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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07G
管理番号 1374737
審判番号 不服2020-3987  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-25 
確定日 2021-06-07 
事件の表示 特願2016-41221号「売上データ処理装置およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年9月7日出願公開、特開2017-157089号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月3日の出願であって、令和1年9月12日付けで拒絶理由が通知され、同年10月3日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年2月25日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年3月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和2年3月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年3月25日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
令和2年3月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正後の請求項1
「 【請求項1】
売上登録の指定を受け付けた課税対象商品に対して税額を導出する税額導出手段と、
前記課税対象商品の名称に対応付けて前記課税対象商品に対する金額情報が記載されたレシートを発行するレシート発行手段と、
を備え、
前記レシート発行手段は、前記税額導出手段が前記税額を導出する際に第1の税率が適用された課税対象商品と前記第1の税率とは異なる第2の税率が適用された課税対象商品とが識別可能なように、前記第1の税率が適用された課税対象商品と前記第2の税率が適用された課税対象商品とのうち少なくとも一方の課税対象商品の名称に対応付けて識別マークが記載されたレシートであって、且つ、前記第1の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第1の税率を適用して導出した税額と前記第2の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第2の税率を適用して導出した税額との合計税額が括弧書きで記載されたレシートを発行する、
ことを特徴とする売上データ処理装置。」

(2)補正前の請求項1
「 【請求項1】
売上登録の指定を受け付けた課税対象商品に対して税額を導出する税額導出手段と、
前記課税対象商品の名称に対応付けて前記課税対象商品に対する金額情報が記載されたレシートを発行するレシート発行手段と、
を備え、
前記レシート発行手段は、前記税額導出手段が前記税額を導出する際に第1の税率が適用された課税対象商品と前記第1の税率とは異なる第2の税率が適用された課税対象商品とが識別可能なように、前記第1の税率が適用された課税対象商品と前記第2の税率が適用された課税対象商品とのうち少なくとも一方の課税対象商品の名称に対応付けて識別マークが記載されたレシートであって、且つ、前記第1の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第1の税率を適用して導出した税額と前記第2の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第2の税率を適用して導出した税額との合計税額が記載されたレシートを発行する、
ことを特徴とする売上データ処理装置。」

2 補正の適否
本件補正に係る請求項1の補正は、補正前の請求項1に記載された「記載された」という事項について、「括弧書きで」との限定を付すものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献並びに引用文献に記載された事項及び発明
1:特開平4-373097号公報
2:特開2001-184566号公報
3:特開平10-124757号公報
4:特開2015-49809号公報
以下それぞれ引用文献1なしい4という。

