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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1372127
審判番号 不服2020-10639  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-31 
確定日 2021-03-30 
事件の表示 特願2018- 80823「生体認証有するマルチプルアプリケーションチップカード」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月13日出願公開、特開2018-142348、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2010年12月16日に国際出願された特願2012-545379号(パリ条約による優先権主張2009年12月22日(以下,「優先日」という。),フランス)の一部を平成27年7月28日に新たな特許出願とした特願2015-148741号の一部を平成30年4月19日に新たな特許出願としたものであって,平成30年5月21日に審査請求されるとともに手続補正書が提出され,平成31年4月22日付けで拒絶の理由が通知され,令和1年11月6日に意見書とともに手続補正書が提出されたが,令和2年3月25日付けで拒絶査定(謄本送達日同年3月31日)がなされ,これに対して同年7月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
なお,審判請求時には手続補正書は提出されていない。

第2 原査定の概要

原査定(令和2年3月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-2,11-13
・引用文献等 1

・請求項 3-10
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
1.特開2009-31877号公報
2.特開2006-12026号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2005-293485号公報(周知技術を示す文献)


第3 本願発明

本願請求項1?13に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明13」という。)は,令和1年11月6日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された,次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
デバイスに配置された複数のアプリケーション回路であって、各アプリケーション回路は、デバイス内に安全に含まれる少なくとも1つのアプリケーションサービスと関連しており、そして、デバイスの周囲の環境から受信される外部信号によって励起することができるものであり、そしてデバイスの周囲の環境の所定の物理現象に対して選択的に応答し、前記物理現象が電磁場及び/又は非電磁場を含むものである、複数の前記アプリケーション回路と;
前記の励起されたアプリケーション回路、前記関連するアプリケーションサービスを同定することが可能であり、そして、アクティブ化オーソリゼーションに応えて前記アプリケーションサービスをアクティブ化することが可能である、デバイスに配置された制御ユニットと;
前記アクティブ化オーソリゼーションを生じさせるためにユーザーを認証するデバイスに配置されたバイオメトリック回路と;
を含む保護通信デバイスであって、
前記アプリケーション回路の少なくとも1つは、デバイス内で前記制御ユニット及び前記バイオメトリック回路に結合しており、前記外部信号に基因する所定の物理現象に基づいて前記外部信号を検出するものであり、
オーソリゼーションリクエストが、対応する前記アプリケーション回路からバイオメトリック回路に送信され、そして前記オーソリゼーションリクエストを受けて、前記バイオメトリック回路が、ユーザーを同定するための認証プロセスを開始するものであり、
前記バイオメトリック回路がデバイス中に含まれているデータとバイオメトリック比較を行い、そして満足のいく比較の場合、前記アクティブ化オーソリゼーションを許可するためにアグリーメント信号が前記バイオメトリック回路から前記対応するアプリケーション回路に送信され、そして
前記対応するアプリケーション回路が周囲の環境と相互作用するように、前記アプリケーションサービスが、前記アクティブ化オーソリゼーションに基づいて、活性化される、
前記保護通信デバイス。
【請求項2】
アプリケーション回路が、無線周波信号トランシーバーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
アプリケーション回路が、少なくとも1つの金属コネクタを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
アプリケーション回路が、少なくとも1つの環境検出器を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
アプリケーション回路が、以下のエレメント:
- 音響検出器;
- 熱検出器;
- オルファクトルディテクター;
- 光検出器;
- 圧力検出器;及び
- 加速度計;
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
バイオメトリック回路が、バイオメトリックデータを処理する計算ユニットと関連しているバイトメトリックセンサーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
デバイスの作動状態を示すヒューマン・マシン・インターフェースを更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
少なくともフレキシブルであり、そして、再充電可能である電池によって、前記保護通信デバイスが動力を供給される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
外部電源によって、前記保護通信デバイスが動力を供給される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記保護通信デバイスが、チップカード、USBキー又は電子タグの形式にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
複数のアプリケーション回路、1つの制御ユニット及び1つのバイオメトリック回路を含む保護通信デバイスにおいて実行される方法であって、以下の工程:
前記アプリケーション回路の1つによって、デバイスの周囲の環境から受信された励起外部信号を検出する工程であって、デバイス中に配置されたそれぞれのアプリケーション回路は、デバイス内に安全に含まれる少なくとも1つのアプリケーションサービスに各々が関連し、そしてデバイスの周囲の環境の所定の物理現象に対して選択的に応答する工程と;
前記制御ユニット内で、前記の励起されたアプリケーション回路と、この励起されたアプリケーション回路に関連する前記アプリケーションサービスとを同定し、デバイス中に配置された前記バイオメトリック回路内のバイオメトリック比較によって認証プロセスを開始し、そして、次に、前記の励起されたアプリケーション回路を、前記バイオメトリック回路からのアクティブ化オーソリゼーションに応えてアクティブ化する工程と;
を含む、前記方法であって、
前記アプリケーション回路の少なくとも1つは、デバイス内で前記制御ユニット及び前記バイオメトリック回路に結合しており、前記外部信号に基因する所定の物理現象に基づいて前記外部信号を検出するものであり、
オーソリゼーションリクエストが、前記対応するアプリケーション回路からバイオメトリック回路に送信され、そして前記オーソリゼーションリクエストを受けて、前記バイオメトリック回路が、ユーザーを同定するための認証プロセスを開始するものであり、
前記バイオメトリック回路がデバイス中に含まれているデータとバイオメトリック比較を行い、そして満足のいく比較の場合、前記アクティブ化オーソリゼーションを許可するためにアグリーメント信号が前記バイオメトリック回路から前記対応するアプリケーション回路に送信され、そして
前記対応するアプリケーション回路が周囲の環境と相互作用するように、前記アプリケーションサービスが、前記アクティブ化オーソリゼーションに基づいて、活性化される、
前記方法。
【請求項12】
前記所定の物理現象が、熱、触覚又は接触、光、嗅覚、音、圧力、及び電磁場の少なくとも1つである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記所定の物理現象が、熱、触覚又は接触、光、嗅覚、音、圧力、及び電磁場の少なくとも1つである、請求項11に記載の方法。」


