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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1374714
審判番号 不服2020-11191  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-12 
確定日 2021-06-10 
事件の表示 特願2019-216465「無人搬送車、及び無人搬送システム」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年11月29日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 2年 1月22日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 3月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 5月15日付け:拒絶査定
令和 2年 8月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年12月18日付け:当審による拒絶理由の通知
令和 3年 2月17日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本件特許出願の請求項に係る発明は、令和3年2月17日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1から6に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された次の事項により特定されるものであると認める。
「【請求項1】
搬送車本体及び受電装置を有していて無軌道走行する無人搬送車と、所定位置に設けられた給電装置と、前記無人搬送車を制御する制御装置とを備え、前記受電装置は、前記無人搬送車が前記給電装置に対して予め設定された受電位置に停車した状態で、前記給電装置と対向して連携することによって該給電装置から非接触給電により受電する受電部と、該受電部から供給される電力の少なくとも一部を、前記無人搬送車の走行用電力として蓄電する蓄電部とを有してなる無人搬送システムであって、
前記受電装置は、前記受電部を複数備え、複数の前記受電部として、少なくとも第一受電部及び第二受電部を含み、前記第一受電部及び第二受電部がそれぞれ、前記無人搬送車の搬送車本体における互いに対向する外壁に取付けられて構成され、
前記無人搬送車は、前記搬送車本体の車輪の操舵角を変更する操舵部を有し、
前記制御装置は、
前記無人搬送車と前記給電装置との位置関係を取得する位置関係取得部と、
前記給電装置より前記無人搬送車の前記蓄電部に充電する際に、前記位置関係取得部が取得した位置関係を基に、前記無人搬送車を現在位置から前記受電位置に移動させて受電可能な姿勢で停車させるための移動経路を、該移動に伴う前記蓄電部の消費電力が最小になるように算出する経路算出部と、
前記経路算出部が算出した前記移動経路に沿って前記無人搬送車が移動するように前記操舵部を制御する走行制御部とを備えていて、
前記無人搬送車が、前記第一受電部を前記給電装置に対向させた姿勢で前記受電位置に停車した場合には、前記給電装置からの電力を前記第一受電部を介して前記蓄電部に充電し、前記無人搬送車が、前記第二受電部を前記給電装置に対向させた姿勢で前記受電位置に停車した場合には、前記給電装置からの電力を前記第二受電部を介して前記蓄電部に充電する充電制御を実行するように構成されていることを特徴とする無人搬送システム。」

第3 令和2年12月18日付け当審の拒絶理由通知の概要
令和2年12月18日に当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は以下のとおりである。

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献1、3及び4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2001-341085号公報
引用文献2:特開平3-285503号公報
引用文献3:特開2016-153145号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:国際公開第2017/208539号(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献2には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「この発明は、複数の移動ロボットと、これらの移動ロボットを制御する制御局と、移動ロボットに搭載されたバッテリーを充電する充電ステーションとから構成される移動ロボットシステムにおいて、前記各移動ロボットは、複数個所に各々設けられた受電端子と、前記充電ステーションの給電端子位置が記された地図データを記憶する記憶手段と、前記制御局の指示に応じて前記地図データから前記給電端子の位置を判断し、前記複数の受電端子の内から前記給電端子に対向する受電端子を選択する制御手段とを具備することを特徴としている。」(第2頁左下欄第19行-右下欄第10行)

イ.「移動ロボット2-1?2-Nは、走行領域内において予め決められている走行路の床面に貼付された磁気テープに沿って移動するようになっている。この走行路には適宜の間隔をおいてノードが設定されている。このノードは停止点、分岐点、作業点などの総称であり、例えば、自動充電装置が設けられている充電ステーションの位置もこれによって定義され、これらの各ノードには識別番号が付与されている。」(第3頁左上欄第4行-第12行)

ウ.「次に、移動ロボット2について説明する。第3図は移動ロボット2の構成を示すブロック図である。この図において、2aはCPU、2bはCPU2aにおいて用いられるプログラムが記憶されるプログラムメモリである。2cはデータメモリ、2dは操作部、2eは通信装置である。2fは制御局1の地図メモリ1dと同一のデータテーブルで形成される地図データが記憶されている地図メモリである。この地図メモリ2fには、前述した自動充電装置の給電カプラ4の配置位置が記憶されている。2gは走行制御装置であり、CPU2aから供給される走行データに基づいて車輪駆動用モータおよびステアリングモータを制御し、目的地まで走行させる。2hはアーム制御装置であり、自身が記憶するテーチングデータを読み出し、図示されていないアームに各種作業を行わせる。2iは受電カプラ切換スイッチである。この受電カプラ切換スイッチ2iは、CPU2aから供給されるデータに基づいてスイッチ操作を行い、充電が行われる受電カプラ3を選択する。」(第3頁右上欄第15行-左下欄第14行)

