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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1374138
審判番号 不服2020-13576  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-29 
確定日 2021-06-01 
事件の表示 特願2016- 42098「偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月 7日出願公開、特開2017-156663、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2016-42098号(以下「本件出願」という。)は、平成28年3月4日に出願したものであって、その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和2年 2月13日付け:拒絶理由通知書
令和2年 4月25日提出:手続補正書
令和2年 4月25日提出:意見書
令和2年 4月27日提出:手続補足書
令和2年 6月23日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年 9月29日提出:手続補正書
令和2年 9月29日提出:審判請求書


第2 原査定の概要
本件出願の請求項1?6に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2013-122518号公報(以下「引用文献2」という。)に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


第3 本願発明
本件出願の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、令和2年9月29日にされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項によって特定される、以下のものである。

「 【請求項1】
ポリエステル系樹脂基材と、該ポリエステル系樹脂基材の片側に積層された厚みが10μm以下の偏光膜と、を有する偏光板であって、
該ポリエステル系樹脂基材の全反射減衰分光測定により算出される結晶化度が、0.60?0.80であり、
該偏光膜中のホウ酸濃度が、10重量%?20重量%であり、
該ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体である、偏光板。
【請求項2】
前記偏光膜が、前記ポリエステル系樹脂基材の片側に接着層を介することなく積層されている、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記偏光膜の前記ポリエステル系樹脂基材が積層される側と反対側に、保護フィルムを有さない、請求項1または2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂基材と前記偏光膜との間に易接着層を有する、請求項1から3のいずれかに記載の偏光板。
【請求項5】
ポリエステル系樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂膜を形成して積層体を作製すること、
該積層体を5.0倍以上の延伸倍率で延伸すること、
該ポリビニルアルコール系樹脂膜を染色すること、および
該延伸および染色後の積層体を90℃以上125℃以下に加熱して、全反射減衰分光測定により算出される結晶化度が0.60?0.80となるように、該ポリエステル系樹脂基材を結晶化すること、
を含み、
該ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体である、請求項1から4のいずれかに記載の偏光板の製造方法。」


第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2013-122518号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化度が7% 以下の熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体を作製し、
湿式処理を施した該積層体に、熱ロールを用いた乾燥処理を施す、偏光膜の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂基材が、ポリエチレンテレフタレート系樹脂から構成されている、請求項1に記載の偏光膜の製造方法。
【請求項3】
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂がイソフタル酸ユニットを有する、請求項2に記載の偏光膜の製造方法。
【請求項4】
前記イソフタル酸ユニットの含有割合が、全繰り返し単位の合計に対して、0.1モル%以上、20モル%以下である、請求項3に記載の偏光膜の製造方法。
【請求項5】
前記熱ロールの温度が50℃以上である、請求項1から4のいずれかに記載の偏光膜の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥処理後の熱可塑性樹脂基材の結晶化度が15%以上である、請求項1から5のいずれかに記載の偏光膜の製造方法。
【請求項7】
前記湿式処理が、ホウ酸水溶液中に積層体を浸漬させて延伸する処理を含む、請求項1から6のいずれかに記載の偏光膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の偏光膜の製造方法により得られた、偏光膜。
【請求項9】
請求項8に記載の偏光膜を有する、光学積層体。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂基材を有する、請求項9に記載の光学積層体。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な画像表示装置である液晶表示装置は、その画像形成方式に起因して、液晶セルの両側に偏光膜が配置されている。偏光膜の製造方法として、例えば、熱可塑性樹脂基材とポリビニルアルコール(PVA)系樹脂層とを有する積層体を延伸し、次に染色液に浸漬させて偏光膜を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1)。このような方法によれば、厚みの薄い偏光膜が得られるため、近年の液晶表示装置の薄型化に寄与し得るとして注目されている。
【0003】
ところで、偏光膜は、通常、水溶液中にPVA系樹脂膜を浸漬させる工程(湿式工程)および乾燥工程を経て作製される。しかし、上述のように、熱可塑性樹脂基材を用いて偏光膜を作製する場合、乾燥中にカール(具体的には、熱可塑性樹脂基材側に凸のカール)が発生しやすく、得られる偏光膜の外観不良が問題となる。」

