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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1373531 |
審判番号 | 不服2018-16781 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-17 |
確定日 | 2021-05-11 |
事件の表示 | 特願2016- 67668「意図的でないタッチセンサへの接触を排除するモバイルデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 4日出願公開、特開2016-139431、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,本願は,2011年(平成23年)9月30日を国際出願日とする出願である特願2014-533272号の一部を,平成28年3月30日に新たな特許出願である特願2016-67668号としたものであり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。 平成29年 4月27日付け:拒絶理由通知 平成29年 8月 4日 :意見書・手続補正書 平成29年12月 4日付け:拒絶理由通知(最後) 平成30年 6月 8日 :意見書・手続補正書 平成30年 8月29日付け:補正の却下の決定・拒絶査定 平成30年12月17日 :審判請求・手続補正書 令和 2年 4月17日付け:拒絶理由通知 令和 2年10月 6日 :意見書・手続補正書 第2 原査定の概要 原査定(平成30年8月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.(新規性)本願の請求項1,3-4,8,10-11,15,17-18,21に係る発明は,以下の引用文献Aに記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 2.(進歩性)本願の請求項1-21に係る発明は,以下の引用文献AおよびBに基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 A.特開2010-262557号公報 B.国際公開第2011/065249号 第3 当審拒絶理由の概要 令和2年4月17日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は,次のとおりのものである。 1.(進歩性) 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6,8ないし13,15ないし21に係る発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項ならびに引用文献3に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 1.特開2011-186941号公報(当審において新たに引用した文献) 2.特開2010-262557号公報(拒絶査定時の引用文献A) 3.国際公開第2011/065249号(拒絶査定時の引用文献B) 第4 本願発明 本願請求項1-21に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明21」という。)は、令和2年10月6日提出の手続補正によって補正(以下,「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-21は以下のとおりの発明である。(下線部が補正箇所である。) 「【請求項1】 意図的なタッチの接触と意図的でないタッチの接触を区別する際に使用することが可能なコンピューティングデバイスであって,当該コンピューティングデバイスは: 当該コンピューティングデバイスの上面に配置されるタッチスクリーンと, 前記上面とは異なる,当該コンピューティングデバイスの側面に配置されるサイドタッチセンサと, プロセッサと, 前記プロセッサによって実行される命令を格納することができるストレージであって, 前記命令は,前記プロセッサによって実行されると: 前記サイドタッチセンサにより,ユーザのタッチを検出し; 前記サイドタッチセンサによって検出された前記タッチに関連するデータを分析して,前記サイドタッチセンサへの前記タッチが意図的であるか意図的でないかを判断することであって,前記分析は,前記タッチに関連する前記データを,ある期間にわたって得られた複数のインジケータと比較することを含み; 前記複数のインジケータのうちの1つ以上のインジケータが前記タッチは意図的であると識別する場合,前記サイドタッチセンサへの前記タッチを受け入れ; 前記1つ以上のインジケータが前記タッチは意図的でないと識別する場合,前記サイドタッチセンサへの前記タッチを排除する; ことを含む動作を実行することになる, コンピューティングデバイス。 【請求項2】 前記サイドタッチセンサは更に、前記ユーザの同時の複数のタッチを検出し、前記複数のタッチのうちの少なくとも第1タッチが意図的として識別され、前記複数のタッチのうちの少なくとも第2タッチが意図的でないとして識別され、前記第2タッチは、前記ユーザの使用経験に混乱をもたらす潜在性を有する意図的ではないものとして識別される、 請求項1に記載のコンピューティングデバイス。 【請求項3】 前記サイドタッチセンサへの前記タッチを受け入れることは、前記タッチに関連付けられる入力に応答することを備え、前記サイドタッチセンサへの前記タッチを排除することは、前記タッチに関連付けられる前記入力を無視することを備え、前記データは前記入力を含み、 前記データは、前記タッチのサイズ、前記タッチの形状、前記タッチの動き又は前記タッチに関連する接触ポイントのうちの少なくとも1つを備える、 請求項1に記載のコンピューティングデバイス。 【請求項4】 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記サイズが、前記ユーザの手又は手のひらによって行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではない、 請求項3に記載のコンピューティングデバイス。 【請求項5】 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記形状が、前記ユーザの手又は手のひらによって行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではない、 請求項3に記載のコンピューティングデバイス。 【請求項6】 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記動きが、前記ユーザの静止している手又は静止している手のひらによって行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではない、 請求項3に記載のコンピューティングデバイス。 【請求項7】 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記接触ポイントが少なくとも2つ存在し、前記少なくとも2つの接触ポイントのうちの1つの接触ポイントが、前記サイドタッチセンサの下方のエリアで行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではない、 請求項3に記載のコンピューティングデバイス。 【請求項8】 意図的なタッチの接触と意図的でないタッチの接触を区別するための方法であって、当該方法は: デバイスの上面とは異なる、前記デバイスの側面に配置されるサイドタッチセンサによって、ユーザのタッチを検出するステップと; 前記サイドタッチセンサによって検出された前記タッチに関連するデータを分析して、 前記サイドタッチセンサへの前記タッチが意図的であるか意図的でないかを判断するステップであって、前記分析は、前記タッチに関連する前記データを、ある期間にわたって得られた複数のインジケータと比較することを含むステップと; 前記複数のインジケータのうちの1つ以上のインジケータが前記タッチは意図的であると識別する場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチを受け入れるステップと; 前記1つ以上のインジケータが前記タッチは意図的でないと識別する場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチを排除するステップと; を含む、方法。 