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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08G
管理番号 1372540
審判番号 不服2020-12833  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-14 
確定日 2021-04-20 
事件の表示 特願2016-253504「物体検出装置、物体検出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年7月5日出願公開、特開2018-106511、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月27日の出願であって、その手続は以下のとおりである。
令和2年2月12日付け(発送日:同年2月18日):拒絶理由通知書
令和2年3月24日:意見書、手続補正書の提出
令和2年6月26日(発送日:同年7月7日):拒絶査定
令和2年9月14日:審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
「この出願については、令和2年2月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。

備考
理由(特許法第29条第2項)について

・請求項1、7
・引用文献等1-2

・請求項2
・引用文献等1-2

・請求項3
・引用文献等1-2

・請求項4
・引用文献等1-2

・請求項5
・引用文献等1-3

・請求項6
・引用文献等1-5

<引用文献等一覧>
1.国際公開第2016/194851号公報
2.特開2007-187618号公報
3.特開2007-288460号公報
4.特開2007-132748号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2006-293835号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和2年3月24日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
レーダセンサによって検出される物体をレーダ物体とし、該レーダ物体の検出点を少なくとも含んだレーダ情報を取得するように構成された第1取得部(S10)と、
前記レーダセンサの探査範囲の少なくとも一部と撮像範囲が重複するカメラによって撮像された画像に基づき、該画像から抽出される予め指定された特徴量と検出対象となる物体の種類毎に予め用意された前記特徴量のテンプレートとを比較することで検出される物体をカメラ物体とし、該カメラ物体の検出点および種類を少なくとも含んだカメラ情報を取得するように構成された第2取得部(S30)と、
前記レーダ情報および前記カメラ情報を利用して、同一物体と推定される前記レーダ物体と前記カメラ物体とを対応づけるように構成された対応付部(S180?220、S240?S250)と、
前記第2取得部により複数のカメラ物体についての前記カメラ情報が取得された場合に、前記カメラ情報を利用して、異なる種類の物体として検出された前記複数のカメラ物体同士が同一物体であるか否かを判定するように構成された判定部(S110?S170)と、
前記判定部にて同一物体であると判定された前記カメラ物体のグループをカメラ物体群とし、該カメラ物体群を構成するカメラ物体のひとつが、前記対応付部により前記レーダ物体の一つである対象レーダ物体と対応付けられた場合、前記カメラ物体群を構成する全てのカメラ物体を前記対象レーダ物体に対応づけるように構成された付加部(S220?S230)と、
を備える物体検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検出装置であって、
前記レーダ物体毎に該レーダ物体の検出点を含む領域である第1領域を設定すると共に、前記カメラ物体毎に該カメラ物体の検出点を含む領域である第2領域を設定する領域設定部(S20、S40)を更に備え、
前記判定部は、前記領域設定部により設定された第2領域が互いに重なる重複領域の面積が予め設定された面積閾値以上である前記カメラ物体同士を同一物体であると判定するように構成されている、物体検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の物体検出装置であって、
前記カメラ情報には、前記カメラ物体までの距離、前記カメラ物体が位置する方位、前記カメラ物体の幅のうち少なくとも一つが判定用情報として含まれ、
前記判定部は、前記判定用情報の差分を表す相違値が予め設定された相違閾値未満である前記カメラ物体同士を同一物体であると判定するように構成されている、物体検出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の物体検出装置であって、
前記付加部により対応付けられた前記レーダ物体および前記カメラ物体群が表す一つの物体を対応物体として、前記カメラ物体群が有する複数のレーダ情報のそれぞれに示された物体の種類のうち、いずれかひとつを前記対応物体についての物体の種類として特定するように構成された特定部
を更に備える、物体検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の物体検出装置であって、
前記特定部は、前記対応物体についての物体の種類の特定に、前記対応物体の速度または速度ベクトルを用いるように構成されている、物体検出装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の物体検出装置であって、
前記対応物体を表す前記レーダ物体および前記カメラ物体の各検出点を融合する処理であるセンサフュージョンを実施する融合部
を更に備え、
前記融合部は、前記カメラ物体の検出点については、前記カメラ物体群を構成するカメラ物体のうち、前記特定部により特定された物体の種類に対応する前記カメラ物体の検出点を用いるように構成されている、物体検出装置。
【請求項7】
レーダセンサによって検出される物体をレーダ物体とし、該レーダ物体の検出点を少なくとも含んだレーダ情報を取得し(S10)、
前記レーダセンサの探査範囲の少なくとも一部と撮像範囲が重複するカメラによって撮像された画像に基づき、該画像から抽出される予め指定された特徴量と検出対象となる物体の種類毎に予め用意された前記特徴量のテンプレートとを比較することで検出される物体をカメラ物体とし、該カメラ物体の検出点および種類を少なくとも含んだカメラ情報を取得し(S30)、
前記レーダ情報および前記カメラ情報を利用して、同一物体と推定される前記レーダ物体と前記カメラ物体とを対応づけ(S180?220、S240?S250)、
複数のカメラ物体についての前記カメラ情報が取得された場合に、前記カメラ情報を利用して、異なる種類の物体として検出された前記複数のカメラ物体同士が同一物体であるか否かを判定し(S110?S170)、
同一物体であると判定された前記カメラ物体のグループをカメラ物体群とし、該カメラ物体群を構成するカメラ物体のひとつが、前記レーダ物体の一つである対象レーダ物体と対応付けられた場合、前記カメラ物体群を構成する全てのカメラ物体を前記対象レーダ物体に対応づける(S220?S230)、
物体検出方法。」

