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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1373660 |
審判番号 | 不服2020-2748 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-02-28 |
確定日 | 2021-05-07 |
事件の表示 | 特願2018-108217「タッチスクリーンを有する有機発光表示装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開、特開2018-205744〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年6月6日(パリ条約による優先権主張2017年6月7日、韓国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和元年 5月 31日付け:拒絶理由通知 令和元年 9月 3日: 意見書の提出 令和元年10月 25日付け:拒絶査定(送達日:同月29日) 令和2年 2月 28日: 拒絶査定不服審判の請求 第2 本願発明 本願の請求項1?21に係る発明は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定されるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。 「アクティブ領域と非アクティブ領域を有する基板; 前記アクティブ領域に配置された複数の薄膜トランジスタ; 前記アクティブ領域に前記薄膜トランジスタのそれぞれに接続された発光素子; 前記薄膜トランジスタ及び発光素子を覆う封止層; 前記封止層上の前記アクティブ領域に互いに交差して配置される複数の第1タッチ電極及び第2タッチ電極を含むタッチ電極アレイ; 前記基板の同じ辺に位置する非アクティブ領域に、離隔して平行に配置された複数の表示パッド及び複数のタッチパッド;及び 前記表示パッド及びタッチパッドに一緒に接続されたフレキシブルプリント回路基板を含む、有機発光表示装置。」 上記記載において、「前記アクティブ領域に前記薄膜トランジスタのそれぞれに接続された発光素子」なる記載が、「前記アクティブ領域の前記薄膜トランジスタのそれぞれに接続された発光素子」の誤記であることは明らかであるから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下に特定されるとおりのものであると認める。(下線は当審による。) 「アクティブ領域と非アクティブ領域を有する基板; 前記アクティブ領域に配置された複数の薄膜トランジスタ; 前記アクティブ領域の前記薄膜トランジスタのそれぞれに接続された発光素子; 前記薄膜トランジスタ及び発光素子を覆う封止層; 前記封止層上の前記アクティブ領域に互いに交差して配置される複数の第1タッチ電極及び第2タッチ電極を含むタッチ電極アレイ; 前記基板の同じ辺に位置する非アクティブ領域に、離隔して平行に配置された複数の表示パッド及び複数のタッチパッド;及び 前記表示パッド及びタッチパッドに一緒に接続されたフレキシブルプリント回路基板を含む、有機発光表示装置。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1-21に係る発明は、その優先日前の特許出願であって、本願の出願後に出願公開がされた特願2017-21187号(特開2018-128835号)(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者が先願の発明者と同一ではなく、また本願の出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の規定により、特許を受けることができない、というものである。 第4 先願発明 原査定の拒絶の理由に引用された先願明細書等には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。 (1)「【0009】 図1は、実施形態に係るタッチセンサ内蔵表示装置(以下、単に表示装置ともいう)の平面図である。図2は、図1に示す一点鎖線の枠内を拡大した図である。表示装置の例として、有機EL表示装置を挙げる。表示装置1は、例えば赤、緑及び青からなる複数色の単位画素(サブピクセル)を組み合わせてフルカラーの画素を形成し、フルカラーの画像を表示するようになっている。 【0010】 表示装置1は、表示パネル10と、表示パネル10の表示領域15上に形成されたタッチセンサ20とを有している。表示パネル10の表示領域15の外側には周辺領域(額縁領域)11が形成されており、周辺領域11には画素を駆動するための集積回路チップ12が搭載され、外部との電気的接続のためのFPC(フレキシブルプリント基板)13が接続されている。以下の説明においては、周辺領域11のFPC13が接続される辺に沿った方向をX方向とし、それと直交する方向をY方向とする。」 (2)「【0013】 基板30は、例えばガラス、又はポリイミド等の可撓性がある樹脂からなる。基板30はアンダーコート層31によって覆われている。アンダーコート層31上には半導体層41が形成されており、半導体層41はゲート絶縁膜33によって覆われている。ゲート絶縁膜33上にはゲート電極43が形成されており、ゲート電極43はパシベーション膜35によって覆われている。ドレイン電極45及びソース電極47は、ゲート絶縁膜33とパシベーション膜35とを貫通して半導体層41に接続されている。半導体層41、ゲート電極43、ドレイン電極45及びソース電極47により薄膜トランジスタ40が構成される。薄膜トランジスタ40は、複数の単位画素のそれぞれに対応するように設けられている。アンダーコート層31、ゲート絶縁膜33及びパシベーション膜35は、例えばSiO_(2)又はSiN等の無機絶縁材料で形成されている。」 (3)「【0016】 層間絶縁膜53上には画素電極61(例えば陽極)が形成されている。画素電極61は、平坦化膜51と層間絶縁膜53とを貫通してソース電極47に接続されている。画素電極61は、複数の単位画素のそれぞれに対応するように個別に設けられている。本実施形態では、表示パネル10はトップエミッション型であり、画素電極61は反射電極として形成されている。また、周辺領域11には端子67,68が形成されており、平坦化膜51と層間絶縁膜53とを貫通して引き出し配線49の両方の端部にそれぞれ接続されている。画素電極61及び端子67,68は、例えばAl、Ag、Cu、Ni、Ti、Mo等を含む導電性材料で形成されている。」 (4)「【0020】 発光層63及び画素分離膜55は対向電極65(例えば陰極)によって覆われている。対向電極65は、表示領域15の全体に広がる一様な膜(いわゆるベタ膜)として形成されている。発光層63並びに発光層63を挟む画素電極61及び対向電極65によって発光素子60が構成され、発光層63は画素電極61と対向電極65との間を流れる電流によって発光する。対向電極65は、例えばITO,IZO等の透明導電材料又はMgAg等の金属薄膜で形成される。 【0021】 画素分離膜55及び対向電極65は、封止膜(パシベーション膜)70によって覆われることで封止され、水分から遮断される。封止膜70は、例えば無機膜71、有機膜73及び無機膜75を下からこの順に含む三層積層構造を有している。無機膜71,75は、例えばSiO2又はSiN等の無機絶縁材料で形成されている。有機膜73は、例えばアクリル樹脂等の有機絶縁材料で形成されており、封止膜70の上面を平坦化させる。」 (5)「【0024】 表示装置1は、封止膜70上にタッチセンサ20を有している。封止膜70上には、2次元的に配列された複数の第1電極21と複数の第2電極22とが形成されている。第1電極21と第2電極22とは、静電容量方式タッチセンサの駆動電極と検出電極とを構成する。本実施形態では、第1電極21及び第2電極22は層間絶縁膜83によって覆われている。層間絶縁膜83は、例えばアクリル樹脂等の有機絶縁材料、又はSiO_(2)又はSiN等の無機絶縁材料で形成されている。ただし、詳しくは後述するが、当該層間絶縁膜83により水分遮断領域17に形成された分断溝51dを埋め、平坦化する必要があるため、それに好適な材料が選択されるのが好ましい。」 (6)「【0026】 複数の第1電極21はX方向とY方向とにそれぞれ並んで2次元的に配列されている。これらの第1電極21のうち、X方向に隣り合う第1電極21は第1接続線23を介して接続されており、Y方向に隣り合う第1電極21は接続されていない。すなわち、複数の第1電極21は、X方向に隣り合う第1電極21が第1接続線23を介して接続されることでX方向に延びる複数の電極列をそれぞれ形成しており、それぞれの電極列はY方向には電気的に分離されている。 【0027】 複数の第2電極22もX方向とY方向とにそれぞれ並んで2次元的に配列されている。これらの第2電極22のうち、Y方向に隣り合う第2電極22は第1接続線23と平面視で交差する第2接続線24を介して接続されており、X方向に隣り合う第2電極22は接続されていない。すなわち、複数の第2電極22は、Y方向に隣り合う第2電極22が第2接続線24を介して接続されることでY方向に延びる複数の電極列を形成しており、それぞれの電極列はX方向には電気的に分離されている。」 (7)「【0039】 一方、表示領域15から離れた端子68(第2端子)には、異方導電部材139を介してFPC13が接続されている。また、周辺領域11には発光素子60に電気的に接続された不図示の端子(第3端子)も設けられており、この不図示の端子にも異方導電部材139を介してFPC13が接続されている。この不図示の端子は、例えば薄膜トランジスタ40及び集積回路チップ12等を介して発光素子60に電気的に接続されている。」 (8)「【0044】 さらに、本実施形態では、FPC13は、タッチセンサ20に電気的に接続された端子68(第2端子)と、発光素子60に電気的に接続された不図示の端子(第3端子)との両方に接続されている。