の現像剤1と同様にして現像剤4を得た。現像剤4を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0161】
[実施例4]
スチレン-アクリル共重合樹脂分散液Cの44部に変更する以外は実施例3の現像剤4と同様にして現像剤5を得た。現像剤5を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0162】
[比較例2]
スチレン-アクリル共重合樹脂分散液Dの45部に変更する以外は実施例3の現像剤4と同様にして現像剤6を得た。現像剤6を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0163】
[実施例5]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aの230部を非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Cの185部に、スチレン-アクリル共重合樹脂分散液Aの44部をスチレン-アクリル共重合樹脂分散液Eの34部に変更し、体積平均粒径が5.4μmになったところに投入する分散液を非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Cの160部に変更する以外は実施例1の現像剤1と同様にして現像剤7を得た。現像剤7を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0164】
[実施例6]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Cの100部にスチレン-アクリル共重合樹脂分散液Eの82部に変更する以外は実施例5の現像剤7と同様にして現像剤8を得た。現像剤8を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0165】
[比較例3]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Cの205部にスチレン-アクリル共重合樹脂分散液Eの23部に変更する以外は実施例5の現像剤7と同様にして現像剤9を得た。現像剤9を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0166】
[比較例4]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Cの80部にスチレン-アクリル共重合樹脂分散液Cの94部に変更する以外は実施例5の現像剤7と同様にして現像剤10を得た。現像剤10を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0167】
【表1】

【0168】
表1において、「PES Tg」は非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度を意味し、「第二成分Tg」はスチレン-アクリル共重合樹脂のガラス転移温度を意味し、「ΔTg」は非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度とスチレン-アクリル共重合樹脂のガラス転移温度との差を意味し、「露出量」はXPSにより測定されるトナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン-アクリル共重合樹脂の割合を意味する。」

