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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1372460
審判番号 不服2020-9437  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-06 
確定日 2021-04-13 
事件の表示 特願2018-211919「光電変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月14日出願公開、特開2019- 24126、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年11月2日(優先権主張:平成21年11月6日)に出願した特願2010-246195号(以下「原出願」という。)の一部を平成26年2月25日に新たな特許出願とした特願2014-33896号の更にその一部を平成27年2月17日に新たな特許出願とした特願2015-28322号の更にその一部を平成28年7月26日に新たな特許出願とした特願2016-146015号の更にその一部を平成29年11月14日に新たな特許出願とした特願2017-218835号の更にその一部を平成30年11月12日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成30年12月 3日 :上申書の提出
令和 元年 9月25日付け:拒絶理由通知書(起案日)
令和 元年11月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月14日付け:拒絶査定(起案日)(以下、「原査定」という。)
令和 2年 7月 6日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1、2に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2009-535819号公報
2.特開2009-135319号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2002-246580号公報(周知技術を示す文献)
4.米国特許出願公開第2007/0018075号明細書(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、令和 元年11月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、2は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
光電変換素子と、転送トランジスタと、増幅トランジスタと、を有し、
前記光電変換素子は、前記転送トランジスタを介して、前記増幅トランジスタと電気的に接続され、
前記転送トランジスタは、酸化物半導体層にチャネル形成領域を有し、
前記増幅トランジスタは、シリコン半導体層にチャネル形成領域を有し、
前記転送トランジスタは、前記増幅トランジスタ上に形成された絶縁膜を介して設けられている光電変換装置。
【請求項2】
第1及び第2の光電変換素子と、第1及び第2の転送トランジスタと、増幅トランジスタと、を有し、
前記第1の光電変換素子は、前記第1の転送トランジスタを介して、前記増幅トランジスタと電気的に接続され、
前記第2の光電変換素子は、前記第2の転送トランジスタを介して、前記増幅トランジスタと電気的に接続され、
前記第1及び第2の転送トランジスタは、酸化物半導体層にチャネル形成領域を有し、
前記増幅トランジスタは、シリコン半導体層にチャネル形成領域を有し、
前記第1及び第2の転送トランジスタは、前記増幅トランジスタ上に形成された絶縁膜を介して設けられている光電変換装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付加したもの。以下同じ。)

