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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1372633
審判番号 不服2020-2396  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-21 
確定日 2021-03-31 
事件の表示 特願2018-532282「照明光を利用した体液分析用検査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月22日国際公開、WO2017/104992、平成31年 3月28日国内公表、特表2019-508673〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)11月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年12月15日 韓国)を国際出願日とする出願であって、平成31年4月22日付けで拒絶理由が通知され、令和元年9月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月11日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたところ、令和2年2月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、審判請求時に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されたものであって、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1面にユーザーの体液が塗布されるシートを有するシート部と、
前記シートに塗布された前記体液の拡大のための拡大レンズ群を備え、前記拡大レンズ群の一側が前記シートの前記第1面に向き合うように配置され、他側に観察手段と向き合うガイドが備えられる接境部と、
前記シート部を挟んで前記接境部と対向する方向で前記シート部の第2面に向き合うように配置され、前記シート部に光を供給する光源を備える光源部とを含んでなり、
前記光源部が、
中空の容器状に形成される光源部ボディであって、該光源部の一側が前記シート部と結合されるように構成される光源部ボディと、
前記シート部と対面するように前記光源部ボディの内側に固定される光源とを含んでなることを特徴とする、体液分析用検査装置。」

なお、審判請求時に提出された手続補正書の手続補正(以下「審判時補正」という。)は、請求項3及び4について補正するものであり、請求項1について補正をするものではない。そうすると、請求項1に係る発明(本願発明)は、審判時補正を却下しても、適正なものとして受け入れても、本願発明の発明特定事項に相違はなく、その判断について変わりはない。
したがって、審判時補正の適否が下記の結論に影響を及ぼすことにはならないから、審判時補正をそのまま受け入れた上で、上記本願発明の認定をしている。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1-3、5、6、9
・引用文献1-3
<引用文献等一覧>
1.韓国登録特許第1533107号公報
2.実公昭42-1981号公報
3.特開平8-94616号公報
4.特開平9-236756号公報
5.実願昭62-73588号(実開昭63-3808号)のマイクロフィルム

第4 引用刊行物及びその記載事項
1 引用文献1について
(1)本願の優先権主張日(2015年12月15日)前に頒布され、原査定において引用文献1として引用された刊行物である韓国登録特許第10-1533107号公報には、スマートフォンを利用した排卵測定装置について、図面とともに次の事項が記載されている。(当審訳の下線は当審にて付与したものである。以下同様。)
(1-ア)

(当審訳:
[0030]
(図1?5について訳省略)
図4は、本発明のスマートフォンを利用した排卵測定方法において利用されるスマートフォン用排卵測定装置の一実施例を示す、概略分解斜視の例示図である。
図5は、図4に示したスマートフォン用排卵測定装置を示した概略分解断面の例示図である。
図6は、図4によるスマートフォン用排卵測定装置の結合状態を示した概略断面例示図である。
図7は、本実施例によるスマートフォン用排卵測定装置に適用される観察台部材を示した概略分解断面の例示図である。
図8及び図9は、本実施例によるスマートフォン用排卵測定装置の使用状態を示した概略例示図である。
図10は、本発明の別の実施例によるスマートフォン用排卵測定装置の使用状態を示した概略例示図である。)

(1-イ)

