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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C |
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管理番号 | 1374462 |
審判番号 | 不服2020-7093 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-25 |
確定日 | 2021-05-27 |
事件の表示 | 特願2016- 31069「ブロー成形プラスチックボトルの製造方法、ブロー成形プラスチックボトル、ブロー成形プラスチックボトル用金型、および表面部材」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開、特開2017-148963〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 本願は、平成28年2月22日の出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和 1年 9月11日付け:拒絶理由通知 令和 1年11月13日 :意見書及び手続補正書の提出 令和 2年 3月23日付け:拒絶査定 令和 2年 5月25日 :審判請求書及び手続補正書の提出 令和 2年 8月21日 :上申書の提出 第2 補正の却下の決定 [結論] 令和2年5月25日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 令和2年5月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容 本件補正は、特許請求の範囲の補正であって、本件補正の前後における特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである。 (1)本件補正前 「【請求項1】 ブロー成形プラスチックボトルの製造方法において、 金型内に表面部材を挿着する工程と、 前記金型内の前記表面部材内にプリフォームと、プリフォームの表面に設けられたチューブとを有する複合プリフォームを挿着する工程と、 前記複合プリフォームに対してブロー成形を施すことにより、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有するボトル本体と、前記ボトル本体の外面に設けられたブロー成形後のチューブとを含む複合ボトル本体を成形する工程とを備え、 前記複合ボトル本体と、この複合ボトル本体の外面に設けられた前記表面部材とを備えたブロー成形プラスチックボトルを製造するブロー成形プラスチックボトルの製造方法であって、 少なくとも前記ボトル本体の前記口部は、前記ボトル本体のみの1層構造を構成し、 前記ボトル本体の前記口部以外の他の部分は、前記ボトル本体と、ブロー成形後のチューブとからなる2層構造と、前記ボトル本体と、ブロー成形後のチューブと、前記表面部材とからなる3層構造を構成する、 ことを特徴とするブロー成形プラスチックボトルの製造方法。」 (2)本件補正後(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 ブロー成形プラスチックボトルの製造方法において、 金型内に表面部材を挿着する工程と、 前記金型内の前記表面部材内にプリフォームと、プリフォームの表面に設けられたチューブとを有する複合プリフォームを挿着する工程と、 前記複合プリフォームに対してブロー成形を施すことにより、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有するボトル本体と、前記ボトル本体の外面に設けられたブロー成形後のチューブとを含む複合ボトル本体を成形する工程とを備え、 前記複合ボトル本体と、この複合ボトル本体の外面に設けられた前記表面部材とを備えたブロー成形プラスチックボトルを製造するブロー成形プラスチックボトルの製造方法であって、 少なくとも前記ボトル本体の前記口部は、前記ボトル本体のみの1層構造を構成し、 前記ボトル本体の前記口部以外の他の部分は、前記ボトル本体と、ブロー成形後のチューブとからなる2層構造と、前記ボトル本体と、ブロー成形後のチューブと、前記表面部材とからなる3層構造を構成し、 前記2層構造は前記ボトル本体の前記底部と、前記胴部の上半部と、前記肩部の全域に渡って形成され、前記3層構造は前記胴部の下半部の全域に渡って形成されている、 ことを特徴とするブロー成形プラスチックボトルの製造方法。」 