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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B60C
管理番号 1372698
異議申立番号 異議2019-700520  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-01 
確定日 2021-02-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6446957号発明「空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6446957号の特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1ないし14〕について訂正することを認める。 特許第6446957号の請求項1、5、8及び10ないし14に係る特許を維持する。 特許第6446957号の請求項2ないし4、6、7及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6446957号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、平成26年9月30日の出願であって、平成30年12月14日にその特許権の設定登録(請求項の数14)がされ、平成31年1月9日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和1年7月1日に特許異議申立人 鍵 隆(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし14)がされ、同年10月3日付けで取消理由が通知され、同年12月9日に特許権者 横浜ゴム株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、令和2年1月20日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年2月26日に特許権者から訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書並びに意見書が提出され、同年3月16日に手続補正書(方式)が提出され、同年5月15日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年6月19日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年7月15日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年9月25日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年11月18日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年12月25日に特許権者から訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲を補正する手続補正書及び意見書が提出されたものである。
なお、令和1年12月9日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和2年9月25日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第5ないし7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したことから、特許異議申立人に再度の意見書の提出の機会は与えない。

第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和2年9月25日にされ、同年12月25日に補正された訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の記載を、「タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端に開口する複数のラグ溝と、
タイヤ接地端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール部から突出してタイヤ周方向に延在するプロテクターとを備える空気入りタイヤであって、
前記ラグ溝をタイヤ接地端からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記プロテクターが、前記プロテクターをタイヤ径方向に貫通する複数の溝部を前記延長領域に有すると共に、前記複数の溝部によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部を有し、
前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係を有し、
タイヤ接地端における前記ラグ溝の溝開口部の周方向幅W1と、前記延長領域における前記プロテクターの前記溝部の溝開口部の周方向幅W2’とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.30≦W2’/W1≦0.60の関係を有し、
タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド踏面のプロファイルの延長線とサイドウォール部のプロファイルの延長線との交点Qをとるときに、前記プロテクターの最大高さH1と、交点Qからタイヤ最大幅位置までのタイヤ幅方向の距離D1とが、0.1≦H1/D1≦0.8の関係を有し、
前記陸部が、タイヤ径方向外側に向かって周方向幅を狭め、且つ、
前記陸部のタイヤ径方向外側のエッジ長W3_outとタイヤ径方向内側のエッジ長W3_inとが、0.6≦W3_out/W3_in≦0.8の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2ないし4、6、7及び9を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5の記載を、「最大高さH1の1/2を境界とする前記プロテクターの頂部側の体積Vtと基部側の体積Vbとが、0.6≦Vt/Vb≦0.9の関係を有する請求項1に記載の空気入りタイヤ。」に訂正する。
併せて、請求項5を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項5を訂正したことに伴う訂正をする。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8の記載を、「前記プロテクターの頂部における前記溝部の溝開口部の周方向幅W2と、前記プロテクターの最大高さH1とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.7≦W2/H1≦4.0の関係を有する請求項1および5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。」に訂正する。
併せて、請求項8を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項8を訂正したことに伴う訂正をする。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10の記載を、「前記プロテクターの前記溝部の最大溝深さH2と、前記プロテクターの最大高さH1とが、0.3≦H2/H1≦0.8の関係を有する請求項1、5および8のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。」に訂正する。
併せて、請求項10を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項10を訂正したことに伴う訂正をする。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11の記載を、「前記プロテクターの前記溝部の溝底の曲率半径Rbが、2.0[mm]≦Rbの範囲にある請求項1、5、8および10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。」に訂正する。
併せて、請求項11を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項11を訂正したことに伴う訂正をする。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12の記載を、「前記プロテクターのエッジ部の曲率半径Reが、2.0[mm]≦Reの範囲にある請求項1、5、8、10および11のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。」に訂正する。
併せて、請求項12を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項12を訂正したことに伴う訂正をする。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項13の記載を、「前記プロテクターの100[%]伸張時の引張強さが1.0[MPa]以上4.0[MPa]以下の範囲にあり、破断伸びが300[%]以上700[%]以下の範囲にある請求項1、5、8および10?12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。」に訂正する。
併せて、請求項13を直接引用する請求項14についても、請求項13を訂正したことに伴う訂正をする。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項14の記載を、「建設車両用タイヤに適用される請求項1、5、8および10?13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。」に訂正する。

(10)訂正事項10
図面の【図7】ないし【図18】に「参考例」との記載を追加して訂正する。

(11)訂正事項11
図面の【図22】の「実施例1」を「参考例1」に訂正し、「実施例2」を「参考例2」に訂正し、「実施例3」を「参考例3」に訂正し、「実施例(参考例)4」を「参考例4」に訂正し、「実施例7」を「参考例7」に訂正し、「実施例8」を「参考例8」に訂正する。

2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正のうち、
「前記プロテクターをタイヤ径方向に貫通する複数の溝部を前記延長領域に有すると共に、前記複数の溝部によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部を有し、」との訂正は、「プロテクター」に係る限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、
「前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2」との訂正は、「最小ゴムゲージGa2」の寸法の測定領域を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、
「タイヤ接地端における前記ラグ溝の溝開口部の周方向幅W1と、前記延長領域における前記プロテクターの前記溝部の溝開口部の周方向幅W2’とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.30≦W2’/W1≦0.60の関係を有し、」との訂正は、「タイヤ接地端における前記ラグ溝の溝開口部の周方向幅W1」と「延長領域における前記プロテクターの前記溝部の溝開口部の周方向幅W2’」の比「W2’/W1」に係る限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、
「タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド踏面のプロファイルの延長線とサイドウォール部のプロファイルの延長線との交点Qをとるときに、前記プロテクターの最大高さH1と、交点Qからタイヤ最大幅位置までのタイヤ幅方向の距離D1とが、0.1≦H1/D1≦0.8の関係を有し、」との訂正は、「プロテクターの最大高さH1」と「交点Qからタイヤ最大幅位置までのタイヤ幅方向の距離D1」の比「H1/D1」に係る限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、
「前記陸部が、タイヤ径方向外側に向かって周方向幅を狭め、且つ、
前記陸部のタイヤ径方向外側のエッジ長W3_outとタイヤ径方向内側のエッジ長W3_inとが、0.6≦W3_out/W3_in≦0.8の関係を有する」との訂正は、「陸部」に係る限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様である。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2ないし4、6、7及び9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る請求項5の訂正は、引用請求項を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項5を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様である。

(4)訂正事項4について
訂正事項4に係る請求項8の訂正のうち、
「前記プロテクターの頂部における前記溝部の溝開口部の周方向幅W2」との訂正は、「周方向幅W2」の定義を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、
「前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.7≦W2/H1≦4.0の関係を有する」との訂正は、「0.7≦W2/H1≦4.0の関係を有する」という条件を満たすべき領域を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、
「請求項1および5のいずれか一つ」との訂正は、引用請求項を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項8を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様である。

(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る請求項10の訂正は、引用請求項を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項10を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様である。

(6)訂正事項6について
訂正事項6に係る請求項11の訂正は、引用請求項を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項11を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様である。

(7)訂正事項7について
訂正事項7に係る請求項12の訂正は、引用請求項を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項12を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様である。

(8)訂正事項8について
訂正事項8に係る請求項13の訂正は、引用請求項を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項13を直接引用する請求項14も同様である。

(9)訂正事項9について
訂正事項9に係る請求項14の訂正は、引用請求項を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(10)訂正事項10及び11について
訂正事項10及び11は、訂正事項1ないし9による訂正に伴い、図面の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項10及び11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし11は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし11は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項2ないし14は訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし14は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし9は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正事項10及び11は、願書に添付した図面についての訂正であるが、当該図面に係る請求項の全てについて、本件訂正請求は行われているので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし14に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1ないし14〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし14に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端に開口する複数のラグ溝と、
タイヤ接地端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール部から突出してタイヤ周方向に延在するプロテクターとを備える空気入りタイヤであって、
前記ラグ溝をタイヤ接地端からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記プロテクターが、前記プロテクターをタイヤ径方向に貫通する複数の溝部を前記延長領域に有すると共に、前記複数の溝部によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部を有し、
前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係を有し、
タイヤ接地端における前記ラグ溝の溝開口部の周方向幅W1と、前記延長領域における前記プロテクターの前記溝部の溝開口部の周方向幅W2’とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.30≦W2’/W1≦0.60の関係を有し、
タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド踏面のプロファイルの延長線とサイドウォール部のプロファイルの延長線との交点Qをとるときに、前記プロテクターの最大高さH1と、交点Qからタイヤ最大幅位置までのタイヤ幅方向の距離D1とが、0.1≦H1/D1≦0.8の関係を有し、
前記陸部が、タイヤ径方向外側に向かって周方向幅を狭め、且つ、
前記陸部のタイヤ径方向外側のエッジ長W3_outとタイヤ径方向内側のエッジ長W3_inとが、0.6≦W3_out/W3_in≦0.8の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
最大高さH1の1/2を境界とする前記プロテクターの頂部側の体積Vtと基部側の体積Vbとが、0.6≦Vt/Vb≦0.9の関係を有する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
前記プロテクターの頂部における前記溝部の溝開口部の周方向幅W2と、前記プロテクターの最大高さH1とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.7≦W2/H1≦4.0の関係を有する請求項1および5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
前記プロテクターの前記溝部の最大溝深さH2と、前記プロテクターの最大高さH1とが、0.3≦H2/H1≦0.8の関係を有する請求項1、5および8のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記プロテクターの前記溝部の溝底の曲率半径Rbが、2.0[mm]≦Rbの範囲にある請求項1、5、8および10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記プロテクターのエッジ部の曲率半径Reが、2.0[mm]≦Reの範囲にある請求項1、5、8、10および11のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記プロテクターの100[%]伸張時の引張強さが1.0[MPa]以上4.0[MPa]以下の範囲にあり、破断伸びが300[%]以上700[%]以下の範囲にある請求項1、5、8および10?12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
建設車両用タイヤに適用される請求項1、5、8および10?13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由(決定の予告)の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和1年7月1日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由2(甲第8号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第8号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)申立理由3(甲第12号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第12号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(4)申立理由4(甲第14号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第14号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(5)申立理由5(甲第22号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1、5、9、12及び14に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第22号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、5、9、12及び14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(6)申立理由6(明確性要件)
本件特許の特許請求の範囲には、請求項1の記載に起因する記載不備、請求項6の記載に起因する記載不備並びに請求項7を引用した場合の請求項8及び9の記載に起因する記載不備があり、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(7)証拠方法
甲第1号証:特開2013-119277号公報
甲第2号証:特開2010-47251号公報
甲第3号証:特開2012-6449号公報
甲第4号証:特開平9-24710号公報
甲第5号証:特開2001-225613号公報
甲第6号証:特開平3-82611号公報
甲第7号証:特開昭55-91408号公報
甲第8号証:特表2013-529573号公報
甲第9号証:特開平11-348514号公報
甲第10号証:特開2012-66731号公報
甲第11号証:特開2008-174139号公報
甲第12号証:米国特許出願公開第2003/0041939号明細書
甲第13号証:特開2010-188975号公報
甲第14号証:特開昭55-36139号公報
甲第15号証:特開昭64-52503号公報
甲第16号証:特開平3-189214号公報
甲第17号証:特開平4-358906号公報
甲第18号証:特開2012-176703号公報
甲第19号証:米国特許第6533007号明細書
甲第20号証:特開2005-271726号公報
甲第21号証:特開2003-2016号公報
甲第22号証:国際公開第2008/114668号
甲第23号証:特開昭50-111703号公報
甲第24号証:特開2000-43519号公報
甲第25号証:特開2006-168411号公報
甲第26号証:自動車工学便覧、第II編第4章第1頁、昭和55年2月1日第5刷発行、社団法人自動車技術会
甲第27号証:実公昭61-22001号公報
甲第28号証:特開2012-86698号公報
なお、文献名等の表記はおおむね特許異議申立書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