第4 引用例

1 引用例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,優先日前に既に公知である,特開2009-31877号公報(平成21年2月12日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0009】
これまで進められてきた1枚のカードで複数のアプリケーションないしサービスを扱えるマルチアプリケーション対応の技術開発は、無線周波数などのRFインタフェース形式は一つのものであった。非接触型ICカードといっても、通信距離(無線周波数に依存する)の違いにより密着型(低周波),近接型(短波),近傍型(中波),又は遠隔型(マイクロ波)といった異なったタイプの方式が存在し、サービス毎に使い分けが行なわれている。これら無線周波数などのRFインタフェース形式が異なるサービスをも、1枚のカードに統合できれば利便性は向上する。
【0010】
そのため、通信距離が異なる複数のサービスで利用するため、複数のアンテナとRFインタフェースをカードに備えた構成とし、通信距離が長くなることによるセキュリティ低下をサービスに使用できるメモリ領域を限定する等で防ぐ工夫が既に公開されている。ただし、この場合、生体認証などの認証機能は付いていない(例えば特許文献2)。

…(中略)…

【0012】
〔発明の目的〕
本発明は、上記問題点に鑑み、RFインタフェース形式の異なるサービスにも高いセキュリティ機能の下に使用できるようにし、これによって利便性の向上を図った非接触ICカード、携帯端末装置、起動制御方法、および起動制御プログラムを提供することを、その目的とする。」

B 「【0024】
本ICカード100は、前述したように、カード用リーダ/ライタ10,11から供給される電磁波を受けるアンテナ構造体21(具体的には複数のアンテナ21A,21B)と、このアンテナ21A,21Bからの交流電流を整流して電力を得かつ供給制御を行なう電力供給制御部として機能するパワー制御部22と、パワー制御部22から一次電源を得て本人認証を行なう生体認証判定部23とを備えている。この生体認証判定部23での本人認証で本人が確認されると、生体認証判定部23は直ちに機能してパワー制御部22に必要な各構成ユニットへの電源供給を許可し、その後、所定の認証手順に準拠してICカードの認証手続きが開始される。 ここで、前記アンテナ21Aは巻数Aのアンテナコイルにより構成され、前記アンテナ21Bは巻数Bのアンテナコイルにより構成されている(図1参照)。
【0025】
更に、本ICカード100は、各種情報処理を行なうCPU24と、暗号化された認証処理を行なう暗号プロセッサ25と、処理プログラムを保管するROM26Aと、処理作業領域としてのRAM26Bと、予め登録された個人情報や暗号化方式に用いられる鍵情報を保管するEEPROM26Cを含むメモリ部26と、カード用リーダ/ライタ10,11との情報の入出力を無線通信で行なうためのRFインタフェース部280及び使用する無線によって信号を切替える信号選択部27とを備えている。
【0026】
次に、本ICカード100の上記構成各部の機能を説明する。 まず、生体認証判定部23は、指紋,虹彩,顔,静脈,網膜,声紋,筆跡,および音声等何らかの個人固有の情報を生体情報入力部(図示せず)から受け取り、この個人固有の情報と予めカードに登録され記憶されている個人情報とを照合する生体認証により、本人確認を行なう機能を備えている。そして、本人確認に成功した場合のみ、次に述べるパワー制御部22Aの電力供給を許可する許可信号を送る。これによって、本人以外の他人がカードを不正に使用しようとしても電力供給が遮断されカードが動作しないので紛失・盗難等に対する安全性が高まる。」