エ.「次に、第4図は自動充電装置と移動ロボット2との外観を示すための斜視図である。この図において第5図の各部に対応する部分には、同一の符号を付け、その説明を省略する。また、この図に示す移動ロボット2が第5図に示すものと異なる点は、光送受信装置8と、受電カプラ3とがそれぞれ両側面に設けられたことである。」(第3頁左下欄第15行-右下欄第1行)

オ.「このような構成による移動ロボットシステムおいて、制御局1は、走行領域内で稼働する移動ロボット2のバッテリー10の容量が所定の値より低くなると、その移動ロボット2に充電ステーションに行くよう指令を与える。この指令を受けた移動ロボット2は、まず、地図メモリ2fから充電ステーションの位置を読み出し、他の移動ロボット2と衝突しない経路を探索する。そして、走行経路を決定すると、充電ステーションまで自動走行する。次に、移動ロボット2は充電ステーションに到着すると、地図メモリ2fから自動充電装置の給電カプラ4の配置位置を読み出し、該給電カプラ4が進行方向に対してどちら側に有るのかを判断する。そして、例えば、自動充電装置が左側にあると判断した場合、自身の左側面に配置される光送受信装置8および受電カプラ3を選択する。この結果、自動充電装置の光送受信装置7と移動ロボット2の光送受信装置8とがインターロックする。これにより、給電カプラ4と受電カプラ3とが嵌合し、バッテリー充電が行われる。」(第3頁右下欄第2行-第4頁左上欄第1行)

「第3図



「第4図



2 上記アないしオ、第3図及び第4図によれば、以下の事項が記載されている。
上記アによれば、「移動ロボットと、」「移動ロボットを制御する制御局と、移動ロボットに搭載されたバッテリーを充電する充電ステーションとから構成される移動ロボットシステム」について記載されている。

上記イによれば、「走行路には適宜の間隔をおいてノードが設定され」、「自動充電装置が設けられている充電ステーションの位置もこれによって定義され」と記載されており、走行路の所定位置に充電ステーションが備えられているといえ、また、充電ステーションには自動充電装置が設けられているといえるから、走行路の所定位置に備えられた充電ステーションには自動充電装置が設けられているといえる。

上記エによれば、「移動ロボット」には「受電カプラ3」が「両側面に設けられ」と記載されており、移動ロボットの両側面には受電カプラ3が設けられているといえる。

上記ウによれば、「第3図は移動ロボット2の構成を示すブロック図である」、「2aはCPU」、「2fは制御局1の地図メモリ1dと同一のデータテーブルで形成される地図データが記憶されている地図メモリである」、「2gは走行制御装置であり、CPU2aから供給される走行データに基づいて」「ステアリングモータを制御し」、「受電カプラ切換スイッチ2iは、CPU2aから供給されるデータに基づいてスイッチ操作を行い、充電が行われる受電カプラ3を選択する」と記載されており、移動ロボットは、CPU2aと、地図メモリ2fと、走行制御装置2gと、受電カプラ切換スイッチ2iとステアリングモータを備えているといえる。

上記オによれば、「移動ロボット2は」まず、「地図メモリ2fから充電ステーションの位置を読み出し、他の移動ロボット2と衝突しない経路を探索」し、「走行経路を決定すると、充電ステーションまで自動走行」させることが記載されている。また、上記ウによれば、「2gは走行制御装置であり、CPU2aから供給される走行データに基づいて」「ステアリングモータを制御し、目的地まで走行させる」と記載されている。よって、上記ウ及びオによれば、移動ロボットは、地図メモリ2fから充電ステーションの位置を読み出し、他の移動ロボット2と衝突しない経路を探索して走行経路を決定し、走行制御装置2gは、決定した走行経路に沿って目的地まで走行させるようステアリングモータを制御しているといえる。

上記オによれば、「移動ロボット2は充電ステーションに到着すると、地図メモリ2fから自動充電装置の給電カプラ4の配置位置を読み出し、該給電カプラ4が進行方向に対してどちら側に有るのかを判断」し、「自動充電装置が左側にあると判断した場合、自身の左側面に配置される」「受電カプラ3を選択」することで、「給電カプラ4と受電カプラ3とが嵌合し、バッテリー充電が行われる」ことが記載されている。