2 取消理由(決定の予告)の概要
令和2年7月15日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。

(1)取消理由1(明確性要件)
本件特許の特許請求の範囲には、請求項6の記載に起因する記載不備があり、本件特許の請求項6ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(2)取消理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1及び4ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(3)取消理由3(実施可能要件)
本件特許の請求項1及び4ないし14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(4)取消理由4(甲1、8、12又は14を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1及び4ないし14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1、8、12又は14に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び4ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(5)令和1年12月9日にされた訂正請求による訂正により新たに生じた取消理由5(明確性要件)
本件特許の請求項4、5、7及び10ないし14は、令和1年12月9日にされた訂正請求による訂正により削除された請求項2及び3を引用しているという記載不備があり、本件特許の請求項4、5、7及び10ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

なお、取消理由1は申立理由6のうちの請求項6の記載に起因する記載不備による理由と同旨であり、取消理由4は申立理由1ないし4と同旨である。

第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 取消理由1(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。

(2)判断
取消理由1は、請求項6の記載に起因する記載不備によるものであるところ、本件訂正により請求項6は削除された。
また、請求項7及び9も本件訂正により削除された。
そして、請求項8及び10ないし14の記載は、上記第3の【請求項8】及び【請求項10】ないし【請求項14】のとおりであり、それ自体不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明及び図面の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明8及び10ないし14は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

(3)取消理由1についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項8及び10ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではない。

2 取消理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。

(2)発明の詳細な説明の記載及び図面
発明の詳細な説明には、おおむね次の記載がある。

・「【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤの耐カット性能を維持しつつプロテクターの損傷を抑制できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特に、建設車両用タイヤでは、悪路走行時にて、タイヤのサイドウォール部が路上の岩石などに接触してカット損傷する場合がある。このため、従来の空気入りタイヤは、サイドウォール部にプロテクターを備えることにより、サイドウォール部の本体を保護して、タイヤの耐カット性能を高めている。かかる従来の空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-119277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、プロテクターの損傷を抑制して、プロテクターの機能を確保する必要もある。
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤの耐カット性能を維持しつつプロテクターの損傷を抑制できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。」

・「【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端に開口する複数のラグ溝と、タイヤ接地端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール部から突出してタイヤ周方向に延在するプロテクターとを備える空気入りタイヤであって、前記ラグ溝をタイヤ接地端からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、前記プロテクターが、溝部を前記延長領域に有し、且つ、前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターからカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係を有する。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかる空気入りタイヤでは、プロテクターのタイヤ径方向外側の最小ゴムゲージGa1とタイヤ径方向内側の最小ゴムゲージGa2との比Ga1/Ga2が適正化される利点がある。また、プロテクターが、ラグ溝の延長領域に溝部を有するので、この延長領域におけるプロテクターの剛性が低減される。これらにより、プロテクターにおけるクラックの発生が抑制される利点がある。」

・「【0086】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端に開口する複数のラグ溝2と、タイヤ接地端からカーカス最大幅位置Pまでの領域に配置されると共にサイドウォール部から突出してタイヤ周方向に延在するプロテクター4とを備える(図1および図2参照)。また、プロテクター4が、溝部41を延長領域ER(ラグ溝をタイヤ接地端からタイヤ径方向に延長した領域)に有する(図3参照)。また、プロテクター4の最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、プロテクター4からカーカス最大幅位置Pまでの領域における最小ゴムゲージGa2とが、1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係を有する(図2参照)。
【0087】
かかる構成では、プロテクター4が、ラグ溝2の延長領域ERに溝部41を有するので、この延長領域におけるプロテクター4の剛性が低減される。すると、タイヤ転動時にてプロテクター4に作用する応力が緩和されて、プロテクター4におけるクラックの発生が抑制される。これにより、タイヤの耐クラック性能が向上する利点がある。
【0088】
また、プロテクター4のタイヤ径方向外側の最小ゴムゲージGa1とタイヤ径方向内側の最小ゴムゲージGa2との比Ga1/Ga2が適正化される利点がある。すなわち、1.5≦Ga1/Ga2であることにより、ショルダー部の剛性が確保されて、プロテクター4に作用する曲げ歪みが低減される。また、Ga1/Ga2≦6.0であることにより、プロテクター4に作用するタイヤ周方向への引張歪みが低減される。これらにより、プロテクター4におけるクラックの発生が抑制されて、タイヤの耐クラック性能が向上する。
【0089】
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝2の周方向幅W1と、延長領域ERにおけるプロテクター4の溝部41の幅W2’とが、0.30≦W2’/W1の関係を有する(図7参照)。かかる構成では、ラグ溝2の延長領域ERにおけるプロテクター4の溝部41の幅W2’が確保されるので、プロテクター4の剛性が適正に低減される。これにより、プロテクター4におけるクラックの発生が抑制されて、タイヤの耐クラック性能が向上する利点がある。
【0090】
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝2の周方向幅W1と、延長領域ERにおけるプロテクター4の溝部41の幅W2’とが、W2’/W1≦1.00の関係を有する(図7参照)。かかる構成では、溝部41が延長領域ERのタイヤ周方向の全域に渡って延在する構成(図9参照)と比較して、プロテクター4の陸部42の配置間隔(溝部41の周方向幅W2)を狭め得る(図3参照)。これにより、プロテクター4の機能が確保されて、タイヤの耐カット性能が確保される利点がある。
【0091】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド踏面のプロファイルの延長線とサイドウォール部のプロファイルの延長線との交点Qをとるときに、プロテクター4の最大高さH1と、交点Qからタイヤ最大幅位置Aまでのタイヤ幅方向の距離D1とが、0.1≦H1/D1≦0.8の関係を有する(図2参照)。かかる構成では、これにより、プロテクター4の最大高さH1が適正化される利点がある。すなわち、0.1≦H1/D1であることにより、プロテクター4の機能が確保されて、サイドウォール部のカット損傷が適正に抑制される。また、H1/D1≦0.8であることにより、プロテクター4がサイドウォール部から突出し過ぎることによるプロテクター4の損傷が抑制される。
【0092】
また、この空気入りタイヤ1では、最大高さH1の1/2を境界とするプロテクター4の頂部側の体積Vtと基部側の体積Vbとが、0.6≦Vt/Vb≦0.9の関係を有する(図5)。これにより、プロテクター4の陸部42の形状が適正化される利点がある。すなわち、0.6≦Vt/Vbであることにより、プロテクター4の頂部側の体積Vtが確保されて、プロテクター4によるサイドウォール部のカット損傷の抑制機能が確保される。また、Vt/Vb≦0.9であることにより、プロテクター4の陸部42が頂部側を小さくした形状となり、プロテクター4の剛性が確保されて、プロテクター4の損傷が抑制される。
【0093】
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝2の周方向幅W1の測定点と、プロテクター4の溝部41の周方向幅W2の測定点とが、タイヤ周方向に相互にオフセットして配置される(図8参照)。かかる構成では、ラグ溝2に区画されたショルダー陸部3のエッジ部と、プロテクター4の溝部41に区画された陸部42のエッジ部とが、タイヤ周方向に分散して配置される。これにより、プロテクター4に作用する応力が分散されて、クラックの発生が抑制される利点がある。
【0094】
また、この空気入りタイヤ1では、複数の溝部41が、プロテクター4をタイヤ径方向に貫通することにより、プロテクター4が、タイヤ周方向に配列された複数の陸部42に分断される(図3参照)。また、陸部42が、タイヤ径方向内側に向かって周方向幅W3を狭める(図4参照)。これにより、陸部42に作用する引張歪みが低減されて、クラックの発生が抑制される利点がある。
【0095】
また、この空気入りタイヤ1では、プロテクター4の溝部41の周方向幅W2(図4参照)と、プロテクター4の最大高さH1(図5参照)とが、0.7≦W2/H1≦4.0の関係を有する。これにより、溝部41の周方向幅W2が適正化される利点がある。すなわち、0.7≦W2/H1であることにより、溝部41の周方向幅W2が確保されて、クラックの発生が適正に抑制される。また、W2/H1≦4.0であることにより、プロテクター4の体積が確保されて、プロテクター4の剛性が確保される。
【0096】
また、この空気入りタイヤ1では、複数の溝部41が、プロテクター4をタイヤ径方向に貫通することにより、プロテクター4が、タイヤ周方向に配列された複数の陸部42に分断される(図3参照)。また、陸部42の周方向幅W3(図4参照)と、プロテクター4の最大高さH1(図5参照)とが、1.0≦W3/H1の関係を有する。これにより、陸部42の剛性が確保されて、プロテクター4によるカット損傷の抑制機能が適正に確保される利点がある。
【0097】
また、この空気入りタイヤ1では、プロテクター4の溝部41の最大溝深さH2と、プロテクター4の最大高さH1とが、0.3≦H2/H1≦0.8の関係を有する(図5参照)。これにより、溝部41の溝深さH2が適正化される利点がある。すなわち、0.3≦H2/H1であることにより、溝部41の機能が確保されて、クラックの発生が適正に抑制される。また、H2/H1≦0.8であることにより、陸部42の剛性が確保されて、プロテクター4によるカット損傷の抑制機能が適正に確保される。
【0098】
また、この空気入りタイヤ1では、プロテクター4の溝部41の溝底の曲率半径Rbが、2.0[mm]≦Rbの範囲にある(図6参照)。これにより、溝部41の溝底に作用する応力が分散されて、耐クラック性が向上する利点がある。
【0099】
また、この空気入りタイヤ1では、プロテクター4(特に、陸部42)のエッジ部の曲率半径Reが、2.0[mm]≦Reの範囲にある(図5参照)。これにより、プロテクター4のエッジ部に作用する応力が分散されて、耐クラック性が向上する利点がある。
【0100】
また、この空気入りタイヤ1では、プロテクター4の100[%]伸張時の引張強さが1.0[MPa]以上4.0[MPa]以下の範囲にあり、破断伸びが300[%]以上700[%]以下の範囲にある。かかる構成では、プロテクター4の物性が適正化されて、プロテクター4の機能が適正に確保される。これにより、サイドウォール部のカット損傷が抑制され、また、プロテクター4におけるクラックの発生が抑制される。
【0101】
また、この空気入りタイヤ1では、プロテクター4が、サイドウォールゴム16に対して異なるゴム材料から成り、プロテクター4の100[%]伸張時の引張強さとサイドウォールゴム16の100[%]伸張時の引張強さとの比が1.0以上2.0以下の範囲にあり、プロテクター4の破断伸びとサイドウォールゴム16の破断伸びとの比が1.0以上2.0以下の範囲にある。かかる構成では、プロテクター4の物性が適正化されて、プロテクター4の機能が適正に確保される。これにより、サイドウォール部のカット損傷が抑制され、また、プロテクター4におけるクラックの発生が抑制される。
【0102】
[適用対象]
この空気入りタイヤ1は、建設車両用ラジアルタイヤを適用対象とすることが好ましい。建設車両用ラジアルタイヤは、土木建設現場などの不整地を走行する建設車両に装着されるタイヤであり、大型ダンプ車、タイヤローラ、スクレーパ、グレーダ、クレーン、ホイールローダ等の建設車両に装着される。」

