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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1374698
審判番号 不服2020-8133  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-11 
確定日 2021-06-10 
事件の表示 特願2017-27787号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月23日出願公開、特開2018-130438号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月17日の出願であって、平成31年3月22日に手続補正がなされ、令和1年7月10日付けの拒絶理由通知に対して、同年9月19日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年11月28日付けの最後の拒絶理由通知に対して、令和2年1月30日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたところ、令和2年3月31日付けで同年1月30日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年6月11日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年6月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正は、明細書及び特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の令和1年9月19日付けの手続補正書において、

「【請求項1】
スタートスイッチの操作に基づき、選択当選役と他の当選役が重複した当選種別であり所定の正解操作態様による操作が前記選択当選役の入賞条件として設定された選択当選種別を含む複数種類の当選種別のいずれかを当選種別抽選により決定する当選種別抽選手段と、
前記スタートスイッチの操作に基づき、複数種類の図柄がそれぞれ配列された複数のリールを回転制御し、回転しているリールに対応するストップスイッチの操作に応じ、前記当選種別抽選手段の抽選結果に基づいて、操作された前記ストップスイッチに対応するリールをそれぞれ停止制御するリール制御手段と、
前記選択当選種別の当選時に前記正解操作態様を報知する補助演出を実行する補助演出報知手段と、
前記補助演出を前記補助演出報知手段に実行させるAT演出状態を含む有利状態を含む複数種類の演出状態のいずれかに移行する演出状態制御手段と、
ボーナス役の入賞によって移行するボーナス遊技状態、前記ボーナス遊技状態終了後に移行する第1RT遊技状態、前記第1RT遊技状態において所定の条件を満たすと移行する第2RT遊技状態を含む複数種類の遊技状態のいずれかに移行させる状態制御手段と、を備え、
前記有利状態かつ前記第1RT遊技状態に滞在する場合と、前記有利状態かつ前記第2RT遊技状態に滞在する場合とでは、前記AT演出状態への移行を決定する確率が異なる遊技機。」

とあったものを、

「【請求項1】
スタートスイッチの操作に基づき、選択当選役と他の当選役が重複した当選種別であり所定の正解操作態様による操作が前記選択当選役の入賞条件として設定された選択当選種別を含む複数種類の当選種別のいずれかを当選種別抽選により決定する当選種別抽選手段と、
前記スタートスイッチの操作に基づき、複数種類の図柄がそれぞれ配列された複数のリールを回転制御し、回転しているリールに対応するストップスイッチの操作に応じ、前記当選種別抽選手段の抽選結果に基づいて、操作された前記ストップスイッチに対応するリールをそれぞれ停止制御するリール制御手段と、
前記選択当選種別の当選時に前記正解操作態様を報知する補助演出を実行する補助演出報知手段と、
前記補助演出を前記補助演出報知手段に実行させるAT演出状態を含む有利状態を含む複数種類の演出状態のいずれかに移行する演出状態制御手段と、
ボーナス役の入賞によって移行するボーナス遊技状態、前記ボーナス遊技状態終了後に移行する第1RT遊技状態、前記第1RT遊技状態において所定の終了条件を満たすと移行する第2RT遊技状態を含む複数種類の遊技状態のいずれかに移行させる状態制御手段と、を備え、
前記有利状態かつ前記第1RT遊技状態に滞在する場合と、前記有利状態かつ前記第2RT遊技状態に滞在する場合とでは、前記AT演出状態への移行を決定する確率が異なり、
遊技状態が前記第1RT遊技状態であり、かつ、所定の確定条件を満たすと前記AT演出状態への移行が確定する遊技機。」

と補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。

(2)請求項1に係る前記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第1RT遊技状態」から「第2RT遊技状態」への「移行」の「条件」に関して、「所定の条件を満たすと」との記載を「所定の終了条件を満たすと」とする補正(以下、「補正事項1」という。)と、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記AT演出状態への移行」に関して、「遊技状態が前記第1RT遊技状態であり、かつ、所定の確定条件を満たすと前記AT演出状態への移行が確定す」るとの記載を付加する補正(以下、「補正事項2」という。)。

2 補正の適否について
2-1 新規事項の追加
(1)補正事項1、補正事項2の補正の根拠について
補正事項1については、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0063】、図8に基づいたものであると認められる。
一方、補正事項2における「所定の確定条件」については、本件補正後の請求項1には具体的な記載がない。そのため、「遊技状態が前記第1RT遊技状態であり、かつ、所定の確定条件を満たすと前記AT演出状態への移行が確定する」という文言のみからでは、「所定の確定条件」は、「遊技状態が前記第1RT遊技状態」のときに「所定の確定条件を満たす」ことにより、「前記AT演出状態への移行が確定する」ための条件であればどのような条件であってもよく、AT演出状態への移行が確定する確定役を含む特定の役に当選することや、特異的な出目が導出されること等のあらゆる条件が含まれると認められる。
そこで、当初明細書等をみると、補正事項2と関連する記載として以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。

ア 「【0125】
しかし、チャンス演出状態(有利状態)では、その性能(例えば、継続遊技数の上乗せ)について遊技状態がRT0?RT4遊技状態のいずれであるかを参照してもよい。そこで、チャンス演出状態において当選種別「BB」に当選した場合、遊技状態を参照してAT演出状態への移行を確定する。
【0126】
具体的に、図8に示したように、遊技状態制御手段312は、ボーナス役を含む当選種別が決定されたときの遊技状態に拘わらず、ボーナス遊技状態の終了後、遊技状態を、ボーナス遊技状態からRT4遊技状態(特定遊技状態)に移行する仕様を採用する。したがって、ボーナス役に当選すると、RT0遊技状態?RT3遊技状態に移行する前に、必ず、RT4遊技状態を経由することとなる。続いて、ボーナス遊技状態が終了したことに伴い再開されたチャンス演出状態において遊技状態を参照し、遊技状態がRT4遊技状態であれば、AT演出状態への移行を確定する。かかる遊技性を実現するためには、RT4遊技状態は少なくとも1遊技あれば足りる。なお、かかる場合に限らず、RT4遊技状態を2遊技以上継続し、RT4遊技状態で1遊技以上遊技を行ったことをAT演出状態への移行条件としてもよい。
【0127】
図14は、ボーナス役の当選に基づくAT演出状態への移行態様を説明するための説明図である。ここでは演出状態の遷移と遊技状態の遷移を時系列に示している。例えば、図14(a)のように、チャンス演出状態において、ボーナス役を含む当選種別に当選したとする。そうすると、その当選種別が当選種別「設定差無ボーナス」であるか当選種別「設定差有ボーナス」であるかに拘わらず、ボーナス遊技状態が終了すると、遊技状態制御手段312は、遊技状態をRT4遊技状態に移行する。このとき、演出状態は、ボーナス遊技状態が開始される前のチャンス演出状態に戻る。そうすると、演出状態がチャンス演出状態であり、かつ、遊技状態がRT4遊技状態となる状態を生成できる。このとき、演出状態制御手段314は、遊技状態がRT4遊技状態であることを参照して、AT演出状態への移行を確定する。
・・・・・
【0129】
このように、ボーナス役を含む当選種別が決定されたときの遊技状態に拘わらず、ボーナス遊技状態の終了後、遊技状態を、ボーナス遊技状態からRT4遊技状態に移行し、かつ、チャンス演出状態において遊技状態を参照して、遊技状態がRT4遊技状態であれば、AT演出状態への移行を確定する構成により、チャンス演出状態中にボーナス役が入賞すると、ボーナス遊技状態終了後にAT演出状態に必ず移行するといったインパクトのある遊技性を遊技者に提供することが可能となる。」

