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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1373407 |
審判番号 | 不服2020-9171 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-01 |
確定日 | 2021-04-22 |
事件の表示 | 特願2017-186987号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月18日出願公開、特開2019- 58515号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成29年9月27日の出願であって、令和1年8月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月1日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年4月2日付け(謄本送達日:同年同月7日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、令和2年7月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年7月1日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、令和1年11月1日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1及び2のうち、請求項1に、 「始動条件の成立に基づき識別情報を変動表示させる変動表示ゲームを表示部に表示可能な遊技制御手段を備え、前記変動表示ゲームの停止結果が特別結果となる場合に、遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機において、 当該遊技機への電源投入の際に、前記変動表示ゲームの抽選に用いる確率値が割り当てられた確率設定値を、複数種類の前記確率設定値から選択可能な設定変更手段を備え、 当該遊技機の前面側に、少なくとも前記確率設定値のうちの最低の確率設定値における前記確率値と、最高の確率設定値における前記確率値と、を表示し、 前記遊技制御手段は、 前記確率設定値の選択が可能となる設定可変状態において、前記表示部を消灯状態とすることを特徴とする遊技機。」 とあったものを、 「始動条件の成立に基づき識別情報を変動表示させる変動表示ゲームを表示部に表示可能な遊技制御手段を備え、前記変動表示ゲームの停止結果が特別結果となる場合に、遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機において、 当該遊技機への電源投入の際に、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となるか否かの抽選に用いる確率値が割り当てられた確率設定値を、3種類以上の前記確率設定値から選択可能な設定変更手段を備え、 前記確率設定値の数値が大きくなるにつれて、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となる確率が高くなるように設定し、 当該遊技機の前面側に表示する前記確率値を、前記確率設定値のうち、最も数値の小さい確率設定値における前記確率値と最も数値の大きい確率設定値における前記確率値のみとし、 前記遊技制御手段は、 前記確率設定値の選択が可能となる設定可変状態において、前記表示部を消灯状態とすることを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(なお、下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。 2 補正の適否について (1)補正の目的 ア 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記変動表示ゲームの抽選に用いる確率値」を「前記変動表示ゲームの結果が特別結果となるか否かの抽選に用いる確率値」と限定するものである。 イ 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数種類の前記確率設定値」を「3種類以上の前記確率設定値」と限定するものである。 ウ 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「確率設定値」に関し、「前記確率設定値の数値が大きくなるにつれて、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となる確率が高くなるように設定し、」と限定するものである。 