(2-1)引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に刊行物1として示され、本願の出願前に頒布された引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様である。)。
(1a)
「【請求項1】 1取引にて販売登録される各商品の税抜き合計金額を記憶する合計金額メモリ及び各登録商品のうちの課税対象商品の合計金額を記憶する課税対象額合計メモリを有し、合計キーのキー入力に応じて前記課税対象額合計メモリ内の金額に対応する税額を演算し前記合計金額メモリ内の税抜き合計金額に加算して税込み合計金額を出力する商品販売データ処理装置において、前記税抜き合計金額に対して値引を行う第1のクーポン券及び前記税込み合計金額に対して値引を行う第2のクーポン券に関する値引情報を入力するクーポン券情報入力手段と、この入力手段により入力された値引情報が前記第1のクーポン券のものか第2のクーポン券のものかを判別するクーポン券判別手段と、この判別手段が第1のクーポン券の値引情報であると判別したときには前記税額の演算前にそのクーポン券の値引額で前記合計金額メモリ及び課税対象額合計メモリ内の金額をそれぞれ値引する第1の値引演算手段と、前記判別手段が第2のクーポン券の値引情報であると判別したときにはそのクーポン券の値引額で前記税込み合計金額を値引する第2の値引演算手段と、を具備したことを特徴とする商品販売データ処理装置。」
(1b)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、単体の電子式キャッシュレジスタとして若しくはPOS(販売時点情報管理)システムにおけるターミナルとして使用される商品販売データ処理装置に関わり、特にクーポン券による値引を処理できる装置の改良に関する。」
(1c)
「【0010】
【実施例】以下、本発明を単体の電子式キャッシュレジスタに適用した一実施例について図面を参照しながら説明する。
・・・
【0014】図3は制御回路を示すブロック図であって、制御部本体を構成するCPU11に、バスライン12を介して、プログラムデータ等が格納されるROM(リード・オンリ・メモリ)13、データ処理に使用される各種メモリエリアが形成されるRAM(ランダム・アクセス・メモリ)14、日時を計時する時計回路15、前記モードスイッチ3から信号が入力されるとともに前記ドロワ7を開放させるドロワ開放装置16に駆動信号を出力するI/Oポート17、前記キーボード2からキー信号を取込むキーボードコントローラ18、前記各表示器5,6をそれぞれ駆動制御する表示コントローラ19、レシートの印字・発行等を行うプリンタ20を駆動制御するプリンタコントローラ21、前記バーコードスキャナ8にて読取られたバーコードデータを取込むスキャナインタフェース22等がそれぞれ接続されている。
・・・
【0021】しかして、前記CPU11はモードスイッチ3により「登録」モードが選択されている状態で、前記バーコードスキャナ8によりバーコードのスキャニングが行われそのバーコードが正確に読み取られると、図6に示すスキャニング処理を実行するようにプログラム設定されている。すなわち、先ず読み取ったバーコードの先頭2桁の識別フラグF1,F2を調べる。そして、識別フラグF1,F2がメーカクーポン券を示すフラグ“98”であった場合には、メーカクーポン券に印刷されているクーポンバーコードが読み取られたので、このバーコード情報を解析し値引額をメーカクーポン合計器37の内容に加算した後、その加算値を同合計器37に再格納して、この処理を終了する。
【0022】これに対し、識別フラグF1,F2がストアクーポン券を示すフラグ“99”であった場合には、ストアクーポン券に印刷されているクーポンバーコードが読み取られたので、このバーコード情報を解析し値引額をストアクーポン合計器36の内容に加算した後、その加算値を同合計器36に再格納して、この処理を終了する。
【0023】ここに、バーコードスキャナ8は税抜き合計金額に対して値引を行うストアクーポン券(第1のクーポン券)及び税込み合計金額に対して値引を行うメーカクーポン券(第2のクーポン券)に関する値引情報を入力するクーポン券情報入力手段を構成し、CPU11の識別フラグチェック処理は上記入力手段により入力された値引情報がストアクーポン券のものかメーカクーポン券のものかを判別するクーポン券判別手段を構成する。
【0024】一方、識別フラグF1,F2が商品バーコードを示すフラグであった場合には、販売商品に付されている商品バーコードが読み取られたので、通常の商品登録処理を行う。
・・・
【0028】こうして、販売商品のスキャニング登録が行われた後で前記キーボード2の小計キー2dがキー入力されると、前記CPU11は図7に示す小計キー処理を実行するようにプログラム設定されている。すなわち、小計キー2dのキー入力に応じて、ST(ステップ)1として合計金額メモリ32内の税抜き合計金額及び課税対象額合計メモリ33内の課税対象合計額からそれぞれストアクーポン合計器36内のストアクーポン券による値引合計額を値引し、値引後の金額をそれぞれ合計金額メモリ32及び課税対象額合計メモリ33に格納する。
【0029】次いで、ST2として値引後の課税対象額合計額に予め設定された税率(例えば3%)を乗じて税額を算出し、税額メモリ34に格納する。また、ST3として値引後の合計金額に税額を加算して税込み合計金額を求め、税込み合計金額メモリ35に格納する。
【0030】次いで、ST4として上記税込み合計金額メモリ35内の税込み合計金額からメーカクーポン合計器37内のメーカクーポン券による値引合計額を値引し、値引後の金額を上記税込み合計金額メモリ35に再格納する。
【0031】そして、ST5として上記税込み合計金額メモリ35内の値引後の税込み合計金額を各表示器5,6に表示させる。また、ST6としてプリンタ20を動作させ、ストアクーポン合計器36、課税対象額合計メモリ33、税額メモリ34、メーカクーポン合計器35の各内容をそれぞれ印字出力して、この処理を終了する。
【0032】ここに、小計キー2dは1取引の合計金額を算出するための合計キーとして機能する。また、CPU11の小計キー処理におけるST1は税額の演算前にストアクーポン券(第1のクーポン券)の値引額で合計金額メモリ32及び課税対象額合計メモリ33内の金額をそれぞれ値引する第1の値引演算手段として機能し、ST4はメーカクーポン券(第2のクーポン券)の値引額で税込み合計金額を値引する第2の値引演算手段として機能する。
【0033】こうして、小計キー処理が行われた後で同キーボード2の預/現計キー2eがキー入力されると、前記CPU11は図8に示す預/現計キー処理を実行するようにプログラム設定されている。すなわち、先ず預り金額(預/現計キーのキー入力直前に置数キー2aによって置数入力が行われている場合にはその置数金額、置数入力が行われていない場合には税込み合計金額メモリ35内の金額)から税込み合計金額メモリ35内の金額を減じてその差分を釣銭とし、各表示器5,6に表示させる。次いで、プリンタ20を動作させてレシート等に税込み合計金額,預り金額及び釣銭を印字出力する。そして、レシートをレシート発行口4から発行させるとともにドロワ7を開放させる。しかる後、前記合計金額メモリ32、課税対象額合計メモリ33、税額メモリ34、税込み合計金額メモリ35、ストアクーポン合計器36、メーカクーポン合計器37を“0”クリアして、この処理を終了する。」
(1d)
「【0034】このような構成の本実施例においては、「登録」モード時、バーコードスキャナ8によってバーコードのスキャニングが行われると、そのバーコードがクーポン券に印刷されているクーポンバーコードなのか、各商品に付されている商品バーコードなのかが判別される。そして、商品バーコードの場合には通常の商品登録処理が行われる。この商品登録処理によって、合計金額メモリ32には1取引にて販売登録される各商品の税抜き合計金額が記憶され、課税対象額合計メモリ33には各登録商品のうちの課税対象商品の合計金額が記憶される。
【0035】一方、ーポンバーコードの場合にはそのバーコードの識別フラグF1,F2からストアクーポン券なのかメーカクーポン券なのかが判別される。そして、ストアクーポン券の場合にはバーコードに含まれる値引額がストアクーポン券合計器36に記憶され、メーカクーポン券の場合にはその値引額がメーカクーポン券合計器37に記憶される。
【0036】なお、各クーポン券バーコードは1取引の商品登録中であれば何回でも読み込むことが可能であり、各合計器36,37にはそれぞれ該当するクーポン券の値引額の合計が記憶される。
【0037】その後、小計キー2dがキー入力されると、合計金額メモリ32内の税抜き合計金額及び課税対象額合計メモリ33内の課税対象合計額からそれぞれストアクーポン合計器36内のストアクーポン券による値引合計額が値引される。そして、値引後の課税対象額合計メモリ内の金額に対応する税額が演算され、その税額に値引後の税抜き合計金額が加算されて税込み合計金額が算出される。そして、この税込み合計金額からメーカクーポン合計器37内のメーカクーポン券による値引合計額が値引される。値引後の税込み合計金額が客の支払い金額として表示器5,6に表示される。
【0038】今、1人の客が単価1100円の課税対象商品Aと単価500円の非課税商品Bと単価1000円の課税対象商品Cとを、商品Aのストアクーポン券(値引額100円)と商品Cのメーカクーポン券(値引額50円)を使用して買い上げる場合、店員は各商品A,B,Cにそれぞれ付されている商品バーコードをバーコードスキャナ8で読み取るとともに、両クーポン券に印刷されているクーポンバーコードを同じくバーコードスキャナ8で読取る。なお、バーコードの読取り順序は特に規制されない。
【0039】その後、小計キー2dをキー入力する。そうすると、先ず、税抜き合計金額(2600円)及び課税対象合計額(2100円)からそれぞれストアクーポン券の値引額(100円)が値引されて、税抜き合計金額が2500円に、課税対象合計額が2000円にそれぞれ減額される。そして、上記課税対象合計額(2000円)に対応する税額(税率を3%とした場合には60円)が算出され、税込み合計金額(2560円)が算出される。さらに、この税込み合計金額(2560円)からメーカクーポン券の値引額(50円)が値引されて、客の支払金額(2510円)が算出され表示される。その後、客から支払いを受け、預/現計キー2eをキー入力すると、図9に示すレシート50が印字発行される。」
(1e)
「【0044】しかして、前記CPU11は「登録」モードにおいてバーコードスキャナ8によりバーコードのスキャニングが行なわれると、図11に示すスキャニング処理を実行するようにプログラム設定されている。すなわち、先ず読み取ったバーコードの識別フラグF1,F2を調べ、商品バーコードの場合には通常の商品登録処理を行う。」
(1f)
図6?11は、以下のとおりである。