イ 「【0171】
(ステップS316)
上記ステップS315においてチャンス演出状態であると判定されれば、演出状態制御手段314は、現在の遊技状態がRT4遊技状態であるか否か判定する。その結果、RT4遊技状態であれば、ステップS317に処理を移し、RT4遊技状態でなければ、ステップS318に処理を移す。
【0172】
(ステップS317)
上記ステップS316においてRT4遊技状態であると判定されれば、演出状態制御手段314は、演出状態をAT演出状態に移行する。こうして、チャンス演出状態中にボーナス役を含む当選種別が決定された場合にAT演出状態への移行を確定できる。」

ウ 「図14


図17



(2)当審の判断
本件補正後の請求項1において「前記ボーナス遊技状態終了後に移行する第1RT遊技状態」と特定されていること、当初明細書等の段落【0126】に「遊技状態制御手段312は、ボーナス役を含む当選種別が決定されたときの遊技状態に拘わらず、ボーナス遊技状態の終了後、遊技状態を、ボーナス遊技状態からRT4遊技状態(特定遊技状態)に移行する仕様を採用する。」と記載されていることから、補正事項2の「第1RT遊技状態」は、当初明細書等に記載の「RT4遊技状態」に対応する。(なお、請求人も、令和1年9月19日付け意見書の【意見の内容】2.、令和2年1月30日付け意見書の【意見の内容】2.、審判請求書の【請求の理由】の3.(2)において、「第1RT遊技状態」は、「RT4遊技状態」であると説明している。)
そして、当初明細書の段落【0126】の「ボーナス遊技状態が終了したことに伴い再開されたチャンス演出状態において遊技状態を参照し、遊技状態がRT4遊技状態であれば、AT演出状態への移行を確定する」との記載、段落【0127】の「演出状態がチャンス演出状態であり、かつ、遊技状態がRT4遊技状態となる状態を生成できる。このとき、演出状態制御手段314は、遊技状態がRT4遊技状態であることを参照して、AT演出状態への移行を確定する。」との記載、段落【0129】の「チャンス演出状態において遊技状態を参照して、遊技状態がRT4遊技状態であれば、AT演出状態への移行を確定する」との記載を参酌すれば、当初明細書等には、チャンス演出状態において、遊技状態がRT4遊技状態であれば、AT演出状態への移行を確定することが記載されており、「所定の確定条件」として、「演出状態がチャンス演出状態である」ことが記載されていると認められる。
しかしながら、当初明細書等には、「所定の確定条件」として、「演出状態がチャンス演出状態である」こと以外(例えば、AT演出状態への移行が確定する確定役を含む特定の役に当選することや、特異的な出目が導出されること等)について記載されているということはできない。
そうすると、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでない。
したがって、補正事項2を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

2-2 補正の目的について
補正事項1は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第1RT遊技状態」から「第2RT遊技状態」への「移行」の「条件」に関して、「所定の条件を満たすと」との記載を「所定の終了条件を満たすと」と限定する補正であり、補正事項2は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記AT演出状態への移行」に関して、「遊技状態が前記第1RT遊技状態であり、かつ、所定の確定条件を満たすと前記AT演出状態への移行が確定す」るとの限定を付加する補正である。
そして、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

2-3 独立特許要件について
前記2-2で検討したとおりであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)についてさらに検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記「1 補正の内容」において示した次のとおりのものである(A?Gは、当審で分説して付与した。)。

(本願補正発明)
「【請求項1】
A スタートスイッチの操作に基づき、選択当選役と他の当選役が重複した当選種別であり所定の正解操作態様による操作が前記選択当選役の入賞条件として設定された選択当選種別を含む複数種類の当選種別のいずれかを当選種別抽選により決定する当選種別抽選手段と、
B 前記スタートスイッチの操作に基づき、複数種類の図柄がそれぞれ配列された複数のリールを回転制御し、回転しているリールに対応するストップスイッチの操作に応じ、前記当選種別抽選手段の抽選結果に基づいて、操作された前記ストップスイッチに対応するリールをそれぞれ停止制御するリール制御手段と、
C 前記選択当選種別の当選時に前記正解操作態様を報知する補助演出を実行する補助演出報知手段と、
D 前記補助演出を前記補助演出報知手段に実行させるAT演出状態を含む有利状態を含む複数種類の演出状態のいずれかに移行する演出状態制御手段と、
E ボーナス役の入賞によって移行するボーナス遊技状態、前記ボーナス遊技状態終了後に移行する第1RT遊技状態、前記第1RT遊技状態において所定の終了条件を満たすと移行する第2RT遊技状態を含む複数種類の遊技状態のいずれかに移行させる状態制御手段と、を備え、
F 前記有利状態かつ前記第1RT遊技状態に滞在する場合と、前記有利状態かつ前記第2RT遊技状態に滞在する場合とでは、前記AT演出状態への移行を決定する確率が異なり、
G 遊技状態が前記第1RT遊技状態であり、かつ、所定の確定条件を満たすと前記AT演出状態への移行が確定する遊技機。」

