• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04H
管理番号 1374885
異議申立番号 異議2019-700728  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-12 
確定日 2021-04-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6487795号発明「機械式駐車設備の安全確認装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6487795号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6487795号の請求項1ないし5及び7に係る特許を維持する。 特許第6487795号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6487795号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成27年7月3日に出願され、平成31年3月1日にその特許権の設定登録がされ、同月20日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。

令和1年 9月12日 特許異議申立人川股くみ子(以下「申立人」と
いう。)による請求項1ないし7に係る発明の
特許に対する特許異議の申立て
同年11月19日付け 取消理由通知
令和2年 1月22日 意見書及び訂正請求書の提出
同年 2月 3日付け 訂正拒絶理由通知
同年 3月 5日 意見書及び手続補正書の提出
同年 4月16日 申立人による意見書の提出
同年 9月25日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年11月16日 意見書及び訂正請求書の提出
令和3年 1月 8日 申立人による意見書の提出

なお、令和2年11月16日に訂正の請求がなされたので、令和2年1月22日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
令和2年11月16日提出の訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし7について訂正することを求めるものであり、その内容は次のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記機械式駐車設備の認定取扱者を登録者として記憶する制御装置と、
前記機械式駐車設備の操作時に前記登録者が認証する認証装置と、
前記入出庫部内の安全確認を行った後に操作する安全確認操作部と、
前記機械式駐車設備を運転操作する運転盤と、を備え、
前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に行う利用者の第1認証を前記登録者の認証データと照合し、該第1認証が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放するとともに、前記運転盤による運転操作をロックし、
前記安全確認操作部が操作された後、前記入出庫扉を閉鎖する前に行う利用者の第2認証を前記登録者の認証データと照合し、該第2認証が前記認証データに含まれていることで前記第1認証の認証データと一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除して入出庫扉を閉鎖可能に制御するように構成されている」と記載されているのを、
「前記機械式駐車設備の認定取扱者を、登録者の認証データとして記憶する制御装置と、
前記機械式駐車設備の操作時に利用者の認証を行う認証装置と、
前記入出庫部内の安全確認を行った後に操作する安全確認操作部と、
前記機械式駐車設備を運転操作する運転盤と、を備え、
前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第1認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放するとともに、前記運転盤による運転操作をロックし、
前記安全確認操作部が操作された後、前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第2認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれていることで前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御するように構成されている」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?7も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に、
「前記安全確認操作部は、該安全確認操作部の有効状態又は無効状態を示す明示機能を有している、請求項1?6のいずれか1項に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。」と記載されているのを、
「前記安全確認操作部は、該安全確認操作部の有効状態又は無効状態を示す明示機能を有している、請求項1?5のいずれか1項に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。」に訂正する。

(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0011】に記載された
「上記目的を達成するために、本発明は、利用者が入出庫部において車両の入出庫を行う機械式駐車設備の安全確認装置であって、前記機械式駐車設備の認定取扱者を登録者として記憶する制御装置と、前記機械式駐車設備の操作時に前記登録者が認証する認証装置と、前記入出庫部内の安全確認を行った後に操作する安全確認操作部と、前記機械式駐車設備を運転操作する運転盤と、を備え、前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に行う利用者の第1認証を前記登録者の認証データと照合し、該第1認証が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放するとともに、前記運転盤による運転操作をロックし、前記安全確認操作部が操作された後、前記入出庫扉を閉鎖する前に行う利用者の第2認証を前記登録者の認証データと照合し、該第2認証が前記認証データに含まれていることで前記第1認証の認証データと一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除して入出庫扉を閉鎖可能に制御するように構成されている。」を、
「上記目的を達成するために、本発明は、利用者が入出庫部において車両の入出庫を行う機械式駐車設備の安全確認装置であって、前記機械式駐車設備の認定取扱者を、登録者の認証データとして記憶する制御装置と、前記機械式駐車設備の操作時に利用者の認証を行う認証装置と、前記入出庫部内の安全確認を行った後に操作する安全確認操作部と、前記機械式駐車設備を運転操作する運転盤と、を備え、前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第1認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放するとともに、前記運転盤による運転操作をロックし、前記安全確認操作部が操作された後、前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第2認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれていることで前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御するように構成されている。」に訂正する。

