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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1372524
審判番号 不服2020-572  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-15 
確定日 2021-04-20 
事件の表示 特願2016-143486「電子機器、制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月25日出願公開、特開2018- 13979、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年7月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年 7月11日付け :拒絶理由通知書
令和元年 9月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和元年10月 7日付け :拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和2年 1月15日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年10月7日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
本願請求項1ないし3に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2008/029492号
2.特開2007-316760号公報
3.特開2009-169456号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし3に係る発明は、令和2年1月15日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、以下のとおりの発明である(補正箇所に下線を付した)。

「 【請求項1】
筐体と、
前記筐体の縁に沿って並ぶ物理キー群と、
前記物理キー群の物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラと、
を備え、
前記物理キー群は、第1のキー群と第2のキー群とを含み、
前記コントローラは、前記第1のキー群に第1のグループを割り当て、
前記第1のキー群の物理キーに対する操作を検出すると、前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループに紐付けられた第2のグループを前記第2のキー群に割り当て、
前記第1のグループはフォルダであり、前記第2のグループは前記フォルダに格納されるファイルまたはアプリケーションソフトウェアである電子機器。
【請求項2】
筐体と、
前記筐体の縁に沿って並ぶ第1のキー群と第2のキー群とを含む物理キー群と、を備える電子機器の制御方法であって、
前記第1のキー群に第1のグループを割り当て、
前記第1のキー群の物理キーに対する操作を検出すると、前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループに紐付けられた第2のグループを前記第2のキー群に割り当て、
前記第1のグループはフォルダであり、前記第2のグループは前記フォルダに格納されるファイルまたはアプリケーションソフトウェアである制御方法。
【請求項3】
筐体と、
前記筐体の縁に沿って並ぶ第1のキー群と第2のキー群とを含む物理キー群と、を備える電子機器に、
前記第1のキー群に第1のグループを割り当て、
前記第1のキー群の物理キーに対する操作を検出すると、前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループに紐付けられた第2のグループを前記第2のキー群に割り当てる処理を実行させ、
前記第1のグループはフォルダであり、前記第2のグループは前記フォルダに格納されるファイルまたはアプリケーションソフトウェアであるプログラム。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用発明、周知技術
(1)引用文献1、引用発明について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、国際公開第2008/029492号(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付与した。以下同様。)

ア 請求項1
「請求の範囲
[1] 文字データを入力するための複数のキーであって、それぞれ1つのキーに対して複数の文字データが割り当てられたキーが左右2列に配置されたキーグループと、前記左右2列に配置されたキーグループのキーのいずれか1つによって第1の信号が入力された際に、この第1の信号が入力されたキーに割り当てられた複数の文字データを、この第1の信号が入力されたキーが配置された側と左右反対側のキーグループのキーの配列に対応させて縦1列に表示するディスプレイと、
前記左右2列に配置されたキーグループのキーのいずれか1つによって第1の信号が入力された後、この第1の信号が入力されたキーが配置された側と左右反対側のキーグループのキーのいずれか1つによって第2の信号が入力された際に、前記ディスプレイに表示される複数の文字データの配列に従ってこの第2の信号が入力されたキーに対応する文字データを入力データとする制御部と
を有する入力装置。」

イ 段落[0002]-段落[0010]
「[0002]従来、携帯電話機に電話番号を入力する入力装置として、1から0までの押しボタンが使用されている。また、携帯電話機による文字通信を行うため、この電話番号入力用の押しボタンに文字記号を割り当てて入力可能にしている。そもそも携帯電話機が固定電話機から発達した歴史から、電話番号の1から0までの数字及び文字や記号等を入力する押しボタンの配列は、3列4行のものが世界的に普及しており、0から1の数字とAからZ等の文字等の組合せは概ね同様の数字及び文字グループで構成されている。わが国では、図1に示すように、この数字及び文字グループに、かな文字配列を組み合わせたキーボード2を採用した携帯電話機1が大多数である。