(2)先願発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2017-4968号(特開2018-114009号公報参照。以下「先願」という。)(出願日:平成29年1月16日、出願人:株式会社三共、発明者:小倉敏男、他1名)の願書に最初に添付された明細書(以下「先願明細書」という。)、特許請求の範囲又は図面(以下、先願明細書と併せて「先願明細書等」という。)には、「遊技機」に関して次の事項が図面とともに記載されている。(下線は、当審で付したものである。)

ア 「【0017】
本発明が適用された遊技機であるスロットマシンの実施例について図面を用いて説明すると、本実施例のスロットマシン1は、図1に示すように、前面が開口する筐体1aと、この筐体1aの側端に回動自在に枢支された前面扉1bと、から構成されている。
【0018】
図1(a)は、本実施例に係るスロットマシンの正面図であり、図1(b)は、スロットマシン1の主な内部構成の一例を示す図である。図2は、リールの図柄配列を示す図である。図1(a)に示すように、スロットマシン1は、前面扉1bに液晶表示器51が設けられ、透視窓3を介して筐体1a内部に並設されているリール2L、2C、2Rが視認可能となる。図2に示すように、各リールには、各々が識別可能な複数種類の図柄が所定の順序で配列されている。
・・・・・
【0024】
ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7が操作されると、リール2L、2C、2Rを回転させて図柄を変動表示し、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されると対応するリールの回転を停止させることで、透視窓3の上中下段に3つの図柄を表示結果として導出表示する。入賞ラインLN上に入賞図柄の組合せが停止し入賞が発生したときには、入賞に応じて、所定枚数のメダルが遊技者に対して付与されて、クレジット加算か、クレジットが上限数(50)に達した場合にはメダル払出口9からメダルが払い出される。
・・・・・
【0031】
賭数設定後、スタートスイッチ7が操作されると、入賞の発生を許容するか否かを決定(内部抽選)するための内部抽選がメイン制御部41によって行われる。例えば、メイン制御部41が備える乱数回路(図示省略)は、所定範囲(1?65536)に属する判定値を所定の更新規則に従って更新する。メイン制御部41は、スタートスイッチ7が操作されたときに乱数回路が更新している判定値を抽出する。そして、メイン制御部41は、抽出した判定値が抽選対象役ごとに予め定められた所定範囲に属する判定値に該当すれば、該当した抽選対象役の当選を決定する。内部抽選において抽選対象役に当選したときには、当該抽選対象役に含まれる入賞役の当選フラグがRAM41cの所定領域に設定される。例えば、図13に示すように、BBに当選したときには、BB当選フラグが設定され、強チェリーに当選したときには、下段チェリーの当選フラグと、1枚役1の当選フラグとが設定される。BBの当選フラグについては、当選したBBが入賞するまで持ち越される一方、BB以外の入賞役に対応する当選フラグは、入賞の発生の有無にかかわらず、当選したゲームが終了したときに消去される。
【0032】
スロットマシン1において行われる遊技の区間には、通常区間と有利区間とが含まれる。有利区間は、ストップスイッチ8L、8C、8Rの操作態様(押し順、操作タイミング)を遊技者に指示する指示機能に係る性能を持つ区間である。具体的に、有利区間は、AT(アシストタイム)やCZ(チャンスゾーン)といった有利状態に制御された区間である。
【0033】
ATは、メイン制御部41によって制御され、ストップスイッチ8L、8C、8Rの操作態様(押し順、操作タイミング)を遊技者に報知するナビ演出が実行される報知状態である。具体的に、メイン制御部41は、ATに制御する権利となるATゲームの付与に関するAT抽選を実行する。例えば、メイン制御部41は、ATゲームを付与するか否か、及びATゲームを付与する場合の付与数(ATゲーム数)をAT抽選で決定する。尚、AT抽選においてATゲームを付与することが決定されることをAT当選と称し、AT抽選においてATゲームを付与することが決定されないことを非AT当選と称する。
【0034】
・・・メイン制御部41は、AT中において後述する押し順ベルや押し順リプレイといった押し順役に当選したときに、当選した押し順役に対応しかつ遊技者にとって有利な図柄組合せを入賞ラインLN上に停止させるための操作態様をナビ演出によって報知する。・・・
・・・・・
【0039】
前述したように、「有利区間」には、ATのような報知状態に制御されている区間と、CZのような有利状態に制御されている区間とが含まれる。一方、AT及びCZのいずれも制御されていない通常状態である区間を「通常区間」と称する。また、前述したCZ抽選は、有利区間に移行するための抽選であるため、「有利区間移行抽選」と称する。つまり、通常区間において有利区間移行抽選が行われ、有利区間移行抽選で当選した後、指示機能に係る性能を持つ有利区間に移行する。有利区間中においては「指示機能に係る処理」として、AT抽選や上乗せ抽選のような「指示機能に係る抽選」が行われる。」

イ 「【0062】
メイン制御部41は、ゲーム処理を行って1回のゲームを制御する。ゲーム処理では、まず、賭数設定やクレジット精算・賭数精算するためのBET処理が行われる。
【0063】
賭数設定後、スタートスイッチ7が操作されると、入賞の発生を許容するか否かを決定(内部抽選)するための内部抽選処理が行われる。
【0064】
また、内部抽選処理においては、内部抽選が行われた後、当該内部抽選の結果に応じたコマンドを設定するための内部抽選時コマンド設定処理が実行される。メイン制御部41は、内部抽選により設定された内部当選フラグを読み出し、いずれかの抽選対象役に当選したときには当該抽選対象役が属するグループを特定するための内部当選コマンドをコマンドキューに設定する。例えば、メイン制御部41は、後述する左ベル、中ベル、及び右ベルのいずれかに当選したときには、これらの役が属する押し順ベルのグループを特定可能な内部当選コマンドを送信する。尚、いずれの抽選対象役にも当選していないときには、はずれを特定するための内部当選コマンドが設定される。
・・・・・
【0068】
内部抽選処理が終了すると、リール回転処理が行われる。リール回転処理では、前回ゲームのリール回転開始から所定時間(例えば、4.1秒)経過していることを条件に、リール2L、2C、2Rの回転を開始させた後、ストップスイッチ8L、8C、8Rを有効化し、停止操作に応じてリールの回転を停止させる。
・・・・・
【0070】
入賞判定処理が終了すると、払出処理が行われる。払出処理では、入賞の発生に応じてメダルの払い出しまたはクレジット加算や、入賞に関わらない各種の処理(例えば、ボーナス中のメダル払出枚数を計数してボーナスの終了制御に関する処理や、持ち越しのない当選フラグ(小役・再遊技役等の当選フラグ)の消去など)が行われる。ゲーム終了時処理では、次のゲームに備えて遊技状態を設定する処理を実行する。これにより、1ゲーム分のゲーム処理が終了し、次の1ゲーム分のゲーム処理が開始する。
・・・・・
【0079】
メイン制御部41は、AT中においてナビ対象役に当選したときには、当該ナビ対象役に応じた正解手順を特定可能な押し順コマンドを出力する。その結果、サブ制御部91は、押し順コマンドに基づきナビ演出を実行可能となる。AT中において、サブ制御部91は、液晶表示器51を用いて、押し順コマンドに応じた正解手順を特定可能な情報(例えば、押し順)を報知するための処理を実行する。このように、メイン制御部41及びサブ制御部91双方において、正解手順を特定可能な情報を報知することによりナビ演出が実行される。」

