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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1374810
審判番号 不服2019-16138  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-29 
確定日 2021-06-30 
事件の表示 特願2014-193448「情報処理システム、情報処理装置、情報処理プログラム、および情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 66153、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月24日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 5月31日付け:拒絶理由通知書
平成30年 7月30日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年11月30日付け:拒絶理由(最後)通知書
平成31年 3月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 8月29日付け:平成31年3月13日に提出された手続補
正書に係る手続補正の却下の決定
令和 元年 8月29日付け:拒絶査定
令和 元年11月29日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

令和 2年11月24日付け:拒絶理由(当審拒絶理由1)通知書
令和 3年 1月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 3月23日付け:拒絶理由(当審拒絶理由2、最後)通知書
令和 3年 5月14日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年8月29日付け拒絶査定)は、この出願については、平成30年11月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである、というものである。
そして、平成30年11月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、次のとおりである。
この出願の請求項1?19に係る発明は、以下の引用文献A,Bに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:特開2004-344483号公報
引用文献B:特表2009-505209号公報

第3 当審拒絶理由の概要
1 当審拒絶理由1
当審が令和2年11月24日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1?3,17?19に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、請求項4に係る発明は、以下の引用文献1?3に記載された発明に基いて、請求項5?16に係る発明は、以下の引用文献1?4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2012/070593号
引用文献2:特表2009-505209号公報(拒絶査定時の引用文献B)
引用文献3:特開2004-344483号公報(拒絶査定時の引用文献A)
引用文献4:特開2011-86117号公報

2 当審拒絶理由2
当審が令和3年3月23日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)の概要は次のとおりである。
この出願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には、「前記情報処理部は、前記3つ以上の情報記憶媒体毎の向きに基づいて、当該3つ以上の情報記憶媒体から前記所定の処理の対象となる2つの情報記憶媒体を選択し、当該対象となる2つの情報記憶媒体を用いて当該所定の処理を行う」と記載されている。
この記載によれば、請求項1には、「前記3つ以上の情報記憶媒体毎の向き」以外の情報に基づくことなく、当該「向き」のみに基づいて、「2つの情報記憶媒体を選択」する場合も含まれると解される。
しかしながら、そのような場合については、発明の詳細な説明に記載又は示唆されているとは認められない。
請求項16?18にもそれぞれ、請求項1と同様の記載がある。

第4 本願発明
本願請求項1?18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明18」という。)は、令和3年5月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定される発明であり、それらのうちの本願発明1,16?18は、以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
3つ以上の情報記憶媒体および当該情報記憶媒体と近距離無線通信を行う情報処理装置を含む情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
少なくとも1つのアンテナコイルと、
前記アンテナコイル近傍に設けられた所定面に対する物体の接触位置を検出するタッチパネルと、
前記アンテナコイルを介して、前記情報記憶媒体と近距離無線通信を行うことによって、当該アンテナコイルに近接した当該情報記憶媒体から情報を読み出す情報取得部と、
前記近距離無線通信可能な前記情報記憶媒体の向きを検出する向き検出部と、
前記情報記憶媒体から読み出された情報並びに当該情報記憶媒体の向きおよび前記タッチパネルによって検出された接触位置を用いて、所定の処理を行う情報処理部とを備え、
前記3つ以上の情報記憶媒体は、前記向き検出部が当該情報記憶媒体の向きを検出可能な被検知部をそれぞれ備え、
前記向き検出部は、前記タッチパネルによって検出された接触位置を用いて前記被検知部が前記タッチパネルに接触する接触面形状またはサイズを算出し、当該接触面形状またはサイズに基づいて、当該被検知部を有する前記情報記憶媒体の向きを当該情報記憶媒体毎に検出し、
前記情報処理部は、前記3つ以上の情報記憶媒体毎の向きおよび前記タッチパネルによって検出された接触位置に基づいて、当該3つ以上の情報記憶媒体から前記所定の処理の対象となる2つの情報記憶媒体を選択し、当該対象となる2つの情報記憶媒体を用いて当該所定の処理を行う、情報処理システム。」
「【請求項16】
3つ以上の情報記憶媒体と近距離無線通信を行う情報処理装置であって、
少なくとも1つのアンテナコイルと、
前記アンテナコイル近傍に設けられた所定面に対する物体の接触位置を検出するタッチパネルと、
前記アンテナコイルを介して、前記情報記憶媒体と近距離無線通信を行うことによって、当該アンテナコイルに近接した当該情報記憶媒体から情報を読み出す情報取得部と、
前記近距離無線通信可能な前記情報記憶媒体の向きを検出する向き検出部と、
前記情報記憶媒体から読み出された情報並びに当該情報記憶媒体の向きおよび前記タッチパネルによって検出された接触位置を用いて、所定の処理を行う情報処理部とを備え、
前記3つ以上の情報記憶媒体は、前記向き検出部が当該情報記憶媒体の向きを検出可能な被検知部をそれぞれ備え、
前記向き検出部は、前記タッチパネルによって検出された接触位置を用いて前記被検知部が前記タッチパネルに接触する接触面形状またはサイズを算出し、当該接触面形状またはサイズに基づいて、当該被検知部を有する前記情報記憶媒体の向きを当該情報記憶媒体毎に検出し、
前記情報処理部は、前記3つ以上の情報記憶媒体毎の向きおよび前記タッチパネルによって検出された接触位置に基づいて、当該3つ以上の情報記憶媒体から前記所定の処理の対象となる2つの情報記憶媒体を選択し、当該対象となる2つの情報記憶媒体を用いて当該所定の処理を行う、情報処理装置。」
「【請求項17】
3つ以上の情報記憶媒体と近距離無線通信を行う情報処理装置に含まれるコンピュータで実行される情報処理プログラムであって、
前記情報処理装置は、
少なくとも1つのアンテナコイルと、
前記アンテナコイル近傍に設けられた所定面に対する物体の接触位置を検出するタッチパネルとを有し、
前記コンピュータを、
前記アンテナコイルを介して、前記情報記憶媒体と近距離無線通信を行うことによって、当該アンテナコイルに近接した当該情報記憶媒体から情報を読み出す情報取得手段と、
前記近距離無線通信可能な前記情報記憶媒体の向きを検出する向き検出手段と、
前記情報記憶媒体から読み出された情報並びに当該情報記憶媒体の向きおよび前記タッチパネルによって検出された接触位置を用いて、所定の処理を行う情報処理手段として機能させ、
前記3つ以上の情報記憶媒体は、前記向き検出手段が当該情報記憶媒体の向きを検出可能な被検知部をそれぞれ備え、
前記向き検出手段は、前記タッチパネルによって検出された接触位置を用いて前記被検知部が前記タッチパネルに接触する接触面形状またはサイズを算出し、当該接触面形状またはサイズに基づいて、当該被検知部を有する前記情報記憶媒体の向きを当該情報記憶媒体毎に検出し、
前記情報処理手段は、前記3つ以上の情報記憶媒体毎の向きおよび前記タッチパネルによって検出された接触位置に基づいて、当該3つ以上の情報記憶媒体から前記所定の処理の対象となる2つの情報記憶媒体を選択し、当該対象となる2つの情報記憶媒体を用いて当該所定の処理を行う、情報処理プログラム。」
「【請求項18】
3つ以上の情報記憶媒体と近距離無線通信を行う情報処理方法であって、
少なくとも1つのアンテナコイルを介して、前記情報記憶媒体と近距離無線通信を行うことによって、当該アンテナコイルに近接した当該情報記憶媒体から情報を読み出す情報取得ステップと、
前記近距離無線通信可能な前記情報記憶媒体の向きを検出する向き検出ステップと、
前記情報記憶媒体から読み出された情報並びに当該情報記憶媒体の向きおよび前記アンテナコイル近傍に設けられた所定面に対する物体の接触位置を検出するタッチパネルによって検出された接触位置を用いて、所定の処理を行う情報処理ステップとを含み、
前記3つ以上の情報記憶媒体は、前記向き検出ステップにおいて当該情報記憶媒体の向きが検出可能な被検知部をそれぞれ備え、
前記向き検出ステップでは、前記タッチパネルによって検出された接触位置を用いて前記被検知部が当該タッチパネルに接触する接触面形状またはサイズが算出され、当該接触面形状またはサイズに基づいて、当該被検知部を有する前記情報記憶媒体の向きが当該情報記憶媒体毎に検出され、
前記情報処理ステップでは、前記3つ以上の情報記憶媒体毎の向きおよび前記タッチパネルによって検出された接触位置に基づいて、当該3つ以上の情報記憶媒体から前記所定の処理の対象となる2つの情報記憶媒体が選択され、当該対象となる2つの情報記憶媒体を用いて当該所定の処理が行われる、情報処理方法。」