C 「【0028】
CPU24は、本人認証が完了し電力供給がなされて各構成機能部が動作を始めると、先ず、カード用リーダ/ライタ10からのICカード100に対する起動要求信号を対応するインタフェース28Aを経由して受信し、メモリ部26と協働して情報処理を行ない、応答を再びインタフェース28A経由でカード用リーダ/ライタ10側へ通知する。非接触ICカード100とカード用リーダ/ライタ10間の制御手順は、標準化された暗号化認証処理手順によって行う。ここで、カード用リーダ/ライタ10,11に対応してインタフェース28A,28Bが装備され、このインタフェース28Aとインタフェース28Bとにより、インタフェース28が構成されている。
【0029】
暗号プロセッサ25は、本ICカード100とカード用リーダ/ライタ10間で取り交わされる標準化された暗号化認証処理を専用に行う。ICカード100とカード用リーダ/ライタ10,11とは、各々正当に発行され又は設置されたものであることを相互に認証する形態となっている。
【0030】
メモリ部26は、処理プログラムを保管するROM26A、処理作業領域としてRAM26B、予め登録された個人情報や暗号化方式に用いられる鍵情報を保管するEEPROM26Cを備え、CPU24や暗号プロセッサ25と協働して処理した各種情報を保持する。
【0031】
次に、複数の無線周波数に対応する上述した複数のアンテナ構造体21について説明する。 図2(a)に、アンテナ構造体21のカード内部の構造を他の要素と共に模式的に示したものを示す。ここで、アンテナ構造体21には、前述したように切替え制御部(巻線切替え制御部)22Bが併設され、この切替え制御部22Bによって巻線を切替えることにより、複数の無線周波数に対応したアンテナ特性を設定し得るように構成されている。 図2(b)は、アンテナ21A,21Bとこれらを接続し又は遮断制御する切替え制御部(巻線切替制御部)22Bの構成を示す。例えば、巻線数10,50,100ターンの巻き線から、スイッチSW1とスイッチSW2を共に閉じることによって、160ターンの巻線特性のアンテナ特性を得る。また、スイッチSW1のみ閉じることによって60ターンの巻線特性のアンテナ特性が得られる。」

D 「【0036】
本ICカード100を起動状態に設定し(ステップS101)、当該本ICカード100をカード用リーダ/ライタ10,11に近づけると、本ICカード100はカード用リーダ/ライタ10,11から電磁波を検出する(ステップS102)。パワー制御部22はアンテナ21からの交流電流を整流し直流電力を得た後(ステップS103)、本人認証動作に入る(認証動作工程)。」

E 「【0040】
次に、生体認証結果から本人確認が出来た場合(S111)は、生体認証判定部23からパワー制御部22に対して給電許可(ステップS113)が行われ、給電許可信号が送出される(給電許可信号送出工程)。 そして、この給電許可信号に基づいてパワー制御部22においては、CPU24、暗号プロセッサ25,メモリ部26,インタフェース28A,28B等の各ユニットへの通電を行い(電力供給工程)、本ICカード100とカード用リーダ/ライタ10,11間の通常の暗号による相互認証処理を行なわれる(ステップS114)。本人確認が出来ない場合(ステップS110)には、初期状態へ移行する。」

F 「【0043】
マスタ側として動作するリーダ/ライタ10は、一定間隔での問合せ要求である応答待ち信号を、無線搬送波と共にスレーブ側として動作するICカード100に送る。
ICカード100側では、この無線搬送波をアンテナ構造体21で受信し整流して直流電力を得、生体認証判定部23だけを起動して生体認証処理を行い、本人確認が完了した場合にパワー制御部22に給電許可信号を与え、本ICカード100の他のCPUなどの機能部を起動し、マスタ側であるカード用リーダ/ライタ10,11へ通常行なう相互認証処理を開始する為の応答信号を返すことによってマスタ側へ通知する。これに対して、マスタ側は、ACK(了解)信号を返信して通常の暗号化処理による相互認証処理シーケンスへ移行する。」

2 引用発明

ア 上記記載事項Aの「1枚のカードで複数のアプリケーションないしサービスを扱えるマルチアプリケーション対応…(中略)…非接触型ICカードといっても、通信距離(無線周波数に依存する)の違いにより密着型(低周波),近接型(短波),近傍型(中波),又は遠隔型(マイクロ波)といった異なったタイプの方式が存在し、サービス毎に使い分けが行なわれている。…(中略)…通信距離が異なる複数のサービスで利用するため、複数のアンテナとRFインタフェースをカードに備えた構成…(中略)…本発明は…RFインタフェース形式の異なるサービスにも高いセキュリティ機能の下に使用できる…(中略)…非接触ICカード…(中略)…を提供することを、その目的とする」との記載から,従来,1枚のカードで複数のアプリケーションないしサービスを扱えるマルチアプリケーション対応した非接触型ICカードには,通信距離(無線周波数に依存する)の違いにより密着型(低周波),近接型(短波),近傍型(中波),又は遠隔型(マイクロ波)といった異なったタイプの方式が存在し,サービス毎に使い分けが行なわれており,通信距離が異なる複数のサービスで利用するため,複数のアンテナとRFインタフェースをカードに備えた構成を持つものがあったところ,RFインタフェース形式の異なるサービスにも高いセキュリティ機能の下に使用できる非接触ICカードについて記述されたものであることを読取ることができ,したがって,引用例1には,“複数の異なる無線周波数に対応してRFインタフェース形式の異なるサービスに使用できるマルチアプリケーション対応の非接触ICカード”について記載されているといえる。

