• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G07C
管理番号 1372394
審判番号 不服2020-13195  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-23 
確定日 2021-04-13 
事件の表示 特願2018- 37104「運転評価システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月12日出願公開、特開2019-153026、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月2日の出願であって、令和2年4月6日付けで拒絶理由が通知され、同年6月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月16日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年9月23日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項4
・引用文献1、2

<刊行物等一覧>
引用文献1.特開2006-256438号公報
引用文献2.特開2015-194938号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1?4に係る発明は、令和2年6月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであるところ、拒絶査定の対象となった請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項4】
車両に搭載され車両の走行に関するデータを取得する走行データ取得装置と、前記走行データ取得装置により取得された走行に関するデータを解析してドライバーの運転を評価する運転評価装置と、を備えた運転評価システムであって、
前記走行データ取得装置は、車両の挙動が所定条件を満たす場合に警報を発する警報手段と、前記警報手段による警報の発生を禁止したり禁止を解除したりする警報制御手段と、
を備え、
前記運転評価装置は、前記警報制御手段が警報の発生を禁止する状態と禁止を解除する状態とのどちらの状態にするかの設定が可能な設定手段を備え、
ドライバーが警報の発生を禁止する状態と禁止を解除する状態とを切り替えることができないように構成されている
ことを特徴とする運転評価システム。」

第4 引用文献の記載事項等
1 引用文献1
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。
(1a)「【請求項1】
安全走行の観点から運転者の運転態様を評価する運転態様評価手段と、
所定の場合に安全走行に関連する各種制御を行う安全制御手段と、
安全制御手段が作動可能な状態と作動不能な状態とを、ユーザからの切替要求に応じて切り替える切替手段とを備え、
運転態様評価手段による運転態様の評価結果に基づいて、安全制御手段の作動可能な状態を強制的に形成することを特徴とする、車両用制御装置。
・・・
【請求項4 】
安全走行の観点から運転者の運転態様を評価する運転態様評価手段と、
所定の場合に安全走行に関連する各種制御を行う安全制御手段と、
安全制御手段が作動可能な状態と作動不能な状態とを、ユーザからの切替要求に応じて切り替える切替手段と、
安全制御手段が作動不能な状態にあるときに動作し、運転態様評価手段による運転態様の評価結果に基づいて、所定の情報出力を行う情報出力手段と、を備えることを特徴とする車両用制御装置。」

(1b)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述の従来技術のように、車両挙動制御や警報制御など、安全走行に関連する各種制御システムを、所定のスイッチ操作によりオン/オフすることができる構成は、ユーザ毎に異なる好みや運転特性に制御開始条件等をチューニングにより適合させる構成に比べて、簡易な構成で各ユーザの好み等に応じることができる点で有用である。
【0004】
しかしながら、このようなスイッチ操作により各種制御システムをオン/オフする構成では、その反面として、スイッチがオフ状態である限り制御システムを作動させることができないので、スイッチが一旦オフ状態にされると、かかる制御システムを本来利用すべき運転者に対して利用を促す術がなくなる。これでは、かかる制御システムの有用性を適切に発揮させることやその有用性をユーザに認知させることができない。
【0005】
そこで、本発明は、車両挙動制御や警報制御などのような安全制御手段の作動可否状態を、ユーザからの切替要求に応じて切替可能としつつ、安全制御手段の有用性を適切に発揮させることやその有用性をユーザに認知させることができる車両用制御装置の提供を目的とする。」

(1c)「【0015】
図1は、本発明による車両用制御装置の一実施例を示すシステム構成図である。本実施例の車両制御装置は、統合マネージャ10を中心として構成される。統合マネージャ10は、通常的なECU(電子制御ユニット)と同様、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM 等からなるマイクロコンピュータとして構成されている。」