3 以上によれば、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「移動ロボットと、移動ロボットを制御する制御局と、移動ロボットに搭載されたバッテリーを充電する充電ステーションとから構成される移動ロボットシステムであって、
走行路の所定位置に備えられた充電ステーションには自動充電装置が設けられ、
移動ロボットの両側面には受電カプラ3が設けられ、
移動ロボットは、CPU2aと、地図メモリ2fと、走行制御装置2gと、受電カプラ切換スイッチ2iとステアリングモータを備え、
移動ロボットは、地図メモリ2fから充電ステーションの位置を読み出し、他の移動ロボット2と衝突しない経路を探索して走行経路を決定し、
走行制御装置2gは、決定した走行経路に沿って目的地まで走行させるようステアリングモータを制御し、
移動ロボットは、充電ステーションに到着すると、地図メモリ2fから自動充電装置の給電カプラ4の配置位置を読み出し、該給電カプラ4が進行方向に対してどちら側に有るのかを判断し、自動充電装置が左側にあると判断した場合、自身の左側面に配置される受電カプラ3を選択することで、給電カプラ4と受電カプラ3とが嵌合し、バッテリー充電が行われる、
移動ロボットシステム。」

第5 対比
1 本願発明と引用発明を対比する。

ア.引用発明の「移動ロボット」「移動ロボットシステム」は、自動的に誘導されて作業を行う車両であるといえるから、各々本願発明の「搬送車本体」「無人搬送システム」に相当する。

イ.引用発明の「受電カプラ3」「バッテリー」は、各々本願発明の「受電部」「蓄電部」に相当する。また、引用発明の「受電カプラ3」「バッテリー」は、これらを用いて充電装置からの電力を受電しバッテリーを充電するものであるから、両者を併せたものは、本願発明の「受電部」と「蓄電部」とを有した「受電装置」に相当する。

ウ.引用発明の「受電カプラ3」及び「バッテリー」を備えた「移動ロボット」は、本願発明の「受電装置を有」する「無人搬送車」に相当する。
ただし、本願発明の無人搬送車は「無軌道走行する」のに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない点で相違する。

エ.引用発明の「走行路の所定位置に」「設けられ」た「自動充電装置」は、本願発明の「所定位置に設けられた給電装置」に相当する。

オ.引用発明の「移動ロボットは」「CPU2aと、地図メモリ2fと、走行制御装置2gと、受電カプラ切換スイッチ2i」「を備え」、「走行経路を決定し」、「目的地まで走行させ」、「バッテリー充電」することは、CPU2aと、地図メモリ2fと、走行制御装置2gと、受電カプラ切換スイッチ2iによって移動ロボットを制御しているといえるから、引用発明と本願発明とは「無人搬送車を制御する制御装置」を備えている点で共通する。

カ.引用発明の「移動ロボットは、充電ステーションに到着すると」、「自動充電装置の給電カプラ4の配置位置を読み出し」、「給電カプラ4と受電カプラ3とが嵌合し、バッテリー充電が行われる」ことは、移動ロボットが充電ステーションまで移動し、給電カプラの着脱可能な位置、すなわち受電可能な位置で停止し、自動充電装置から受電カプラを介して受電するものであるといえるから、当該受電カプラは、本願発明の「無人搬送車が前記給電装置に対して予め設定された受電位置に停車した状態で、前記給電装置と対向して連携することによって該給電装置から」「受電する受電部」に相当する。
ただし、本願発明の「受電部」が給電装置から「非接触給電」により受電するのに対し、引用発明は非接触給電により受電することについて特定されていない点で相違する。

キ.引用発明の「バッテリー」は、移動ロボットに搭載され、受電カプラ3で受電した電力を蓄積するものであり、バッテリーに蓄積された電力が移動ロボットの移動や作業用として利用されることは明らかであるから、本願発明の「受電部から供給される電力の少なくとも一部を、前記無人搬送車の走行用電力として蓄電する蓄電部」に相当する。

ク.引用発明の「移動ロボットの両側面には受電カプラ3が設けられ」ることは、移動ロボットに備えられた受電装置が受電カプラ3を複数備えているといえ、引用文献2の第4図も参照すれば、受電カプラ3が移動ロボットの互いに対向する外壁に設けられていることは明らかであるから、本願発明の「前記受電装置は、前記受電部を複数備え、複数の前記受電部として、少なくとも第一受電部及び第二受電部を含み、前記第一受電部及び第二受電部がそれぞれ、前記無人搬送車の搬送車本体における互いに対向する外壁に取付けられて構成され」ることに相当する。

ケ.引用発明の「ステアリング」は、本願発明の「操舵部」に相当し、引用発明の「移動ロボット」が「ステアリング」「を備え」ることは、本願発明の「前記無人搬送車は、前記搬送車本体の車輪の操舵角を変更する操舵部を有」することに相当する。