イ 引用文献1に記載された発明
(ア)
摘記(1c)の段落【0014】には、「制御部本体を構成するCPU11に、」「レシートの印字・発行等を行うプリンタ20を駆動制御するプリンタコントローラ21」「が」「接続されている」と記載され、同【0033】には、「前記CPU11は図8に示す預/現計キー処理を実行するようにプログラム設定されている。」「次いで、プリンタ20を動作させてレシート等に税込み合計金額,預り金額及び釣銭を印字出力する。そして、レシートをレシート発行口4から発行させる」と記載され、摘記(1d)の段落【0039】には、「図9に示すレシート50が印字発行される。」と記載されていることから、「CPU11」は、図9に示すレシートを発行するものと認められる。
(イ)
摘記(1d)の段落【0038】の「単価1100円の課税対象商品A」、「単価500円の非課税商品B」、「単価1000円の課税対象商品C」、「商品Aのストアクーポン券(値引額100円)」及び「商品Cのメーカクーポン券(値引額50円)」という記載、並びに、図9の記載を参照すると、図9に示すレシートは、以下のとおりのレシートであると認められる。
少なくとも、上から順に、
課税対象商品である商品Aの名称を記載した行に、商品Aの単価が記載され、
非課税商品である商品Bの名称を記載した行に、商品Bの単価及び非という文字が記載され、
課税対象商品である商品Cの名称を記載した行に、商品Cの単価が記載され、
ストアクーポンと記載した行に、ストアクーポン券の値引額が記載され、
課税対象額と記載した行に、括弧書きで商品Aの単価と商品Cの単価の合計金額からストアクーポン券の値引額を値引きした課税対象額が記載され、
税と記載した行に、括弧書きで税率が記載されると共に、合計税額が記載され、
メーカクーポンと記載した行に、メーカクーポン券の値引額が記載され、
税込み合計と記載した行に、メーカクーポン券の値引額を値引きした税込み合計金額が記載された、
レシート
(ウ)
上記(ア)、(イ)、摘記(1a)、(1d)及び図9(摘記(1f)参照)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「CPU11と、1取引にて販売登録される各商品の税抜き合計金額を記憶する合計金額メモリ32及び各登録商品のうちの課税対象商品の合計金額を記憶する課税対象額合計メモリ33を有し、合計キーのキー入力に応じて前記課税対象額合計メモリ33内の金額に対応する税額を演算し前記合計金額メモリ32内の税抜き合計金額に加算して税込み合計金額を出力する商品販売データ処理装置において、
前記税抜き合計金額に対して値引を行う第1のクーポン券及び前記税込み合計金額に対して値引を行う第2のクーポン券に関する値引情報を入力するクーポン券情報入力手段と、この入力手段により入力された値引情報が前記第1のクーポン券のものか第2のクーポン券のものかを判別するクーポン券判別手段と、この判別手段が第1のクーポン券の値引情報であると判別したときには前記税額の演算前にそのクーポン券の値引額で前記合計金額メモリ32及び課税対象額合計メモリ33内の金額をそれぞれ値引する第1の値引演算手段と、前記判別手段が第2のクーポン券の値引情報であると判別したときにはそのクーポン券の値引額で前記税込み合計金額を値引する第2の値引演算手段と、を具備し、
バーコードスキャナ8によってバーコードのスキャニングが行われると、バーコードがクーポン券に印刷されているクーポンバーコードなのか、各商品に付されている商品バーコードなのかが判別され、
商品バーコードの場合には、通常の商品登録処理が行われ、
クーポンバーコードの場合には、そのバーコードの識別フラグF1,F2からストアクーポン券なのかメーカクーポン券なのかが判別される、
商品販売データ処理装置であって、
各商品A,B,Cにそれぞれ付されている商品バーコードをバーコードスキャナ8で読み取るとともに、両クーポン券に印刷されているクーポンバーコードを同じくバーコードスキャナ8で読取り、
その後、CPU11は、
少なくとも、上から順に、
課税対象商品である商品Aの名称を記載した行に、商品Aの単価が記載され、
非課税商品である商品Bの名称を記載した行に、商品Bの単価及び非という文字が記載され、
課税対象商品である商品Cの名称を記載した行に、商品Cの単価が記載され、
ストアクーポンと記載した行に、ストアクーポン券の値引額が記載され、
課税対象額と記載した行に、括弧書きで商品Aの単価と商品Cの単価の合計金額からストアクーポン券の値引額を値引きした課税対象額が記載され、
税と記載した行に、括弧書きで税率が記載されると共に、合計税額が記載され、
メーカクーポンと記載した行に、メーカクーポン券の値引額が記載され、
税込み合計と記載した行に、メーカクーポン券の値引額を値引きした税込み合計金額が記載された、
レシートを発行する、
商品販売データ処理装置。」