(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0012】に記載された
「この構成により、認定取扱者による第1認証と、入出庫部内での安全確認操作部の操作後に行う入出庫部外における認定取扱者による第2認証とによって入出庫が行われるので、取扱者として教育を受けていない者による運転盤の操作を防ぐことができる。」を
「この構成により、認定取扱者についての第1認証と、入出庫部内での安全確認操作部の操作後に行う入出庫部外における認定取扱者についての第2認証とによって入出庫が行われるので、認定取扱者として教育を受けていない者による運転盤の操作を防ぐことができる。」に訂正する。

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0017】を削除する。

(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0021】に記載された
「また、認定取扱者の認証を、「暗証番号」とした例で説明する。」を
「また、認定取扱者の認証を、「暗証番号」を用いて行う例で説明する。」に訂正する。

(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0025】に記載された
「暗証番号の他、認定取扱者として認定されて登録された時に付与される認証手段によって第1認証及び第2認証が行われる。この第1認証及び第2認証の認証手段は」を
「暗証番号の他、認定取扱者として認定されて登録されたときに付与される認証情報によって第1認証及び第2認証が行われる。この第1認証及び第2認証は」
に訂正する。

(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0038】に記載された
「(暗証番号(第1認証)が認証データに含まれる)」を
「(暗証番号(認証情報)が認証データに含まれる)」に訂正する。

(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0040】に記載された
「ステップ(SA2)で第1認証が認証データに含まれることを確認しているので」を
「ステップ(SA2)で第1認証のときの暗証番号が認証データに含まれることを確認しているので」に訂正する。

(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0044】に記載された
「その後、運転盤7にて第2認証となる「暗証番号」を入力する(SA18)。」を
「その後、運転盤7にて第2認証のための「暗証番号」を入力する(SA18)。」に訂正する。

(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0049】に記載された
「このように、車両Vを入庫する場合、空のパレット6を呼ぶための第1認証となる「暗証番号」の入力と、車両Vの入庫後に入出庫扉5を閉めるための第2認証となる「暗証番号」の入力とを行うが、これらの認証は、「暗証番号」が認定取扱者として登録されている利用者(登録者)の「暗証番号」のいずれかであれば、両認証が一致することを照合することなく運転盤7による運転操作のロック解除を可能としている。」を
「このように、車両Vを入庫する場合、空のパレット6を呼ぶための第1認証用の「暗証番号」の入力と、車両Vの入庫後に入出庫扉5をしめるための第2認証用の「暗証番号」の入力とを行うが、これらの認証は、「暗証番号」が認定取扱者として登録されている利用者(登録者)の「暗証番号」のいずれかであれば、両暗証番号が一致することを照合することなく運転盤7による運転操作のロック解除を可能としている。」に訂正する。

(13)訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0052】に記載された
「暗証番号(第1認証)が認証データに含まれる」を
「暗証番号(認証情報)が認証データに含まれる」に訂正する。

(14)訂正事項14
願書に添付した明細書の段落【0054】に記載された
「ステップ(SB2)で第1認証が認証データに含まれることを確認しているので」を
「ステップ(SB2)で第1認証のときの暗証番号が認証データに含まれることを確認しているので」に訂正する。

(15)訂正事項15
願書に添付した明細書の段落【0058】に記載された
「その後、運転盤7にて第2認証となる「暗証番号」を入力する(SB18)。」を
「その後、運転盤7にて第2認証のための「暗証番号」を入力する(SB18)。」に訂正する。

(16)訂正事項16
願書に添付した明細書の段落【0063】に記載された
「このように、車両Vを出庫する場合も、出庫するパレット6を呼ぶための第1認証となる「暗証番号」の入力と、車両Vの出庫後に入出庫扉5を閉めるための第2認証となる「暗証番号」の入力とを行うが、これらの認証は、「暗証番号」が認定取扱者として登録されている利用者(登録者)の「暗証番号」のいずれかであれば、両認証が一致することを照合することなく運転盤7の操作を可能としている。」を
「このように、車両Vを出庫する場合も、出庫するパレット6を呼ぶための第1認証用の「暗証番号」の入力と、車両Vの出庫後に入出庫扉5を閉めるための第2認証用の「暗証番号」の入力とを行うが、これらの認証は、「暗証番号」が認定取扱者として登録されている利用者(登録者)の「暗証番号」のいずれかであれば、両暗証番号が一致することを照合することなく運転盤7の操作を可能としている。」に訂正する。