イ 上記記載事項Bの「本ICカード100は…カード用リーダ/ライタ10,11から供給される電磁波を受けるアンテナ構造体21(具体的には複数のアンテナ21A,21B)と、このアンテナ21A,21Bからの交流電流を整流して電力を得かつ供給制御を行なう電力供給制御部として機能するパワー制御部22と、パワー制御部22から一次電源を得て本人認証を行なう生体認証判定部23とを備え…(中略)…本ICカード100は、各種情報処理を行なうCPU24と、暗号化された認証処理を行なう暗号プロセッサ25と、処理プログラムを保管するROM26Aと、…(中略)…予め登録された個人情報や暗号化方式に用いられる鍵情報を保管するEEPROM26Cを含むメモリ部26と、カード用リーダ/ライタ10,11との情報の入出力を無線通信で行なうためのRFインタフェース部280…とを備えている…(中略)…生体認証判定部23は、指紋,虹彩,顔,静脈,網膜,声紋,筆跡,および音声等何らかの個人固有の情報を生体情報入力部…から受け取り、この個人固有の情報と予めカードに登録され記憶されている個人情報とを照合する生体認証により、本人確認を行なう機能を備えている」との記載,及び上記アの認定事項から,引用例1には,“前記非接触ICカードは,カード用リーダ/ライタから供給される電磁波を受けるアンテナ構造体である複数のアンテナと,このアンテナからの交流電流を整流して電力を得かつ供給制御を行なう電力供給制御部として機能するパワー制御部と,パワー制御部から一次電源を得て本人認証を行なう生体認証判定部とを備え”ること,“各種情報処理を行なうCPUと,暗号化された認証処理を行なう暗号プロセッサと,処理プログラムを保管するROMと,予め登録された個人情報や暗号化方式に用いられる鍵情報を保管するEEPROMを含むメモリ部と,前記カード用リーダ/ライタとの情報の入出力を無線通信で行なうためのRFインタフェース部とを備え”ること,及び,“生体認証判定部は,指紋,虹彩,顔,静脈,網膜,声紋,筆跡,および音声等何らかの個人固有の情報を生体情報入力部から受け取り,この個人固有の情報と予めカードに登録され記憶されている個人情報とを照合する生体認証により,本人確認を行なう機能を備え”ることが記載されているといえる。

ウ 上記記載事項Cの「CPU24は、…(中略)…メモリ部26と協働して情報処理を行ない…(中略)…非接触ICカード100とカード用リーダ/ライタ10間の制御手順は、標準化された暗号化認証処理手順によって行う…(中略)…暗号プロセッサ25は、本ICカード100とカード用リーダ/ライタ10間で取り交わされる標準化された暗号化認証処理を専用に行う…(中略)…メモリ部26は、…(中略)…予め登録された個人情報や暗号化方式に用いられる鍵情報を保管するEEPROM26Cを備え、CPU24や暗号プロセッサ25と協働して処理した各種情報を保持する」との記載,及び上記イの認定事項から,引用例1には,“前記CPUは,前記メモリ部と協働して情報処理を行ない,前記非接触ICカードと前記カード用リーダ/ライタ間の制御手順は,標準化された暗号化認証処理手順によって行”うこと,“前記暗号プロセッサは,前記非接触ICカードと前記カード用リーダ/ライタ間で取り交わされる標準化された暗号化認証処理を専用に行”うこと,及び,“前記メモリ部は,予め登録された個人情報や暗号化方式に用いられる鍵情報を保管するEEPROMを備え,前記CPUや前記暗号プロセッサと協働して処理した各種情報を保持”することが記載されているといえる。
同じく上記記載事項Cの「上述した複数のアンテナ構造体21…(中略)…複数の無線周波数に対応したアンテナ特性を設定し得る」との記載,及び上記イの認定事項から,引用例1には,“前記複数のアンテナ構造体は複数の無線周波数に対応したアンテナ特性を有”することが記載されているといえる。

エ 上記記載事項Dの「本ICカード100をカード用リーダ/ライタ10,11に近づけると、本ICカード100はカード用リーダ/ライタ10,11から電磁波を検出する」との記載,及び上記イの認定事項から,引用例1には,“前記非接触ICカードを前記カード用リーダ/ライタに近づけると,前記非接触ICカードは前記カード用リーダ/ライタからの電磁波を検出”することが記載されているといえる。