(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、カールを抑制して、外観に優れた偏光膜を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の偏光膜の製造方法は、結晶化度が7%以下の熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体を作製し、湿式処理を施した該積層体に、熱ロールを用いた乾燥処理を施す。
好ましい実施形態においては、上記熱可塑性樹脂基材が、ポリエチレンテレフタレート系樹脂から構成されている。
好ましい実施形態においては、上記ポリエチレンテレフタレート系樹脂がイソフタル酸ユニットを有する。
好ましい実施形態においては、上記イソフタル酸ユニットの含有割合が、全繰り返し単位の合計に対して、0.1モル%以上、20モル%以下である。
好ましい実施形態においては、上記熱ロールの温度が50℃以上である。
好ましい実施形態においては、上記乾燥処理後の熱可塑性樹脂基材の結晶化度が15%以上である。
好ましい実施形態においては、上記湿式処理が、ホウ酸水溶液中に積層体を浸漬させて延伸する処理を含む。
本発明の別の局面によれば、偏光膜が提供される。この偏光膜は、上記製造方法により得られる。
本発明のさらに別の局面によれば、光学積層体が提供される。この光学積層体は、上記偏光膜を有する。
好ましい実施形態においては、上記光学積層体は上記熱可塑性樹脂基材を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、結晶化度が7%以下の熱可塑性樹脂基材を用いて積層体を作製し、かつ、熱ロールを用いて湿式処理後の積層体を乾燥させることにより、カールを抑制することができる。具体的には、熱可塑性樹脂基材の結晶化を効率的に促進させて結晶化度を増加させることができ、比較的低い乾燥温度であっても、熱可塑性樹脂基材の結晶化度を良好に増加させることができる。その結果、熱可塑性樹脂基材は、その剛性が増加して、乾燥によるPVA系樹脂層の収縮に耐え得る状態となり、カールが抑制される。また熱ロールを用いることにより、積層体を平らな状態に維持しながら乾燥できるので、カールだけでなくシワの発生も抑制することができる。このようにして、外観に優れた偏光膜を製造することができる。」