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)ウによれば、引用文献1の【0152】に記載された実施例1の「トナー1」は、「トナー粒子1」「100部」「シリカ粒子」「0.8部」「をヘンシェルミキサーにより」「混合を行」って得たものである。そして、引用文献1の【0150】?【0151】の記載から、「トナー粒子1」は、「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A」、「スチレン-アクリル共重合樹脂分散液A」、「結晶性ポリエステル樹脂分散液」、「着色剤粒子分散液」、「離型剤粒子分散液」及び「アニオン性界面活性剤」から得られるものと理解される。また、「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A」、「スチレン-アクリル共重合樹脂分散液A」、「結晶性ポリエステル樹脂分散液」、「着色剤粒子分散液」及び「離型剤粒子分散液」は、それぞれ引用文献1の【0134】-【0135】、【0141】-【0142】、【0140】、【0147】及び【0148】に記載された工程にて調整されたものである。さらに、引用文献1の【0167】【表1】には、上記「トナー1」における「トナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン-アクリル共重合樹脂の割合」が記載されている。くわえて、引用文献1の【0028】には、本実施形態に係るトナーは、静電荷像現像用トナーであることが記載されている。
以上勘案すると、引用文献1には、実施例1として、次の「トナー」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:10モル%、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:40モル%、テレフタル酸:40モル%、ドデセニルコハク酸無水物:5モル%、トリメリット酸無水物:5モル%のモノマー成分を反応容器中に投入し、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、触媒として上記モノマー成分の合計量に対してジブチル錫オキサイドの1.0%を加え、窒素ガス気流下約190℃で約5時間撹拌反応させ、さらに温度を約240℃に上げて約6時間撹拌反応させた後、反応容器内を10.0mmHgまで減圧し、減圧下で約0.5時間攪拌反応させて、黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂Aを得、次いで、得られた非晶性ポリエステル樹脂Aを、キャビトロンCD1010を高温高圧型に改造した分散機を用いて、イオン交換水80%、ポリエステル樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5Kg/cm^(2)、熱交換器による加熱140℃、の条件で運転し、非晶性ポリエステル樹脂分散液Aを得、
セバシン酸50モル%、1,6-ヘキサンジオール50モル%、及び上記モノマー成分の合計量に対してジブチル錫オキサイドの0.3%をフラスコ内で混合し、減圧雰囲気下で240℃に加熱して6時間脱水縮合して結晶性ポリエステル樹脂を得、次に、ジャケット付き3リットル反応槽に、結晶性ポリエステル樹脂300部と、メチルエチルケトン160部と、イソプロピルアルコール100部とを入れ、水循環式恒温槽にて70℃に維持しながら、100rpmで攪拌混合しつつ樹脂を溶解させ、その後攪拌回転数を150rpmにし、水循環式恒温槽を66℃に設定し、10%アンモニア水17部を10分間かけて投入した後、66℃に保温されたイオン交換水を7部/分の速度で、合計900部滴下し転相させて、乳化液を得、得られた乳化液800部とイオン交換水700部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーターにセットし、ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去し、溶剤回収量が1,100部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得、イオン交換水を加えて固形分濃度が20%になるように調製し、結晶性ポリエステル樹脂分散液を得、
スチレン:413部、n-ブチルアクリレート:87部、1,10-デカンジオールジアクリレート:2部、ドデカンチオール:4部を混合溶解し、アニオン性界面活性剤ダウファックス4.5部をイオン交換水1050部に溶解した溶液を加えてフラスコ中で乳化し、10分間ゆっくりと混合撹拌しながら、さらに、過硫酸アンモニウム5部を溶解したイオン交換水50部を投入し、フラスコ内の窒素置換を行った後、フラスコ内の溶液を撹拌しながらオイルバスで65℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、スチレン-アクリル共重合樹脂粒子分散液Aを得、
カーボンブラック:250部、アニオン系界面活性剤:33部、イオン交換水:750部をすべて投入した際に液面の高さが容器の高さの1/3程度になる大きさのステンレス容器に、イオン交換水を280部とアニオン系界面活性剤33部とを入れ、充分に界面活性剤を溶解させた後、前記カーボンブラックすべてを投入し、攪拌機を用いて濡れていない顔料がなくなるまで攪拌するとともに、充分に脱泡させ、脱泡後に残りのイオン交換水を加え、ホモジナイザーを用いて、5000回転で10分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡し、脱泡後、再度ホモジナイザーを用いて、6000回転で10分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡し、続けて、分散液を高圧衝撃式分散機アルティマイザーを用いて、圧力240MPaで分散し、得られた分散液を72時間放置して沈殿物を除去し、イオン交換水を加えて、固形分濃度を20%に調製し、着色剤粒子分散液を得、
ポリエチレン系ワックス:270部、アニオン性界面活性剤:13.5部、イオン交換水:21.6部を混合し、圧力吐出型ホモジナイザーで、内液温度120℃にて離型剤を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20.0%になるように調整し、離型剤粒子分散液を得、
硫酸アルミニウム粉末:35部、イオン交換水:2部を容器へ投入し、30℃にて沈殿物が消失するまで攪拌混合して硫酸アルミニウム水溶液を調製し、
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A:230部、スチレン-アクリル共重合樹脂分散液A:44部、結晶性ポリエステル樹脂分散液:25部、着色剤粒子分散液:30部、離型剤粒子分散液:40部、イオン交換水:150部、アニオン性界面活性剤:3部を、反応容器に入れ、温度25℃にて、1.0%硝酸を加えてpHを4.0にした後、ホモジナイザーにて5,000rpmで分散しながら、調製した硫酸アルミニウム水溶液を18部添加して3分間分散し、その後、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、体積平均粒径が5.4μmになったところで温度を保持し、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A 100部を3分間で投入し、30分間保持した後、1%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを8.5に調整し、その後、10℃ごとにpHが8.5になるように同様にして調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、保持し、4時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水にて容器を35℃まで5分間かけて冷却し、冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去し、メッシュを通過したトナースラリーをアスピレータで減圧ろ過し、ろ紙上に残ったトナー粒子を手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー粒子量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合し、引き続き、アスピレータで減圧ろ過し、ろ紙上に残ったトナー粒子を手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー粒子量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した後、再度アスピレータで減圧ろ過し、ろ液の電気伝導度を測定し、ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、トナー粒子を洗浄し、洗浄されたトナー粒子を湿式乾式整粒機で細かく砕いてから、35℃のオーブン中で40時間真空乾燥して、体積平均径D50は6.3μmであるトナー粒子1を得、
トナー粒子1:100部、シリカ粒子:0.8部をヘンシェルミキサーにより混合を行い、
トナー表面の樹脂成分に占めるスチレン-アクリル共重合樹脂の割合が12%である静電荷像現像用トナー。」