・・・(中略)・・・

発明が解決しようする課題
[0008] 特許文献1に記載のように、押されたキーに隣接するキー部分に情報を表示する方法は、構造的および視覚的に実用的ではなぐ非常に構造が複雑であってコストが力かるため現実的ではない。また、特許文献2に記載のテンキーボードでは、それぞれの数字キーに割り当てられているアルファベット文字等の配置順を覚えていなければならないという問題がある。
[0009] また、特許文献3に記載のデバイスインターフェースでは、広い主ディスプレイの左右にキーが配置されており、筐体を片手に持ったまま、その手で操作することが困難である。また、このデバイスインターフェースでは、1つのキーにより入力した際に、次に左右のキーにより入力できる文字記号を主ディスプレイ上に並べて表示するため、入力された文章を表示する主ディスプレイ上のスペースが残り少なくなってしまい、長い文章を入力する際には、入力された文章を見ながら入力することが困難である。
[0010] そこで、本発明が解決しようとする課題は、携帯電話機や携帯端末等の携帯機器の数字と文字の入力装置として既に一般的に普及している押しボタンに宛がう数字及び文字のグループ構成を変えず、しかも操作が簡単で、入力文字の選択確定を速やかに行うことが可能な入力装置を提供することにある。」

ウ 段落[0029]
「[0029]本発明の実施の形態における携帯機器としての携帯電話機は、図2に示すように、携帯電話本体24に、制御部30、主ディスプレイ23、文字モード切替キー22、選択ディスプレイ21、数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ、6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループや、「*(アスタリスク)」、「記号」、「#(シャープ)」のキー等から構成される入力装置を備える。本実施形態における携帯電話機では、1番のキー11から0番のキー20までのキーグループを、図1に示した従来の一般的な携帯電話機の押しボタン配列のような左上の数字キー"1"から始まる3列4行のキーボード2の配列ではなく図2に示すように、左列の1番のキー11から始まり、5番のキー15まで下方縦列に5行、さらに、右列の6番のキー16から0番のキー20まで下方縦列に5行を配置した2列5行の配列としている。」

エ 図2
「[図2]



「上記図2、段落[0029]を参照すると、数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ、及び、6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループは、携帯電話本体24の縁の近くに沿って並ぶことが、図示されていると認められる。」

オ 段落[0038]-段落[0041]
「[0038]本実施形態における入力装置の動作について説明すると、図2において、1番のキー11から5番のキー15までの左列のキーグループの1つのキーを押下することにより1次選択すると、このキー押下が第1の信号として制御部30へ入力され、選択されたキーに予め割り当てられた複数の文字からなる文字グループの情報(文字データ)が、左列のキーグループと右列のキーグループの中間位置に配置された選択ディスプレイ21に縦1列に表示される。このとき、当該文字グループの文字数は行の数以内に設定されており、表示される各文字は、必ず1次選択されたキーの反対側、すなわち、左列のキーグループによって1次選択がなされた場合には右列の真横のキーに各々1対1で宛がわれる。しかして、選択したい文字に対応する右列の真横のキーを押下することにより2次選択を行うと、このキー押下が第2の信号として制御部30へ入力される。これにより、制御部30は、選択ディスプレイ21に表示される複数の文字データの配列に従ってこの第2の信号が入力されたキーに対応する文字データを入力データとして確定する。

・・・(中略)・・・・
[0041]同様に、文字モード切替キー22が操作されて、かな文字モードに切り替えられた状態で、左列2番のキー12が押下されると、制御部30は、この2番のキー12に割り当てられているかな文字、すなわち表1の2行目の文字グループ「かきくけこ」を、図6に示すように候補文字として選択ディスプレイ21上に表示する。これらの候補文字「かきくけこ」は右列の真横の各キー16?20にそれぞれ対応しているので、例えば右列の9番のキー19が押下されると、制御部30はこの9番のキー19に対応する文字「け」を入力データとして確定し、主ディスプレイ23に表示する。なお、文字モード切替キー22が操作されて、数字モードに切り替えられた状態であれば、対応する各キー11?20の数字が主ディスプレイ23に入力される。」

カ 図6
「[図6]




キ 段落[0047]
「[0047]また、このように横に細長いキーの効果として、通常、片手でキーを操作するときは中央部に近接したほうが効率がよく、一方、両手親指で操作する場合は両端部にあるほうが良いが、その両方の使用方法に対応できることが挙げられる。また、図9はかな文字が不要な言語圏において使用する図7の携帯電話機の別の例を示しており、かな文字を省略して1番から0番のキー11?20の文字グループの構成を変えたものである。このように、かな文字を省略することにより1つのキー当たりに割り当てるアルファベット文字等を増やすことができるので、前述の1次選択したキーを押下したままの状態で2次選択を行う連続入力を効果的に行うことが可能である。」