(1d)「【0021】
実施例1は、所定の場合に注意喚起度の高い警報を出力する警報制御を、安全制御とする場合に関する。
【0022】
統合マネージャ10には、CAN(controller area network)などの適切なバスを介して、上記の制御デバイスの他、車両内の各種の電子部品(車速センサ、アクセル開度センサ、マスタシリンダ圧センサのような各種センサや各種ECU)が接続される。統合マネージャ10は、これら各種の電子部品との通信を介して、以下で詳説する各種情報を取得することになる。
【0023】
図2は、本実施例の統合マネージャ10の要部構成を示す機能ブロック図である。統合マネージャ10は、所与の判定条件に基づいて警報を出力すべきか否かを判定する警報条件判定部12と、警報条件判定部12の判定結果に応じて警報制御を行う警報制御部14とを備える。
【0024】
警報条件判定部12は、車両内の各種の電子部品から取得される各種情報やセンサ信号(例えば、道路情報、運転者操作状態を表すセンサ信号、車両の状態を表すセンサ信号)に基づいて、所与の判定条件が満たされた場合、警報制御部14に対してオン判定を出力する。
【0025】
判定条件は、実施する警報の種類に応じて適宜設定される。
【0026】
例えば、一時停止線で一時停止を促す警報を行う構成では、道路情報(ナビゲーション装置及び/又は前方監視カメラからの情報)から一時停止線の存在及び位置を検出し、アクセル開度センサやブレーキ踏力センサのセンサ信号から一時停止線で運転者の停止する意思を検出し、車速センサから車両の減速態様を検出し、これらのパラメータが所与の判定条件を満たす場合、オン判定が出力される。この場合、判定条件は、例えば、一時停止線手前所定距離内で車速が所定値以上であり、且つ、ブレーキ操作がなされてない場合であってよい。
【0027】
また、車間距離に応じて減速を促す警報を行う構成では、道路情報は不要となり、先行車等に対する相対距離や相対速度に関する情報(レーダセンサ等からの情報)が必要とされ、これに応じた判定条件が適宜設定されることになる。このように、警報制御の種類は多様であり、それぞれの警報出力可否の判定条件(それに伴い、判定に用いる情報)についても多様であるが、本発明は、警報制御の種類や警報出力可否の判定条件について限定されるものでなく、如何なる情報に基づく如何なる判定条件を用いる如何なる種類の警報制御に対しても適用可能である。
【0028】
警報制御部14は、判定条件成立時に警報条件判定部12から入力されるON判定に応答して、情報出力装置70に対して所定の警報を出力するように要求を出す。尚、このようにして情報出力装置70を介して出力される警報の出力態様は、音響的な出力及び/又は視覚的な表示出力であってよく、同様に、実施する警報の種類に応じて適宜設定される。例えば、一時停止線で一時停止を促す警報を行う構成では、スピーカを介して「一時停止をしてください」なる音声メッセージを出力してもよいし、単なるブザー音を出力してもよい。また、一時停止線通過後の車速が所定値を超えた場合、一時停止線に対する一時停止義務を怠ったとして、一時停止を怠った旨の音声メッセージを出力してもよい。
【0029】
警報制御部14には、警報ON/OFF設定手段30が接続されている。警報ON/OFF設定手段30は、例えば、インストルメントパネルやステアリングコラムなど、ユーザの操作できる適切な箇所に設定される操作スイッチであってよい。或いは、警報ON/OFF設定手段30は、マイク等を介したユーザからの音声入力に応答するよう構成されていてもよい。
【0030】
警報制御部14は、警報ON/OFF設定手段30を介して入力される警報ON/OFF指令に応じて、作動可能な状態及び作動不能な状態の何れか一方の状態となる。例えば、警報ON/OFF設定手段3 0を介して警報OFF指令が入力されると、警報制御部14は、作動不能な状態となり、この場合、警報条件判定部12からON判定が入力されたとしても、原則的に、情報出力装置70による警報出力を実施しない。
【0031】
本実施例の統合マネージャ10は、その特徴的な構成として、図2に示すように、安全走行の観点から運転者の運転態様を評価する運転態様評価部16を更に備える。
【0032】
運転態様評価部16は、例えば、警報条件判定部12での判定状況を監視・学習し、運転者の運転態様を評価する。この場合、運転態様評価部16は、警報条件判定部12でのON判定の回数、ON判定時の違反度合いや違反類型、ON判定となった警報制御の種類等に応じて、運転者の運転態様を評価してよい。簡易的に運転者の運転態様を"又は"不可"の2段階で評価する構成では、警報条件判定部12でのON判定の回数が所定回数以上となったときに、"不可"との評価結果が生成されてよい。
【0033】
或いは、運転態様評価部16は、警報条件判定部12での判定条件とは異なる別個独立の評価基準に基づいて、警報条件判定部12で用いられる各種情報若しくはその他の情報を用いて、運転者の運転態様を評価するものであってもよい。例えば、運転態様評価部16は、道路情報(交通情報)と車両の走行状態との対比結果に基づいて、運転者が交通規範を遵守しているか否かの観点から運転者の運転態様を評価してよい。具体的には、例えば制限速度を遵守しているか否か、一時停止線での一時停止を遵守しているか否か等が、運転者の運転態様の評価結果として判断されてよい。
【0034】
警報制御部14の状態(作動可能な状態及び作動不能な状態)は、警報ON/OFF設定手段30を介して入力される警報ON/OFF指令の他、運転態様評価部16による評価結果に応じて、切り替えられる。即ち、図2に示すように、運転態様評価部16による評価結果が所定基準を満たす場合、警報ON/OFF設定手段30からの警報OFF指令が遮断(マスク)されることなく、警報制御部14に入力され、その結果、上述の如く警報制御部14の作動不能な状態が維持される。他方、運転態様評価部16による評価結果が所定基準を満たさない場合、警報ON/OFF設定手段30からの警報OFF指令が遮断(マスク)され、その結果、警報制御部14の作動可能な状態が強制的に形成される。」