(3)引用文献8について
原査定の拒絶の理由で引用文献8として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開平10-39536号公報(以下「引用文献8」という。)には、以下の記載がある。

「【請求項1】 少なくとも樹脂、着色剤、無機添加剤及び有機微粒子を含有する電子写真用トナーにおいて、無機添加剤がシリカ微粒子をチタネート系カップリング剤で処理したものであり、有機微粒子が体積平均粒径0.03?2.0μmの重合体微粒子からなることを特徴とする電子写真用トナー。
・・・中略・・・
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は繰り返し使用に際して疲労劣化が少なく、高耐久性であり、かつ耐湿性にも優れている電子写真用トナー、現像剤及び該現像剤を用いた画像形成方法に関する。
・・・中略・・・
【0031】本発明の有機微粒子としては、体積平均粒径0.03?2.0μmの重合体微粒子であれば特に限定されないが、架橋構造を有する付加重合体、重縮合体等の変形の生じにくい構造を有するものが好ましい。
・・・中略・・・
【0034】有機微粒子の体積平均粒径は上記範囲より小さいと、高湿での放置に伴うトナー帯電量の低下を防止する効果が乏しくなり、この範囲より大きいと、トナーの帯電を阻害し、文字チリ等の不良を生じる。
【0035】なお、有機微粒子の体積平均粒径は、粒度分布測定装置「CAPA-700」(堀場製作所製)により測定される。
【0036】又、有機微粒子のトナーに対する添加量は、0.1?5重量%が好ましい。これより少ない量では高湿での放置に伴うトナー帯電量の低下を防止する効果に乏しくなり、この量より多いと、トナーの帯電を阻害し、文字チリ等の不良を生じる。
・・・中略・・・
【0052】
【実施例】以下本発明を実施例により具体的に説明するが本発明の実施の態様がこれにより限定されるものではない。
・・・中略・・・
【0056】〈有機微粒子の製造例〉
製造例1:メチルメタクリレート40重量部、スチレン50重量部、ジビニルベンゼン10重量部とを蒸留水100重量部に入れ、過硫酸カリウムとチオ硫酸ナトリウムとを5×10^(-3)mol/L、硫酸銅を2.5×10^(-5)mol/Lになる様に添加し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.2重量部添加した後、窒素気流下で65℃で2時間反応させた。冷却後、濾過、乾燥して、有機微粒子Aを得た。この有機微粒子Aの体積平均粒径は0.15μmであった。
・・・中略・・・
【0059】〈トナーの製造例〉
製造例1:ポリエステル樹脂(軟化点125℃、ガラス転移点60℃)100重量部、カーボンブラック 8重量部、ポリプロピレン3重量部とを、混合、練肉、粉砕、分級し、平均粒径8.5μmの粒子を得た。更にこの粒子100重量部に無機添加剤A3重量部、有機微粒子A1重量部を加え、ヘンシェルミキサーで撹拌ばねの周速30m/secで5分間混合し、300メッシュのスクリーンを通して本発明のトナーAを得た。」

(4)引用文献9について
原査定の拒絶の理由で引用文献9として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2012-163634号公報(以下「引用文献9」という。)には、以下の記載がある。