(当審訳:
[0037] 上述したような本実施例による排卵測定装置(1)は、図4に示されたように唾液がセットされたパレット部材(5)と、パレット部材(5)が固定される観察台部材(6)と、観察台部材(6)が分離・結合され、内部に被験者の唾液を拡大するようになっているレンズ(7)が具備された拡大手段を含む。
0038] すなわち、被験者の唾液を採取し、採取された唾液をパレット部材(5)に固定した後、観察台部材(6)に固定し、拡大手段によって唾液を拡大して画像データを確保するようになったのである。
[0039] ここで拡大手段は、スマートフォン(2)に分離・組立てされる固定手段に着脱可能に固定される。したがって、スマートフォン(2)によって拡大された唾液の画像を得るようになっている。そして、拡大手段は、レンズ(7)とスマートフォン(2)のカメラ(3)が一直線上に配置されるように固定手段によって固定され、拡大手段は固定手段によってその位置を調節することができるよう取り付けられるものが好ましい。
[0040] このような固定手段は、図8及び図9で図示されたように、折り曲げられた板体からなるクリップ部材(8)からなっており、スマートフォン(2)の一部位に弾性的に分離・結合するようになっており、一部位に前記拡大手段が嵌め込み結合する結合孔(9)を持つようになっているものが好ましい。
[0041] この時、結合孔(9)は、拡大手段の固定された位置を調節できるような長孔になっているのが最も好ましく、拡大手段が結合孔(9)に嵌め込み結合して固定された状態で、その位置を調節してカメラ(3)とレンズ(7)が一致した位置に調節されるようになる。
[0042] したがって、カメラ(3)の位置が異なる多様なスマートフォン(2)にそれぞれ適切に調節して使用することができるので、汎用性を確保することができる。
[0043] このように構成される、本実施例による排卵測定装置(1)において、拡大手段は両端が貫通した「管」形状を有し、内部にレンズ(7)が収容された状態で、一端を閉鎖してレンズ(7)が外部に離脱しないようになっている板状の蓋(10)が着脱される拡大筒(11)で構成されているものが好ましく、蓋(10)には、観察台部材(6)の一端が着脱されて嵌め込み固定される嵌め込み孔(12)が形成され、観察台部材(6)が着脱されるようになっているものが最も好ましい。
[0044] すなわち、蓋(11)(当審注:「(10)」の誤記)の嵌め込み孔(12)に観察台部材(6)が分離・結合して、採取された唾液を拡大することになる。
[0045] そして、本実施例による排卵測定装置(1)において、観察台部材(6)は、両端が貫通した「管」形状を有し、内部に前記パレット部材(5)が収容された状態で、一端を閉鎖してパレット部材(5)を固定するようになっている板状のカバー(13)が着脱される観察台筒(14)を含んで構成されるものが好ましく、カバー(13)は、後方から光が加えられ観察台筒(14)の内部へと照射するようになっている光の引入れ孔(15)が形成されるものが最も好ましい。
[0046] すなわち、カバー(13)を開閉して観察台筒(14)においてパレット部材(5)を分離および結合するようになっており、採取された複数の唾液を順序的に分離・結合して検査するようになっている。
[0047] それとあわせて、光引入れ孔(15)によって光をパレット部材(5)に付加することによって、唾液の鮮明度を確保することができる。)

(1-ウ)

(当審訳:
[0048]ここで、光引入れ孔(15)とは、観察台部材(6)に対してパレット部材(5)側方向へと光を供給するようになっている光の供給手段(16)が固定されて光を調査することができるようになるのであり、光の供給手段(16)は、電気エネルギーを供給されて発光する照明などが固定されて光を供給されるようになってもよい。
[0049]この時、光の供給手段(16)によって供給される光は、パレット部材(5)からレンズ(7)側方向へと誘導される方向で供給されるようになるのが好ましい。)

(1-エ)

(当審訳:
[0050] そして、上述した光の供給手段(16)は、図10で図示したように、スマートフォン(2)に具備された発光源(4)から光を誘入できるように配置される光誘入管(17)と、光誘入管(17)によって誘導された光をパレット部材(5)側方向へと誘導する光誘導管(18)を含んで構成されることが可能であり、この場合、スマートフォン(2)自体に具備された発光源(4)から光を誘導して供給することができ、別途の照明などのような装置が不必要であることによって、使用効率および生産性が増大して経済的に提供することができる。)

(1-オ)
図4、図5、図6及び図8として、以下の図面が記載されている。
図4

図5

図6

図8


(2)引用発明について
ア 記載事項の整理
(ア)上記記載事項(1-イ)の「[0037] 上述したような本実施例による排卵測定装置(1)は、図4に示されたように唾液がセットされたパレット部材(5)と、パレット部材(5)が固定される観察台部材(6)」からみて、引用文献1には「一方の面にユーザーの唾液がセットされるパレット部材(5)を有する観察台部材(6)」が記載されているといえる。

(イ)上記記載事項(1-イ)の「[0037] 上述したような本実施例による排卵測定装置(1)は、図4に示されたように唾液がセットされたパレット部材(5)と、パレット部材(5)が固定される観察台部材(6)と、観察台部材(6)が分離・結合され、内部に被験者の唾液を拡大するようになっているレンズ(7)が具備された拡大手段を含む。」からみて、引用文献1には「パレット部材(5)にセットされた唾液の拡大のためのレンズ(7)を備え、前記レンズ(7)の一側が前記パレット部材(5)の他方の面に向き合うように配置される拡大手段」が記載されているといえる。
そして、図4、5、6及び8から、拡大手段(拡大筒(11))のスマートフォンと向き合う側(上記「一側」に対し「他側」)にリング状部材が備えられていることが見て取れる。