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2016/194851号公報(以下「引用文献1」という。)には、「物体検出装置及び物体検出方法」に関して、図面(特に図1ないし4を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

ア 「[0002] 本開示は、レーダおよびカメラを用いて物体を検出する技術に関する。」

イ 「[0003] 車両の衝突軽減システムでは、他の車両や車両以外の歩行者等の物体を精度よく検出することが求められる。そこで、レーダおよびカメラを用いて物体を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
[0004] 特許文献1に記載の技術では、レーダにより検出された物体の検出点と、カメラの撮像画像により検出された物体の検出点とのそれぞれに対し、検出誤差を考慮して検出点を含む領域を設定している。そして、レーダにより検出された物体の検出点を含む領域と、カメラの撮像画像により検出された物体の検出点を含む領域とに重複部が存在すると、レーダとカメラとによりそれぞれ検出された物体は同一の物体であると判定している。
先行技術文献
特許文献
[0005]特許文献1:特開2014-122873号公報」

ウ 「[0006] レーダにより検出された物体の検出点を含む一つの領域に着目すると、例えば、その物体の周囲に他の物体が存在する場合、カメラの撮像画像により検出された複数の物体の検出点を含む複数の領域がレーダにより検出された物体の一つの領域と重複部を有することがある。
[0007] 同様に、カメラの撮像画像により検出された物体の検出点を含む一つの領域に着目すると、レーダにより検出された複数の物体の検出点を含む複数の領域がカメラの撮像画像により検出された物体の一つの領域と重複部を有することがある。
[0008] このように、レーダまたはカメラの一方により検出された物体の検出点を含む一つの領域に対し、レーダまたはカメラの他方により検出された物体の検出点を含む複数の領域が重複部を有する場合、どの物体が同一であると判定するかについて、特許文献1に記載の技術では考慮されていない。
[0009] 本開示は、レーダまたはカメラの一方により検出された物体の検出点を含む一つの領域に対し、レーダまたはカメラの他方により検出された物体の検出点を含む複数の領域が重複部を有する場合、どの物体が同一であるかを判定する技術を提供することを目的とする。」