エ 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「当該遊技機の前面側に」「表示する」「確率値」に関して、「当該遊技機の前面側に、少なくとも前記確率設定値のうちの最低の確率設定値における前記確率値と、最高の確率設定値における前記確率値と、を表示し、」を「当該遊技機の前面側に表示する前記確率値を、前記確率設定値のうち、最も数値の小さい確率設定値における前記確率値と最も数値の大きい確率設定値における前記確率値のみとし、」と限定するものである。 オ 上記アないしエからみて、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)新規事項 本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における【0079】、【0082】、【0370】、【0472】、【0474】、図24及び図34G等の記載の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下、検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである(なお、記号AないしFは、分説するため合議体が付した。記号A等が付された事項を以下「特定事項A」等という。)。 「A 始動条件の成立に基づき識別情報を変動表示させる変動表示ゲームを表示部に表示可能な遊技制御手段を備え、前記変動表示ゲームの停止結果が特別結果となる場合に、遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機において、 B 当該遊技機への電源投入の際に、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となるか否かの抽選に用いる確率値が割り当てられた確率設定値を、3種類以上の前記確率設定値から選択可能な設定変更手段を備え、 C 前記確率設定値の数値が大きくなるにつれて、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となる確率が高くなるように設定し、 D 当該遊技機の前面側に表示する前記確率値を、前記確率設定値のうち、最も数値の小さい確率設定値における前記確率値と最も数値の大きい確率設定値における前記確率値のみとし、 E 前記遊技制御手段は、 前記確率設定値の選択が可能となる設定可変状態において、前記表示部を消灯状態とする F ことを特徴とする遊技機。」 (2)引用例 原査定の拒絶理由において引用された、本願の出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がなされた特願2017-161147号(特開2019-37445号)(出願日:平成29年8月24日、公開日:平成31年3月14日、出願人:株式会社大一商会、発明者:市原高明、坂根渉、吉田陽介)(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 「【発明を実施するための形態】 【0009】 本発明の一実施形態であるパチンコ機1について、図面を参照して詳細に説明する。 ・・・略・・・ 【0051】 [2-5.機能表示ユニット] 次に、機能表示ユニット1400について、図10乃至図12を参照して説明する。機能表示ユニット1400は、図示するように、遊技領域5aの外側で前構成部材1000の左下隅に取付けられている。この機能表示ユニット1400は、遊技盤5をパチンコ機1に組立てた状態で、扉枠3の貫通口111を通して前方(遊技者側)から視認することができる(図1を参照)。この機能表示ユニット1400は、主制御基板1310からの制御信号に基づき複数のLEDを用いて、遊技状態(遊技状況)や、普通抽選結果や特別抽選結果等を表示するものである。 【0052】 機能表示ユニット1400は、詳細な図示は省略するが、遊技状態を表示する一つのLEDからなる状態表示器と、ゲート部2003に対する遊技球の通過により抽選される普通抽選結果に基づいて二つのLEDを点滅制御することにより普通図柄を変動表示した後にこれら二つのLEDを普通抽選結果に応じた点灯態様で表示させる普通図柄表示器と、ゲート部2003に対する遊技球の通過に係る普通図柄の変動表示のうち未だ変動表示の開始条件が成立していない変動表示の個数である保留数を表示する二つのLEDからなる普通保留表示器と、第一始動口2002への遊技球の受入れ(始動入賞の発生)により抽選された第一特別抽選結果に基づいて八つのLEDを点滅制御することにより第一特別図柄を変