(17)訂正事項17
願書に添付した明細書の段落【0067】に記載された
「入出庫後に駐車塔2の外部で入出庫扉5を閉じる前に行う第2認証とを、それぞれ操作権限を与えられた認定取扱者(登録者)が行っているか否かを認証するようにしている。」を
「入出庫後に駐車塔2の外部で入出庫扉5を閉じる前に行う第2認証とにおいて、それぞれ操作権限を与えられた認定取扱者(登録者)が操作を行っているか否かを認証するようにしている。」に訂正する。

(18)訂正事項18
願書に添付した明細書の段落【0070】に記載された
「その上、認定取扱者であれば、第1認証と第2認証とを照合することなく異なる場合でも運転盤7の操作ができるため、先の利用者による入出庫扉5の閉め忘れが生じた場合、管理者や他の認定取扱者が第2認証を行って入出庫扉5を閉めることができるので、次の入出庫作業へと迅速に進むことが可能となる。」を
「その上、認定取扱者であれば、第1認証のときの認証情報と第2認証のときの認証情報とを照合することなく異なる場合でも運転盤7の操作ができるため、先の利用者による入出庫扉5の閉め忘れが生じた場合、管理者や他の認定取扱者が第2認証操作を行って入出庫扉5を閉めることができるので、次の入出庫作業へと迅速に進むことが可能となる。」に訂正する。

(19)訂正事項19
願書に添付した明細書の段落【0071】に記載された
「なお、上記した実施形態では、認定取扱者の認証を「暗証番号」としているが、IDカードの登録データ、IDリモコンの信号、などでもよく」を
「なお、上記した実施形態では、認定取扱者の認証を「暗証番号」を用いて行っているが、IDカードの登録データ、IDリモコンの信号、などを用いて行ってもよく」に訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正の目的について
(ア)訂正事項1のうち、訂正前の
「前記機械式駐車設備の認定取扱者を登録者として記憶する制御装置と、
前記機械式駐車設備の操作時に前記登録者が認証する認証装置と、
前記入出庫部内の安全確認を行った後に操作する安全確認操作部と、
前記機械式駐車設備を運転操作する運転盤と、を備え、
前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に行う利用者の第1認証を前記登録者の認証データと照合し、該第1認証が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放するとともに、前記運転盤による運転操作をロックし、」を、
「前記機械式駐車設備の認定取扱者を、登録者の認証データとして記憶する制御装置と、
前記機械式駐車設備の操作時に利用者の認証を行う認証装置と、
前記入出庫部内の安全確認を行った後に操作する安全確認操作部と、
前記機械式駐車設備を運転操作する運転盤と、を備え、
前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第1認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放するとともに、前記運転盤による運転操作をロックし、」とする訂正事項(以下「訂正事項1-1」という。)に係る訂正は、訂正前の「認証」が、請求項1の「前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に行う第1認証」との記載からみると、何らかの処理を行うこと意味すると解される一方、請求項1の「利用者の第1認証を前記登録者の認証データと照合し」及び「該第1認証が前記認証データに含まれる場合に」との記載から見ると、「認証データと照合」され、「認証データに含まれる」ものであるから、何らかのデータであるとも解され、一意に解することができず明確でなかったものを、「認証データ」、「利用者」、「認証情報」及び「第1認証」の関係を整理することにより「認証」及び「第1認証」が処理であることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項1-1に係る訂正は、訂正前の「前記機械式駐車設備の操作時に前記登録者が認証する認証装置」についても、主体との関係で「認証する」がいかなる行為を特定するのかが不明であったものを、「前記機械式駐車設備の操作時に利用者の認証を行う認証装置」と訂正することで「認証を行う」主体が「認証装置」であることを明らかにし、以て、「認証する」がいかなる行為であるのかを明確にするものであるから、この点においても、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。

(イ)訂正事項1のうち、訂正前の
「前記安全確認操作部が操作された後、前記入出庫扉を閉鎖する前に行う利用者の第2認証を前記登録者の認証データと照合し、該第2認証が前記認証データに含まれていることで前記第1認証の認証データと一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除して入出庫扉を閉鎖可能に制御する」を、
「前記安全確認操作部が操作された後、前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第2認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれていることで前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御する」とする訂正事項(以下「訂正事項1-2」という。)に係る訂正は、上記「(ア)」のとおり、訂正事項1-1に係る訂正によって「第1認証」を処理であると整理したことに合わせて、「第2認証」が「第1認証」と同様に「利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する」処理であることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項1-2に係る訂正は、訂正前の「前記運転盤による運転操作のロックを解除して入出庫扉を閉鎖可能に制御する」との事項が、「前記運転盤による運転操作のロックを解除」するよう「制御する」とも、「前記運転盤による運転操作のロックを解除……可能に制御する」とも解され、一意に解することができず明確でなかったものを、「前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に……制御する」ものであることを明確にするものであるから、この点においても、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。