【請求項9】 前記サイドタッチセンサによって、前記ユーザの同時の複数のタッチを検出するステップを更に備え、 前記複数のタッチのうちの少なくとも第1タッチが意図的として識別され、前記複数のタッチのうちの少なくとも第2タッチが意図的でないとして識別され、前記第2タッチは、前記ユーザの使用経験に混乱をもたらす潜在性を有する意図的ではないものとして識別される、 請求項8に記載の方法。 【請求項10】 前記サイドタッチセンサへの前記タッチを受け入れるステップは、前記タッチに関連付けられる入力に応答するステップを備え、前記サイドタッチセンサへの前記タッチを排除するステップは、前記タッチに関連付けられる前記入力を無視するステップを備え、前記データは前記入力を含み、 前記データは、前記タッチのサイズ、前記タッチの形状、前記タッチの動き又は前記タッチに関連する接触ポイントのうちの少なくとも1つを備える、 請求項8に記載の方法。 【請求項11】 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記サイズが、前記ユーザの手又は手のひらによって行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではない、 請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記形状が、前記ユーザの手又は手のひらによって行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではない、 請求項10に記載の方法。 【請求項13】 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記動きが、前記ユーザの静止している手又は静止している手のひらによって行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではない、 請求項10に記載の方法。 【請求項14】 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記接触ポイントが少なくとも2つ存在し、前記少なくとも2つの接触ポイントのうちの1つの接触ポイントが、前記サイドタッチセンサの下方のエリアで行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではない、 請求項10に記載の方法。 【請求項15】 コンピューティングデバイスによって実行されると、該コンピューティングデバイスに: 該コンピューティングデバイスの上面とは異なる、該コンピューティングデバイスの側面に配置されるサイドタッチセンサによって、ユーザのタッチを検出するステップと; 前記サイドタッチセンサによって検出された前記タッチに関連するデータを分析して、 前記サイドタッチセンサへの前記タッチが意図的であるか意図的でないかを判断するステップであって、前記分析は、前記タッチに関連する前記データを、ある期間にわたって得られた複数のインジケータと比較することを含むステップと; 前記複数のインジケータのうちの1つ以上のインジケータが前記タッチは意図的であると識別する場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチを受け入れるステップと; 前記1つ以上のインジケータが前記タッチは意図的でないと識別する場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチを排除するステップと; を含む動作を実行させる、コンピュータプログラム。 【請求項16】 前記動作は、前記サイドタッチセンサによって、前記ユーザの同時の複数のタッチを検出するステップを更に備え、 前記複数のタッチのうちの少なくとも第1タッチが意図的として識別され、前記複数のタッチのうちの少なくとも第2タッチが意図的でないとして識別され、前記第2タッチは、前記ユーザの使用経験に混乱をもたらす潜在性を有する意図的ではないものとして識別される、 請求項15に記載のコンピュータプログラム。 【請求項17】 前記サイドタッチセンサへの前記タッチを受け入れるステップは、前記タッチに関連付けられる入力に応答するステップを備え、前記サイドタッチセンサへの前記タッチを排除するステップは、前記タッチに関連付けられる前記入力を無視するステップを備え、前記データは前記入力を含み、 前記データは、前記タッチのサイズ、前記タッチの形状、前記タッチの動き又は前記タッチに関連する接触ポイントのうちの少なくとも1つを備える、 請求項15に記載のコンピュータプログラム。 【請求項18】 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記サイズが、前記ユーザの手又は手のひらによって行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではない、 請求項17に記載のコンピュータプログラム。 【請求項19】 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記形状が、前記ユーザの手又は手のひらによって行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではない、 請求項17に記載のコンピュータプログラム。 【請求項20】 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記動きが、前記ユーザの静止している手又は静止している手のひらによって行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではなく、 前記1つ以上のインジケータと比較したときに、前記接触ポイントが少なくとも2つ存在し、前記少なくとも2つの接触ポイントのうちの1つの接触ポイントが、前記サイドタッチセンサの下方のエリアで行われている前記タッチを示す場合、前記サイドタッチセンサへの前記タッチは意図的ではない、 請求項17に記載のコンピュータプログラム。 【請求項21】 請求項15乃至20のいずれか一項に記載のコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ読取可能媒体。」 第5 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には,以下の記載がある。(下線は,当審が付加した。以下同様。) ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,タッチパネルを利用する情報処理装置に関する。 【背景技術】 【0002】 従来,携帯電話機(特に,いわゆるスマートフォン),PDA,ポータブルメディアプレイヤー,ポータブルゲーム機などの情報処理装置の入力及び表示デバイスとしてタッチパネルが利用されている。これらの情報処理装置のサイズは,可搬性及び操作性の観点から小型であることが多い。典型的には,これらの情報処理装置は,ユーザが片手で容易に保持できるサイズに設計される。一方,タッチパネルのサイズは,操作性及び表示情報の視認性の観点から可能な限り大きく設計される傾向にある。両者のサイズに関する制約,要求などを考慮すると,情報処理装置の縁付近までタッチパネルを実装する設計が望ましいと予想される。このような設計によれば,タッチパネルの縁と情報処理装置の縁との間隔が必然的に小さくなる。故に,例えばユーザがこの情報処理装置を保持する場合に,指がタッチパネルに触れやすくなり,この指の接触が入力情報(タッチ情報)として検出されてしまうおそれがある。このような意図しない入力情報が上位層(OS,アプリケーションなど)に通知されると,当該入力情報に基づいて意図しない処理が発生し(意図しないファイルが開かれる,意図しないアプリケーションが実行されるなど),操作性が損なわれるかもしれない。