「【0015】
次に図について述べるが、類似の参照番号は類似の要素を示し、図2は、形成されたトランジスタがピクセル回路のためのトランスファートランジスタである、一実施形態にしたがって構成された撮像(imager)ピクセル回路200の構造の最初の段階の断面図を示す。ピクセル回路200は、第一の導電体型であるシリコン(Si)基板205、基板205内に形成され、ピクセルを囲い、分離させるSTI領域210を含む。STI領域は誘電性材料で充填される。第二の導電体型であるドープ領域215は基板205内に形成され、光変換デバイス214(図3)の一部になる。また、二酸化ケイ素(SiO_(2))層220が、例えばストリップ/再成長工程によって基板205上に形成される。この例では、光変換デバイス214(図3)は埋め込みフォトダイオードである。この例ではまた、第一の導電体型はp型で、第二の導電体型はn型である。典型的に、光変換デバイス214(図3)は約1マイクロメートルの深さで基板25に拡がることができる。
【0016】
図3は撮像ピクセル回路200の形成の次に続く段階の断面図を示す。光変換デバイス214のためのドープ表面層216が注入される。ドープ表面層216は第一の導電体型にドーピングされる。例示的には、ドープ表面層216は高ドープp^(+)表面層であり、深さ約0.1マイクロメートルに形成される。ホウ素、インジウム、または、他の適当なp型ドーパントなどのp型ドーパントが、p^(+)表面層216を形成するために使用されてよい。酸化亜鉛スズ(zinc tin oxide:ZTO)225の層はSTI領域210、ドープ領域215、216の一部分およびSiO_(2)層220部分の上に形成される。ZTO層225は、すべての可視波長と同様に、短波長での可視高周波および近紫外線を透過し、以下に述べるように、トランスファートランジスタ219(図6)のために効果的な第二の選択的導電性チャネルを形成する半導体材料である。蒸着(もとの位置でのドープZTO)の間もしくはその後で、p型ドーパントは、随意にZTO層225に組み込まれてもよい。
【0017】
ZTO薄膜は、3.3から3.9eVの範囲で、広く直接的な光バンドギャップ(band gap)特性を持つ。これは、この材料における大きなバースタイン-モスシフトによる。バースタイン-モス効果は、増加した自由電子濃度でみたされている伝導帯である。ZTOはまた、酸化およびエッチングに関連した化学的安定性および、物理的な丈夫さを含む有用な性質を持つ。ZTOでのキャリアの移動度は、公知の透明金属酸化物の中で最もよいものの一つであり、それゆえ、トランジスタベースの他の透明金属酸化物ゲート材料と比較して、高比率のオンおよびオフ電流がZTOによって可能である。ZTO層225部分はピクセルのトランジスタのためのチャネル領域として使用される。ソース/ドレイン領域281は、好ましくは非常に低いショットキーバリアである伝統的なドーピングによってZTO層に形成されることができる。代わりに、ソース/ドレイン領域281は直接金属蒸着(direct metal deposition)によってZTO層225上に形成されることもできる。
【0018】
図4は、撮像ピクセル回路200の形成の次に続く段階の断面図を示す。透明誘電体層230はZTO層225部分の上に形成される。誘電体層230は典型的に、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))、酸化スズ(TiO_(3))、または原子層蒸着二酸化ケイ素(ALD SiO_(2))のような材料で構成される。
【0019】
図5は、撮像ピクセル回路200の形成の次に続く段階の断面図を示す。トランスファーゲート電極240は少なくとも誘電性材料230部分上に形成される。リセットトランジスタ221のリセットゲート電極241はSiO_(2)層220の一部を覆って形成される。トランスファーゲート電極240は任意の適切な導電性材料であってよく、好ましくは、放射エネルギーを透過する材料で、ドープポリシリコンもしくは酸化インジウムスズ(ITO)のような透明材料を含むがそれに限定されない。トランスファーゲート電極240は誘電体層230の一部もしくは全体を覆うことができる。トランスファートランジスタ219への透明材料の使用は、トランスファートランジスタ219(図6)が、光変換デバイス214の少なくとも一部を覆って直接配置されることを可能にする。それはまた、光変換デバイス214の全体を覆って配置されてもよく、フィルファクタおよび量子効果における劇的な改良を提供している。実施形態は、ZTO層225で約100Åから2500Å、誘電体層230で約50Åから300Å、トランスファートランジスタゲート電極240で約500Åから1000Åの範囲の厚さである。ZTO層225の厚さは、異なる実施例によって変化してもよい。例えば、吸収損を減少させるために薄くし、平坦化のためには厚くする。「フィルファクタ」は、ピクセルの表面積に対するフォトダイオードの光感光領域のサイズの基準である。アクティブピクセルセンサ(APS)技術においては、それぞれのピクセルがアクティブ回路を形成するトランジスタを含む。
【0020】
一般的に、これらのトランジスタは光感光領域ではなく、それゆえピクセルのフィルファクタを減少させる。それは、トランジスタは、トランジスタを形成していなければフォトダイオードの面積を増加させることのできる空間(表面積)を占めるからである。
【0021】
フローティング拡散領域245、および、リセットトランジスタ221(図6)のソース/ドレイン領域251は、プラズマドーピング(PLAD)工程を含む、公知の方法によって注入される(implanted )。フローティング拡散領域245およびリセットトランジスタ221(図6)のソース/ドレイン領域251は、第二の導電性型の領域として形成され、この例ではn型である。リン、ヒ素、もしくはアンチモンのような任意の適切なn型ドーパントが使われてもよい。フローティング拡散領域245はトランスファートランジスタ219(図6)ゲートスタックとリセットトランジスタ221ゲートスタックの間に形成される。リセットトランジスタ221のソース/ドレイン領域251はリセットトランジスタ221と第二のSTI領域211の間に形成される。フローティング拡散領域245は、誘電体として機能するSiO_(2)層220の下のドープ領域215とフローティング拡散領域245の間の第一のチャネルを通して、光変換デバイス214から集められた電荷を蓄積する。
【0022】
図6は開示された実施形態にしたがって構成された撮像ピクセル回路200の形成の次に続く段階の断面図を示す。トランスファートランジスタ219ゲートスタックは、この時点で、SiO_(2)層220、ZTO層225、誘電体層230、およびトランスファーゲート電極240を含む。リセットトランジスタ221ゲートスタックは、この時点で、SiO_(2)層220、およびリセットゲート電極241を含む。サイドウォール255および頂部キャップ層256は、それぞれのゲートスタック上に、典型的には酸化物成長によって形成され、例えば、ドライエッチ工程または材料蒸着およびエッチバックが後に続く。ZTO層225内のソース/ドレイン領域281は、フローティング拡散領域245に、いくつかの可能な方法によって接続され、ZTO層225にトランスファートランジスタ219の第二のチャネルとしての機能を与える。このような方法は、(1)金属被覆を通した相互接続工程およびフローティング拡散領域245と導線260の結合する接点、(2)ケイ化物化を用いた局所の相互接続工程、(3)フローティング拡散領域245と導線260を導電的スペーサを通して結合する密着接点(butted contact)、を含む。それゆえ、トランスファートランジスタ219は、ゲート電極240上のゲート制御信号の実施例に関する光変換デバイス214から電荷を転送するために機能する二つのチャネルを有する。すなわちドープ領域215とフローティング拡散領域245の間の基板205の領域、およびソース/ドレイン領域281の間のZTO層領域225である。光変換デバイス214で集められた電荷は、ZTO層225に電界が存在する時には、キャリアドリフトによって、または拡散(例えば赤色光子 red photons)を通して、ZTO層225に届くことがある。リセットトランジスタ221のソース/ドレイン領域251はピクセル供給電圧V_(aapix)に接続し、リセットトランジスタ221がフローティング拡散領域245をリセットすることを可能にする。
【0023】
読み出し回路600(配線略図に示される)は導線260を介してフローティング拡散領域245に接続する。読み出し回路600は、導線260を介してフローティング拡散領域245に接続するゲートを持つソースフォロワートランジスタ610を含み、第一のソース/ドレイン領域はピクセル供給電圧V_(aapix)に接続する。読み出し回路600はまた、行選択トランジスタ620のゲートで受け取った信号に応じた読み出し用のピクセル200を選択するための、行選択トランジスタ620を含む。行選択トランジスタ620は、ソースフォロワートランジスタ610の第二のソース/ドレイン領域に接続する第一のソース/ドレイン領域を持ち、第二のソース/ドレイン領域は列出力線のアレイに接続する。
【0024】
示された実施形態は、光変換デバイス214上に部分的にもしくは全体的に供給されうるトランスファートランジスタのための透明薄膜トランジスタ(TFT)を供給する。伝統的な処理方法はピクセル200を完成させるために使用される。例えば、ゲートラインに接続するための、絶縁、遮蔽、または金属被覆層、ならびにピクセル200へのその他の接続が形成されてもよい。さらに、表面全体は、例えば、二酸化ケイ素、BSG、PSG、またはBPSGなどの不活性化層(不図示)で被覆されてよく、コンタクトホールを供給するためにCMP平坦化およびエッチングがなされ、コンタクトを供給するために金属被覆がなされる。伝統的な導体と絶縁体の層は、構体の相互接続およびピクセル200と周辺回路の接続に使用されてもよい。
【0025】
加えて、ピクセル回路内の他のトランジスタもまた、上述の方法でトランスファートランジスタ219のために構成されてもよい。図6に示される、例示的な4つのトランジスタピクセルを用いて、トランスファートランジスタ219、リセットトランジスタ221、ソースフォロワートランジスタ610および行選択トランジスタ620の任意の一つまたはそれ以上が、トランジスタ構成要素225、230、240、255、256、281に関する実施形態に例示された方法で、TFTとして構成されることができ、部分的または全体的に光変換デバイス214上に提供される。」