(ウ)そうすると、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(ア)本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)には、「認証データ」、「利用者」、「認証情報」及び「第1認証」等に関連して以下の記載がある。

a.「制御装置8には、機械式駐車設備1の取扱いに関し、教育・訓練を受けて管理責任者から操作権限を与えられた認定取扱者が登録者として記憶されている。また、運転盤7は、認証装置も兼ねている。」(段落【0022】)

b.「まず、利用者が運転盤7において「暗証番号」を入力すると(SA1)、この入力された暗証番号が制御装置8に登録されている認定取扱者(登録者)の暗証番号に含まれる(暗証番号(第1認証)が認証データに含まれる)か否かが判断(認証)される(SA2)。」(段落【0038】)

c.「上記第1認証で、暗証番号から登録者であることが認証された場合、運転盤7の画面に、例えば「スタートボタンを押してください」と表示される(SA4)。そして、利用者がスタートボタンを押すと(SA5)、スタートボタンが押されたことを検知し(SA6)、機械が起動する(SA7)。この機械起動により、暗証番号に紐付けられた収容車のサイズに適合する空のパレット6が呼ばれる。」(段落【0039】)

d.「空のパレット6が入出庫部3に到着すると、ステップ(SA2)で第1認証が認証データに含まれることを確認しているので、自動的に入出庫扉5が開放する(SA8)。その後、利用者が車両Vを入庫させ(SA9)、利用者が車両Vから降りて、入出庫部3(駐車塔2の内部)の無人を確認する(SA10)。この時、運転盤7は、操作機能ロック(無効)の状態であり、運転盤7には「操作ロック中、塔内の無人を確認し、安全確認入力を行ってください」と表示(放送でもよい)されている(SA11)。」(段落【0040】)

e.「その後、運転盤7にて第2認証となる「暗証番号」を入力する(SB18)。そして、この「暗証番号」は、予め制御装置8に登録された認定取扱者の暗証番号に含まれるか否かが判断(認証)される(SB19)。この暗証番号入力(2)による認証が、第2認証である。入力された暗証番号が登録されていない場合、運転盤7に「有効な暗証番号ではありません。入力しなおしてください」と表示されて(SB20)、暗証番号入力待ちの状態に戻る。なお、入力しなおしの回数や認証が成功するまでの時間を所定値に制限し、これを超えるとステップ(SB11)に戻るなどの制御を加えることができる。」(段落【0058】)

f.「一方、入力された暗証番号が認定取扱者として登録されている番号の場合には、何も表示しないか、必要に応じて「最終確認ボタンを押してください」などの表示が行なわれ、利用者が最終確認ボタン22を押すと(SB21)、制御装置8は、最終確認ボタン22が押されたことを検知する(SB22)。ここで、運転操作のロックが解除される。ただし、後述のように最終確認ボタンを省略する場合、(SB19)の判定がYESとなった時点で運転操作のロックが解除される。その後、利用者が運転盤7の「扉閉ボタン」を押すと(SB23)、制御装置8は扉閉ボタンが押されたことを検知して(SB24)、入出庫扉5が閉じられる(SB25)。」(段落【0059】)

g.「このように、車両Vを出庫する場合も、出庫するパレット6を呼ぶための第1認証となる「暗証番号」の入力と、車両Vの出庫後に入出庫扉5を閉めるための第2認証となる「暗証番号」の入力とを行うが、これらの認証は、「暗証番号」が認定取扱者として登録されている利用者(登録者)の「暗証番号」のいずれかであれば、両認証が一致することを照合することなく運転盤7の操作を可能としている。」(段落【0063】)