動表示した後にこれら八つのLEDを第一特別抽選結果に応じた点灯態様で表示させる第一特別図柄表示器と、第一始動口2002への遊技球の受入れに係る第一特別図柄の変動表示のうち未だ変動表示の開始条件が成立していない変動表示の個数である保留数を表示する二つのLEDからなる第一特別保留数表示器と、第二始動口2004への遊技球の受入れ(始動入賞の発生)により抽選された第二特別抽選結果に基づいて八つのLEDを点滅制御することにより第二特別図柄を変動表示した後にこれら八つのLEDを第二特別抽選結果に応じた点灯態様で表示させる第二特別図柄表示器と、第二始動口2004への遊技球の受入れに係る第二特別図柄の変動表示のうち未だ変動表示の開始条件が成立していない変動表示の個数である保留数を表示する二つのLEDからなる第二特別保留数表示器と、第一特別抽選結果又は第二特別抽選結果が「大当り」等の時に、第一大入賞口2005や第二大入賞口2006の開閉パターンの繰返し回数(ラウンド数)を表示する二つのLEDからなるラウンド表示器と、を主に備えている。なお、機能表示ユニット1400の一部の表示器(例えば、第一特別図柄表示器)を7セグメントLEDで構成してもよい。 【0053】 この機能表示ユニット1400では、備えられているLEDを、適宜、点灯、消灯、及び、点滅、等させることにより、保留数や図柄等を表示することができる。 ・・・略・・・ 【0072】 主制御MPU1311は、これらの検出信号に基づいて、主制御I/Oポート1314から主制御ソレノイド駆動回路に制御信号を出力することにより、始動口ソレノイド2550、第一アタッカソレノイド2113、第二上アタッカソレノイド2553、及び第二下アタッカソレノイド2556に駆動信号を出力したり、主制御I/Oポート1314から機能表示ユニット1400の第一特別図柄表示器、第二特別図柄表示器、第一特別図柄記憶表示器、第二特別図柄記憶表示器、普通図柄表示器、普通図柄記憶表示器、遊技状態表示器、ラウンド表示器、等に駆動信号を出力したりする。」 イ 「【0202】 第一始動口2002及び第二始動口2004への遊技球の受入れにより抽選された特別抽選結果(第一特別抽選結果及び第二特別抽選結果)が、有利遊技状態を発生させる特別抽選結果の場合、所定の変動時間の経過後に特別図柄表示器(第一特別図柄表示器、第二特別図柄表示器)の8つのLEDを特別抽選結果に応じた点灯態様で表示させ、その後第一大入賞口2005及び第二大入賞口2006の何れが所定の開閉パターンで遊技球の受入れが可能な状態となる。第一大入賞口2005や第二大入賞口2006が開状態の時に、第一大入賞口2005や第二大入賞口2006に遊技球が受入れられると、主制御基板1310及び払出基板によって払出装置830から所定数(例えば、第一大入賞口2005に遊技球が受入れられた場合には11個、又は、第二大入賞口2006に遊技球が受入れられた場合には15個)の遊技球が、上皿201に払出される。従って、第一大入賞口2005や第二大入賞口2006が遊技球を受入可能としている時に、第一大入賞口2005や第二大入賞口2006に遊技球を受入れさせることで、多くの遊技球を払出させることができ、遊技者を楽しませることができる。」 ウ 「【1093】 図128(A)の正面図に示すように、設定基板970には、パチンコ機1の動作モードを設定モードに変更するための設定キー971、設定値を変更するための設定変更スイッチ972、変更された設定値を確定入力するための設定確定スイッチ973、及び、設定又は選択された設定値を表示する設定表示器974が設けられる。設定基板970は、設定変更の操作を受け付ける設定変更操作部として機能する。 ・・・略・・・ 【1096】 また、RAMクリアスイッチ954の操作によって設定モードを開始・終了してもよい。例えば、RAMクリアスイッチ954を操作しながら電源を投入し、さらにRAMクリアスイッチ954の操作を所定時間(例えば5秒)以上継続すること(長押し)によって、設定モードを開始する。また、RAMクリアスイッチ954を操作しながら電源を投入し、RAMクリアスイッチ954の継続した操作が所定時間未満であれば、RAMクリア処理を実行する。さらに、設定モード中におけるRAMクリアスイッチ954の長押しによって、設定モードを終了してもよい。 【1097】 このようにすると、設定キー971用の鍵を保有していない従業員でも設定変更が可能なことから、ホールでのパチンコ機1の取り扱いが容易になる。また、設定変更スイッチ972の操作時間を検出することから、設定変更スイッチ972の立ち下がりで操作を検出するとよい。 【1098】 設定変更スイッチ972は、例えば押しボタンスイッチで構成され、設定値(1?6)を順に切り替えて選択するために操作される。