「【請求項1】
樹脂微粒子とシリカとがトナー母粒子の表面に付着しており、
前記トナー母粒子は少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、
前記樹脂微粒子による前記トナー母粒子の表面の被覆率が10%以上20%未満であり、前記シリカによる前記トナー母粒子の表面の被覆率が20%以上40%未満である、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記樹脂微粒子の平均一次粒子径が30nm以上150nm未満である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
・・・中略・・・
【0037】
〔樹脂微粒子〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂中に、必須又は任意に着色剤、離型剤、電荷制御剤等の成分を配合して所望の粒子径のトナー母粒子を調製した後に、トナー母粒子の表面に種々のポリマーからなる樹脂微粒子と、シリカとを付着させたものである。
【0038】
樹脂微粒子を構成するポリマーは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリイミド、ポリカーボネート等の重縮合により得られるポリマー、及び、不飽和結合を有する1種以上のモノマーの付加重合により得られるポリマーの何れも使用できる。樹脂微粒子を構成するポリマーとしては、均一な粒子径の樹脂微粒子の調製が容易であることから、不飽和結合を有する1種以上のモノマーの付加重合により得られるポリマーを用いるのがより好ましい。
・・・中略・・・
【0040】
単官能モノマーの具体例は、スチレン、p-クロルスチレン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドテシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニル、α-クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等の他のアクリル酸誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリデン等のN-ビニル化合物である。これらの単官能モノマーは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0041】
多官能モノマーの具体例は、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート等のカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物が挙げられる。これらの多官能モノマーは2種類以上を組み合せて用いることができる。単官能モノマーと、多官能モノマーとを共重合させる場合、ポリマーの流出開始温度を高くしやすい。
・・・中略・・・
【0046】
これらのモノマーを組み合わせて製造されるポリマーの中では、粒子径が均一な樹脂微粒子を製造しやすいことや、十分な硬度を有するため変形したり、トナー母粒子の表面から脱落したりしにくく、感光体や現像ローラーの表面に付着しにくいこと等から、複数の不飽和結合を有する多官能モノマーを含む複数の付加重合可能なモノマーを乳化重合して製造されたポリマーが好ましい。具体的には、スチレン、メチルメタクリレート、及びジビニルベンゼンを乳化重合した共重合体が特に好ましい。かかるポリマーにおけるスチレン/メチルメタクリレートの比率は、モノマーの質量比として、50/50以上90/10以下が好ましく、50/50以上80/20以下がより好ましい。また、ジビニルベンゼンの使用量は、スチレン、メチルメタクリレート、及びジビニルベンゼンの質量の合計に対して5質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
・・・中略・・・
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例によりなんら限定されるものではない。
【0080】
(シリカの作製)
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製)100g、及び3-アミノプロピルトリメトキシシラン100g(信越化学工業株式会社製)をトルエン200gに溶解させた後、10倍に希釈した。次いで、ヒュームドシリカアエロジル#90(日本アエロジル株式会社製)200gを撹拌しながら、ジメチルポリシロキサンと3-アミノプロピルトリメトキシランとの希釈溶液を徐々に滴下した後、30分間超音波照射・撹拌して混合した。得られた混合物を150℃の恒温槽で加熱した後、トルエンをロータリーエヴァポレーターを用いて留去して固形物を得た。得られた固形物を減圧乾燥機にて設定温度50℃で減量しなくなるまで乾燥した。さらに、電気炉にて、窒素気流下において200℃で3時間処理を行いシリカAの粗粉体を得た。シリカAの粗粉体をジェットミルにより解砕してバグフィルターで捕集し、平均一次粒子径20nmのシリカを得た。
【0081】
(樹脂微粒子Aの作成)
温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管、撹拌器を装着したガラス製反応器に脱イオン水200質量部、及びラウリル硫酸ナトリウム2質量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温した。次いで、撹拌下に過硫酸アンモニウム1質量部を添加した後、メチルメタクリレート30質量部、スチレン60質量部、及びジビニルベンゼン10質量部からなるモノマーの混合物を1時間かけて滴下し、1時間撹拌した。このようにして得られたエマルジョンを乾燥し、平均一次粒子径75nmの樹脂微粒子Aを得た。樹脂微粒子Aの平均一次粒子径は、下記方法に従って測定した。
・・・中略・・・
【0085】
(トナー母粒子の作成)
結着樹脂(スチレン-アクリル系樹脂)100質量部、離型剤(カルナウバワックス、(日本精蝋株式会社製))4質量部、着色剤(カーボンブラック、NIPex 60(エボニック・デグサ社製))12質量部、及び正帯電性電荷制御剤(BONTRON N-21(オリヱント化学工業株式会社製))1質量部をヘンシェルミキサーに投入して混合した後、二軸押出機により溶融昆練した。溶融混練物を冷却後、ハンマーミルにより粗粉砕した後、ターボミルで微粉砕した。微粉砕された粉体を、風力分級機により分級して、体積平均粒子径が6.81μmのトナー母粒子を得た。
・・・中略・・・
【0087】
〔実施例1〕
トナー母粒子2kgに対して、シリカ28gと、樹脂微粒子A20gとを加え、ヘンシェルミキサーで40m/sの速度で5分間混合してトナーを得た。」