(イ)上記「(ア)a.ないしg.」の記載によれば、「暗証番号(第1認証)が認証データに含まれる」こと(段落【0038】)、及び、「制御装置8」には「操作権限を与えられた認定取扱者が登録者として記憶されている」(段落【0022】)とともに、「認定取扱者(登録者)の暗証番号」が登録されていること(段落【0038】)が理解できるから、本件特許明細書には、「前記機械式駐車設備の認定取扱者を、登録者の認証データとして記憶する制御装置」が記載されているといえる。
また、さらに「運転盤7は、認証装置も兼ねている」こと(段落【0022】)、「利用者が運転盤7において「暗証番号」を入力すると(SA1)、この入力された暗証番号が制御装置8に登録されている認定取扱者(登録者)の暗証番号に含まれる(暗証番号(第1認証)が認証データに含まれる)か否かが判断(認証)される(SA2)」(段落【0038】)ことが理解できるから、本件特許明細書には、「前記機械式駐車設備の操作時に利用者の認証を行う認証装置」が記載されているといえる。
また、さらに「第1認証で、暗証番号から登録者であることが認証された場合」(段落【0039】)、「空のパレット6が入出庫部3に到着すると、ステップ(SA2)で第1認証が認証データに含まれることを確認しているので、自動的に入出庫扉5が開放する(SA8)」(段落【0040】)ことが理解できるから、本件特許明細書には、「前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第1認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放する」ことが記載されているといえる。
また、さらに「運転盤7にて第2認証となる「暗証番号」を入力する(SB18)」と、「この「暗証番号」は、予め制御装置8に登録された認定取扱者の暗証番号に含まれるか否かが判断(認証)される(SB19)」こと(以上、段落【0058】)、「入力された暗証番号が認定取扱者として登録されている番号の場合には」、「利用者が最終確認ボタン22を押すと(SB21)」、「運転操作のロックが解除され」、「利用者が運転盤7の「扉閉ボタン」を押すと(SB23)」、「入出庫扉5が閉じられる(SB25)」こと(以上、段落【0059】)、及び、「車両Vを出庫する場合も、出庫するパレット6を呼ぶための第1認証となる「暗証番号」の入力と、車両Vの出庫後に入出庫扉5を閉めるための第2認証となる「暗証番号」の入力とを行うが、これらの認証は、「暗証番号」が認定取扱者として登録されている利用者(登録者)の「暗証番号」のいずれかであれば、両認証が一致することを照合することなく運転盤7の操作を可能としている」こと(段落【0063】)が理解できるから、本件特許明細書には、「前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第2認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれていることで前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御する」ことが記載されているといえる。

(ウ)そうすると、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。

(エ)また、訂正事項1は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(オ)したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
そうすると、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3
訂正事項3に係る訂正は、請求項7が択一的に引用する請求項1ないし6のうち、請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
そうすると、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4ないし19
ア.訂正の目的について
訂正事項4に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
訂正事項6に係る訂正は、訂正事項2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
訂正事項5及び7ないし19に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正により、特許請求の範囲における「認証データ」、「利用者」、「認証情報」及び「第1認証」等の関係が整理されたことに伴い、明細書に記載された「認証データ」、「利用者」、「認証情報」及び「第1認証」や、これらに関連する「第2認証」、「暗証番号」及び「認証手段」等の事項について、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
そうすると、訂正事項4ないし19に係る訂正は、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1については上記「(1)イ.」において、また、訂正事項2については上記「(2)イ.」において、それぞれ検討したとおりであるところ、訂正事項4ないし19に係る訂正は、訂正事項1及び2に係る訂正によって訂正された特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、訂正事項1及び2と同様に、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
そうすると、訂正事項4ないし19に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1ないし7は、請求項2ないし7がそれぞれ請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし7に対応する訂正後の請求項1ないし7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、訂正事項1ないし19に係る訂正は、本件訂正前の請求項1ないし7に関係する訂正であるから、本件訂正請求は一群の請求項ごとにされたものである。

(6)小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び明細書のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正特許発明