(2)引用発明1
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「第一の導電体型であるシリコン(Si)基板205、基板205内に形成され、ピクセルを囲い、分離させるSTI領域210を含む、ピクセル回路200であって、
第二の導電体型であるドープ領域215は基板205内に形成され、光変換デバイス214の一部になり、光変換デバイス214は埋め込みフォトダイオードであり、
ピクセル回路内に、トランスファートランジスタ219、ソースフォロワートランジスタ610を有し、
トランスファートランジスタ219は、ゲート電極240上のゲート制御信号の実施例に関する光変換デバイス214から電荷を転送するために機能する二つのチャネル、すなわち、ドープ領域215とフローティング拡散領域245の間の基板205の領域、およびソース/ドレイン領域281の間のZTO層領域225を有し、
フローティング拡散領域245は、誘電体として機能するSiO_(2)層220の下のドープ領域215とフローティング拡散領域245の間の第一のチャネルを通して、光変換デバイス214から集められた電荷を蓄積し、
読み出し回路600は、導線260を介してフローティング拡散領域245に接続するゲートを持つソースフォロワートランジスタ610を含む、ピクセル回路200。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0044】
図4に、本発明に係る固体撮像装置、いわゆるCMOSイメージセンサに適用される他の実施の形態の概略構成を示す。本実施の形態に係る固体撮像装置は、複数、本例では4つの画素、すなわち光電変換素子である4つのフォトダイオードに対して、転送トランジスタを除く他の画素トランジスタを共有した画素構成の組(以下、共有画素という)を配列した場合である。
【0045】
本実施の形態に係る固体撮像装置31は、複数の共有画素32が規則性をもって2次元配列された撮像部(いわゆる画素部)3と、撮像部3の周辺に配置された周辺回路、すなわち垂直駆動部4、水平転送部5及び出力部6とを有して構成される。共有画素32は、複数、本例では4つの光電変換素子であるフォトダイオードPDと、4つの転送トランジスタと、各1つのリセットトランジスタ、増幅トランジスタ及び選択トランジスタとから構成される。」