ウ 「【0093】
図4は、メイン制御部41が実行する通常区間処理を示すフローチャートである。図4に示すように、メイン制御部41は、スタートスイッチ7が操作されたか否かを判定する(S10)。メイン制御部41は、スタートスイッチ7が操作されていない場合(S10でNO)、スタートスイッチ7が操作されるまで処理を待機する。一方、メイン制御部41は、スタートスイッチ7が操作された場合(S10でYES)、内部抽選を実行する(S11)。次に、メイン制御部41は、有利区間移行抽選を実行する(S12)。ここで言う有利区間移行抽選には、CZ抽選が含まれる。
・・・・・
【0095】
次に、メイン制御部41は、有利区間移行抽選で当選したか否かを判定する(S15)。メイン制御部41は、有利区間移行抽選で当選していない場合(S15でNO)、再びS10の処理に戻る。一方、メイン制御部41は、有利区間移行抽選で当選した場合(S15でYES)、すなわち、CZ当選した場合、ナビカウンタに1を設定する(S16)。ナビカウンタとは、ナビ演出が少なくとも1回は実行されるためのカウンタであり、メイン制御部41のRAM41cの所定領域に格納されている。ナビカウンタは、1が設定された後、ナビ演出が1回実行されるか、あるいはBB当選すると、0にクリアされる。すなわち、CZやATといった有利区間に移行する前にはナビ演出が少なくとも1回実行され、BBに移行する前では例外的にナビ演出が実行されないようになっている。
【0096】
次に、メイン制御部41は、有利区間移行処理を実行する。有利区間移行処理において、メイン制御部41は、まず有利区間報知ランプ19を点灯させる(S17)。それ以降、メイン制御部41は、有利区間処理へ移行し(S18)、本ルーチンを終了する。
【0097】
図5を参照しながら、メイン制御部41が実行する有利区間処理について説明する。図5は、メイン制御部41が実行する有利区間処理を示すフローチャートである。図5に示すように、メイン制御部41は、スタートスイッチ7が操作されたか否かを判定する(S30)。メイン制御部41は、スタートスイッチ7が操作されていない場合(S30でNO)、スタートスイッチ7が操作されるまで処理を待機する。一方、メイン制御部41は、スタートスイッチ7が操作された場合(S30でYES)、内部抽選を実行する(S31)。
・・・・・
【0102】
一方、メイン制御部41は、ナビカウンタの値が0である場合(S37でYES)、任意の終了条件が成立したか否かを判定する(S38)。任意の終了条件は、任意に設定可能である。例えば、カウント純増枚数が2999枚に達すること、あるいは後述するように特定の役に入賞したことなどを任意の終了条件としてもよい。メイン制御部41は、任意の終了条件が成立していない場合(S38でNO)、本ルーチンを終了する。一方、メイン制御部41は、任意の終了条件が成立した場合(S38でYES)、クリアカウンタに0を設定する(S39)。このように、メイン制御部41は、S38で任意の終了条件が成立したか否かを判定する前に、S36でカウントゲーム数が1500ゲームに達していないか否かを必ず判定する。
【0103】
次に、メイン制御部41は、リミット処理を行い(S40)、有利区間にかかわる全ての情報を初期化する。これにより、例えば、リミット処理が行われてATが終了する。尚、リミット処理は、設定値にかかわらず実行される。その後、メイン制御部41は、有利区間報知ランプ19を消灯させる(S41)。それ以降、メイン制御部41は、通常区間処理へ移行し(S42)、本ルーチンを終了する。」

エ 「【0109】
図7は、遊技状態の遷移を説明するための図であり、図8は、遊技状態の概要を示す図である。図7及び図8に示すように、スロットマシン1では、制御可能な遊技状態として、RT0、RT1、RT2、RT3、内部中、及びBB(ビッグボーナス)が設けられている。RT1、RT2、及び内部中は、内部抽選におけるリプレイの合算確率が約1/7.3である。RT0及びRT3は、内部抽選におけるリプレイの合算確率が約1/1.5である。すなわち、RT0及びRT3は、RT1、RT2、及び内部中よりもリプレイの当選確率が高い遊技状態である。
【0110】
設定変更された後には、まずRT1に制御される。RT1においては、押し順ベルが当選したときに主役の入賞を取りこぼすと取りこぼし目が導出し、当該取りこぼし目の導出を条件に、RT0に遊技状態が移行する。RT0においては、転落リプレイ1が入賞すると、RT2に遊技状態が移行する。一方、RT0においては、昇格リプレイが入賞すると、RT3に遊技状態が移行する。RT2においては、32ゲーム消化すると、RT0に遊技状態が移行する。つまり、RT2はゲーム数が有限の遊技状態(有限RT)である。RT3においては、押し順ベルが当選したときに主役の入賞を取りこぼすと取りこぼし目が導出し、当該取りこぼし目の導出を条件に、RT0に遊技状態が移行する。また、RT3においては、転落リプレイ2が入賞することによっても、RT0に遊技状態が移行する。RT0?3のいずれにおいても、BB当選すると、内部中に遊技状態が移行する。内部中においては、BB入賞すると、BBに遊技状態が移行する。尚、RT0?3のいずれかでBB当選したゲームで当該BBに入賞することができれば、内部中を経由することなく、BBに遊技状態が移行する。BBは、メダルの払出枚数が350枚を超えると終了し、RT1に遊技状態が移行する。
【0111】
図9は、小役の種類、小役の図柄組合せ、及び小役に関連する技術事項について説明するための図である。図9に示すように、入賞役のうちの小役には、中段ベル、右下がりベル、上段ベル1?8、右下がりベル、上段スイカ、中段スイカ、下段チェリー、中段チェリー、1枚役1、2、及びBBが含まれる。図9に示すように、各小役は、図柄組合せが設定されている。ここで、上段ベル1?8のそれぞれを構成する中リール2Cの「白BAR」や「黒BAR」は、中リール2Cにおいて5コマ以内に配置されていない。また、上段ベル1?8のそれぞれを構成する右リール2Rの「白BAR」や「黒BAR」は、中リール2Rにおいて5コマ以内に配置されていない。このため、内部抽選において上段ベル1?8に当選していても、中リール2Cや右リール2Rの停止操作を適正なタイミングで行わなければ、当選している上段ベル1?8を入賞させることができず、上段ベル1?8の入賞を取りこぼすことになる。このときに導出される出目を取りこぼし目という。各小役に対応する図柄組合せが導出されると、小役の入賞が発生し、予め決められた枚数分のメダルが払い出される。
【0112】
図10は、再遊技役の種類、再遊技役の図柄組合せ、及び再遊技役に関連する技術事項について説明するための図である。図10に示すように、入賞役のうちの再遊技役には、通常リプレイ、制御用リプレイ1?3、転落リプレイ1、2、昇格リプレイ、及び特殊リプレイが含まれる。特殊リプレイを構成する左リール2Lの「リプレイ」/「プラム」、中リール2Cの「白BAR」/「黒BAR」、及び右リール2Rの「黒7」/「網7」/「白7」/「プラム」は、各リールにおいて5コマ以内に配置されている。このため、内部抽選において特殊リプレイに当選すると、ストップスイッチの操作タイミングにかかわらず必ず特殊リプレイが入賞する。特殊リプレイが入賞すると、無効ライン上にBAR図柄が揃う。」