このため、1枚のFPC13によってタッチセンサ20と発光素子60との両方に外部から信号を供給することが可能である。」 (9)先願明細書等の図3及び段落【0013】、【0020】、【0021】の記載から、封止膜70が薄膜トランジスタ40及び発光素子60を覆っていることが見て取れる。 【図1】 【図3】 上記記載から、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているといえる。 「表示パネル10と、表示パネル10の表示領域15上に形成されたタッチセンサ20とを有しており、表示パネル10の表示領域15の外側には周辺領域(額縁領域)11が形成されており、周辺領域11にFPC13が接続され(【0010】)、 基板30には、半導体層41、ゲート電極43、ドレイン電極45及びソース電極47により薄膜トランジスタ40が構成され、薄膜トランジスタ40は、複数の単位画素のそれぞれに対応するように設けられており(【0013】)、 画素電極61は、ソース電極47に接続され、複数の単位画素のそれぞれに対応するように個別に設けられており(【0016】)、 対向電極65は、表示領域15の全体に広がる一様な膜(いわゆるベタ膜)として形成され、発光層63並びに発光層63を挟む画素電極61及び対向電極65によって発光素子60が構成され(【0020】)、 封止膜70が薄膜トランジスタ40及び発光素子60を覆っており(【0013】、【0020】、【0021】、図3)、 封止膜70上には、2次元的に配列された複数の第1電極21と複数の第2電極22とが形成されており、第1電極21と第2電極22とは、静電容量方式タッチセンサの駆動電極と検出電極とを構成し(【0024】)、 複数の第1電極21はX方向とY方向とにそれぞれ並んで2次元的に配列され、複数の第1電極21は、X方向に延びる複数の電極列をそれぞれ形成しており(【0026】)、 複数の第2電極22もX方向とY方向とにそれぞれ並んで2次元的に配列され、複数の第2電極22は、Y方向に延びる複数の電極列を形成しており(【0027】)、 FPC13は、タッチセンサ20に電気的に接続された端子68(第2端子)と、発光素子60に電気的に接続された端子(第3端子)との両方に接続されている(段落【0044】)、有機EL表示装置(【0009】)。」 第5 対比・判断 1 本願発明と先願発明の対比 (1)先願発明の「表示領域15」、「周辺領域11」に対応する「基板30」の領域は、それぞれ本願発明の「アクティブ領域」、「非アクティブ領域」に相当するから、先願発明の「基板30」は、本願発明の「アクティブ領域と非アクティブ領域を有する基板」に相当する。 (2)先願発明の「薄膜トランジスタ40」は、「複数の単位画素のそれぞれに対応するように設けられて」いるものであるから、「表示領域15に」複数配置されていることは明らかであって、本願発明の「アクティブ領域に配置された複数の薄膜トランジスタ」に相当する。 (3)先願発明の「発光素子60」は、それを構成する「画素電極61」が、「薄膜トランジスタ40」の「ソース電極47に接続され、複数の単位画素のそれぞれに対応するように個別に設けられて」いるものであるから、本願発明の「アクティブ領域の前記薄膜トランジスタのそれぞれに接続された発光素子」に相当する。 (4)先願発明の「封止層70」は、「表示領域15の全体に広がる一様な膜(いわゆるベタ膜)として形成され」た「対向電極65」を覆って封止するものであるから、上記の(2)(3)を考慮すると、「薄膜トランジスタ40」及び「発光素子60」を覆っており、本願発明の「前記薄膜トランジスタ及び発光素子を覆う封止膜」に相当する。 (5)先願発明の「タッチセンサ20」は、「表示領域15上に形成」され、かつ、「封止膜70上に」形成される「2次元的に配列された複数の第1電極21と複数の第2電極22」により構成されている。そして「複数の第1電極21はX方向とY方向とにそれぞれ並んで2次元的に配列され」、「X方向に延びる複数の電極列をそれぞれ形成しており」、「複数の第2電極22もX方向とY方向とにそれぞれ並んで2次元的に配列され」、「Y方向に延びる複数の電極列を形成して」いるから、上記「2次元的に配列された複数の第1電極21と複数の第2電極22」は、本願発明の「前記封止膜上の表示領域に互いに交差して配置される複数の第1電極及び第2電極を含むタッチ電極アレイ」に相当する。 (6)先願発明の「タッチセンサ20に電気的に接続された端子68(第2端子)と、発光素子60に電気的に接続された端子(第3端子)と」は、「周辺領域11」において共通の「FPC13」に両方とも接続されており、これらの端子が複数個設けられることも当然であるから、先願発明の上記「第2端子」及び「第3端子」と本願発明の「前記基板の同じ辺に位置する非アクティブ領域に、離隔して平行に配置された複数の表示パッド及び複数のタッチパッド」とは、「前記基板の同じ辺に位置する非アクティブ領域に配置された複数の表示端子及び複数のタッチ端子」である点で共通するといえる。 (7)先願発明の「FPC13」は、「タッチセンサ20に電気的に接続された端子68(第2端子)と、発光素子60に電気的に接続された端子(第3端子)との両方に接続されて」いることから、本願発明の「フレキシブルプリント回路基板」と先願発明の「FPC13」は、「前記表示端子及びタッチ端子に一緒に接続されたフレキシブルプリント回路基板」である点で共通する。 (8)先願発明の「有機EL表示装置」は、本願発明の「有機発光表示装置」に相当する。 そうすると、両者は、 「アクティブ領域と非アクティブ領域を有する基板; 前記アクティブ領域に配置された複数の薄膜トランジスタ; 前記アクティブ領域の前記薄膜トランジスタのそれぞれに接続された発光素子; 前記薄膜トランジスタ及び発光素子を覆う封止層; 前記封止層上の前記アクティブ領域に互いに交差して配置される複数の第1タッチ電極及び第2タッチ電極を含むタッチ電極アレイ; 前記基板の同じ辺に位置する非アクティブ領域に配置された複数の表示端子及び複数のタッチ端子;及び 前記表示端子及びタッチ端子に一緒に接続されたフレキシブルプリント回路基板 を含む、有機発光表示装置。」 である点で一致し、 「前記基板の同じ辺に位置する非アクティブ領域に配置された複数の表示端子及び複数のタッチ端子」について、本願発明が 「離隔して平行に配置された複数の表示パッド及び複数のタッチパッド」 であるのに対し、先願発明は、それぞれの端子が「離隔して平行に配置され」た「パッド」であることを明示していない点で一応相違する。 2 一応の相違点についての検討 (1)技術常識の認定 ア 本願の優先日より前に公開された特開2013-131677号公報には、次の事項が記載されている。 「【0024】 (接合部10A0) 図3は、接合部10A0付近の構成を拡大して表したものである。図4(A),(B)は、この接合部10A0を分解して表したものであり、(A)は基板10上の要部構成、 (B)は、FPC20の接着面側の構成をそれぞれ表している。 【0025】 基板10に形成された配線層11は、上記のように複数の配線11aからなるが、これらの複数の配線11aはそれぞれ、各端部に接続用パッド11bを有している。詳細には、各配線11aは、その一端が、例えば上述した基板10上の素子部における薄膜トラジスタの端子部(例えばゲート、ソースまたはドレイン)と電気的に接続され、他端が基板10の周縁部において接続用パッド11bに接続されている。配線11aおよび接続用パッド11bは、例えばアルミニウム(Al)の単体または合金、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタン(Ti)またはITO等からなり、厚みは、例えば0.1μm?2μmである。これらの配線11aおよび接続用パッド11bは、互いに同一の材料により一括形成(一体的に形成)されてもよいし、互いに異なる材料により形成されていてもよい。」 「【0027】 これらの配線層11および配線層21は、図示しない接着層を介して対向配置されている(接着されている)。接着層は、例えば、導電性膜(ACF:Anisotropic Conductive Film)の一種である、異方導電性接着剤から構成され、厚みは例えば25μm?30μmである。この異方導電性接着剤は、例えば接着フィルムの中に、導電性粒子を分散させて混入したもので、一対の電極間に挟み込んで圧接すると、これらの電極間において導通が得られるようになっている。このような異方導電性接着剤を用いた接合を、ACF接合といい、これにより配線11a,21a間(詳細には、接続用パッド11b,21b間)の電気的接続が確保されている。配線層11,21同士の接着対象領域となる、接続用パッド11b,21bのX方向の幅は、例えば50μm?250μmとなっている。尚、接続用パッド11bのY方向の幅は、後述の2段階実装を考慮して、接続用パッド21bよりも長くなるように設計されている。」 【図3】 【図4】 イ 本願の優先日より前に公開された特開2015-195094号公報には、次の事項が記載されている。 「【0019】 図1は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置100の概略構成を示す平面図である。図1に示すように、有機EL表示装置100の中央部には、基板2上に、例えば、三原色(赤(R)、緑(G)、青(B))及び白色(W)をそれぞれ発することにより一つの画素10を構成する、4つ一組のサブ画素10aがマトリクス状に複数配置されて構成される。複数の画素10に含まれる各サブ画素10aが選択的且つ発光量を調整して駆動されることによって、画像が表示される表示領域50が形成される。また、表示領域50の周辺領域には、表示領域50内の各画素10を選択的且つ発光量を調整して駆動するための駆動回路(Xドライバ、Yドライバ、シフトレジスタ等)30、40が配置される。 【0020】 基板2上の表示領域50には、各駆動回路30、40に導通した複数の制御信号線と複数のデータ信号線とが互いに交差して配置され、制御信号線とデータ信号線との交差部に対応する位置には、複数の画素10がマトリクス状に配置される。