また,このような事態が頻発すると,ユーザは情報処理装置の持ち方に過度に注意せざるを得ず,悪印象を与えかねない。 【0003】 特許文献1に記載のタッチパネル型表示装置は,ユーザの指定に基づいてタッチパネルの設定範囲を決定し,この設定範囲を有効状態または無効状態に切り替える。従って,このタッチパネル型表示装置によれば,ユーザが意図した範囲でタッチパネルを無効化することが可能となる。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 特許文献1に記載のタッチパネル型表示装置では,ユーザがタッチパネルを無効化する範囲を指定しなければならないので,煩雑である。また,タッチパネルを無効化する範囲を設定すれば,当該範囲においてタッチパネルは入力デバイスとしての役割を果たせない。即ち,ユーザはタッチパネルの大型化による恩恵を十分に受けられない。 【0006】 従って,本発明は,無効な入力情報を弁別することを目的とする。」 ウ 「【0011】 以下,図面を参照して,本発明の実施形態について説明する。 (一実施形態) 図2に示すように,本発明の一実施形態に係る情報処理装置100は,タッチパネル110,タッチパネル制御ハードウェア(HW)111,タッチパネル制御ソフトウェア(SW)112,記憶部113,オペレーティングシステム(OS)121及びアプリケーション122を有する。尚,以降の説明において,OS121及びアプリケーション122は,上位層120と総称されることもある。本願において,上位層120とは,タッチパネル制御SW112を基準とした相対的上位処理を行う構成要素を指しており,OS121及びアプリケーション122以外の構成要素(図示しない)も含まれ得る。 【0012】 タッチパネル110は,入力機能及び表示機能の両方を持つ。以降の説明では,主に入力機能に関連する事項を述べ,表示機能に関連する事項を省略する。タッチパネル110は,抵抗膜方式,静電容量方式などの任意の方式で実装されてよい。 【0013】 タッチパネル制御HW111は,指,スタイラスなどによるタッチパネル110への物理的な接触(接触状態からの離脱を含む)に基づいて,タッチ位置(接触位置及び離脱位置を含む)を示すタッチ情報を生成する。タッチパネル制御HW111は,タッチ情報をタッチパネル制御SW112に通知する。 【0014】 タッチパネル制御SW112は,タッチパネル制御HW111から取得したタッチ情報の内容を解析し,必要に応じて上位層120に通知する。尚,タッチパネル制御SW112の具体的処理は後述する。 【0015】 記憶部113には,タッチパネル制御SW112によって使用される各種テーブル,データなどが記憶される。また,記憶部113には,タッチパネル制御SW112,OS121及びアプリケーション122などをプロセッサに実行させるためのプログラム,タッチパネル制御SW112,OS121及びアプリケーション122などが使用するデータなどが記憶されていてもよい。 【0016】 上位層120は,タッチパネル制御SW112からのタッチ情報を利用して,任意の情報処理を行う。例えば,上位層120はタッチ情報に基づいて特定のGUI部品を選択したり,特定のGUI部品の選択を確定したりする。 【0017】 図1に示すように,情報処理装置100は,典型的には,ユーザが片手で保持できるサイズで実装されている。また,タッチパネル110は,典型的には,情報処理装置100の縁付近まで実装されている。即ち,情報処理装置100の縁とタッチパネル110の縁との間隔が小さい。従って,ユーザが情報処理装置100を保持する場合に,指10がタッチパネルの縁付近に接触しやすい。」 エ 「【0018】 以下,図7を用いてタッチパネル制御SW112の処理を説明する。 まず,タッチパネル制御SW112は,タッチパネル制御HW111からのタッチ情報の通知を待つ(ステップS201)。タッチパネル制御SW112は,タッチパネル制御HW111からタッチ情報の通知を取得すると(ステップS202),タッチ情報の内容を判定する(ステップS203)。以降の説明において,タッチパネル制御SW112は,タッチ情報が新規情報(開始情報),移動情報または終了情報のいずれであるかを判定することとする。しかしながら,タッチパネル制御SW112は,異なる判定基準を採用してもよい。例えば,タッチパネル制御SW112は,タッチ情報が新規情報または終了情報のいずれであるかを判定してもよい。 【0019】 ステップS203においてタッチ情報が新規情報であると判定すると,タッチパネル制御SW112はタッチ情報管理テーブルに項目を追加する(ステップS204)。ここで,タッチ情報管理テーブルは,例えば図4に示されるものであり,記憶部113または他の記憶手段によって保持される。図4の例に関して,タッチ情報管理テーブルにおいて,各項目は番号(No)によって識別される。各項目は,新規情報の示すタッチ位置(例えば,x軸上の位置及びy軸上の位置)及び新規情報の取得時刻(タッチ開始時刻)を含む。この新規情報の取得時刻は,タッチパネル制御SW112がタイマーを参照して検知する。また,この新規情報の取得時刻からの経過時間(タッチ時間)もタッチ情報管理テーブル上で管理される。 【0020】 次に,タッチパネル制御SW112は,新規情報の示す位置(タッチ位置)が所定エリア内であるか否かを判定する(ステップS205)。ここで,所定エリアは,設計的または実験的に定められてよい。以降の説明では,ユーザが情報処理装置100を保持する場合に指が接触しやすいエリアを所定エリアとして想定している。故に,例えば,図3に示すように,タッチパネル110の縁付近が所定エリア130として定められる。また,所定エリアは,記憶部113または他の記憶手段によって保持されるエリア管理テーブル上で管理される。図5は,エリア管理テーブルの一例を示している。但し,所定エリアは,任意の形状であってよい。ステップS205において,新規情報の示す位置が所定エリア内であると判定されれば処理はステップS201に戻り,そうでなければ処理はステップS206に進む。 【0021】 ステップS206において,タッチパネル制御SW112は該当項目に関する未通知の情報を上位層120へ通知し,処理はステップS201に戻る。具体的には,処理がステップS205からステップS206へ遷移したのであれば,タッチ情報制御SW112は該当項目(新規情報に対応する項目)の新規情報を上位層120へ通知する。また,後述するように,処理がステップS207からステップS206へ遷移したのであれば,タッチ情報制御SW112は該当項目(移動情報に対応する項目)の移動情報を上位層120へ通知する。ここで,該当項目の新規情報が未通知である場合には,タッチ情報制御SW112は新規情報,移動情報の順に上位層120へ通知する。尚,タッチパネル制御SW112は,新規情報が通知済みであるか否かを参照するために,ステップS205における判定結果をタッチ情報管理テーブルに記録しておいてもよい。 【0022】 ステップS203においてタッチ情報が移動情報であると判定すると,タッチパネル制御SW112はタッチ情報管理テーブルに移動情報を記録し(ステップS207),処理はステップS206に進む。具体的には,タッチパネル制御SW112はタッチ情報管理テーブル上の該当項目の移動量(例えば,x軸上の移動量及びy軸上の移動量)を更新する。 【0023】 ステップS203においてタッチ情報が終了情報であると判定すると,タッチパネル制御SW112は該当項目(終了情報に対応する項目)に対応する移動情報が存在するか否かを更に判定する(ステップS208)。例えば,タッチパネル制御SW112はタッチ情報管理テーブルを参照して判定を行う。対応する移動情報が存在すると判定されれば処理はステップS209に進み,そうでなければ処理はステップS210に進む。 【0024】 ステップS209において,タッチパネル制御SW112は該当項目に関する未通知の情報を上位層120へ通知し,処理はステップS212に進む。具体的には,タッチパネル制御SW112は,該当項目の終了情報を上位層120へ通知する。ここで,該当項目の新規情報が未通知である場合には,タッチパネル制御SW112は新規情報,終了情報の順に上位層120へ通知する。