・「【実施例】
【0104】
図22は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0105】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)耐クラック性能および(2)耐カット性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ29.5R25の試験タイヤがJATMA規定の適用リムに組み付けられ、この試験タイヤにJATMA規定の最高空気圧および最大負荷が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である建設車両の総輪に装着される。
【0106】
また、試験車両が、岩石や瓦礫がある悪路を1万[km]走行する。その後に、プロテクターに発生したクラック数が計測され、従来例を基準(100)とした指数評価により、(1)耐クラック性能の評価が行われる。また、サイドウォール部の表面に発生した外傷の最深部からカーカス層までの距離(外傷が複数ある場合には、前記距離の総和)が計測されて、従来例を基準(100)とした指数評価により、(2)耐カット性能の評価が行われる。
【0107】
実施例1?12の試験タイヤは、プロテクター4が、プロテクター4を貫通する複数の溝部41と、これらの溝部41によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部42とを備えている(図1?図3参照)。また、Ga1=56.4[mm]、W1=60.0[mm]、D1=45.5[mm]である。
【0108】
従来例1の試験タイヤは、プロテクターが、溝部を有しておらず、タイヤ全周に渡って連続して延在する環状構造を有している。従来例2の試験タイヤは、実施例8の構成において、Ga1/Ga2が小さく設定されている。
【0109】
試験結果に示すように、実施例1?12の試験タイヤでは、タイヤの耐カット性能を維持しつつ耐クラック性能を向上できることが分かる。」

また、図1ないし7及び22として、以下の図面が記載されている。

・「



・「



・「



(3)検討
そこで、検討する。
発明の詳細な説明の【0001】ないし【0005】の記載によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「タイヤの耐カット性能を維持しつつプロテクターの損傷を抑制できる空気入りタイヤ」を提供することである。
他方、発明の詳細な説明の【0086】ないし【0102】及び図1ないし7の記載によると、本件特許発明1において特定されているそれぞれの発明特定事項により、タイヤの耐カット性能が向上する旨又はプロテクターの損傷を抑制できる旨の記載があり、発明の詳細な説明の【0107】ないし【0109】及び図22に実施例5、6及び9ないし12として示された実施例において、タイヤの耐カット性能を維持しつつプロテクターの損傷を抑制することを確認している。
そうすると、タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端に開口する複数のラグ溝と、タイヤ接地端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール部から突出してタイヤ周方向に延在するプロテクターとを備える空気入りタイヤであって、前記ラグ溝をタイヤ接地端からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、前記プロテクターが、前記プロテクターをタイヤ径方向に貫通する複数の溝部を前記延長領域に有すると共に、前記複数の溝部によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部を有し、前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係を有し、タイヤ接地端における前記ラグ溝の溝開口部の周方向幅W1と、前記延長領域における前記プロテクターの前記溝部の溝開口部の周方向幅W2’とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.30≦W2’/W1≦0.60の関係を有し、タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド踏面のプロファイルの延長線とサイドウォール部のプロファイルの延長線との交点Qをとるときに、前記プロテクターの最大高さH1と、交点Qからタイヤ最大幅位置までのタイヤ幅方向の距離D1とが、0.1≦H1/D1≦0.8の関係を有し、前記陸部が、タイヤ径方向外側に向かって周方向幅を狭め、且つ、前記陸部のタイヤ径方向外側のエッジ長W3_outとタイヤ径方向内側のエッジ長W3_inとが、0.6≦W3_out/W3_in≦0.8の関係を有する空気入りタイヤは、発明の課題を解決できると当業者は認識する。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明5、8及び10ないし14についても同様である。
よって、本件特許発明1、5、8及び10ないし14に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

(4)取消理由2についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1、5、8及び10ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではない。

3 取消理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。

(2)発明の詳細な説明の記載及び図面
発明の詳細な説明の記載及び図面は、上記2(2)のとおりである。

(3)判断
取消理由3は、令和1年12月9日にされた訂正請求により発明の詳細な説明の【0107】が訂正され、それにより生じた記載に起因する記載不備によるものであるところ、本件訂正により発明の詳細な説明の【0107】は特許登録時のままで訂正されないものとなったため、該箇所に記載不備はない。
そして、発明の詳細な説明には、本件特許発明の各発明特定事項について具体的に記載され、本件特許発明の実施例についても具体的に記載されている。
したがって、本件特許発明に関して、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるといえ、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。

(4)取消理由3についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1、5、8及び10ないし14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではない。

4 取消理由4(甲1、8、12又は14を主引用文献とする進歩性)について
(1)甲1を主引用文献とする進歩性について
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、「空気入りラジアルタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りラジアルタイヤに関するものであり、特に、岩場などの悪路を走行するのに好適な空気入りラジアルタイヤに関する。」

・「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、岩場などの凹凸の大きな悪路を低内圧条件で走行する際に、柔軟なるタイヤ変形を可能にして、路面追従性能を向上することで、悪路走破性能を高めることができる空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。」

・「【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る空気入りラジアルタイヤ10について図1?8を参照して説明する。
【0017】
実施形態に係る空気入りラジアルタイヤ10は、岩場などの凹凸の大きな悪路を走行するためのタイヤであり、岩場走行を主としたオフロードレース用や、災害現場への派遣車両用などとして好適な悪路走行用空気入りラジアルタイヤである。」

・「【0025】
図5に示すように、第2ブロック32は、第1ブロック30よりもタイヤ赤道面Eから距離が離れたブロック端を有し、従ってタイヤ幅方向Wの長さが大きいブロックであり、タイヤ幅方向外方Woに張り出し形成されている。第2ブロック32は、図6に示すように、平滑路面における接地面となる接地面部32Aと、その接地端32Cを介してタイヤ幅方向外方Woかつ径方向内方Kiに傾斜した傾斜面部32Bとを備えてなる。
【0026】
サイドウォール部14には、タイヤ最大断面幅位置34よりも径方向外方側Koの外表面において、タイヤ周方向Cの全周にわたって延びる環状領域36が設けられている。また、この環状領域36には、複数の突起40がタイヤ周方向Cに並べて設けられている。
【0027】
なお、タイヤ最大断面幅位置34とは、タイヤ外面、即ちサイドウォール部14の一般外表面38がタイヤ軸方向においてタイヤ赤道面Eから最も離れる位置である。ここで、一般外表面38とは、突起等を除いたサイドウォール部本体の外表面部分であり、通常、複数の円弧をなめらかに接続することで規定される子午線断面形状をもつ。」

・「【0030】
本実施形態では、環状領域36は、そのベース面36Aが、図6に示すように、サイドウォール部14の一般外表面38に対して増肉(即ち、隆起)した台状に形成されている。詳細には、図6に示すタイヤ子午線断面において、外側周方向溝42の溝底(溝の最も深い点)をP1とし、内側周方向溝44の溝底をP2とし、P1とP2を結ぶ直線をLとする。この例では、溝底P1,P2はともに、サイドウォール部14の一般外表面38上に位置している。このとき、環状領域36のベース面36Aは、上記直線Lに対して、タイヤ外面側に張り出すように断面台形状に肉盛りされて形成されている。直線Lに対する肉盛りの厚みT3は、1?5mmであることが好ましく、より好ましくは2?4mmである。なお、本実施形態では、ベース面36Aは、タイヤ子午線断面形状において、直線Lに平行な直線状に形成されているが、タイヤ外面側に僅かに膨らむ湾曲線状に形成されてもよい。」