各画素10には、制御信号線から供給される制御信号に応じて画素10に供給されるデータ電圧の書き込みを制御することにより画素10の発光を制御する薄膜トランジスタと、データ信号線から供給されるデータ電圧を保持する容量素子等を備える画素回路が配置される。 【0021】 また、基板2上には、各駆動回路30、40に導通して各駆動回路30、40に対して電源電圧や駆動信号を供給するともにグラウンドへの接地を行うための多数の配線パターンが形成される。各配線パターンの端部は、基板2上の金属電極60aにそれぞれ接続される。各金属電極60aは、例えば、外部から駆動電力、駆動信号及びアース電位等を供給するフレキシブルプリント回路基板(図示せず)に接続される端子領域60として構成されてもよい。」 【図1】 ウ 本願の優先日より前に公開された特開2007-180032号公報には、次の事項が記載されている。 「【0022】 また、図2a?図2cに示すように、上記のような構造を有する表示部Aは、スキャン配線217A、217B及びデータ配線218と接続される。スキャン配線217A、217Bは、左右交互に形成され、スキャン配線217A、217B及びデータ配線218の末端には、第1パッド部280Aが設けられる。そして、表示部Aのエッジ領域には、第1シーラント270Aが塗布される。」 「【0026】 そして、前記第1パッド部280Aと対応する領域のフィルム290上には、第2パッド部280Bが設けられる。第2パッド部280B は、駆動部295と電気的に接続される。第1パッド部280Aと第2パッド部280Bは、第1基板と第2基板との接着時に異方性導電フィルムACF(Anisotropic Conductive Film)285に接触し、これにより、第2パッド部280Bは、駆動部295からの駆動信号を第1パッド部280Aに供給できる。」 【図2a】 【図2b】 【図2c】 エ 本願の優先日より前に公開された特開2014-110418号公報には、次の事項が記載されている。 「【0028】 図3及び図4A、図4Bに示すように、本発明の実施形態に係るタッチセンサTSは、タッチ電極が形成されるタッチ電極形成領域A、タッチ電極と各々接続されるルーティング配線が形成されるルーティング配線形成領域B、及びルーティング配線とタッチ駆動回路の信号ラインを接続するためのルーティングパッドが形成されるパッド形成領域Cを備える。」 「【0042】 パッド形成部Cは、ベース層100のルーティング配線部Bに隣接して形成される複数の第1ルーティングパッドRP1?RP3と、複数の第2ルーティングパッドTP1?TP3とを備える。 【0043】 複数の第1ルーティングパッドRP1?RP3は、各々複数の第1ルーティング配線RW1?RW3を介して複数の第1タッチ電極Rx1?Rx3に各々接続される。複数の第2ルーティングパッドTP1?TP3は、各々複数の第2ルーティング配線TW1’?TW3’、複数の接続部C1?C3、及び複数の第3ルーティング配線TW1?TW3を介して複数の第2タッチ電極Tx1?Tx3に各々接続される。第1及び第2ルーティングパッドRP1?RP3、TP1?TP3もルーティング配線と同様に、透明導電性物質からなる第1層と金属物質からなる第2層の2層構造で形成される。」 【図3】 オ 技術常識の認定 前記アからエを踏まえると、FPC(フレキシブルプリント基板)を接続する基板の端子構造として、複数のパッドを隔離して平行に配置させたものは技術常識であると認められる。 (2)一応の相違点についての判断 前記(1)のオにおいて認定したとおり、FPC(フレキシブルプリント基板)を接続する基板の端子構造として、複数のパッドを隔離して平行に配置させたものは技術常識であり、当業者が先願明細書等にあたった場合には、FPCが接続される端子の構造として、そのような複数のパッドを隔離して平行に配置させたものを当然に認識するといえるから、上記の相違点は実質的な相違点ではない。 したがって、本願発明と先願発明は実質的に同一であり、また、本願の発明者が先願の発明者と同一ではなく、本願の出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないから、本願発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-12-03 |
結審通知日 | 2020-12-08 |
審決日 | 2020-12-21 |
出願番号 | 特願2018-108217(P2018-108217) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(G09F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 直行 |
特許庁審判長 |
岡田 吉美 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 中塚 直樹 |
発明の名称 | タッチスクリーンを有する有機発光表示装置及びその製造方法 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 吉澤 弘司 |