2 対比及び判断
(1)対比
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と引用発明1を対比すると、以下のとおりとなる。

ア コア・シェル構造を有するトナー母体粒子
引用発明の「トナー粒子1」は、反応容器に、第一段階で、「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A:230部」、「スチレン-アクリル共重合樹脂分散液A:44部」、「結晶性ポリエステル樹脂分散液:25部」、「着色剤粒子分散液:30部」、「離型剤粒子分散液:40部」等を投入して体積平均粒径が5.4μmの粒子を形成し、そこに、第二段階で、前記「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A」100部を追加投入して体積平均粒径が6.3μmの「トナー粒子1」とする製造工程を経て得られるものである。
上記製造工程によれば、第一段階で得られた体積平均粒径5.4μmの粒子がコアとなり、第二段階で当該コアの周囲に形成された部分(層)がシェルを構成することは明らかである。
さらに、上記製造工程からみて、上記コアが、ビニル系樹脂に該当する、「スチレン-アクリル共重合樹脂」を含有すること及び上記シェルが、専ら追加投入された「非晶性ポリエステル樹脂粒子」によって形成されていることは当業者に明らかである。
くわえて、引用発明1の「トナー粒子1」は、外添剤である「シリカ粒子」(後記イ参照。)とともに、引用文献1の実施例1に係る「現像剤1」を構成することから、本願発明1の「トナー母体粒子」に相当する。
以上によれば、引用発明1の「トナー粒子1」は、本願発明1の「トナー母体粒子」における、「コア・シェル構造を有する」及び「ビニル系樹脂を含有するコア粒子と、前記コア粒子の表面を」「被覆するシェルとを有し、前記シェルが、非晶性ポリエステル樹脂を含有し」という要件を満たす。

イ 外添剤
引用発明1の「シリカ粒子」は、引用文献1の実施例1に係る「現像剤1」における役割からみて、本願発明1の「外添剤」に相当する。
(当合議体注:引用文献1の【0077】?【0078】の記載からも確認できる事項である。)

ウ 静電潜像現像用トナー
引用発明1の「静電荷像現像用トナー」は、その組成及びその文言が意味するとおり、本願発明1の「静電潜像現像用トナー」に相当する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明1は、次の構成で一致する。
「コア・シェル構造を有するトナー母体粒子と、外添剤と、を含有する静電潜像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子が、ビニル系樹脂を含有するコア粒子と、前記コア粒子の表面を被覆するシェルとを有し、前記シェルが、非晶性ポリエステル樹脂を含有する静電潜像現像用トナー。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明1は、次の点で相違する。
(相違点1)
「シェル」が、本願発明1では、「コア粒子の表面を被覆率60?99%の範囲内で被覆する」のに対し、引用発明1では、被覆率がこの範囲内であるのか、一応、明らかでない点。

(相違点2)
「外添剤」が、本願発明1では、「架橋したビニル系樹脂粒子を含有し、前記架橋したビニル系樹脂粒子が、個数平均粒径が30?300nmの範囲内であり、前記架橋したビニル系樹脂粒子が、架橋性ビニル単量体由来の構造単位を含む架橋樹脂と、非架橋性ビニル単量体由来の構造単位を含む非架橋性樹脂とを含有し、前記非架橋性ビニル単量体が、スチレン及びメタクリル酸メチルであり、かつ、前記架橋性ビニル単量体由来の構造単位の含有量が、前記非架橋性ビニル単量体100質量%に対して5?30質量%の範囲内である」のに対し、引用発明1では、「シリカ粒子」である点。