(1e)【図2】は次のとおりである。



(2)引用発明
記載事項(1c)の「車両制御装置」は車両に搭載されるものであることは明らかである。
このことと、上記(1)より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「車両に搭載される、統合マネージャ10を中心として構成される車両制御装置であって、
統合マネージャ10は、所与の判定条件に基づいて警報を出力すべきか否かを判定する警報条件判定部12と、警報条件判定部12の判定結果に応じて警報制御を行う警報制御部14と、安全走行の観点から運転者の運転態様を評価する運転態様評価部16を備え、
警報条件判定部12は、車両内の各種の電子部品から取得される各種情報やセンサ信号(例えば、道路情報、運転者操作状態を表すセンサ信号、車両の状態を表すセンサ信号)に基づいて、所与の判定条件が満たされた場合、警報制御部14に対してON判定を出力するものであり、
警報制御部14は、判定条件成立時に警報条件判定部12から入力されるON判定に応答して、情報出力装置70に対して所定の警報を出力するように要求を出すものであり、
車間距離に応じて減速を促す警報を行う構成では、先行車等に対する相対距離や相対速度に関する情報が必要とされ、これに応じた判定条件が適宜設定され、
警報制御部14には、警報ON/OFF設定手段30が接続され、運転態様評価部16による評価結果が所定基準を満たす場合、警報ON/OFF設定手段30からの警報OFF指令が遮断されることなく、警報制御部14に入力され、その結果、上述の如く警報制御部14の作動不能な状態が維持され、他方、運転態様評価部16による評価結果が所定基準を満たさない場合、警報ON/OFF設定手段30からの警報OFF指令が遮断され、その結果、警報制御部14の作動可能な状態が強制的に形成される、統合マネージャ10を中心として構成される車両用制御装置。」

2 引用文献2
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a)「【0010】
<通知システムの概略構成例>
図1は、通知システムの概略構成の一例を示す図である。図1に示す通知システム10は、情報処理装置の一例としての管理サーバ11と、1又は複数の車両12-1?12-3(以下、必要に応じて「車両12」という)と、運行管理者端末13とを有する。管理サーバ11と車両12とは、無線通信等に代表される通信ネットワーク14-1によりデータの送受信が可能な状態で接続されている。また、管理サーバ11と、運行管理者端末13とは、インターネットやLocal Area Network(LAN)等に代表される通信ネットワーク14-2によりデータの送受信が可能な状態で接続されている。なお、通信ネットワーク14-1,14-2は、同一のネットワークでもよい。
【0011】
管理サーバ11は、各車両12から所定間隔(例えば、5?10分等)で、送信されるドラレコ情報等の運行情報を取得する。ドラレコ情報とは、例えば車両12を識別する情報(車両ID)、Global Positioning Syste m(GPS,全地球測位網等を用いて取得した車両の位置情報(緯度・経度)、速度情報、時間情報等である。また、ドラレコ情報とは、例えば走行距離、エンジン回転数の変化の他、急加速や急減速検知、ドアの開閉、加速度G[CGS単位系ガル(Gal)]、等のうち、少なくとも1つを含む。なお、ドラレコ情報としては、これに限定されるものではない。加速度Gは、縦G(例えば、乗っていて発進やブレーキングの時に車の進行方向に対して身体が前後に持って行かれる力)や、横G (例えば、遠心力によって曲がっていく方向とは逆に身体を持って行かれる力)等でもよい。
【0012】
また、管理サーバ11は、各車両12から収集した運行情報に対してドライバの車両12に対する所定の操作イベント(又は操作イベントの実行による車両12の挙動)が発生している部分を抽出する。ここで、操作イベントとは、例えば急ブレーキ等の減速操作であるが、これに限定されるものではなく、例えば急加速(急発進) 操作や蛇行運転等のハンドル操作等でもよい。また、管理サーバ11は、操作イベントの発生地点から、その操作イベントが多く発生している多発地点の候補を集計する。本実施形態では、例えば各車両12の運行情報(走行データ等)から得られる各操作イベントの発生地点を地図上にプロットし、その発生状況に応じて順位づけされた地点から警報の出力対象とする位置を抽出する。また、集計は、例えば車両12のその操作イベントを発生後に進んだ方向(経路)毎に分けて集計する。」