2 請求項1に係る補正の目的 請求項1に係る本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ボトル本体と、ブロー成形後のチューブとからなる2層構造」について、「ボトル本体の底部と、胴部の上半部と、肩部の全域に渡って形成され」という限定を付加するとともに、「ボトル本体と、ブロー成形後のチューブと、表面部材とからなる3層構造」について、「胴部の下半部の全域に渡って形成されている」という限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野(ブロー成形プラスチックボトルの製造方法)及び解決しようとする課題(ブロー成形ができない部材を表面部材とすることにより、表面部材が保温性を有していれば内容液が高温の場合であっても容易に把持することができ、内容液が低温の場合であっても結露して見栄えが悪くなりにくく、印刷を施していればラベルとしての機能が得られ、かつ様々な機能や特性をもつ)が同一であるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3 独立特許要件違反の有無について 請求項1に係る本件補正は、上記2のとおり、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献2 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開平2-55119号公報(平成2年2月23日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線については、当審において付与した。以下同様。 「1.発明の名称 ラベル付プラスチック容器の製造方法」(第1ページ左下欄第2-3行) 「(産業上の利用分野) 本発明はラベル付プラスチック容器の製造方法に関するもので、より詳細には、重ね合された状態でのラベル相互間の粘着乃至ブロッキングを防止しつつ、型内ラベル操作によって成形されつつある容器側壁部にラベルを強固に接着させる方法に関する。」(第1ページ右下欄第5-11行) 「(発明の好適態様) 本発明に用いる熱接着性フィルムラベルの一例を示す第1図において、このラベル1はプラスチックフィルム基体2、その裏側に施された印刷層3及び印刷層の表面に施されたホットメルト接着剤層4から成っている。」(第3ページ右下欄第13-18行) 「型内ラベル操作を説明するための第3図において、工程Aにおいて、プラスチックパルソン(当審注:「パリソン」の誤記と認める。)のブロー成形に先立って、ブロー割型11a、11bは開いた状態あり、これらの少なくとも一方のキャビティ表面6にラベル1を予め施す。…(中略)… 次いで工程Bにおいて、ダイス8から溶融プラスチックパリソン9が押出され、ブロー割型11a、11bを閉じ、閉じられたパリソン9内に加圧基体(当審注:「加圧気体」の誤記と認める。)を吹き込む。 工程Cで、型内で膨張するパリソンは型表面に保持され、ラベル1に押圧されて両者の密着が行われ、且つ膨張されたパリソンは金型表面と接触して冷却され、ラベル付容器10となる。 ブロー成形は、水平ロータリー式ブロー成形機や縦型ロータリー式ブロー成形機等を用いるダイレクト・ブロー方式の他に、インジェクションブロー、2段ブロー、シートフォーミング、延伸ブロー等の任意のブロー成形方式や射出成形、コンプレッション成形で行うことができる。」(第5ページ右上欄第5行-左下欄第12行) 「プラスチック容器は、単層または多層の構成を有することができ、例えばポリオレフィンやポリエチレンテレフタレートの単層から成る容器や、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートを内外層とし、これらの間にガスバリヤー性熱可塑性樹脂を中間層として設けた多層容器が挙げられる。ガスバリヤー性樹脂としては、エチレン含有量が50乃至20モル%のエチレン-ビニルアルコール共重合体:キシリレン基含有ポリアミド類:ガスバリヤー性ポリエステル:高ニトリル基含有重合体:塩化ビニリデン系樹脂等のそれ自体公知のガスバリヤー性樹脂を用いることができる。…(中略)… 第5図及び第6図には、溶融プラスチックパリソンのブロー成形について説明したが、延伸温度に保持されたプラスチックプリフォームの延伸ブロー成形や射出成形、更に溶融温度或いは延伸温度に保持されたプラスチックシートの真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等にも本発明が適用されることが理解されるべきである。」(第6ページ右下欄第10行-第7ページ左上欄第12行) 「 」(第9ページ右下) (イ)引用発明 引用文献2においては、ラベル1の内側にパリソン9が配置されているから、ラベル1内にパリソン9が配置されているといえる。 引用文献2の「ブロー成形は、…(中略)…ダイレクト・ブロー方式の他に、…(中略)…延伸ブロー…(中略)…で行うことができる。」(第5ページ左下欄第7-12行)、「溶融プラスチックパリソンのブロー成形について説明したが、延伸温度に保持されたプラスチックプリフォームの延伸ブロー成形…(中略)…にも本発明が適用されることが理解されるべきである。」(第7ページ左上欄第6-12行)という記載に鑑みれば、引用文献2には、ブロー成形方法として、溶融プラスチックパリソン9を用いたダイレクト・ブロー方式だけでなく、プリフォームを用いた延伸ブロー方式も記載されているといえる。そして、プリフォームを用いた延伸ブロー方式では、ブロー割型内にプリフォームを挿着する工程を有するものである。 引用文献2の第3図からは、「ラベル付容器10」が、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有すること、及び「ラベル1」が胴部の下半部に存在していることが看取できる。 引用文献2の「ラベル付容器10」の「ラベル1」を除いたものは、「ラベル1」がないから「容器」である。 