• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1373776
審判番号 不服2020-7758  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-05 
確定日 2021-05-25 
事件の表示 特願2015- 92857「表示装置及び表示装置の初期設定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日出願公開、特開2016-212147、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 4月 6日 :手続補正書
令和 元年 5月 8日付け :拒絶理由通知
令和 元年 7月 3日 :意見書・手続補正書
令和 元年 9月12日付け :拒絶理由通知
令和 元年11月12日 :意見書・手続補正書
令和 2年 3月10日付け :拒絶査定(原査定)
令和 2年 6月 5日 :本件審判請求・手続補正書
令和 3年 3月12日付け :拒絶理由通知
令和 3年 3月30日 :意見書・手続補正書

第2 原査定の概要
原査定(令和2年3月10日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。

この出願の請求項1?11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記引用文献1?8に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2012-088472号公報
2.特開2004-341027号公報
3.特開2014-035668号公報
4.特開昭58-018673号公報
5.実願昭55-191774号(実開昭57-115018号)のマイクロフィルム
6.特開2010-249896号公報
7.特開平05-328260号公報
8.特開2006-209144号公報

第3 本願発明
本願請求項1?9に係る発明(以下「本願発明1」などという。)は、令和3年3月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?9は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
(A)観察者の頭部に装着されるフレーム、
(B)フレームに取り付けられた画像表示装置、及び、
(C)外部から入射する外光の光量を調整する調光装置、
を備えた表示装置であって、
画像表示装置は、
(a)画像形成装置、及び、
(b)画像形成装置から出射される光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置、
を備えており、
光学装置の虚像形成領域は、調光装置と重なっており、
画像形成装置から出射される光に基づき、虚像形成領域の一部分において虚像が形成されるとき、少なくとも調光装置への虚像の投影像を含む調光装置の虚像投影領域の遮光率が、調光装置の他の領域の遮光率よりも高くなるように、調光装置が制御され、
画像形成装置から出射された光に基づき光学装置に虚像が形成される前に、調光装置の虚像投影領域の遮光率を、時間の経過に従い、順次、増加させ、
光学装置に形成される虚像に外接する仮想矩形を想定し、仮想矩形の横方向及び縦方向の長さをL_(1-T)及びL_(1-L)とし、調光装置の虚像投影領域の形状を、横方向及び縦方向の長さがL_(2-T)及びL_(2-L)の矩形形状としたとき、
1.0≦L_(2-T)/L_(1-T)≦1.5
1.0≦L_(2-L)/L_(1-L)≦1.5
を満足する表示装置。
【請求項2】
調光装置の虚像投影領域の大きさ及び位置は可変である請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
調光装置の虚像投影領域の遮光率が増加されてから虚像が形成されるまでの時間は、0.5秒乃至30秒である請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
虚像が形成されていない場合、調光装置の虚像投影領域の遮光率は、調光装置の他の領域の遮光率と同じ値である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
虚像の形成が終了し、虚像が消滅したとき、調光装置の虚像投影領域の遮光率を、経時的に調光装置の他の領域の遮光率と同じ値とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
調光装置の動作時、調光装置の他の領域の遮光率は、調光装置の虚像投影領域の遮光率を「1」としたとき、0.95以下である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
調光装置の動作時、調光装置の虚像投影領域の遮光率は、35%乃至99%である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
調光装置は、
第1基板、
第1基板と対向する第2基板、
第2基板と対向する第1基板の対向面に設けられた第1透明電極、
第1基板と対向する第2基板の対向面に設けられた第2透明電極、及び、
第1透明電極と第2透明電極とによって挟まれた調光層、
から成る請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
第1透明電極は、第1の方向に延びる複数の帯状の第1透明電極セグメントから構成されており、
第2透明電極は、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数の帯状の第2透明電極セグメントから構成されており、
第1透明電極セグメントと第2透明電極セグメントの重複領域に対応する調光装置の部分の遮光率の制御は、第1透明電極セグメント及び第2透明電極セグメントに印加する電圧の制御に基づき行われる請求項8に記載の表示装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の記載があり、以下の発明が記載されていると認められる。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置に関する。」