(3)判断
事案に鑑みて、相違点2について検討する。
ア 引用発明1の「静電荷像現像用トナー」における「外添剤」は、上記相違点2のとおり「シリカ粒子」である。そして、「外添剤」について、引用文献1の【0077】?【0078】には、無機粒子の具体例が列挙されるともに、その表面処理方法、処理剤及びその使用量等が記載されている。他方、有機粒子については、【0079】に「樹脂粒子(ポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子)」と記載されており、一般的な樹脂粒子が列挙されているにとどまる。また、引用文献1に記載の他の実施例においても、外添剤としては、もっぱら「シリカ粒子」が使用されている。そうすると、引用文献1の上記記載に触れた当業者は、引用発明1において、あえて、相違点2に係る特定の架橋したビニル系樹脂粒子を採用しようと動機づけられるとはいいがたい。

イ 上記1(3)に示した引用文献8の記載事項及び上記1(4)に示した引用文献9の記載事項のとおり、トナーの外添剤として、架橋性ビニル単量体由来の構造単位を含む架橋樹脂と、非架橋性ビニル単量体由来の構造単位を含む非架橋性樹脂とを含有し、前記非架橋性ビニル単量体が、スチレン及びメタクリル酸メチルであり、かつ、前記架橋性ビニル単量体由来の構造単位の含有量が、前記非架橋性ビニル単量体100質量%に対して5?30質量%の範囲内であって、個数平均粒径が30?300nmの範囲内である架橋したビニル系樹脂粒子を含有するものは、本願出願前における周知技術である。しかしながら、たとえ、特定の架橋したビニル系樹脂粒子が周知であったとしても、引用発明1において、「シリカ粒子」に替えて、相違点2に係る特定の架橋したビニル系樹脂粒子を採用する動機が見いだせないことは、上記アのとおりである。

ウ また、本件出願の明細書の記載を参照(段落【0016】?【0021】)すると、本願発明1は特定の架橋したビニル系樹脂粒子を含有する外添剤ととともに、非晶性ポリエステル樹脂を含有するシェルがビニル系樹脂を含有するコア粒子を60?99%被覆するコア・シェル構造を有するトナー母体粒子とを含有することで、架橋したビニル系樹脂粒子の脱離性を制御し、低温定着性、白抜け抑制、転写性、耐熱保管性が優れることが記載されている。
一方、上記イのとおり、架橋したビニル系樹脂粒子を含有する外添剤は、本願出願前における周知技術であるものの、引用文献8?9のいずれにも、特定の架橋したビニル系樹脂粒子を含有することと、低温定着性、白抜け抑制、転写性及び耐熱保管性との関係をうかがわせるような記載はない。
そうすると、引用文献8?9のいずれにも、引用発明1において、当業者が、外添剤として特定の架橋したビニル系樹脂粒子を採用することによって、低温定着性、白抜け抑制、転写性及び耐熱保管性を向上させる動機づけとなり得る記載はないといえる。また、トナーの低温定着性、白抜け抑制、転写性及び耐熱保管性に関して、トナーの外添剤に特定の架橋したビニル系樹脂粒子を含有することが好ましいことが、本件出願時における当業者の技術常識であったことを示す他の証拠もない。
したがって、たとえ、引用文献8?9に記載された架橋したビニル系樹脂粒子が周知であったとしても、引用発明1の外添剤として適用する動機付けはなく、本願出願前に当業者が相違点2に係る構成に容易に想到し得たとはいえない。
なお、原査定の拒絶の理由で引用文献5?7として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2008-76648号公報(以下「引用文献5」という。)、特開2008-15136号公報(以下「引用文献6」という。)、特開2004-163612号公報(以下「引用文献7」という。)には、外添剤としての架橋性ビニル単量体由来の構造単位を含む架橋樹脂と、非架橋性ビニル単量体由来の構造単位を含む非架橋性樹脂とを含有し、前記非架橋性ビニル単量体が、スチレン及びメタクリル酸メチルであり、かつ、前記架橋性ビニル単量体由来の構造単位の含有量が、前記非架橋性ビニル単量体100質量%に対して5?30質量%の範囲内であって、個数平均粒径が30?300nmの範囲内である架橋したビニル系樹脂粒子は開示されておらず、引用文献5?7の記載の外添剤を引用発明に適用しても相違点2に係る本願発明1の構成には到らない。