(4)「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.製造方法
本発明の偏光膜の製造方法は、熱可塑性樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して積層体を作製し、この積層体に湿式処理および乾燥処理を施す。積層体は、代表的には、長尺状とされている。
【0010】
A-1.積層体の作製
図1は、本発明の好ましい実施形態による積層体の概略断面図である。積層体10は、熱可塑性樹脂基材11とPVA系樹脂層12とを有し、熱可塑性樹脂基材にPVA系樹脂層12を形成することにより作製される。PVA系樹脂層12の形成方法は、任意の適切な方法を採用し得る。好ましくは、熱可塑性樹脂基材11上に、PVA系樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥することにより、PVA系樹脂層12を形成する。
【0011】
上記熱可塑性樹脂基材は、その結晶化度(乾燥処理前)が7%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5%以下である。このような熱可塑性樹脂基材は乾燥処理において結晶化が促進され結晶化度が増加し得る。その結果、熱可塑性樹脂基材は、その剛性が増加して、乾燥によるPVA系樹脂層の収縮に耐え得る状態となり、カールが抑制される。また、このような熱可塑性樹脂基材を用いることにより、積層体を良好に延伸することができる。具体的には、後述するように積層体を延伸浴(例えば、ホウ酸水溶液)に浸漬させて水中延伸する場合、延伸張力が低下して、延伸性が向上する。なお、本明細書において「結晶化度」とは、DSC装置にて昇温速度10℃/minで結晶融解熱量を測定し、この結晶融解熱量と測定時の結晶生成熱量との差を、完全結晶の融解熱量(文献値)で除することにより算出した値である。
・・・省略・・・
【0014】
熱可塑性樹脂基材の構成材料は、熱可塑性樹脂基材の結晶化度が上記範囲内である限り、任意の適切な材料を採用し得る。結晶化度は、例えば、構成材料に変性基を導入することにより調整することができる。熱可塑性樹脂基材の構成材料としては、非晶質の(結晶化していない)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられる。中でも、非晶性の(結晶化しにくい)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が特に好ましく用いられる。非晶性のポリエチレンテレフタレート系樹脂の具体例としては、ジカルボン酸としてイソフタル酸および/またはシクロヘキサンジカルボン酸をさらに含む共重合体や、グリコールとしてシクロヘキサンジメタノールやジエチレングリコールをさらに含む共重合体が挙げられる。
【0015】
好ましい実施形態においては、熱可塑性樹脂基材は、イソフタル酸ユニットを有するポリエチレンテレフタレート系樹脂で構成される。このような熱可塑性樹脂基材は延伸性に極めて優れるとともに、延伸時の結晶化が抑制され得るからである。これは、イソフタル酸ユニットを導入することで、主鎖に大きな屈曲を与えることによるものと考えられる。ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、テレフタル酸ユニットおよびエチレングリコールユニットを有する。イソフタル酸ユニットの含有割合は、全繰り返し単位の合計に対して、好ましくは0.1モル%以上、さらに好ましくは1.0モル%以上である。延伸性に極めて優れた熱可塑性樹脂基材が得られるからである。一方、イソフタル酸ユニットの含有割合は、全繰り返し単位の合計に対して、好ましくは20モル%以下、より好ましく10モル%以下である。このような含有割合に設定することで、後述の乾燥処理において結晶化度を良好に増加させることができる。
・・・省略・・・
【0025】
A-2.湿式処理
上記湿式処理は、代表的には、水溶液中に上記積層体を浸漬させる処理である。湿式処理としては、例えば、染色処理、延伸処理、不溶化処理、架橋処理、洗浄処理等が挙げられる。これらの処理は、目的に応じて選択することができる。また、処理順序、処理のタイミング、処理回数等の処理条件を、適宜設定することができる。以下、各々の処理について説明する。
・・・省略・・・
【0030】
水中延伸は、好ましくは、ホウ酸水溶液中に積層体を浸漬させて行う(ホウ酸水中延伸)。延伸浴としてホウ酸水溶液を用いることで、PVA系樹脂層に、延伸時にかかる張力に耐える剛性と、水に溶解しない耐水性とを付与することができる。具体的には、ホウ酸は、水溶液中でテトラヒドロキシホウ酸アニオンを生成してPVA系樹脂と水素結合により架橋し得る。その結果、PVA系樹脂層に剛性と耐水性とを付与して、良好に延伸することができ、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を製造することができる。
【0031】
上記ホウ酸水溶液は、好ましくは、溶媒である水にホウ酸および/またはホウ酸塩を溶解させることにより得られる。ホウ酸濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部?10重量部である。ホウ酸濃度を1重量部以上とすることにより、PVA系樹脂層の溶解を効果的に抑制することができ、より高特性の偏光膜を製造することができる。なお、ホウ酸またはホウ酸塩以外に、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を溶媒に溶解して得られた水溶液も用いることができる。
【0032】
好ましくは、上記延伸浴(ホウ酸水溶液)にヨウ化物を配合する。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。ヨウ化物の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは0.05重量部?15重量部、より好ましくは0.5重量部?8重量部である。
【0033】
延伸温度(延伸浴の液温)は、好ましくは40℃?85℃、より好ましくは50℃?85℃である。このような温度であれば、PVA系樹脂層の溶解を抑制しながら高倍率に延伸することができる。具体的には、上述のように、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、PVA系樹脂層の形成との関係で、好ましくは60℃以上である。この場合、延伸温度が40℃を下回ると、水による熱可塑性樹脂基材の可塑化を考慮しても、良好に延伸できないおそれがある。一方、延伸浴の温度が高温になるほど、PVA系樹脂層の溶解性が高くなって、優れた光学特性が得られないおそれがある。積層体の延伸浴への浸漬時間は、好ましくは15秒?5分である。
【0034】
水中延伸による延伸倍率は、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは3.0倍以上である。積層体の最大延伸倍率は、積層体の元長に対して、好ましくは5.0倍以上である。このような高い延伸倍率を達成することにより、光学特性に極めて優れた偏光膜を製造することができる。このような高い延伸倍率は、水中延伸方式(ホウ酸水中延伸)を採用することにより、達成し得る。なお、本明細書において「最大延伸倍率」とは、積層体が破断する直前の延伸倍率をいい、別途、積層体が破断する延伸倍率を確認し、その値よりも0.2低い値をいう。
【0035】
好ましくは、水中延伸処理は染色処理の後に行う。
【0036】
上記不溶化処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。不溶化処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部?4重量部である。不溶化浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃?50℃である。好ましくは、不溶化処理は、積層体作製後、染色処理や水中延伸処理の前に行う。
【0037】
上記架橋処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。架橋処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部?4重量部である。また、上記染色処理後に架橋処理を行う場合、さらに、ヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部?5重量部である。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。架橋浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃?50℃である。好ましくは、架橋処理は水中延伸処理の前に行う。好ましい実施形態においては、染色処理、架橋処理および水中延伸処理をこの順で行う。
【0038】
上記洗浄処理は、代表的には、ヨウ化カリウム水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。
【0039】
A-3.乾燥処理
上記乾燥処理は、搬送ロールを加熱する(いわゆる熱ロールを用いる)ことにより行う(熱ロール乾燥方式)。熱ロールを用いて乾燥させることにより、カールを抑制して、外観に優れた偏光膜を製造することができる。具体的には、熱ロールに積層体を沿わせた状態で乾燥することにより、上記熱可塑性樹脂基材の結晶化を効率的に促進させて結晶化度を増加させることができ、比較的低い乾燥温度であっても、熱可塑性樹脂基材の結晶化度を良好に増加させることができる。その結果、熱可塑性樹脂基材は、その剛性が増加して、乾燥によるPVA系樹脂層の収縮に耐え得る状態となり、カールが抑制される。また、熱ロールを用いることにより、積層体を平らな状態に維持しながら乾燥できるので、カールだけでなくシワの発生も抑制することができる。
【0040】
好ましくは、上記湿式処理は、上記水中延伸(ホウ酸水中延伸)処理を含む。このような実施形態によれば、上述のように、高い延伸倍率を達成して、熱可塑性樹脂基材の配向性が向上し得る。配向性が高い状態で、乾燥処理により熱可塑性樹脂基材に熱が加えられると、結晶化が急激に進んで結晶化度が格段に増加し得る。上記水中延伸(ホウ酸水中延伸)処理後の熱可塑性樹脂基材の結晶化度は、好ましくは10%?15%程度である。
【0041】
図2は、乾燥処理の一例を示す概略図である。図示例では、搬送ロールR1?R6が、積層体10と各搬送ロールとの接触面に対応する中心角θが180°以上となるように、連続して設けられている。上流側の搬送ロールR1の前にはガイドロールG1が、下流側の搬送ロールR6の後にはガイドロールG2?G4が、それぞれ設けられている。ガイドロールG1により搬送された積層体10を、所定の温度に加熱された搬送ロールR1?R6により搬送されながら乾燥させ、ガイドロールG2?G4を経てストレートパスに送り出される。
【0042】
搬送ロールの加熱温度(熱ロールの温度)、熱ロールの数、熱ロールとの接触時間等を調整することにより、乾燥条件を制御することができる。熱ロールの温度は、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。熱可塑性樹脂の結晶化度を良好に増加させて、カールを良好に抑制することができる。また、耐久性に極めて優れた光学積層体を製造することができる。一方、熱ロールの温度は、好ましくは130℃以下である。乾燥により得られる光学積層体の光学特性が劣化する等の不具合を防止することができる。なお、熱ロールの温度は、接触式温度計により測定することができる。図示例では、6個の搬送ロールが設けられているが、搬送ロールは複数個であれば特に制限はない。搬送ロールは、通常2個?40個、好ましくは4個?30個設けられる。積層体と熱ロールとの接触時間(総接触時間)は、好ましくは1秒?300秒である。
【0043】
熱ロールは、加熱炉(例えば、オーブン)内に設けてもよいし、通常の製造ライン(室温環境下)に設けてもよい。好ましくは、送風手段を備える加熱炉内に設けられる。熱ロールによる乾燥と熱風乾燥とを併用することにより、熱ロール間での急峻な温度変化を抑制することができ、幅方向の収縮を容易に制御することができる。熱風乾燥の温度は、好ましくは30℃?100℃である。また、熱風乾燥時間は、好ましくは1秒?300秒である。熱風の風速は、好ましくは10m/s?30m/s程度である。なお、当該風速は加熱炉内における風速であり、ミニベーン型デジタル風速計により測定することができる。
【0044】
乾燥処理により、熱可塑性樹脂基材の結晶化度を2%以上増加させることが好ましく、さらに好ましくは5%以上である。乾燥処理後の熱可塑性樹脂基材の結晶化度は、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上である。このように結晶化度を増加させることで、カールを良好に抑制することができる。また、耐久性に極めて優れた光学積層体を製造することができる。なお、結晶化度の上限値は、熱可塑性樹脂基材の構成材料によって異なる。
・・・省略・・・
【0053】
B.偏光膜
本発明の偏光膜は、上記製造方法により得られる。本発明の偏光膜は、実質的には、二色性物質が吸着配向されたPVA系樹脂膜である。偏光膜の厚みは、代表的には25μm以下であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。一方、偏光膜の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.5μm以上である。偏光膜は、好ましくは、波長380nm?780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光膜の単体透過率は、好ましくは40.0%以上、より好ましくは41.0%以上、さらに好ましくは42.0%以上、特に好ましくは43.0%以上である。偏光膜の偏光度は、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0054】
上記偏光膜の使用方法は、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には、上記熱可塑性樹脂と一体となった状態で使用してもよいし、上記熱可塑性樹脂基材から他の部材に転写して使用してもよい。
【0055】
C.光学積層体
本発明の光学積層体は、上記偏光膜を有する。図4(a)および(b)は、本発明の好ましい実施形態による光学フィルム積層体の概略断面図である。光学フィルム積層体100は、熱可塑性樹脂基材11’と偏光膜12’と粘着剤層13とセパレータ14とをこの順で有する。光学フィルム積層体200は、熱可塑性樹脂基材11’と偏光膜12’と接着剤層15と光学機能フィルム16と粘着剤層13とセパレータ14とをこの順で有する。本実施形態では、上記熱可塑性樹脂基材を、得られた偏光膜12’から剥離せずに、そのまま光学部材として用いている。熱可塑性樹脂基材11’は、例えば、偏光膜12’の保護フィルムとして機能し得る。
・・・省略・・・
【実施例】
【0058】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
1.厚み
デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
2.熱可塑性樹脂基材の結晶化度
DSC装置(セイコーインスツル社製、EXSTAR DSC6000)を用いて、昇温速度10℃/minで結晶融解熱量を測定し、この結晶融解熱量と測定時の結晶生成熱量との差を、完全結晶の融解熱量(PET:140J/g)で除することにより算出した。
3.熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準じて測定した。
【0059】
[実施例1]
熱可塑性樹脂基材として、結晶化度0?3.9%、Tg70℃でイソフタル酸ユニットを7モル%有する非晶質のポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。
熱可塑性樹脂基材の片面に、重合度2600、ケン化度99.9%のポリビニルアルコール(PVA)樹脂(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセノール(登録商標)NH-26」)の水溶液を60℃で塗布および乾燥して、厚み10μmのPVA系樹脂層を形成した。このようにして積層体を作製した。
【0060】
130℃のオーブン内で、得られた積層体を、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に一軸延伸した(空中延伸処理)。このときの延伸倍率を1.8倍とした。
次に、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液) に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素を0.1重量部配合し、ヨウ化カリウムを0.7重量部配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光膜の単体透過率(Ts)が40?44%となるように浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に60秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温65℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向に一軸延伸を行った(水中延伸処理)。このときの延伸倍率を3.22倍とした。
その後、積層体を洗浄浴(水100重量に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に5秒間浸漬させた(洗浄処理)。
その後、図2に示すようにオーブン内に設けられた熱ロールで搬送させながら、積層体を乾燥させた。ここで、上流側から1番目のロールR1および2番目のロールR2の温調を切り、R3?R6の温度を60℃に設定した。また、オーブン内に、温度60℃で風速19m/sの熱風を送風させた。全乾燥時間は101秒間であり、熱ロールとの接触時間は54秒(全乾燥時間の約1/2)であった。
このようにして、熱可塑性樹脂基材上に厚み3μmの偏光膜を作製した。なお、水中延伸処理後の熱可塑性樹脂基材の結晶化度は約14%であった。
【0061】
[実施例2]
乾燥処理において、搬送ロールR3?R6の温度を85℃に設定したこと以外は、実施例1と同様にして偏光膜を作製した。
【0062】
[実施例3]
乾燥処理において、搬送ロールR3?R6の温度を90℃に設定したこと以外は、実施例1と同様にして偏光膜を作製した。
【0063】
(比較例1)
乾燥処理において、熱ロールと接触させなかったこと以外は、実施例1と同様にして偏光膜を作製した。なお、熱ロールを用いずにオーブン内をストレートパスとしたことにより、乾燥時間は36秒であった。
【0064】
(比較例2)
乾燥処理において、熱風の温度を90℃としたこと以外は、比較例1と同様にして偏光膜を作製した。
【0065】
各実施例および比較例で得られた光学積層体(熱可塑性樹脂基材および偏光膜)の観察写真を図6に示す。また、カールおよび耐久性の評価結果を表1に示す。カールおよび耐久性の評価方法は以下のとおりである。
1.カール
得られた光学積層体から試験片(縦10cm×横10cm)を切り出した。得られた試験片をその凸面が下側になるようにガラス板に載置して、ガラス板から試験片の4つの角の高さをそれぞれ測定した。4角のうち一番大きい値で評価した。
2.耐久性
得られた光学積層体を80℃の恒温槽および60℃、90%RHの恒温恒湿槽に500時間投入し、熱可塑性樹脂基材が偏光膜から剥離するか否かを観察した。
(耐久性の評価基準)
○:剥離が確認された
×:剥離は確認されなかった
【0066】
【表1】

【0067】
熱ロールを用いた実施例ではカールが抑制されていたのに対し、比較例ではカールが発生した。また、実施例ではシワはほとんど確認されなかったのに対し、比較例(特に、比較例2)では、搬送方向に沿ってシワが発生した。比較例2では、カールおよびシワ(特に、シワ)が著しく発生したため、カール度合いを評価することができなかった。このように、実施例では外観に優れた偏光膜が得られた。
乾燥処理による結晶化度の増加が大きかった実施例2および実施例3の光学積層体は、耐久性に極めて優れていた。」

(5) 図1




(6) 図4




2 引用発明
上記1によれば、引用文献2には、請求項1、2、6?9を引用する請求項10に係る発明として、次の「光学積層体」発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「結晶化度が7% 以下の熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体を作製し、
湿式処理を施した該積層体に、熱ロールを用いた乾燥処理を施し、
前記熱可塑性樹脂基材が、ポリエチレンテレフタレート系樹脂から構成されており、
前記乾燥処理後の熱可塑性樹脂基材の結晶化度が15%以上であり、
前記湿式処理が、ホウ酸水溶液中に積層体を浸漬させて延伸する処理を含む、偏光膜の製造方法により得られた偏光膜、
前記熱可塑性樹脂基材を有する、光学積層体。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のとおりとなる。

ア ポリエステル系樹脂基材、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体
引用発明の「熱可塑性樹脂基材」は、「ポリエチレンテレフタレート系樹脂から構成されて」いる。ここで、「ポリエチレンテレフタレート系樹脂」が、エチレンテレフタレートからなる構造単位を主として含む樹脂であって、これが「ポリエステル系樹脂」に該当することは技術常識である。
そうしてみると、引用発明の「熱可塑性樹脂基材」は、本願発明1の「ポリエステル系樹脂基材」に相当し、本願発明1の「ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体である」との要件を満たす。

イ 偏光膜
引用発明の「偏光膜」は、その文言が意味するとおり、本願発明1の「偏光膜」に相当する。
また、引用発明の「偏光膜」は、「熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体を作製し、」「ホウ酸水溶液中に積層体を浸漬させて延伸する処理を含む」「湿式処理を施」す「偏光膜の製造方法により得られた」膜であるから、熱可塑性樹脂基材の片側に積層されているものといえる。
そうしてみると、以上の点及び上記アから、引用発明の「偏光膜」と、本願発明1の「偏光膜」とは、「ポリエステル系樹脂基材の片側に積層された」「偏光膜」である点で共通する。

ウ 偏光板
引用発明の「光学積層体」は、「偏光膜の製造方法により得られた偏光膜、前記熱可塑性樹脂基材を有する」。
上記積層構造及び「偏光膜」の光学的機能からみて、引用発明の「光学積層体」は、本願発明1の「偏光板」に相当する。
以上の点及び上記ア、イの対比結果から、引用発明の「光学積層体」とは、本願発明1の「偏光板」とは、「ポリエステル系樹脂基材と、ポリエステル系樹脂基材の片側に積層された」「偏光膜と、を有する偏光板」である点で共通する。

以上ア?ウによれば、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「ポリエステル系樹脂基材と、該ポリエステル系樹脂基材の片側に積層された偏光膜と、を有する偏光板であって、
該ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体である、偏光板。」

(相違点)
(相違点1)「偏光膜」が、本願発明1では、「厚みが10μm以下」であるのに対して、引用発明では、このように特定されていない点。

(相違点2)本願発明1の「偏光板」が、「ポリエステル系樹脂基材の全反射減衰分光測定により算出される結晶化度が、0.60?0.80であり、該偏光膜中のホウ酸濃度が、10重量%?20重量%であ」ると特定されているのに対して、引用発明の「光学積層体」(偏光板)では、「熱可塑性樹脂基材の結晶化度が15%以上であり」と特定されているにとどまる点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
ア 相違点2に係る構成の想到容易性について
引用文献2の【0066】【表1】には、熱可塑性樹脂基材の結晶化度が最大で22.7%である実施例が記載されている。しかしながら、令和2年4月27日提出の手続補足書を参照すると、DSC法での22.7%の結晶化度は、全反射減衰分光測定により算出される結晶化度では、0.548に換算されることから、引用文献2において示唆される最大の結晶化度であっても、本願発明1の「0.60?0.80」の範囲外となる。
また、引用文献2の実施例には、偏光膜中のホウ酸に関連して、【0060】に「次に、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液) に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。」、「液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に60秒間浸漬させた(架橋処理)。その後、積層体を、液温65℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向に一軸延伸を行った(水中延伸処理)。」と記載されているが、偏光膜中のホウ酸濃度についての記載はない。そして、この製造条件でのホウ酸の配合量は、本件出願の明細書に記載された「比較例2」の配合量に近く、その偏光膜中のホウ酸濃度は、22%であることから、本願発明1の「10重量%?20重量%」の範囲内である蓋然性が高いとは認められない。
さらに、引用文献2には、熱可塑性樹脂基材の結晶化度と偏光膜中のホウ酸濃度を、同時に本願発明1の範囲に調整することを示唆する記載はない。
加えて、引用文献2には、熱可塑性樹脂基材の結晶化度の好ましい範囲について、【0044】に、「乾燥処理後の熱可塑性樹脂基材の結晶化度は、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上である。」という技術的事項が記載されているにすぎず、熱可塑性樹脂基材の全反射減衰分光測定により算出される結晶化度を「0.60?0.80」の範囲にまで変更することを当業者が試みる動機となり得る記載はない。
また、引用文献2の【0031】、【0036】、【0037】には、それぞれ水中延伸、不溶化処理、架橋処理でのホウ酸水溶液中のホウ酸濃度の好ましい範囲が記載されているにとどまり、本願発明1のように「偏光膜中のホウ酸濃度」を、「10重量%?20重量%」とすることを開示する記載もない。
以上によれば、相違点2に係る本願発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

イ 相違点2に係る構成による効果について
本件出願の明細書の【0007】には、発明の効果について、「本発明によれば、樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂膜が形成された積層体を延伸および染色することにより得られる偏光板において、該樹脂基材の結晶化度と偏光膜中のホウ酸濃度とを特定の範囲に調整することにより、偏光膜が樹脂基材に積層された状態のままで用いられ得、かつ、耐久性に優れた偏光板を得ることができる。」と記載されている。このような効果は、引用文献1の記載及び本件出願時の技術常識から当業者が予測することができない、異なる効果といえる。
(当合議体注:請求人も、令和2年9月29日に提出された審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、【0011】等を引用して「本願発明においては、樹脂基材として特定範囲の結晶化度を有するPET基材を用い、かつ、偏光膜中のホウ酸濃度を特定の範囲に調整することにより、偏光膜の吸収軸方向および該方向と直交する方向の両方向において、PET基材の寸法変化量と偏光膜の寸法変化量とが均衡するので、PET基材/偏光膜界面に歪みが生じ難くなり、また、生じた歪みも両方向に分散され結果、クラックの発生が抑制されるという効果が奏されます」、「引用文献2は、PET樹脂の結晶化によってカールの抑制効果および高温高湿下における基材と偏光膜との密着性向上効果を得るものであることから([0067]等)、上記2つの特性を満たすことにより、加熱によるクラック耐性が向上することは引用文献2の開示に基づいて当業者が予期し得ない異質な効果に相当すると思料します。」と主張している。)
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2?5について、
本願発明2?5は、いずれも、本願発明1の「ポリエステル系樹脂基材の全反射減衰分光測定により算出される結晶化度が、0.60?0.80であり、該偏光膜中のホウ酸濃度が、10重量%?20重量%であり」という相違点2に係る本願発明1の構成を具備するものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第6 原査定について
上記「第5 対比・判断」で述べたとおり、本願発明1?5は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。


第7 むずび
以上のとおり、本願発明1?5は、引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-05-12 
出願番号 特願2016-42098(P2016-42098)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 慎平杉山 輝和  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 井亀 諭
関根 洋之
発明の名称 偏光板  
代理人 籾井 孝文  

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