(2)「【0021】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1 実施形態に係る虚像表示装置について詳細に説明する。
【0022】
〔A .虚像表示装置の外観〕
図1に示す本実施形態に係る虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。虚像表示装置100は、一対の光学パネル101,102と、両光学パネル101,102を支持するフレーム104と、フレーム104のヨロイからテンプルにかけての部分に付加された一対の駆動部111,112とを備える。ここで、図面上で左側の光学パネル101と駆動部111とを組み合わせた第1表示装置100Aは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で右側の光学パネル102と駆動部112とを組み合わせた第2表示装置100Bは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。
【0023】
〔B.片側の表示装置の構造〕
図2(A)に示すように、第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光板20と、調光板40とを備える。ここで、画像形成装置10は、図1における駆動部111に相当し、導光板20及び調光板40は、図1における光学パネル101に相当する。調光板40は、導光板20よりもひとまわり大きく、導光板20の表側すなわち外界側を全体的に覆うように配置されている。なお、図2(A)は、図2(B)に示す導光板20及び調光板40のA-A断面に対応するものとなっている。
【0024】
画像形成装置10は、画像表示装置11と、投射光学系12とを有する。このうち、画像表示装置11は、2次元的な照明光を射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32とを有する。まず、照明装置31は、赤、緑、青の3色を含む光SLを発生する光源31aと、光源31aからの光SLを拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部31bと、バックライト導光部31bから射出される照明光の配光特性を利用効率を考慮した適切なものに修正する射出角調整部材31cとを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光を空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。」

(3)「【0033】
調光板40は、薄板状の光学素子であり、エレクトロクロミック素子、液晶パネル、透過型電圧素子等で構成される。調光板40は、導光板20の表側に近接して導光板20の略平行に配置されているが、導光板20よりも広い面積を有して導光板20を表側すなわち外界側から覆っており、導光板20の表面すなわち第1の全反射面22aに物体が接触して損傷が発生したり汚れが付着したりすること等を防止している。
【0034】
図3に示すように、調光板40は、図2(A)に示す導光板20の画像取り出し部90又は光射出面OSに対向しており画像取り出し部90に視野上で重なる矩形の第1領域A0と、導光板20のうち画像取り出し部90を除いた周囲の部分(視野上で画像取り出し部90の上下左右に隣接する部分)に対向しており画像取り出し部90に視野上で重ならない第2領域A1とを有する。さらに、第2領域A1は、導光板20のうち角度変換部23を除いた周囲の部分(視野上で角度変換部23の上下左右に隣接する部分)に対向する第1周囲領域A11と、視野上で画像取り出し部90の上下に隣接する部分に対向する一対の矩形の第2周囲領域A12,A12とを有する。これらの第1領域A0と、第1周囲領域A11と、第2周囲領域A12,A12とは、独立して透過率を調整できるようになっているが、各領域A0,A11,A12,A12の面内における透過率は、略一様で等しいものとなっている。なお、調光板40は、これを例えばエレクトロクロミック素子で構成する場合、図示を省略するが、透明電極を内側に形成した一対の平板ガラスの間にエレクトロクロミック物質を挟んだ構造を有するものとなる。ここで、透明電極の輪郭を適宜設定することにより、上記のような第1領域A0と、第1周囲領域A11と、第2周囲領域A12,A12とを形成するとともに、これらを独立して駆動することができる。また、調光板40を透過型の液晶表示デバイスで構成する場合、調光板40は、図示を省略するが、透明電極を内側に形成した一対の平板ガラスの間に液晶分子を挟んだ液晶パネルと、液晶パネルの表面及び裏面に貼り付けられた一対の偏光フィルターとを備えるものとなる。さらに、調光板40をゲストホスト型の液晶表示デバイスで構成する場合、調光板40は、図示を省略するが、液晶パネル内に液晶分子と色素分子とを挟んだ構造とするだけで足り、偏光フィルターを省略することができる。その他、調光板40を透過型圧電素子で構成する場合、調光板40は、ポッケルス効果を有する板状の部材を透明電極で挟み、その外側に一対の偏光フィルターを配置したものとなる。
【0035】
以上において、第1領域A0は画像取り出し部90に対応しており、屋外のように外界光が明るい場合に第1領域A0の透過率を大きくすると、画像取り出し部90からの画像光が外界光に埋もれて映像のコントラストが低下する傾向が生じる。一方、第1周囲領域A11は角度変換部23の周囲の導光部22に対応しており外界光を殆ど減光なく透過させるので、外界光が明るい場合に第1周囲領域A11の透過率を大きくすると、画像取り出し部90を介して観察される映像が周囲よりも暗くなって、観察者にとって見づらいものとなる傾向が生じる。以上のように、外界光の変動により映像の見え方が大きく異なるので、外界光を検出し外界光の強度に応じて各領域A0,A11,A12,A12の透過率を調整することが望ましい。なお、本実施形態の場合、画像取り出し部90の周囲においては、外界光に対する導光部22の透過率と、外界光に対する角度変換部23の透過率とに差があるので、両者の差を見かけ上減少させるために、第1領域A0及び第2周囲領域A12,A12と、第1周囲領域A11との間にオフセットとしての透過率差を予め持たせておくこともできる。」