また、本願発明2?15は、本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1(国際公開第2012/070593号)
(1)当審拒絶理由1で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
ア 「[0075] <ハードウェアの構成>
本件発明の情報入力システムは、タッチパネル101、タッチパネルに載置する媒体201、情報処理手段301、からなる。ハードウェアの具体的な構成を以下に述べる。
[0076] 発明者が意図する最良の実施形態は、図1に示すような本発明を構成するハードウェアを全て一体としたタブレットコンピュータである。
[0077] 断面図2に示す通り、タッチパネル101下部には表示手段102が設けられ、さらに図示しない情報処理手段301が設けられている。この実施例では後述する情報処理はタブレットコンピュータ内の情報処理手段301が全て実行する。その他、タッチパネルの代表的な構造を図3乃至5に示す。
[0078] なお、タッチパネル101、表示手段102、情報処理手段301、の一部または全部が独立した装置となる構成となっていてもよい。図示しないが、タッチパネル101は、PCやAV機器、携帯電話、情報端末、ゲーム機、教育機器、ショッピング端末、広告端末、工作機械、印刷機械などのインターフェイスデバイスやシンクライアント端末として様々な利用形態が考えられる。
[0079] また、情報処理手段301は、図示しない記憶手段に格納された情報を必要に応じて取得する。記憶手段は情報処理手段301と同一の装置内に設けられたものと、装置外に設けられたものの双方を指す。
[0080] <概要>
タッチパネル101には媒体201が載置され、本発明はユーザーが指先でこの媒体201をタッチして、各種の情報入力を行う。
[0081] 媒体201は図6の例では矩形のカード形状であるが、形状はコイン形状(図7参照)など、矩形以外のものでもよい。材質は紙に限らず合成樹脂等であってもよい。
[0082] その他の具体的な製品としては、シール、シート、メモ用紙、しおり等が挙げられる。媒体201の具体的形状は当業者の設計事項であるから詳細は省略する。
[0083] ユーザーが媒体201にタッチするのは必ずしも「指先」でなくてもよい。また、ユーザーがスタイラスペン(図示しない)を手に持ってタッチするものとしてもよい。このことは当業者の設計事項であるから詳細は省略する。
[0084] <キャリブレーション方法>
本発明の最も特徴的な構成である、タッチパネル101に媒体201を載置した際、媒体201の位置、方向およびコード情報(媒体情報)を情報処理手段301に認識させる方法を説明する。
[0085] コード情報とは、複数の媒体201を識別するためのIDとしての役割を持つほか、媒体201の形状、媒体201の大きさを定義することができる。
[0086] 本件発明においては、タッチパネル101に載置された媒体201を、ユーザーがタッチすることにより、媒体の位置、方向およびコード情報を情報処理手段301に認識させる。
[0087] この操作を本件発明では「キャリブレーション」と呼称する。キャリブレーションには複数の方法があり、どのキャリブレーション方法を採用するかは任意である。」

イ 「[0130] <タッチパネル座標系から媒体座標系への変換方法>
タッチパネル座標系における座標値を媒体座標系の座標値へと変換する方法を、図23を用いて説明する。
[0131] 前述のキャリブレーション時に代表点として入力されたタッチパネル座標系における座標値を(X_(s),Y_(s))とする。
[0132] また、そのキャリブレーション時に代表点として入力されたタッチパネル座標系における座標値を、媒体座標系で表現した座標値を(x_(s),y_(s))とする。
[0133] 一方、タッチパネルの座標系におけるY方向と、媒体の座標系におけるy方向とのなす角度をθとする。
[0134] この場合において、ユーザーの指先でのタッチ位置が、タッチパネル座標系で表現すると(X_(t),Y_(t))であるとする。
[0135] この場合、媒体座標系におけるタッチ位置(x_(t),y_(t))は、以下の式で表される。なお、αはタッチパネル座標系における単位長さに対する、媒体座標系の単位長さの比である。
[0136][数1]


[0137] このような演算処理を行うことにより、タッチパネル101上に媒体201がどのような位置、方向で配置されたとしても、その媒体201表面に印刷されたどの部位に指先でのタッチが行われたかを認識することが可能となる。
[0138] <情報処理手段およびアプリケーション>
以下に、情報入力システムの構成要素の1つである情報処理手段301に実行させるアプリケーション(プログラム)について説明する。情報処理手段301においては以下の処理が実行される。
[0139] <アプリケーションの起動>
アプリケーションの起動方法については、オペレーティングシステムが通常備える起動方法によりアプリケーションを起動する。
[0140] なお、ユーザーがタッチパネル101に媒体201を載置し、後述のキャリブレーションを実行することにより、コード情報テーブルにおいてコード情報と対応付けられたアプリケーションが自動的に起動するものとしてもよい。
[0141] <キャリブレーション・ステップ>
アプリケーションの起動後、情報処理手段301はキャリブレーション・ステップを実行する。このステップでは前述したキャリブレーション方法により、タッチパネル101に載置した媒体201の位置、方向およびコード情報を認識する。
[0142] <媒体へのタッチ操作を受け付けるステップ>
キャリブレーションが完了すると、タッチパネル座標系における座標値は、前述の変換方法により、媒体座標系の座標値への変換が可能となり、ユーザーは媒体201をタッチする操作が可能となる。
[0143] ユーザーが指先で媒体201の印刷面をタッチすると、タッチパネル座標系における座標値が入力され、媒体座標系の座標値に変換される。
[0144] <座標値と対応した処理の実行>
情報処理手段301は記憶手段に格納されたテーブルを参照して、媒体座標系における座標値と対応付けられた処理を実行する。
[0145] 具体例を挙げると図6の媒体座標系における「購入」と印刷された領域の座標をユーザーがタッチ操作により入力したときは、情報処理手段301はユーザーが選択した商品を購入する手続を開始する、そのような処理を実行する。
[0146] なおユーザーの操作は媒体201を単純にタッチするだけでなく、媒体201上の手書き入力領域を指でなぞって(滑動して)、複数の座標値を入力する操作も含めることができる。したがって、テキストやイメージを認識して、それらと対応する処理を実行するものとしてもよい。
[0147] <タッチパネル>
以下に、情報入力システムの構成要素の1つであるタッチパネル101について説明する。
[0148] 本発明に用いるタッチパネル101は静電容量方式のタッチパネルである。タッチパネル101の下部に表示手段102が設置されるかは問わない。」