上記「第2」のとおり本件訂正は認められるから、本件訂正請求により訂正された請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正特許発明1」ないし「本件訂正特許発明7」といい、これらを合わせて「本件訂正特許発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
利用者が入出庫部において車両の入出庫を行う機械式駐車設備の安全確認装置であって、
前記機械式駐車設備の認定取扱者を、登録者の認証データとして記憶する制御装置と、
前記機械式駐車設備の操作時に利用者の認証を行う認証装置と、
前記入出庫部内の安全確認を行った後に操作する安全確認操作部と、
前記機械式駐車設備を運転操作する運転盤と、を備え、
前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第1認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放するとともに、前記運転盤による運転操作をロックし、
前記安全確認操作部が操作された後、前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第2認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれていることで前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御するように構成されている、ことを特徴とする機械式駐車設備の安全確認装置。
【請求項2】
前記安全確認操作部は、前記利用者が操作する安全確認ボタン、IDカード確認器、IDリモコン確認器、のいずれかを含んでいる、請求項1に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。
【請求項3】
前記安全確認操作部は、前記入出庫部内を見渡せる位置に配置されている、請求項1又は2に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。
【請求項4】
前記安全確認操作部は、前記入出庫部で入出庫する車両の少なくとも左位置と右位置とにそれぞれ配置されている、請求項1?3のいずれか1項に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。
【請求項5】
前記安全確認操作部は前記入出庫部内に配置され、
前記制御装置は、前記安全確認操作部を操作後、所定時間を経過するまで前記入出庫部内の物体を検知するセンサを無効とするように構成されている、請求項1?4のいずれか1項に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記安全確認操作部は、該安全確認操作部の有効状態又は無効状態を示す明示機能を有している、請求項1?5のいずれか1項に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。」

第4 特許異議申立理由の概要及び証拠

1.特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として、以下の「2.」に示す各甲号証(以下、各甲号証を「甲1」等、各甲号証に係る発明を「甲1発明」等ということがある。)を申立書及び令和2年4月16日提出の意見書に添付して提出している(以下では、本件訂正前の請求項1ないし7に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」という。)。

(1)本件特許発明1ないし4、6及び7は、甲1発明及び甲2に記載されている事項から、または、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載されている事項から、当業者が容易に想到できたものであり、本件特許発明5は、甲1発明、甲2に記載されている事項及び周知技術(甲第4号証、甲第5号証)から、または、甲1発明、甲2及び甲3に記載されている事項並びに周知技術(甲第4号証、甲第5号証)から、当業者が容易に想到できたものであるから、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第2項に違反して特許されたものである。

(2)本件特許発明1ないし7は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、本件特許発明1ないし7は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反して特許されたものである。

(3)本件特許発明1ないし7は、明確でなく、本件特許発明1ないし7は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものである。

2.証拠方法
(1)申立書に添付して提出された証拠方法
甲第1号証:特開2014-139401号公報
甲第2号証:特開2015-48595号公報
甲第3号証:特開2015-117470号公報
甲第4号証:特開平8-93255号公報
甲第5号証:特開2014-80735号公報

(2)令和2年4月16日提出の意見書に添付して提出された証拠方法
甲第6号証:公益社団法人立体駐車場工業会、機械式駐車装置の安全機能に関する認証基準、平成26年12月5日
甲第7号証:特開2006-307495号公報

第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
令和2年9月25日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は以下のとおりである。

本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし7の記載は、以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)本件訂正前の請求項1の「前記機械式駐車設備の操作時に前記登録者が認証する認証装置と、……前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に行う利用者の第1認証を前記登録者の認証データと照合し、該第1認証が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放するとともに、前記運転盤による運転操作をロックし、」との記載は、「認証する」及び「第1認証」が処理を意味するのか、データを意味するのかを一意に解することができないから、明確でない。
また、請求項1を引用する請求項2ないし7についても、同様の点が明確でない。
また、請求項6の「第2認証による認証」との記載も、同様の点で明確でない。

(2)本件訂正前の請求項1の「該第2認証が前記認証データに含まれていることで前記第1認証の認証データと一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除して入出庫扉を閉鎖可能に制御する」との記載は、「前記運転盤による運転操作のロックを解除」するよう「制御する」ことと、「前記運転盤による運転操作のロックを解除……可能に制御する」こととの複数の意味に解することができ、一意に解することができないから、明確でない。
また、請求項1を引用する請求項2ないし7についても、同様の点が明確でない。

(3)本件訂正前の請求項6の「前記制御装置は、前記利用者が前記安全確認操作部を操作後、該安全確認操作部の位置から前記入出庫扉の位置の物体を検知するセンサに向けて順に検知して退出を検知する・・・」との記載は、「センサ」が「安全確認操作部の位置」や「入出庫扉の位
置」との関係も含めて、どのように設けられたものであり、どのようにして「順に検知」しているのかが明確でない。
そうすると、請求項6及び請求項6を引用する請求項7に係る発明は明確でない。