つまり、設定変更スイッチ972が1回押されると、設定値が1増加し、設定値=6の時に設定変更スイッチ972が操作されると設定値=1となる。なお、設定変更スイッチ972を設けずに、RAMクリアスイッチ954の操作によって設定値が選択可能でもよい。なお、設定値は、6段階でなく、これより少ない段階(例えば2段階)でも、多い段階(例えば8段階)でもよい。 【1099】 また、設定変更スイッチ972を設けず、設定キー971が設定変更スイッチ972を兼ねてもよい。この場合、設定キー971が3段階に操作可能で、中立位置(通常位置)では鍵が挿抜可能で、左に回すと設定モードを開始するための操作となり、右に回すと設定すべき設定値を選択するための操作となる(右に回すと設定変更スイッチ972として機能する)。設定キー971は、左位置及び中立位置を保持可能なアルタネイティブ動作をし、右位置が保持されない(鍵から手を離すと中立位置に戻る)モーメンタリ動作をする。 【1100】 なお、設定値は条件装置の作動割合(つまり、特別図柄の当り確率)を変更するものであり、設定値=1が当り確率が低く、設定値=6が当り確率が高い。また、設定値によって、確変大当りの割り合い、大当り後の時短(ST)の割り合い、時短回数、大当りのラウンド数やカウント数、普図当り確率、一般入賞口や始動入賞口や大入賞口の賞球数など、遊技に関する様々なパラメータを変更して遊技者が獲得できる賞球の数を変化させてもよい。」 エ 「【1157】 まず、図134(A)に示す主制御基板1310と払出制御基板951とが連携した設定変更処理を説明する。 【1158】 パチンコ機1に電源が投入されると、(1)払出制御部952が、設定キー971がオンに操作されているか、及び、本体枠4が外枠2から開放しているかを判定する。本体枠4が外枠2から開放しているかは、本体枠開放スイッチからの検出信号によって判定できる。なお、設定キー971の配置位置から考えると、設定キー971を操作するためには、本体枠4が外枠2から開放しているので、この本体枠4の開放の判定は省略してもよい。 【1159】 設定キー971がオンに操作されており、かつ、本体枠4が外枠2から開放していれば、払出制御部952は設定モードを開始する。このように、払出制御部952は設定変更許容状態発生手段として機能する。前述以外の設定モードの開始条件として、ハンドルユニット500のハンドルレバー504の操作や、ハンドルレバー504に触ったことによる接触検知センサ509による検出や、CRユニットにプリペイドカードが挿入されていたり(プリペイドカードの残高がある)、現金サンドに投入された残高がある場合に設定モードを開始しなくてもよい。また、パチンコ機1が何らかの不正行為の可能性(例えば磁気エラー)を検出している場合にも、設定モードを開始しない方がよい。これらの条件の判定は、払出制御部952ではなく主制御MPU1311が、設定変更開始コマンドを受信した後に行ってもよい。このような場合、ホールによるパチンコ機1のメンテナンスではないと推定され、不正な遊技者による設定変更操作が行われようとしている可能性があるため、設定モードへ移行しない方がよいからである。 【1160】 (2)設定モードが開始すると、払出制御部952は、主制御基板1310に設定変更開始コマンドを送信する。 【1161】 (3)主制御MPU1311は、払出制御部952から設定変更開始コマンドを受信すると、設定変更前のRAMクリア処理を実行する。この設定変更前のRAMクリア処理は、遊技制御用領域13126(遊技用ワーク領域と遊技用スタック領域を含む)のうち、遊技状態(例えば、確変状態、時短状態、特別図柄や普通図柄の保留記憶、賞球に関する情報)のデータを残し、それ以外のデータをクリアし、ベース算出用領域13128(遊技領域外)はクリアしない。なお、設定値は、後に手順(6)で初期値に設定されるので、本ステップでクリアしなくてもよい。 【1162】 (4)その後、主制御MPU1311は、周辺制御部1511に設定変更開始コマンドを送信する。 【1163】 (5)周辺制御部1511は、主制御MPU1311から設定変更開始コマンドを受信すると、設定モード中であることを報知する。設定モード中の報知は、役物の初期動作を行ったり、液晶表示装置1600に所定の表示を行う。なお、周辺制御部1511は、役物の初期動作を行わなくてもよい。例えば、液晶表示装置1600に設定変更の手順や状態を表示する場合に、設定変更中に役物の初期動作を行うと、液晶表示装置1600の表示を部分的に隠すことになり、設定変更作業の邪魔をするからである。 【1164】 また、周辺制御部1511による設定モードの報知に合わせて、主制御MPU1311も設定モードを報知してもよい。例えば、機能表示ユニット1400の表示を、通常の遊技中には表れない特殊な態様の表示(例えば、特別図柄表示用のLEDを全部消灯又は点灯)をして遊技の進行を停止してもよい。