オ 「【0113】
図11及び図12は、遊技状態ごとの抽選対象役について説明するための図である。抽選対象役欄には、その名称を示し、遊技状態欄には、RTの種類ごとに、丸印でその抽選対象役が抽選対象であることを示し、丸印の下の数値により当選確率にかかわる判定値数を示している。」

カ 「【0125】
図13は、抽選対象役により入賞が許容される役の組合せについて説明するための図である。図13に示すように、各抽選対象役は、単数あるいは複数の役が組み合わされて抽選対象となる。
【0126】
図14は、押し順ベル当選時のリール制御を説明するための図である。図14に示すように、いずれかの押し順ベルに当選したときには、当選した押し順ベルの種類に応じて正解手順が定められている。例えば、左ベル1?4には正解手順として左第1停止が定められ、中ベル1?4には正解手順として中第1停止が定められ、右ベル1?4には正解手順として右第1停止が定められている。いずれかの押し順ベルに当選したときに正解手順でストップスイッチが操作されると、主役である右下がりベルや中段ベルが入賞し、不正解手順でストップスイッチが操作されると、副役であるいずれかの上段ベルが入賞するか、あるいは入賞を取りこぼして取りこぼし目が導出される。尚、CZ中やAT中においては、押し順ベル当選時に正解手順がナビ演出(ベルナビ)によって報知され得る。」

キ 「【0137】
図16(c)に示すように、CZ中のAT抽選は、設定差のない弱チェリー1、2、弱スイカ1、2、強チェリー、強スイカ、中段チェリー、及び特殊リプレイが抽選対象役となる。そして、メイン制御部41は、図16(c)に示す当選確率に基づき、抽選対象役の種類に応じてAT当選するか否かを決定する。
【0138】
例えば、CZ中に特殊リプレイに当選したときには、25%の確率(つまり、1/4の確率)でAT当選する。ここで、図12に示す判定値を考慮すると、RT2中に特殊リプレイに当選する確率は、約1/100である。このため、RT2中のCZでは、約1/400(内部当選確率1/100とAT当選確率1/4との乗算)の確率でAT当選し得る。一方、RT0中に特殊リプレイに当選する確率は、約1/3である。このため、RT0中のCZでは、約1/12(内部当選確率1/3とAT当選確率1/4との乗算)の確率でAT当選し得る。」

ク 「図7


図11


図12


図13


図14


図16



ケ 上記記載事項エの【0110】には、「BBは、メダルの払出枚数が350枚を超えると終了し、RT1に遊技状態が移行する」ことが記載されている。
そうすると、先願明細書等には、遊技状態として、「BB終了後に移行するRT1」(認定事項ケ)が記載されていると認められる。

コ 上記記載事項カの【0126】には、「図14に示すように、いずれかの押し順ベルに当選したときには、当選した押し順ベルの種類に応じて正解手順が定められている。例えば、左ベル1?4には正解手順として左第1停止が定められ、中ベル1?4には正解手順として中第1停止が定められ、右ベル1?4には正解手順として右第1停止が定められている。」と記載され、上記記載事項クの図13より、抽選対象役が複数種類あり、抽選対象役に左ベル1?4、中ベル1?4、右ベル1?4の押し順ベルが含まれることが見て取れる。
そうすると、先願明細書等には、「押し順ベルを含む複数種類の抽選対象役」(認定事項コ)が記載されていると認められる。

サ 上記記載事項アの段落【0033】には、「メイン制御部41は、ATに制御する権利となるATゲームの付与に関するAT抽選を実行する。」と記載されている。
そして、上記記載事項オの段落【0113】の「図11及び図12は、遊技状態ごとの抽選対象役について説明するための図である。抽選対象役欄には、その名称を示し、遊技状態欄には、RTの種類ごとに、丸印でその抽選対象役が抽選対象であることを示し、丸印の下の数値により当選確率にかかわる判定値数を示している。」との記載、上記記載事項キの段落【0137】の「図16(c)に示すように、CZ中のAT抽選は、設定差のない弱チェリー1、2、弱スイカ1、2、強チェリー、強スイカ、中段チェリー、及び特殊リプレイが抽選対象役となる。そして、メイン制御部41は、図16(c)に示す当選確率に基づき、抽選対象役の種類に応じてAT当選するか否かを決定する。」との記載及び上記記載事項クの図11、図12、16(c)より、CZ中のAT抽選を実行する弱チェリー1、2、弱スイカ1、2、強チェリー、強スイカ、中段チェリー、及び特殊リプレイのうち、CZ中のAT抽選を実行する弱チェリー1、2、弱スイカ1、2、強チェリー、強スイカ、中段チェリーは、遊技状態がRT0、RT1における判定値数が同数であることから、遊技状態がRT0、RT1において、これらの小役によるAT当選の確率は同じであると認められる。一方、特殊リプレイは、遊技状態がRT0における判定値数が21845であり、RT1における判定値が無いことがみてとれる。そうすると、先願明細書等において、CZ中でRT0中である場合は、CZ中でRT1中である場合よりも、特殊リプレイによるAT抽選が実行される分、AT当選の確率が高いといえる。
よって、先願明細書等には、「CZ中でRT0中である場合は、CZ中でRT1中である場合とよりも、AT当選の確率が高い」(認定事項サ)ことが記載されていると認められる。