(2-2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に刊行物2として示され、本願の出願前に頒布された引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のECR装置やPOS端末装置に用いられるレシートとジャーナルの2つのシートを印刷する専用の印刷装置にあっては、幅広の1シートにレシートとジャーナルを印字するため、レシート側とジャーナル側を同時に同数行分フィードしていく必要がある。このため、レシート側に印字しないスタンプやレシートを見易くするためのフィード行があると、ジャーナル側に空白行ができてしまうという問題があった。」
(2b)
「【0025】RAM(Random Access Memory)13は、図2に示すように、店名・メッセージデータメモリ13a、PLUメモリ13b、小計メモリ13c、税率メモリ13d、印字バッファメモリ13e、一時記憶メモリ13f、印字項目メモリ13j、印字桁数メモリ13k、及びワークメモリ13l等を有する。
【0026】店名・メッセージデータメモリ13aは、レシートに最初に印字する店舗の店名データと宣伝用等の各種サービスメッセージデータとを記憶し、PLUメモリ13bは、各種商品名データと対応して単価データとを設定したPLU(PriceLook Up)テーブルを記憶し、小計メモリ13cは、取引処理毎に計算される小計データを一時的に記憶し、税率メモリ13dは、地域や国に応じた税率データを記憶し、印字バッファメモリ13eは、CPU11により実行される上記レシート・ジャーナル印字処理に際してレシート用印字データとジャーナル用印字データとを一時的に記憶し、一時記憶メモリ13fは、図5に示すようにCPU11により実行される上記印刷処理に際して入力される各種取引データ(店名・メッセージデータ、商品データ、小計データ、合計データ等)を一時的に記憶する。
・・・
【0087】本実施の形態におけるRAM13は、図18(a)に示すように、LOGOMessageデータメモリ13a、部門メモリ13b、税率メモリ13d、印字バッファメモリ13e、一時記憶メモリ13f、GTメモリ13i、印字桁数メモリ13k、及びワークメモリ13l等を有する。また、同図(b)に示すように、部門メモリ13bは、”部門ロード”、”売上データ”、”税種”を記憶し、同図(c)に示すように、税率メモリ13dは、税種と税種に対応する税率を記憶する。例えば、税種Aには消費税として「5%」、税種Bには飲食税として「10%」、税種Cには酒税として「15%」が記憶されている。
・・・
【0095】ここで、図21は、上記印刷処理及び、及びレシート・ジャーナル印字処理を実行した際にRAM13内の一時記憶メモリ13fに記憶されるデータの一例を示す図である。また、図22は、図21のデータに基づいて印刷装置17によって印刷されたレシートとジャーナルの一例を示す図である。・・・」
(2c)
図22は、以下のとおりである。

(2-3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に刊行物3として示され、本願の出願前に頒布された引用文献3には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(3a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は商品の売上登録処理を行う電子式金銭登録機,POS等に関する。」
(3b)
「【0023】図4(A),(B),(C)は本発明の実施に使われる各種設定テーブルの構成図である。
【0024】図4(A)の税率設定テーブル(41)、図4(B)のPLU設定テーブル(42)、図4(C)のセットPLU設定テーブル(43)がある。
【0025】税率設定テーブル(41)は各税種毎(本実施例では税種をA,B,C,Dの4種類として設定してある)の税率をストアしてあるテーブルである。税種項目4Aとそれに対応する税率項目4Bから構成される。
【0026】本実施例では税種Aは10%、税種Bは5%、税種Cは20%、税種Cは20%、税種Dは15%のテータがストアされている。
【0027】PLU設定テーブル(42)は、商品の単品毎の登録及びセットで登録を行うためのデータのテーブルであり、商品コード項目4Cと、単価項目4Dと、商品名項目4Eと、税種項目4Fから構成される。これは、コードが指定された時その商品の販売単価,商品名,税を計算する税種をテーブルより読み出し登録するために使われる。
【0028】PLU設定テーブル(42)の例では、商品コード01は単価1000,商品名 ITEM 1,税種Aが設定されている。
・・・
【0102】従来セットPLU登録された場合のレシートへの印字はセットPLU単価の印字と構成するPLUの個々の商品名を印字するだけであった。
【0103】本実施例では、式1で求められた値引き額dをレシートに印字すると共に課税対象小計メモリと税額メモリ(52)の課税対象小計項目5Fと税額項目5Gから課税対象小計、税額がレシートに印字する事により、顧客により正確な値引き情報を伝える。
【0104】図7(A)にセット商品を販売した場合のレシートの出力例を示す。
【0105】セット商品コード101とPLUコード02を登録した印字例である。
【0106】レシートサンプル中71Aはヘッダー部であり日付,時間,マシンナンバー,一連ナンバー,責任者コード等が印字される。
【0107】71BはセットPLU101の登録時の印字でセットPLU商品名、セット単価が印字される。71Cは構成PLUの印字であり、商品名の印字である。
【0108】71Dはセットで買った場合の値引き額を印字している。71EはPLU02の登録印字であり商品名とその単価を印字してある。
【0109】71Fは税種A)の課税対象額の印字、71Gは税種A)の税額印字である。71Hはこのレシートでの現金売上額である。」
(3c)
図7は、以下のとおりである。