また、主制御MPU1311は、入賞球やアウト球の検出を停止して、遊技の進行を停止することによって、設定モードを報知してもよい。その結果、設定モードにおいては、ベース値が計算されない。また、主制御MPU1311は、発射許可信号の出力を停止して、発射制御装置によって制御される遊技球の発射を停止して、発射不能化手段として機能することによって、設定モードを報知してもよい。設定モード中に遊技球の発射を停止する場合、発射停止期間中の遊技球の発射をエラーとして、当該期間中にハンドルユニット500のハンドルレバー504が操作されるとエラーを検知してもよい。」 オ 【0052】の「機能表示ユニット1400は、・・・第一始動口2002への遊技球の受入れ(始動入賞の発生)により抽選された第一特別抽選結果に基づいて八つのLEDを点滅制御することにより第一特別図柄を変動表示した後にこれら八つのLEDを第一特別抽選結果に応じた点灯態様で表示させる第一特別図柄表示器と、・・・第二始動口2004への遊技球の受入れ(始動入賞の発生)により抽選された第二特別抽選結果に基づいて八つのLEDを点滅制御することにより第二特別図柄を変動表示した後にこれら八つのLEDを第二特別抽選結果に応じた点灯態様で表示させる第二特別図柄表示器と、・・・・、を主に備えている。」との記載から、【0202】の「特別図柄表示器(第一特別図柄表示器、第二特別図柄表示器)の8つのLED」は「機能表示ユニット1400」の少なくとも一部であると認められる。 【0072】の「主制御MPU1311は、・・・機能表示ユニット1400の第一特別図柄表示器、第二特別図柄表示器、・・・等に駆動信号を出力したりする。」との記載から、【0202】の「第一特別図柄表示器の8つのLEDを」「点灯態様で表示」させることは「主制御MPU1311」が実行していると認められる。 また、【0202】には、「第一始動口2002及び第二始動口2004への遊技球の受入れにより抽選された特別抽選結果(第一特別抽選結果及び第二特別抽選結果)が、有利遊技状態を発生させる特別抽選結果の場合、所定の変動時間の経過後に特別図柄表示器(第一特別図柄表示器、第二特別図柄表示器)の8つのLEDを特別抽選結果に応じた点灯態様で表示させ、その後第一大入賞口2005及び第二大入賞口2006の何れが所定の開閉パターンで遊技球の受入れが可能な状態となる。」と記載されている。 そうすると、先願明細書等には、第一始動口2002への遊技球の受入れにより抽選された第一特別抽選結果に基づいて八つのLEDを点滅制御することにより第一特別図柄を変動表示した後にこれら八つのLEDを第一特別抽選結果に応じた点灯態様で第一特別図柄表示器に表示させる主制御MPU1311を備え、該特別抽選結果が有利遊技状態を発生させる特別抽選結果の場合、8つのLEDを特別抽選結果に応じた点灯態様で表示させ、その後第一大入賞口2005及び第二大入賞口2006の何れが所定の開閉パターンで遊技球の受入れが可能な状態とすることが、記載されているものと認められる。 カ 【1163】の「(5)周辺制御部1511は、主制御MPU1311から設定変更開始コマンドを受信すると、設定モード中であることを報知する。設定モード中の報知は、役物の初期動作を行ったり、液晶表示装置1600に所定の表示を行う。・・・」との記載、【1164】の「また、周辺制御部1511による設定モードの報知に合わせて、主制御MPU1311も設定モードを報知してもよい。例えば、機能表示ユニット1400の表示を、通常の遊技中には表れない特殊な態様の表示(例えば、特別図柄表示用のLEDを全部消灯又は点灯)をして遊技の進行を停止してもよい。」との記載、及び、上記オの「八つのLEDを第一特別抽選結果に応じた点灯態様で第一特別図柄表示器に表示させる」ことから、先願明細書等には、主制御MPU1311は、第一特別図柄表示器を、通常の遊技中には表れない特殊の態様として、八つのLEDを全部消灯して、設定モードを報知することが、記載されているものと認められる。 キ 上記アないしカからみて、先願明細書等には、次の発明が記載されている(なお、aないしfについては本願補正発明のAないしFに概ね対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。)。 