そして、前記記載事項ア?ク及び認定事項ケ?サを総合すると、先願明細書等には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる(a?gは、本願補正発明のA?Gに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号は、先願明細書等における引用箇所を示す。)。

(先願発明)
「a スタートスイッチ7が操作されると、入賞の発生を許容するか否かを決定(内部抽選)するための内部抽選がメイン制御部41によって行われ、抽出した判定値が押し順ベルを含む複数種類の抽選対象役ごとに予め定められた所定範囲に属する判定値に該当すれば、該当した抽選対象役の当選を決定し(【0031】、認定事項コ)、
各抽選対象役は、単数あるいは複数の役が組み合わされて抽選対象となり(【0125】)、
押し順ベルに当選したときには、当選した押し順ベルの種類に応じて正解手順が定められ、正解手順でストップスイッチが操作されると、主役である右下がりベルや中段ベルが入賞し、不正解手順でストップスイッチが操作されると、副役であるいずれかの上段ベルが入賞するか、あるいは入賞を取りこぼして取りこぼし目が導出されるものであり(【0126】)、
b メイン制御部41は、ゲーム処理を行って1回のゲームを制御し、スタートスイッチ7が操作されると、各々が識別可能な複数種類の図柄が所定の順序で配列されたリール2L、2C、2Rを回転させて図柄を変動表示し、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されると対応するリールの回転を停止させるリール回転処理を行い、入賞ラインLN上に入賞図柄の組合せが停止し入賞が発生し(【0018】、【0024】、【0062】、【0068】)、
入賞役のうちの小役には、中段ベル、右下がりベル、上段ベル1?8、右下がりベル、上段スイカ、中段スイカ、下段チェリー、中段チェリー、1枚役1、2、及びBBが含まれ、内部抽選において上段ベル1?8に当選していても、中リール2Cや右リール2Rの停止操作を適正なタイミングで行わなければ、当選している上段ベル1?8を入賞させることができず、上段ベル1?8の入賞を取りこぼすことになり(【0111】)、
入賞役のうちの再遊技役には、通常リプレイ、制御用リプレイ1?3、転落リプレイ1、2、昇格リプレイ、及び特殊リプレイが含まれ、内部抽選において特殊リプレイに当選すると、ストップスイッチの操作タイミングにかかわらず必ず特殊リプレイが入賞するものであり(【0112】)、
c メイン制御部41は、AT中において押し順ベルや押し順リプレイといった押し順役に当選したときに、当選した押し順役に対応しかつ遊技者にとって有利な図柄組合せを入賞ラインLN上に停止させるための操作態様をナビ演出によって報知し、サブ制御部91は、ナビ演出を実行し(【0034】、【0079】)、
d 行われる遊技の区間には、通常区間と有利区間とが含まれ、有利区間は、AT(アシストタイム)やCZ(チャンスゾーン)といった有利状態に制御された区間であり、ストップスイッチ8L、8C、8Rの操作態様(押し順、操作タイミング)を遊技者に指示する指示機能に係る性能を持つ区間であり、ATは、メイン制御部41によって制御され、ストップスイッチ8L、8C、8Rの操作態様(押し順、操作タイミング)を遊技者に報知するナビ演出が実行される報知状態であり、通常区間は、AT及びCZのいずれも制御されていない通常状態である区間であり(【0032】、【0033】、【0039】)、
メイン制御部41は、通常区間処理において、スタートスイッチ7が操作された場合、内部抽選を実行し、次に、CZ抽選が含まれる有利区間移行抽選を実行し、有利区間移行抽選で当選した場合、有利区間移行処理を実行し、有利区間処理へ移行し(【0093】、【0095】、【0096】)、有利区間処理において、任意の終了条件が成立した場合、通常区間処理へ移行し(【0097】、【0102】、【0103】)、
e メイン制御部41は、次のゲームに備えて遊技状態を設定するゲーム終了時処理を実行し(【0062】、【0070】)、
制御可能な遊技状態として、RT0、BB終了後に移行するRT1、RT2、RT3、内部中、及びBBが設けられ(【0109】、認定事項ケ)、
RT1においては、押し順ベルが当選したときに主役の入賞を取りこぼすと取りこぼし目が導出し、当該取りこぼし目の導出を条件に、RT0に遊技状態が移行し、RT0?3のいずれにおいても、BB当選すると、内部中に遊技状態が移行し、内部中においては、BB入賞すると、BBに遊技状態が移行し(【0110】)、
f、g CZ中のAT抽選は、設定差のない弱チェリー1、2、弱スイカ1、2、強チェリー、強スイカ、中段チェリー、及び特殊リプレイが抽選対象役となり、メイン制御部41は、当選確率に基づき、抽選対象役の種類に応じてAT当選するか否かを決定し(【0137】)、
CZ中に特殊リプレイに当選したときには、25%の確率でAT当選するものであり(【0138】)、
CZ中でRT0中である場合は、CZ中でRT1中である場合よりも、AT当選の確率が高く(認定事項サ)、
RT0中に特殊リプレイに当選する確率は、約1/3であるため、RT0中のCZでは、約1/12(内部当選確率1/3とAT当選確率1/4との乗算)の確率でAT当選し得る(【0138】)スロットマシン1(【0017】)。」