オ 上記記載事項Eの「給電許可信号が送出され…(中略)…この給電許可信号に基づいてパワー制御部22においては、CPU24、暗号プロセッサ25,メモリ部26,インタフェース28A,28B等の各ユニットへの通電を行い…、本ICカード100とカード用リーダ/ライタ10,11間の通常の暗号による相互認証処理を行なわれる」との記載,及び上記イの認定事項から,引用例1には,“給電許可信号が送出され,この給電許可信号に基づいて前記パワー制御部においては,前記CPU,前記暗号プロセッサ,前記メモリ部,前記インタフェース等の各ユニットへの通電を行い,前記非接触ICカードと前記カード用リーダ/ライタ間の通常の暗号による相互認証処理を行なわれ”ることが記載されているといえる。

カ 上記記載事項Fの「リーダ/ライタ10は…(中略)…無線搬送波…(中略)…ICカード100に送る…(中略)…この無線搬送波をアンテナ構造体21で受信し…(中略)…生体認証判定部23だけを起動して生体認証処理を行い、本人確認が完了した場合にパワー制御部22に給電許可信号を与え、本ICカード100の他のCPUなどの機能部を起動し、マスタ側であるカード用リーダ/ライタ10,11へ通常行なう相互認証処理を開始する」との記載,並びに,上記イ及びオの認定事項から,引用例1には,“前記リーダ/ライタは,無線搬送波を前記非接触ICカードに送り,この無線搬送波を前記アンテナ構造体で受信し,前記生体認証判定部だけを起動して生体認証処理を行い,本人確認が完了した場合に前記パワー制御部に前記給電許可信号を与え,前記非接触ICカードの他のCPUなどの機能部を起動し,マスタ側である前記カード用リーダ/ライタへ通常行なう相互認証処理を開始する”ことが記載されているといえる。

キ 以上,上記ア?カより,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「複数の異なる無線周波数に対応してRFインタフェース形式の異なるサービスに使用できるマルチアプリケーション対応の非接触ICカードであって,
前記非接触ICカードは,カード用リーダ/ライタから供給される電磁波を受けるアンテナ構造体である複数のアンテナと,このアンテナからの交流電流を整流して電力を得かつ供給制御を行なう電力供給制御部として機能するパワー制御部と,パワー制御部から一次電源を得て本人認証を行なう生体認証判定部とを備え,各種情報処理を行なうCPUと,暗号化された認証処理を行なう暗号プロセッサと,処理プログラムを保管するROMと,予め登録された個人情報や暗号化方式に用いられる鍵情報を保管するEEPROMを含むメモリ部と,前記カード用リーダ/ライタとの情報の入出力を無線通信で行なうためのRFインタフェース部とを備え,
前記生体認証判定部は,指紋,虹彩,顔,静脈,網膜,声紋,筆跡,および音声等何らかの個人固有の情報を生体情報入力部から受け取り,この個人固有の情報と予めカードに登録され記憶されている個人情報とを照合する生体認証により,本人確認を行なう機能を備え,
前記CPUは,前記メモリ部と協働して情報処理を行ない,前記非接触ICカードと前記カード用リーダ/ライタ間の制御手順は,標準化された暗号化認証処理手順によって行い,
前記暗号プロセッサは,前記非接触ICカードと前記カード用リーダ/ライタ間で取り交わされる標準化された暗号化認証処理を専用に行い,
前記メモリ部は,予め登録された個人情報や暗号化方式に用いられる鍵情報を保管するEEPROMを備え,前記CPUや前記暗号プロセッサと協働して処理した各種情報を保持し,
前記複数のアンテナ構造体は複数の無線周波数に対応したアンテナ特性を有し,
前記非接触ICカードを前記カード用リーダ/ライタに近づけると,前記非接触ICカードは前記カード用リーダ/ライタからの電磁波を検出し,
給電許可信号が送出され,この給電許可信号に基づいて前記パワー制御部においては,前記CPU,前記暗号プロセッサ,前記メモリ部,前記インタフェース等の各ユニットへの通電を行い,前記非接触ICカードと前記カード用リーダ/ライタ間の通常の暗号による相互認証処理を行なわれ,
前記リーダ/ライタは,無線搬送波を前記非接触ICカードに送り,この無線搬送波を前記アンテナ構造体で受信し,前記生体認証判定部だけを起動して生体認証処理を行い,本人確認が完了した場合に前記パワー制御部に前記給電許可信号を与え,前記非接触ICカードの他のCPUなどの機能部を起動し,マスタ側である前記カード用リーダ/ライタへ通常行なう相互認証処理を開始する
非接触ICカード。」