「a 第一始動口2002への遊技球の受入れにより抽選された第一特別抽選結果に基づいて八つのLEDを点滅制御することにより第一特別図柄を変動表示した後にこれら八つのLEDを第一特別抽選結果に応じた点灯態様で第一特別図柄表示器に表示させる主制御MPU1311を備え、該特別抽選結果が有利遊技状態を発生させる特別抽選結果の場合、8つのLEDを特別抽選結果に応じた点灯態様で表示させ、その後第一大入賞口2005及び第二大入賞口2006の何れが所定の開閉パターンで遊技球の受入れが可能な状態とする(上記オ)、パチンコ機1(【0009】)であって、 b、c RAMクリアスイッチ954を操作しながら電源を投入し、さらにRAMクリアスイッチ954の操作を所定時間(例えば5秒)以上継続すること(長押し)によって開始される設定モードで、設定値(1?6)を順に切り替えて選択するために操作される、押しボタンスイッチで構成された設定変更スイッチ972を備え(【1096】、【1098】)、 設定値は条件装置の作動割合(つまり、特別図柄の当り確率)を変更するものであり、設定値=1が当り確率が低く、設定値=6が当り確率が高いものであり(【1100】)、 e 主制御MPU1311は、第一特別図柄表示器を、通常の遊技中には表れない特殊の態様として、八つのLEDを全部消灯して、設定モードを報知する(上記カ)、 f パチンコ機1(【0009】)。」(以下「先願発明」という。) (3)対比 本願補正発明と先願発明を対比する。 ア 特定事項A、Fについて 先願発明の「第一始動口2002への遊技球の受入れ」、「第一特別図柄」、「第一特別図柄表示器」、「有利遊技状態を発生させる特別抽選結果」、「第一大入賞口2005及び第二大入賞口2006の何れが所定の開閉パターンで遊技球の受入れが可能な状態」及び「パチンコ機1」は、それぞれ本願補正発明の「始動条件の成立」、「識別情報」、「表示部」、「特別結果」、「遊技者にとって有利な特別遊技状態」及び「遊技機」に相当する。 そして、先願発明のaの「主制御MPU1311」は、第一始動口2002への遊技球の受入れにより抽選された第一特別抽選結果に基づいて八つのLEDを点滅制御することにより第一特別図柄を変動表示した後にこれら八つのLEDを第一特別抽選結果に応じた点灯態様で第一特別図柄表示器に表示させるのであるから、本願補正発明の「始動条件の成立に基づき識別情報を変動表示させる変動表示ゲームを表示部に表示可能な遊技制御手段」に相当する。 また、先願発明のaにおいて、特別抽選結果が有利遊技状態を発生させる特別抽選結果(特別結果)の場合、8つのLEDを特別抽選結果に応じた点灯態様で表示させ、その後第一大入賞口2005及び第二大入賞口2006の何れが所定の開閉パターンで遊技球の受入れが可能な状態(遊技者にとって有利な特別遊技状態)とするものであるから、先願発明のaは、本願補正発明の特定事項Aの「前記変動表示ゲームの停止結果が特別結果となる場合に、遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる」との特定事項を備える。 そうすると、先願発明のa及びfは、それぞれ本願補正発明の特定事項A及びFに相当する。 イ 特定事項B、Cについて 先願発明のb、cの「RAMクリアスイッチ954を操作しながら電源を投入し、さらにRAMクリアスイッチ954の操作を所定時間(例えば5秒)以上継続すること(長押し)によって開始される設定モードで」、「当り確率」、「設定値」及び「設定変更スイッチ972」は、それぞれ、本願補正発明の「当該遊技機への電源投入の際に」、「前記変動表示ゲームの結果が特別結果となるか否かの抽選に用いる確率値」、「確率設定値」及び「設定変更手段」に相当する。 先願発明のb、cにおいて、設定モード(当該遊技機への電源投入の際)で、設定値(1?6)(確率設定値)を順に切り替えて選択するために操作される、押しボタンスイッチで構成された設定変更スイッチ972(設定変更手段)を備え、設定値は特別図柄の当り確率(確率値)を変更するものであり、設定値=1が当り確率(確率値)が低く、設定値=6が当り確率(確率値)が高いものである。 そうすると、先願発明のb、cは、本願補正発明の「B 当該遊技機への電源投入の際に、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となるか否かの抽選に用いる確率値が割り当てられた確率設定値を、3種類以上の前記確率設定値から選択可能な設定変更手段」及び「C 前記確率設定値の数値が大きくなるにつれて、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となる確率が高くなるように設定し、」との特定事項を備える。 ウ 特定事項Eについて 先願発明の「設定モード」は、押しボタンスイッチで構成された設定変更スイッチ972を操作することにより設定値(1?6)を順に切り替えることができる状態のことであるから、本願補正発明の「前記確率設定値の選択が可能となる設定可変状態」に相当する。 