(2-4)引用文献4について
本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献4には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(4a)
「【背景技術】
【0002】
従来、消費税の税率は、一律で定められている。POS(Point Of Sales)端末等の商品販売データ処理装置は、その一律の税率を用いて商品コードを元に特定される商品についての販売登録処理を実行している。また、近年においては、消費税率の引上げに伴う食料品等に対する消費税の軽減税率制度の導入が検討されている。このため、今後、商品の種類や分類によって複数の税率が定められた場合には、各商品に対して適切な税率を選択して販売登録を行う必要が生じる。
【0003】
そこで、商品販売データ処理装置において、商品ごとに税率を設定しておき、商品の販売登録時に各商品に対応する税率をもとに税額を算出する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、消費者が将来的な消費税率の増加による支払金額の増加額を知るには、消費者自らがレシートを頼りに再計算しなければならず、作業負担が大きいという問題がある。また、消費税の軽減税率制度の導入が想定される場合には、消費者によるレシートに基づく再計算が複雑となるため、更に作業負担が大きくなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、消費者が将来的な消費税率の変更による支払金額の変化額を簡単に把握することができる情報処理装置およびプログラムを提供することである。」
(4b)
「【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の情報処理装置は、所定の税率に応じた税額の算出対象となる商品を特定する商品特定手段と、特定された前記商品に対する所定の税率とは異なる他の税率を指定するための税率指定手段と、前記商品特定手段で特定された商品の価格に対して前記所定の税率に応じた税額および前記税率指定手段において指定された前記他の税率に応じた税額を算出して報知する税額報知手段と、を備える。
・・・
【0047】
印刷制御部29は、販売店の店名や連絡先、販売登録部27が登録した各商品の商品名、価格、税込み価格、税率読込部26が読み込んだ各商品に対する税率、1取引の合計金額、釣銭額等を、プリンタ17によってレシート用紙に印刷する。尚、印刷制御部29は、各商品に対する税額をレシートに印刷するとしてもよい。また、印刷制御部29は、印刷したレシートをレシート発行口18から発行する。
・・・
【0060】
次に、POS端末2は、キーボード13において現計キーが押下されたか否かを判定する(ステップS9)。現計キーが押下されていない間(ステップS9:No)は、ステップS1に戻ってステップS1?S9の処理を全商品の販売登録が終わるまで続ける。現計キーが押下された場合(ステップS9:Yes)には、印刷制御部29は、店名や各商品の品名、価格、税込み価格、各商品に対する税率、1取引の合計金額、釣銭額等をレシートに印刷し、レシート発行口18からレシートを発行する(ステップS10)。そして、店員は会計処理を行って一会計の販売登録処理を終了する。このようにして販売登録処理で生成された取引データは、取引データファイルF2に記憶された後、所定のタイミングでストアサーバ4に送られて取引データファイルF1に記憶される。
【0061】
図11は、レシートR1の一例を示す平面図である。図11に示すように、レシートR1には、商品コードで特定される商品の販売登録および当該商品に対応する所定の税率に応じた税額の算出によって生成される取引データd1の他、当該取引データを識別するための情報であるレシートナンバーd2が印字されている。
・・・
【0076】
図14は、支払額目安レポートR3の一例を示す平面図である。図14に示すように、支払額目安レポートR3には、例えば、入力された商品コードに対応する商品が商品別税率設定マスタD1において持ち帰り(TAKE OUT)である場合に軽減税率(他の税率)が適用される設定になっているのであれば、「TAKE OUT」の指定では、軽減税率が適用された税額が表示される。」
(4c)
図11及び図14は、以下のとおりである。

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)
引用発明の「商品販売データ処理装置」は、本件補正発明の「売上データ処理装置」に相当する。
(イ)
引用発明の「課税対象商品である商品A」及び「課税対象商品である商品C」は、「1取引にて販売登録される」「各登録商品のうちの課税対象商品」の具体例に該当する。
したがって、引用発明の「1取引にて販売登録される」「各登録商品のうちの課税対象商品」、「課税対象商品である商品A」及び「課税対象商品である商品C」は、いずれも、本件補正発明の「売上登録の指定を受け付けた課税対象商品」にも、「第1の税率が適用された課税対象商品」にも相当する。
(ウ)
引用文献1には、「小計キー2dがキー入力されると、前記CPU11は図7に示す小計キー処理を実行するようにプログラム設定されている。」(摘記(1c)の【0028】)、「小計キー2dがキー入力されると、・・・課税対象額合計メモリ33内の課税対象合計額から・・・ストアクーポン合計器36内のストアクーポン券による値引合計額が値引される。そして、値引後の課税対象額合計メモリ内の金額に対応する税額が演算され、」(摘記(1d)の【0037】)及び「小計キー2dは1取引の合計金額を算出するための合計キーとして機能する。」(摘記(1c)の【0032】)と記載されていることなどから、引用発明の「CPU11」が、「合計キーのキー入力に応じて前記課税対象額合計メモリ33内の金額に対応する税額を演算」することは、明らかである。
このことと、上記(イ)を踏まえると、引用発明の「CPU11と、1取引にて販売登録される」「各登録商品のうちの課税対象商品の合計金額を記憶する課税対象額合計メモリ33を有し、合計キーのキー入力に応じて前記課税対象額合計メモリ33内の金額に対応する税額を演算」する構成における「CPU11」は、本件補正発明の「売上登録の指定を受け付けた課税対象商品に対して税額を導出する税額導出手段」に相当する。
(エ)
引用発明の「課税対象商品である商品Aの名称を記載した行に」「記載され」た「商品Aの単価」及び「課税対象商品である商品Cの名称を記載した行に」「記載され」た「商品Cの単価」は、いずれも、本件補正発明の「課税対象商品の名称に対応付け」た「前記課税対象商品に対する金額情報」に相当する。
(オ)
本願明細書の段落【0027】には、「CPUは、・・・レシートを・・・発行するレシート発行手段等として機能する。」と記載されていること、及び、上記(エ)を踏まえると、引用発明の「CPU11は、」「課税対象商品である商品Aの名称を記載した行に商品Aの単価が記載され」、「課税対象商品である商品Cの名称を記載した行に商品Cの単価が記載され」た「レシートを発行する」構成における、「CPU11」は、本件補正発明の「前記課税対象商品の名称に対応付けて前記課税対象商品に対する金額情報が記載されたレシートを発行するレシート発行手段」に相当する。
(カ)
上記(ア)?(オ)から、引用発明の「CPU11は、」「課税対象商品である商品Aの名称を記載した行に商品Aの単価が記載され」、「課税対象商品である商品Cの名称を記載した行に商品Cの単価が記載され」た「レシートを発行する」構成を備える、「CPU11と、1取引にて販売登録される各商品の税抜き合計金額を記憶する合計金額メモリ32及び各登録商品のうちの課税対象商品の合計金額を記憶する課税対象額合計メモリ33を有し、合計キーのキー入力に応じて前記課税対象額合計メモリ33内の金額に対応する税額を演算し前記合計金額メモリ32内の税抜き合計金額に加算して税込み合計金額を出力する商品販売データ処理装置」は、本件補正発明の「売上登録の指定を受け付けた課税対象商品に対して税額を導出する税額導出手段と、前記課税対象商品の名称に対応付けて前記課税対象商品に対する金額情報が記載されたレシートを発行するレシート発行手段と、を備え」る「売上データ処理装置」に相当する。