(3)対比
本願補正発明と先願発明とを、分説に従い対比する。

ア 先願発明の構成aの「スタートスイッチ7が操作されると」は、本願補正発明の構成Aの「スタートスイッチの操作に基づき」に相当する。
先願発明の構成aの「押し順ベル」は、「正解手順でストップスイッチが操作されると、主役である右下がりベルや中段ベルが入賞し、不正解手順でストップスイッチが操作されると、副役であるいずれかの上段ベルが入賞するか、あるいは入賞を取りこぼして取りこぼし目が導出されるもの」であるから、「主役である右下がりベルや中段ベル」と「副役であるいずれかの上段ベル」が重複して当選しているといえ、先願発明の構成aの「主役である右下がりベルや中段ベル」、「副役であるいずれかの上段ベル」は、本願補正発明の構成Aの「選択当選役」、「他の当選役」に相当する。
また、先願発明の構成aの「押し順ベル」は、「正解手順でストップスイッチが操作されると、主役である右下がりベルや中段ベルが入賞」するものであるから、先願発明の構成aの「正解手順」は、本願補正発明の構成Aの「所定の正解操作態様」に相当する。
よって、先願発明の構成aの「正解手順でストップスイッチが操作されると、主役である右下がりベルや中段ベルが入賞し、不正解手順でストップスイッチが操作されると、副役であるいずれかの上段ベルが入賞するか、あるいは入賞を取りこぼして取りこぼし目が導出される」「押し順ベル」は、本願補正発明の構成Aの「選択当選役と他の当選役が重複した当選種別であり所定の正解操作態様による操作が前記選択当選役の入賞条件として設定された選択当選種別」に相当する。
そうすると、先願発明の構成aの「スタートスイッチ7が操作されると、入賞の発生を許容するか否かを決定(内部抽選)するための内部抽選」を「行」い、「抽出した判定値が」「正解手順でストップスイッチが操作されると、主役である右下がりベルや中段ベルが入賞し、不正解手順でストップスイッチが操作されると、副役であるいずれかの上段ベルが入賞するか、あるいは入賞を取りこぼして取りこぼし目が導出される」「押し順ベルを含む複数種類の抽選対象役ごとに予め定められた所定範囲に属する判定値に該当すれば、該当した抽選対象役の当選を決定」する「メイン制御部41」は、本願補正発明の構成Aの「スタートスイッチの操作に基づき、選択当選役と他の当選役が重複した当選種別であり所定の正解操作態様による操作が前記選択当選役の入賞条件として設定された選択当選種別を含む複数種類の当選種別のいずれかを当選種別抽選により決定する当選種別抽選手段」に相当する。

イ 先願発明の構成bの「スタートスイッチ7が操作されると」、「各々が識別可能な複数種類の図柄が所定の順序で配列されたリール2L、2C、2R」は、それぞれ本願補正発明の構成Bの「前記スタートスイッチの操作に基づき」、「複数種類の図柄がそれぞれ配列された複数のリール」に相当する。
また、先願発明の構成bの「メイン制御部41は、」「リール2L、2C、2Rを回転させて図柄を変動表示し、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されると対応するリールの回転を停止させるリール回転処理を行」うものであり、「リール回転処理」が、「リール2L、2C、2R」の「図柄を変動表示」する制御と、「リールの回転を停止させる」制御を行うことは明らかである。
よって、先願発明の構成bの「リール2L、2C、2Rを回転させて図柄を変動表示」する「リール回転処理を行」うこと、「リールの回転を停止させる」「リール回転処理を行」うことは、それぞれ本願補正発明の構成Bの「複数のリールを回転制御」すること、「操作された前記ストップスイッチに対応するリールをそれぞれ停止制御する」ことに相当する。
さらに、先願発明の構成bの「ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されると対応するリールの回転を停止させる」との記載、「入賞ラインLN上に入賞図柄の組合せが停止し入賞が発生し」との記載、「内部抽選において上段ベル1?8に当選していても、中リール2Cや右リール2Rの停止操作を適正なタイミングで行わなければ、当選している上段ベル1?8を入賞させることができず」との記載より、「入賞」が「発生」する「リールの回転」の「停止」は、「ストップスイッチ8L、8C、8R」の「操作」に応じてなされるものであり、「内部抽選」に基づくものであるといえる。
よって、先願発明の構成bの「スタートスイッチ7が操作されると、各々が識別可能な複数種類の図柄が所定の順序で配列されたリール2L、2C、2Rを回転させて図柄を変動表示し、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されると対応するリールの回転を」「ストップスイッチ8L、8C、8R」の「操作」に応じ、「内部抽選」に基づいて、「停止させるリール回転処理を行」う「メイン制御部41」は、本願補正発明の構成Bの「前記スタートスイッチの操作に基づき、複数種類の図柄がそれぞれ配列された複数のリールを回転制御し、回転しているリールに対応するストップスイッチの操作に応じ、前記当選種別抽選手段の抽選結果に基づいて、操作された前記ストップスイッチに対応するリールをそれぞれ停止制御するリール制御手段」に相当する。

ウ 先願発明の構成cの「押し順ベル」「に当選したときに、当選した押し順役に対応しかつ遊技者にとって有利な図柄組合せを入賞ラインLN上に停止させるための操作態様を」「報知する」「ナビ演出」は、本願補正発明の構成Cの「前記選択当選種別の当選時に前記正解操作態様を報知する補助演出」に相当する。
よって、先願発明の構成cの「押し順ベル」「に当選したときに、当選した押し順役に対応しかつ遊技者にとって有利な図柄組合せを入賞ラインLN上に停止させるための操作態様を」「報知する」「ナビ演出」を「実行」する「サブ制御部91」は、本願補正発明の構成Cの「前記選択当選種別の当選時に前記正解操作態様を報知する補助演出を実行する補助演出報知手段」に相当する。

エ 先願発明の構成dの「メイン制御部41によって制御され、ストップスイッチ8L、8C、8Rの操作態様(押し順、操作タイミング)を遊技者に報知するナビ演出が実行される報知状態であ」る「AT(アシストタイム)」は、本願補正発明の構成Dの「前記補助演出を前記補助演出報知手段に実行させるAT演出状態」に相当する。
また、先願発明の構成dの「AT(アシストタイム)やCZ(チャンスゾーン)といった有利状態」は、本願補正発明の構成Dの「AT演出状態を含む有利状態」に相当し、先願発明の構成dの「AT(アシストタイム)やCZ(チャンスゾーン)といった有利状態」と「AT及びCZのいずれも制御されていない通常状態」は、本願補正発明の構成Dの「AT演出状態を含む有利状態を含む複数種類の演出状態」に相当する。
さらに、先願発明の構成dの「メイン制御部41は、」「有利区間移行処理を実行し、有利区間処理へ移行し」、「有利区間処理において、任意の終了条件が成立した場合、通常区間処理へ移行」するものである。
よって、先願発明の構成dの「メイン制御部41によって制御され、ストップスイッチ8L、8C、8Rの操作態様(押し順、操作タイミング)を遊技者に報知するナビ演出が実行される報知状態であ」る「AT(アシストタイム)」「やCZ(チャンスゾーン)といった有利状態」「に制御された」「有利区間」と「AT及びCZのいずれも制御されていない通常状態である」「通常区間」へ「移行」する「メイン制御部41」は、本願補正発明の構成Dの「前記補助演出を前記補助演出報知手段に実行させるAT演出状態を含む有利状態を含む複数種類の演出状態のいずれかに移行する演出状態制御手段」に相当する。