(4)「【0052】
〔E.駆動制御回路〕
以下、図3を参照して、虚像表示装置100の駆動制御回路について説明する。駆動制御回路70は、光源駆動回路71と、液晶駆動回路72と、調光駆動回路73と、光センサー駆動回路74と、主制御部77とを備える。光源駆動回路71は、右眼用の第1表示装置100Aの駆動部111に設けた光源31aと、左眼用の第2表示装置100Bの駆動部112に設けた光源131aとに電力を供給して安定した輝度の光SLを射出させる。液晶駆動回路72は、右眼用の第1表示装置100Aの駆動部111に設けた液晶表示デバイス32に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成し、左眼用の第2表示装置100Bの駆動部112に設けた液晶表示デバイス132に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成する。なお、両液晶表示デバイス32,132に異なる映像を形成させることもでき、例えば両映像を組み合わせることで3D画像とすることもできる。調光駆動回路73は、右眼用の第1表示装置100Aの光学パネル101に設けた調光板40と、左眼用の第2表示装置100Bの光学パネル102に設けた調光板40とにオン・オフのパターン信号を供給して両調光板40,40の透過率を調整する。光センサー駆動回路74は、外光センサー50,50に電力を供給しつつ外光センサー50,50からの信号を検出して、虚像表示装置100すなわち観察者の周辺の外界光の強度を検出する。主制御部77は、外部からの制御信号や画像信号に基づいて光源駆動回路71や液晶駆動回路72を動作させ、駆動部111,112すなわち液晶表示デバイス32,132等を含む画像表示装置11に表示動作を行わせる。また、主制御部77は、光センサー駆動回路74の出力を監視しつつ、調光駆動回路73を介して調光板40,40の透過率を外界光や観察者の意図に合わせたものに適宜調整する。ここで、各調光板40,40は、第1領域A0と、第1周囲領域A11と、第2周囲領域A12,A12とにおいて独立して制御可能であり、各領域A0,A11,A12,A12の透過率を一致させることもできるが、互いに異なるものとすることもできる。主制御部77は、調光駆動回路73と協働して調光板40,40の透過率を多様に調整しており、調光板40,40の動作を電気的に制御する調光制御部として機能する。
【0053】
〔F.具体的な動作例〕
以下、図5及び図6を参照して、虚像表示装置100の動作の一例について説明する。まず、主制御部77は、虚像表示装置100の表示モードをチェックする(ステップS11)。虚像表示装置100の表示モードとしては、例えば(1)重畳モード、(2)画像光優先モード、(3)外界光優先モード、(4)区分モード等を設定することができる。これらの表示モードは、主制御部77のメモリー( 不図示) に記録可能になっている。こ
こで、重畳モードは、両調光板40,40を標準的な透過率にすることにより、画像取り出し部90から射出される画像光と画像取り出し部90の背後から到来する外界光とを重ね合わせて観察側に導くことで観察可能にするものである。画像光優先モードは、調光板40,40の透過率を全体的に低下させることにより、外界光を全体的に遮光して画像取り出し部90から射出される画像光の観察を優先するものである。外界光優先モードは、両調光板40,40の第1領域A0及び第2領域A1の透過率を全体的に上昇させるとともに光源31a,131aの輝度を低下させることにより、画像光を弱めつつ外界光を全体的に透過させて外界光を優先するものである。区分モードは、両調光板40,40の第1領域A0の透過率よりも第2領域A1すなわち第1及び第2周囲領域A11,A12,A12の透過率を高くして外界光と画像光とを領域別で並列的に観察側に導くことで観察可能にするものである。」