(4)本件訂正前の請求項6は請求項1ないし5を択一的に引用しているところ、請求項5を引用した場合の請求項6に係る発明が備える「前記制御装置は、前記安全確認操作部を操作後、所定時間を経過するまで前記入出庫部内の物体を検知するセンサを無効とする」(請求項5)との事項と、「前記制御装置は、前記利用者が前記安全確認操作部を操作後、該安全確認操作部の位置から前記入出庫扉の位置の物体を検知するセンサに向けて順に検知して退出を検知する」(請求項6)との事項とは整合していない。
そうすると、請求項6及び請求項6を引用する請求項7に係る発明は不明確である。

2.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての当審の判断

(1)上記「1.(1)」について
上記「第2 2.(1)ア.(ア)及び(イ)」での検討のとおり、本件訂正によって本件訂正特許発明1における「認証」、「第1認証」及び「第2認証」が処理であることが明確になった。
そうすると、本件訂正特許発明1ないし5及び7は、上記「1.(1)」の点で明確でないとはいえない
なお、請求項6は、本件訂正によって削除されている。

(2)上記「1.(2)」について
上記「第2 2.(1)ア.(イ)」での検討のとおり、本件訂正によって本件訂正特許発明1が「前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に……制御する」ものであることが明確になった。
そうすると、本件訂正特許発明1ないし5及び7は、上記「1.(2)」の点で明確でないとはいえない。
なお、請求項6は、本件訂正によって削除されている。

(3)上記「1.(3)及び(4)」について
本件訂正によって請求項6は削除されるともに、請求項7は請求項6を引用しないものとされた。
そうすると、本件訂正特許発明7は、上記「1.(3)及び(4)」の点で明確でないとはいえない

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明1ないし5及び7は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。

第6 取消理由通知(決定の予告)で通知しなかった特許異議申立理由について

1.上記「第4 1.(1)」の理由(進歩性)について
(1)甲号証
ア.甲第1号証
申立人が特許異議申立てに係る証拠として提出した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

(ア)「【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、車庫装置内に人が取り残された状態で入出庫扉が閉じられてしまうことを防止して安全に運行することのできる機械式立体駐車場の制御方法およびこの制御方法により制御される機械式立体駐車場を提供することを目的とする。」

(イ)「【0015】
また、本発明に係る機械式立体駐車場の制御方法は、前記開扉処理が実行され、車両の入出庫が行われた後、前記第2の認証操作が実行されないまま所定の時間が経過した時に、前記機械式立体駐車場の管理人に通知する管理人通知処理をさらに有することを特徴とする。
【0016】
このように制御することにより、例えばユーザーが車両を車庫装置に入出庫させた後に第2の認証操作を実行し忘れて立ち去ってしまっても、機械式立体駐車場の管理人に通知がなされるため、管理人が入出庫扉を閉じることができ、機械式立体駐車場の運行に支障が出ない。」