上記ア(オ)のとおりであるから、引用発明の「CPU11は、」「レシートを発行する」ことは、本件補正発明の「レシート発行手段は、」「レシートを発行する」ことに相当する。

レシートの記載内容などに関して、本件補正発明の「レシート」と引用発明の「レシート」とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)
上記ア(イ)で述べたとおり、引用発明の「課税対象商品である商品A」及び「課税対象商品である商品C」は、いずれも、本件補正発明の「第1の税率が適用された課税対象商品」に相当する。
また、引用発明の「非課税商品である商品B」は、「課税対象商品である商品A」及び「課税対象商品である商品C」とは異なる商品であるから、上記の相当関係を踏まえると、第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品である。
したがって、引用発明の「非課税商品である商品B」と、本件補正発明の「前記第1の税率とは異なる第2の税率が適用された第2の税率が適用された課税対象商品」とは、「第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品」において共通している。
(イ)
上記(ア)を踏まえると、引用発明の「課税対象商品である商品Aの名称」ないし「課税対象商品である商品Cの名称」、又は、「非課税商品である商品Bの名称」と、本件補正発明の「前記第1の税率が適用された課税対象商品と前記第2の税率が適用された課税対象商品とのうち少なくとも一方の課税対象商品の名称」とは、「前記第1の税率が適用された課税対象商品と前記第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品とのうち少なくとも一方の商品の名称」において共通している。
(ウ)
引用発明の「レシート」は、「課税対象商品である商品Aの名称を記載した行に、商品Aの単価が記載され、非課税商品である商品Bの名称を記載した行に、商品Bの単価及び非という文字が記載され、課税対象商品である商品Cの名称を記載した行に、商品Cの単価が記載され」た「レシート」であるから、引用発明の「レシート」の「非課税商品である商品Bの名称を記載した行に」「記載され」た「非という文字」は、「非課税商品である商品B」と、「課税対象商品である商品A」ないし「課税対象商品である商品C」とを識別可能とする機能を備えていることが明らかであり、本件補正発明の「識別マーク」に相当する。
また、引用発明の「レシート」の「非課税商品である商品Bの名称を記載した行に」「記載され」た「非という文字」と、引用発明の「レシート」が、「CPU11」(本件補正発明の「売上登録の指定を受け付けた課税対象商品に対して税額を導出する税額導出手段」に相当。上記ア(ウ)参照。)により「発行」されることを踏まえると、税額を導出する税額導出手段である「CPU11」が税額を導出する際に、「非課税商品である商品B」と、「課税対象商品である商品A」ないし「課税対象商品である商品C」とを識別可能としていることが明らかである(後述の(エ)も参照。)。
これらのことを総合すると、引用発明の「課税対象商品である商品Aの名称を記載した行に、商品Aの単価が記載され、非課税商品である商品Bの名称を記載した行に、商品Bの単価及び非という文字が記載され、課税対象商品である商品Cの名称を記載した行に、商品Cの単価が記載され」た「レシート」と、本件補正発明の「前記税額導出手段が前記税額を導出する際に第1の税率が適用された課税対象商品と前記第1の税率とは異なる第2の税率が適用された課税対象商品とが識別可能なように、前記第1の税率が適用された課税対象商品と前記第2の税率が適用された課税対象商品とのうち少なくとも一方の課税対象商品の名称に対応付けて識別マークが記載されたレシート」とは、「前記税額導出手段が前記税額を導出する際に第1の税率が適用された課税対象商品と第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品とが識別可能なように、前記第1の税率が適用された課税対象商品と前記第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品とのうち少なくとも一方の商品の名称に対応付けて識別マークが記載されたレシート」において共通しているといえる。
(エ)
上記ア(ウ)を踏まえると、引用発明の「税と記載した行に」「記載され」た「合計税額」は、「CPU11」(本件補正発明の「売上登録の指定を受け付けた課税対象商品に対して税額を導出する税額導出手段」に相当。)が、「前記課税対象額合計メモリ33内の金額に対応する税額を演算」したもの、すなわち、「課税対象額と記載した行に」「記載され」た「課税対象額」に対応する税額を導出したものであることが、明らかである。
したがって、引用発明の「税と記載した行に」「記載され」た「合計税額」と、本件補正発明の「前記第1の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第1の税率を適用して導出した税額と前記第2の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第2の税率を適用して導出した税額との合計税額」とは、「税額導出手段が導出した税額の合計税額」において共通している。
このことを踏まえると、引用発明の「税と記載した行に、括弧書きで税率が記載されると共に、合計税額が記載され」た「レシート」と、本件補正発明の「前記第1の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第1の税率を適用して導出した税額と前記第2の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第2の税率を適用して導出した税額との合計税額が括弧書きで記載されたレシート」とは「前記税額導出手段が導出した税額の合計税額が記載されたレシート」において共通している。
(オ)
上記(ウ)、(エ)を踏まえると、
引用発明の
「課税対象商品である商品Aの名称を記載した行に、商品Aの単価が記載され、
非課税商品である商品Bの名称を記載した行に、商品Bの単価及び非という文字が記載され、
課税対象商品である商品Cの名称を記載した行に、商品Cの単価が記載され、
ストアクーポンと記載した行に、ストアクーポン券の値引額が記載され、
課税対象額と記載した行に、括弧書きで商品Aの単価と商品Cの単価の合計金額からストアクーポン券の値引額を値引きした課税対象額が記載され、
税と記載した行に、括弧書きで税率が記載されると共に、合計税額が記載され、
メーカクーポンと記載した行に、メーカクーポン券の値引額が記載され、
税込み合計と記載した行に、メーカクーポン券の値引額を値引きした税込み合計金額が記載された、
レシート」(引用文献1の図9も参照)と、
本件補正発明の
「前記税額導出手段が前記税額を導出する際に第1の税率が適用された課税対象商品と前記第1の税率とは異なる第2の税率が適用された課税対象商品とが識別可能なように、前記第1の税率が適用された課税対象商品と前記第2の税率が適用された課税対象商品とのうち少なくとも一方の課税対象商品の名称に対応付けて識別マークが記載されたレシートであって、且つ、前記第1の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第1の税率を適用して導出した税額と前記第2の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第2の税率を適用して導出した税額との合計税額が括弧書きで記載されたレシート」とは、
「前記税額導出手段が前記税額を導出する際に第1の税率が適用された課税対象商品と第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品とが識別可能なように、前記第1の税率が適用された課税対象商品と前記第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品とのうち少なくとも一方の商品の名称に対応付けて識別マークが記載されたレシートであって、且つ、前記税額導出手段が導出した税額の合計税額が記載されたレシート」において共通している。