尚,タッチパネル制御SW112は,後述する学習などに使用する目的で,該当項目に関する情報が上位層120へ通知されたことを示すフラグをタッチ情報管理テーブル上に記録しておいてもよい。 【0025】 ステップS210において,タッチパネル制御SW112は終了情報の示す位置が所定エリア内であるか否かを判定する。尚,整合性の観点から,この所定エリアは,ステップS205における所定エリアと同一であることが望ましい。終了情報の示す位置が所定エリア内であれば処理はステップS211に進み,そうでなければ処理はステップS209に進む。 【0026】 ステップS211において,タッチパネル制御SW112は終了情報に対応する新規情報の取得時刻から終了情報の取得時刻までの経過時間がタイマー閾値以上であるか否かを判定する。経過時間がタイマー閾値以上であれば処理はステップS212に進み,そうでなければ処理はステップS209に進む。具体的には,タッチパネル制御SW112は,タッチ情報管理テーブルを参照して経過時間を取得し,タイマー閾値管理テーブルを参照してタイマー閾値を取得できる。タイマー閾値管理テーブルは,記憶部113または他の記憶手段によって保持され,タイマー閾値を管理する。タイマー閾値管理テーブルの一例を図6に示す。タイマー閾値は,設計的または実験的に定められてよく,例えばタッチパネル110に関して想定される通常のタッチ時間の上限よりも大きい値である。 【0027】 ステップS212において,タッチパネル制御SW112は該当項目(終了情報に対応する項目)をタッチ情報管理テーブルから削除し,処理はステップS201に戻る。」 オ 「【0028】 以上のようなタッチパネル制御SW112の処理の技術的意義を説明する。 上記処理を通じて,タッチパネル制御SW112はタッチパネル110への入力情報を有効な入力情報(上位層120へ通知すべき入力情報,情報処理装置の動作に反映される入力情報とも解釈できる)と無効な入力情報(上位層120へ通知すべきでない入力情報,情報処理装置の動作に反映されない入力情報とも解釈できる)との間で弁別する。本実施形態は,無効な入力情報の一類型として,情報処理装置100を保持するときにタッチパネル110に指が接触したことによって発生する入力情報を想定している。この入力情報は,タッチ位置がタッチパネル110の縁付近に偏る,タッチ時間が長い,移動がない(または移動量が小さい)などの特徴を持ちやすいと予想される。タッチパネル制御SW112は,このような空間的特徴または時間的特徴を持つ入力情報を検出することにより,弁別を実現する。具体的には,上記処理において,タッチパネル制御SW112は,新規情報の示す位置が所定エリア内であれば,当該新規情報の上位層120への通知を保留している。そして,タッチパネル制御SW112は,該当項目に移動がないまま終了情報を取得すると,タッチ時間をタイマー閾値と比較する。タッチ時間がタイマー閾値以上であれば,該当項目は上記特徴を備えており,無効な入力情報である可能性が高い。故に,タッチパネル制御SW112は,該当項目に関する情報の上位層120への通知を省略し,意図しない処理の発生を予防する。」 カ 「【0029】 尚,図7の処理は,無効な入力情報を弁別するためにタイマー閾値,所定エリア及び移動情報を利用しているが,これらの一部のみが利用されてもよいし,その他の評価基準が導入されてもよい。」 キ 「【0032】 また,所定エリア及びタイマー閾値は固定であってもよいし可変であってもよい。例えば,所定エリア及びタイマー閾値は,ユーザの操作履歴に基づく学習によって決定されてよい。学習による所定エリア及びタイマー閾値の決定は,情報処理装置100を保持するときの個々のユーザの癖を反映させやすいという利点がある。例えば,無効な入力情報として判定された項目の位置を所定期間または所定数だけ蓄積し,検出頻度に応じて所定エリアを絞り込んでもよい(一例として,検出頻度が低いエリアを所定エリアから除外してもよい)。所定エリアの絞り込みは,入力情報が無効であると誤判定される可能性を抑えられるなどの利点がある。また,所定エリア外の入力であったとしてもタッチ時間が比較的長い(例えばタイマー閾値以上)項目の位置を所定期間または所定数だけ蓄積し,検出頻度に応じて所定エリアを拡大させてもよい(一例として,検出頻度が高いエリアを所定エリアに追加してもよい)。所定エリアの拡大は,入力情報が有効であると誤判定される可能性を抑えられるなどの利点がある。その他,入力情報の弁別に誤りがあったことをユーザからフィードバックし,フィードバック結果に基づいてタイマー閾値及び所定エリアが調整されてもよい。」 ク 図7 2 引用発明 上記1からみて,特に,下線部に着目すると,引用文献1には,以下のような発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「情報処理装置100は,タッチパネル110,タッチパネル制御ハードウェア(HW)111,タッチパネル制御ソフトウェア(SW)112,記憶部113,オペレーティングシステム(OS)121及びアプリケーション122を有しており, OS121及びアプリケーション122は,上位層120と総称され, タッチパネル110は,入力機能及び表示機能の両方を持っており, タッチパネル制御HW111は,指,スタイラスなどによるタッチパネル110への物理的な接触(接触状態からの離脱を含む)に基づいて,タッチ位置(接触位置及び離脱位置を含む)を示すタッチ情報を生成し,タッチ情報をタッチパネル制御SW112に通知しており, タッチパネル制御SW112は,タッチパネル制御HW111から取得したタッチ情報の内容を解析し,必要に応じて上位層120に通知しており, 記憶部113には,タッチパネル制御SW112によって使用される各種テーブル,データなどが記憶され,タッチパネル制御SW112,OS121及びアプリケーション122などをプロセッサに実行させるためのプログラム,タッチパネル制御SW112,OS121及びアプリケーション122などが使用するデータなどが記憶されていてもよく, 上位層120は,タッチパネル制御SW112からのタッチ情報を利用して,任意の情報処理を行う情報処理装置100であって, タッチパネル110は,情報処理装置100の縁付近まで実装されており,情報処理装置100の縁とタッチパネル110の縁との間隔が小さいため,ユーザが情報処理装置100を保持する場合に,指10がタッチパネルの縁付近に接触しやすく, タッチパネル制御SW112は,タッチパネル制御HW111からのタッチ情報の通知を待っており(ステップS201),タッチパネル制御SW112は,タッチパネル制御HW111からタッチ情報の通知を取得すると(ステップS202),タッチ情報の内容を判定し(ステップS203),タッチパネル制御SW112は,タッチ情報が新規情報(開始情報),移動情報または終了情報のいずれであるかを判定しており, ステップS203においてタッチ情報が新規情報であると判定すると,タッチパネル制御SW112はタッチ情報管理テーブルに項目を追加し(ステップS204),タッチ情報管理テーブルにおいて,各項目は番号(No)によって識別され,各項目は,新規情報の示すタッチ位置(例えば,x軸上の位置及びy軸上の位置)及び新規情報の取得時刻(タッチ開始時刻)を含んでおり,この新規情報の取得時刻からの経過時間(タッチ時間)もタッチ情報管理テーブル上で管理され, 