オ 先願発明の構成eの「BB入賞すると」「移行」する「BB」、「BB終了後に移行するRT1」は、それぞれ本願補正発明の構成Eの「ボーナス役の入賞によって移行するボーナス遊技状態」、「前記ボーナス遊技状態終了後に移行する第1RT遊技状態」に相当する。
また、先願発明の構成eにおいて、「RT1においては、押し順ベルが当選したときに主役の入賞を取りこぼすと取りこぼし目が導出し、当該取りこぼし目の導出を条件に、RT0に遊技状態が移行し」ていることから、先願発明の構成eの「取りこぼし目の導出」、「RT1において」「取りこぼし目の導出を条件に」「移行」する「RT0」は、それぞれ本願補正発明の構成Eの「所定の終了条件」、「前記第1RT遊技状態において所定の終了条件を満たすと移行する第2RT遊技状態」に相当する。
さらに、先願発明の構成eにおいて、「制御可能な遊技状態として、RT0、BB終了後に移行するRT1、RT2、RT3、内部中、及びBBが設けられ」ていること、「メイン制御部41は、次のゲームに備えて遊技状態を設定するゲーム終了時処理を実行」することから、「メイン制御部41」が、「RT0、BB終了後に移行するRT1、RT2、RT3、内部中、及びBB」の制御をすることは明らかである。
よって、先願発明の構成eの「BB入賞すると」「移行」する「BB」、「BB終了後に移行するRT1」、「RT1において」「取りこぼし目の導出を条件に」「移行」する「RT0」の「遊技状態を設定するゲーム終了時処理を実行」する「メイン制御部41」は、本願補正発明の構成Eの「ボーナス役の入賞によって移行するボーナス遊技状態、前記ボーナス遊技状態終了後に移行する第1RT遊技状態、前記第1RT遊技状態において所定の終了条件を満たすと移行する第2RT遊技状態を含む複数種類の遊技状態のいずれかに移行させる状態制御手段」に相当する。

カ 先願発明の構成f、gの「CZ中でRT0中である場合は、CZ中でRT1中である場合よりも、AT当選の確率が高く」より、「CZ中でRT0中である場合」と「CZ中でRT1中である場合」とでは、「AT当選の確率」が異なることは明らかであるから、先願発明の構成f、gの「CZ中でRT0中である場合は、CZ中でRT1中である場合よりも、AT当選の確率が高く」は、本願補正発明の構成Fの「前記有利状態かつ前記第1RT遊技状態に滞在する場合と、前記有利状態かつ前記第2RT遊技状態に滞在する場合とでは、前記AT演出状態への移行を決定する確率が異なり」に相当する。

キ 先願発明の構成f、gにおいて、「CZ中に特殊リプレイに当選したときには、25%の確率でAT当選するものであ」り、「RT0中に特殊リプレイに当選する確率は、約1/3であるため、RT0中のCZでは、約1/12(内部当選確率1/3とAT当選確率1/4との乗算)の確率でAT当選し得る」ものである。
そして、先願発明の構成f、gにおいて、「特殊リプレイに当選」し、「25%の確率でAT当選する」ことによりATへの移行が確定することは自明であるから、先願発明の構成f、gの「特殊リプレイに当選」し、「25%の確率でAT当選する」ことは、本願補正発明の構成Gの「所定の確定条件を満たす」ことに相当する。
よって、先願発明の構成f、gの「RT0中に特殊リプレイに当選」し、「25%の確率でAT当選する」「スロットマシン1」は、本願補正発明の構成Gの「遊技状態が前記第1RT遊技状態であり、かつ、所定の確定条件を満たすと前記AT演出状態への移行が確定する遊技機」に相当する。

そうすると、本願補正発明と先願発明は、全ての構成において一致し、相違する点はないから、本願補正発明と先願発明は同一である。

(4)請求人の主張について
請求人は、令和2年6月11日付けの審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(4)本願発明と引用発明との対比」において、
「本件審判請求書と同日付け手続補正書の補正後の請求項1に係る発明における、遊技状態が「第1RT遊技状態(先願1のRT1に相当)」であり、かつ、「所定の確定条件を満たすと」AT演出状態への移行が確定する構成について、先願1には記載も示唆もない。」と主張するが、本願補正発明の構成Gの「遊技状態が前記第1RT遊技状態であり、かつ、所定の確定条件を満たすと前記AT演出状態への移行が確定する」との構成は、前記2-3「(3)対比」のキにおいて検討したように、先願発明が備えている構成であるから、審判請求人の前記主張は採用することができない。

3 まとめ
上記2-1のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、上記2-3のとおり、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されることとなったので、令和1年9月19日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の「1 補正の内容」に示した令和1年9月19日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1のとおりのものであると認める。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、次のとおりのものである。

(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

・請求項1
・引用文献等1

1.特願2017-4968号(特開2018-114009号)

3 先願発明
先願明細書等の記載事項及び先願発明の認定については、上記「第2[理由]2-3(2)」に説示したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の「2-3」で検討した本願補正発明の構成Eの「所定の終了条件」が「所定の条件」と上位概念化され、本願補正発明の構成Gの「遊技状態が前記第1RT遊技状態であり、かつ、所定の確定条件を満たすと前記AT演出状態への移行が確定す」るとの限定事項を削除するものである。
そうすると、上記「第2[理由]2-3(3)」で説示したとおり、本願発明の構成要件を全て含む本願補正発明と先願発明とは全ての構成で一致することから、本願発明と先願発明とは全ての構成で一致する。
したがって、本願発明は、先願発明と同一である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-03-25 
結審通知日 2021-03-30 
審決日 2021-04-14 
出願番号 特願2017-27787(P2017-27787)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鶴岡 直樹  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 澤田 真治
▲高▼木 尚哉
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人青海特許事務所  

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