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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R |
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管理番号 | 1374164 |
審判番号 | 不服2020-10136 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-20 |
確定日 | 2021-06-03 |
事件の表示 | 特願2016-187542「ライティングダクト用コンセント」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月 5日出願公開、特開2018- 55846、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年9月26日の出願であって、令和1年12月26日付けで拒絶理由が通知され、令和2年3月9日に意見書の提出とともに手続補正がされたものの、同年4月24日付けで拒絶査定され(謄本発送は、同月28日。)、これに対し、同年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は、本願の請求項1及び2に係る発明は、本願出願前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 引用文献1:実願昭57-173751号(実開昭59-76089号)のマイクロフィルム 引用文献2:実願平2-64469号(実開平4-24286号)のマイクロフィルム 引用文献3:特開2000-3772号公報 第3 本願請求項に係る発明(本願発明) 本願の請求項1及び2に係る発明は、令和2年7月20日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」といい、まとめて「本願発明」という。)。 「【請求項1】 導電部を有するライティングダクトに着脱自在に取り付けられるライティングダクト用コンセントにおいて; 前記ライティングダクトに設けられた導電部との通電に供される第1外部接続用端子及び第2外部接続用端子を支持する第1内部ケースと; この第1内部ケースとの接合面を有し、前記第1内部ケースに嵌合可能に形成される第2内部ケースと; 前記第1内部ケースに設けられ、前記ライティングダクト側に突出形成された第1半筒部と; 前記第1内部ケースの第1半筒部に設けられた円筒部に挿通され、前記ライティングダクトに設けられたアース導電部との通電に供される直線状のアースピンと; 前記第2内部ケースに設けられ、前記ライティングダクト側に突出形成され、前記第1半筒部と接合されることで筒部が形成される第2半筒部と; 前記筒部に嵌合され、前記アースピンが底部を貫通する有底筒状のキャップと; 前記第2内部ケースに設けられ、前記アースピンに接続されたアース接続用端子と;を具備し、 前記筒部の上部は、前記第1半筒部と、前記第2半筒部とが前記アースピンを挟んで対向するように形成され、前記キャップは前記筒部の上部に嵌合されることを特徴とするライティングダクト用コンセント。 【請求項2】 前記第1内部ケースと前記第2内部ケースは、接合された状態で外部ケースに収容される請求項1に記載のライティングダクト用コンセント。」 第4 引用文献の記載事項 1 引用文献1の記載事項・引用発明 原査定において引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (1)「この考案は配線ダクト用プラグに関するものである。 従来、第1図のように溝形の配線ダクト1が用いられ、任意位置に電気機器への電力取出用のプラグ2が接続取付される。配線ダクト1は鋼板からなるリップ溝形のコア3を絶縁被覆4で覆ったものであり、絶縁被覆4に両フランジに対向形成したガイド溝5の底面に、導体6が表面露出状態に埋込まれている。コア3はアースとなるものであり、ウエブ面で絶縁被覆4にコア露出溝7が形成されている。8はキャップである。 プラグ2は第2図ないし第8図のように構成されている。図において、21はボディであり、2つ割りの絶縁体22a,22bの基端板部34がボディ21の上部に嵌合され、ビス23によりねじ孔24に固定される。絶縁体22a,22bには分割面にアース棒挿通孔となるアース棒挿通溝27が形成され、その両側に栓刃取付溝28が形成されている。一方の絶縁体22aの下端にはアース端子片取付凹部29が設けられている。栓刃30は先端が屈曲しており、その屈曲部分30aが絶縁体22a,22bから突出して栓刃取付溝28に嵌合される。栓刃30は基端に接続用受刃30bを有している。アース端子片31は接続用受刃31aを有しており、アース端子片取付凹部29に嵌合される。アース棒32は中間部分が蛇行状に湾曲しており、両端の直線部分がアース棒挿通溝27の両端の小径部分に嵌合し、蛇行状部分が中間の幅広部分に遊嵌する。アース棒32の内端はアース端子片31に突当り、外端は絶縁体22a,22bの先端面から突出する。」 (明細書2頁2行?3頁12行) (2)「したがって、この考案の目的は、着脱が簡単に行なえ、かつストッパで取外し時に配線ダクトに傷をつけることのない配線ダクト用プラグを提供することである。 この考案の一実施例を第9図及び第10図に示す。すなわち、この配線ダクト用プラグ21は、(中略)その他の構造は、第1図ないし第8図に示した例と同様である。」 (明細書5頁12行?6頁1行) (3)引用文献1においては、上記(2)の「配線ダクト用プラグ21」との記載前には「ボディ21」が記載されている一方で、この「配線ダクト用プラグ21」との記載の後には、「配線ダクト用プラグ21」と同じものを指すと認められる箇所に「プラグ2’」と記載されていることから、この「配線ダクト用プラグ21」との記載中の、符号「21」は「2’」の誤記であると認められる。 (4)第1図からは、配線ダクト1からの電力取出しのために、2つの栓刃30を導体6に接続する構成が見て取れる。 (5)第2図及び第3図からは、絶縁体22a及び22bのそれぞれに、分割面を相互に接合することで筒形状となる半円筒部が、上部に形成された構成が見て取れる。 (6)第1図のコア露出溝7の下側からコア3にアース接続されている部材は、第3図から、アース棒32の外端であることが理解できる。 上記の記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載に則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「導体6を有する配線ダクト1に着脱が簡単に行える配線ダクト用プラグ2’において、 配線ダクト1に設けられた導体6に接続して電力取出しをする2つの栓刃30の先端が嵌合する栓刃取り付け溝28を有する絶縁体22bと、 この絶縁体22bと接合する分割面を有し、絶縁体22bと接合することができる絶縁体22aと、 前記絶縁体22bに設けられ、前記絶縁体22bの上部に形成された半円筒部と、 絶縁体22b及び絶縁体22aのアース棒挿通溝27に挿通され、前記配線ダクト1のコア3に外端の直線部分がアース接続され、中間部分が蛇行状に湾曲しているアース棒32と、 前記絶縁体22aに設けられ、前記絶縁体22aの上部に形成された半円筒部であって、前記絶縁体22bの上部に形成された半円筒部と接合することで筒状部となる半円筒部と、 前記絶縁体22aの下端のアース端子片取付凹部29に嵌合され、アース棒32の内端が突当るアース端子片31と、 を具備し、 前記筒状部は、絶縁体22b及び絶縁体22aのアース棒挿通溝27にアース棒32が挿通されるよう形成されている、配線ダクト用プラグ2’。」 2 引用文献2の記載事項 (1)原査定において周知技術の例として引用された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「国産車、外国車を問わず様々なソケットに挿入固定できる四枚刃の弾性端子4を装着させた筒状容体1と、該筒状容体1へ螺着させる先端に押圧端子5の接点部5aを突出させたキャップ状容体2とからなるものであり、前記筒状容体1は内部に管ヒューズAを収容する筒状のヒューズ保持部材3が形成された長さ方向に二分割される容体1A.1Bより成るものである。 前記キャップ状容体2は、第1図図示の如く樹脂製等の縦断面略台形状の容体から成り、頂部へは金属製の押圧端子5の接点部5aを管ヒューズAの端部と電気的に接続されたコイルスプリング6で内側から付勢して突出させ、底部の内周へは螺子部2aを形成させたものである。」 (明細書6頁3?17行) (2)引用文献2の第1図及び第2図から、キャップ状容体2は、容体1A.1Bの横方向の先端に螺合されるものであることが見て取れる。 (3)引用文献3の記載事項 原査定において周知技術の例として引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0019】一方、電気的接続機構ブロック20は、全体が略筒状に形成されてプラグ本体1内に回動自在に枢支される軸体22、軸体22の上部から左右に突出する係止片23、軸体22の下部に設けられるカム24、軸体22の下部に突設されてプラグ本体1の側面に設けたスライド溝6から外部に突出する操作レバー25が合成樹脂により一体に形成された本体21と、軸体22に取着され、先端部分が係止片23と略平行に軸体22の上部から左右に突出する一対の接触子26と、一端部にて各接触子26に接離自在に接触し且つ他端部にて照明器具50の電源線(図示せず)に接続される一対の端子板27と、導電性部材によりピン状に形成され、軸体22の軸中心に形成された挿通孔22aに挿通されるアース電極28と、一端部がアース電極28の下端に当接し且つ他端部が照明器具50のアース線51に接続されるアース端子29とで構成される。」 第5 当審の判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「導体6」は、本願発明1の「導電部」に相当し、以下同様に、 「配線ダクト1」は「ライテンングダクト」に、 「着脱が簡単に行える」ことは「着脱自在に取り付けられる」ことに、 「配線ダクト用プラグ2’」は「ライティングダクト用コンセント」に、 「導体6に接続して電力取出しをする」ことは「導電部との通電に供される」ことに、 「2つの栓刃30」は「第1外部接続用端子及び第2外部接続用端子」に、 「2つの栓刃30の先端が嵌合する栓刃取り付け溝28を有する」構成は「第1外部接続用端子及び第2外部接続用端子を支持する」構成に、 「絶縁体22b」は「第1内部ケース」に、 「絶縁体22bと接合する分割面」は「第1内部ケースとの接合面」に、 「絶縁体22bと接合することができる」ことは「第1内部ケースに嵌合可能に形成される」ことに、 「絶縁体22a」は「第2内部ケース」に、 「前記絶縁体22bの上部に形成され」ることは「ライティングダクト側に突出形成され」ることに、 「絶縁体22b」の「半円筒部」は「第1半円筒部」に、 「前記配線ダクト1のコア3」は「ライティングダクトに設けられたアース伝導部」に、 「コア3に外端の直線部分がアース接続され」ることは「アース導電部との通電に供される」ことに、 「アース棒32」は「アースピン」に、 「前記絶縁体22aの上部に形成され」ることは「ライティングダクト側に突出形成され」ることに、 「前記絶縁体22bの上部に形成された半円筒部と接合することで筒状部となる」ことは「前記第1半筒部と接合されることで筒部が形成される」ことに、 「絶縁体22a」の「半円筒部」は「第2半筒部」に、 「絶縁体22aの下端のアース端子片取付凹部29に嵌合され」ることは「第2内部ケースに設けられ」ることに、 「アース棒32の内端が突当る」ことは「アースピンに接続され」ることに、 「アース端子片31」は「アース接続用端子」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「前記筒状部は、絶縁体22b及び絶縁体22aのアース棒挿通溝27にアース棒32が挿通されるよう形成され」る構成は、前記筒状部の上部であっても同じ構成であるといえるから、本願発明1の「前記筒部の上部は、前記第1半筒部と、前記第2半筒部とが前記アースピンを挟んで対抗するように形成され」ている構成に相当する。 (2)一致点・相違点 そうすると、本願発明1と引用発明とは次のアの点で一致し、イ及びウの点で相違する。 ア 一致点 「導電部を有するライティングダクトに着脱自在に取り付けられるライティングダクト用コンセントにおいて; 前記ライティングダクトに設けられた導電部との通電に供される第1外部接続用端子及び第2外部接続用端子を支持する第1内部ケースと; この第1内部ケースとの接合面を有し、前記第1内部ケースに嵌合可能に形成される第2内部ケースと; 前記第1内部ケースに設けられ、前記ライティングダクト側に突出形成された第1半筒部と; 前記ライティングダクトに設けられたアース導電部との通電に供されるアースピンと; 前記第2内部ケースに設けられ、前記ライティングダクト側に突出形成され、前記第1半筒部と接合されることで筒部が形成される第2半筒部と; 前記第2内部ケースに設けられ、前記アースピンに接続されたアース接続用端子と;を具備し、 前記筒部の上部は、前記第1半筒部と、前記第2半筒部とが前記アースピンを挟んで対向するように形成されるライティングダクト用コンセント。」 である点。 イ 相違点1 本願発明1は、アースピンが「前記第1内部ケースの第1半筒部に設けられた円筒部に挿通され」、「直線状」であるのに対し、引用発明のアース棒32は「絶縁体22b及び絶縁体22aのアース棒挿通溝27に挿通され」、「中間部分が蛇行状に湾曲している」構成である点。 ウ 相違点2 本願発明1は、「前記筒部に嵌合され、前記アースピンが底部を貫通する有底筒状のキャップ」を有し、「前記キャップは前記筒部の上部に嵌合される」構成であるのに対し、引用発明は、このような構成を有しない点。 (3)相違点についての判断 先ず、相違点1について検討する。 引用文献2には、長さ方向に分割される容体1A.1B内部に管ヒューズAを収容する筒状のヒューズ保持部材3が形成される構成が記載されているに過ぎず、上記相違点1に係る本願発明1の、「直線状」のアースピンが「前記第1内部ケースの第1半筒部に設けられた円筒部に挿通され」る構成に相当する構成は、記載されていない。 また、引用文献3には、プラグ本体1内で回動自在に枢支され、合成樹脂により一体に形成された本体21の軸体22において、軸体22の挿通孔22aにピン状のアース電極28を挿通する構成が記載されているに過ぎず、上記相違点1に係る本願発明1の、アースピンが「前記第1内部ケースの第1半筒部に設けられた円筒部に挿通され」る構成に相当する構成は、記載されていない。 そうすると、引用発明と引用文献2及び3に記載された周知技術には、上記相違点1に係る本願発明1と同様の構成が記載されていないのだから、引用発明に、引用文献2及び3に記載された周知技術を組み合わせたとしても、上記相違点1に係る本願発明1の構成に至らない。 したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2及び3に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1に限定を加えたものであるから、本願発明1と同様に引用発明及び引用文献2及び3に記載された周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 したがって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-05-21 |
出願番号 | 特願2016-187542(P2016-187542) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01R)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 重幸 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
杉山 健一 内田 博之 |
発明の名称 | ライティングダクト用コンセント |
代理人 | 河野 仁志 |