これらの点を踏まえつつ、引用文献2の記載事項、特に発明の好適態様に関する記載事項を中心に整理すると、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「ラベル付容器10の製造方法において、 ブロー割型11a、11b内にラベル1を施す工程と、 前記ブロー割型11a、11b内の前記ラベル1内にプリフォームを挿着する工程と 前記プリフォームに対して加圧気体を吹き込むことにより、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有する容器を成形する工程とを備え、 前記容器と、この容器の外面に設けられた前記ラベル1とを備えたラベル付容器10を製造するラベル付容器10の製造方法であって、 前記容器と前記ラベル1とからなる2層構造が胴部の下半部に形成されている、 ラベル付容器10の製造方法。」 イ 引用文献4 (ア)同じく原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2015-128857号公報(平成27年7月16日出願公開。以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【請求項1】 複合容器を成形するためのブロー成形方法において、 プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と、 プリフォームの外側を取り囲むようにプラスチック製部材を設けることにより、プリフォームと、プリフォームの外側に密着されたプラスチック製部材とを有する複合プリフォームを作製する工程と、 複合プリフォームを加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と、 ブロー成形金型内で複合プリフォームに対してブロー成形を施すことにより、複合プリフォームのプリフォームおよびプラスチック製部材を一体として膨張させる工程とを備えたことを特徴とするブロー成形方法。」 「【請求項15】 複合容器において、 プラスチック材料製の容器本体と、 容器本体の外側に密着して設けられたプラスチック製部材とを備え、 容器本体およびプラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張されていることを特徴とする複合容器。 【請求項16】 容器本体は、口部と首部と肩部と胴部と底部とを有し、プラスチック製部材は、容器本体の首部と肩部と胴部と底部とを覆うように設けられることを特徴とする請求項15記載の複合容器。」 「【0001】 本発明は、ブロー成形方法、複合プリフォーム、複合容器およびプラスチック製部材に関する。」 「【0006】 本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、容器に対して様々な機能や特性を付与することが可能な、ブロー成形方法、複合プリフォーム、複合容器およびプラスチック製部材を提供することを目的とする。」 「【発明の効果】 【0029】 本発明によれば、ブロー成形金型内で複合プリフォームに対してブロー成形を施すことにより、複合プリフォームのプリフォームおよびプラスチック製部材を一体として膨張させる。このためプリフォーム(容器本体)とプラスチック製部材とを別部材から構成することができ、プラスチック製部材の種類や形状を適宜選択することにより、複合容器に様々な機能や特性を付与することができる。」 「【0033】 図1および図2に示す複合容器10Aは、後述するように、ブロー成形金型50を用いてプリフォーム10aおよびプラスチック製部材40aを含む複合プリフォーム70(図3参照)に対して2軸延伸ブロー成形を施すことにより、複合プリフォーム70のプリフォーム10aおよびプラスチック製部材40aを一体として膨張させて得られたものである。 【0034】 このような複合容器10Aは、内側に位置するプラスチック材料製の容器本体10と、容器本体10の外側に密着して設けられたプラスチック製部材40とを備えている。」 「【0050】 なお、プラスチック製部材40は、容器本体10のうち口部11以外の全域又は一部領域に設けられていても良い。例えば、プラスチック製部材40は、容器本体10のうち、口部11を除く、首部13、肩部12、胴部20および底部30の全体を覆うように設けられていても良い。さらに、プラスチック製部材40は1つに限らず、複数設けても良い。例えば、2つのプラスチック製部材40を肩部12の外面および底部30の外面にそれぞれ設けても良い。」 「【0054】 図3に示すように、複合プリフォーム70は、プラスチック材料製のプリフォーム10aと、プリフォーム10aの外側に設けられた有底円筒状のプラスチック製部材40aとを備えている。 …(中略)… 【0060】 プラスチック製部材40aとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹旨、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、フタル酸ジアリル樹脂、フッ素系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリブタジエン、ポリブテン-1、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロンMXD6、芳香族ポリアミド、ポリカーボネート、ポリテレフタル酸エチレン、ポリテレフタル酸ブチレン、ポリナフタレン酸エチレン、Uポリマー、液晶ポリマー、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリブロビレンオキシド、ポリアセタール、エポキシ樹脂等を挙げることができる。このうちポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性非弾性樹脂を用いることが好ましい。またそれらのブレンド材料や多層構造、部分的多層構造のものであってもよい。また、熱可塑性樹脂の溶融物に不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)を混ぜることで、0.5?100μmの発泡セル径を持つ発泡部材を使用し、この発泡プリフォームを成形することによって、遮光性を高めることができる。 【0061】 またプラスチック製部材40aが容器本体10(プリフォーム10a)と同一の材料からなっていても良い。この場合、複合容器10Aのうち、例えば強度を高めたい部分に重点的にプラスチック製部材40を配置し、当該箇所の強度を選択的に高めることができる。例えば、容器本体10の肩部12周辺および底部30周辺にプラスチック製部材40を設け、この部分の強度を高めても良い。このような材料としては、熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)を挙げることができる。 【0062】 またプラスチック製部材40aは、酸素バリア性又は水蒸気バリア性等のガスバリア性を有する材料からなっていても良い。この場合、プリフォーム10aとして多層プリフォームやブレンド材料を含むプリフォーム等を用いることなく、複合容器10Aのガスバリア性を高め、酸素や水蒸気によって内容液が劣化することを防止することができる。例えば、容器本体10のうち、肩部12、首部13、胴部20および底部30の全域にプラスチック製部材40を設け、この部分のガスバリア性を高めても良い。このような材料としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、MXD-6(ナイロン)、またはこれらの材料に脂肪酸塩などの酸素吸収材を混ぜることも考えられる。 【0063】 またプラスチック製部材40aは、紫外線等の光線バリア性を有する材料からなっていても良い。この場合、プリフォーム10aとして多層プリフォームやブレンド材料を含むプリフォーム等を用いることなく、複合容器10Aの光線バリア性を高め、紫外線等により内容液が劣化することを防止することができる。例えば、容器本体10のうち、肩部12、首部13、胴部20および底部30の全域にプラスチック製部材40aを設け、この部分の紫外線バリア性を高めても良い。このような材料としては、ブレンド材料、またはPETやPE、PPに遮光性樹脂を添加した材料が考えられる。また、熱可塑性樹脂の溶融物に不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)を混ぜることにより作製された、0.5?100μmの発泡セル径を持つ発泡部材を使用しても良い。 【0064】 またプラスチック製部材40aは、容器本体10(プリフォーム10a)を構成するプラスチック材料よりも保温性又は保冷性の高い材料(熱伝導性の低い材料)からなっていても良い。この場合、容器本体10そのものの厚みを厚くすることなく、内容液の温度が複合容器10Aの表面まで伝達しにくくすることが可能となる。これにより、複合容器10Aの保温性又は保冷性が高められる。例えば、容器本体10のうち胴部20の全部又は一部にプラスチック製部材40を設け、胴部20の保温性又は保冷性を高めても良い。また、使用者が複合容器10Aを把持した際、熱すぎたり冷たすぎたりすることにより複合容器10Aを持ちにくくなることが防止される。このような材料としては、発泡化したポリウレタン、ポリスチレン、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、シリコーン、ポリイミド、メラミン樹脂などが考えられる。また、熱可塑性樹脂の溶融物に不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)を混ぜることにより作製された、0.5?100μmの発泡セル径を持つ発泡部材を使用しても良い。 【0065】 またプラスチック製部材40aは、容器本体10(プリフォーム10a)を構成するプラスチック材料よりも滑りにくい材料からなっていても良い。この場合、容器本体10の材料を変更することなく、使用者が複合容器10Aを把持しやすくすることができる。例えば、容器本体10のうち胴部20の全部又は一部にプラスチック製部材40を設け、胴部20を持ちやすくしても良い。 【0066】 さらにプラスチック製部材40aには、予めデザイン又は印字が施されていても良い。この場合、ブロー成形後に容器本体10に対して別途ラベル等を付与することなく、複合容器10Aに画像や文字を表示することが可能となる。例えば、容器本体10のうち胴部20の全部又は一部にプラスチック製部材40を設け、胴部20に画像や文字を表示しても良い。この場合、プラスチック製部材40の材料としては、容器本体10と同一のものを用いても良く、容器本体10と異なるものを用いても良い。」 