・「【0033】
外側薄肉部46での肉厚T1と内側薄肉部48での肉厚T2は、いずれも最大断面幅位置34での肉厚T0と略同等に設定されており(図5参照)、これにより、外側薄肉部46と内側薄肉部48は、曲げ剛性の小さい低剛性領域を構成している。ここで、最大断面幅位置34での肉厚T0とは、最大断面幅位置34に後述するプロテクター58が存在する場合は、該プロテクター58を除くサイドウォール部本体の厚みである。外側薄肉部46と内側薄肉部48の肉厚T1,T2は、最大断面幅位置34での肉厚T0に対して、0.7?1.3倍の範囲内であることが好ましい。
【0034】
外側薄肉部46と内側薄肉部48は、図5に示すように、タイヤ内面径点Mに相当する径方向位置である内面径位置50と最大断面幅位置34との間に設けられている。ここで、タイヤ内面径点Mとは、タイヤ内面がタイヤ高さ方向においてタイヤ軸から最も離れた位置であり、通常はタイヤ内面における赤道面E上の点である。
【0035】
外側薄肉部46と内側薄肉部48は、低内圧条件で路面からの外力が作用したときに、路面追従性能を向上させるために、変形の節となる部位である。すなわち、上記第2ブロック32に集中荷重が作用したとき、外側薄肉部46では外側周方向溝42が閉じるように圧縮ないし座屈変形し、内側薄肉部48では内側周方向溝44が開くように引張ないし拡開変形する。このような作用を果たすために、外側薄肉部46と内側薄肉部48は次のように配置されている。
【0036】
内側薄肉部48は、内面径位置50と最大断面幅位置34とに挟まれた領域52のタイヤ径方向Kにおける中央部に配置されている。詳細には、内側薄肉部48(より詳細には、内側周方向溝44の溝底P2)は、最大断面幅位置34からタイヤ径方向外方Koに向かって上記領域52の幅の30?60%の位置に設定されることが好ましい。より好ましくは、上記領域52を略2等分する、内面径位置50と最大断面幅位置34との中間位置に、内側薄肉部48を設定することである。
【0037】
外側薄肉部46は、サイドウォール部14のバットレス面に設けられており、上記内面径位置50よりもタイヤ径方向内方側Kiにおいて当該内面径位置50に近接させて配置されている。すなわち、外側薄肉部46、詳細には外側周方向溝42の溝底P1が、内面径位置50よりもタイヤ径方向内方Kiではあるが、該内面径位置50の近傍に位置するように設けられている。内面径位置50は、スチールベルト層22A,22Bの端部の径方向位置と略一致しており、剛性が高い。この剛性の高い領域の径方向内方側Kiに近接させて剛性の低い外側薄肉部46を設けることにより、外側薄肉部46が変形の節となりやすくなる。なお、外側薄肉部46、詳細には上記溝底P1は、最大幅位置34からタイヤ径方向外方Koに向かって上記領域52の幅の80%以上の位置に設定されることが好ましい。」

・「【0039】
上記周方向溝42,44の溝底部の曲率半径は3mm以上であることが好ましい。特に、外側周方向溝42の突起40側の基部の曲率半径R1(図6,7参照)は5mm以上であることが好ましい。このように曲率半径を大きくすることにより、特に外側薄肉部46での座屈による疲労性を向上して、クラックの発生を抑制することができる。」

・「【0041】
図2,4に示されるように、突起40は、ショルダーブロック列28の各ブロック(即ち、第1ブロック30及び第2ブロック32)に対し、外側薄肉部46を挟んでタイヤ子午線方向Dに対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0042】
詳細には、複数の突起40は、第1ブロック30に対して外側薄肉部46を挟んでタイヤ子午線方向Dに対向する位置に設けられた第1突起40A(図2,4,7参照)と、第2ブロック32に対して外側薄肉部46を挟んでタイヤ子午線方向Dに対向する位置に設けられた第2突起40B(図2,4,6参照)とからなり、これら第1突起40Aと第2突起40Bがタイヤ周方向Cに交互に設けられている。
【0043】
第2突起40Bは、図2,4に示すように、第1突起40Aよりもタイヤ周方向Cでの長さが大きく設定されている。そのため、環状領域36に設けられた突起40は、タイヤ周方向Cにおいて、大、小、大、小の繰り返しで配列されている。しかも、トレッド接地端において凸状をなす第2ブロック32に対向する突起を、「大」、即ち周方向長さが大きい第2突起40Bとし、トレッド接地端において凹状をなす第1ブロック30に対向する突起を、「小」、即ち周方向長さが小さい第1突起40Aとしている。より詳細には、第2突起40Bは、第2ブロック32に対し、タイヤ周方向長さが同等に設定され、第1突起40Aは、第1ブロック30に対し、タイヤ周方向長さが短く設定されている。
【0044】
また、突起40のタイヤ周方向Cにおける間隔についても、大、小、大、小の繰り返しで配列されている。すなわち、第1突起40Aと第2突起40Bの間隔は、第1間隔54と、該第1間隔54よりもタイヤ周方向寸法が大きい第2間隔56とからなり、第1間隔54と第2間隔56がタイヤ周方向Cに交互に設定されている。これらの間隔54,56は、上記ショルダーブロック列28における複数の横溝60に対応させて、各横溝60に対向する位置に設定されている(図4参照)。」

・「



(イ)甲1発明
甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「タイヤ幅方向に延在して接地端32Cに開口する複数の横溝60と、
接地端32Cからカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール部14から突出してタイヤ周方向に延在する環状領域36とを備える空気入りラジアルタイヤ10であって、
前記横溝60を接地端32Cからタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記環状領域36が、第1間隔54及び第2間隔56を前記延長領域に有し、且つ、
前記環状領域36の最大高さ位置から接地端32Cまでの領域における外側薄肉部46での肉厚T1と、前記環状領域36からカーカス最大幅位置までの領域における内側薄肉部48での肉厚T2とが、最大断面幅位置34での肉厚T0に対し、0.7?1.3倍の範囲内である空気入りラジアルタイヤ10。」

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「接地端32C」は、本件特許発明1における「タイヤ接地端」に相当し、以下同様に、「横溝60」は「ラグ溝」に、「サイドウォール部14」は「サイドウォール部」に、「環状領域36」は「プロテクター」に、「空気入りラジアルタイヤ10」は「空気入りタイヤ」に、「第1間隔54及び第2間隔56」は「溝部」に、「外側薄肉部46での肉厚T1」は「最小ゴムゲージGa1」に、「内側薄肉部48での肉厚T2」は「最小ゴムゲージGa2」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明における「第1間隔54及び第2間隔56」は「環状領域36」をタイヤ径方向に貫通する複数の溝部であることは明らかであり、甲1発明における「環状領域36」が該「第1間隔54及び第2間隔56」によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部に相当する部分を有することも明らかである。
さらに、上記相当関係を踏まえると、本件特許発明1における「前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係を有し」と甲1発明における「前記環状領域36の最大高さ位置から接地端32Cまでの領域における外側薄肉部46での肉厚T1と、前記環状領域36からカーカス最大幅位置までの領域における内側薄肉部48での肉厚T2とが、最大断面幅位置34での肉厚T0に対し、0.7?1.3倍の範囲内である」は、「前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、所定の関係を有し」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は次の点で一致する。
「タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端に開口する複数のラグ溝と、
タイヤ接地端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール部から突出してタイヤ周方向に延在するプロテクターとを備える空気入りタイヤであって、
前記ラグ溝をタイヤ接地端からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記プロテクターが、前記プロテクターをタイヤ径方向に貫通する複数の溝部を前記延長領域に有すると共に、前記複数の溝部によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部を有し、
前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、所定の関係を有する空気入りタイヤ。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1a>
「Ga1」と「Ga2」の間の「所定の関係」に関して、本件特許発明1においては、「1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係」であるのに対し、甲1発明においては、「Ga1」に相当する「T1」及び「Ga2」に相当する「T2」が、「最大断面幅位置34での肉厚T0に対し、0.7?1.3倍の範囲内である」点。

<相違点1b>
本件特許発明1においては、「タイヤ接地端における前記ラグ溝の溝開口部の周方向幅W1と、前記延長領域における前記プロテクターの前記溝部の溝開口部の周方向幅W2’とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.30≦W2’/W1≦0.60の関係を有し」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1c>
本件特許発明1においては、「タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド踏面のプロファイルの延長線とサイドウォール部のプロファイルの延長線との交点Qをとるときに、前記プロテクターの最大高さH1と、交点Qからタイヤ最大幅位置までのタイヤ幅方向の距離D1とが、0.1≦H1/D1≦0.8の関係を有し、前記陸部が、タイヤ径方向外側に向かって周方向幅を狭め、且つ、前記陸部のタイヤ径方向外側のエッジ長W3_outとタイヤ径方向内側のエッジ長W3_inとが、0.6≦W3_out/W3_in≦0.8の関係を有する」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み相違点1cから検討する。
甲1には、甲1発明において、相違点1cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
また、他の証拠にも、甲1発明において、相違点1cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
さらに、相違点1cに係る本件特許発明1の発明特定事項が本件特許の出願前に当業者に周知であったとはいえないし、設計的事項であったともいえない。
したがって、甲1発明において、相違点1cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、「タイヤの耐カット性能を維持しつつプロテクターの損傷を抑制できる空気入りタイヤを提供する」という甲1発明及び他の証拠に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点1a及び1bについて検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明5、8、10ないし14について
本件特許発明5、8、10ないし14は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)甲8を主引用文献とする進歩性について
ア 甲8に記載された事項及び甲8発明
(ア)甲8に記載された事項
甲8には、「サイドウォールの耐損傷性を改善したタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【技術分野】
【0001】
本発明は、破裂やパンク等サイドウォール(側壁)の耐損傷性を改善したタイヤに関する。より詳細には、本発明は、タイヤの駆動時に障害物と接触した際、サイドウォールを損傷から保護することを改善する方法でサイドウォールに沿って配置されたトレッド特徴部を有するタイヤを提供する。
【背景技術】
【0002】
オフロードの状況のような厳しい環境でのタイヤの駆動には、タイヤを損傷から保護する点で課題が提供される。岩石、樹木、及び他の地物のような障害物は、トレッド領域だけでなく、サイドウォールにも、タイヤに脅威を与える。トレッド領域は、地面に接触するように設計されているため、この目的のために意図された組成物から構成されているが、サイドウォールは一般に地面に接触するように設計されていない。その代わりに、タイヤのサイドウォールは、通常、例えば、タイヤのサイドウォールの間及びそこを通り延びる、タイヤカーカスのコードのような、特定の構造要素を覆うゴム材料製の比較的薄い層を含む。ゴム材料は、従来、地面への接触というよりむしろ、柔軟性のために作られ、その結果、サイドウォールは、接触路を通り回転する際に生じるタイヤの繰り返し屈曲に耐え得る。加えて、サイドウォールゴムは、一般的に、トレッドゴムのように厚くはない。このように、サイドウォールは、一般的に、タイヤが、地面に沿って障害物と接触する際に生じ得る破裂、または他のパンク損傷への耐性が一般的にトレッドに比べ低い。」