(2b)「【0016】
車両12は、走行状況を計測する車載装置20を有する。車両12は、図1に示すようにトラック12-1やバス12-2、タクシー12-3等の商用自動車であるが、数や種類についてはこれに限定されるものではなく、例えば一般自動車、オートバイ等の二輪車等でもよい。車載装置20は、ドラレコ等の運行記録用計器が搭載されており、運転時(走行時、停止時を含む)に所定時間(例えば、1?5秒)毎に走行状況をメモリ等の記録部に記録する。
【0017】
車載装置20は、記録したドラレコ情報(運行情報)を所定時間( 例えば、1 ?10分)毎に通信ネットワーク14-1を介して管理サーバ11に送信する。なお、車載装置20は、管理サーバ11からの送信要求があった場合に、それまで記録されたドラレコ情報を管理サーバ11に送信してもよい。
【0018】
また、車載装置20は、通信ネットワーク14-1を介して管理サーバ11から通知条件や経路情報、通知データ等を取得する。車載装置20は、ドライバによる車両12の運転開始時(例えば、エンジン駆動開始時)等において、通信ネットワーク14-1を介して管理サーバ11に上述した各情報(通知条件、経路情報、通知データ等)の取得要求を行う。また、車載装置20は、取得要求により取得した各種情報を記憶部等に記憶する。
【0019】
車載装置20は、車両12の走行位置や走行方向等を取得し、車両12が通知条件として記憶された所定のエリア(地点)に接近したか否かを判断すると共に、その所定のエリアへの進入後の予定進路が、所定の進路に向かう場合に、車両12内でドライバ等に通知を行う。」

(2c)「【0024】
<管理サーバ11の機能構成例>
次に、上述した通知システム10における管理サーバ11の機能構成例について説明する。図2は、管理サーバの機能構成の一例を示す図である。図2の例に示す管理サーバ11 は、運行情報受信部21と、集計部22と、通知条件生成部23と、送信部24と、天候情報取得部25と、記憶部26とを有する。記憶部26は、運行情報31と、道路情報32と、集計結果33と、通知条件34と、車両情報35と、ドライバ情報36と、天候情報37とを有する。
・・・
【0028】
通知条件生成部23は、集計部22による集計結果33に基づいて、通知条件を生成する。例えば、通知条件生成部23は、車両12に対する操作イベントとして急ブレーキ発生箇所を集計した場合には、その集計結果をから、急ブレーキの発生回数が所定数以上であった地点を多発地点として抽出する。また、通知条件生成部23は、車両12の運行情報(走行データ)に基づいて、例えば急ブレーキ等の減速操作が行われた際の車両12の位置と、その減速操作後の進路変更の有無や進路方向を抽出する。通知条件生成部23は、抽出した多発地点の位置に接近することに加え、車両12の進路変更の有無が合致すること、又は進路変更の方向と同じ進路への走行を予定していること等を通知条件34に含むようにする。」(合議体注;「その集計結果をから」は「その集計結果から」の誤記と認める。)