次に,タッチパネル制御SW112は,新規情報の示す位置(タッチ位置)が所定エリア内であるか否かを判定し(ステップS205),ここで,所定エリアは,設計的または実験的に定められてよく,タッチパネル110の縁付近が所定エリア130として定められ, ステップS205において,新規情報の示す位置が所定エリア内であると判定されれば処理はステップS201に戻り,そうでなければ処理はステップS206に進み, ステップS206において,タッチパネル制御SW112は該当項目に関する未通知の情報を上位層120へ通知し,処理はステップS201に戻り, ステップS203においてタッチ情報が移動情報であると判定すると,タッチパネル制御SW112はタッチ情報管理テーブルに移動情報を記録し(ステップS207),処理はステップS206に進み,具体的には,タッチパネル制御SW112はタッチ情報管理テーブル上の該当項目の移動量(例えば,x軸上の移動量及びy軸上の移動量)を更新し, ステップS203においてタッチ情報が終了情報であると判定すると,タッチパネル制御SW112は該当項目(終了情報に対応する項目)に対応する移動情報が存在するか否かを更に判定し(ステップS208),対応する移動情報が存在すると判定されれば処理はステップS209に進み,そうでなければ処理はステップS210に進み, ステップS209において,タッチパネル制御SW112は該当項目に関する未通知の情報を上位層120へ通知し,処理はステップS212に進み, ステップS210において,タッチパネル制御SW112は終了情報の示す位置が所定エリア内であるか否かを判定し,終了情報の示す位置が所定エリア内であれば処理はステップS211に進み,そうでなければ処理はステップS209に進み, ステップS211において,タッチパネル制御SW112は終了情報に対応する新規情報の取得時刻から終了情報の取得時刻までの経過時間がタイマー閾値以上であるか否かを判定し,経過時間がタイマー閾値以上であれば処理はステップS212に進み,そうでなければ処理はステップS209に進み,タイマー閾値は,設計的または実験的に定められてよく, ステップS212において,タッチパネル制御SW112は該当項目(終了情報に対応する項目)をタッチ情報管理テーブルから削除し,処理はステップS201に戻り, 上記処理を通じて,タッチパネル制御SW112はタッチパネル110への入力情報を有効な入力情報(上位層120へ通知すべき入力情報,情報処理装置の動作に反映される入力情報とも解釈できる)と無効な入力情報(上位層120へ通知すべきでない入力情報,情報処理装置の動作に反映されない入力情報とも解釈できる)との間で弁別しており,無効な入力情報の一類型として,情報処理装置100を保持するときにタッチパネル110に指が接触したことによって発生する入力情報を想定しており,この入力情報は,タッチ位置がタッチパネル110の縁付近に偏る,タッチ時間が長い,移動がない(または移動量が小さい)などの特徴を持ちやすいと予想され,タッチパネル制御SW112は,このような空間的特徴または時間的特徴を持つ入力情報を検出することにより,弁別を実現し,タッチパネル制御SW112は,該当項目に関する情報の上位層120への通知を省略し,意図しない処理の発生を予防しており, 無効な入力情報を弁別するためにタイマー閾値,所定エリア及び移動情報を利用しているが,これらの一部のみが利用されてもよいし,その他の評価基準が導入されてもよく, 所定エリア及びタイマー閾値は,ユーザの操作履歴に基づく学習によって決定されてよく,学習による所定エリア及びタイマー閾値の決定は,情報処理装置100を保持するときの個々のユーザの癖を反映させやすいという利点があり,例えば,無効な入力情報として判定された項目の位置を所定期間または所定数だけ蓄積し,検出頻度に応じて所定エリアを絞り込んでもよく(一例として,検出頻度が低いエリアを所定エリアから除外してもよい),所定エリアの絞り込みは,入力情報が無効であると誤判定される可能性を抑えられるなどの利点があり,また,所定エリア外の入力であったとしてもタッチ時間が比較的長い(例えばタイマー閾値以上)項目の位置を所定期間または所定数だけ蓄積し,検出頻度に応じて所定エリアを拡大させてもよく(一例として,検出頻度が高いエリアを所定エリアに追加してもよい),所定エリアの拡大は,入力情報が有効であると誤判定される可能性を抑えられるなどの利点があり,その他,入力情報の弁別に誤りがあったことをユーザからフィードバックし,フィードバック結果に基づいてタイマー閾値及び所定エリアが調整されてもよい 情報処理装置100」 3 引用文献2の記載および技術事項 (1)引用文献2の記載 引用文献2には,以下の記載がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,情報処理装置および方法に関し,特に,タッチパネルに依存することなくジェスチャ操作が実現できるようになった,情報処理装置および方法に関する。 【背景技術】 【0002】 近年,iPhone(Apple社の登録商標)に代表されるように,ユーザがタッチパネルに対してマルチタッチ方式でジェスチャ操作をすることができる情報処理装置が普及してきている。このような情報処理装置では,ユーザのジェスチャ操作に対応した所定の処理(以下,インタラクション処理と称する)が実行される(例えば,特許文献1参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開平5-100809号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら,マルチタッチ方式のジェスチャ操作を実現するためには,タッチパネルの画面の面積が一定以上であることが必要とされる。例えば,腕時計型の情報処理端末のように,形状が特殊で画面の面積が小さい情報処理装置においては,タッチパネル上でのマルチタッチ方式のジェスチャ操作の実現は困難である。換言すると,タッチパネル上でのジェスチャ操作を実現するためには,タッチパネルの画面の面積や,情報処理装置の形状に一定の制限がかけられる。 【0005】 本発明は,このような状況に鑑みてなされたものであり,タッチパネルに依存することなくジェスチャ操作を実現できるようにするものである。」 イ 「【0016】 [本発明の情報処理装置の外観構成例] 【0017】 図1は,本発明が適用される情報処理装置の一実施形態としてのモバイル端末装置の外観構成例を示す斜視図である。 【0018】 モバイル端末装置11の所定の面には,静電式タッチパネル22が配置されている。静電式タッチパネル22は,後述する図4の表示部22-Dに対して,後述する図4のタッチパネル用静電式タッチセンサ22-Sが積層されて構成される。静電式タッチパネル22においては,表示部22-Dの画面に対してユーザの指等が接触した場合,その接触が,タッチパネル用静電式タッチセンサ22-Sの静電容量の変化という形態で検出される。そして,後述する図4のCPU23において,タッチパネル用静電式タッチセンサ22-Sにより検出された指の接触位置の座標の遷移(時間推移)等が認識され,その認識結果に基づいて,ジェスチャ操作が検出される。なお,ジェスチャ操作の具体例や,その検出手法については,図2以降を参照して後述する。 【0019】 なお,以下,モバイル端末装置11を構成する面のうち,表示部22-Dが配置される面を表面と称し,表面の法線と直交する法線を有する面を側面と称する。図1の例では,側面としては4つの面が存在する。そこで,以下,静電式タッチパネル22(表示部22-D)の画面表示のデフォルトの方向を基準にして,表面に対して,上方向,下方向,右方向,および左方向のそれぞれに配置される側面を,上側面,下側面,右側面,および左側面のそれぞれと称する。 【0020】 モバイル端末装置11には,上側面に配置される側面静電式タッチセンサ21-1,および,下側面に配置される側面静電式タッチセンサ21-2がそれぞれ設けられている。さらに,モバイル端末装置11には,右側面に配置される側面静電式タッチセンサ21-3,および,左側面に配置される側面静電式タッチセンサ21-4が,それぞれ設けられている。 【0021】 なお,以下,側面静電式タッチセンサ21-1乃至21-4を個々に区別する必要がない場合,それらをまとめて,側面静電式タッチセンサ21と称する。 【0022】 モバイル端末装置11の側面に対してユーザの指等が接触した場合,その接触が,側面静電式タッチセンサ21の静電容量の変化という形態で検出される。そして,後述する図4のCPU23において,側面静電式タッチセンサ21により検出された指の接触位置の座標の遷移(時間推移)等が認識され,その認識結果に基づいて,ジェスチャ操作が検出される。なお,ジェスチャ操作の具体例や,その検出手法については,図2以降を参照して後述する。」 ウ 「【0061】 [ジェスチャ操作の誤検出の防止] 【0062】 以下,側面ジェスチャ操作対応インタラクション処理のうち,ステップS12,S13の処理について,さらにその詳細を説明する。 【0063】 本実施の形態のモバイル端末装置11の側面には,側面静電式タッチセンサ21が配置されている。