・「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特徴部は、特定のサイドウォールの損傷への耐性を補助するためにサイドウォールに沿って追加され得る。ラグ、ブロック、及び/または他のトレッド特徴部は、タイヤが、駆動間に、障害物と接するように、危険な障害物とサイドウォール間で保持することにより、攻撃からタイヤを保護するために、サイドウォールに対して追加され得る。サイドウォールに沿った特徴部の追加は、タイヤに材料、複雑さ、及び費用を加える。そのような特徴部はまた、不利にサイドウォールの柔軟性を損ない得る。従って、サイドウォールの全ての部分に必ずしも保護の必要がない場合、そのような特徴部の大きさ及び位置を部分的に最適化することが望まれる。また、サイドウォールに沿ったそのような特徴部は、タイヤの見た目を著しく変え得る。そのため、美観的配慮は、サイドウォールに追加される特徴部の形状及び設置を決定する上で、大きな役割を担う。」

・「【0011】
ある実施形態において、溝状特徴部及びブロック状特徴部を、サイドウォールの周方向に沿って互い違いにする。また別の実施形態において、溝状特徴部とブロック状特徴部は、異なる厚さを有し得る。」

・「【0026】
次に、図2Aを参照すると、トレッド領域内において、点Nは、トレッドブロック160の縁部を表し(図3A)、点Gは、トレッドの溝部170の縁部を表す(図3A)。障害物が、点N(即ち、トレッドブロック160の縁部)を滑り落ちる場合、LPNは、障害物が着地またはサイドウォール110と接触するサイドウォール110に沿った径方向位置を表す。障害物が、点G(即ち、トレッドの溝部170の縁部)を滑り落ちる場合、LPGは、障害物が最初にサイドウォール110に接触するサイドウォール110に沿った径方向位置を表す。」

・「【0029】
図3Aは、より詳細に示す、サイドウォール110及びトレッド領域105を有するタイヤ100の側面図である。LPN及びLPGの算出を使用して、環140及び150は、サイドウォール110上に重ねられている。環140は、タイヤ100のサイドウォール110に対するLPNの円周位置を表し、一方、環150は、サイドウォール110に対するLPGの円周位置を表す。LPGの環150は、常に、LPNの環140よりもトレッド領域105の近くに設置されるであろう。環130は、タイヤ110の赤道面の位置を表す。環120は、リムを受けるタイヤ100の設置場を表す。タイヤ100のトレッド領域105は、示されるように、タイヤ肩部に沿ったトレッドブロック160及びトレッドの溝部170をも含む。部図3Aにしめすようなもの以外の形状及び大きさを有するブロック及び溝部も、同様に本発明で使用し得る。
【0030】
上記数式1及び2を使用して、トレッドブロック160及びトレッドの溝部170の縁部を滑り落ちる障害物の軌跡を算出しており、サイドウォール110上に重ねている。より詳細には、図3?3Cに示すように、軌跡180は、末端175間のトレッドの溝部170を一括し、タイヤ100が回転し、障害物と接触し、その後障害物を越えて、障害物が溝部170のどこかへ動き始めた場合、障害物が動く場所内の領域を定める。同様に、軌跡190は、末端165を用いてトレッドブロック160を一括し、タイヤ100が回転し、障害物と接触し、その後障害物を越えて、障害物がトレッドブロック160のどこかへ動き始めた場合、障害物が動く場所内の領域を定める。図3Bを参照すると、より詳細には、駆動間に障害物がトレッドの溝部170を滑り落ちる場合、障害物は、溝状軌跡180の曲線間を移動するであろう。同様に、図3Cを参照すると、駆動間に、障害物がトレッドブロック160を滑り落ちる場合、障害物は、ブロック状軌跡190の曲線間を移動するであろう。
【0031】
従って、環120、130、及び140に加えて、軌跡180及び190は、タイヤ100の駆動間にサイドウォール110の破裂またはパンクの懸念がある1つまたは複数の接触領域を特定することを補助する。このように、それら接触領域は、サイドウォール100へのトレッド特徴部の追加のような保護の追加を考慮した好ましい設置場を表す。美観的考慮も、それら接触領域の特定を使用して適用され得る。
【0032】
例えば、図3Bを参照すると、溝状接触領域200(クロスハッチングで表す)は、溝部170を滑り落ちる障害物に対して、サイドウォール110を保護するためにトレッド特徴部を追加する好ましい位置を表示する。接触領域200は、軌跡180、LPN環140及びLPG環150によって接合される。接触領域200に追加されるトレッド特徴部の厚さ(即ち、周囲のサイドウォール110の上部にあるトレッド特徴部の高さ)は、どのくらい性能の改善が望まれるかによって決定される。一般的に、そのようなトレッド特徴部は、厚さが約3mm?約15mmの範囲であるべきである。厚い特徴部は、材料面での費用の増加、及びタイヤへの重さの付加があるが、より良い保護を提供するであろう。それは、長時間駆動すると、タイヤを損傷させ得る過剰な熱をも発生し得る。薄い特徴部(即ち、3mm未満)を使用することもできるが、さらなる保護を提供するためには、LPN環140を越えて、トレッド特徴部の下部b(線b)を拡張することが望ましい。是非とも、好ましくは、トレッド特徴部の上部(線a)及びトレッド特徴部の下部(線b)の距離は、少なくとも約10mmであるべきであり、環140及び150にそれぞれ正確に設置される必要はない。
【0033】
同様に、図3Cのブロック状接触領域210(クロスハッチングで表す)は、トレッドブロック160を滑り落ちる障害物に対する保護のためにトレッド特徴部を追加する好ましい位置を示す。領域210は、軌跡190、赤道面環130及びLPN環140によって接合される。重ねて、トレッド特徴部の厚さは、好ましくは、所望の保護の量に依存し、約3mm?約15mmの範囲である。厚さ3mm未満の特徴部は、さらなる保護を提供するよう、赤道面環130を越えて、特徴部の下部(線B)を移動することが要求され得る。好ましくは、トレッド特徴部の上部(線A)とトレッド特徴部の下部(線B)間の距離は、径方向に沿って、少なくとも約10mmであるべきである。
【0034】
特定のタイヤ構成のためのトレッドブロックと溝部の相対的な幅によっては、上述のようにタイヤ特徴部の追加が重複につながることがある。例えば、トレッド特徴部が、タイヤ100の各トレッドブロック160の接触領域210と同一の広がりを持って配置される場合、連続的なリブまたはリングがサイドウォール110に形成されるであろう。そのような特徴部はサイドウォール105に十分な保護を提供し得るが、固体のリングは、美観または泥を牽引する点から十分ではない場合がある。それは、長時間駆動すると、タイヤが損傷し得る過剰な熱をも発生し得る。従って、上述のように、美観、泥の牽引及び熱の発生のような他の懸念をも対処する一方、サイドウォールの保護を最適化するために、接触領域を特定することにより提供される情報を使用して、トレッド特徴部は、互い違いに、あるいは、サイドウォールに沿って形作られ、操作され得る。加えて、トレッド特徴部は、予想される接触領域の設置を知ることに基づき、サイドウォールの保護を提供する一方、接触領域と同一の広がりに、または接触領域から中心を外した場所に配置され得る。
【0035】
図4は、トレッドブロック460及びトレッドの溝部470を有するタイヤ400の一部を表す。溝部470の縁部に基づく軌跡480及びブロック460の縁部に基づく軌跡490をも示す。上述の方法を使用して。溝状トレッド特徴部50は、溝部を滑り落ちる障害物からサイドウォール410を保護するために溝部470の下に放射状に配置されている。同様に、ブロック状トレッド特徴部510は、ブロックを滑り落ちる障害物からサイドウォール410を保護するためにブロック460の下に放射状に配置されている。美観を改善するため、特徴部500及び特徴部510は、図4に示すように形作られ、交互に配置されている。他の形状や向きを適用してもよい。しかし、そのような特徴部の配置は、本明細書に記載される方法を使用して想到される。」

・「



・「



(イ)甲8発明
甲8に記載された事項を整理すると、甲8には次の発明(以下、「甲8発明」という。)が記載されていると認める。

「タイヤ幅方向に延在して縁部Nに開口する複数の溝部470と、
タイヤ接地端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール410から突出してタイヤ周方向に延在するトレッド特徴部とを備えるタイヤ400であって、
前記溝部470を縁部Nからタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記トレッド特徴部が、溝状トレッド特徴部500を前記延長領域に有するタイヤ400。」

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲8発明を対比する。
甲8発明における「縁部N」は、本件特許発明1における「タイヤ接地端」に相当し、以下同様に、「溝部470」は「ラグ溝」に、「サイドウォール410」は「サイドウォール部」に、「トレッド特徴部」は「プロテクター」に、「タイヤ400」は「空気入りタイヤ」に、「溝状トレッド特徴部500」は「溝部」に、それぞれ相当する。
また、甲8発明における「溝状トレッド特徴部500」は「トレッド特徴部」をタイヤ径方向に貫通する複数の溝部であることは明らかであり、甲8発明における「トレッド特徴部」が該「溝状トレッド特徴部500」によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部に相当する部分を有することも明らかである。

したがって、両者は次の点で一致する。
「タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端に開口する複数のラグ溝と、
タイヤ接地端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール部から突出してタイヤ周方向に延在するプロテクターとを備える空気入りタイヤであって、
前記ラグ溝をタイヤ接地端からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記プロテクターが、前記プロテクターをタイヤ径方向に貫通する複数の溝部を前記延長領域に有すると共に、前記複数の溝部によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部を有する空気入りタイヤ。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2a>
本件特許発明1においては、「前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係を有し」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2b>
本件特許発明1においては、「タイヤ接地端における前記ラグ溝の溝開口部の周方向幅W1と、前記延長領域における前記プロテクターの前記溝部の溝開口部の周方向幅W2’とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.30≦W2’/W1≦0.60の関係を有し」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2c>
本件特許発明1においては、「タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド踏面のプロファイルの延長線とサイドウォール部のプロファイルの延長線との交点Qをとるときに、前記プロテクターの最大高さH1と、交点Qからタイヤ最大幅位置までのタイヤ幅方向の距離D1とが、0.1≦H1/D1≦0.8の関係を有し、前記陸部が、タイヤ径方向外側に向かって周方向幅を狭め、且つ、前記陸部のタイヤ径方向外側のエッジ長W3_outとタイヤ径方向内側のエッジ長W3_inとが、0.6≦W3_out/W3_in≦0.8の関係を有する」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み相違点2cから検討する。
甲8には、甲8発明において、相違点2cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
また、他の証拠にも、甲8発明において、相違点2cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
さらに、相違点2cに係る本件特許発明1の発明特定事項が本件特許の出願前に当業者に周知であったとはいえないし、設計的事項であったともいえない。
したがって、甲8発明において、相違点2cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、「タイヤの耐カット性能を維持しつつプロテクターの損傷を抑制できる空気入りタイヤを提供する」という甲8発明及び他の証拠に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点2a及び2bについて検討するまでもなく、本件特許発明1は甲8発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明5、8、10ないし14について
本件特許発明5、8、10ないし14は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲8発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)甲12を主引用文献とする進歩性について
ア 甲12に記載された事項及び甲12発明
(ア)甲12に記載された事項
甲12には、「サイドウォール突起を有する空気入りタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、原文の記載の摘記は省略し、特許異議申立人が提出した翻訳文の記載を摘記する。