以上から、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「売上登録の指定を受け付けた課税対象商品に対して税額を導出する税額導出手段と、
前記課税対象商品の名称に対応付けて前記課税対象商品に対する金額情報が記載されたレシートを発行するレシート発行手段と、
を備え、
前記レシート発行手段は、前記税額導出手段が前記税額を導出する際に第1の税率が適用された課税対象商品と第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品とが識別可能なように、前記第1の税率が適用された課税対象商品と前記第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品とのうち少なくとも一方の商品の名称に対応付けて識別マークが記載されたレシートであって、且つ、前記税額導出手段が導出した税額の合計税額が記載されたレシートを発行する、
売上データ処理装置。」
<相違点>
「レシート発行手段」が「レシートを発行する」ことに関して、
本件補正発明では、
前記レシート発行手段は、前記税額導出手段が前記税額を導出する際に第1の税率が適用された課税対象商品と「前記第1の税率とは異なる第2の税率が適用された課税対象商品」とが識別可能なように、前記第1の税率が適用された課税対象商品と「前記第2の税率が適用された課税対象商品」とのうち少なくとも一方の「課税対象」商品の名称に対応付けて識別マークが記載されたレシートであって、且つ、「前記第1の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第1の税率を適用して導出した税額と前記第2の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第2の税率を適用して導出した税額との」合計税額が「括弧書きで」記載されたレシートを発行するのに対して
引用発明では、
CPU11は、「少なくとも、上から順に、課税対象商品である商品Aの名称を記載した行に、商品Aの単価が記載され、非課税商品である商品Bの名称を記載した行に、商品Bの単価及び非という文字が記載され、課税対象商品である商品Cの名称を記載した行に、商品Cの単価が記載され、ストアクーポンと記載した行に、ストアクーポン券の値引額が記載され、課税対象額と記載した行に、括弧書きで商品Aの単価と商品Cの単価の合計金額からストアクーポン券の値引額を値引きした課税対象額が記載され、税と記載した行に、括弧書きで税率が記載されると共に、合計税額が記載され、メーカクーポンと記載した行に、メーカクーポン券の値引額が記載され、税込み合計と記載した行に、メーカクーポン券の値引額を値引きした税込み合計金額が記載された、」レシートを発行する点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。

引用発明の「商品販売データ処理装置」において、「クーポン券」が使用されない場合は、「商品バーコード」を読み取る「通常の商品登録処理」だけ「が行われ」ることが明らかである(摘記(1c)、(1e)も参照)。
このように、引用発明の「商品販売データ処理装置」において、「商品バーコード」を読み取る「通常の商品登録処理」だけ「が行われ」る際にも、引用発明の「CPU11」が「レシートを発行する」ことは明らかである。
そして、そのレシートは、クーポン券に係る項目を必要としないことも明らかである。
したがって、引用発明の「商品販売データ処理装置」において、「クーポン券」が使用されず、「通常の商品登録処理が行われ」る際には、
「CPU11」は、
「少なくとも、上から順に、
課税対象商品である商品Aの名称を記載した行に、商品Aの単価が記載され、
非課税商品である商品Bの名称を記載した行に、商品Bの単価及び非という文字が記載され、
課税対象商品である商品Cの名称を記載した行に、商品Cの単価が記載され、
課税対象額と記載した行に、括弧書きで商品Aの単価と商品Cの単価の合計金額である課税対象額が記載され、
税と記載した行に、括弧書きで税率が記載されると共に、合計税額が記載され、
税込み合計と記載した行に、税込み合計金額が記載された、
レシート」(以下「構成A」ともいう。)
を発行するといえるし、少なくとも、そのようなレシートを発行することは、当業者が適宜なしたことである。
そして、上記のレシート(構成A)と本件補正発明のレシートとの対比は、(3)ウ(オ)のとおりであるから、構成Aは、本件補正発明の用語等を用いて記載すると、「前記税額導出手段が前記税額を導出する際に第1の税率が適用された課税対象商品と第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品とが識別可能なように、前記第1の税率が適用された課税対象商品と前記第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品とのうち少なくとも一方の商品の名称に対応付けて識別マークが記載されたレシートであって、且つ、前記税額導出手段が導出した税額の合計税額が記載されたレシート」であるといえる。

一方、引用文献2及び3等に記載されるように、POSなどの売上データ処理装置において(摘記(2a)、(3a)参照)、複数の異なる税率の商品を扱い(摘記(2b)、(3b)参照)、例えば、「A」、「B」、「C」のように、複数の異なる税率にそれぞれ対応する記号が印字されることで、異なる税率のものが識別できるレシートを発行すること(摘記(2b)、(2c)、(3b)、(3c)参照)は、周知技術である。
また、引用文献4には、POS端末が発行するレシートであって、合計税額が括弧書きで記載されたレシート(摘記(4b)、(4c)参照)の技術(以下「引用文献4に記載された技術事項」という。)が、記載されている。