(2)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「CMOSイメージセンサにおいて、4つの光電変換素子であるフォトダイオードPDと、4つの転送トランジスタと、1つの増幅トランジスタとから構成される共有画素32。」

3 引用文献3について
(1)引用文献3の記載事項
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0024】図1に示すように、本実施の形態におけるCMOSイメージセンサは、主として、半導体基板31上に形成された素子分離用の絶縁膜32と、半導体基板31上に形成されたトランジスタ22,24と、このトランジスタ22,24上に層間絶縁膜37を介して形成された半導体層38と、この半導体層38に形成された薄膜トランジスタ26,28と、半導体基板31の表面に形成された少なくとも第1導電型と第2導電型の接合部よりなるフォトダイオード25とから構成される。」

「【0054】尚、上記4つのトランジスタのレイアウトについては、上下や組み合わせ等は必要に応じて自由に設定することが可能である。すなわち、上記実施の形態におけるフォトダイオード25,61はP/N/P接合型であるが、N/P接合型であっても構わない。その場合には、読み出しトランジスタ24,54を省略することが可能になる。つまり、この発明においては、単位画素内に少なくとも3つのトランジスタを積層させた構造を取ればよいのである。」

(2)上記記載から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「CMOSイメージセンサにおいて、半導体基板31上に形成されたトランジスタ22、24と、このトランジスタ22、24上に層間絶縁膜37を介して形成された半導体層38と、この半導体層38に形成された薄膜トランジスタ26、28とから構成されること。」

4 引用文献4について
(1)引用文献4の記載事項
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。(和訳は当審による。以下同じ。)

「[0038] FIG. 4 is a cross-section view of a pixel of a first example of an image sensor according to the present invention. The image sensor comprises a lower semiconductor substrate 100 and an upper semiconductor substrate 101 separated from each other by an intermediary insulating layer 102. The two substrates are P-type doped and intended to be connected to ground GND. Each pixel comprises a photodiode 103 and an access transistor 104 formed in and above lower substrate 100, as well as 3 read transistors T1, T2, and T3 formed in and above upper substrate 101.」
(「図4は、本発明に係るイメージセンサの第1実施例の画素の断面図である。イメージセンサは、中間の絶縁層102によって互いに分離された下部半導体基板100と上部半導体基板101を備えている。2枚の基板は、P型にドープされ、接地GNDに接続されることが意図される。各画素は、下部基板100の内部及び上方に形成されたフォトダイオード103及びアクセストランジスタ104と、上部基板101の内部及び上方に形成された3個の読み出しトランジスタT1、T2、及びT3と、を有する。」)