(5)図1?3は以下のとおりである。
図1


図2


図3


(6)上記(1)?(5)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、括弧内は、認定の根拠とした段落番号等である。

「頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置に関し(【0001】)、
虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができ、虚像表示装置100は、一対の光学パネル101,102と、両光学パネル101,102を支持するフレーム104と、フレーム104のヨロイからテンプルにかけての部分に付加された一対の駆動部111,112とを備え、光学パネル101と駆動部111とを組み合わせた第1表示装置100Aは、虚像を形成する部分であり(【0022】)、
第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光板20と、調光板40とを備え、調光板40は、導光板20よりもひとまわり大きく、導光板20の表側すなわち外界側を全体的に覆うように配置されており(【0023】)、
調光板40は、薄板状の光学素子であり、エレクトロクロミック素子、液晶パネル、透過型電圧素子等で構成され(【0033】)、
調光板40は、導光板20の画像取り出し部90又は光射出面OSに対向しており画像取り出し部90に視野上で重なる矩形の第1領域A0と、導光板20のうち画像取り出し部90を除いた周囲の部分(視野上で画像取り出し部90の上下左右に隣接する部分)に対向しており画像取り出し部90に視野上で重ならない第2領域A1とを有し、さらに、第2領域A1は、導光板20のうち角度変換部23を除いた周囲の部分(視野上で角度変換部23の上下左右に隣接する部分)に対向する第1周囲領域A11と、視野上で画像取り出し部90の上下に隣接する部分に対向する一対の矩形の第2周囲領域A12,A12とを有し、これらの第1領域A0と、第1周囲領域A11と、第2周囲領域A12,A12とは、独立して透過率を調整できるようになっており、独立して駆動することができ(【0034】)、
主制御部77は、光センサー駆動回路74の出力を監視しつつ、調光駆動回路73を介して調光板40,40の透過率を外界光や観察者の意図に合わせたものに適宜調整し、各調光板40,40は、第1領域A0と、第1周囲領域A11と、第2周囲領域A12,A12とにおいて独立して制御可能であり、各領域A0,A11,A12,A12の透過率を、互いに異なるものとすることもでき(【0052】)、
虚像表示装置100の表示モードとしては、区分モード等を設定することができ、区分モードは、両調光板40,40の第1領域A0の透過率よりも第2領域A1すなわち第1及び第2周囲領域A11,A12,A12の透過率を高くして外界光と画像光とを領域別で並列的に観察側に導くことで観察可能にするものである(【0053】)、
虚像表示装置。」

2 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部装着型情報入出力装置、及び頭部装着型情報入出力方法に関する。」