コ.引用発明の「移動ロボットは、地図メモリ2fから充電ステーションの位置を読み出し」、「経路を探索して走行経路を決定」することは、移動ロボットが、地図メモリ2fを利用して現在位置と充電ステーションとの位置関係を取得しているといえるから、引用発明の「移動ロボット」が、本願発明の「前記無人搬送車と前記給電装置との位置関係を取得する位置関係取得部」に相当する構成を有していることは明らかである。

サ.引用発明の「移動ロボットは、地図メモリ2fから充電ステーションの位置を読み出し、他の移動ロボット2と衝突しない経路を探索して走行経路を決定」することは、移動ロボットが、地図メモリ2fを利用して現在位置と充電ステーションとの位置関係を取得し、受電位置まで移動させるための移動経路を算出しているといえる。また、引用発明は「移動ロボットは、充電ステーションに到着すると」、「給電カプラ4と受電カプラ3とが嵌合し、バッテリー充電が行われる」ものであるから、移動ロボットが移動経路に沿って受電位置まで移動した場合に、受電可能な姿勢で停車することは明らかである。よって、引用発明の「移動ロボット」が、本願発明の「前記給電装置より前記無人搬送車の前記蓄電部に充電する際に、前記位置関係取得部が取得した位置関係を基に、前記無人搬送車を現在位置から前記受電位置に移動させて受電可能な姿勢で停車させるための移動経路を」「算出する経路算出部」に相当する構成を有していることは明らかである。
ただし、本願発明は、移動に伴う蓄電部の消費電力が最小となる移動経路を算出しているのに対し、引用発明はその旨の特定がされていない点で相違する。

シ.引用発明の「決定した走行経路に沿って目的地まで走行させるようステアリング」「を制御」する「走行制御装置2g」は、本願発明の「前記経路算出部が算出した前記移動経路に沿って前記無人搬送車が移動するように前記操舵部を制御する走行制御部」に相当する。

ス.引用発明の「移動ロボットは、充電ステーションに到着すると、地図メモリ2fから自動充電装置の給電カプラ4の配置位置を読み出し、該給電カプラ4が進行方向に対してどちら側に有るのかを判断し、自動充電装置が左側にあると判断した場合、自身の左側面に配置される受電カプラ3を選択することで、給電カプラ4と受電カプラ3とが嵌合し、バッテリー充電が行われる」ことは、移動ロボットの左側面に配置された受電カプラ3と給電カプラ4とが対向している場合には、左側面に配置された受電カプラ3を用いてバッテリー充電を行い、移動ロボットの右側面に配置された受電カプラ3と給電カプラ4とが対向している場合には、右側面に配置された受電カプラ3を用いてバッテリー充電を行うことといえるから、本願発明の「前記無人搬送車が、前記第一受電部を前記給電装置に対向させた姿勢で前記受電位置に停車した場合には、前記給電装置からの電力を前記第一受電部を介して前記蓄電部に充電し、前記無人搬送車が、前記第二受電部を前記給電装置に対向させた姿勢で前記受電位置に停車した場合には、前記給電装置からの電力を前記第二受電部を介して前記蓄電部に充電する充電制御を実行するように構成されている」ことに相当する。

2 そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違すると認められる。
[一致点]
「搬送車本体及び受電装置を有している無人搬送車と、所定位置に設けられた給電装置と、前記無人搬送車を制御する制御装置とを備え、前記受電装置は、前記無人搬送車が前記給電装置に対して予め設定された受電位置に停車した状態で、前記給電装置と対向して連携することによって該給電装置から受電する受電部と、該受電部から供給される電力の少なくとも一部を、前記無人搬送車の走行用電力として蓄電する蓄電部とを有してなる無人搬送システムであって、
前記受電装置は、前記受電部を複数備え、複数の前記受電部として、少なくとも第一受電部及び第二受電部を含み、前記第一受電部及び第二受電部がそれぞれ、前記無人搬送車の搬送車本体における互いに対向する外壁に取付けられて構成され、
前記無人搬送車は、前記搬送車本体の車輪の操舵角を変更する操舵部を有し、
前記制御装置は、
前記無人搬送車と前記給電装置との位置関係を取得する位置関係取得部と、
前記給電装置より前記無人搬送車の前記蓄電部に充電する際に、前記位置関係取得部が取得した位置関係を基に、前記無人搬送車を現在位置から前記受電位置に移動させて受電可能な姿勢で停車させるための移動経路を算出する経路算出部と、
前記経路算出部が算出した前記移動経路に沿って前記無人搬送車が移動するように前記操舵部を制御する走行制御部とを備えていて、
前記無人搬送車が、前記第一受電部を前記給電装置に対向させた姿勢で前記受電位置に停車した場合には、前記給電装置からの電力を前記第一受電部を介して前記蓄電部に充電し、前記無人搬送車が、前記第二受電部を前記給電装置に対向させた姿勢で前記受電位置に停車した場合には、前記給電装置からの電力を前記第二受電部を介して前記蓄電部に充電する充電制御を実行するように構成されていることを特徴とする無人搬送システム。」

[相違点1]
本願発明の無人搬送車は「無軌道走行する」のに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない点。

[相違点2]
本願発明の「受電部」が給電装置から「非接触給電」により受電するのに対し、引用発明は非接触給電により受電することについて特定されていない点。

[相違点3]
本願発明は、移動に伴う蓄電部の消費電力が最小となる移動経路を算出しているのに対し、引用発明はその旨の特定がされていない点。

第6 判断
以下、相違点について検討する。

1 [相違点1]について
移動ロボットを有軌道走行させることも無軌道走行させることも本願出願時には一般的な技術であり、例えば当審拒絶理由通知で周知技術を示す文献として提示した特開平7-325620号公報(段落[0014]、[0016]、図3参照)には、移動ロボットを無軌道走行させることが記載されている。
引用発明において、移動経路の自由度を高めるため上記周知技術を採用して相違点1の構成にすることは、当業者が容易になし得たことである。

2 [相違点3]について
また、上記周知文献には、充電ステーションまで自動走行する際に障害物や壁に衝突するのを回避しつつ最短距離となる経路で移動することが記載されている。
この点について、請求人は令和3年2月17日の意見書にて、「特開平7-325620号公報(以下、参考引用文献という)」「参考引用発明では、ロボットが充電ステーションまで自動走行する際に、障害物や壁に衝突するのを回避し且つ最短距離となる走行経路で自動走行する構成が開示されているものの、本願発明1の如く、蓄電部の消費電力が最小になるような移動経路で無人搬送車を走行させるものではありません。」「単に最短距離となる走行経路に沿って無人搬送車を走行させたとしても、無人搬送車の操舵回数や無人搬送車の姿勢(向き)の反転が急激に生じる場合には操舵部を駆動するための消費電力が増加するため、蓄電部の消費電力が却って増加してしまいます。」と主張している。
しかしながら、一般的に、最短距離となる走行経路で移動することは、移動に伴う消費電力を最小にすることを含むものであり(例えば、特開2003-36116号公報の段落[0035]-[0036]、図8参照)、参考引用文献に記載された、最短距離となる経路は、本願発明の「移動に伴う前記蓄電部の消費電力が最小になる」「移動経路」を含むものである。そして、「距離」を基準に移動経路を算出することも、「消費電力」を基準に移動経路を算出することも一般的な手法であるところ、どちらに基づいて移動経路を算出するかは当業者が適宜選択し得るものである(例えば、特開2007-257274号公報の段落[0001]、[0005]参照)。よって、請求人の上記意見書での主張は採用できない。
したがって、引用発明において上記周知技術を採用することにより相違点3に係る構成とすることも、当業者が容易になし得たことである。

3 [相違点2]について
給電方式として接触給電(有線給電)方式も非接触給電(無線給電)方式も本願出願時には周知の技術であり、また、無人搬送車に対し非接触で給電を行う技術も、当審拒絶理由通知で引用された引用文献3(段落[0022]参照)や引用文献4(段落[0021]参照)に記載のように周知の技術である。
引用発明において無人搬送車に対する給電手法として上記周知の非接触給電手法を採用して相違点2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって格別
なものとはいえない。

4 付記
当審拒絶理由通知で引用された引用文献1(段落[0026]参照)は、無人搬送車に対する給電装置を複数備えると共に、走行路に対して右側に位置する給電装置と左側に位置する給電装置が存在することを開示するものであるが、令和3年2月17日の手続補正書により、給電装置を複数備える構成、及び、「複数の前記給電装置は、互いに異なる位置に配置された二つの給電装置を含み、該二つの給電装置は、前記無人搬送車の走行領域を挟んで互いに逆側に位置するとともに、給電方向が互いに逆向きになるように配置され」との構成が削除されたため、上記判断において引用していない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-03-26 
結審通知日 2021-03-30 
審決日 2021-04-20 
出願番号 特願2019-216465(P2019-216465)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 誠治  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 赤穂 嘉紀
山本 章裕
発明の名称 無人搬送車、及び無人搬送システム  
代理人 村上 智司  

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