・「[0002]
1.技術分野
[0003]
本発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、オフロード用とオンロード用の両方の空気入りタイヤに関する。この空気入りタイヤは、破片がサイドウォールから離れるように偏向してサイドウォールへの侵入を防ぐとともに、オフロードで使用されたときに柔らかいまたは圧縮された土壌条件に対して静止摩擦を増大するサイドウォール突起を有する。」

・「[0008]
したがって、オンロードおよびオフロードの両方で使用するためにサイドウォール突起を含むアグレッシブなトレッドパターンを有し、柔らかいまたは圧縮された土壌条件において静止摩擦を増大させる空気入りタイヤが必要とされている。」

・「[0009]
本発明は、通常の地面と係合する、円周方向に延在するリブとトレッドラグが、所望の路上乗り心地と摩耗特性を提供するために様々なパターンとすることができる、アグレッシブなトレッドパターンを有する空気入りタイヤを提供する。」

・「[0032]
図1は、一般に1で示されているサイドウォール突起の独特の配置を有する改良された空気入りタイヤの第1の実施形態を示し、図2?図6にさらに詳細に示されている。タイヤ1は、一対のビード領域3を終端とし、タイヤを車両リム4上に固着するとともに、全体を5で示す円周方向に延在する路面係合トレッドパターンを終端とする一対のサイドウォール2を含む。図2を参照すると、そこに示す特定のトレッドパターン5は、タイヤの円周方向に延在し、複数の不規則に間隔を空けたトレッドラグ8および9によって形成される一対の中間リブ6および7を含む。トレッドパターン5は、さらに、タイヤの円周方向に延在し、複数の間隔を開けて位置するトレッドラグ111によってそれぞれ形成される一対の類似したショルダーリブ10を含む。この路面係合トレッドパターンは、本発明の概念と原理的特徴に影響することなく、実施形態1に示すものとは異なっていてもよく、またオッロード走行条件を提供するように設計することができる。
[0033]
本発明によれば、複数のラグと突起がサイドウォールの軸線方向に最外面上に形成されており、特に図4?図10に示すようにそこから外側に向けて延在する。これらのサイドウォールラグは、サイドウォールに沿って円周方向に間隔を空けたそれぞれのラグの反復群を含む。各群は、好ましくは、以後それぞれ第1、第2、および第3のラグとして設計された、13、14、および15で示す少なくとも3つのラグからなる。しかし、群ごとの2つのラグは、ある適用方法で使用することもできる。
[0034]
第1のラグ13はそれぞれ、径方向に並び、トレッドパターン5の内側トレッド面18と概ね同じ高さに位置する上面17を含み、そこからは、各種の路面係合トレッドラグ8、9、および11が外方に延在している。上面17は、径方向外側に向けて延在し、下方向に先細となる下側端面21を終端とするタイヤのサイドウォールに沿って径方向に延在する概ね平坦な外面20を終端とする。また第1のラグ13も概ねZ形状の側面22と、角度のついた側面23を含み、これらは、外面20とともに複数の比較的鋭い角部を形成する。また、上面17も、外面20とともに鋭い角部24を形成する。
[0035]
第2のラグ14は、それぞれ、隣接するショルダーラグ11の概ね平坦な接地上面31と径方向に並び、またそこから外側に延在する概ね平坦な上面30を有する。ラグ14は、さらに、下側端面34を終端とするサイドウォール2に沿って下方向に延在する概ね平坦な外面33を含む。ラグ14は、外面33からサイドウォール2まで延在する一対の比較的まっすぐな側面35を有する。上面30と外面33は、側面35を有する面33のような鋭い角部36を形成する。
[0036]
第3のラグ15は、第2のラグ14と径方向に並び、ラグ13とビート領域3との間に位置する。ラグ15はそれぞれ、上面41を終端とする平坦な外面40と、底面42と、一対の不規則な形状の側面43を有し、これらはすべて上面41からサイドウォール2まで延在する。ラグ15の上面41は、ラグ14の底面34より下方に短距離だけ間隔を開けており、それらの間に溝または隙間46を形成している。ここでも、上面、底面、および側面と外面40との接合部は図8に示すような圧縮された表面に食い込むための複数の鋭い角部を形成する。図4に示すように第1のラグ13は、それぞれ隣接する一対の径方向に並ぶラグ14および15の中間に位置し、それらの間に概ね不規則な形状の溝48および49を形成する。これらの不規則な形状の溝およびサイドウォール2に対して異なる高さの外面20、33および40 により本発明の所望の破片の偏向や土壌の静止摩擦が得られる。」

・「[0039]
第3の空気入りタイヤの実施形態は、全体を75で示しており、図13に示す。実施形態75は、ラグ群毎に76、77、および78として指定した3つのラグを含み、ここでも、実施形態1および50それぞれのラグ13、14、15、58、59、および60のそれとは異なる幾何学的構成または形状を有している。しかし、図5および図6に示すように、ラグ76?78は互いに同じ断面形状および関係を有するとともに、上述したように、隣接する接地ショルダーリブラグの上面と内側トレッド面18とも同じ関係を有する。図13に示すように、ラグ要素77の上面80は、ショルダーリブ84の地面係合面81と並ぶ。同様に、ラグ76、77、および78の平坦な外面85、86、および87は、それぞれ、図5および図6に示すラグ13?15および76から78の平坦な外面がそうであるように、同じ概ね平面上に位置する。」

・「



・「



・「



・「



(イ)甲12発明
甲12に記載された事項を整理すると、甲12には次の発明(以下、「甲12発明」という。)が記載されていると認める。

「タイヤ幅方向に延在して角部36に開口する複数の内側トレッド面18と、
角部36からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール2から突出してタイヤ周方向に延在するサイドウォールラグ13ないし15とを備える空気入りタイヤ1であって、
前記内側トレッド面18を角部36からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記サイドウォールラグ13ないし15が、溝48及び49を前記延長領域に有する空気入りタイヤ1。」

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲12発明を対比する。
甲12発明における「角部36」は、本件特許発明1における「タイヤ接地端」に相当し、以下同様に、「内側トレッド面18」は「ラグ溝」に、「サイドウォール2」は「サイドウォール部」に、「サイドウォールラグ13ないし15」は「プロテクター」に、「空気入りタイヤ1」は「空気入りタイヤ」に、「溝48及び49」は「溝部」に、それぞれ相当する。
また、甲12発明における「溝48及び49」は「サイドウォールラグ13ないし15」をタイヤ径方向に貫通する複数の溝部であることは明らかであり、甲12発明における「サイドウォールラグ13ないし15」が該「溝48及び49」によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部に相当する部分を有することも明らかである。

したがって、両者は次の点で一致する。
「タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端に開口する複数のラグ溝と、
タイヤ接地端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール部から突出してタイヤ周方向に延在するプロテクターとを備える空気入りタイヤであって、
前記ラグ溝をタイヤ接地端からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記プロテクターが、前記プロテクターをタイヤ径方向に貫通する複数の溝部を前記延長領域に有すると共に、前記複数の溝部によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部を有する空気入りタイヤ。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点3a>
本件特許発明1においては、「前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係を有し」と特定されているのに対し、甲12発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3b>
本件特許発明1においては、「タイヤ接地端における前記ラグ溝の溝開口部の周方向幅W1と、前記延長領域における前記プロテクターの前記溝部の溝開口部の周方向幅W2’とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.30≦W2’/W1≦0.60の関係を有し」と特定されているのに対し、甲12発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3c>
本件特許発明1においては、「タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド踏面のプロファイルの延長線とサイドウォール部のプロファイルの延長線との交点Qをとるときに、前記プロテクターの最大高さH1と、交点Qからタイヤ最大幅位置までのタイヤ幅方向の距離D1とが、0.1≦H1/D1≦0.8の関係を有し、前記陸部が、タイヤ径方向外側に向かって周方向幅を狭め、且つ、前記陸部のタイヤ径方向外側のエッジ長W3_outとタイヤ径方向内側のエッジ長W3_inとが、0.6≦W3_out/W3_in≦0.8の関係を有する」と特定されているのに対し、甲12発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み相違点3cから検討する。
甲12には、甲12発明において、相違点3cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
また、他の証拠にも、甲12発明において、相違点3cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
さらに、相違点3cに係る本件特許発明1の発明特定事項が本件特許の出願前に当業者に周知であったとはいえないし、設計的事項であったともいえない。
したがって、甲12発明において、相違点3cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、「タイヤの耐カット性能を維持しつつプロテクターの損傷を抑制できる空気入りタイヤを提供する」という甲12発明及び他の証拠に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点3a及び3bについて検討するまでもなく、本件特許発明1は甲12発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明5、8、10ないし14について
本件特許発明5、8、10ないし14は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲12発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)甲14を主引用文献とする進歩性について
ア 甲14に記載された事項及び甲14発明
(ア)甲14に記載された事項
甲14には、「軟弱荒れ地の走行用空気入りタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「この発明は、土木建築用ないしは森林伐採、運搬用車両など、路表の整備が全くなされていないか甚しく粗略な、いわゆる荒れ地を主走路とするような用途に供される、荒れ地走行用空気入りタイヤに関し、とくに泥土その他の軟弱地域の地表下に鋭い岩石塊あるいは切株のようなタイヤにカツト傷を与える障害物が埋まつて散在しているような現場に適合して充分に高いトラクシヨン性能ならびに横すべり抵抗性とを有し、しかも耐カツト性にもすぐれたこの種のタイヤを提案しようとするものである。」(第2ページ左上欄第6ないし16行)