(2)「【0151】
次に、処理部123の動作手順の例を説明する。
図25は、頭部装着型情報入出力装置の動作手順の例を示すフローチャートである。
(ステップS1)処理部123(図20を参照) は、ディスプレイ本体20(図1を参照)がヘッドバンド40に装着されているか否か、すなわち、ディスプレイ本体20がユーザーの頭部の近傍に装着されているか否かを判定する。
・・・
【0156】
(ステップS4)処理部123は、画面の全領域に対応する液晶93の液晶93a?液晶93e(図9を参照) に通電する電圧を、所定電圧だけ下げることで、電圧が下げられた液晶93における光束O(図8を参照)の透過率を低下させる。これにより、処理部123は、ユーザーの視界を暗くして、メニュー画面を見やすくすることができる。なお、例えば、空だけが明るい場合、処理部123は、液晶93cに通電する電圧を所定電圧だけ下げることで、液晶93cにおける光束Oの透過率を低下させ、メニュー画面を部分的に暗くしてもよい。
【0157】
(ステップS5)処理部123は、シースルーモードでのメニュー画面400(図23を参照)を、表示部60に表示させる。シースルーモードでは、非シースルーモードと比較して縮小されたアイコン画像が、メニュー画面400の下側に表示される。ここで、ユーザーの視界を効果的に確保するため、アイコン画像は、低コントラストに表示されてもよい。これにより、アイコン画像は、ユーザーの視界を隠すことなく、目障りになることがない。
・・・
【0166】
(ステップS14)処理部123は、液晶93(図9を参照)を非シースルーモードにする。具体的には、処理部123は、液晶93の全領域をオフ状態にすることで、光束O(図8を参照)が液晶93を透過しないようにする。
(ステップS15)処理部123は、非シースルーモードでのメニュー画面400(図22を参照)を、表示部60に表示させる。非シースルーモードでは、シースルーモードと比較して拡大されたアイコン画像が、メニュー画面400の全面に表示される。」

(3)図25は以下のとおりである。


3 引用文献8について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドマウントディスプレイやヘッドアップディスプレイ等の画像表示装置に係り、特にリップマンブラッグ体積ホログラムシートを眼鏡レンズ内に設けることにより、眼鏡本来の機能を維持したまま拡大表示像と眼鏡レンズ越しの透過背景像とを融合してみることができるディスプレイ眼鏡に関する。」

(2)「【0052】
あるいは、図23に示すように、HOEシートが取り付けられた眼鏡のフレームまたはレンズ90に視線検出センサ91を設け、使用者の視線が特定の範囲に入ったときのみ画像表示がなされるように構成することにより、より視認性を向上させ使い勝手が良いものとなる。また図23では、HOEシートが取り付けられた前記レンズ90に対向して設けた液晶シャッター92と明るさセンサ(光センサ:フォトダイオード)93を用い、背景の明るさを前記センサ93で感知し液晶シャッター92の透過率を自動的に調節することにより、使用者が容易に表示画像と背景を融合して見られるようにこれらの明るさの比率を適当な範囲に保つ機能も有している。前記液晶シャッター92は、着脱可能な少なくとも可視光波長域に対する遮光部材であり、このシャッター使用時には背景からの光の透過量を10%以下に減衰できる。
・・・
【0054】
図23の装置の一連の動作フローチャートを図24に示す。まず画像表示OFF、液晶透過率最大である状態において、マイクロコンピュータ95が視線検出センサ91の出力を読み込む。そして検出された視線が特定の範囲以内であれば、明るさセンサ93の出力を読み込み、その明るさに応じて液晶シャッター92の透過率を液晶シャッタードライバ94によって調整し、画像表示をONとする。また前記検出された視線が特定の範囲以内でないときは、画像表示をOFFとし、液晶シャッター92の透過率は最大のままとする。」

(3)図23、24は以下のとおりである。
図23

図24


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1を対比する。
ア 引用発明1における「フレーム104」、「調光板40」、「画像形成装置10」は、それぞれ本願発明1における「フレーム」、「調光装置」、「画像形成装置」に相当する。

イ 引用発明1において「光学パネル101と駆動部111とを組み合わせた第1表示装置100Aは、虚像を形成する部分であり」、「第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光板20・・・を備え、調光板40は、導光板20よりもひとまわり大きく、導光板20の表側すなわち外界側を全体的に覆うように配置されて」いるから、当該構成は、本願発明1の「(b)画像形成装置から出射される光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置、を備えており、光学装置の虚像形成領域は、調光装置と重なっており」との構成を有している。