(2)上記記載から、引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「イメージセンサにおいて、中間の絶縁層102によって互いに分離された下部基板100と上部基板101とを備え、下部基板100に形成されたアクセストランジスタ104と、上部基板101に形成された3個の読み出しトランジスタT1、T2、及びT3を有すること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1の「埋め込みフォトダイオード」である「光変換デバイス214」は、本願発明1の「光電変換素子」に相当し、引用発明1の「ピクセル回路200」は、「光変換デバイス214」から構成されるものであるから、本願発明1の「光電変換装置」に相当する。

イ 引用発明1の「トランスファートランジスタ219」、「ソースフォロワートランジスタ610」は、それぞれ、本願発明1の「転送トランジスタ」、「増幅トランジスタ」に相当する。

ウ 引用発明1では、「トランスファートランジスタ219は、ゲート電極240上のゲート制御信号の実施例に関する光変換デバイス214から電荷を転送するために機能する二つのチャネルを有し、ドープ領域215とフローティング拡散領域245の間の基板205の領域、およびソース/ドレイン領域281の間のZTO層領域225であり、フローティング拡散領域245は、誘電体として機能するSiO_(2)層220の下のドープ領域215とフローティング拡散領域245の間の第一のチャネルを通して、光変換デバイス214から集められた電荷を蓄積」するものであるから、「光変換デバイス214」は、「トランスファートランジスタ219」を介して、「フローティング拡散領域245」と電気的に接続されている。更に、「導線260を介してフローティング拡散領域245に接続するゲートを持つソースフォロワートランジスタ610」を有するものであるから、引用発明1の「光変換デバイス214」は、「トランスファートランジスタ219」を介して、「ソースフォロワートランジスタ610」と電気的に接続されていると認められる。
そうすると、本願発明1と引用発明1とは、「前記光電変換素子は、前記転送トランジスタを介して、前記増幅トランジスタと電気的に接続され」る点で一致する。

エ 引用発明1の「トランスファートランジスタ219」は、「ZTO層領域225」にチャネルを形成することから、本願発明1と引用発明1とは、「前記転送トランジスタは、酸化物半導体層にチャネル形成領域を有」する点で一致する。

オ したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「光電変換素子と、転送トランジスタと、増幅トランジスタと、を有し、
前記光電変換素子は、前記転送トランジスタを介して、前記増幅トランジスタと電気的に接続され、
前記転送トランジスタは、酸化物半導体層にチャネル形成領域を有している光電変換装置。」

(相違点)
(相違点1)「増幅トランジスタ」について、本願発明1では、「シリコン半導体層にチャネル形成領域を有」するのに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。

(相違点2)本願発明1では、「前記転送トランジスタは、前記増幅トランジスタ上に形成された絶縁膜を介して設けられている」のに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
上記引用文献3、4の技術的事項から、基板上のトランジスタ上に、絶縁膜を介して、他のトランジスタを形成することは、周知技術である。
しかしながら、引用発明1の「トランスファートランジスタ219」は、「ドープ領域215とフローティング拡散領域245の間の基板205の領域」及び「ソース/ドレイン領域281の間のZTO層領域225」の二つの領域を、それぞれチャネルとして用いるものであり、「トランスファートランジスタ219」の構成に「基板205の領域」が必ず含まれるものである。
そうすると、引用発明1において、当該周知技術を適用するならば、「トランスファートランジスタ219」の構成に「基板205の領域」が必ず含まれるものであるから、「トランスファートランジスタ219」は周知技術の「基板上のトランジスタ」に対応し、「基板205」上にある「トランスファートランジスタ219」上に、絶縁膜を介して、他のトランジスタを形成することとなり、相違点2に係る本願発明1の構成と相違するものと認められる。
また、本願発明1の「前記転送トランジスタは、前記増幅トランジスタ上に形成された絶縁膜を介して設けられている」ことは、上記引用文献2にも記載されていない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の「光電変換素子」及び「転送トランジスタ」を、「第1及び第2の光電変換素子」及び「第1及び第2の転送トランジスタ」に代えた発明であり、本願発明1の「前記転送トランジスタは、前記増幅トランジスタ上に形成された絶縁膜を介して設けられている」ことに対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、当業者が引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-24 
出願番号 特願2018-211919(P2018-211919)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴山 将隆  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
脇水 佳弘
発明の名称 光電変換装置  

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