ウ 「[0167] <媒体にRFIDを設ける>
本件発明では媒体201の表面または内部にRFID202を設け、タッチパネル101にはRFIDリーダー105を設けることにより、キャリブレーションを補助することができる。
[0168] RFID202はコード情報を記憶するものとし、キャリブレーションによらずに媒体201のコード情報を簡易に入力することができるようになる。」

エ 「[0194] <導電体で形成された媒体>
図34?35は、導電性の材料、すなわち導電体で媒体を形成する構成について説明する図である。
[0195] 図28?33では、媒体自体は紙や合成樹脂等で形成し、その表面または内部に導電体を埋め込むことにより、導電体を設けた媒体を形成していた。
[0196] 本実施例では、導電体自体で媒体を形成したものである。すなわち、ユーザーの指先によりタッチされるタッチ層と導電体とが一体として形成されている。
[0197] 図34は、一部を導電体で形成した媒体を示す図であり、(a)が平面図、(b)が断面図である。同図(a)では、三角形を二つ重ね合わせた形状の内側が導電体で形成されており、外側は紙や樹脂等の通常の媒体材料で形成されている。
[0198] ユーザーがタッチパネルに媒体を載置すると、情報処理手段は、導電体からの微弱電流により、導電体の形状および/または静電容量の大きさを認識する。これにより、導電体の形状と静電容量の大きさを媒体情報とすることが可能になる。また、導電体の形状を認識することが可能なため、導電体の形状を予め記憶手段に記憶させておけば、認識した導電体の形状と、記憶手段に記憶された導電体の形状との違いにより、媒体の位置および向きを認識することができる。そのため、ユーザーによるキャリブレーションが不要となるため、ユーザーにとってより操作が簡単で利便性の高い情報入力システムを提供することができる。」

オ 「[図1]



カ 「[図23]



(2)上記(1)の記載について、以下のことがいえる。
ア 「キャリブレーション」は、「タッチパネル101に載置された媒体201を、ユーザーがタッチすることにより、媒体の位置、方向およびコード情報を情報処理手段301に認識させる」操作である([0086]、[0087])。

イ 「媒体座標系におけるタッチ位置」([0135])を表す「数1」([0136])の右辺に「θ」、「X_(t)」及び「Y_(t)」が含まれているから、「タッチパネル座標系における座標値を媒体座標系の座標値へと変換する」([0130])ことは、「タッチパネルの座標系におけるY方向と、媒体の座標系におけるy方向とのなす角度」([0133])及び「ユーザーの指先でのタッチ位置」([0134])を用いた「演算処理」([0137])を行うものである。

ウ 「媒体座標系の座標値への変換」([0142])は、上記イの「演算処理」により行われる。「媒体座標系の座標値に変換される」([0143])ことについても同様である。

(3)上記(1)ア、イの記載及び上記(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「タッチパネル101、タッチパネルに載置する媒体201、情報処理手段301、からなる情報入力システムであって([0075])、
タッチパネル101下部には表示手段102が設けられ、さらに情報処理手段301が設けられており、情報処理はタブレットコンピュータ内の情報処理手段301が全て実行し([0077])、
キャリブレーションは、タッチパネル101に載置された媒体201をユーザーがタッチすることにより、媒体の位置、方向およびコード情報を情報処理手段301に認識させる操作であり(上記(2)ア)、
キャリブレーションを実行することにより、コード情報テーブルにおいてコード情報と対応付けられたアプリケーションが自動的に起動するものとしてもよく([0140])、
キャリブレーションが完了すると、タッチパネル座標系における座標値は、媒体座標系の座標値への変換が可能となり、ユーザーは媒体201をタッチする操作が可能となり([0142])、ユーザーが指先で媒体201の印刷面をタッチすると、タッチパネル座標系における座標値が入力され、媒体座標系の座標値に変換され([0143])、ここで、タッチパネル座標系における座標値を媒体座標系の座標値へと変換することは、タッチパネルの座標系におけるY方向と媒体の座標系におけるy方向とのなす角度及びユーザーの指先でのタッチ位置を用いた演算処理を行うものであり(上記(2)イ、ウ)、
媒体座標系における座標値と対応付けられた処理であって、媒体座標系における「購入」と印刷された領域の座標をユーザーがタッチ操作により入力したときは、情報処理手段301はユーザーが選択した商品を購入する手続を開始する、そのような処理を実行し([0145])、
タッチパネル101は静電容量方式のタッチパネルである([0148])、
情報入力システム。」

(4)また、上記(1)ウから、引用文献1には次の事項(以下、「引用文献1記載事項1」という。)も記載されていると認められる。
「媒体201の表面または内部にRFID202を設け、タッチパネル101にはRFIDリーダー105を設け、RFID202はコード情報を記憶するものとし、キャリブレーションによらずに媒体201のコード情報を入力すること。」

(5)更に、上記(1)エから、引用文献1には次の事項(以下、「引用文献1記載事項2」という。)も記載されていると認められる。
「三角形を二つ重ね合わせた形状の内側が導電体で形成されており、外側は紙や樹脂等の通常の媒体材料で形成されている媒体をタッチパネルに載置して、情報処理手段が、導電体からの微弱電流により導電体の形状を認識し、認識した導電体の形状と、記憶手段に記憶された導電体の形状との違いにより、媒体の位置および向きを認識することで、ユーザーによるキャリブレーションが不要となること。」

2 引用文献2(特表2009-505209号公報)
(1)当審拒絶理由1で引用された引用文献2(原査定で引用された引用文献B)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0043】
本発明の実施形態では、物理的ゲーム盤の表現が、任意選択的に装置100によって収集され、パック106、パドル108、110、および任意選択的にゴール102、104(これはこのゲームでは実際には移動しない)に関連付けられる実時間情報と共に、ディスプレイ上に表示される。任意選択的に、ゲームで使用されるゲーム盤および/またはパック106のような対象物は、(下述するような)センサアレイの下に位置するディスプレイ上に投影される。これらの対象物に関連する実時間情報は、位置、速度、向き、アイデンティティ、および/または加速度の少なくとも1つを含む。本発明の実施形態では、装置100は対象物に関連する少なくとも何らかの情報を連続的に検出する。本発明の一部の実施形態では、装置100は、ゲーム盤の上または下にあるセンサアレイ(下述し、参照番号203を割り当てる)に印加される入力信号の結果生じる、対象物に関連する出力対象物情報コードを検出する。本発明の実施形態では、対象物情報コードは対象物に関連する情報、例えば位置、向き、および/またはアイデンティティに対応する。
【0044】
図1Bは、本発明の実施形態に係るテニスゲームの表現150を示す。実世界の場合と同様に、ゲームは、ネット154、ボール156、ならびに2人のプレーヤ158および160が含まれる、テニスコート152を含む。開示する実施形態では、ゲームの構成要素は、2人のプレーヤ158および160を除き、全て画面上にある。以下でさらに詳述する通り、情報を収集するための装置100は任意選択的に、ゲーム用駒を識別してそれらの位置を決定するだけでなく、駒の向きを決定することもできる。位置および向きを非常に短い時間内に(例えば1000分の1ミリ秒以下で)決定することができるので、これはこれらのパラメータの実質的に連続的な決定を可能にする。本発明の実施形態では、装置100は、対象物の少なくとも位置および向きの非常に高い分解能を達成し、したがって対象物の位置および/または向きの小さい変化、本発明の一部の実施形態ではわずか数ミリでさえ、センサアレイ203によって検出(検知)される。
【0045】
動作中、図示したテニスゲームの対戦中に、各プレーヤは、ボールの位置にラケットを置き、かつボールがラケットによって「打たれる」ようにゲーム用駒を回転させるために、彼または彼女のゲーム用駒を動かしかつ回転させる。ボールは、ボールが打たれたこと、およびいつ、どのようにそれが打たれたかについてのコンピュータホストによる決定に応答して、スクリーン上を移動する。」

