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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01M |
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管理番号 | 1372364 |
審判番号 | 不服2020-7106 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-25 |
確定日 | 2021-04-13 |
事件の表示 | 特願2019- 64933「充放電試験装置及び充放電試験方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月 8日出願公開、特開2020-166989、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成31年3月28日に特許出願したものであって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。 令和 1年12月 5日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 2月 4日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年 2月17日付け:拒絶査定 令和 2年 5月25日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 2年12月16日付け:当審による最後の拒絶理由の通知 令和 2年12月25日 :手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、令和2年12月25日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし3は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 第1の陽極及び第1の陰極を有する充電装置と、 前記充電装置の前記第1の陽極に第1の接続ラインによって電気的に接続された第2の陽極及び前記充電装置の前記第1の陰極に第2の接続ラインによって電気的に接続された第2の陰極を有する電子負荷装置と、 前記第1の接続ラインに接続されかつ二次電池の陽極が接続される陽極接点と、 前記第2の接続ラインに接続されかつ前記二次電池の陰極が接続される陰極接点と、 前記充電装置が前記第1の陽極と前記陽極接点の間に流れる第1の電流を発生させると同時に、前記電子負荷装置が前記第2の陽極と前記陽極接点との間に流れる第2の電流を発生させるように前記充電装置と前記電子負荷装置とを制御して前記二次電池の充放電試験を行い、前記充放電試験中の前記二次電池の状態に関する情報を取得する充放電制御部と、を有し、 前記充放電制御部は、前記充電装置の前記第1の電流を発生させる動作を、定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルスモード及び定抵抗モードのうちの1のモードで制御すると同時に、前記電子負荷装置の前記第2の電流を発生させる動作を、定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルスモード及び定抵抗モードのうちの前記1のモードとは異なる他のモードで制御することを特徴とする充放電試験装置。 【請求項2】 前記二次電池の状態に関する情報は、前記二次電池を介して前記陽極接点と前記陰極接点との間に流れる電流値、前記陽極接点と前記陰極接点との間の電位差、または前記二次電池の温度を含むことを特徴とする請求項1に記載の充放電試験装置。 【請求項3】 前記充電装置及び前記電子負荷装置を複数有し、 前記充放電制御部は、複数の前記充電装置及び複数の前記電子負荷装置を、複数の前記充電装置の各々が前記第1の陽極の各々と前記陽極接点の間に流れる各第1の電流を発生させると同時に、複数の前記電子負荷装置の各々が前記第2の陽極の各々と前記陽極接点との間に流れる各第2の電流を発生させるように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の充放電試験装置。」 第3 令和2年12月16日付け当審の拒絶理由通知について 1 概要 [理由1]本願は、特許請求の範囲の請求項1、3、4の記載が、下記の点で、特許法第36条第6項1号に規定する要件を満たしていない。 発明の詳細な説明及び図面を参照しても、「電流モード」及び「電圧モード」なる用語は記載されていない。 また、「充電装置の前記第1の電流を発生させる動作」及び「電子負荷装置の前記第2の電流を発生させる動作」の「制御」に関し、発明の詳細な説明(段落【0044】、【0045】、【0052】、【0053】)には、充電装置を「定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルス充電モード又は定抵抗モード」のいずれかにより制御し、電子負荷装置を「定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルス放電モード又は定抵抗モード」のいずれかにより制御することのみ記載されているが、請求項1の上記「電流モード」及び「電圧モード」との用語からすれば、「定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルス充電モード又は定抵抗モード」及び「定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルス放電モード又は定抵抗モード」以外のモードも含むと解釈できる。 [理由2]本願は、特許請求の範囲の請求項4の記載が、下記の点で、特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしていない。 請求項4が引用する請求項1には、「前記充電装置が前記第1の陽極と前記陽極接点の間に流れる第1の電流を発生させると同時に、前記電子負荷装置が前記第2の陽極と前記陽極接点との間に流れる第2の電流を発生させる」と記載されており、請求項4に記載された「第1の陽極の各々と前記陽極接点の間に流れる電流」及び「第2の陽極の各々と前記陽極接点との間に流れる電流」と、請求項1に記載された「第1の電流」及び「第2の電流」と同じものであるのか否か不明である。 2 当審の判断 (1)理由1について 令和2年12月25日にされた補正において、「定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルスモード及び定抵抗モードのうちの1のモード」及び「定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルスモード及び定抵抗モードのうちの前記1のモードとは異なる他のモード」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。 (2)理由2について 令和2年12月25日にされた補正において、「前記充放電制御部は、複数の前記充電装置及び複数の前記電子負荷装置を、複数の前記充電装置の各々が前記第1の陽極の各々と前記陽極接点の間に流れる各第1の電流を発生させると同時に、複数の前記電子負荷装置の各々が前記第2の陽極の各々と前記陽極接点との間に流れる各第2の電流を発生させるように制御する」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第4 原査定の概要 原査定(令和2年2月17日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。 本件出願の請求項1ないし9に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献:特開2010-223606号公報 第5 引用文献、引用発明等 1 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開2010-223606号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「【0001】 本発明は、迅速なモード切り換えが可能な二次電池の充放電試験装置と二次電池の充放電試験方法とに関する。 (中略) 【0008】 二次電池の充放電試験装置において、車両の走行状態に対応した複数のモードの間を切り換える場合には、切り換え時の状態条件を切り換え前後の各モードにおいて、合致させることが好ましい。 【0009】 切り換え後のモードにおける状態条件を、モード切り換え時に演算処理すると、演算処理に要する時間相当だけモード切り換えタイミングが遅延することになる。また、演算処理に要する時間は試験条件やモード条件等により種々異なるので、試験ごとにモード切り換えタイミングの遅延が異なり、試験ごとにモード切り換えタイミングが異なる懸念も生じる。 【0010】 本発明は、上述の問題点に鑑み為されたものであり、試験モードを安定して迅速に切り換え可能な二次電池の充放電試験装置と二次電池の充放電試験方法とを実現すること目的とする。 (中略) 【0023】 そこで、まず二次電池の充放電試験装置の機能や処理について概要説明することとする。図1は、モード移行に関する二次電池の充放電試験装置300の構成概念を説明するブロック図である。図1において、二次電池の充放電試験装置300は、試験対象となる試験用バッテリである二次電池310と、二次電池310に充電するCHG320と、二次電池310を放電させるEUL330(電子負荷に対応する)とを備える。 【0024】 また、二次電池の充放電試験装置300は、二次電池310の充放電を制御する充放電制御部340を備える。充放電制御部340は、上位のコンピュータ等から試験モードの切換指示があると計時するタイマー341と、タイマー341の演算結果を基に試験モードを切換制御するモード切換制御部342を備える。 【0025】 充放電制御部340は、車両の走行状態に対応した複数の試験モードを格納する制御データ部347を備える。制御データ部347は、例えば車両の加速走行状態に対応するモードA343と、車両の定速走行状態に対応するモードB344と、車両の減速走行状態に対応するモードC345とを格納していてもよい。 【0026】 モード切換制御部342は、モードA343とモードB344とモードC345との間を適宜切り換え処理する。これにより、二次電池の充放電試験装置300は、現実の車両の走行状態等を想定した走行状態シミュレーション下において、二次電池310の充放電試験をすることが可能である。なお、図1において346は、CHG320とEUL330とを制御するCHG・DIS制御部である。 (中略) 【0030】 二次電池の充放電試験装置300は、当初モードA343の充放電パターンで試験し、図2に示すモード移行時点Aで、モードB344へと移行するものとする。この場合に、二次電池の充放電試験装置300は、モードB344の各サイクル時間を、スタート時点から順次計算して、実行時間TAとなる時点のモードB344の走行状態を算出する。そして、走行状態がモード切り換え前後で合致するように、切り換えタイミング等の調整をしてからモードB344へと切り換える。 (中略) 【0056】 図5では、充放電制御部340(2)がモードBの試験開始時点Aを求める例を説明している。図5に示す各モードでの矩形波は、典型的には二次電池310の充電または放電に関係する電流値または電圧値を示すものとする。」 図1 図2 2 引用文献の上記記載及び図面から、次のことがいえる。 (1)引用文献の段落【0001】によれば、引用文献には、迅速なモード切り換えが可能な二次電池の充放電試験装置が記載されている。 (2)引用文献の段落【0023】、【0024】及び図1によれば、二次電池の充放電試験装置は、試験対象となる試験用バッテリである二次電池と、二次電池に充電するCHGと、二次電池を放電させるEUL(電子負荷に対応する)と、二次電池の充放電を制御する充放電制御部とを備える。 (3)引用文献の段落【0025】によれば、充放電制御部は、車両の走行状態に対応した複数の試験モードを格納する制御データ部を備え、該制御データ部は、車両の加速走行状態に対応するモードAと、車両の定速走行状態に対応するモードBと、車両の減速走行状態に対応するモードCとを格納するものである。よって、充放電制御部は、車両の走行状態に対応した試験モードであって、加速走行状態に対応するモードA、定速走行状態に対応するモードB及び減速走行状態に対応するモードCを格納する制御データ部を備えているといえる。 また、同段落【0026】及び図1によれば、充放電制御部は、モードAとモードBとモードCとの間を適宜切り換え処理するモード切換制御部と、CHGとEULとを制御するCHG・DIS制御部も備えるといえる。 (4)引用文献の段落【0030】よれば、二次電池の充放電試験装置は、当初モードAの充放電パターンで試験しモード移行時点AでモードBへと移行する場合、実行時間TAとなる時点のモードBの走行状態を算出し、走行状態がモード切り換え前後で合致するように、切り換えタイミング等の調整をしてからモードBへと切り換えるものである。 (5)引用文献の図1によれば、CHGの一端及び他端は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続され、EULの一端及び他端は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続されることが図示されているといえる。 3 引用発明 上記(1)ないし(5)によれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「迅速なモード切り換えが可能な二次電池の充放電試験装置において、 試験対象となる試験用バッテリである二次電池と、二次電池に充電するCHGと、二次電池を放電させるEUL(電子負荷に対応する)と、二次電池の充放電を制御する充放電制御部とを備え、 CHGの一端及び他端は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続され、EULの一端及び他端は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続され、 充放電制御部は、車両の走行状態に対応した試験モードであって、加速走行状態に対応するモードA、定速走行状態に対応するモードB及び減速走行状態に対応するモードCを格納する制御データ部と、モードAとモードBとモードCとの間を適宜切り換え処理するモード切換制御部と、CHGとEULとを制御するCHG・DIS制御部とを備え、 充放電試験装置は、当初モードAの充放電パターンで試験しモード移行時点AでモードBへと移行する場合、実行時間TAとなる時点のモードBの走行状態を算出し、走行状態がモード切り換え前後で合致するように、切り換えタイミング等の調整をしてからモードBへと切り換える、 二次電池の充放電試験装置。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「CHG」は、二次電池に充電するものであるから、本願発明1の「充電装置」に相当する。 また、引用発明において、CHGの「一端」及び「他端」は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続されるのであるから、本願発明1の「第1の陽極」及び「第1の陰極」に相当する。 よって、引用発明の「二次電池に充電するCHG」及び「CHGの一端及び他端は、試験用バッテリの陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続され」ることは、本願発明1の「第1の陽極及び第1の陰極を有する充電装置」に相当する構成を備えているといえる。 イ 引用発明の「EUL」は、二次電池を放電させ、電子負荷に対応するものであるから、本願発明1の「電子負荷装置」に相当する。 また、引用発明のEULの「一端」及び「他端」は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続されるのであるから、本願発明1の「第2の陽極」及び「第2の陰極」に相当する。 そして、引用発明において、CHGの一端及び他端は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続され、EULの一端及び他端は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続されるのであるから、CHGの一端とEULの一端が電気的に接続され、CHGの他端とEULの他端が電気的に接続されることは当然のことである。 