「【0071】 次に図5(a)?(f)により、本実施の形態によるブロー成形方法(複合容器10Aの製造方法)について説明する。 【0072】 まず、プラスチック材料製のプリフォーム10aを準備する(図5(a)参照)。この場合、例えば図示しない射出成形機を用いて、射出成形法によりプリフォーム10aを作製しても良い。 【0073】 次に、プリフォーム10aの外側にプラスチック製部材40aを設けることにより、プリフォーム10aと、プリフォーム10aの外側に密着されたプラスチック製部材40aとを有する複合プリフォーム70を作製する(図5(b)参照)。この場合、プラスチック製部材40aは、全体として有底円筒形状からなり、円筒状の胴部41と、胴部41に連結された底部42とを有している。このプラスチック製部材40aは、胴部20aのうち容器本体10の首部13に対応する部分を除く全域と、底部30aの全域とを覆うように装着される。 【0074】 この場合、プリフォーム10aの外径と同一又はわずかに小さい内径をもつプラスチック製部材40aを、プリフォーム10aに対して押し込むことにより、プリフォーム10aの外面に密着させても良い。あるいは、熱収縮性をもつプラスチック製部材40aをプリフォーム10aの外面に設け、このプラスチック製部材40aを50℃乃至100℃に加熱することにより熱収縮させてプリフォーム10aの外面に密着させても良い。 【0075】 このように、予めプリフォーム10aの外側にプラスチック製部材40aを密着させ、複合プリフォーム70を作製しておくことにより、複合プリフォーム70を作製する一連の工程(図5(a)?(b))と、複合容器10Aをブロー成形により作製する一連の工程(図5(c)?(f))とを別々の場所(工場等)で実施することが可能になる。 【0076】 次に、複合プリフォーム70は、加熱装置51によって加熱される(図5(c)参照)。このとき、複合プリフォーム70は、口部11aを下に向けた状態で回転しながら、加熱装置51によって周方向に均等に加熱される。この加熱工程におけるプリフォーム10aおよびプラスチック製部材40aの加熱温度は、例えば90℃乃至130℃としても良い。 【0077】 続いて、加熱装置51によって加熱された複合プリフォーム70は、ブロー成形金型50に送られる(図5(d)参照)。 【0078】 複合容器10Aは、このブロー成形金型50を用いて成形される。この場合、ブロー成形金型50は互いに分割された一対の胴部金型50a、50bと、底部金型50cとからなる(図5(d)参照)。図5(d)において、一対の胴部金型50a、50b間は互いに開いており、底部金型50cは上方に上がっている。この状態で一対の胴部金型50a、50b間に、複合プリフォーム70が挿入される。 【0079】 次に図5(e)に示すように、底部金型50cが下がったのちに一対の胴部金型50a、50bが閉鎖され、一対の胴部金型50a、50bおよび底部金型50cにより密閉されたブロー成形金型50が構成される。次にプリフォーム10a内に空気が圧入され、複合プリフォーム70に対して2軸延伸ブロー成形が施される。 【0080】 このことにより、ブロー成形金型50内でプリフォーム10aから容器本体10が得られる。この間、胴部金型50a、50bは30℃乃至80℃まで加熱され、底部金型50cは5℃乃至25℃まで冷却される。この際、ブロー成形金型50内では、複合プリフォーム70のプリフォーム10aおよびプラスチック製部材40aが一体として膨張される。これにより、プリフォーム10aおよびプラスチック製部材40aは、一体となってブロー成形金型50の内面に対応する形状に賦形される。 【0081】 このようにして、容器本体10と、容器本体10の外面に設けられたプラスチック製部材40とを備えた複合容器10Aが得られる。」 「【図1】 」 「【図3】 」 「【図5】 」 (イ)引用文献4に記載された技術的事項 引用文献4の上記(ア)に摘記した記載に鑑みれば、引用文献4には、次の技術(以下、「引用文献4に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認める。 「ガスバリア性等を向上させるために、プリフォームを、ガスバリア性を有する材料からなるプラスチック製部材を外側に備えた複合プリフォームとし、前記複合プリフォームに対してブロー成形を施すことにより複合容器を成形し、ブロー成形後の前記複合容器におけるプラスチック製部材を、容器本体のうち、口部を除く、首部、肩部、胴部および底部の全体を覆うように設ける技術」 ウ 引用文献8 本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開平5-338018号公報(平成5年12月21日出願公開。以下、「引用文献8」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【請求項1】開型した金型の一方の金型のキャビティ内面に、円筒状に形成したラベルを、ラベルの側面同士が重なるように折り畳んだ状態で保持する工程、金型内にパリソンを保持する工程、金型を閉じる工程、他方の金型内に設けられたラベル吸着手段によりラベルを円筒状に再現する工程、パリソン内に加圧流体を流してブロー成形しラベルと一体化する工程を含む、全周ラベル付きボトルのブロー成形方法。」