3 引用例2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,優先日前に既に公知である,特開2006-12026号公報(平成18年1月12日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A 「【0010】
図1は、本発明による携帯型情報記憶媒体の構成を示すブロック図であり、本実施例における携帯型情報記憶媒体は、ICカード10である。 図1に示すように、ICカード10は、ATMなど、接触式の通信を行うリーダライタ(R/W)を備える情報処理装置である外部装置20Aに挿入され、接続されることによって、外部装置20Aと接触式の通信を行い、また、ゲート端末など、非接触式の通信を行うR/Wを備える情報処理装置である外部装置20Bの通信範囲内に持ち込まれることによって、外部装置20Bと非接触式の通信を行う接触/非接触ICカードである。ICカード10は、ICチップと、ICチップに接続されているアンテナ、接触端子などを備え(図示しない。以下、同じ。)、CPU12と、CPU12に接続されているI/F11、RAM13、ROM14及び不揮発性メモリ15などから構成される携帯型情報記憶媒体である。ICカード10は、外部装置20A,20Bから受信するコマンド(要求)について処理を行い、処理結果を含むレスポンス(応答)を返信する。なお、携帯型情報記憶媒体とは、ICカード、SIMカード(Subscriber Identity Module)、UIMカード(User Identity Module)、ICタグ、また、携帯電話、携帯ホルダなどに挿入されるSIMカード又はUIMカードなど、ICチップと、外部装置及びICチップ間の通信を媒介するインターフェイスなどとを備え、このICチップ内のデータにアクセスするために外部装置による所定の処理が必要な機密性の高い携帯型の情報処理装置である。
【0011】
I/F11は、外部(外部装置20A,20B)から電力、クロックを取得するとともに、外部装置20A,20B及びCPU12間の通信を媒介するインターフェイスである。I/F11は、接触式I/F111、非接触式I/F112及び検出回路113などを備えている。 接触式I/F111は、外部装置20Aの接触端子と接触して電気的導通を行う接触端子などを備えている。接触式I/F111は、CPU12及び外部装置20A間の接触式での通信を媒介するとともに、外部装置20Aから提供される電力、クロックを取得する。」

4 引用例3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,優先日前に既に公知である,特開2005-293485号公報(平成17年10月20日公開。以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A 「【背景技術】
【0002】
従来、電池を内蔵したアクティブ型のICタグが知られている。この種のICタグは、CPUなどからなる処理部、外部とデータ通信を行うデータ通信部、および内蔵電池を、僅かなスペースに組み込んで形成される。
このような小さなICタグに、人間の指で操作可能なスイッチ類を設けることはスペース的に非常に難しかった。そのため、ICタグの電源オンオフを後から切り換えることは困難で、工場の製造段階から電池と処理部などを電気的に予め接続しておく必要があった。
そのため、工場の製造段階から実使用を開始するまでの期間、内部の電池が無駄に消費されてしまい、実使用可能な期間が短縮されるという問題点があった。」

B 「【0092】
なお、ICタグの電源としては、コイン型電池、ボタン型電池等の1次電池、2次電池や太陽電池、圧電素子、熱電素子などの発電を伴う電源、キャパシタ等が好ましい。」


第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明は,「複数の異なる無線周波数に対応してRFインタフェース形式の異なるサービスに使用できるマルチアプリケーション対応の非接触ICカードであ」り,「カード用リーダ/ライタから供給される電磁波を受けるアンテナ構造体である複数のアンテナ」を有し,「複数のアンテナ構造体は複数の無線周波数に対応したアンテナ特性を有」するものであるから,当該「複数の異なる無線周波数に対応し」た「異なるサービス」は,“複数のアプリケーションサービス”に対応するといえる。
引用発明の「非接触ICカード」は,「カード用リーダ/ライタから供給される電磁波を受けるアンテナ構造体である複数のアンテナ」と,「各種情報処理を行なうCPUと,暗号化された認証処理を行なう暗号プロセッサと,処理プログラムを保管するROMと,予め登録された個人情報や暗号化方式に用いられる鍵情報を保管するEEPROMを含むメモリ部と,前記カード用リーダ/ライタとの情報の入出力を無線通信で行なうためのRFインタフェース部とを備え」るとともに,当該「CPU」は,「前記メモリ部と協働して情報処理を行ない,前記非接触ICカードと前記カード用リーダ/ライタ間の制御手順は,標準化された暗号化認証処理手順によって行い」,当該「暗号プロセッサ」は,「前記非接触ICカードと前記カード用リーダ/ライタ間で取り交わされる標準化された暗号化認証処理を専用に行」うものであることから,上記「複数の異なる無線周波数に対応し」た「異なるサービス」に対応する回路を有するものといえ,当該回路は,本願発明1の「アプリケーション回路」に相当するものといえる。
そして,本願発明1の「アプリケーション回路」に相当する引用発明における当該回路は,それぞれ異なる無線周波数に対応した異なるサービスと“関連”しているといえ,また,引用発明の「非接触ICカード」は,「暗号化された認証処理を行なう暗号プロセッサ」や「予め登録された個人情報や暗号化方式に用いられる鍵情報を保管するEEPROM」などを有することから,“デバイス内に安全に含まれ”ていることは明らかである。
引用発明は,「非接触ICカードを前記カード用リーダ/ライタに近づけると,前記非接触ICカードは前記カード用リーダ/ライタからの電磁波を検出」するものであるから,“デバイスの周囲の環境から受信される外部信号によって励起”されているといえる。
引用発明は,「複数の異なる無線周波数に対応してRFインタフェース形式の異なるサービスに使用できるマルチアプリケーション対応の非接触ICカード」であるから,“デバイスの周囲の環境の所定の物理現象に対して選択的に応答し,前記物理現象が電磁場を含むもの”であるといえることから,以上を総合して,引用発明と本願発明1とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“デバイスに配置された複数のアプリケーション回路であって,各アプリケーション回路は,デバイス内に安全に含まれる少なくとも1つのアプリケーションサービスと関連しており,そして,デバイスの周囲の環境から受信される外部信号によって励起することができるものであり,そしてデバイスの周囲の環境の所定の物理現象に対して選択的に応答し,前記物理現象が電磁場を含むものである,複数の前記アプリケーション回路”を有する点で一致するといえる。