イ 「【0054】
図2は、本発明の例示的実施形態に従って、情報を検出するための装置100を含むハードウェア部のブロック図200を示す。本発明の一部の例示的実施形態に係る、情報を検出するための装置100にセンサ部202が設けられ、それはセンサアレイ203(図3に示す)を含み、その上に位置する少なくとも1つの対象物102に関する情報を検出するように適用されかつ構成される。例示的センサ部202については、以下でさらに詳述する。」

ウ 「【0059】
図3は、本発明の例示的実施形態に係るセンサ部202およびコントローラ部204の様々な要素間、ならびにホスト部206との間のデータの流れを示す略図300を描いている。
【0060】
略図300の動作の概要として、対象物102のような対象物またはユーザの指もしくは手が、センサアレイ203上に配置される。図示する通り、センサ部203は、一連の作動電極302(第1電極アレイ)およびパッシブ電極304(第2電極アレイ)を含む。スイッチング装置306は、AC信号、任意選択的にパルスAC信号を、作動電極302の少なくとも1つに印加する。10?数10kHzの範囲の信号が本発明に適していると考えられるが、より高い周波数およびより低い周波数を使用してもよい。信号は容量結合によって、パッシブ電極304の各々に伝達される。本発明の一部の実施形態では、対象物がセンサ上に配置されない場合でも、接合点の寄生容量のため、信号はパッシブ電極に伝達されることを理解されたい?「定常状態ベクトル」。パッシブ電極304は各々、任意選択的に一連のセンサライン311を含む任意選択的にASICの形のセンサ電子部品310に接続される。各センサ(パイプライン)ライン311は任意選択的に、高入力インピーダンスの増幅器312と、AC信号の周波数付近以外の信号を除去するフィルタ314と、フィルタリングされた信号を周期的にサンプリングしてそれらをアナログデジタル変換器318に転送し、サンプリングされた電圧をデジタル形に変換するサンプルホールド回路316とを含む。したがって、センサライン311は、それが関連付けられているパッシブ電極に存在するAC信号を、作動した特定の作動電極から前記パッシブ電極に結合される信号を表わすデジタル信号に変換する。下述の通り、これらの信号は後でコントローラによって解析され、コントローラはホストコンピューティング装置にさらなる情報(受信信号の大きさ、算出DFT、位相等のような信号の特性)を送信し、ホストコンピューティング装置は位置/向き/正体等を決定する。」

エ 「【0064】
本発明の例示的実施形態では、電極302および304は実質的に透明であるので、センサアレイ203は透明である。本発明の実施形態では、上に指摘した通り、センサアレイ203はLCDディスプレイのようなディスプレイの上に載置される。このディスプレイは、ゲーム盤(または装置100によって実行されるタスクに適した他のバックグラウンド)のみならず、対象物102の移動またはホスト(図示せず)からのコマンドに応答する様々な情報をも示すように構成することができる。」

オ (図1B)




カ (図3)




(2)上記(1)から、引用文献2(引用文献B)には次の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。
「物理的ゲーム盤の表現がディスプレイ上に表示される装置100であって、
テニスゲームの表現150において、ゲームは、ネット154、ボール156、ならびに2人のプレーヤ158および160を含み、ゲームの構成要素は、2人のプレーヤ158および160を除き、全て画面上にあり、情報を収集するための装置100は、ゲーム用駒を識別してそれらの位置を決定するだけでなく、駒の向きを決定することもでき、
動作中、各プレーヤはゲーム用駒を動かしかつ回転させ、ボールは、ボールが打たれたこと、およびいつ、どのようにそれが打たれたかについてのコンピュータホストによる決定に応答して、スクリーン上を移動し、
装置100を含むハードウェア部では、情報を検出するための装置100にセンサ部202が設けられ、それはセンサアレイ203を含み、その上に位置する少なくとも1つの対象物102に関する情報を検出するように適用されかつ構成され、
対象物102のような対象物またはユーザの指もしくは手が、センサアレイ203上に配置され、センサ部203は、一連の作動電極302(第1電極アレイ)およびパッシブ電極304(第2電極アレイ)を含み、
電極302および304は実質的に透明であるので、センサアレイ203は透明であり、センサアレイ203はLCDディスプレイのようなディスプレイの上に載置され、このディスプレイは、ゲーム盤のみならず、対象物102の移動に応答する様々な情報をも示すように構成することができる、装置100。」

3 引用文献3(特開2004-344483号公報)
(1)当審拒絶理由1で引用された引用文献3(原査定で引用された引用文献A)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0038】
[ゲーム装置概要]
図1に、本発明のゲーム装置を家庭用ゲーム機に適用した場合の概観例を示す。同図に示すように、ゲーム機本体1には、ディスプレイ2、ゲームコントローラ3、入力パッド40が接続されている。また、ゲームプログラムやゲームデータ等のゲームを実行するために必要な情報であるゲーム情報を格納する情報記憶媒体として、ゲーム機本体1に対して着脱自在なCD-ROMやDVD等の情報記憶媒体5が用いられ、ゲーム中の所定のタイミングやプレーヤによるセーブ操作等に応じて、ゲームの進行状況に関する情報を含むプレイデータが書き込まれる情報記憶媒体としてメモリカードやICカード等の情報記憶媒体6が用いられる。ゲーム機本体1は、これらの情報記憶媒体5,6に格納される情報に従って、各種処理を実行する。
【0039】
或いは、ゲーム情報は、ゲーム機本体1に具備された通信装置7を介して通信回線Nに接続し、外部装置から取得しても良い。通信回線Nは、データ授受が可能な通信路を意味する。即ち、通信回線Nとは、直接接続のための専用線(専用ケーブル)やイーサネット(登録商標)等によるLANの他、電話通信網やケーブル網、インターネット等の通信網を含む意味であり、また、通信方法については有線/無線を問わない。
【0040】
入力パッド40は、検出エリア(載置検知可能領域)E内の位置等を指定する形象物としての玩具20と組合せて入力装置(入力システム)として使用される、いわゆるタブレットである。玩具20は、コイルやコンデンサ、ICチップ等で構成される同調回路が内蔵される台座20aと、模型部20bとからなる。そして、入力パッド(すなわち、タブレット本体)40には、玩具20の載置位置に対応する検出エリアEの位置座標を検知するセンサが内蔵される。入力パッド40は、検出エリアE内に載置された玩具20の載置位置を入力パッド40と玩具20との間に発生する電磁誘導を利用して検出する。
【0041】
より具体的には、入力パッド40内部には、多数のループコイルが網の目状に配列される。そして、選択回路によりループコイルを順次選択するとともに、切替回路を介してループコイルを送信回路と受信回路とに交互に接続する。入力パッド40上に玩具20が載置されると、当該玩具20に内蔵される同調回路の同調により、玩具20の備えるコイルから電波が送出され、ループコイルには送信回路から受信回路に切り替えられた時点で電圧が誘起される。これを受信回路が検出することにより、入力パッド40は、どのループコイル上に玩具20が載置されているかを判断する。
【0042】
また、上記したように電圧が誘起された入力パッド40側のループコイルを検出することで、玩具20の向きを検出することができる。図2は、玩具20の備える台座20aの底面図であり、同図において、台座20a内に内蔵されるコイル210の配置位置を破線で示している。この台座20a内に内蔵される4つのコイル210によって玩具20の向きが特定される。すなわち、電圧が誘起されたループコイルの位置に対応する検出エリアEの位置座標群により玩具20側のコイル210の位置関係を認識することで、認識したコイル210の位置関係に基づいて、玩具20の向きを検出することができる。玩具20を構成する模型部20bは、例えば、同図の上方向が模型部20bの正面側となるように台座20aに装着される。尚、玩具20内に内蔵されるコイル210を複数とし、その配置位置関係によって向きを識別することとしたが、インダクタンスの異なるコイルを配置する等して、玩具20の向きを判別することとしてもよい。
【0043】
さらに、入力パッド40は、玩具20との間でデータ通信を行う。具体的には、玩具20は、入力パッド40から送信される電波に応答して識別信号を生成して入力パッド40に送信し、入力パッド40は、受信した識別信号により入力パッド40上に載置された玩具20を識別する。」