そして、先願発明のeは、主制御MPU1311(遊技制御手段)が第一特別図柄表示器(表示部)を、通常の遊技中には表れない特殊の態様として、八つのLEDを全部消灯して(消灯状態)、設定モード(設定可変状態)を報知するから、本願補正発明の「E 前記遊技制御手段は、前記確率設定値の選択が可能となる設定可変状態において、前記表示部を消灯状態とする」との特定事項を備える。 エ 上記アないしウからみて、本願補正発明と先願発明とは、 「A 始動条件の成立に基づき識別情報を変動表示させる変動表示ゲームを表示部に表示可能な遊技制御手段を備え、前記変動表示ゲームの停止結果が特別結果となる場合に、遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機において、 B 当該遊技機への電源投入の際に、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となるか否かの抽選に用いる確率値が割り当てられた確率設定値を、3種類以上の前記確率設定値から選択可能な設定変更手段を備え、 C 前記確率設定値の数値が大きくなるにつれて、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となる確率が高くなるように設定し、 E 前記遊技制御手段は、 前記確率設定値の選択が可能となる設定可変状態において、前記表示部を消灯状態とする F 遊技機。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 ・相違点(特定事項D) 「確率値」に関し、 本願補正発明では、「当該遊技機の前面側に表示する前記確率値を、前記確率設定値のうち、最も数値の小さい確率設定値における前記確率値と最も数値の大きい確率設定値における前記確率値のみとし」ているのに対し、 先願発明では、パチンコ機1(遊技機)の前面側に確率値を表示していない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 ア (ア)原査定で引用した特開平10-118250号公報(以下「周知例1」という。)には、次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、遊技機に関し、特に、機種ごとに大当たりの発生確率が異なるような遊技機に関する。」、 「【0031】以上のようなゲーム内容はかなりの経験者でなければ知り得るはずもなく、本来であれば分かりにくい。これに対して本実施形態においては、図7に示すように、コーナー飾り25の右半分部25bにおける右下部分に機種名と大当たりの発生環境を記載した透明シール26を貼付してある。従って、各種の情報が非常にわかりやすくなっている。より具体的には、この機種に対して設定されうる三つの低確率時の確率「1/260」、「1/270」、「1/280」と、本機種に設定されている最高継続回数「4」とが記載されている。なお、このように機種名を一体的に記載することにより、機種ごとに異なる発生確率が設定されていても機種と当たり発生確率が一致しないという誤りが発生することはない。」、 「【図7】 」、 「【0035】透明シール26は必ずしも文字部分をのぞいて全体的に透明である必要はなく、部分的に非透明な色を付けるなどして下地が見えないようにすることもできる。図11及び図12は透明シール26に非透明のマスク部分26aを印刷してあり、コーナー飾り25上には液晶表示器25dを形成してある。液晶表示器25dはゲーム設定に応じた当たり発生確率を三行で表示するようになっているが、ホールの設定あるいは遊技台メーカーの設定によって一行は表示しない方が良い場合もある。例えば、汎用的な制御ボックスを使用している場合などである。このような場合に透明シール26のマスク部分26aにて不要な一行を見えないようにしてしまうということができる。さらに、液晶表示器25dでは数値だけを表示し、透明シール26でそれを補う文字を示すため、液晶表示器25d自体で文字を表示しなければならない場合に比べて安価にできる。」、 「【図11】 【図12】 」 (イ)原査定で引用した特開2006-296472号公報(以下「周知例2」という。)には、次の事項が記載されている。 「【0005】 ところで、上述のような遊技機においては、その遊技機についての基本情報である基本スペック(賞球数、大当り確立(審決注:「確率」の誤記と認められる。)(低確率時及び高確率時)、確変タイプ、リミッターなど)が遊技機の表面側に表示されている。」 (ウ)周知例1及び2に例示されるように、遊技者に視認可能な遊技機前面に、確率設定値と該確率設定値に対応する確率値を含む遊技機の基本情報(仕様、スペック)を表示(記載)することは周知(以下「周知技術」という。)である。 イ 周知例3:「パチスロスーパー海物語IN沖縄」,パチスロ必勝ガイドMAX2011年3月1日号,株式会社白夜書房,2011年 3月 1日 82頁の左上の「シンプルな準完全告知マシン」欄には以下の記載がある。 