イ 引用発明は,「複数の異なる無線周波数に対応してRFインタフェース形式の異なるサービスに使用できるマルチアプリケーション対応の非接触ICカード」であるから,“前記関連するアプリケーションサービスを同定することが可能であ”るといえる。
引用発明は,「リーダ/ライタ」が,「無線搬送波を前記非接触ICカードに送り,この無線搬送波を前記アンテナ構造体で受信し,前記生体認証判定部だけを起動して生体認証処理を行い,本人確認が完了した場合に前記パワー制御部に前記給電許可信号を与え」,当該「給電許可信号に基づいて前記パワー制御部においては,前記CPU,前記暗号プロセッサ,前記メモリ部,前記インタフェース等の各ユニットへの通電を行い,前記非接触ICカードと前記カード用リーダ/ライタ間の通常の暗号による相互認証処理を行なわれ」るものであり,当該「給電許可信号」は,「CPU」や「暗号プロセッサ」などに対して,当該「CPU」や「暗号プロセッサ」がサービスを提供するために必要な電源を供給することを許可する信号であり,“サービスをアクティブ化するための信号”といえることから,本願発明1の「アクティブ化オーソリゼーション」に対応する信号といえる。
そして,引用発明の当該「CPU」や「暗号プロセッサ」は,“制御ユニット”といい得ることから,引用発明と本願発明1とは,下記の点(相違点2)で相違するものの,“前記関連するアプリケーションサービスを同定することが可能であり,そして,アクティブ化オーソリゼーションに応えて前記アプリケーションサービスをアクティブ化することが可能である,デバイスに配置された制御ユニット”を有する点で一致する。

ウ 引用発明の「生体認証判定部」は,「指紋,虹彩,顔,静脈,網膜,声紋,筆跡,および音声等何らかの個人固有の情報を生体情報入力部から受け取り,この個人固有の情報と予めカードに登録され記憶されている個人情報とを照合する生体認証により,本人確認を行なう機能を備え」るものであるから,本願発明1の「バイオメトリック回路」に相当するといえる。
そして,「リーダ/ライタ」から送られた「無線搬送波を前記アンテナ構造体で受信」して「生体認証判定部」が「起動」されるものであるから,上記イの認定を踏まえると,引用発明と本願発明1とは,“前記アクティブ化オーソリゼーションを生じさせるためにユーザーを認証するデバイスに配置されたバイオメトリック回路”を有する点で一致する。

エ 引用発明の「非接触ICカード」が備える「CPU」は,「前記メモリ部と協働して情報処理を行ない,前記非接触ICカードと前記カード用リーダ/ライタ間の制御手順は,標準化された暗号化認証処理手順によって行」うものであるから,引用発明の「非接触ICカード」は本願発明1の「保護通信デバイス」に相当するといえる。

オ 引用発明の「非接触ICカードを前記カード用リーダ/ライタに近づけると,前記非接触ICカードは前記カード用リーダ/ライタからの電磁波を検出」することは,「非接触ICカード」と「カード用リーダ/ライタ」との間の電界と磁界の相互作用,すなわち“所定の物理現象”に基づいて「電磁波を検出」,すなわち“外部信号を検出”しているといえるから,上記アの認定を踏まえると,引用発明と本願発明1とは,下記の点(相違点3)で相違するものの,“前記アプリケーション回路の少なくとも1つは,前記外部信号に基因する所定の物理現象に基づいて前記外部信号を検出するものであ”る点で一致する。

カ 引用発明は,「生体認証判定部だけを起動して生体認証処理を行い,本人確認が完了した場合に前記パワー制御部に前記給電許可信号を与え」るものであるところ,上記イ及びウの認定も踏まえると,引用発明と本願発明1とは,下記の点(相違点4)で相違するものの,“前記バイオメトリック回路がデバイス中に含まれているデータとバイオメトリック比較を行い,そして満足のいく比較の場合,前記アクティブ化オーソリゼーションを許可”する点で一致する。

キ 引用発明は,「生体認証判定部だけを起動して生体認証処理を行い,本人確認が完了した場合に前記パワー制御部に前記給電許可信号を与え,前記非接触ICカードの他のCPUなどの機能部を起動し,マスタ側である前記カード用リーダ/ライタへ通常行なう相互認証処理を開始する」ものであるところ,当該「相互認証処理」の「開始」は,本願発明1の「アプリケーションサービス」の「活性化」に対応し,上記アの認定を踏まえると,引用発明と本願発明1とは,“前記対応するアプリケーション回路が周囲の環境と相互作用するように,前記アプリケーションサービスが,前記アクティブ化オーソリゼーションに基づいて,活性化される”点で一致する。