(2)上記記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 携帯電話本体24に、
制御部30、
数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ、
数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ、及び、6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループは、携帯電話本体24の縁の近くに沿って並び、
6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループは、キー16から20の横の長さよりも、携帯電話本体24の右側の縁の側近くに寄った位置に沿って並び、
1番のキー11から5番のキー15までの左列のキーグループの1つのキーを押下することにより1次選択すると、このキー押下が第1の信号として制御部30へ入力され、
選択されたキーに予め割り当てられた複数の文字からなる文字グループの情報(文字データ)が、左列のキーグループと右列のキーグループの中間位置に配置された選択ディスプレイ21に縦1列に表示され、
このとき、表示される各文字は、必ず1次選択されたキーの反対側、すなわち、左列のキーグループによって1次選択がなされた場合には右列の真横のキーに各々1対1で宛がわれ、
選択したい文字に対応する右列の真横のキーを押下することにより2次選択を行うと、このキー押下が第2の信号として制御部30へ入力され、
これにより、制御部30は、選択ディスプレイ21に表示される複数の文字データの配列に従ってこの第2の信号が入力されたキーに対応する文字データを入力データとして確定し、
文字モード切替キー22が操作されて、かな文字モードに切り替えられた状態で、左列2番のキー12が押下されると、
2行目の文字グループ「かきくけこ」を候補文字として選択ディスプレイ21上に表示し、
これらの候補文字「かきくけこ」は右列の真横の各キー16?20にそれぞれ対応しており、
右列の9番のキー19が押下されると、制御部30はこの9番のキー19に対応する文字「け」を入力データとして確定し、主ディスプレイ23に表示する、
携帯電話。」

(3)周知技術について
ア 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、特開2007-316760号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)請求項1
「【請求項1】
文字群を所定の配列で表示できる表示部と、前記表示部の表示が透視できるように該表示部上に配設され、押圧された位置の位置情報を出力するタッチパネルと、
文字入力動作開始情報を出力できるキー入力手段と、
前記タッチパネルからの位置情報によって選択された文字を認識して出力するパネル制御手段と、入力の対象となる複数の文字を複数の区分文字群に分割し、それぞれの区分文字群を代表する文字を代表文字として代表文字群を構成するように予め設定されている基準に従って、文字入力動作開始情報が入力したときは前記代表文字群を前記表示部に表示させ、前記パネル制御部から入力した文字を前記代表文字群から選択された代表文字と判断したときは該代表文字の属する前記区分文字群を前記表示部に表示させ、前記パネル制御部から入力した文字を前記区分文字群から選択された文字と判断したときは前記代表文字群を前記表示部に表示させるとともに、前記区分文字群から選択された文字を確定文字として出力する文字処理手段とを備えた、タッチパネルを用いた文字入力システム。」

(イ)段落【0058】
「【0058】
[外観]
図1及び図2に本発明の一実施の形態に係る情報処理装置であり、同時に本発明の一実施の形態に係る項目選択装置を含む携帯電話機30の斜視図を示す。図1及び図2を参照して、この携帯電話機30は、扁平な直方体形状を有する筐体40と、筐体40の上面のほぼ全面に配置された、積層された液晶表示装置(LCD)48と静電容量式タッチパネル49とからなる、表示装置一体型タッチパネルである全画面液晶タッチパネル46と、筐体40の上面の、全画面液晶タッチパネル46の上側及び下側にそれぞれ配置されたスピーカ42及びマイクロフォン44とを含む。なお、全画面液晶タッチパネル46上には、本実施の形態に係る携帯電話機30の入力方式の特徴である、ダイアル型のソフトウェアキーボード60(図1)又は61(図2)が表示される。ダイアル型のソフトウェアキーボード60は携帯電話機30を縦型表示で使用する際のキーボードであり、ダイアル型のソフトウェアキーボード61は携帯電話機30を横型表示で使用する際のキーボードである。」

(ウ)段落【0137】-段落【0138】
「【0137】上記した実施の形態では、代表文字表示とドラッグとを用いて文字の入力を行なっている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。2階層の選択を行なうような処理であって、各項目が簡便な形で表示できるような処理の全般について、本発明を適用することができる。上記した実施の形態では、「字種」という代表文字列に触れたときの処理がこれに相当する。
【0138】例えば2階層のメニューを実現する場合、最初に第1階層のメニューを表示し、ユーザが任意のメニュー項目に触れてドラッグすることにより、順次そのメニュー項目の第2階層に属するメニュー項目を選択項目の候補とし、ドラッグが終了した時点での選択項目が最終的に選択されたメニュー項目である、とする制御を行なうこともできる。」

(エ) 引用文献2記載の技術
したがって、上記(ア)?(ウ)の記載から、引用文献2には、以下の技術が記載されていると認められる。
「 携帯電話機30は、
表示装置一体型タッチパネルである全画面液晶タッチパネル46、を含み
全画面液晶タッチパネル46上には、ダイアル型のソフトウェアキーボード60が表示され、
2階層の選択を行なうような処理について、本発明を適用することができ、
2階層のメニューを実現する場合、最初に第1階層のメニューを表示し、順次そのメニュー項目の第2階層に属するメニュー項目を選択項目の候補とし、ドラッグが終了した時点での選択項目が最終的に選択されたメニュー項目である、とする制御を行なう。」

イ 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、特開2009-169456号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)請求項1
「【請求項1】
情報入力用のタッチパネルを有し、該タッチパネルが所定数の情報入力枠で仕切られている電子機器であって、
複数の情報を所定の前記各情報入力枠に割り当てて表示し、前記各情報が表示されている情報入力枠のいずれかが押下されたとき、この押下された情報入力枠に隣接する情報入力枠に、既に表示されている情報の有無に関わらず、押下された前記情報入力枠に表示されている前記情報に付随するサブ情報を表示し、かつ、押下されてから該押下がリリースされたとき、このリリース直前に押下されていた前記情報入力枠に表示されている前記情報又はサブ情報を入力情報として確定する入力情報確定手段が設けられていることを特徴とする電子機器。」

(イ)段落【0021】
「【0021】
図1は、この発明の一実施例である電子機器の要部の電気的構成を示すブロック図である。
この例の電子機器は、同図に示すように、携帯電話機1であり、表示部10と、処理装置20と、文字データベース30とを有している。表示部10は、たとえば液晶表示装置などで構成されると共に、文字入力用のタッチパネル11としての機能を有している。タッチパネル11は、処理装置20の入力枠設定信号faにより、所定数の文字入力枠で仕切られ、また、五十音のうちの「あ」列の各文字(「あ、か、さ、た、な、は、ま、や、ら、わ」)を所定の上記各文字入力枠に割り当てて表示する。また、タッチパネル11は、上記文字入力枠のいずれかが押下されたとき、押下された文字入力枠の位置に対応する位置情報daを出力する。また、タッチパネル11は、文字データベース30を更新する操作が行われたとき、データベース更新信号cdを出力する。」

(ウ)段落【0032】
「【0032】 以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。たとえば、上記実施例では、タッチパネル11により文字が入力されるが、文字入力枠に代えて情報入力枠を設け、たとえばメニューなどの情報の選択を行うようにしても良い。この場合、複数の情報を各情報入力枠に割り当てて表示し、各情報が表示されている情報入力枠のいずれかが押下されたとき、この押下された情報入力枠に隣接する情報入力枠に、既に表示されている情報の有無に関わらず、押下された同情報入力枠に表示されている情報に付随するサブ情報を表示する(請求項1又は7に対応)。」

(エ)引用文献3記載の技術
したがって、上記(ア)?(ウ)の記載から、引用文献3には、以下の技術が記載されていると認められる。

「 携帯電話機1は、表示部10と、処理装置20と、文字データベース30とを有し、
表示部10は、文字入力用のタッチパネル11としての機能を有し、
タッチパネル11により文字が入力されるが、文字入力枠に代えて情報入力枠を設け、たとえばメニューなどの情報の選択を行う。」

ウ したがって、上記ア、イによれば、本願出願前において、以下の技術が周知であったと認められる。
「 タッチパネルによる入力を行う携帯電話機において、文字に替えてメニューを選択すること」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1に係る発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「携帯電話本体24」は、本願発明1の「筐体」に相当する。

イ 引用発明の「数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ、及び、6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループ」は、「携帯電話本体24の縁の近くに沿って並」んでおり、当該各「キー」は「押下」によりキーを選択しており「物理キー」といえるから、本願発明1の「前記筐体の縁に沿って並ぶ物理キー群」に相当する。

ウ 引用発明は、「1番のキー11から5番のキー15までの左列のキーグループの1つのキーを押下することにより1次選択すると、このキー押下が第1の信号として制御部30へ入力され、選択されたキーに予め割り当てられた複数の文字からなる文字グループの情報(文字データ)が、左列のキーグループと右列のキーグループの中間位置に配置された選択ディスプレイ21に縦1列に表示され、選択したい文字に対応する右列の真横のキーを押下することにより2次選択を行うと、このキー押下が第2の信号として制御部30へ入力され、これにより、制御部30は、選択ディスプレイ21に表示される複数の文字データの配列に従ってこの第2の信号が入力されたキーに対応する文字データを入力データとして確定」している。
すなわち、引用発明は、「左列のキーグループの1つのキー押下」が「第1の信号として制御部30へ入力され、」「選択ディスプレイ」に「文字グループの情報(文字データ)」を表示し、「右列の真横のキー」「押下」が「第2の信号として制御部30へ入力され、」「第2の信号が入力されたキーに対応する文字データを入力データとして確定」している。
そして、「キー押下」は「物理キーの操作」といえるものであり、「選択ディスプレイ」に「文字グループの情報(文字データ)」を表示すること、「第2の信号(キー押下)が入力されたキーに対応する文字データを入力データとして確定」することは、いずれも「処理を実行する」ことといえる。よって、引用発明の「制御部30」は、「物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラ」といえる。
したがって、上記イを参照すると、引用発明の「数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ及び6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループ」は、本願発明1の「前記物理キー群」に相当しているから、引用発明の「制御部30」は、本願発明1の「前記物理キー群の物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラ」に相当する。

エ 引用発明の「数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ、及び、6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループ」は、「数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ」と「6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループ」とを含んでおり、上記イを参照すると、引用発明の「数字の1番のキー11から5番のキーまでの左列キーグループ及び6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループ」は、本願発明1の「前記物理キー群」に相当しているから、引用発明の「数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ、6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループ」を備えることは、本願発明1の「前記物理キー群は、第1のキー群と第2のキー群とを含」んでいることに相当する。

オ 引用発明の「1次選択」における「選択されたキーに予め割り当てられた複数の文字からなる文字グループの情報(文字データ)が、左列のキーグループと右列のキーグループの中間位置に配置された選択ディスプレイ21に縦1列に表示され」る様態についての具体例として、「文字モード切替キー22が操作されて、かな文字モードに切り替えられた状態で、左列2番のキー12が押下されると、2行目の文字グループ「かきくけこ」を候補文字として選択ディスプレイ21上に表示」している。
ここで、「かな文字モードに切り替え」ることは、左列のキーグループ(第1のキー群)に予め割り当てられた複数の文字である、平仮名、英字、数字のうちから、平仮名の、あ、か、さ、た、な、を割り当てていることは自明であるから、引用発明の「制御部30」は、左列キーグループ(第1のキー群)に第1グループを割り当てているといえる。

カ 引用発明の「左列2番のキー12が押下されると」、「2行目の文字グループ「かきくけこ」を候補文字として選択ディスプレイ21上に表示し、これらの候補文字「かきくけこ」は右列の真横の各キー16?20にそれぞれ対応」させることは、「キー12」の「押下」は、「第1の物理キーの操作の検出」といえ、右列のキーグループに割り当てられた候補文字2行目の文字グループ「かきくけこ」は、平仮名の「か」に紐付けられていることは自明であるから、本願発明1の「前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループに紐付けられた第2のグループを前記第2のキー群に割り当て」ることに相当する。

キ 引用発明の「携帯電話」は、本願発明1の「電子機器」に相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 筐体と、
前記筐体の縁に沿って並ぶ物理キー群と、
前記物理キー群の物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラと、
を備え、
前記物理キー群は、第1のキー群と第2のキー群とを含み、
前記コントローラは、前記第1のキー群に第1のグループを割り当て、
前記第1のキー群の物理キーに対する操作を検出すると、前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループに紐付けられた第2のグループを前記第2のキー群に割り当てる、
電子機器。」

(相違点1)
第1の物理キー群に第1のグループを割り当て、第2の物理キー群に第2のグループを割り当てる電子機器において、本願発明1は、「前記第1のグループはフォルダであり、前記第2のグループは前記フォルダに格納されるファイルまたはアプリケーションソフトウェアである」のに対して、引用発明が、第1グループは候補文字列であり、第2グループは候補文字列に対応した文字である点。

(3)判断
第1の物理キー群に第1のグループを割り当て、第2の物理キー群に第2のグループを割り当てる電子機器において、「前記第1のグループはフォルダであり、前記第2のグループは前記フォルダに格納されるファイルまたはアプリケーションソフトウェアである」ことは、上述した引用文献2及び引用文献3には記載されておらず、本願出願時において周知技術であったともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3及び周知技術に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、それぞれ本願発明1に対応する方法、及びプログラムの発明であり、いずれも相違点1に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3及び周知技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-30 
出願番号 特願2016-143486(P2016-143486)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐伯 憲太郎  
特許庁審判長 角田慎治
特許庁審判官 太田龍一
小田浩
発明の名称 電子機器、制御方法、及びプログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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