(ウ)上記記載事項(1-ウ)の「[0048] ここで、光引入れ孔(15)とは、観察台部材(6)に対してパレット部材(5)側方向へと光を供給するようになっている光の供給手段(16)が固定されて光を調査することができるようになるのであり、光の供給手段(16)は、電気エネルギーを供給されて発光する照明などが固定されて光を供給されるようになってもよい。」からみて、引用文献1には「観察台部材(6)を挟んで拡大手段と対向する方向で前記パレット部材(5)の一方の面に向き合うように配置され、前記観察台部材(6)に光を供給する照明などを備える光の供給手段(16)」が記載されているといえる。

(エ)上記記載事項(1-ウ)の「[0048] ここで,光引入れ孔(15)とは、観察台部材(6)に対してパレット部材(5)側方向へと光を供給するようになっている光の供給手段(16)が固定されて光を調査することができるようになるのであり、光の供給手段(16)は、電気エネルギーを供給されて発光する照明などが固定されて光を供給されるようになってもよい。」及び図4、5及び6からみて、引用文献1には「光の供給手段(16)が、観察台部材(6)と対面するように固定される照明などを含んでいる」ことが記載されているといえる。

(オ)上記記載事項(1-ア)の「[0030]スマートフォン用排卵測定装置の一実施例を示す」からみて、引用文献1には「スマートフォン用排卵測定装置」が記載されているといえる。

(カ)図4、5及び6からみて、引用文献1には「スマートフォンと向き合う側にリング状部材を有する拡大手段」が記載されているといえる。

イ 上記アを踏まえれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「一方の面にユーザーの唾液がセットされるパレット部材(5)を有する観察台部材(6)と、
前記パレット部材(5)にセットされた唾液の拡大のためのレンズ(7)を備え、前記レンズ(7)の一側が前記パレット部材(5)の他方の面に向き合うように配置され、他側にスマートフォン(2)と向き合うリング状部材が備えられる拡大手段と、
前記観察台部材(6)を挟んで前記拡大手段と対向する方向で前記パレット部材(5)の一方の面に向き合うように配置され、前記観察台部材(6)に光を供給する照明などを備える光の供給手段(16)とを含んでなり、
前記光の供給手段(16)が、
前記観察台部材(6)と対面するように固定される照明などを含んでなる、スマートフォン用排卵測定装置。」(以下「引用発明」という。)

(2)本願の優先権主張日前に頒布され、原査定において引用文献3として引用された刊行物である特開平8-94616号公報には、次の事項が記載されている。
(2-ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、唾液の乾燥組織を検査するための唾液乾燥組織検査用拡大鏡(以下単に拡大鏡という)に係り、特に唾液の乾燥組織の模様の変化を検定することにより、女性人体の卵子の成熟状況を把握して、妊娠の可能性、或いは受精率の高低を検知することのできる拡大鏡に関する。」

(2-イ)「【0012】
【実施例】以下この発明の実施例を図面を参照して説明する。 請求項1に記載の発明による拡大鏡の一実施例を示す図1において、符号1は拡大倍率2乃至10の凸レンズを示し、この凸レンズ1は鏡胴2内に保持されている。
・・・
【0020】一方、第2円筒状暗箱12の他端には照明部30が装着されている。
【0021】この照明部30は、図1の右側(検査部20側)から順に、すりガラス11、第1取付板6に捩じ込まれた発光素子としての照明電球5、電池7、及び第2取付板7にモールドにて取付けられたスイッチ8を有し、これらは円筒フレーム10の内部にその中心軸線に沿って直線状に並設されており、一体となって照明部30を構成している。
【0022】上記照明部30は、外見上、上記第2円筒状暗箱12の外径よりもやや大径の円柱状に形成されており、第2円筒状暗箱12の他端にこれと同軸に、例えばねじ結合により一体的に結合されている。
【0023】スイッチ8の押しボタン8aを押すことにより電気回路(図示せず)は閉成され、乾電池7の電圧が照明電球5に印加される結果、照明電球は点灯し、前方の透明平面板3を照射する。
【0024】押しボタン8aを離せば照明電球5は消える。ここですりガラス11は第2円筒状暗箱12内に照射される光を拡散して均一化する役目をする。」