ク 以上,ア?キの検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
デバイスに配置された複数のアプリケーション回路であって,各アプリケーション回路は,デバイス内に安全に含まれる少なくとも1つのアプリケーションサービスと関連しており,そして,デバイスの周囲の環境から受信される外部信号によって励起することができるものであり,そしてデバイスの周囲の環境の所定の物理現象に対して選択的に応答し,前記物理現象が電磁場を含むものである,複数の前記アプリケーション回路と;
前記関連するアプリケーションサービスを同定することが可能であり,そして,アクティブ化オーソリゼーションに応えて前記アプリケーションサービスをアクティブ化することが可能である,デバイスに配置された制御ユニットと;
前記アクティブ化オーソリゼーションを生じさせるためにユーザーを認証するデバイスに配置されたバイオメトリック回路と;
を含む保護通信デバイスであって,
前記アプリケーション回路の少なくとも1つは,前記外部信号に基因する所定の物理現象に基づいて前記外部信号を検出するものであり,
前記バイオメトリック回路がデバイス中に含まれているデータとバイオメトリック比較を行い,そして満足のいく比較の場合,前記アクティブ化オーソリゼーションを許可し,そして
前記対応するアプリケーション回路が周囲の環境と相互作用するように,前記アプリケーションサービスが,前記アクティブ化オーソリゼーションに基づいて,活性化される,
前記保護通信デバイス。

〈相違点1〉
本願発明1の「物理現象」が,「電磁場」だけでなく,「電磁場及び/又は非電磁場」を含むものであるのに対し,引用発明は,非電磁場の物理現象についての特定がない点。

〈相違点2〉
本願発明1は,「前記の励起されたアプリケーション回路」を同定可能であるのに対し,引用発明は,励起されたアプリケーション回路を同定することの特定がない点。

〈相違点3〉
本願発明1は,「アプリケーション回路の少なくとも1つは、デバイス内で前記制御ユニット及び前記バイオメトリック回路に結合して」いるものであるのに対し,引用発明は,本願発明1の「アプリケーション回路」に相当する回路が「生体認証判定部」に結合していることの特定がない点。

〈相違点4〉
本願発明1は,「オーソリゼーションリクエストが、対応する前記アプリケーション回路からバイオメトリック回路に送信され、そして前記オーソリゼーションリクエストを受けて、前記バイオメトリック回路が、ユーザーを同定するための認証プロセスを開始するものであ」り,「前記アクティブ化オーソリゼーションを許可するためにアグリーメント信号が前記バイオメトリック回路から前記対応するアプリケーション回路に送信され」るものであるのに対し,引用発明は,「オーソリゼーションリクエスト」および「アグリーメント信号」をやりとりすることの明記がない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先に相違点4について検討する。
引用発明は,「前記非接触ICカードを前記カード用リーダ/ライタに近づけると,前記非接触ICカードは前記カード用リーダ/ライタからの電磁波を検出し,」「前記リーダ/ライタは,無線搬送波を前記非接触ICカードに送り,この無線搬送波を前記アンテナ構造体で受信し,前記生体認証判定部だけを起動して生体認証処理を行い,本人確認が完了した場合に前記パワー制御部に前記給電許可信号を与え,前記非接触ICカードの他のCPUなどの機能部を起動し,マスタ側である前記カード用リーダ/ライタへ通常行なう相互認証処理を開始する」ものであるところ,最初に「生体認証判定部だけを起動」して「相互認証処理を開始」することから,「生体認証判定部」の「起動」以前になんらかの信号のやりとりを行うことは不可能である。
したがって,引用発明において,「オーソリゼーションリクエスト」を「対応する前記アプリケーション回路からバイオメトリック回路に送信」し,「そして前記オーソリゼーションリクエストを受けて、前記バイオメトリック回路が、ユーザーを同定するための認証プロセスを開始する」よう構成することには阻害要因があるから,当業者といえども,引用発明に基づいて上記相違点4に係る構成を想起することは容易とはいえない。
また,相違点4に係る構成は,その他上記第4の3及び4に示した引用例2及び引用例3にも記載も示唆も無く,当該構成は周知なものともいえない。
したがって,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明並びに引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2?10及び12について
本願発明2?10及び12は,本願発明1を引用するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明並びに引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明11及び13について
本願発明11及び13は,本願発明1及び本願発明12と概ねカテゴリー表現が異なるのみであり,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明並びに引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-12 
出願番号 特願2018-80823(P2018-80823)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 須田 勝巳
山崎 慎一
発明の名称 生体認証有するマルチプルアプリケーションチップカード  
代理人 森田 憲一  
代理人 山口 健次郎  

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