(2)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)より、引用文献2には次の技術的事項が記載されているものと認める。
「情報処理装置の一例としての管理サーバ11と、1又は複数の車両12と、運行管理者端末13とを有する通知システム10であって、
管理サーバ11は、各車両12から所定間隔で、送信されるドラレコ情報等の運行情報を取得するものであり、
車両12は、走行状況を計測する車載装置20を有し、
車載装置20は、記録したドラレコ情報(運行情報)を所定時間毎に通信ネットワーク14-1を介して管理サーバ11に送信し、車両12の走行位置や走行方向等を取得し、車両12が通知条件として記憶された所定のエリア(地点)に接近したか否かを判断すると共に、その所定のエリアへの進入後の予定進路が、所定の進路に向かう場合に、車両12内でドライバ等に通知を行うものであり、
管理サーバ11は、運行情報受信部21と、集計部22と、通知条件生成部23と、送信部24と、天候情報取得部25と、記憶部26とを有するものであり、
通知条件生成部23は、集計部22による集計結果33に基づいて、通知条件を生成するものであり、
通知条件生成部23は、車両12に対する操作イベントとして急ブレーキ発生箇所を集計した場合には、その集計結果から、急ブレーキの発生回数が所定数以上であった地点を多発地点として抽出する、通知システム10。」

第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「車両」は前者の「車両」に相当し、以下同様に、「運転者」は「ドライバー」に、「運転態様評価部16」は「運転評価装置」にそれぞれ相当する。

(2)後者の「車両内の各種の電子部品から取得される各種情報やセンサ信号(例えば、道路情報、運転者操作状態を表すセンサ信号、車両の状態を表すセンサ信号)」は、車両の走行に関するデータであることは明らかであるから、前者の「車両の走行に関するデータ」に相当する。
そして、後者の「警報条件設定部12」を備える「統合マネージャ10を中心として構成される車両制御装置」は、車両の走行に関するデータを取得するといえるものである。
以上のことと、本願明細書の段落【0011】の「デジタルタコグラフ(走行データ取得装置)10」、同【0015】の「デジタルタコグラフ10は、車両に搭載され、出入庫時刻、走行距離、走行時間、走行速度、速度オーバー、エンジン回転数オーバー、急発進、急加速、急減速等の運行データを記録するものである。このデジタルタコグラフ10は、CPU11、揮発メモリ26B、不揮発メモリ26A、記録部17、カードI/F18、音声I/F19、RTC(時計IC)21、SW入力部22及び表示部27を有する」との記載を踏まえると、後者の「統合マネージャ10を中心として構成される車両制御装置」は、前者の「走行データ取得装置」に相当するといえる。

(3)後者の「車両制御装置」の「統合マネージャ10」は「安全走行の観点から運転者の運転態様を評価する運転態様評価部16」を備えるものであるから、「車両制御装置」は運転の評価を行っているといえる。また、後者の「統合マネージャ10を中心として構成される車両制御装置」は、システムを構成することが技術的に明らかである。
そうすると、上記(2)の相当関係に加え、後者の「統合マネージャ10を中心として構成される車両制御装置」は、前者の「運転評価システム」に相当するといえる。そして、後者の「車両制御装置」の「統合マネージャ10」の「運転態様評価部16」は「各種情報やセンサ信号(例えば、道路情報、運転者操作状態を表すセンサ信号、車両の状態を表すセンサ信号)」を解析していることが技術的に明らかである。

(4)上記(1)?(3)を踏まえると、後者の「統合マネージャ10は、」「安全走行の観点から運転者の運転態様を評価する運転態様評価部16を備え、」「警報条件判定部12は、車両内の各種の電子部品から取得される各種情報やセンサ信号(例えば、道路情報、運転者操作状態を表すセンサ信号、車両の状態を表すセンサ信号)に基づいて、所与の判定条件が満たされた場合、警報制御部14に対してオン判定を出力するものであ」る「車両に搭載される、統合マネージャ10を中心として構成される車両制御装置であって」ということは、前者の「車両に搭載され車両の走行に関するデータを取得する走行データ取得装置と、前記走行データ取得装置により取得された走行に関するデータを解析してドライバーの運転を評価する運転評価装置と、を備えた運転評価システムであって」ということに相当するといえる。