イ 「【0047】
図3(a)に、入力パッド40上の玩具20の載置状態の一例を示す。同図(a)に示すように、入力パッド40は、3×2の桝目状に分割され、各桝目内にはそれぞれ1体の玩具20を載置することができる。
【0048】
図3(b)は、ゲーム空間に設定される戦闘エリアの一例を示す図である。戦闘エリアは、入力パッド20の検出エリアEと対応付けて設定される自戦闘エリアE10と、敵側戦闘エリアE20とを備える。この自戦闘エリアE10及び敵側戦闘エリアE20は、入力パッド40上の検出エリアEと同様に3×2の桝目状に分割されている。同図(b)に示すように、自戦闘エリアE10には、(a)に示す玩具20,20の載置位置に対応する桝目内に、それぞれ該当する玩具20の形態を模した玩具キャラクタC10,C12が操作対象キャラクタとして配置される。また、敵側戦闘エリアE20には、任意の桝目内に2種類の敵キャラクタC20,C22が配置される。プレーヤは、ゲーム中に戦闘モードに移行すると、手持ちの玩具20の内、2体の玩具20を選択して検出エリアEの所望の桝目内にそれぞれ載置することにより、操作対象キャラクタの陣形を編成する。戦闘は、前述のように2体の玩具20を載置することにより編成した陣形を初期状態として進行する。」

ウ 「【0061】
[機能構成]
図7(a)は、玩具20の内部構成の一例を示すブロック図である。同図(a)に示す玩具20は、コイル210と、電源回路230と、玩具側IC250とを備えて構成され、玩具側IC250は、RAMやROM等で構成されるメモリ252を有する。コイル210は、後述する入力パッド40のアンテナコイル42(図8参照)と電磁誘導により交信するためのものであり、巻線コイル等により構成される。電源回路230は、コイル210に生じた電磁誘導による電流を整流し、所定の電圧を玩具側IC250に供給する回路であって、コンデンサ等により構成される。玩具側IC250は、電源回路230から供給される電圧によって自動的に起動され、コイル210を介してメモリ252に記憶された情報を入力パッド40に出力するための制御部として機能する。具体的には、玩具側IC250は、メモリ252内のIDコード格納領域252aに格納されたIDコードを、コイル210を介して入力パッド40へ送信する。
【0062】
IDコードは、玩具20を特定するための情報であり、玩具20の玩具種別を示す種別コードと、当該玩具20を識別するための識別コードとが組み合わされた情報である。図7(b)に、IDコード格納領域252aに格納されるIDコードの一例を示す。同図(b)において、IDコードとして“K15_00333”が示されており、アンダーバー“_”の前部分“K15”が玩具20の種別コードを、後部分“00333”が玩具20の識別コードを、それぞれ示している。玩具種別とは、玩具20の形態別に分類された玩具20の種類のことであり、種別コードにより玩具20の玩具種別が特定される。また、識別コードは、例えば、当該玩具20の製造番号といった玩具20に固有に割り当てられた情報である。このIDコードにより玩具20がユニークに特定される。
【0063】
図8は、ゲーム装置10及びゲーム装置10に接続される入力パッド40の内部構成の一例を示すブロック図である。
【0064】
入力パッド40は、コイル部としてのアンテナコイル42と、入力パッド制御部44とを備えて構成される。入力パッド制御部44は、アンテナコイル42に流す電流量及び電圧値を制御して変化させることにより、載置された玩具20側のコイル位置に対応する検出エリアの位置座標群を検出するとともに、当該玩具20とのデータ通信を実行し、アンテナコイル42を介してIDコードを受信する。そして、入力パッド制御部44は、受信した玩具20のIDコードと、検出した位置座標群とを対応付けた載置状態情報を生成して、ゲーム装置10の処理部200に出力する。」

エ 「【0111】
さらに、例えば、操作対象キャラクタの攻撃タイミングにおける、入力パッド40上の2体の玩具20のそれぞれの載置向きに応じて、当該操作対象キャラクタの動作を制御することとしてもよい。
【0112】
この場合には、例えば、組合せ一覧テーブル440において、該当する2体の玩具20の載置向き条件と対応付けて、当該組合せに係る各操作対象キャラクタの動作パターンを定義する。戦闘制御部222は、入力パッド40から入力された載置状態情報に基づいて、当該2体の玩具20のそれぞれの載置向きを検出する。すなわち、戦闘制御部222は、図2に示して説明したように、玩具20に内蔵される4つのコイル210の配置位置関係を認識することにより、玩具20の向きを検出する。具体的には、戦闘制御部222は、載置状態履歴情報420を参照し、2体の玩具20のIDコードに対応付けられた位置座標群に基づいて各玩具20に内蔵されるコイル210の配置位置関係を認識し、各玩具20の向きを検出する。そして、戦闘制御部222は、検出した2体の玩具20のそれぞれの載置向きが上記した載置向き条件と合致する場合に、当該組合せに係る各操作対象キャラクタを、該当する載置向き条件と対応付けられた動作パターンに従って動作させる。これによれば、入力パッド40上に2体の玩具20を組合せて載置した場合に、その載置向きの関係に応じて、当該組合せに係る操作対象キャラクタの動作を制御することができる。」