(2-ウ)図1として、以下の図面が記載されている。


第5 当審の判断
1 対比
本願発明と引用発明とを比較する
(1)唾液は体液の一種であるから、引用発明の「唾液」は、本願発明の「体液」に相当するといえる。
また、その機能・構造からみて、引用発明の「パレット部材(5)」は本願発明の「シート」に、引用発明の「観察台部材(6)」は本願発明の「シート部」に、引用発明の「レンズ(7)」は本願発明の「拡大レンズ群」に、引用発明の「スマートフォン(2)」が本願発明の「観察手段」に、引用発明の「拡大手段」が本願発明の「接境部」に、引用発明の「光の供給手段(16)」が本願発明の「光源部」に、引用発明の「光を供給する照明など」が本願発明の「光源」に、引用発明の「スマートフォン用排卵測定装置」が本願発明の「体液分析用検査装置」に各々相当する。

(2)そして、引用発明では「パレット部材(5)」の「唾液をセットする」面(「一方の面」)が「光の供給手段(16)」側であるのに対し、本願発明では「シート」の「体液を塗布する」面(「第1面」)が「拡大レンズ群」側である点で相違するものの、引用発明の「一方の面」と本願発明の「第1面」とは、「所定の面」という上位概念にて共通するといえる。
また、「液をセットする」には「液を塗布する」が含まれるから、引用発明の「一方の面にユーザーの唾液がセットされるパレット部材(5)」と、本願発明の「第1面にユーザーの体液が塗布されるシート」とは、「所定の面にユーザーの体液が塗布されるシート」の点で共通するといえる。

(3)そうすると、引用発明の「パレット部材(5)の他方の面」が本願発明の「シートの第1面」に相当するとともに、引用発明の「パレット部材(5)の一方の面」が本願発明の「シートの第2面」に相当するといえる。

(4)引用発明の「拡大手段」に「備えられる」「スマートフォン(2)と向き合うリング状部材」と、本願発明の「接境部」に「備えられる」「観察手段と向き合うガイド」とは、「接境部に備えられる観察手段と向き合う部材」の点で共通する。

(5)そうすると、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「所定の面にユーザーの体液が塗布されるシートを有するシート部と、
前記シートに塗布された前記体液の拡大のための拡大レンズ群を備え、前記拡大レンズ群の一側が前記シートの第1面に向き合うように配置され、他側に観察手段と向き合う部材が備えられる接境部と、
前記シート部を挟んで前記接境部と対向する方向で前記シート部の第2面に向き合うように配置され、前記シート部に光を供給する光源を備える光源部とを含んでなり、
前記光源部が、
前記シート部と対面するように固定される光源とを含んでなる、体液分析用検査装置。」
の点で一致し、以下の点にて相違する。

(相違点1)
体液が塗布される「所定の面」が、本願発明では「拡大レンズ群」側の「第1面」であるのに対して、引用発明では「光の供給手段(16)」側の「一方の面」である点。

(相違点2)
接境部に備えられる観察手段と向き合う「部材」が、本願発明では「ガイド」であるのに対して、引用発明では「ガイド」かどうか不明である点。

(相違点3)
「光源部」について、本願発明では「中空の容器状に形成される光源部ボディであって、該光源部の一側が前記シート部と結合されるように構成される光源部ボディと、光源部ボディの内側に固定される光源とを含んでいる」のに対して、引用発明では、観察台部材(6)と対面するように固定される照明などを含んでいるものの、「中空の容器状に形成される光源部ボディであって、該光源部の一側が前記シート部と結合されるように構成される光源部ボディ」があり、その「光源部ボディの内側に固定される」ものかどうか不明である点。

2 判断
(1)相違点に対する判断
ア 相違点1について
一般に、試料をパレットのどちらの面に載せるかは、パレットの上下面の関係にもより、当業者が適宜選択し得るものであり、試料を拡大して観察するという機能において差異があるものではない。引用発明では、パレット部材の「光の供給手段(16)」側の「一方の面」に唾液をセットしているが、これを「レンズ(7)」側の「他方の面」、すなわち、本願発明の「第1面」とすることは、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。
なお、本願明細書においても「唾液を拡大レンズ側のシート面に塗布する」ことの技術的意義について何ら記載されていない。
してみると、引用発明において、相違点1における本願発明の構成とすることは単なる設計的事項にすぎず、当業者が容易になし得た事項であるといえる。