(5)後者の「情報出力装置70」は「所定の警報を出力する」ものであるから、前者の「警報手段」に相当する。
また、後者の「警報ON/OFF設定手段30」は、警報のON/OFFを設定するものであるから一種の制御手段であるといえ、前者の「前記警報制御手段が警報の発生を禁止する状態と禁止を解除する状態とのどちらの状態にするかの設定が可能な警報制御手段」に相当するといえる。
さらに、前者の「車間距離に応じて減速を促す警報を行う構成では、先行車等に対する相対距離や相対速度に関する情報が必要とされ、これに応じた判定条件が適宜設定され」るということは、車両の挙動の条件であることは明らかである。
そうすると、上記(2)も踏まえると、後者の「警報条件判定部12は、車両内の各種の電子部品から取得される各種情報やセンサ信号(例えば、道路情報、運転者操作状態を表すセンサ信号、車両の状態を表すセンサ信号)に基づいて、所与の判定条件が満たされた場合、警報制御部14に対してオン判定を出力するものであり、警報制御部14は、判定条件成立時に警報条件判定部12から入力されるON判定に応答して、情報出力装置70に対して所定の警報を出力するように要求を出すものであり、車間距離に応じて減速を促す警報を行う構成では、先行車等に対する相対距離や相対速度に関する情報が必要とされ、これに応じた判定条件が適宜設定され、警報制御部14には、警報ON/OFF設定手段30が接続され」ていることは、前者の「前記走行データ取得装置は、車両の挙動が所定条件を満たす場合に警報を発する警報手段と、前記警報手段による警報の発生を禁止したり禁止を解除したりする警報制御手段と、を備え」ていることに相当するといえる。

(6)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「車両に搭載され車両の走行に関するデータを取得する走行データ取得装置と、前記走行データ取得装置により取得された走行に関するデータを解析してドライバーの運転を評価する運転評価装置と、を備えた運転評価システムであって、
前記走行データ取得装置は、車両の挙動が所定条件を満たす場合に警報を発する警報手段と、前記警報手段による警報の発生を禁止したり禁止を解除したりする警報制御手段と、を備えている運転評価システム。」

〔相違点〕
本願発明が、「前記運転評価装置は、前記警報制御手段が警報の発生を禁止する状態と禁止を解除する状態とのどちらの状態にするかの設定が可能な設定手段を備え、ドライバーが警報の発生を禁止する状態と禁止を解除する状態とを切り替えることができないように構成されている」という事項を有するのに対し、引用発明は当該事項を有していない点。

2 判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、従来技術が有する「車両挙動制御や警報制御など、安全走行に関連する各種制御システムを、所定のスイッチ操作によりオン/オフすることができる構成は、ユーザ毎に異なる好みや運転特性に制御開始条件等をチューニングにより適合させる構成に比べて、簡易な構成で各ユーザの好み等に応じることができる点で有用である。しかしながら、このようなスイッチ操作により各種制御システムをオン/オフする構成では、その反面として、スイッチがオフ状態である限り制御システムを作動させることができないので、スイッチが一旦オフ状態にされると、かかる制御システムを本来利用すべき運転者に対して利用を促す術がなくなる」(摘示(1b))という問題点を解決するために発明されたものである。
すなわち、運転者が、警報制御などの安全走行に関連する制御システムのオン/オフの操作を行うという前提のもと、「安全制御手段の有用性を適切に発揮させることやその有用性をユーザに認知させる」(摘示(1b))ため「運転態様評価部16による評価結果が所定基準を満たす場合、警報ON/OFF設定手段30からの警報OFF指令が遮断されることなく、警報制御部14に入力され、その結果、上述の如く警報制御部14の作動不能な状態が維持され、他方、運転態様評価部16による評価結果が所定基準を満たさない場合、警報ON/OFF設定手段30からの警報OFF指令が遮断され、その結果、警報制御部14の作動可能な状態が強制的に形成される」という構成を採用しているものである。
そうすると、引用発明において上記相違点に係る本願発明の事項を有するものに変更したのであれば、一律に運転者が警報のON/OFFの切り替えができないものとなり、引用発明の課題を解決することができないものとなるため、そのような変更をする動機付けがあるとはいえず、むしろ阻害要因があるといえる。
また、引用文献2に記載された技術的事項は、上記「第4 2(2)」のとおりであり、上記相違点に係る本願発明の事項を開示ないし示唆するものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-25 
出願番号 特願2018-37104(P2018-37104)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G07C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小島 哲次  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
須賀 仁美
発明の名称 運転評価システム  
代理人 中村 信雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