オ 「【図1】



カ 「【図2】


(2)上記(1)から、引用文献3(引用文献A)には次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
「家庭用ゲーム機であって、
ゲーム機本体1に入力パッド40が接続されており、
入力パッド40は、検出エリア(載置検知可能領域)E内の位置等を指定する形象物としての玩具20と組合せて入力装置(入力システム)として使用される、いわゆるタブレットであり、
入力パッド40内部には、多数のループコイルが網の目状に配列され、入力パッド40上に玩具20が載置されると、当該玩具20に内蔵される同調回路の同調により、玩具20の備えるコイルから電波が送出され、ループコイルには送信回路から受信回路に切り替えられた時点で電圧が誘起され、これを受信回路が検出することにより、入力パッド40は、どのループコイル上に玩具20が載置されているかを判断し、
電圧が誘起された入力パッド40側のループコイルを検出することで、玩具20の向きを検出することができ、玩具20の備える台座20a内に内蔵される4つのコイル210の位置関係を認識することで、認識したコイル210の位置関係に基づいて、玩具20の向きを検出することができ、
玩具20は、入力パッド40から送信される電波に応答して識別信号を生成して入力パッド40に送信し、入力パッド40は、受信した識別信号により入力パッド40上に載置された玩具20を識別し、
入力パッド40は、3×2の桝目状に分割され、各桝目内にはそれぞれ1体の玩具20を載置することができ、戦闘エリアは、入力パッド20の検出エリアEと対応付けて設定される自戦闘エリアE10を備え、プレーヤは、手持ちの玩具20の内、2体の玩具20を選択して検出エリアEの所望の桝目内にそれぞれ載置し、
玩具20は、コイル210と、玩具側IC250とを備えて構成され、コイル210は、入力パッド40のアンテナコイル42と電磁誘導により交信するためのものであり、巻線コイル等により構成され、玩具側IC250は、IDコードをコイル210を介して入力パッド40へ送信し、IDコードは、玩具20を特定するための情報であり、
入力パッド40は、コイル部としてのアンテナコイル42と、入力パッド制御部44とを備えて構成され、入力パッド制御部44は、アンテナコイル42に流す電流量及び電圧値を制御して変化させることにより、載置された玩具20側のコイル位置に対応する検出エリアの位置座標群を検出するとともに、当該玩具20とのデータ通信を実行し、アンテナコイル42を介してIDコードを受信し、そして、入力パッド制御部44は、受信した玩具20のIDコードと、検出した位置座標群とを対応付けた載置状態情報を生成して、ゲーム装置10の処理部200に出力し、
入力パッド40上の2体の玩具20のそれぞれの載置向きに応じて、当該操作対象キャラクタの動作を制御することとしてもよく、2体の玩具20のIDコードに対応付けられた位置座標群に基づいて各玩具20に内蔵されるコイル210の配置位置関係を認識し、各玩具20の向きを検出し、そして、検出した2体の玩具20のそれぞれの載置向きが上記した載置向き条件と合致する場合に、当該組合せに係る各操作対象キャラクタを、該当する載置向き条件と対応付けられた動作パターンに従って動作させる、家庭用ゲーム機。」

第6 当審拒絶理由1について(引用発明1との対比・判断)
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明1とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明1の「媒体201」と本願発明1の「情報記憶媒体」とは、「媒体」である点で共通しており、引用発明1の「タブレットコンピュータ」、「情報入力システム」は、それぞれ、本願発明1の「情報処理装置」、「情報処理システム」に相当する。
また、引用発明1の「情報処理手段301」は、「タブレットコンピュータ内」の構成であるから、「タブレットコンピュータ」が「備え」る構成である。そして、引用発明1の「タッチパネル101」も同様に、「タブレットコンピュータ」が「備え」る構成であることが明らかである。

(イ)引用発明1は、「タッチパネル101に載置された媒体201をユーザーがタッチすることにより、媒体の位置、方向およびコード情報を情報処理手段301に認識させる」ものであるところ、「タッチパネル101に載置された媒体201をユーザーがタッチする」ことによる「媒体の位置」等の「認識」は、「媒体201」が「載置され」る「所定面に対する物体の接触位置を検出する」、「静電容量方式」の「タッチパネル101」の機能を利用したものであることが明らかである。

(ウ)引用発明1の「コード情報」は、「タッチパネル101に載置された媒体201をユーザーがタッチすることにより」、「情報処理手段301に認識させる」ものであるところ、引用発明1の「コード情報」を「認識」することと、本願発明1の「情報記憶媒体」から「情報を読み出す」こととは、「媒体に関する情報」を「得る」ことである点で共通する。また、「情報処理手段301」は、当該情報の「情報取得部」を備えるといえ、「情報処理手段301」は「タブレットコンピュータ内」の構成であるから、この点は、換言すれば「タブレットコンピュータ」は「情報取得部」を備えるということである。

(エ)引用発明1の「媒体」の「方向」は、「タッチパネル101に載置された媒体201をユーザーがタッチすることにより」、「情報処理手段301に認識させる」ものであるところ、「方向」を「認識」することは、本願発明1の「向き」を「検出」することに相当し、引用発明1の「情報処理手段301」は、「向き検出部」を備える、換言すれば、「タブレットコンピュータ」は「向き検出部」を備えるといえる。

(オ)引用発明1の「タッチパネル座標系における座標値を媒体座標系の座標値へと変換する」際の「演算処理」で用いられる「タッチパネルの座標系におけるY方向と媒体の座標系におけるy方向とのなす角度」は、「キャリブレーション」において「情報処理手段301に認識させ」た「媒体」の「方向」として得られるものであることが明らかである。
そうすると、引用発明1の「媒体座標系における座標値と対応付けられた処理であって、媒体座標系における「購入」と印刷された領域の座標をユーザーがタッチ操作により入力したときは、情報処理手段301はユーザーが選択した商品を購入する手続を開始する処理」は、(タッチパネル座標系における座標値を媒体座標系の座標値へと変換する処理を含むことから)「媒体」の「方向」及び「ユーザーの指先でのタッチ位置」を用いて行う処理であるといえる。また、「情報処理手段301」は、当該処理を行う「情報処理部」を備える、換言すれば、「タブレットコンピュータ」は当該処理を行う「情報処理部」を備えるといえる。
そして、「ユーザーの指先でのタッチ位置」は、本願発明1の「前記タッチパネルによって検出された接触位置」に相当する。

イ したがって、本願発明1と引用発明1とは以下の点で一致する。
(一致点)
「媒体および情報処理装置を含む情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
所定面に対する物体の接触位置を検出するタッチパネルと、
前記媒体に関する情報を得る情報取得部と、
前記媒体の向きを検出する向き検出部と、
前記媒体の向きおよび前記タッチパネルによって検出された接触位置を用いて、所定の処理を行う情報処理部とを備える、
情報処理システム。」

ウ また、本願発明1と引用発明1とは以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1では、媒体が「情報記憶媒体」であるのに対し、引用発明1では、「媒体201」が「情報記憶媒体」と特定されるものではない点。

(相違点2)
本願発明1では、「情報処理装置」が、「情報記憶媒体と近距離無線通信を行う」ものであって「少なくとも1つのアンテナコイル」を備えるものであり、また、「物体の接触位置を検出する」、「タッチパネル」の「所定面」が「前記アンテナコイル近傍に設けられた」ものであり、「情報取得部」が、「前記アンテナコイルを介して、前記情報記憶媒体と近距離無線通信を行うことによって、当該アンテナコイルに近接した当該情報記憶媒体から情報を読み出す」ものであるのに対し、
引用発明1では、「タブレットコンピュータ」が、当該「タブレットコンピュータ内の情報処理手段301」において、「タッチパネル101に載置された媒体201をユーザーがタッチすることにより」、「コード情報を情報処理手段301に認識させる」ことを行うものであって、「情報記憶媒体と近距離無線通信を行う」ものではなく、「少なくとも1つのアンテナコイル」を備えるものでもなく、「コード情報」を得るために、それを「当該アンテナコイルに近接した当該情報記憶媒体」から「読み出す」ものでもない点。

(相違点3)
本願発明1の「情報処理部」により実行される「所定の処理」は、「前記情報記憶媒体から読み出された情報並びに当該情報記憶媒体の向きおよび前記タッチパネルによって検出された接触位置」を用いて行うものであるのに対し、
引用発明1の「タブレットコンピュータ内の情報処理手段301」により実行される「媒体座標系における座標値と対応付けられた処理であって、媒体座標系における「購入」と印刷された領域の座標をユーザーがタッチ操作により入力したときは、情報処理手段301はユーザーが選択した商品を購入する手続を開始する処理」は、「媒体」の「方向」及び「ユーザーの指先でのタッチ位置」を用いて行うものではあるものの、「コード情報」を用いて行うものであるとは特定されない点。

(相違点4)
本願発明1の「情報記憶媒体」は、「前記向き検出部が当該情報記憶媒体の向きを検出可能な被検知部を備え」るものであるのに対し、引用発明1の「媒体201」は、そのような構成を備えるものではない点。

(相違点5)
本願発明1は、「前記向き検出部」が、「前記タッチパネルによって検出された接触位置を用いて前記被検知部が前記タッチパネルに接触する接触面形状またはサイズを算出し、当該接触面形状またはサイズに基づいて、当該被検知部を有する前記情報記憶媒体の向きを検出する」ものであるのに対し、
引用発明1は、「タッチパネル101に載置された媒体201をユーザーがタッチすることにより」、「媒体」の「方向」を「情報処理手段301に認識させる」ものである点。

(相違点6)
本願発明1では、媒体の個数が「3つ以上」であるとともに、「前記情報処理部」が行う「所定の処理」が、「前記3つ以上の情報記憶媒体毎の向きおよび前記タッチパネルによって検出された接触位置に基づいて、当該3つ以上の情報記憶媒体から前記所定の処理の対象となる2つの情報記憶媒体を選択し、当該対象となる2つの情報記憶媒体を用い」たものであるのに対し、
引用発明1では、処理対象の「媒体201」の個数が「3つ以上」であるとは特定されるものではなく、「媒体座標系における座標値と対応付けられた処理」が、「3つ以上」の「媒体201」から「2つ」を「選択」する等を含むと特定されるものでもない点。

(2)判断
事案に鑑みて、相違点6について先に検討する。
ゲーム装置等において、情報記憶媒体の個数を3つ以上として、各情報記憶媒体の向き及び位置の検出を行い、それらの検出結果に基づいて、当該3つ以上の情報記憶媒体から所定の処理の対象となる2つの情報記憶媒体を選択し、当該対象となる2つの情報記憶媒体を用いて当該所定の処理を行うことは、当審拒絶理由1で引用された引用文献1?4のいずれにも記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であったとも認められない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1?4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?18について
本願発明2?15は、本願発明1を減縮した発明である。
また、本願発明16?18は、それぞれ本願発明1に対応する「情報処理装置」、「情報処理プログラム」、「情報処理方法」の発明であって、いずれも、上記相違点6に係る本願発明1の構成に対応する発明特定事項を含む。
そうすると、本願発明2?18も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1?4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない

3 小括
以上のとおりであるから、当審拒絶理由1は解消した。

第7 当審拒絶理由2について
令和3年5月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1,16?18にはそれぞれ、「情報記憶媒体毎の向き」以外に、「タッチパネルによって検出された接触位置」にも基づいて、「所定の処理を行う」旨が記載されており、発明の詳細な説明の段落【0089】の記載のとおりのものとなっている。
したがって、当審拒絶理由2は解消した。

第8 原査定について(引用発明Aとの対比・判断)
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明Aとを対比すると、概略、以下のことがいえる。
(ア)引用発明Aの「玩具20」、「入力パッド40」、「家庭用ゲーム機」、「ループコイル」は、それぞれ、本願発明1の「情報記憶媒体」、「情報処理装置」、「情報処理システム」、「アンテナコイル」に相当する。

(イ)引用発明Aの「入力パッド40」は、その「内部」に「多数のループコイルが網の目状に配列され」、「入力パッド40上に玩具20が載置されると、当該玩具20に内蔵される同調回路の同調により、玩具20の備えるコイルから電波が送出され、ループコイルには送信回路から受信回路に切り替えられた時点で電圧が誘起され、これを受信回路が検出する」ものであり、また、「入力パッド40」は、「玩具20」が「入力パッド40から送信される電波に応答して識別信号を生成して入力パッド40に送信」することに対応して、「受信した識別信号により入力パッド40上に載置された玩具20を識別」するものである。
よって、引用発明Aの「入力パッド40」は、「玩具20」と「近距離無線通信を行う」ものであり、また、引用発明Aは、本願発明1における、「前記情報処理装置は」、「少なくとも1つのアンテナコイルと」、「前記アンテナコイルを介して、前記情報記憶媒体と近距離無線通信を行うことによって、当該アンテナコイルに近接した当該情報記憶媒体から情報を読み出す情報取得部と」を「備え」ることに相当する構成を有している。

(ウ)引用発明Aは、「電圧が誘起された入力パッド40側のループコイルを検出することで、玩具20の向きを検出することができ、玩具20の備える台座20a内に内蔵される4つのコイル210の位置関係を認識することで、認識したコイル210の位置関係に基づいて、玩具20の向きを検出することができ」ものであるから、引用発明Aの「家庭用ゲーム機」は、「認識したコイル210の位置関係」を用いて、「玩具20の向きを検出する」手段を含むものである。
ここで、「認識したコイル210の位置関係」は、本願発明1の「前記タッチパネルによって検出された接触位置」と、「位置に関する情報」である点で共通しており、「玩具20の向きを検出する」手段は、本願発明1の「向き検出部」と、「向き検出手段」である点で共通している。また、「4つのコイル210」は、本願発明1の「被検知部」に相当する。
よって、引用発明Aと本願発明1とは、「前記近距離無線通信可能な前記情報記憶媒体の向きを検出する向き検出手段」を備える点、及び、「前記情報記憶媒体は、前記向き検出手段が当該情報記憶媒体の向きを検出可能な被検知部を備え、前記向き検出手段は、位置に関する情報を用いて、当該被検知部を有する前記情報記憶媒体の向きを当該情報記憶媒体毎に検出」する点で共通している。

(エ)引用発明Aは、「プレーヤは、手持ちの玩具20の内、2体の玩具20を選択して検出エリアEの所望の桝目内にそれぞれ載置」するものであるとともに、「入力パッド40上の2体の玩具20のそれぞれの載置向きに応じて、当該操作対象キャラクタの動作を制御することとしてもよく、2体の玩具20のIDコードに対応付けられた位置座標群に基づいて各玩具20に内蔵されるコイル210の配置位置関係を認識し、各玩具20の向きを検出し、そして、検出した2体の玩具20のそれぞれの載置向きが上記した載置向き条件と合致する場合に、当該組合せに係る各操作対象キャラクタを、該当する載置向き条件と対応付けられた動作パターンに従って動作させる」ものである。
ここで、「当該組合せに係る各操作対象キャラクタを、該当する載置向き条件と対応付けられた動作パターンに従って動作させる」処理は、「玩具20」から「読み出された」「IDコード」及び「各玩具20の向き」を用いて行うものといえ、本願発明1の「所定の処理」に相当する。そして、引用発明Aの「家庭用ゲーム機」は、当該処理を行う情報処理手段を含むものである。
よって、引用発明Aと本願発明1とは、「前記情報記憶媒体から読み出された情報並びに当該情報記憶媒体の向きを用いて、所定の処理を行う情報処理手段」を備える点で共通している。

イ したがって、本願発明1と引用発明Aとは以下の点で一致する。
(一致点)
「情報記憶媒体および当該情報記憶媒体と近距離無線通信を行う情報処理装置を含む情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
少なくとも1つのアンテナコイルと、
前記アンテナコイルを介して、前記情報記憶媒体と近距離無線通信を行うことによって、当該アンテナコイルに近接した当該情報記憶媒体から情報を読み出す情報取得部とを備え、
前記近距離無線通信可能な前記情報記憶媒体の向きを検出する向き検出手段と、
前記情報記憶媒体から読み出された情報並びに当該情報記憶媒体の向きを用いて、所定の処理を行う情報処理手段とを備え、
前記情報記憶媒体は、前記向き検出手段が当該情報記憶媒体の向きを検出可能な被検知部を備え、
前記向き検出手段は、位置に関する情報を用いて、当該被検知部を有する前記情報記憶媒体の向きを当該情報記憶媒体毎に検出する、情報処理システム。」

ウ また、本願発明1と引用発明Aとは以下の点で相違する。
(相違点7)
本願発明1では、「情報処理装置」が、「前記アンテナコイル近傍に設けられた所定面に対する物体の接触位置を検出するタッチパネル」を備えるものであり、また、「所定の処理を行う」際に用いる「位置に関する情報」及び「当該被検知部を有する前記情報記憶媒体の向きを当該情報記憶媒体毎に検出する」際に用いる「位置に関する情報」が、いずれも「前記タッチパネルによって検出された接触位置」であって、「当該被検知部を有する前記情報記憶媒体の向き」の「検出」については、「前記タッチパネルによって検出された接触位置を用いて前記被検知部が前記タッチパネルに接触する接触面形状またはサイズを算出し、当該接触面形状またはサイズに基づいて」行うのに対し、
引用発明Aでは、「入力パッド40」は「タッチパネル」を備えるものではなく、「当該組合せに係る各操作対象キャラクタを、該当する載置向き条件と対応付けられた動作パターンに従って動作させる」処理を行う際に用いる「各玩具20に内蔵されるコイル210の配置位置関係」、及び、「玩具20の向きを検出する」際に用いる「認識したコイル210の位置関係」のいずれも、「前記タッチパネルによって検出された接触位置」ではなく、また、「玩具20の向きを検出」することを、「前記タッチパネルによって検出された接触位置を用いて前記被検知部が前記タッチパネルに接触する接触面形状またはサイズを算出し、当該接触面形状またはサイズに基づいて」行うものでもない点。

(相違点8)
本願発明1では、「向き検出部」及び「情報処理部」が、いずれも「前記情報処理装置」が備える構成であるのに対し、
引用発明Aでは、「玩具20の向きを検出する」手段及び「当該組合せに係る各操作対象キャラクタを、該当する載置向き条件と対応付けられた動作パターンに従って動作させる」処理を行う手段を「家庭用ゲーム機」が備えるものの、それらが「入力パッド40」が備える構成であると特定されるものではない点。

(相違点9)
本願発明1では、「情報処理部」が行う「所定の処理」が、「前記情報記憶媒体から読み出された情報並びに当該情報記憶媒体の向き」に加えて「検出された接触位置」を用いて行うものであるとともに、媒体の個数が「3つ以上」であって、「前記情報処理部は、前記3つ以上の情報記憶媒体毎の向きおよび前記タッチパネルによって検出された接触位置に基づいて、当該3つ以上の情報記憶媒体から前記所定の処理の対象となる2つの情報記憶媒体を選択し、当該対象となる2つの情報記憶媒体を用いて当該所定の処理を行う」のに対し、
引用発明Aでは、「当該組合せに係る各操作対象キャラクタを、該当する載置向き条件と対応付けられた動作パターンに従って動作させる」処理は、「玩具20」の「位置」を用いて行うと特定されるものではなく、また、処理対象の「玩具20」の個数が「3つ以上」であると特定されるものではなく、「当該組合せに係る各操作対象キャラクタを、該当する載置向き条件と対応付けられた動作パターンに従って動作させる」処理が、「3つ以上」の「玩具20」から「2つ」を「選択」する等を含むと特定されるものでもない点。

(2)判断
ア そこで、まず相違点7について検討する。
引用発明Aでは、入力パッド40の「アンテナコイル42」(「ループコイル」)は、「載置された玩具20側のコイル位置に対応する検出エリアの位置座標群を検出する」ことと、「当該玩具20とのデータ通信を実行し」、「IDコードを受信」することとの両方に用いられるもの、すなわち、「玩具20」の位置検出の用途及び「玩具20」とのデータ通信の用途を兼ねるものである。
一方、引用発明Bにおいて、「装置100」は、「ゲーム用駒を識別してそれらの位置を決定するだけでなく、駒の向きを決定することもでき」るものであり、その「ハードウェア部」において、「対象物102のような対象物またはユーザの指もしくは手が、センサアレイ203上に配置され」、「センサアレイ203」が、「その上に位置する少なくとも1つの対象物102に関する情報を検出」し、「センサアレイ203は透明であり、センサアレイ203はLCDディスプレイのようなディスプレイの上に載置され、このディスプレイは、ゲーム盤のみならず、対象物102の移動に応答する様々な情報をも示すように構成することができる」ものであるから、「センサアレイ203」及び「ディスプレイ」は、「所定面に対する物体」(例えば「ゲーム用駒」である「対象物102」や、「ユーザの指もしくは手」)の「接触位置を検出する」ことが可能な「タッチパネル」を構成しているといえる。
しかしながら、位置検出の用途及びデータ通信の用途を兼ねる引用発明Aの「アンテナコイル42」に関して、「玩具20」の位置検出については、引用発明Bを適用して、「アンテナコイル42」を用いることに代えて、引用発明Bの所定面に対する物体の接触位置を検出することが可能なタッチパネルを用いて検出を行うように変更し、その一方で、「玩具20」とのデータ通信については、それのみを「アンテナコイル42」を用いて行うように変更することの動機付けが存在するということはできない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献A,Bに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない(もっとも、上記第6の1(2)で相違点6について述べた点が概ね相違点9にも当てはまり、この点からも、本願発明1は容易に発明をすることができたものではない。)。

2 本願発明2?18について
本願発明2?15は、本願発明1を減縮した発明である。
また、本願発明16?18は、それぞれ本願発明1に対応する「情報処理装置」、「情報処理プログラム」、「情報処理方法」の発明であって、いずれも、相違点7に対応する発明特定事項を含む。
そうすると、本願発明2?18も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献A,Bに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
以上のとおりであるから、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-06-15 
出願番号 特願2014-193448(P2014-193448)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原 秀人  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 林 毅
富澤 哲生
発明の名称 情報処理システム、情報処理装置、情報処理プログラム、および情報処理方法  
代理人 寺本 亮  
代理人 石原 盛規  
代理人 小沢 昌弘  

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