ウ 引用発明1において「虚像表示装置100の表示モードとしては、区分モード等を設定することができ、区分モードは、両調光板40,40の第1領域A0の透過率よりも第2領域A1すなわち第1及び第2周囲領域A11,A12,A12の透過率を高くして外界光と画像光とを領域別で並列的に観察側に導くことで観察可能にするものである」から、引用発明1は、本願発明1の「画像形成装置から出射される光に基づき、虚像形成領域の一部分において虚像が形成されるとき、少なくとも調光装置への虚像の投影像を含む調光装置の虚像投影領域の遮光率が、調光装置の他の領域の遮光率よりも高くなるように、調光装置が制御され」との構成を有している。

エ したがって、本願発明1と引用発明1は、次の一致点で一致し、相違点1、2で相違する。

(一致点)
「(A)観察者の頭部に装着されるフレーム、
(B)フレームに取り付けられた画像表示装置、及び、
(C)外部から入射する外光の光量を調整する調光装置、
を備えた表示装置であって、
画像表示装置は、
(a)画像形成装置、及び、
(b)画像形成装置から出射される光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置、
を備えており、
光学装置の虚像形成領域は、調光装置と重なっており、
画像形成装置から出射される光に基づき、虚像形成領域の一部分において虚像が形成されるとき、少なくとも調光装置への虚像の投影像を含む調光装置の虚像投影領域の遮光率が、調光装置の他の領域の遮光率よりも高くなるように、調光装置が制御される、
表示装置。」

(相違点1)
本願発明1は「画像形成装置から出射された光に基づき光学装置に虚像が形成される前に、調光装置の虚像投影領域の遮光率を、時間の経過に従い、順次、増加させ」るのに対し、引用発明1はそのような特定がなされていない点。

(相違点2)
本願発明1は「光学装置に形成される虚像に外接する仮想矩形を想定し、仮想矩形の横方向及び縦方向の長さをL_(1-T)及びL_(1-L)とし、調光装置の虚像投影領域の形状を、横方向及び縦方向の長さがL_(2-T)及びL_(2-L)の矩形形状としたとき、
1.0≦L_(2-T)/L_(1-T)≦1.5
1.0≦L_(2-L)/L_(1-L)≦1.5
を満足する」のに対し、引用発明1はそのような特定がなされていない点。

(2)判断
相違点1について、検討する。
引用文献3、8に記載されているように、液晶シャッターの透過率を調節した後に、画像表示を行うことは周知事項であるといえる。
しかしながら、遮光率について、時間の経過に従い、順次、増加させることは、引用文献3、8には記載されておらず、また、他の引用文献にも記載されていない。仮に、画像表示の技術分野において、いわゆるフェードイン機能を設けることが常套手段であるとして、そのような常套手段を引用発明1に採用することができたとしても、虚像自体を時間の経過に従い、順次、はっきり表示させるという構成になるにとどまるのであって、画像表示そのものではない遮光率に着目して、そのような機能を設けることが、当業者にとって、容易に想到しうるとまではいえない。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2?8に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(3)引用文献2、7に記載された発明について
原査定は、引用文献2、7に記載された発明それぞれを主引用例とした判断も含まれているが、引用文献2、7においても、上記相違点1に係る本願発明1の構成について記載されていないから、上記(2)と同様の理由により、本願発明1は、引用文献2又は7に記載された発明及び引用文献1、3?6、8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(4)まとめ
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1?8に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2?9について
本願発明2?9は、本願発明1に従属し、本願発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本願発明1と同じ理由(上記1参照)により、当業者であっても、引用文献1?8に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?9は、当業者が引用文献1?8に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-05-07 
出願番号 特願2015-92857(P2015-92857)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 横井 亜矢子  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 井上 博之
吉野 三寛
発明の名称 表示装置及び表示装置の初期設定方法  
代理人 山本 孝久  
代理人 吉井 正明  
代理人 渡邊 薫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