したがって,ユーザは,ジェスチャ操作をするために,指や手の平等でモバイル端末装置11の側面を把持する場合,その側面に配置された側面静電式タッチセンサ21に,把持のための指や手の平等が接触することになる。このような場合も,CPU23は,その接触を検出することになるが,かかる接触を所定のジェスチャ操作であると誤検出してしまうと,誤ったインタラクション処理を実行してしまうことになる。 【0064】 そこで,このような誤検出を回避するために,側面ジェスチャ操作対応インタラクション処理において,ステップS12,S13の処理が実行されるのである。なお,以下,ステップS12,S13の処理を,ジェスチャ操作誤検出防止処理と称する。 【0065】 図6と図7は,ジェスチャ操作誤検出防止処理について説明する図である。 【0066】 例えば,図6のAに示される側面静電式タッチセンサ21-3の領域T(灰色の楕円状の領域T)において,接触が検出されたとする。この領域Tにおいて,一定以上の連続する接触が検出された面積が,ステップS12,S13でいう接触面積に相当する。 【0067】 従って,領域Tの接触面積が閾値以上である場合には,側面静電式タッチセンサ21-3に対する接触は,ジェスチャ操作のための接触ではなく,モバイル端末装置11を把持するための接触であると推定することができる。即ち,ユーザは,図6のBに示されるように,モバイル端末装置11を右手で把持するために,側面静電式タッチセンサ21-3が配置された右側面を右手の平等で接触させている状態であることが推定される。換言すると,ユーザは,右側面以外の側面に対して,ジェスチャ操作をする或いはその準備をしている状態であることが推定される。なお,接触面積の閾値は任意に設定可能であり,例えば,側面静電式タッチセンサ21の面積の30%と設定することができる。 【0068】 そこで,このような場合,図5のステップS12の処理でYESであると判定されて,ステップS13の処理で,側面静電式タッチセンサ21-3は,従って,後段のステップS14の処理におけるジェスチャ操作の検出対象から除外されるのである。即ち,ユーザにとっては,側面静電式タッチセンサ21-3に対して,把持している以外の指等でジェスチャ操作をしても,そのジェスチャ操作は無効になる。 【0069】 これに対して,例えば,図7のAに示される側面静電式タッチセンサ21-3の領域T1,T2,T3(灰色の円状の領域T1,T2,T3)において,接触がそれぞれ検出されたとする。これらの領域T1,T2,T3のそれぞれにおいて,一定以上の連続する接触が検出された面積が,ステップS12,S13でいう接触面積に相当する。 【0070】 従って,領域T1,T2,T3の接触面積が全て閾値未満である場合には,側面静電式タッチセンサ21-3に対する接触は,モバイル端末装置11を把持するための接触ではないと推定することができる。即ち,側面静電式タッチセンサ21-3に対する接触は,ジェスチャ操作をするため或いはその準備のための接触であると推定することができる。即ち,ユーザは,図7のBに示されるように,モバイル端末装置11を左手で把持するために,左側面を左手の平等で接触させている状態であることが推定される。換言すると,ユーザは,左側面以外の側面に対して,ジェスチャ操作をする或いはその準備をしている状態であることが推定される。即ち,ユーザにとっては,側面静電式タッチセンサ21-3が配置された右側面は,ジェスチャ操作の対象となり得る側面であることが推定される。要するに,領域T1,T2,T3に対する接触は,ジェスチャ操作のための接触か,或いは,モバイル端末装置11の把持の補助的な接触であることが推定される。 【0071】 そこで,このような場合,即ち,右側面を含む全側面に配置されている各側面静電式タッチセンサ21の接触面積が全て閾値未満である場合,図5のステップS12の処理でNOであると判定される。そして,ステップS13の処理は実行されずに,処理はステップS14に進む。従って,側面静電式タッチセンサ21-3は,ステップS14の処理におけるジェスチャ操作の検出対象となる。即ち,ユーザにとっては,側面静電式タッチセンサ21-3に対してジェスチャ操作をすると,そのジェスチャ操作は有効になる。 【0072】 このように,モバイル端末装置11はジェスチャ操作誤検出防止処理を実行することで,例えばユーザが片手でモバイル端末装置11の把持とジェスチャ操作を同時に行うような場合であっても,ジェスチャ操作の誤検出を防止することができるようになる。その結果,ユーザは,片手のみでも,モバイル端末装置11の側面に対するジェスチャ操作を行うことが可能となる。」 エ 図1 オ 図6 カ 図7 (2)引用文献2に記載の技術的事項 上記(1)イおよびウの下線部の記載および上記エの図1に着目すると,引用文献2には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「モバイル端末装置(コンピューティングデバイス)の上面に設けたタッチパネルとは別に,側面にタッチセンサを設けて,ジェスチャ入力を可能とするモバイル端末装置において, ジェスチャ操作の誤検出の防止のために, 側面に設けたタッチセンサに対する一定以上の連続する接触が検出された面積が,閾値以上である場合には,側面に設けたタッチセンサに対する接触は,ジェスチャ操作のための接触ではなく,モバイル端末装置を把持するための接触であると推定し,接触面積が閾値未満である場合には,側面に設けたタッチセンサに対する接触は,ジェスチャ操作のため或いはその準備のための接触であると推定する技術。」 4 引用文献3の記載および技術事項 (1)引用文献3の記載 引用文献3には,以下の記載がある。 ア 「技術分野 [0001] 本発明は,タッチを検知することが可能なタッチパネル式の表示部を備えた携帯情報端末に関する。 背景技術 [0002] 携帯電話機,PDA(Personal Digital Assistant),電子手帳に代表される携帯情報端末は,一般に,液晶等のディスプレイ画面によってテキストや画像を表示する表示部と,ユーザの操作によりコマンドやデータを入力する入力部とを備えている。 [0003] 一部の携帯情報端末では入力部にタッチパネル式が採用されている。入力部にタッチパネル式が採用された情報端末が,例えば,特表2009-522669号公報(以下では,特許文献1と称する)に開示されている。タッチパネル式を採用することにより,表示部と入力部を異なる位置に配置した場合に比べ,装置サイズに対して画面サイズを大きくすることができる。 [0004] しかしながら,利用者が携帯情報端末を操作するとき,手がディスプレイ画面に誤って触れてしまうことがありうる。手が触れた位置にユーザインタフェースの部品(UI部品;User Interface部品)が配置されていれば,携帯情報端末は,そのUI部品に対応した処理を実行することになる。その結果,携帯情報端末は,利用者が誤ってディスプレイ画面に触れた誤タッチによって,利用者が意図しない処理を実行してしまう。 [0005] タッチパネル式の入力部を備えた携帯情報端末において,誤タッチによる処理の実行を防ぐためには,入力されたタッチ操作が誤タッチによるものであるか否かを判定し,誤タッチによる操作を受け付けないようにする必要がある。しかしながら,利用者が意図する操作と誤タッチによる操作とを正確に判定することは困難である。 [0006] 利用者が意図する操作を誤タッチによる操作であると誤って判定すると,利用者が望む処理が実行されなくなり,利用者の利便性が損なわれる。一方,誤タッチによる操作を利用者が意図する操作であると誤って判定すると,利用者が意図しない処理が実行され,重大な問題が発生するおそれがある。 [0007] タッチパネル式の入力装置を備えたディジタルカメラにおいて誤操作を防止するための技術が,特開2009-86601号公報(以下では,特許文献2と称する)に開示されている。特許文献2に開示されたカメラは,撮影中や再生中等の動作状態に応じてタッチパネルからの操作を受け付ける領域を変更する。これにより,各動作状態において,利用者が意図しない誤操作が低減される。 [0008] また,ディスプレイ画面上に複数のウィンドウを同時に開くことができる装置において誤操作を防止するための技術が,特開平11-327735号公報(以下では,特許文献3と称する)に開示されている。