ここで、引用発明、周知技術及び引用文献4に記載された技術事項は、「POS端末が発行するレシート」を備える点で技術分野が共通していることと、引用発明は、課税商品と非課税商品(課税率がゼロともいえる。)を扱うものであり、実質的に、異なる税率の商品を扱って識別しているものともいえることから、また、当業者であれば、軽減税率(他の税率)などが適用され、複数の税率を扱うことが予定されていれば(摘記(4a)の段落【0004】も参照)、引用発明のようなレシートを発行する売上データ処理装置を、その税率に対応するように改良しようと試みることから、引用発明に上記の周知技術や引用文献4に記載された技術事項を適用する動機付けは充分にあるといえる。

したがって、引用発明に上記の周知技術及び引用文献4に記載された技術事項を適用し、引用発明の「商品販売データ処理装置」において、「通常の商品登録処理が行われ」る際に、複数の税率の商品を扱うようにすることで、引用発明の「第1の税率が適用された課税対象商品とは異なる商品」を、第1の税率とは異なる第2の税率が適用された課税対象商品とし、異なる税率のものが識別できるレシートとなるように(すなわち、税率が異なる商品同士を識別可能なレシートとなるように)、さらに、合計税額が括弧書きで記載されるように、
CPU11(レシート発行手段)が、構成Aのレシートに代えて、以下の「 」内の構成も備えるレシート、すなわち、
前記税額導出手段が前記税額を導出する際に第1の税率が適用された課税対象商品と「第1の税率とは異なる第2の税率が適用された課税対象商品」とが識別可能なように、前記第1の税率が適用された課税対象商品と「前記第1の税率とは異なる第2の税率が適用された課税対象商品」とのうち少なくとも一方の商品の名称に対応付けて識別マーク(例えば「非」に代えた「減」などの識別マーク)が記載されたレシートであって、且つ、「前記第1の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第1の税率を適用して導出した税額と前記第2の税率が適用される課税対象商品に対して前記税額導出手段が前記第2の税率を適用して導出した税額と」の合計税額(引用発明において、税率が異なる商品を扱えば、合計税額が全ての商品の税額の合計になることは自明といえる。また、引用文献2には、税率が異なる商品の税額の合計が「TAX TOTAL」すなわち合計税額として記載されていることから、引用発明において、税率が異なる商品を扱い、合計税額が全ての商品の税額の合計となるようにすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。)が「括弧書きで」記載されたレシートを発行するようにして、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。

なお、引用発明は、「税と記載した行に括弧書きで税率を記載すると共に合計税額を記載した」ものであるから、税に係る事項に括弧書きをすることが示唆されており、引用文献4に記載された技術事項を適用するまでもなく、引用発明において、合計税額をも括弧書きにする程度のことは、当業者が適宜になし得たことであるともいえるし、また、上記エでは、非課税商品を扱うことがないものとして判断したが、非課税商品も扱うのであれば、その項目はそのままにし、上記のような第2の税率に係る項目を追加すれば足るものである。
要するに、引用発明において、複数の税率の商品を扱うようにさえすれば、すなわち、上記イの周知技術(特に、引用文献2の図22(摘記(2c)のレシートを発行する技術)を採用すれば、上記相違点に係る本件補正発明の構成は、容易に想到できたともいえる。

そして、本件補正発明の奏する「標準税率とは異なる税率(軽減税率及び加算税率)がどの商品に適用されているのかを顧客に知らせることができる」(本願明細書の段落【0011】)という作用効果は、「非」のような識別マークが記載されたシートを発行する引用発明の売上データ処理装置が、上記エのとおり税率が異なる商品を扱うようになれば、予測できるものであるから、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

さらに、審判請求人の主張については、以下のとおりである。
審判請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(3)本願発明と引用文献の対比」において、「一方、各引用文献には『税額を導出する際に第1の税率が適用された課税対象商品と前記第1の税率とは異なる第2の税率が適用された課税対象商品とが識別可能なように、前記第1の税率が適用された課税対象商品と前記第2の税率が適用された課税対象商品とのうち少なくとも一方の課税対象商品の名称に対応付けて識別マークが記載されたレシートを発行すること』の記載や『レシートに、前記第1の税率が適用される課税対象商品に対して前記第1の税率を適用して導出した税額と前記第2の税率が適用される課税対象商品に対して前記第2の税率を適用して導出した税額との合計税額が括弧書きで記載されていること』の記載がなく、各引用文献は本願発明とは異なります。そして、たとえ各引用文献を組み合わせたとしても、本願発明の上述したような特徴を得ることができるものでもありません。」と主張する。
しかしながら、上記エ、オで述べたとおり、引用発明に引用文献2ないし4に記載された技術事項を適用し、引用発明において、複数の税率の商品を扱うようにすることで、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすること、すなわち、税率の異なる一方の課税対象商品の名称に対応付けて識別マークが記載され、且つ、合計税額が括弧書きで記載されるレシートを発行することは、当業者が容易になし得たといえるし、上記カで述べたとおり、本件補正発明が奏する効果も、格別顕著なものということはできないから、上記の審判請求人の主張は採用できない。

(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記の補正の却下の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年3月25日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、令和1年10月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」ともいう。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、2、5、7、9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1、2、3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、この出願の請求項3、4、6、8、10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1、2、3、4、5、6に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

[刊行物等]
1:特開平4-373097号公報
2:特開2001-184566号公報
3:特開平10-124757号公報
4:特開2015-184817号公報
5:特開2008-77270号公報
6:特開2010-108364号公報

3 引用文献に記載された事項等
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1、2及び3は、それぞれ、引用文献1、2及び3であり、それらの記載事項等は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「括弧書きで記載された」という事項について、「括弧書きで」という限定事項を削除したものである。
したがって、「括弧書きで」に対応する引用文献4を採用する必要はなく、それ以外の判断は、前記第2の[理由]2(3)、(4)、(5)に記載したとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-03-18 
結審通知日 2021-03-23 
審決日 2021-04-13 
出願番号 特願2016-41221(P2016-41221)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森林 宏和  
特許庁審判長 佐々木 一浩
特許庁審判官 出口 昌哉
藤井 昇
発明の名称 売上データ処理装置およびプログラム  

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