よって、引用発明の「二次電池を放電させるEUL(電子負荷に対応する)」及び「CHGの一端及び他端は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続され、EULの一端及び他端は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続され」ることと、本願発明1の「前記充電装置の前記第1の陽極に第1の接続ラインによって電気的に接続された第2の陽極及び前記充電装置の前記第1の陰極に第2の接続ラインによって電気的に接続された第2の陰極を有する電子負荷装置」とは、「前記充電装置の前記第1の陽極に電気的に接続された第2の陽極及び前記充電装置の前記第1の陰極に電気的に接続された第2の陰極を有する電子負荷装置」である点で共通する。 ただし、「第2の陽極」に関し、本願発明1は、充電装置の第1の陽極に「第1の接続ライン」によって電気的に接続されるのに対し、引用発明はその旨特定されておらず、また、「第2の陰極」に関し、本願発明1は、充電装置の第1の陰極に「第2の接続ライン」によって電気的に接続されるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 ウ 本願発明1の「陽極接点」及び「陰極接点」に関し、本願明細書段落【0018】に「二次電池40は、陽極が陽極接点10aと接続され、陰極が陰極接点10bに接続されている。二次電池40は、陽極接点10aと陰極接点10bとの間で脱着自在に取り付けられている」と記載されていることから、本願発明1の「陽極接点」及び「陰極接点」とは、二次電池を脱着自在に取り付けるためのものといえる。 ここで、引用発明は「二次電池の充放電試験装置」に係る発明であることからすれば、二次電池を着脱自在に取り付けるための陽極側の接点及び陰極側の接点を備えていることは当然のことである。 よって、引用発明と本願発明1とは、「二次電池の陽極が接続される陽極接点と、前記二次電池の陰極が接続される陰極接点」を備えている点で共通する。 ただし、「陽極接点」に関し、本願発明1は、「第1の接続ラインに接続され」ているのに対し、引用発明はその旨特定されておらず、また、「陰極接点」に関し、本願発明は「第2の接続ラインに接続され」ているのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 エ 引用文献の図5について説明する段落【0056】の「図5に示す各モードでの矩形波は、典型的には二次電池310の充電または放電に関係する電流値または電圧値を示すものとする。」との記載によれば、引用文献の図2に示されたモードA、モードB及びモードCの各矩形波も、二次電池の充電または放電に関係する電流値または電圧値を示すといえ、各モードの矩形波からすれば、各モードにおいて充電電流又は放電電流が発生していることは明らかである。 そして、引用発明の「充放電制御部」は、「車両の走行状態に対応した試験モードであって、加速走行状態に対応するモードA、定速走行状態に対応するモードB及び減速走行状態に対応するモードCを格納する制御データ部と、モードAとモードBとモードCとの間を適宜切り換え処理するモード切換制御部と、CHGとEULとを制御するCHG・DIS制御部とを備え」ているから、各モードにおいて充電電流又は放電電流を発生させるようにCHGとEULとを制御して充放電試験を行っているといえる。 さらに、引用発明において、CHGの一端及び他端は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続され、EULの一端及び他端は、二次電池の陽極及び陰極にそれぞれ電気的に接続され、上記ウで述べたように、引用発明も二次電池を着脱自在に取り付けるための陽極側の接点及び陰極側の接点を備えているのであるから、CHGの一端及びEULの一端は陽極側の接点に電気的に接続され、CHGの他端及びEULの他端は陰極側の接点に電気的に接続されていることは明らかである。 以上からすれば、引用発明の「充放電制御部」は、CHGからの充電電流が、CHGの一端から陽極側の接点に流れ、二次電池からの放電電流が、陽極側の接点からEULの一端に流れるようにCHGとEULとを制御していると解するのは自然である。 よって、本願発明1と引用発明とは、「前記充電装置が前記第1の陽極と前記陽極接点の間に流れる第1の電流を発生させ、前記電子負荷装置が前記第2の陽極と前記陽極接点との間に流れる第2の電流を発生させるように前記充電装置と前記電子負荷装置とを制御して前記二次電池の充放電試験を行う充放電制御部」を有する点で共通する。 ただし、「充放電制御部」に関し、本願発明1は「第1の電流を発生させると同時」に「第2の電流を発生させるように前記充電装置と前記電子負荷装置とを制御」し、「前記充放電試験中の前記二次電池の状態に関する情報を取得する」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 さらに、本願発明1は「前記充電装置の前記第1の電流を発生させる動作を、定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルスモード及び定抵抗モードのうちの1のモードで制御すると同時に、前記電子負荷装置の前記第2の電流を発生させる動作を、定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルスモード及び定抵抗モードのうちの前記1のモードとは異なる他のモードで制御する」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 よって上記アないしエによれば、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。 (一致点) 「第1の陽極及び第1の陰極を有する充電装置と、 前記充電装置の前記第1の陽極に電気的に接続された第2の陽極及び前記充電装置の前記第1の陰極に電気的に接続された第2の陰極を有する電子負荷装置と、 二次電池の陽極が接続される陽極接点と、 前記二次電池の陰極が接続される陰極接点と、 前記充電装置が前記第1の陽極と前記陽極接点の間に流れる第1の電流を発生させ、前記電子負荷装置が前記第2の陽極と前記陽極接点との間に流れる第2の電流を発生させるように前記充電装置と前記電子負荷装置とを制御して前記二次電池の充放電試験を行う充放電制御部と、 を有する充放電試験装置。」 (相違点1) 「第2の陽極」に関し、本願発明1は、充電装置の第1の陽極に「第1の接続ライン」によって電気的に接続されるのに対し、引用発明はその旨特定されておらず、また、「第2の陰極」に関し、本願発明1は、充電装置の第1の陰極に「第2の接続ライン」によって電気的に接続されるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点2) 「陽極接点」に関し、本願発明1は、「第1の接続ラインに接続され」ているのに対し、引用発明はその旨特定されておらず、また、「陰極接点」に関し、本願発明1は「第2の接続ラインに接続され」ているのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点3) 「充放電制御部」に関し、本願発明1は「第1の電流を発生させると同時」に「第2の電流を発生させるように前記充電装置と前記電子負荷装置とを制御」し、「前記充放電試験中の前記二次電池の状態に関する情報を取得する」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点4) 「充放電制御部」に関し、本願発明1は、「前記充電装置の前記第1の電流を発生させる動作を、定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルスモード及び定抵抗モードのうちの1のモードで制御すると同時に、前記電子負荷装置の前記第2の電流を発生させる動作を、定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルスモード及び定抵抗モードのうちの前記1のモードとは異なる他のモードで制御する」のに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3及び相違点4について判断する。 上記「(1)」「エ」で述べたように、引用文献の図2に示された各モードの矩形波からすれば、各モードにおいて充電電流又は放電電流が発生していることは明らかといえるものの、充電電流を発生させる動作と放電電流を発生させる動作が同時に制御されているとは認められない。また、引用文献には、各モードにおいて充電電流を発生させる動作と放電電流を発生させる動作とを同時に制御することについて記載や示唆は見当たらず、この点自明であるともいえない。 さらに、引用文献には、充電電流を発生させる動作と放電電流を発生させる動作とを、定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルスモード又は定抵抗モードのうちの異なるモードでそれぞれ制御することについて記載や示唆も見当たらない。 よって、引用文献からは、相違点3及び相違点4にかかる構成を導き出すことはできない。 (3)したがって、相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 2.本願発明2及び本願発明3について 請求項2及び請求項3は、請求項1に従属する請求項であり、相違点3及び相違点4に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第7 原査定についての判断 令和2年12月25日にされた補正により、補正後の請求項1ないし3は、「前記充放電制御部は、前記充電装置の前記第1の電流を発生させる動作を、定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルスモード及び定抵抗モードのうちの1のモードで制御すると同時に、前記電子負荷装置の前記第2の電流を発生させる動作を、定電流/定電圧モード、定電流モード、定電力モード、パルスモード及び定抵抗モードのうちの前記1のモードとは異なる他のモードで制御する」という技術的事項を有するものとなった。 当該技術的事項は、上記「第6」で述べたとおり、原査定における引用文献には記載されておらず、本願発明1ないし本願発明3は、上記引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし本願発明3は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願の拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-03-24 |
出願番号 | 特願2019-64933(P2019-64933) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01M)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 右田 勝則 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
赤穂 嘉紀 畑中 博幸 |
発明の名称 | 充放電試験装置及び充放電試験方法 |
代理人 | 特許業務法人創成国際特許事務所 |