イ 相違点2について
本願発明における「ガイド」とは、本願明細書の【0031】に「接境部30の他端にはガイド34が形成される。」もので、下記の図1における「34」として記載されるものである。
【図1】

一方、引用発明の「リング状部材」は、上記図4、5及び6における拡大手段(拡大筒(11))のスマートフォンと向き合う側にある部材であり、両者に「部材」としての差異は認められない。
してみると、引用発明の「リング状部材」は、本願発明の「ガイド」に相当するものであるといえるから、相違点2は、実質的な相違点ではない。

ウ 相違点3について
引用文献3は、唾液の拡大鏡についての技術が開示されており、その(3-イ)の【0021】に「この照明部30は、図1の右側(検査部20側)から順に、すりガラス11、第1取付板6に捩じ込まれた発光素子としての照明電球5、電池7、及び第2取付板7にモールドにて取付けられたスイッチ8を有し、これらは円筒フレーム10の内部にその中心軸線に沿って直線状に並設されており、一体となって照明部30を構成している。」と記載されており、該「円筒フレーム」及び「照明電球」が、それぞれ、本願発明の「中空の容器状に形成される光源部ボディ」及び「光源部ボディの内側に固定される光源」相当するものである。
そうすると、引用発明の「光の供給手段(16)」の具体的な構成を、同じ唾液の拡大を行う装置の照明部である上記引用文献3の「照明部」の構成とすることは当業者が容易になし得たことであり、その際、その光源部ボディは観察台部材(シート部)に結合するように構成されることになる。
よって、引用発明において、引用文献3の記載に基づいて、相違点3における本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

(2)効果について
本願発明の効果として、本願明細書には
「【発明の効果】
【0018】本発明に係る体液分析用検査装置は、携帯及び使用が便利なテスター機を提供して、ユーザーが自分の体液を用いて何時でも短い時間内に直接テストを行い、分析結果を確認することができるようにすることが可能である。」と記載されているが、引用発明においても奏せられる効果といえ、引用文献1及び3の記載事項を考慮するに、当業者が予期し得るものであり、格別顕著な効果とはいえない。

(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
「引用文献1記載の発明の「光供給手段16」は「光源」を有しておらず、本願請求項1に係る発明の「前記シート部と対面するように前記光源部ボディの内側に固定される光源」を含む「光源部」に相当するものではありません。・・・・・引用文献1記載の発明では、このようにスマートフォン2の発光源4を用いることにより別個の照明を不要にすることで、デバイスの使用効率と生産性を高めてより経済的な測定装置を提供できるようにするものであると解されます(段落0050)。・・・・・このため、当業者は、引用文献1記載の発明の「スマートフォンを使用した排卵測定方法」において、「光供給手段16」に代えて、引用文献3記載の発明のような「照明電球5」を用いる構成は採用し得ないと思料いたします。」と主張している。
しかしながら、引用文献1の上記記載事項(1-ア)に「図4は、本発明のスマートフォンを利用した排卵測定方法において利用されるスマートフォン用排卵測定装置の一実施例を示す、概略分解斜視の例示図である。・・・・・図8および図9は、本実施例によるスマートフォン用排卵測定装置の使用状態を示した概略例示図である。図10は、本発明の別の実施例によるスマートフォン用排卵測定装置の使用状態を示した概略例示図である。」と記載されているように、引用文献1には、異なる2つの実施例が発明として記載されている。すなわち、請求人が指摘する図10の「スマートフォンのライトを光源とする発明」とは別に、本審決が引用発明として認定する「スマートフォンのライトとは別の光源を光の供給手段(16)に含む発明」が記載されている。
そうすると、請求人が指摘する、上記記載事項(1-エ)の[0050] の記載である「図10で図示したように、・・・・・この場合,スマートフォン(2)自体に具備された発光源(4)から光を誘導して供給することができ、別途の照明などのような装置が不必要であることによって、使用効率および生産性が増大して経済的に提供することができる。」は、図10に図示された「別の実施例」に関するものであって、図4?6および図8に図示された「本実施例(一実施例)」についての記載ではない。
してみれば、上記請求人の主張は、採用できない。

(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献3の記載事項基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-10-21 
結審通知日 2020-10-27 
審決日 2020-11-09 
出願番号 特願2018-532282(P2018-532282)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉持 俊輔  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 三崎 仁
▲高▼見 重雄
発明の名称 照明光を利用した体液分析用検査装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

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