・「トレツド1にはタイヤの周方向に等間隔に、タイヤの幅方向にジグザグ形をなすラグ溝2を配設し、このラグ溝2の両端にはこれを連続延長してタイヤの子午線方向にのびる分断溝3を、タイヤのトレツド端すなわちシヨルダ4を越えてハンプ5を横断するように配設する。
ハンプ5は、この発明に従う第2図、第3図のタイヤでは、シヨルダ4からタイヤの半径方向に切り立つた肩側壁6のつけ根で、サイドウオール8よりもタイヤの回転軸方向外方にさらに突出する形で突起壁7によつて構成し、第2図の例でこの突起壁7は横向き三角山形、また第3図の側では第2図の三角山形の頂稜からタイヤの半径方向内方にのびる環状平坦面を有する台形をなす点で実施の態様が異なるほかは、すべて同様である。
このハンプ5を横切る分断溝3は、突起壁7の断面輪郭B?Pの間にわたつてそれと平行な溝底を、ラグ溝2がトレツドセンタからシヨルダにかけてカーカスラインに沿つてのびる溝底と滑かに連ね、分断溝3の突起壁7を横切つた開口端でその溝底はタイヤのサイドウオール8に対してわずかな段差9をつけるように反曲させてある。
ラグ溝2は、この例で550mmにわたるトレツド幅にわたつて、シヨルダ4からタイヤの幅方向に102mmをへだてる変曲点に向けタイヤの幅方向に対する傾きα_(1)が30゜、また両変曲点間でも同様に傾きα_(2)が30゜のジグザグ状を呈するトレツドセンタ上の点に関し点対称形とし、これによつてタイヤの周方向にラグ10を区分する。
ラグ10、ラグ溝2の寸法は、タイヤの周方向に測つて、クラウンセンタではC_(1)=137mm,C_(2)=68mm、またシヨルダ4においてS_(1)=109mm,S_(2)=78mmの各幅とし、ラグ溝2は、トレツドセンタのそばで最も浅い16mmからシヨルダ4の近くで最も深い96mmの溝深さまで両側に向け深さを漸増し、この例でクラウンセンタで溝底をわずか上げ底として左右の溝底を分断した。」(第5ページ左下欄末行ないし第6ページ左上欄第15行)

・「ここにタイヤの断面高さはH=501mm、タイヤ幅はSW=590mm、そして突起壁7をはさむ幅はSW_(1)=630mmであり、そして外凸面と内凹面との交線つまり突起壁7のP点を通る円の半径は、R=661.5mmである。
突起壁7を横切る分断溝3は、ラグ溝2の両端でタイヤの子午線方向に沿つてのびるものとし、これによりタイヤの周方向に区分された突起壁7のタイヤ周方向にわたる幅はW_(1)=100mm、また分断溝3の溝幅はW_(2)=66mmとした。」(第6ページ右上欄第14行ないし左下欄第3行)

・「



(イ)甲14発明
甲14に記載された事項を整理すると、甲14には次の発明(以下、「甲14発明」という。)が記載されていると認める。

「タイヤ幅方向に延在してシヨルダ4に開口する複数のラグ溝2と、
シヨルダ4からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウオール8から突出してタイヤ周方向に延在するハンプ5とを備える軟弱荒れ地の走行用空気入りタイヤであって、
前記ラグ溝2をシヨルダ4からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記ハンプ5が、分断溝3を前記延長領域に有する軟弱荒れ地の走行用空気入りタイヤ。」

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲14発明を対比する。
甲14発明における「シヨルダ4」は、本件特許発明1における「タイヤ接地端」に相当し、以下同様に、「ラグ溝2」は「ラグ溝」に、「サイドウオール8」は「サイドウォール部」に、「ハンプ5」は「プロテクター」に、「軟弱荒れ地の走行用空気入りタイヤ」は「空気入りタイヤ」に、「分断溝3」は「溝部」に、それぞれ相当する。
また、甲14発明における「分断溝3」は「ハンプ5」をタイヤ径方向に貫通する複数の溝部であることは明らかであり、甲14発明における「ハンプ5」が該「分断溝3」によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部に相当する部分を有することも明らかである。

したがって、両者は次の点で一致する。
「タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端に開口する複数のラグ溝と、
タイヤ接地端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール部から突出してタイヤ周方向に延在するプロテクターとを備える空気入りタイヤであって、
前記ラグ溝をタイヤ接地端からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記プロテクターが、前記プロテクターをタイヤ径方向に貫通する複数の溝部を前記延長領域に有すると共に、前記複数の溝部によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部を有する空気入りタイヤ。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4a>
本件特許発明1においては、「前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係を有し」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点4b>
本件特許発明1においては、「タイヤ接地端における前記ラグ溝の溝開口部の周方向幅W1と、前記延長領域における前記プロテクターの前記溝部の溝開口部の周方向幅W2’とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.30≦W2’/W1≦0.60の関係を有し」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点4c>
本件特許発明1においては、「タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド踏面のプロファイルの延長線とサイドウォール部のプロファイルの延長線との交点Qをとるときに、前記プロテクターの最大高さH1と、交点Qからタイヤ最大幅位置までのタイヤ幅方向の距離D1とが、0.1≦H1/D1≦0.8の関係を有し、前記陸部が、タイヤ径方向外側に向かって周方向幅を狭め、且つ、前記陸部のタイヤ径方向外側のエッジ長W3_outとタイヤ径方向内側のエッジ長W3_inとが、0.6≦W3_out/W3_in≦0.8の関係を有する」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み相違点4cから検討する。
甲14には、甲14発明において、相違点4cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
また、他の証拠にも、甲14発明において、相違点4cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
さらに、相違点4cに係る本件特許発明1の発明特定事項が本件特許の出願前に当業者に周知であったとはいえないし、設計的事項であったともいえない。
したがって、甲14発明において、相違点4cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、「タイヤの耐カット性能を維持しつつプロテクターの損傷を抑制できる空気入りタイヤを提供する」という甲14発明及び他の証拠に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点4a及び4bについて検討するまでもなく、本件特許発明1は甲14発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明5、8、10ないし14について
本件特許発明5、8、10ないし14は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲14発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)取消理由4についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1、5、8及び10ないし14に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1、5、8及び10ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではない。

5 令和1年12月9日にされた訂正請求による訂正により新たに生じた取消理由5(明確性要件)について
本件訂正により、特許請求の範囲の請求項4及び7は削除され、また、本件特許発明5及び10ないし14は、請求項2又は3を引用しないものとなった。
そして、請求項5及び10ないし14の記載は、上記第3の【請求項5】及び【請求項10】ないし【請求項14】のとおりであり、それ自体不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明及び図面の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明5及び10ないし14は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
よって、本件特許の請求項5及び10ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではない。

第6 取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由5(甲22を主引用文献とする進歩性)並びに申立理由6(明確性要件)のうち請求項1の記載に起因する記載不備と請求項7を引用した場合の請求項8及び9の記載に起因する記載不備による理由である。
そこで、検討する。

1 申立理由5(甲22を主引用文献とする進歩性)について
(1)甲22に記載された事項及び甲22発明
ア 甲22に記載された事項
甲22には、「空気入りタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「[0002] 一般に、空気入りタイヤにおけるタイヤ温度の上昇は、材料物性の変化などの経時的変化を促進したり、高速走行時にはトレッド部の破損などの原因になり、耐久性の観点から好ましくないとされている。特に、重荷重での使用となるオフザロードラジアルタイヤ(ORR)や、トラック・バスラジアルタイヤ(TBR)、パンク走行時(内圧0kPa走行時)のランフラットタイヤにおいては、耐久性を向上させるために、タイヤ温度を低減させることが大きな課題となっている。」

・「[0048] 図1及び図2に示すように、空気入りタイヤ1は、路面と接触するトレッド部2と、タイヤ両側のタイヤサイド部3と、それぞれのタイヤサイド部3の開口縁に沿って設けられたビード部4とを備えている。」

・「[0053] 各タイヤサイド部3のタイヤ表面である外側面3aには、内周側から外周側に向かって延在される乱流発生用突起10がタイヤ周方向に等間隔で設けられている。この乱流発生用突起10のタイヤ径方向rに対して傾く角度である傾斜角θは、図3に示すように、-70°≦θ≦70°の範囲に設定されている。特に、傾斜角θは、-30°≦θ≦30°の範囲に設定されることが好ましい。」

・「[0056] 図4及び図5に示すように、乱流発生用突起10は、延在方向に対する直交方向Aで切断した断面形状(以下、突起幅断面形状)が左右対称形である。この乱流発生用突起10は、外側面3aからトレッド幅方向外側に向けて突出し、かつ、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に向けて連続して(棒状に)延びている。」

・「[0078] また、乱流発生用突起10の下辺幅wが0.5mm?5mmの範囲に設定されることによって、乱流発生用突起内10の蓄熱量が多くなり過ぎることを極力防止しつつ、放熱特性の向上を図ることができる。」

・「[0092](変形例3)
次に、変形例3に係る乱流発生用突起について、図9を参照しながら説明する。図9は、変形例3に係る乱流発生用突起10Cの断面を示す側面図である。
[0093] 図9に示すように、乱流発生用突起10Cの突起幅断面形状は、左右対称形である。この乱流発生用突起10Cの突起幅断面形状は、段差を有する段付き形状(クランク状)である。すなわち、前壁面10a及び後壁面10bは、段差を有する段差面が施されている。また、前壁角度θ1及び後壁角度θ2は、共に90°に設定されている。」

・「[0100](変形例5)
まず、変形例5に係る乱流発生用突起について、図11を参照しながら説明する。図11は、変形例5に係る乱流発生用突起10Eの断面を示す側面図である。
[0101] 図11に示すように、乱流発生用突起10Eの突起幅断面形状は、左右非対称形である。この場合であっても、乱流発生用突起10Eは、エッジ部10f及びエッジ部10gを有している(図1及び図3参照)。
[0102] 乱流発生用突起10Aの突起幅断面形状は、台形である。また、前壁角度θ1は、90°に設定されている。また、後壁角度θ2は、90°を超えた角度に設定されている。」

・「[0109](変形例7)
次に、変形例7に係る乱流発生用突起について、図13を参照しながら説明する。図13は、変形例7に係る乱流発生用突起10Gの断面を示す側面図である。
[0110] 図13に示すように、乱流発生用突起10Gの突起幅断面形状は、左右非対称形である。この乱流発生用突起10Gの突起幅断面形状は、大略三角形である。」