特許文献3に開示された技術では,複数のウィンドウが重ねて表示されている場合に下側のウィンドウに対するタッチによる入力を無効にする。 これは,利用者の意図する操作は一番上に表示されたウィンドウに対して行われる可能性が高く,下側のウィンドウに対して行われる可能性は低いと考え,下側のウィンドウに対する誤操作により装置が利用者の意図しない動作を行う可能性を低減するものである。」 イ 「[0023] (第1の実施の形態) 本実施の形態では,持ち替えによって発生したタッチを特定タッチ操作とする例について説明する。 [0024] 利用者は,通常,携帯情報端末を手に持って使用するため,使用中に携帯情報端末を持ち替えることが多い。一般に,利用者は,携帯情報端末の両端部分を掴むことによりその携帯情報端末を保持しており,その携帯情報端末を持ち替えるとき,片方の手を一旦離して,携帯情報端末のいずれかの端部分を掴みなおす。 [0025] タッチパネル式の表示部を有する携帯情報端末では,装置サイズの小型化と画面サイズの大型化が進んでおり,接触を判別するセンサのない領域が小さくなってきている。そのため,利用者が携帯情報端末の端部分を掴んだときに,表示部の1つの辺の近傍に誤タッチする可能性が高い。 [0026] そこで,本実施の形態の携帯情報端末は,表示部の1つの辺の近傍に対する継続的なタッチが離されてから一定時間内にされた,表示部の1つの辺の近傍に対するタッチは,持ち替えによって発生した特定タッチ操作であると判別する。」 ウ 「[0075] 以上説明したように,本実施形態によれば,携帯情報端末は,UI部品に対するタッチ操作がされたとき,そのタッチ操作が誤タッチによるものである可能性が高い特定タッチ操作であるか否かを判別する。さらに,携帯情報端末は,タッチ操作がされたUI部品が特定UI部品であるか否かを判別する。そして,携帯情報端末は,特定タッチ操作が特定UI部品に対してされた場合,そのタッチを無効とし,その特定UI部品に対応する処理の実行を行わない。本実施形態の携帯情報端末では,タッチ操作が制限される範囲がUI部品単位で定められるため,誤タッチによって発生する影響の度合いが大きい処理の実行を,アプリケーションの動作状況やウィンドウの表示位置に係わらず,制限することができる。これにより,汎用的な携帯情報端末において,誤タッチの影響を効果的に低減することができる。 [0076] また,本実施形態の携帯情報端末は,タッチ操作が特定タッチ操作でない場合,またはタッチ操作によって指定されたUI部品が特定UI部品でない場合,そのUI部品に対応する処理を実行する。これにより,携帯情報端末は,通常のタッチ操作がされた場合や誤タッチによって発生する影響の度合いが小さい場合,通常通り処理を実行することができる。 [0077] また,本実施形態の携帯情報端末は,持ち替えによって発生したタッチ操作を誤タッチによるものである可能性が高い特定タッチ操作であると判別する。これにより,携帯情報端末は,利用者の意図しない誤操作を低減することができる。 [0078] また,本実施形態の携帯情報端末は,ディスプレイ画面の1つの辺の近傍に対する継続的なタッチが離されてから一定時間内にされたディスプレイ画面の任意の辺の近傍に対するタッチは,持ち替えによって発生した特定タッチ操作であると判別する。これにより,携帯情報端末は,利用者が自端末を掴みなおすときに発生した誤タッチによる誤操作を低減することができる。 [0079] また,本実施形態の携帯情報端末は,ディスプレイ画面の1つの辺の近傍に対する継続的なタッチが離されてから一定時間内にされた,そのタッチがされていた部分の近傍にある辺に隣接する辺の近傍に対するタッチは,持ち替えによって発生した特定タッチ操作であると判別する。これにより,携帯情報端末は,利用者が自端末を回転させるときに発生した誤タッチによる誤操作を低減することができる。 [0080] また,本実施形態の携帯情報端末は,ディスプレイ画面が押される強さが予め定められた所定量未満であるタッチ操作は特定タッチ操作でないと判別する。これにより,携帯情報端末は,より精度よく,誤タッチによるタッチ操作を検出することができる。 [0081] また,本実施形態の携帯情報端末は,ディスプレイ画面への接触が継続される時間が予め定められた所定量未満であるタッチ操作は特定タッチ操作でないと判別する。これにより,携帯情報端末は,より精度よく,誤タッチによるタッチ操作を検出することができる。」 エ 「[0096] 一般に,利用者は,携帯情報端末を操作するためにタッチパネルにタッチするとき人差し指や中指を使用する。一方,携帯情報端末を保持するためのタッチは,親指がタッチパネルに接触することにより発生する場合が多い。このように,一般に,携帯情報端末を操作するためのタッチをするときに指が接触する形状と携帯情報端末を掴むときに指が接触する形状は異なる。そこで,携帯情報端末に自端末を掴むときに利用者の指が接触する形状を予め登録しておき,タッチパネルにタッチされた部分の形状と予め登録された形状とを比較することにより,入力されたタッチ操作が持ち替えによって発生したものであるか否かを判別してもよい。」 (2)引用文献3に記載の技術的事項 上記(1)の下線部の記載に着目すると,引用文献3には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「利用者は,携帯情報端末を操作するためにタッチパネルにタッチするとき人差し指や中指を使用しており,携帯情報端末を保持するためのタッチは,親指がタッチパネルに接触することにより発生する場合が多いことから,携帯情報端末に自端末を掴むときに利用者の指が接触する形状を予め登録しておき,タッチパネルにタッチされた部分の形状と予め登録された形状とを比較することにより,入力されたタッチ操作が持ち替えによって発生したものであるか否かを判別する携帯情報端末。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。 ア 引用発明の「情報処理装置100」は,情報処理(コンピューティング)をする装置(デバイス)であるから,コンピューティングデバイスであるといえる。 また,引用発明の「情報処理装置100」は,タッチパネル110への入力情報を有効な入力情報(上位層120へ通知すべき入力情報,情報処理装置の動作に反映される入力情報とも解釈できる)と無効な入力情報(上位層120へ通知すべきでない入力情報,情報処理装置の動作に反映されない入力情報とも解釈できる)との間で弁別しており,無効な入力情報の一類型として,情報処理装置100を保持するときにタッチパネル110に指が接触したことによって発生する入力情報を想定しており,前者の入力情報がユーザの「意図的なタッチの接触」であり,後者の入力情報がユーザの「意図しないタッチの接触」であるといえる。 したがって,引用発明の「情報処理装置100」は,本願発明の「意図的なタッチの接触と意図的でないタッチの接触を区別する際に使用することが可能なコンピューティングデバイス」に対応する。 イ 引用発明の「情報処理装置100」は,入力機能及び表示機能の両方を持ったタッチパネル110を備えているから,タッチパネル110は,タッチ機能を備えたスクリーン(表示装置)である「タッチスクリーン」であるといえる。 また,図1を参照すると,タッチパネル110は,情報処理装置100の保持したユーザに面した側(すなわち「上面」)に備わっていることが認められる。 したがって,引用発明の「情報処理装置100」が「タッチパネル110」を備えることは,本願発明の「当該コンピューティングデバイスは:当該コンピューティングデバイスの上面に配置されるタッチスクリーン」を備えていることに対応する。 ウ 引用発明の「情報処理装置100」が,タッチパネル制御SW112,OS121及びアプリケーション122などを実行する「プロセッサ」を備えていることは,本願発明が,「プロセッサ」を備えていることに対応する。 エ 引用発明の「情報処理装置100」が,タッチパネル制御SW112によって使用される各種テーブル,データなどが記憶され,タッチパネル制御SW112,OS121及びアプリケーション122などをプロセッサに実行させるためのプログラム(すなわち,命令),タッチパネル制御SW112,OS121及びアプリケーション122などが使用するデータなどが記憶されてもよい「記憶部113」(すなわち,ストレージ)を備えていることは,本願発明が,「前記プロセッサによって実行される命令を格納することができるストレージ」を備えていることに対応する。 