エ 「[0010] 本開示の第一の態様の物体検出装置は、車両に搭載される物体検出装置であって、第1特定手段と、第2特定手段と、判定手段と、領域選択手段と、を備えている。
第1特定手段は、レーダによる検出情報に基づいて検出された第1の物体について、第1の物体の位置を表す第1の検出点を含む第1の領域を特定する。第2特定手段は、カメラによる撮像画像に基づいて検出された第2の物体について、第2の物体の位置を表す第2の検出点を含む第2の領域を特定する。
[0011] 判定手段は、一つの第1の領域と一つの第2の領域とに領域の重なる重複部が存在することを条件として、第1の物体と第2の物体とは同一の物体であると判定する。
領域選択手段は、一つの第1の領域に対し複数の第2の領域が重複部を有するか、あるいは一つの第2の領域に対し複数の第1の領域が重複部を有する場合、第1特定手段が検出情報に基づいて検出する第1の物体の対地速度、ならびに第1特定手段が検出情報に基づいて検出する第1の物体の反射波の強度の少なくとも一方と、第2特定手段が撮像画像に基づいて検出する第2の物体の種類との対応関係に基づいて、判定手段が同一の物体であると判定するための条件である重複部が存在する一つの第1の領域と一つの第2の領域とを選択する。
[0012] この構成において、第1の物体の対地速度と第1の物体の反射波の強度とは、第1の物体の種類に応じて変化するので、第1の物体の対地速度と第1の物体の反射波の強度との少なくとも一方に基づいて、第1の物体の種類を検出できる。また、カメラによる撮像画像に基づいて、例えばパターンマッチ等により第2の物体の種類を検出できる。
[0013] 物体の種類とは、例えば四輪自動車、二輪自動車、自転車、歩行者等のことである。物体の種類として、例えば四輪自動車と四輪自動車以外とのように二分類に分けてもよい。
そして、第1の物体と第2の物体とが同一の物体であるなら、第1の物体の対地速度と第1の物体の反射波の強度との少なくとも一方に基づいて検出される第1の物体の種類と、撮像画像に基づいて検出される第2の物体の種類とは対応関係にある筈である。
[0014] したがって、第1の物体の対地速度と第1の物体の反射波の強度との少なくとも一方と、第2の物体の種類との対応関係に基づいて、判定手段が同一の物体であると判定するための条件である重複部が存在する一つの第1の領域と一つの第2の領域とを選択できる。
また、本開示の第一の態様の物体検出方法によれば、上記同様の理由により、本開示の第一の態様の物体検出装置において既に述べた効果と同様の効果を得ることができる。」

オ 「[0018] 物体検出装置として機能する衝突軽減ECU10は、ミリ波レーダ20と、単眼カメラ22と、ブレーキECU30と、エンジンECU32と、報知装置34とのそれぞれと通信可能に接続されている。尚、通信を実現するための構成は特に限定されない。
[0019] 衝突軽減ECU10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13などを備えており、衝突軽減システム2を統括制御する。衝突軽減ECU10は、CPU11のマスタクロックに基づく一定時間ごとに、ミリ波レーダ20からのレーダ信号および単眼カメラ22からの画像信号を取り入れる。
[0020] ミリ波レーダ20は、ミリ波を利用して他車両や他車両以外の歩行者等の物体を検出するためのレーダであって、例えば、衝突軽減システム2が搭載された自車両の前側のフリロントグリルの中央に取り付けられている。ミリ波レーダ20は、ミリ波を水平面内でスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信することによって得られる送受信データを検出情報として衝突軽減ECU10に送信する。
[0021] 単眼カメラ22は、1台のCCD(Charge Coupled Device)カメラを備え、例えば、自車両の車室内のウィンドウシールドのミラーの中央付近に取り付けられている。単眼カメラ22は、CCDカメラで撮像した撮像画像のデータを、画像信号として衝突軽減ECU10送信する。」

カ 「[0026] 図2のS400において、衝突軽減ECU10は、ミリ波レーダ20から送信されるミリ波の電波と、検出対象の物体から反射される反射波とを検出情報として、検出対象の物体を検出情報に基づいて検出する。具体的には、衝突軽減ECU10は、検出情報に基づいて、自車両から物体までの直線距離と、自車両の前方方向を基準とした場合の対象物体の角度位置(θ)により表わされる水平方位位置とを算出して特定する。
[0027] そして、これらの算出値に基づき、図4に示すように、XY平面における物体の位置座標を、XY平面における物体の検出点Prとして算出して特定する。ミリ波レーダ20により検出された検出点Prは、特許請求の範囲に記載された第1の検出点に相当する。XY平面は、自車両100の車幅方向を横方向としたX軸と自車両100の車長方向を前方方向としたY軸とにより規定される。」

キ 「[0034] S404において、衝突軽減ECU10は、単眼カメラ22が撮像した撮像画像に基づいて物体を検出する。具体的には、衝突軽減ECU10は、撮像画像を解析して物体を識別する。この識別は、例えば、予め記憶されている物体モデルの辞書を用いたパターンマッチング処理を実行することにより行われる。
[0035] 物体モデルは、車両、歩行者等の物体の種類ごとに用意されているため、パターンマッチング処理により物体の種類が特定される。そして、衝突軽減ECU10は、撮像画像における物体の上下方向の位置に基づいて、前述したXY平面におけるY座標を特定し、撮像画像における物体の左右方向の位置に基づいて、自車両の前方方向を基準とした場合の対象物体の角度位置により表わされる水平方位位置を特定する。」

ク 「[0038] つまり、S404においては、図4に示すように、XY平面における物体のY座標および水平方位位置を、XY平面における物体の検出点Piの位置として特定する。物体の検出点Piの位置は基準点Poに対する相対位置により表される。図4では、単眼カメラ22により検出された2個の検出点Pi1、Pi2を示している。単眼カメラ22により検出された検出点Pi1、Pi2は、特許請求の範囲に記載された第2の検出点に相当する。」

ケ 「[0043] 次に、図2のS408において、衝突軽減ECU10は、ミリ波レーダ20により検出されたレーダ物体と、単眼カメラ22により検出された画像物体とに基づいて、物体の検出処理を実行する。S408の物体検出処理については後述する。
[0044] S408の物体検出処理が実行されると、衝突軽減ECU10は、S410において、検出した物体の位置および物体の検出結果の信頼度に応じた衝突軽減制御を行う。例えば、衝突軽減ECU10は、物体と衝突する可能性がある場合、報知装置34に警報信号を送信して運転者に対する報知を行わせる。また、衝突軽減ECU10は、物体と衝突する可能性が高い場合には、エンジンECU32に内燃機関の駆動力を減少させる指示を行い、また、ブレーキECU30に自車両の制動力を増加させる指示行う。
[0045] そして、衝突軽減ECU10は、信頼度に応じて制御態様を異ならせる。例えば、信頼度が高い場合には、信頼度が低い場合と比較して、制御のタイミングを早くする。ここで、物体の検出結果の信頼度は、ミリ波レーダ20により検出されたレーダ物体と、単眼カメラ22により検出された画像物体とを同一の物体であるとする判定結果に対する信頼度である。判定結果に対する信頼度については、後述する物体検出処理で説明する。
[0046] (2)物体検出処理
図2のS408において実行される物体検出処理について説明する。
図3のS420において、衝突軽減ECU10は、レーダ物体と画像物体との検出領域に重複部が存在するか否かを判定する。重複部が存在しない場合(S420:No)、衝突軽減ECU10は、レーダ物体と画像物体との距離が離れすぎているので同一の物体ではなく異なる物体であると判断し、本処理を終了する。この場合、図2のS410において、レーダ物体と画像物体とに対し、別々の衝突軽減制御が実行される。
[0047] 重複部が存在する場合(S420:Yes)、衝突軽減ECU10は、一つのレーダ物体の検出領域に対し、複数の画像物体の検出領域が重複部を有するか否かを判定する(S422)。一つのレーダ物体の検出領域に対し、複数ではなく一つの画像物体の検出領域が重複部を有する場合(S422:No)、衝突軽減ECU10は、レーダ物体と画像物体とは同一の物体であると判断し、S434に処理を移行する。
[0048] 一つのレーダ物体の検出領域に対し、複数の画像物体の検出領域が重複部を有する場合(S422:Yes)、衝突軽減ECU10は、パターンマッチングにより特定された複数の画像物体の種類が同じであるか否かを判定する(S424)。画像物体の種類は、図2のS404に処理において特定される。
[0049] 図4に示す例では、一つのレーダ物体の検出点Prを含む検出領域200に対し、二つの画像物体の検出点Pi1、Pi2をそれぞれ含む検出領域210、212が重複部220、222を有している。一つのレーダ物体の検出領域に対し、三つ以上の画像物体の検出領域が重複部を有してもよい。
[0050] 複数の画像物体に異なる種類が存在する場合(S424:No)、衝突軽減ECU10は、送信したミリ波に対し今回の検出対象であるレーダ物体からの反射波の強度が、レーダ物体が4輪自動車であることを示す強度閾値以上であるか否かを判定する(S426)。」

コ 「[0056] ここで、一つのレーダ物体の検出領域と、このレーダ物体と同じ種類の複数の画像物体の検出領域とが重複部を有する場合、レーダ物体との距離が最短の画像物体がレーダ物体と同一の物体の筈である。そこで、S432において、衝突軽減ECU10は、レーダ物体との距離が最短の画像物体の検出領域を選択することにより、レーダ物体と同一の物体である画像物体を選択できる。
[0057] レーダ物体と画像物体との距離は、図4に示すように、ミリ波レーダ20による検出点Prと、単眼カメラ22による検出点Pi1、Pi2との距離L1、L2として算出される。そして、距離L1、L2のうち短い方の画像物体の検出領域が選択される。画像物体が三つ以上の場合には、レーダ物体との距離が最短の画像物体の検出領域が選択される。
[0058] S434において、衝突軽減ECU10は、検出領域に重複部を有する一つのレーダ物体と一つの画像物体とを結合する。つまり、検出領域に重複部を有する一つのレーダ物体と一つの画像物体とを同一の物体であると判定する。」

サ 「[0062] [1-3.効果]
第1実施形態では、レーダ物体と画像物体とが同一の物体であるなら、レーダ物体の対地速度とレーダ物体の反射波の強度との少なくとも一方に基づいて検出されるレーダ物体の種類と、撮像画像に基づいて検出される画像物体の種類とは対応関係にあることに着目している。
[0063] そこで、一つのレーダ物体の検出領域200に対し、複数の画像物体の検出領域、例えば第1実施形態では、二つの画像物体の検出領域210、212、が重複部を有している場合、レーダ物体からの反射波の強度に対応する種類の画像物体の検出領域を選択する。選択された画像物体がさらに複数ある場合には、レーダ物体との距離が最短の画像物体の検出領域が選択される。
[0064] これにより、一つのレーダ物体の検出領域に対し、複数の画像物体の検出領域が重複部を有していても、レーダ物体の種類に対応した適切な一つの画像物体の検出領域を選択できる。その結果、一つのレーダ物体の検出領域に対し複数の画像物体の検出領域が重複部を有していても、一つのレーダ物体と選択された一つの画像物体とを同一の物体であると判定できる。」

上記アないしサの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

[引用発明]
「ミリ波レーダ20によって検出される物体をレーダ物体とし、該レーダ物体の検出点を少なくとも含んだ検出情報を取得するように構成された衝突軽減ECU10と、
前記ミリ波レーダ20の探査範囲の少なくとも一部と撮像範囲が重複する単眼カメラ22によって撮像された画像に基づき、該画像から抽出される予め指定された物体モデルと検出対象となる物体の種類毎に予め記憶されている物体モデルとを比較することで検出される物体を画像物体とし、該画像物体の検出点および種類を少なくとも含んだ画像信号を取得するように構成された衝突軽減ECU10と、
前記検出情報および前記画像信号を利用して、同一物体と推定される前記レーダ物体と前記画像物体とを対応づけるように構成された衝突軽減ECUと、
を備える物体検出装置。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2007-187618号公報(以下「引用文献2」という。特に、段落【0050】ないし【0052】及び【0059】並びに図8及び9を参照。)には、「物体識別装置」に関して、以下の事項(以下「引用文献2記載事項1」及び「引用文献2記載事項2」という。)が記載されている。

[引用文献2記載事項1]
「空間対応処理部7は、レーザレーダ制御部8から入力された各物体の移動ベクトルを算出し、比較し、その結果、移動ベクトル、及び距離が同一(類似)と判断された物体を同一の物体としてグルーピングすること。」

[引用文献2記載事項2]
「レーザーレーダ以外にも、ステレオ画像センサ等を用いて物体の存在を検出するようにしてもよいこと。」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2007-288460号公報(以下「引用文献3」という。特に段落【0067】ないし【0070】及び【0076】並びに図2を参照。)には、「物体検出方法および物体検出装置」に関して、以下の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献3記載事項]
「物体種類判定処理部14において、物体の実速度Vnと、この物体のエッジの方向ベクトル分散Evと、反射強度ならびに反射強度分散Brと、に基づいて物体の種類が判定されること。」

4 引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2007-132748号公報(以下「引用文献4」という。特に段落【0018】及び【0019】を参照。)には、「物体検出装置」に関して、以下の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献4記載事項]
「衝突軽減装置1は、ミリ波レーダ2による情報に基づいて検出されたミリ波物標と、ステレオカメラ3によるステレオ画像に基づいて検出された画像物標との照合によって、ミリ波物標と画像物標とを統合したフュージョン物標を設定すること。」

5 引用文献5
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2006-293835号公報(以下「引用文献5」という。特に段落【0028】を参照。)には、「物体検出装置」に関して、以下の事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献5記載事項]
「衝突軽減装置1は、ミリ波レーダ2による情報に基づいてレーダ物標を設定するとともにステレオカメラによるステレオ画像に基づいてステレオ画像物標を設定し、レーダ物標とステレオ画像との照合によってフュージョン物標を設定すること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、その機能、構成及び技術的意義からみて、後者の「ミリ波レーダ20」は前者の「レーダセンサ」に相当し、以下同様に、「検出情報」は「レーダ情報」に、「衝突軽減ECU10」は「第1取得部(S10)」、「第2取得部(S30)」及び「対応付部(S180?220、S240?S250)」に、「単眼カメラ22」は「カメラ」に、「物体モデル」は「予め指定された特徴量」に、「予め記憶されている物体モデル」は「予め用意された特徴量のテンプレート」に、「画像物体」は「カメラ物体」に、「画像信号」は「カメラ情報」に、それぞれ相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。

[一致点]
「レーダセンサによって検出される物体をレーダ物体とし、該レーダ物体の検出点を少なくとも含んだレーダ情報を取得するように構成された第1取得部と、
前記レーダセンサの探査範囲の少なくとも一部と撮像範囲が重複するカメラによって撮像された画像に基づき、該画像から抽出される予め指定された特徴量と検出対象となる物体の種類毎に予め用意された前記特徴量のテンプレートとを比較することで検出される物体をカメラ物体とし、該カメラ物体の検出点および種類を少なくとも含んだカメラ情報を取得するように構成された第2取得部と、
前記レーダ情報および前記カメラ情報を利用して、同一物体と推定される前記レーダ物体と前記カメラ物体とを対応づけるように構成された対応付部と、
を備える物体検出装置。」

[相違点]
本願発明1は「前記第2取得部により複数のカメラ物体についての前記カメラ情報が取得された場合に、前記カメラ情報を利用して、異なる種類の物体として検出された前記複数のカメラ物体同士が同一物体であるか否かを判定するように構成された判定部と、前記判定部にて同一物体であると判定された前記カメラ物体のグループをカメラ物体群とし、該カメラ物体群を構成するカメラ物体のひとつが、前記対応付部により前記レーダ物体の一つである対象レーダ物体と対応付けられた場合、前記カメラ物体群を構成する全てのカメラ物体を前記対象レーダ物体に対応づけるように構成された付加部と、を備える」のに対して、引用発明1は、そのような判定部及び付加部を備えていない点。

相違点について検討する。

上記「第4」の2ないし5で述べたとおり、引用文献2記載事項1は「空間対応処理部7は、レーザレーダ制御部8から入力された各物体の移動ベクトルを算出し、比較し、その結果、移動ベクトル、及び距離が同一(類似)と判断された物体を同一の物体としてグルーピングすること。」であり、引用文献2記載事項2は「レーザーレーダ以外にも、ステレオ画像センサ等を用いて物体の存在を検出するようにしてもよいこと。」であり、引用文献3記載事項は「物体種類判定処理部14において、物体の実速度Vnと、この物体のエッジの方向ベクトル分散Evと、反射強度ならびに反射強度分散Brと、に基づいて物体の種類が判定されること。」であり、引用文献4記載事項は「衝突軽減装置1は、ミリ波レーダ2による情報に基づいて検出されたミリ波物標と、ステレオカメラ3によるステレオ画像に基づいて検出された画像物標との照合によって、ミリ波物標と画像物標とを統合したフュージョン物標を設定すること。」であり、引用文献5記載事項は「衝突軽減装置1は、ミリ波レーダ2による情報に基づいてレーダ物標を設定するとともにステレオカメラによるステレオ画像に基づいてステレオ画像物標を設定し、レーダ物標とステレオ画像との照合によってフュージョン物標を設定すること。」というものであって、いずれも上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。

そうすると、引用発明において、引用文献2記載事項1及び2ないし引用文献5記載事項を参酌しても、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできず、本願発明1が有する特有の作用効果を奏することはできない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載事項1及び2ないし引用文献5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明2ないし6について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし6は、請求項1の記載を置換することなく引用するものであるから、本願発明2ないし6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2ないし6は、本願発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載事項1及び2ないし引用文献5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本願発明7について
本願発明7は、本願発明1のカテゴリーを変更したのみで、本願発明1の発明特定事項を実質的にすべて含むものである。
したがって、本願発明7は、本願発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載事項1及び2ないし引用文献5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 小括
本願発明1ないし7は、引用発明及び引用文献2記載事項1及び2ないし引用文献5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
すなわち、本願発明1ないし7は、原査定で引用された引用文献1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-30 
出願番号 特願2016-253504(P2016-253504)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 将一  
特許庁審判長 北村 英隆
特許庁審判官 高島 壮基
金澤 俊郎
発明の名称 物体検出装置、物体検出方法  
代理人 名古屋国際特許業務法人  

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