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、プラスチックボトルをブロー成形する方法に関するもので、特に、予めラベルを金型内にセットしておき、ブロー成形と同時にラベルとボトルを一体化させる技術に関するものである。」 「【0007】 【実施例】以下に本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。図1はラベルを円筒状に広げる工程を示す説明図であり、図2は成形金型の一実施例を示す図である。ボトル本体は単層または多層の層構成を有することができ、例えば中、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルエチレン-酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂を任意に使用することができ、本実施例ではポリエチレンテレフタレートを使用した。そしてラベルとしては2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸高密度ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、紙等を任意に使用でき、必要に応じてエチレン-酢酸ビニル共重合体やエチレン-ビニルアセテート等の接着剤を介在させてボトル本体と密着させることができる。本実施例では紙を基材とし裏面に接着材としてエチレン-ビニルアセテートを塗布したものを使用した。 【0008】図2に示す実施例は、2軸延伸方式によりプラスチックボトルを製造した例である。図中において1及び2は左右の割型である。この左右の割型にはそれぞれラベル8を支持する部分があり(ラベル形状にあわせた溝部とすることもできる)、この部分に吸引孔3及び4が設けられ、図示しない吸引装置に接続されている。そして割型の一方の金型2には、進退可能なラベル吸着パット5が設けられ、金型の開閉と連動して作動するようになっている。また、6は底型であり、7は延伸棒である。延伸棒7は空気通路9を有している。そして、ラベル8は円筒状に形成されて、ラベル8の側面同士が重なるように2つ折りされ、偏平な状態でラベル供給装置(図示しない)に積み重ねられている。 【0009】次に本実施例の成形工程について説明する。本実施例では、まず延伸成形用パリソン10を射出成形により予備成形する。即ち、型閉めした成形型のキャビティ内に、射出ノズルからポリエチレンテレフタレートを約230℃の樹脂温度で注入して、冷却固化後に型開きして成形品(パリソン10)を取り出すのである。 【0010】こうして作成したパリソン10を用いて、容器本体をブロー成形する工程を次に説明する。まず図1に示すような工程でラベルを円筒状に広げる。即ち、左右の割型1、2を開型させた後、予め円筒状に形成したラベル8を、ラベル8の側面同士が重なるように2つに折った偏平な状態でラベル供給装置(図示しない)より移送して、吸引孔3を有する割型1に装填し、割型1のキャビティの内面にラベル8を保持する(a)。そして、延伸温度(約160℃?170℃)に加熱されたパリソン10を挿入し、ラベル8を円筒状に広げる時にあたらないよう、ラベル8の上端よりも上の位置に保持し、しかる後左右の割型1、2を閉じ、割型2に設けられた吸着パッド5を前進させる(b)。次いでラベル8を吸着した状態で吸着パッド5を後退させ、(c)。最終的にラベルを円筒状に再現する(d)。 【0011】こうしてラベルを円筒状に再現した後で、パリソン10を延伸棒7で2軸延伸させ、圧縮空気を吹き込み、膨張したパリソン10をラベル8に押しつけることにより両者を密着させる。その後延伸棒7内の空気通路9から冷却空気を吹き込んで容器を冷却固化させることにより、ラベル8と一体化したボトルを成形した。」 「【図1】 」 「【図2】 」 エ 引用文献9 本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開昭60-147318号公報(昭和60年8月3日出願公開。以下、「引用文献9」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「2.特許請求の範囲 (1) 分割可能な型により画定された凹部に従ってパリソンを吹込成型することによって製品を形成する方法において、 可撓性材料のラベルを各々の型の部分上に位置させる工程を含み、 前記ラベルは、軸方向縁部が型の部分の箇所を形成する凹部の側縁を越えて延びる様に、適切な周囲部方向の幅を有しており、 型部分を閉塞し且つ型の凹部を画定する様に、型部分を相互に向かって移動する工程を含み、凹部の側縁を越えて延びている前記縁部を、型部分が閉塞する以前に半径方向内方へ偏向する工程を含み、その結果、型部分が閉塞すると同時に、偏向された縁部が隣接するラベルの隣接する縁部と重なる様にして、 そして、製品の周りに連続的なラベルを位置決めする為に、2つのラベルの隣接する縁部が重なり且つ貼り合わされる様に、パリソンを凹部に従って吹き込む工程を含むことを特徴とする吹込成型によって製品を形成する方法。」(第1ページ左下欄第4行-右上欄第4行) 「本発明はラベルの付加に関し、より詳細には中空の吹込成型されたプラスチック製品へのラベルの付加に関する。」(第3ページ左上欄第20行-右上欄第2行) 「第1図に示す様に、最初の位置においてヘッド22はラベルマガジン24に隣接する箇所へ動かされ、そしてアプリケータ23が真空によりラベルLを取り上げる為に外方へ動かされる。ヘッド22はそれから第2図中に示す位置迄下方に動かされ、パリソンのネックを射出する為に、ネック型21が押出機20の隣接する箇所に設けられる。同時に、ラベルLを各型部分26の凹部25上に設置する為に各ラベルアプリケータ23が横方向に動かされる。第3図中に示す様に押出が続けられ、そしてパリソンPを位置決めする為に、ヘッド22は上方に向かって移動する。型部分26はそれからパリソンの周りを閉塞し、そしてパリソンは外方へ吹き込まれ、パリソンにラベルが付着されること又は結合されることを生ずる。 本発明に従えば、第5-7図中に示される様に、各ラベルLは、1方の縁部Eは凹部の境界を越えて延び、それに対して他方の縁部Fは凹部25の縁部において終結する様な周囲部寸法を有している。」(第3ページ右下欄第12行-第4ページ左上欄第11行) 「第11図中で示される様に、結果的に生ずる製品Cは、2つのラベルの縁部E,Fを重ね合わせることにより形成される連続的なラベルを含む。」(第4ページ右上欄第18?20行) 「 」(第5ページ右下) 「 」(第6ページ上) 「 」(第6ページ左下) 「 」(第7ページ右上) (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明を対比する。 引用発明における「ラベル付容器10」は、「プリフォームに対して加圧気体を吹き込むことにより、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有する容器を成形する」ものであるから、本件補正発明における「ブロー成形プラスチックボトル」に相当する。 引用発明における「ブロー割型11a、11b」、「ラベル1」、「容器」は、それぞれ、本件補正発明における「金型」、「表面部材」、「ボトル本体」に相当する。 引用発明において、プリフォームに対して「加圧気体を吹き込む」ことは、本件補正発明において、プリフォームに対して「ブロー成形を施す」ことに相当する。 引用発明において、「ブロー割型11a、11b内にラベル1を施す」ものであるから、引用発明の「ラベル1」は、「ブロー割型11a、11b内」に「挿着」されているものである。 イ してみると、本件補正発明と引用発明との一致点は次のとおりである。<一致点> 「ブロー成形プラスチックボトルの製造方法において、 金型内に表面部材を挿着する工程と、 前記金型内の前記表面部材内にプリフォームを挿着する工程と、 前記プリフォームに対してブロー成形を施すことにより、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有するボトル本体を成形する工程とを備え、 前記ボトル本体と、このボトル本体の外面に設けられた前記表面部材とを備えたブロー成形プラスチックボトルを製造するブロー成形プラスチックボトルの製造方法。」 ウ そして、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件補正発明は、「プリフォームの表面に設けられたチューブとを有する複合プリフォーム」を用いるものであって、ブロー成形を施すことにより、「ブロー成形後のチューブを含む複合ボトル本体」となり、「少なくとも前記ボトル本体の口部は、前記ボトル本体のみの1層構造を構成し、前記ボトル本体の前記口部以外の他の部分は、前記ボトル本体と、ブロー成形後のチューブとからなる2層構造と、前記ボトル本体と、ブロー成形後のチューブと、前記表面部材とからなる3層構造を構成し、前記2層構造は前記ボトル本体の底部と、胴部の上半部と、肩部の全域に渡って形成され」、「前記3層構造は前記胴部の下半部に形成」されていると特定されるのに対し、引用発明は、プリフォームを用いるものであるものの、プリフォームがプリフォームの表面に設けられたチューブを有する複合プリフォームではないため、前記容器の胴部が前記容器とラベル1とからなる2層構造である点。 <相違点2> ブロー成形プラスチックボトルの層構造の最外層である表面部材に関して、本件補正発明においては、「胴部の下半部の全域に渡って形成されている」のに対し、引用発明においては、そのようには設けられていない点。 (4)判断 ア 相違点1について 引用文献4には、上記(2)イ(イ)のとおりの引用文献4に記載された技術的事項が記載されている。 引用発明と、引用文献4に記載された技術的事項とは、プリフォームを用いたブロー成形である点で、技術分野が共通している。 そして、引用文献2の第6ページ右下欄第10行-第7ページ左上欄第5行の、プラスチック容器をガスバリヤー性樹脂を中間層として設けた多層のものとすることができる旨の記載に鑑みれば、引用発明においては、ガスバリア性を向上させるという課題が存在しているといえ、引用文献4に記載された技術的事項はガスバリア性を向上させるための技術であるから、両者は課題が共通しているといえる。 そうすると、引用発明のプリフォームに代えて、引用文献4に記載された技術的事項の複合プリフォームを用いることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。そして、そのようにした場合、ブロー成形後には、引用発明の容器は、プラスチック製部材を含む複合ボトル本体となり、容器の口部は、前記容器のみの1層構造を構成し、前記容器の前記口部以外の他の部分は、前記容器と、ブロー成形後のプラスチック製部材とからなる2層構造と、前記容器と、ブロー成形後のプラスチック製部材と、ラベル1とからなる3層構造を構成し、前記2層構造は前記容器の底部と、胴部の上半部と、肩部の全域に渡って形成され、前記3層構造は前記胴部の一部に形成されるものとなる。 イ 相違点2について 引用発明において、ラベル1を、どのような構造のものとするかは、当業者が設計上適宜変更し得ることであり、ブロー成形プラスチックボトルにおいて、ラベルを、ボトル本体の胴部の下半部の全域に配置する構造のものとすることは、例えば、引用文献8及び9等にみられるように周知の技術(以下、「周知技術」という。)である。 そうすると、引用発明において、容器の胴部の下半部に設けられたラベル1を、下半部全域に配置する構造のものとすることは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。 ウ 効果について 本件補正発明が奏するとされる、ラベルとしての機能が得られるという効果(本願明細書の段落【0021】)については、引用発明のラベル1もラベルであるから、当然その機能が得られ、本件補正発明と同様の効果を奏するものである。 また、本件補正発明が奏するとされる、様々な機能や特性を得られるという効果(本願明細書の段落【0021】)は、引用文献4の段落【0060】-【0066】を参照すれば、引用発明に引用文献4に記載された技術的事項の複合プリフォームを用いたことにより、当業者が予測できるものである。 エ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、「使用者が把持しやすい前記胴部の下半部において、内容液が高温であっても表面部材に直接熱が伝わりにくくして、この下半部を容易に把持することができ、かつ内容液が低温であっても、表面部材表面に結露が発生しづらくする機能を付与することにより、この胴部の下半部を容易に把持することができる」という効果を奏する旨主張するが、該主張については、本件補正発明は、表面部材の材質が特定されておらず、保温できないような表面部材も含まれるから、本件補正発明に基づかない主張であって、採用できない。 オ 小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献4に記載された技術的事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)まとめ 以上のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 4 補正の却下の決定のむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年5月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、令和1年11月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明、及び引用文献4に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及び引用文献4に記載された技術的事項は、前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明から「ボトル本体と、ブロー成形後のチューブとからなる2層構造」についての「ボトル本体の底部と、胴部の上半部と、肩部の全域に渡って形成され」という限定事項、及び「ボトル本体と、ブロー成形後のチューブと、表面部材とからなる3層構造」についての「胴部の下半部の全域に渡って形成されている」という限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、上記限定事項を付加したものに相当する本件補正発明は、前記第2の[理由]3(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献4に記載された技術的事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、周知技術は「ボトル本体と、ブロー成形後のチューブと、表面部材とからなる3層構造」についての限定事項について引用したものであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-03-26 |
結審通知日 | 2021-03-30 |
審決日 | 2021-04-12 |
出願番号 | 特願2016-31069(P2016-31069) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B29C)
P 1 8・ 575- Z (B29C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小山 祐樹、神田 和輝、一宮 里枝 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 岩田 健一 |
発明の名称 | ブロー成形プラスチックボトルの製造方法、ブロー成形プラスチックボトル、ブロー成形プラスチックボトル用金型、および表面部材 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 朝倉 悟 |