・「[0115](変形例8)
次に、変形例8に係る乱流発生用突起について、図14を参照しながら説明する。図14は、変形例8に係る乱流発生用突起10Hの断面を示す側面図である。
[0116] 図14に示すように、乱流発生用突起10Hの突起幅断面形状は、左右非対称形である。この乱流発生用突起10Hの突起幅断面形状は、段差を有する段付き形状(クランク状)である。すなわち、後壁面10bは、段差を有する段差面が施されている。なお、前壁角度θ1及び後壁角度θ2は、共に90°に設定されている。」

・「[0122][第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る空気入りタイヤの構成について、図16を参照しながら説明する。図16は、第2の実施の形態に係る空気入りタイヤを示す一部分解斜視図である。なお、上述した第1の実施の形態に係る空気入りタイヤ1と同一部分(同一構成)には同一の符号を付して相違する部分を主として説明する。
[0123] 図16に示すように、空気入りタイヤ1は、トレッド部2にリブ2Aが形成されるトラック・バス用ラジアルタイヤ(TBR)である。この空気入りタイヤ1は、第1の実施の形態で説明した乗用車用ラジアルタイヤ(PCR)よりも、ベルト層9の枚数が多く、タイヤ半径が大きい。
[0124] 空気入りタイヤ1に形成される乱流発生用突起10は、ビード部4の表面を放熱させたい場合には、タイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向内側(すなわち、ビード部4側)に配置されてもよく、ベルト層9の端部側を放熱させたい場合には、タイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向外側(すなわち、トレッド部2側)に配置されてもよい。
[0125] ここで、空気入りタイヤ1は、第1の実施の形態で説明した乗用車用ラジアルタイヤ(PCR)や、本実施の形態で説明したトラック・バス用ラジアルタイヤ(TBR)に限定されるものではなく、例えば、図17に示すように、トレッド部2にラグ2Bのみが形成される建設車両用ラジアルタイヤ(クレーダーやショベルローダー等)や、図18に示すように、トレッド部2にリブ2A及びラグ2Bが形成される建設車両用ラジアルタイヤ(ダンプトラックやクレーン等)などの重荷重用タイヤであってもよく、必ずしもラジアルタイヤである必要はなく、バイアスタイヤであっても勿論よい。」

・「[図17]



・「[図18]



イ 甲22発明
甲22に記載された事項を、特に図17及び18に記載されたタイヤに関して整理すると、甲22には次の発明(以下、「甲22発明」という。)が記載されていると認める。

「タイヤ幅方向に延在してタイヤ設置端に開口する複数のラグ2Bと、
タイヤ設置端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にタイヤサイド部3から突出してタイヤ周方向に延在する乱流発生用突起10とを備える空気入りタイヤ1であって、
前記ラグ2Bをタイヤ設置端からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、前記乱流発生用突起10が、外表面3aを前記延長領域に有し、
複数の前記外表面3aが、前記乱流発生用突起10をタイヤ径方向に貫通することにより、前記乱流発生用突起10がタイヤ周方向に配列された複数の乱流発生用突起10の部分に分断されている空気入りタイヤ1。」

(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲22発明を対比する。
甲22発明における「ラグ2B」は本件特許発明1における「ラグ溝」に相当し、以下同様に、「タイヤサイド部3」は「サイドウォール部」に、「乱流発生用突起10」は「プロテクター」に、「空気入りタイヤ1」は「空気入りタイヤ」に、「乱流発生用突起10をタイヤ径方向に貫通する」「外表面3a」は「プロテクターをタイヤ径方向に貫通する」「溝部」に、「分断されている」「複数の乱流発生用突起10の部分」は「複数の陸部」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
「タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端に開口する複数のラグ溝と、
タイヤ接地端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール部から突出してタイヤ周方向に延在するプロテクターとを備える空気入りタイヤであって、
前記ラグ溝をタイヤ接地端からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記プロテクターが、前記プロテクターをタイヤ径方向に貫通する複数の溝部を前記延長領域に有すると共に、前記複数の溝部によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部を有する空気入りタイヤ。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点5a>
本件特許発明1においては、「前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係を有し」と特定されているのに対し、甲22発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点5b>
本件特許発明1においては、「タイヤ接地端における前記ラグ溝の溝開口部の周方向幅W1と、前記延長領域における前記プロテクターの前記溝部の溝開口部の周方向幅W2’とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.30≦W2’/W1≦0.60の関係を有し」と特定されているのに対し、甲22発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点5c>
本件特許発明1においては、「タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド踏面のプロファイルの延長線とサイドウォール部のプロファイルの延長線との交点Qをとるときに、前記プロテクターの最大高さH1と、交点Qからタイヤ最大幅位置までのタイヤ幅方向の距離D1とが、0.1≦H1/D1≦0.8の関係を有し、前記陸部が、タイヤ径方向外側に向かって周方向幅を狭め、且つ、前記陸部のタイヤ径方向外側のエッジ長W3_outとタイヤ径方向内側のエッジ長W3_inとが、0.6≦W3_out/W3_in≦0.8の関係を有する」と特定されているのに対し、甲22発明においては、そのようには特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑み相違点5cから検討する。
甲22には、甲22発明において、相違点5cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
また、他の証拠にも、甲22発明において、相違点5cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
さらに、相違点5cに係る本件特許発明1の発明特定事項が本件特許の出願前に当業者に周知であったとはいえないし、設計的事項であったともいえない。
したがって、甲22発明において、相違点5cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、「タイヤの耐カット性能を維持しつつプロテクターの損傷を抑制できる空気入りタイヤを提供する」という甲22発明及び他の証拠に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点5a及び5bについて検討するまでもなく、本件特許発明1は甲22発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件特許発明5、12及び14について
本件特許発明5、12及び14は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲22発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)申立理由5についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1、5、12及び14に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1、5、12及び14に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではない。

2 申立理由6(明確性要件)のうち請求項1の記載に起因する記載不備による理由について
該理由は、訂正前の請求項1の「前記プロテクターからカーカス最大幅位置までの領域」という記載では、「プロテクター」のどの位置からカーカス最大幅位置までの領域であるのかが明確でなく、その結果、発明の範囲が不明確である旨の理由であるところ、本件訂正により、上記記載が「前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域」と訂正され、「プロテクター」の最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域であることが明確となった。
そして、請求項1の記載は、上記第3の【請求項1】のとおりであり、それ自体不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明及び図面の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明1は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明5、8及び10ないし14についても同様である。
よって、本件特許の請求項1,5、8及び10ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではない。

3 申立理由6(明確性要件)のうち請求項7を引用した場合の請求項8及び9の記載に起因する記載不備による理由について
該理由は、請求項7を引用した場合の請求項8及び9の記載に起因する記載不備によるものであるところ、本件訂正により請求項7及び9は削除された。
そして、請求項8の記載は、上記第3の【請求項8】のとおりであり、それ自体不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明及び図面の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明8は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
請求項8を直接又は間接的に引用する本件特許発明10ないし14についても同様である。
よって、本件特許の請求項8及び10ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではない。

第7 結語
上記第5及び6のとおり、本件特許の請求項1、5、8及び10ないし14に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、5、8及び10ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項2ないし4、6、7及び9に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項2ないし4、6、7及び9に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向に延在してタイヤ接地端に開口する複数のラグ溝と、
タイヤ接地端からカーカス最大幅位置までの領域に配置されると共にサイドウォール部から突出してタイヤ周方向に延在するプロテクターとを備える空気入りタイヤであって、
前記ラグ溝をタイヤ接地端からタイヤ径方向に延長した領域を延長領域と呼ぶときに、
前記プロテクターが、前記プロテクターをタイヤ径方向に貫通する複数の溝部を前記延長領域に有すると共に、前記複数の溝部によりタイヤ周方向に分断された複数の陸部を有し、
前記プロテクターの最大高さ位置からタイヤ接地端までの領域における最小ゴムゲージGa1と、前記プロテクターの最大高さ位置からカーカス最大幅位置までの領域における最小ゴムゲージGa2とが、1.5≦Ga1/Ga2≦6.0の関係を有し、
タイヤ接地端における前記ラグ溝の溝開口部の周方向幅W1と、前記延長領域における前記プロテクターの前記溝部の溝開口部の周方向幅W2’とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.30≦W2’/W1≦0.60の関係を有し、
タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド踏面のプロファイルの延長線とサイドウォール部のプロファイルの延長線との交点Qをとるときに、前記プロテクターの最大高さH1と、交点Qからタイヤ最大幅位置までのタイヤ幅方向の距離D1とが、0.1≦H1/D1≦0.8の関係を有し、
前記陸部が、タイヤ径方向外側に向かって周方向幅を狭め、且つ、
前記陸部のタイヤ径方向外側のエッジ長W3_outとタイヤ径方向内側のエッジ長W3_inとが、0.6≦W3_out/W3_in≦0.8の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
最大高さH1の1/2を境界とする前記プロテクターの頂部側の体積Vtと基部側の体積Vbとが、0.6≦Vt/Vb≦0.9の関係を有する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
前記プロテクターの頂部における前記溝部の溝開口部の周方向幅W2と、前記プロテクターの最大高さH1とが、前記溝部のタイヤ径方向への延在領域の全域にて0.7≦W2/H1≦4.0の関係を有する請求項1および5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
前記プロテクターの前記溝部の最大溝深さH2と、前記プロテクターの最大高さH1とが、0.3≦H2/H1≦0.8の関係を有する請求項1、5および8のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記プロテクターの前記溝部の溝底の曲率半径Rbが、2.0[mm]≦Rbの範囲にある請求項1、5、8および10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記プロテクターのエッジ部の曲率半径Reが、2.0[mm]≦Reの範囲にある請求項1、5、8、10および11のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記プロテクターの100[%]伸張時の引張強さが1.0[MPa]以上4.0[MPa]以下の範囲にあり、破断伸びが300[%]以上700[%]以下の範囲にある請求項1、5、8および10?12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
建設車両用タイヤに適用される請求項1、5、8および10?13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【図面】






















 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-02-12 
出願番号 特願2014-200058(P2014-200058)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B60C)
P 1 651・ 537- YAA (B60C)
P 1 651・ 536- YAA (B60C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩本 昌大  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 植前 充司
加藤 友也
登録日 2018-12-14 
登録番号 特許第6446957号(P6446957)
権利者 横浜ゴム株式会社
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 高村 順  
代理人 高村 順  
代理人 酒井 宏明  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 酒井 宏明  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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