エ また、本願発明1の効果として、本件出願の明細書の【0016】には、特定のコア・シェル構造を有するトナー母体粒子と、特定の架橋したビニル系樹脂粒子を含有する外添剤とを用いることによって、長期使用後の白抜け画像欠陥の抑制及びスペーサー効果による良好な転写性を維持しつつ、低温定着性と耐熱保管性とを両立させることが可能であることが記載されている。そして、この効果は、本件出願の明細書の【0173】【表5】の、トナーNo.1(実施例)とトナーNo.20、23?25とを比較すると、外添剤に特定の架橋したビニル系樹脂粒子を含有しないトナーと比較して、低温定着性や転写性が向上していることからも理解することができる。ここで、特定のコア・シェル構造を有するトナー母体粒子と、特定の架橋したビニル系樹脂粒子を含有する外添剤とを用いるという技術思想がいずれの文献に記載されていないことは上記ア?ウのとおりであるから、上記効果は、引用発明1や引用文献5?9に記載された事項から当業者が予測し得る効果とはいえない。

オ 以上ア?エのとおりであるから、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明1及び引用文献5?9に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、引用文献1に記載の他の実施例から、引用発明1を認定したとしても判断は同様である。

(4)請求項2?7に係る発明について
本件出願の請求項2?7に係る発明は、いずれも、本願発明1に対してさらに他の発明特定事項を付加した発明であるから、本願発明1における全ての発明特定事項を具備するものである。
そうしてみると、前記(3)で述べたのと同じ理由により、これらの発明も、引用文献1に記載された発明及び引用文献5?9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(5)引用文献2を主引用例とした場合
本願発明1と、原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2012-18391号公報(以下「引用文献2」という。)に記載された実施例1の「トナー」の発明(以下「引用発明2」という)とを対比すると、相違点は、上記(2)に示した、相違点1?2と同様である。
そして、相違点2についての判断は、上記(3)で述べたのと同じ理由により、本願発明は、引用発明2及び引用文献5?9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、引用文献2に記載の他の実施例から、引用発明2を認定したとしても判断は同様である。
そして、本件出願の請求項2?7に係る発明についても、上記(3)で述べたのと同様の理由により、引用発明2及び引用文献5?9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(6)引用文献3を主引用例とした場合
本願発明1と、原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2012-255957号公報(以下「引用文献3」という。)に記載された実施例トナー1の「トナー」の発明(以下「引用発明3」という)とを対比すると、相違点は、上記(2)に示した、相違点1?2と同様である。
そして、相違点2についての判断は、上記(3)で述べたのと同じ理由により、本願発明は、引用発明3及び引用文献5?9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、引用文献3に記載の他の実施例から、引用発明3を認定したとしても判断は同様である。
そして、本件出願の請求項2?7に係る発明についても、上記(3)で述べたのと同様の理由により、引用発明3及び引用文献5?9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(7)引用文献4を主引用例とした場合
本願発明1と、原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されている特開2015-121661号公報(以下「引用文献4」という。)に記載された実施例1の「トナー」の発明(以下「引用発明4」という)とを対比すると、相違点は、上記(2)に示した、相違点1?2と同様である。
そして、相違点2についての判断は、上記(3)で述べたのと同じ理由により、本願発明は、引用発明4及び引用文献5?9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、引用文献4に記載の他の実施例から、引用発明4を認定したとしても判断は同様である。
そして、本件出願の請求項2?7に係る発明についても、上記(3)で述べたのと同様の理由により、引用発明4及び引用文献5?9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

第3 むすび
以上のとおり、本件出願の請求項1?7に係る発明は、引用文献1?4に記載された発明及び引用文献5?9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-11 
出願番号 特願2016-39575(P2016-39575)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 廣田 健介  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 関根 洋之
神尾 寧
発明の名称 静電潜像現像用トナー  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  

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