「 」 ウ 上記アからみて、先願発明において、遊技者に視認可能な遊技機前面に、確率設定値と該確率設定値に対応する確率値を含む遊技機の基本情報(仕様、スペック)を表示することは周知技術の単なる付加にすぎず、当該周知技術を先願発明に付加する際に、前記遊技機の基本情報(仕様、スペック)を表示するためのスペースの広狭に応じて表示する情報を取捨選択すること、また、範囲のある値の表示方法として最低値と最高値のみを表示することはごく普通に行われることであり、確率設定値と該確率設定値に対応する確率値の表示において、最低の確率設定値に対応する確率値と最高の確率設定値に対応する確率値のみを表示することは、周知例3にも記載されるように、具体化のための単なる設計的事項にすぎない。 してみると、上記相違点は、周知技術の付加であって、効果も周知技術から自明な効果にすぎず、実質的に新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における設計上の微差であるから、本願補正発明と先願発明とは実質的に同一である。 (5)請求人の主張について 請求人が審判請求書で主張する点については、上記(4)で示したとおりであるであるから、採用できない。 (6)まとめ 以上のように、本願補正発明は、先願発明と同一である。 しかも、本願補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとはいえず、また、本願の出願時点において、その出願人が先願の出願人と同一であるともいえないので、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和1年11月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、この出願の令和1年11月1日提出の手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない、というものを含むものである。 <引用文献等一覧> 1.特願2017-161147号(特開2019-037445号) 2.特開平10-118250号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2006-296472号公報(周知技術を示す文献) 3 先願発明 先願明細書等の記載事項及び先願発明の認定については、上記第2[理由]3(2)に説示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2[理由]3で独立特許要件を検討した本願補正発明から、「前記変動表示ゲームの結果が特別結果となるか否かの抽選に用いる確率値」との記載を、「前記変動表示ゲームの抽選に用いる確率値」と上位概念化し、「3種類以上の前記確率設定値」との記載を、「複数種類の前記確率設定値」と上位概念化し、「確率設定値」に関し、「前記確率設定値の数値が大きくなるにつれて、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となる確率が高くなるように設定し、」との特定を削除し、「当該遊技機の前面側に」「表示する」「確率値」に関して、「当該遊技機の前面側に表示する前記確率値を、前記確率設定値のうち、最も数値の小さい確率設定値における前記確率値と最も数値の大きい確率設定値における前記確率値のみとし、」との記載を、「当該遊技機の前面側に、少なくとも前記確率設定値のうちの最低の確率設定値における前記確率値と、最高の確率設定値における前記確率値と、を表示し、」と上位概念化するものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、一部の特定事項を下位概念化した本願補正発明が先願発明と同一であるから、本願発明も先願発明と同一である。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-02-09 |
結審通知日 | 2021-02-16 |
審決日 | 2021-03-02 |
出願番号 | 特願2017-186987(P2017-186987) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 161- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中野 直行 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
鉄 豊郎 ▲高▼橋 祐介 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 特許業務法人後藤特許事務所 |