オ 引用発明の「情報処理装置100」は,情報処理装置100の縁(すなわち,サイド部分)付近まで実装されたタッチパネル110を備えており,情報処理装置100の縁とタッチパネル110の縁との間隔が小さいため,ユーザが情報処理装置100を保持する場合に、指10がタッチパネルの縁付近に接触しやすいため,タッチパネル110の縁付近が所定エリア130として定められており,当該所定エリア内のタッチ位置を検出し,当該エリアのタッチを意図しないタッチと判定している。 ここで,タッチパネルもタッチセンサの一種であることは当業者にとって明らかである。 また,コンピューティングデバイスの側面は,コンピューティングデバイスの縁部分であるといえる。 したがって,本願発明と引用発明とは,コンピューティングデバイスの縁部分に設けられたタッチセンサにより,ユーザのタッチを検出し,前記タッチセンサによって検出された前記タッチに関連するデータを分析して,前記タッチセンサへの前記タッチが意図的であるか意図的でないかを判断している点で共通している。 カ 引用発明の「情報処理装置100」は,タッチパネル制御ソフトウェア(SW)112(すなわち,プログラム)をプロセッサで実行することにより,「ステップS203においてタッチ情報が新規情報であると判定」したときから,「ステップS203においてタッチ情報が終了情報であると判定」した後に,「タッチパネル制御SW112は該当項目(終了情報に対応する項目)に対応する移動情報が存在するか否かを更に判定し(ステップS208),対応する移動情報が存在すると判定されれば処理はステップS209に進み,そうでなければ処理はステップS210に進み,ステップS209において,タッチパネル制御SW112は該当項目に関する未通知の情報を上位層120へ通知し,」「ステップS210において,タッチパネル制御SW112は終了情報の示す位置が所定エリア内であるか否かを判定し,終了情報の示す位置が所定エリア内であれば処理はステップS211に進み,そうでなければ処理はステップS209に進み,ステップS211において,タッチパネル制御SW112は終了情報に対応する新規情報の取得時刻から終了情報の取得時刻までの経過時間がタイマー閾値以上であるか否かを判定し,経過時間がタイマー閾値以上であれば処理はステップS212に進み,そうでなければ処理はステップS209に進み,」「ステップS212において,タッチパネル制御SW112は該当項目(終了情報に対応する項目)をタッチ情報管理テーブルから削除し」ている。 ここで,引用発明における「タッチパネル制御SW112は該当項目(終了情報に対応する項目)に対応する移動情報が存在するか否かを」「判定」すること,(移動の)「終了情報の示す位置が所定エリア内であるか否かを判定」すること,「新規情報の取得時刻から終了情報の取得時刻までの経過時間がタイマー閾値以上であるか否かを判定」することは,それぞれ,当該タッチ情報が,意図したものか,意図しないものかを判定する評価指標(インジケータ)であるといえる。 したがって,本願発明と引用発明とは,前記分析は,前記タッチに関連する前記データを,複数のインジケータと比較することを含み;前記複数のインジケータのうちの1つ以上のインジケータが前記タッチは意図的であると識別する場合,縁部分に設けられたタッチセンサへの前記タッチを受け入れ;前記1つ以上のインジケータが前記タッチは意図的でないと識別する場合,縁部分に設けられたタッチセンサへの前記タッチを排除する;ことを含む動作を実行する点で共通しているといえる。 しかし,本願発明では,タッチに関連するデータを,複数のインジケータと比較する際に,ある期間にわたって得られたインジケータと比較しているのに対して,引用発明では,タッチに関連するデータを,複数のインジケータと比較する際に,ある期間にわたって得られたインジケータと比較していない点で相違している。 (2)一致点 本願発明と,引用発明とは,以下の点で一致する。 「意図的なタッチの接触と意図的でないタッチの接触を区別する際に使用することが可能なコンピューティングデバイスであって, 当該コンピューティングデバイスは: 当該コンピューティングデバイスの上面に配置されるタッチスクリーンと, プロセッサと, 前記プロセッサによって実行される命令を格納することができるストレージであって,前記命令は,前記プロセッサによって実行されると: 当該コンピューティングデバイスの縁部分に設けられたタッチセンサにより,ユーザのタッチを検出し, 前記タッチセンサによって検出された前記タッチに関連するデータを分析して,前記タッチセンサへの前記タッチが意図的であるか意図的でないかを判断することであって, 前記分析は,前記タッチに関連する前記データを,複数のインジケータと比較することを含み; 前記複数のインジケータのうちの1つ以上のインジケータが前記タッチは意図的であると識別する場合,前記タッチセンサへの前記タッチを受け入れ; 前記1つ以上のインジケータが前記タッチは意図的でないと識別する場合,前記タッチセンサへの前記タッチを排除する; ことを含む動作を実行することになる, コンピューティングデバイス。」 (3)相違点 本願発明と,引用発明とは,以下の点で相違する。 ア 相違点1 本願発明は,上面とは異なる,コンピューティングデバイスの側面に配置されるサイドタッチセンサを備え,当該サイドタッチセンサにより,ユーザのタッチを検出しているのに対して, 引用発明は,このようなサイドタッチセンサを備えていない点。 イ 相違点2 意図的でないタッチを排除するために,本願発明では,タッチに関連するデータを,複数のインジケータと比較する際に,ある期間にわたって得られたインジケータと比較しているのに対して, 引用発明では,タッチに関連するデータを,複数のインジケータと比較する際に,ある期間にわたって得られたインジケータと比較していない点。 (4)相違点について 事案に鑑みて,上記相違点2について,検討する。 相違点2に係る本願発明1の意図的でないタッチを排除するために,「前記分析は,前記タッチに関連する前記データを,ある期間にわたって得られた複数のインジケータと比較する」という構成は、上記引用文献1-3には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。 2 本願発明2?21について 本願発明2ないし21も、本願発明1の意図的でないタッチを排除するために,「前記分析は,前記タッチに関連する前記データを,ある期間にわたって得られた複数のインジケータと比較する」と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 その他の当審拒絶理由について 当審拒絶理由の理由2(明確性)および理由3(サポート要件)は,いずれも,令和2年10月6日提出の補正により、解消された。 第7 原査定についての判断 令和2年10月6日提出の補正により、補正後の請求項1、2は「前記分析は,前記タッチに関連する前記データを,ある期間にわたって得られた複数のインジケータと比較する」という技術的事項を有するものとなった。当該「前記分析は,前記タッチに関連する前記データを,ある期間にわたって得られた複数のインジケータと比較する」は、原査定における引用文献AおよびB(当審拒絶理由における引用文献2、3)には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1-21は、当業者であっても、原査定における引用文献AおよびBに基づいて容易に発明できたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-04-20 |
出願番号 | 特願2016-67668(P2016-67668) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木内 康裕、星野 昌幸 |
特許庁審判長 |
稲葉 和生 |
特許庁審判官 |
野崎 大進 北川 純次 |
発明の名称 | 意図的でないタッチセンサへの接触を排除するモバイルデバイス |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |