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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1374597
審判番号 不服2020-7975  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-09 
確定日 2021-06-22 
事件の表示 特願2018-114012「グローブと一体化されたセンサシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月11日出願公開、特開2018-160266、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)10月30日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2014年10月30日 米国、2015年3月27日 米国)を国際出願日とする出願である特願2017-518338号の一部を、平成30年6月14日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 6月15日 :手続補正書の提出
令和 元年 7月 5日付け:拒絶理由通知書
令和 元年11月12日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月22日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 6月 9日 :拒絶査定不服審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1、3、5-8及び10ないし15に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 国際公開第2013/116242号
2 国際公開第2014/058473号

第3 本願発明
1 本願発明
本願請求項1ないし15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は、令和2年6月9日に提出された手続補正書に係る手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。なお、下線部は、補正された箇所を示す。

「 【請求項1】
センサであって、
第1の熱可塑性ポリウレタン(TPU)基板上の複数の導電配線であって、前記複数の導電配線は、2又はそれより多くのセンサ配線を有する、複数の導電配線と、
前記第1のTPU基板に熱的に接合され、前記2又はそれより多くのセンサ配線と接するピエゾ抵抗性の生地であって、前記ピエゾ抵抗性の生地及び前記2又はそれより多くのセンサ配線は、前記センサを形成する、ピエゾ抵抗性の生地と
を備える、センサ。
【請求項2】
前記ピエゾ抵抗性の生地の一方の面が前記センサ配線と接する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1のTPU基板及び前記ピエゾ抵抗性の生地に熱的に接合される第2のTPU基板を更に備え、それにより前記第1のTPU基板と前記第2のTPU基板との間の前記ピエゾ抵抗性の生地及び前記センサ配線を囲む、請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記第1のTPU基板及び前記ピエゾ抵抗性の生地に熱的に接合される第2のTPU基板を更に備え、それにより前記第2のTPU基板によって前記ピエゾ抵抗性の生地の一方の面が前記センサ配線と接するよう維持されている、請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項5】
前記第1のTPU基板及び前記第2のTPU基板のうちの一方又は両方は、前記センサが追加の基板に熱的に接合されるように、接着剤‐バリア‐接着剤構造を有する、請求項3又は請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記複数の導電配線は、前記第1のTPU基板に印刷された導電性フレキシブルインクを有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記センサは、第1の信号経路設定配線を介して前記センサをアクティブにし、前記センサから第2の信号経路設定配線を介してセンサ信号を受信するセンサ回路に接続され、前記センサ回路は、前記ピエゾ抵抗性の生地への機械的な力、前記ピエゾ抵抗性の生地への圧力、前記ピエゾ抵抗性の生地の歪み、又は前記ピエゾ抵抗性の生地の変形のうちの1又は複数を検出すべく、前記センサ信号を処理する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記ピエゾ抵抗性の生地及び前記2又はそれより多くのセンサ配線は、前記センサ信号を生成する分圧回路の一部を形成する、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記センサ配線は、前記第1のTPU基板上に、隣接して形成され、
前記ピエゾ抵抗性の生地を通る前記隣接するセンサ配線間の抵抗の信号が、センサ信号として生成される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項10】
前記センサと位置合わせされるスティフナを更に備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のセンサを複数備えるセンサアレイ。
【請求項12】
前記ピエゾ抵抗性の生地は、複数のパッチを有し、前記複数のパッチのそれぞれは、複数の前記センサうちの1つに関連付けられる、請求項11に記載のセンサアレイ。
【請求項13】
前記2又はそれより多くのセンサ配線は、前記ピエゾ抵抗性の生地の方向を向く前記第1のTPU基板の第1の表面上にあり、前記複数の導電配線が有する2又はそれよりも多くの信号経路設定配線のうちの少なくともいくつかは、前記ピエゾ抵抗性の生地から離れる方向を向く前記第1のTPU基板の第2の表面上にある、請求項11又は請求項12に記載のセンサアレイ。
【請求項14】
第1の信号経路設定配線を介して複数の前記センサを選択的にアクティブにし、複数の前記センサから第2の信号経路設定配線を介してセンサ信号を受信するセンサ回路を更に備え、前記センサ回路は、前記センサアレイの表面と接する物体の動きの速度及び方向を決定すべく、前記センサ信号を処理する、請求項11から請求項13のいずれか一項に記載のセンサアレイ。
【請求項15】
第1の導電配線の上にわたって形成された絶縁材料を更に備え、それにより、第2の導電配線が前記第1の導電配線と交差することを可能にする、請求項11から請求項14のいずれか一項に記載のセンサアレイ。」

2 優先権主張の効果について
本願は、優先権主張番号62/072,798(優先日:2014年10月30日)及び14/671,821(優先日:2015年3月27日)に基づく優先権主張を伴うものであるが、本願発明1ないし15に係る「熱可塑性ポリウレタン(TPU)基板」は、前記優先権主張番号に係る米国特許出願に添付された書面には記載も示唆もなく、また、優先日における技術常識であったともいえない。
よって、本願発明1ないし15は、パリ条約に基づく優先権主張の利益を享受することができない。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、文字”R”を円”○”で囲む記号は、システム上入力できないため、「(R)」で代替した。)

(第1ページ第5-14行)
「The present invention relates generally to sensors, including flexible and stretchable fabric-based pressure sensors, that may be associated with or incorporated in garments intended to be worn against a body surface (directly or indirectly). Sensors may also be associated with or incorporated in sheet-like materials, bandages and other accessories that contact the body (directly or indirectly), and may be provided as independently positionable sensor components. Systems and methods for storing, communicating, processing, analyzing and displaying data collected by sensor components for remote monitoring of conditions at body surfaces, or within the body, are also disclosed. Sensors and sensor systems provide substantially real-time feedback relating to current body conditions and may provide notifications or alerts to users, caretakers and/or clinicians, enabling early intervention when conditions indicate intervention is appropriate.」
[当審訳]
「本発明は、概して、体表面に対して(直接的または間接的に)着用することを意図した衣服に関連付けられるか、またはそれに組み込まれ得る、可撓性および伸縮性の布ベースの圧力センサを含むセンサに関する。センサはまた、身体に(直接的または間接的に)接触するシート状の材料、包帯、および他の付属品に関連付けられるか、または組み込まれ得、独立して配置可能なセンサ構成要素として提供され得る。体表面または体内の状態を遠隔監視するためにセンサコンポーネントによって収集されたデータを保存、通信、処理、分析、および表示するためのシステムおよび方法も開示される。センサおよびセンサシステムは、現在の体の状態に関連する実質的にリアルタイムのフィードバックを提供し、ユーザー、介護者、および/または臨床医に通知またはアラートを提供し、状態が介入が適切であると示したときに早期介入を可能にします。」

(第3ページ第18-32行)
「In some embodiments, one or more sensor(s) detect changes in voltage or resistance across a surface area that is associated with force exerted on the sensor, which is related to pressure (as force per unit surface area) and/or shear. In some embodiments, FSR (Force Sensitive Resistor) or piezo-resistive sensors may be used. One type of piezoresistive force sensor that has been used previously in footwear pressure sensing applications, known as the FLEXIFORCE(R) sensors, can be made in a variety of shapes and sizes, and measure resistance, which is inversely proportional to applied force. These sensors use pressure sensitive inks with silver leads terminating in pins, with the pressure sensitive area and leads sandwiched between polyester film layers. FLEXIFORCE(R) sensors are available from Tekscan, Inc., 307 West First Street, South Boston, MA 02127-1309 USA. Other types of sensors may also be integrated in or associated with various substrate materials (e.g., garments, sheet materials and the like), including sensors providing data relating to temperature, moisture, humidity, stress, strain, heart rate, respiratory rate, blood pressure, blood oxygen saturation, blood flow, local gas content, bacterial content, multi-axis acceleration, positioning (GPS) and the like. A variety of such sensors are known in the art and may be adapted for use in sensing systems described herein.」
[当審訳]
「いくつかの実施形態では、1つまたは複数のセンサは、圧力(単位表面積あたりの力として)および/または剪断に関連する、センサに加えられる力に関連する表面積全体の電圧または抵抗の変化を検出する。いくつかの実施形態では、FSR(力に敏感な抵抗器)または圧電抵抗器センサを使用することができる。FLEXIFORCE(R)センサとして知られる、これまで履物の圧力検知アプリケーションで使用されてきたピエゾ抵抗力センサの1つのタイプは、さまざまな形状とサイズで作成でき、加えられた力に反比例する抵抗を測定できる。これらのセンサは、ピンで終わる銀のリード線を備えた感圧インクを使用し、感圧領域とリード線はポリエステルフィルム層の間に挟まれている。 FLEXIFORCE(R)センサは、Tekscan、Inc.、307 West First Street、South Boston、MA 02127-1309USAから入手できる。温度、水分、湿度、ストレス、ひずみ、心拍数、呼吸数、血液に関連するデータを提供するセンサを含む、他のタイプのセンサも、さまざまな基板材料(例えば、衣服、シート材料など)に統合または関連付けられ得る。血圧、血中酸素飽和度、血流、局所ガス含有量、細菌含有量、多軸加速、位置決め(GPS)など。様々なそのようなセンサが当技術分野で知られており、本明細書に記載の感知システムでの使用に適合させることができる。」

(第4ページ第3-9行)
「Suitable materials, such as piezoresistive fabric sensors, coated and/ or impregnated fabrics, such as metallic coated fabric materials and fabric materials coated or impregnated with other types of conductive formulations, are known in the art and a variety of such fabric sensors may be used. In some embodiments, pressure sensors comprise flexible conductive woven fabric material that is stretchable and/or elastic and/or substantially isotropic with respect to their flexibility and/or stretch properties.」
[当審訳]
「ピエゾ抵抗布センサなどの適切な材料、金属被覆布材料および他のタイプの導電性配合物でコーティングまたは含浸された布材料などの被覆および/または含浸布は、当技術分野で知られており、様々なそのような布センサを使用することができる。いくつかの実施形態では、圧力センサは、それらの柔軟性および/または伸縮特性に関して伸縮性および/または弾性および/または実質的に等方性である可撓性導電性織物材料を含む。」

(第4ページ第25-36行)
「Fabric sensors of the present invention may thus be capable of monitoring various parameters, including force, pressure, humidity, temperature, gascontent, and the like, at the site. Additional monitoring capabilities may be available using fabric sensors as innovation in fabric sensors proceeds and as nano-materials and materials incorporating nano-structures are developed and become commercially feasible. Flexible (and optionally stretchable or elastic) conductive fabric sensor(s), leads and/or traces may be mounted to/in/on, or associated with, an underlying substrate such as fabric or sheet material that's nonconductive and flexible. The term "fabric" or "sheet material" as used herein, refers to many types of pliable materials, including traditional fabrics comprising woven or non-woven fibers or strands, as well as fiber reinforced sheet materials, and other types of flexible sheeting materials composed of natural and/or synthetic materials, including flexible plastic sheeting material, pliable thermoplastic, foam and composite materials, screen-like or mesh materials, and the like.」
[当審訳]
「したがって、本発明の布地センサは、現場で、力、圧力、湿度、温度、ガス含有量などを含む様々なパラメータを監視することができ得る。ファブリックセンサの革新が進み、ナノ材料およびナノ構造を組み込んだ材料が開発されて商業的に実現可能になるにつれて、ファブリックセンサを使用して追加の監視機能が利用できるようになる可能性がある。柔軟な(およびオプションで伸縮性または弾性の)導電性ファブリックセンサ、リード、および/またはトレースは、非導電性で柔軟性のあるファブリックまたはシート材料などの基礎となる基板に対して/基板中に/基板上に取り付けるか、または関連付けることができる。本明細書で使用される「布」または「シート材料」という用語は、織布または不織布の繊維またはストランドを含む従来の布、ならびに繊維強化シート材料、および他のタイプの柔軟なシート材料を含む、多くのタイプの柔軟な材料を指し、柔軟なプラスチックシート材料、柔軟な熱可塑性材料、発泡および複合材料、スクリーン状またはメッシュ材料などを含む、天然および/または合成材料で構成される。」

(第5ページ下から2行目-第6ページ第1行)
「Each sensor is generally associated with two conductive leads, and each of the leads is electrically connected to a conductive trace conveying electrical signals to a signal transfer terminal.」
[当審訳]
「各センサは一般に2つの導電性リード線に関連付けられており、各リード線は電気信号を信号転送端子に伝達する導電性トレースに電気的に接続されている。」

(第6ページ第14-25行)
「Sensor(s) as described herein and sensor systems, including fabric e-textile pressure sensors and a variety of other types of sensors, with conductive leads and traces, may be associated with a variety of substrates including, without limitation, garments intended to be worn (directly or indirectly) against the skin of an individual, such as a shirt or tunic, underwear, leggings, socks, footies, gloves, caps, bands such as wrist bands, leg bands, torso and back bands, brassieres, and the like. Sensors and sensor systems may additionally be associated with wraps having different sizes and configurations for fitting onto or wrapping around a portion of an individual's body, and with bands, bandages, wound dressing materials, as well as with other types of accessories that contact a user's body surface (directly or indirectly) such as insoles, shoes, boots, belts, straps, and the like. Conductive leads associated with each sensor are electrically connected to conductive traces, as described, which terminate at signal transfer terminals associated with the underlying substrate garment, band, wrap, bandage, or the like.」
[当審訳]
「本明細書に記載のセンサ、および布製電子繊維圧力センサおよび導電性リードおよびトレースを備えた他の様々なタイプのセンサを含むセンサシステムは、シャツやチュニック、下着、レギンス、靴下、フーティー、手袋、帽子、バンド(リストバンド、レッグバンド、トルソバンド、バックバンドなど)、ブラジャーなど、個人の肌に(直接的または間接的に)着用される衣服(これに限らない)を含む様々な基板に関連付けられる。センサーおよびセンサーシステムはさらに、個人の体の一部にフィットまたは巻き付けるための異なるサイズおよび構成を有するラップ、ならびにバンド、包帯、創傷被覆材、ならびにユーザーの体表面に(直接的または間接的に)接触する他のタイプの付属品(インソール、靴、ブーツ、ベルト、ストラップなど)と関連付けることができる。説明したように導電性トレースに電気的に接続され、下にある基板の衣服、バンド、ラップ、包帯などに関連付けられた信号転送端子で終端する。」

「Fig.1



(2)引用発明
前記(1)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 衣服に関連付けられるか、またはそれに組み込まれ得る、可撓性および伸縮性の布ベースの圧力センサを含むセンサであって、
センサは、加えられた力に反比例する抵抗を測定できるピエゾ抵抗力センサであって、ピンで終わる銀のリード線を備えた感圧インクを使用し、感圧領域とリード線はポリエステルフィルム層の間に挟まれており、
ピエゾ抵抗布センサなどの適切な材料、金属被覆布材料および他のタイプの導電性配合物でコーティングまたは含浸された布材料などの被覆および/または含浸布は、当技術分野で知られており、様々なそのような布センサを使用することができ、
導電性ファブリックセンサ、リード、および/またはトレースは、非導電性で柔軟性のあるファブリックまたはシート材料などの基礎となる基板に対して/基板中に/基板上に取り付けるか、または関連付けることができ、「布」または「シート材料」という用語は、織布または不織布の繊維またはストランドを含む従来の布、ならびに繊維強化シート材料、および他のタイプの柔軟なシート材料を含む、多くのタイプの柔軟な材料を指し、柔軟なプラスチックシート材料、柔軟な熱可塑性材料、発泡および複合材料、スクリーン状またはメッシュ材料などを含む、天然および/または合成材料で構成され、
各センサは一般に2つの導電性リード線に関連付けられており、各リード線は電気信号を信号転送端子に伝達する導電性トレースに電気的に接続されており、
センサシステムは、シャツやチュニック、下着、レギンス、靴下、フーティー、手袋、帽子、バンド(リストバンド、レッグバンド、トルソバンド、バックバンドなど)、ブラジャーなど、個人の肌に(直接的または間接的に)着用される衣服を含む様々な基板に関連付けられる、
センサ。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0004] According to one aspect of the disclosure, a tagging device incorporated into apparel can include a flexible substrate to which a flexible device is disposed.…(以下省略)」
[当審訳]
「本開示の一態様によれば、衣類に組み込まれるタグ付け装置は、可撓性基板を含むことができ、可撓性基板に可撓性装置が配設される。」

「[0011] According to another aspect of the disclosure, an apparatus for monitoring a temperature can include a flexible substrate to which a flexible device is disposed. The flexible device can include a stretchable coil formed from a conductive material and comprising at least one corrugated portion. The flexible device can also include an integrated circuit component disposed proximate to and in electrical communication with the stretchable coil. The integrated circuit component of the flexible device can include at least one memory that is read and write-enabled. The flexible device can include a flexible encapsulant. The apparatus can also include a temperature sensor in communication with the flexible device, to perform at least one temperature measurement. The data indicative of the at least one temperature measurement can be stored to the at least one memory.」
[当審訳]
「 一例では、識別情報が、一意の識別子、使用者名、使用者識別、選手名、ジャージ番号、軍隊身分表示、洗濯表示、場所の少なくとも1つを含む。本開示の別の態様によれば、温度を監視するための装置が、可撓性基板を含むことができ、可撓性基板に可撓性装置が配設される。可撓性装置は、導電性材料から形成される伸縮性のコイルを含むことができ、少なくとも1つの波形部分を備えることができる。また、可撓性装置は、伸縮性のコイルの近位に配設され、コイルと電気通信する集積回路構成要素を含むこともできる。可撓性装置の集積回路構成要素は、読み出しおよび書き込み可能な少なくとも1つのメモリを含むことができる。可撓性装置は、可撓性カプセル材を含むことができる。また、装置は、少なくとも1回の温度測定を行うために可撓性装置と通信する温度センサを含むこともできる。少なくとも1回の温度測定を示すデータは、少なくとも1つのメモリに記憶することができる。」

「[0017] In an example, the flexible substrate comprises at least one of a polymer, an elastomer, a fabric, a thermo-polyurethane, a thermo-polyester, or paper. In an example, the stretchable coil includes a hollow central region, and wherein the flexible substrate and flexible encapsulant are configured such that the apparatus comprises a hollow core that coincides with the hollow central region of the stretchable coil.」
[当審訳]
「 一例では、可撓性基板は、ポリマー、エラストマー、布地、サーモポリウレタン、サーモポリエステル、または紙の少なくとも1つを備える。一例では、伸縮性のコイルは、中空の中央領域を含み、可撓性基板および可撓性カプセル材は、伸縮性のコイルの中空中央領域と一致する中空コアを装置が備えるように構成される。」

「[0020] According to another aspect of the disclosure, an apparatus for monitoring an amount of exposure to ultraviolet radiation includes a flexible substrate and a flexible device disposed on the flexible substrate. The flexible device can include a stretchable coil formed from a conductive material and can include at least one corrugated portion. The flexible device can also include an integrated circuit component disposed proximate to and in electrical communication with the stretchable coil. The integrated circuit component can include at least one memory that is read and write-enabled. The flexible device can be encapsulated with an encapsulant. The apparatus can further include an ultraviolet radiation sensor in communication with the flexible device, to perform at least one ultraviolet radiation measurement. The apparatus can be configured for remote data read- and write-operations to the at least one memory to store data indicative of the at least one ultraviolet radiation
measurement or an indication of an amount of the exposure of the ultraviolet radiation sensor to the ultraviolet radiation.」
[当審訳]
「 本開示の別の態様によれば、紫外放射への露出の量を監視するための装置が、可撓性基板と、可撓性基板上に配設された可撓性装置とを含む。可撓性装置は、導電性材料から形成される伸縮性のコイルを含むことができ、少なくとも1つの波形部分を含むことができる。また、可撓性装置は、伸縮性のコイルの近位に配設され、コイルと電気通信する集積回路構成要素を含むこともできる。集積回路構成要素は、読み出しおよび書き込み可能な少なくとも1つのメモリを含むことができる。可撓性装置は、カプセル材でカプセル化することができる。装置は、少なくとも1回の紫外放射測定を行うために可撓性装置と通信する紫外放射センサをさらに含むことができる。装置は、少なくとも1回の紫外放射測定を示すデータまたは紫外放射への紫外放射センサの露出の量の表示を記憶するために、少なくとも1つのメモリに対する遠隔データ読み出しおよび書き込み操作のために構成することができる。」

以上から、上記引用文献2には次の技術事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「 衣類に組み込まれるタグ付け装置は、可撓性基板を含むことができ、
装置は、少なくとも1回の温度測定を行うために可撓性装置と通信する温度センサを含むこともでき、
可撓性基板は、ポリマー、エラストマー、布地、サーモポリウレタン、サーモポリエステル、または紙の少なくとも1つを備え、
装置は、少なくとも1回の紫外放射測定を行うために可撓性装置と通信する紫外放射センサをさらに含むことができること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「センサ」は、後述する相違点を除いて、本願発明1の「センサ」に相当する。

イ 引用発明は、「感圧領域とリード線はポリエステルフィルム層の間に挟まれており」、「各センサは一般に2つの導電性リード線に関連付けられており」との構造を備えるから、引用発明の「センサ」は、「ポリエステルフィルム層」上に、「2つの導電線リード線」が配線されたものといえる。

ウ 前記イより、引用発明において、「2つの導電線リード線」が配線されている「ポリエステルフィルム層」は、「基板」といい得るものであり、「感圧領域」と「リード線」を挟む2層の「ポリエステルフィルム層」のうちの一方を「第1の基板」と称することは任意である。
また、引用発明の「2つの導電線リード線」は、「センサ」に使用されるものであるから、「導線配線」とも「センサ配線」ともいい得るものである。
また、「2つ」は、「複数」及び「2又はそれより多く」に含まれる概念である。
以上より、引用発明と本願発明1の「第1の熱可塑性ポリウレタン(TPU)基板上の複数の導電配線であって、前記複数の導電配線は、2又はそれより多くのセンサ配線を有する、複数の導電配線」とは、「第1の基板上の複数の導電配線であって、前記複数の導電配線は、2又はそれより多くのセンサ配線を有する、複数の導電配線」との構成を備える点において共通する。

エ 前記イより「感圧領域」は、「ポリエステルフィルム層」に接合され、かつ、「2つの導電線リード線」と接しており、また、「センサ」を形成するものといえる。
また、引用発明は、「ピエゾ抵抗布センサなどの適切な材料、金属被覆布材料および他のタイプの導電性配合物でコーティングまたは含浸された布材料などの被覆および/または含浸布は、当技術分野で知られており、様々なそのような布センサを使用することができ」との構成を有することから、前記「感圧領域」は、「ピエゾ抵抗布センサなどの適切な材料、金属被覆布材料および他のタイプの導電性配合物でコーティングまたは含浸された布材料などの被覆および/または含浸布」である「布センサ」であるから、「ピエゾ抵抗性の生地」といい得るものである。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記第1のTPU基板に熱的に接合され、前記2又はそれより多くのセンサ配線と接するピエゾ抵抗性の生地であって、前記ピエゾ抵抗性の生地及び前記2又はそれより多くのセンサ配線は、前記センサを形成する、ピエゾ抵抗性の生地」とは、「前記第1の基板に接合され、前記2又はそれより多くのセンサ配線と接するピエゾ抵抗性の生地であって、前記ピエゾ抵抗性の生地及び前記2又はそれより多くのセンサ配線は、前記センサを形成する、ピエゾ抵抗性の生地」との構成を備える点において共通する。

(2)一致点、相違点
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 センサであって、
第1の基板上の複数の導電配線であって、前記複数の導電配線は、2又はそれより多くのセンサ配線を有する、複数の導電配線と、
前記第1の基板に接合され、前記2又はそれより多くのセンサ配線と接するピエゾ抵抗性の生地であって、前記ピエゾ抵抗性の生地及び前記2又はそれより多くのセンサ配線は、前記センサを形成する、ピエゾ抵抗性の生地と
を備える、センサ。」

[相違点]
<相違点1>
「第1の基板」が、本願発明1は「第1の熱可塑性ポリウレタン(TPU)基板」であるのに対し、引用発明は、「ポリエステルフィルム層」であり、また、「シート材料などの基礎となる基板」の材料として「柔軟なプラスチックシート材料、柔軟な熱可塑性材料」が挙げられているものの、前記「ポリエステルフィルム層」に替えて「熱可塑性材料」を使用できることについて具体的な記載又は示唆はなく、かつ、「熱可塑性材料」は「熱可塑性ポリウレタン(TPU)」に限定されていない点。

<相違点2>
「第1の基板」と「ピエゾ抵抗性の生地」との「接合」が、本願発明1は「熱的に接合」であるのに対し、引用発明は、「ポリエステルフィルム層」と「感圧領域」がどのように接合されるのかを具体的に特定していない点。

(3)相違点についての判断
「第1の基板」に関する事項である点において連関するため、相違点1及び相違点2についてまとめて検討する。
仮に、引用発明に引用文献2記載事項(特に「サーモポリウレタン」)を選択的に適用して、引用発明の「ポリエステルフィルム層」を「第1の熱可塑性ポリウレタン(TPU)基板」に置換することが当業者にとって容易であるとしても、そのように置換した後の構成において、さらに、「第1の熱可塑性ポリウレタン(TPU)基板」と「ピエゾ抵抗性の生地」との接合方式として、「熱的に接合」する方式を採用することは当業者にとって自明ないし容易とはいえない。(むしろ、「熱可塑性ポリウレタン(TPU)基板」との接合に「熱的に接合」する方式を適用した場合には、「熱可塑性」である「熱可塑性ポリウレタン(TPU)基板」が熱により変形するおそれがあることから、「衣服に関連付けられるか、またはそれに組み込まれ得る」ことを前提としている引用発明に適用するには技術的な阻害要因がある。)
また、「第1の熱可塑性ポリウレタン(TPU)基板」と「ピエゾ抵抗性の生地」とを「熱的に接合」することは、本願出願時における周知技術であったとは認められない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし15について
本願発明2ないし15も、本願発明1の、「第1の熱可塑性ポリウレタン(TPU)基板」と「ピエゾ抵抗性の生地」とを「熱的に接合」するという技術的事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1ないし15は、「第1の熱可塑性ポリウレタン(TPU)基板」と「ピエゾ抵抗性の生地」とを「熱的に接合」するという技術的事項を有するものであるから、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-06-01 
出願番号 特願2018-114012(P2018-114012)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 林 毅
富澤 哲生
発明の名称 グローブと一体化されたセンサシステム  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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