(ウ)「【0027】
入出庫口3には、車両の入出庫時にのみ、ユーザーの操作によって開扉される入出庫扉11が設けられている。また、入出庫口3の近傍には、図2にも示す操作盤12が設けられ、機械式立体駐車場1に車両を駐車させるユーザーは、この操作盤12を後述するように操作して入出庫扉11の開閉と車両の入出庫作業を行う。操作盤12は、車庫装置4の外部、且つ車庫装置4の内部を目視可能な位置に設けられている。なお、同じく入出庫口3の近傍には管理人室13が設けられており、ここに駐在する管理人が、必要に応じてユーザーのアシストを行うようになっている。この管理人室13は必ずしもこの位置になくてもよく、遠隔位置に設けてユーザーとの対話を行いながらユーザーをアシストするようにしてもよい。
【0028】
このように構成された機械式立体駐車場1は、図2に概略的に示す制御系統の下で、本発明に係る制御方法により制御される。この制御系統15は制御装置16を有し、制御装置16には主制御部17と、この主制御部17に統括制御される入出庫扉開閉制御部18およびパレット駆動制御部19が含まれている。また、主制御部17には認証照合部21が含まれている。
(中略)
【0030】
操作盤12は主制御部17に接続されている。この操作盤12には、表示画面31と、音声スピーカ32と、テンキー操作部33と、ICカードリーダー34と、起動ボタン35と、閉扉ボタン36等が設けられている。表示画面31と音声スピーカ32は、画面および音声によってユーザーに操作方法を指示するものであり、テンキー操作部33はユーザーに暗証番号によって認証を行わせるものであり、ICカードリーダー34はユーザーにICカードによって認証を行わせるものである。また、起動ボタン35は、認証操作を終えたユーザーがパレット5の呼び出しを行うスイッチであり、閉扉ボタン36はユーザーが入出庫扉11を閉じるためのスイッチである。
【0031】
このように構成された機械式立体駐車場1にユーザーが車両を入庫させる時の手順は次の通りである。
まず、図3に示すように、車両2を入出庫扉11の前(ターンテーブル9の上)に停車させ、同乗者を降車させ、ドアミラーを畳み、アンテナを下げる。次に、図4に示すように、ユーザー(車両のドライバー)は、操作盤12に向かい、第1の認証操作を行う。この第1の認証操作に基づき、主制御部17の認証照合部21において、ユーザーが機械式立体駐車場1の正式な契約者であるか否かの判定が行われる。仮に非契約者が認証操作を行っても、表示画面31と音声スピーカ32によりエラー表示がなされ、機械式立体駐車場1は動作しない。
【0032】
この第1の認証操作は、ユーザーが自分専用の暗証番号をテンキー操作部33に入力するか、自分専用に貸与された暗証記号媒体を操作盤12に認識させることによって行われる。この機械式立体駐車場1では、例えば図示しないICカードが暗証記号媒体として用いられており、ユーザーはICカードを操作盤12のICカードリーダー34にタッチして認識させる。
【0033】
第1の認証操作でユーザーが正式な契約者であると認証されると、表示画面31と音声スピーカ32によってユーザーに起動ボタン35を押すように指示がなされる。ユーザーは起動ボタン35を押して再び車両に乗り込む。主制御部17は、ユーザーの認証内容によって入庫か出庫かを見分け、起動ボタン35が押されると同時に図2に示すパレット駆動機構25を起動させて空のパレット5を入出庫口3の位置に搬送させる。空のパレット5が到着すると、入出庫扉開閉制御部18と入出庫扉開閉機構22が自動的に入出庫扉11を開扉させ、同時に入出庫口3の上方に設けられた入庫管制灯38が赤から青に変わる。
【0034】
次に、ユーザーは、図5に示すように車両を前進させて入出庫口3に進入し、パレット5上の規定位置に車両を停車させる。
(中略)
【0036】
次に、ユーザーは、車庫装置4の外部に出て、図8に示すように再び操作盤12に向かい、第2の認証操作を行う。第2の認証操作は第1の認証操作と同様な操作である。この第2の認証操作では、第1の認証操作を行ったユーザーと、第2の認証操作を行ったユーザーとが同一人物であるか否かの判定が行われる。仮に第2の認証操作を行ったユーザーが第1の認証操作を行ったユーザーと異なる場合、例えば第1のユーザーが車庫装置4の中に居る時に次のユーザーが訪れて第1の認証操作を行った場合には、第1の認証操作と第2の認証操作の認証情報が一致しないため、表示画面31と音声スピーカ32によりエラー表示がなされ、機械式立体駐車場1は動作しない。このため、前のユーザーがまだ車庫装置4の中に居る状態で入出庫扉11が閉じられてパレット駆動機構25が起動してしまうことが防止される。
【0037】
第2の認証操作において、主制御部17の認証照合部21が第1の認証操作を行ったユーザーと同一であると判定すると、表示画面31と音声スピーカ32により、ユーザーに車庫装置4内の安全確認を行うよう報知がなされ、さらに安全確認が取れたら閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じるように指示がなされる。これに従いユーザーは車庫装置4内に人が残っていないかどうかを確認してから閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じる。」

(エ)「【0045】
具体的には、管理人は、上述の第1の認証処理における認証情報と第2の認証処理における認証情報とを一致させることのできる専用の認証一致手段を有している。この認証一致手段として、例えば管理人は専用のマスターICカードを所持しており、入庫または出庫を終えたユーザーが、第2の認証操作を実行し忘れて立ち去ってしまった場合等には、管理人が自らマスターICカードをICカードリーダー34にタッチすることによって第2の認証操作を完了させ、入出庫扉11を閉じて機械式立体駐車場1の運行に支障が出ないようにする。」

(オ)「【0052】
一方、ステップS7の判定結果がNOの場合、即ちステップS6にて開扉処理が実行されて車両の入出庫が行われた後、第2の認証操作が実行されない場合には、ステップS13に移行し、所定の時間(例えば3分)が経過したか否かが判定される。このステップS13の判定結果がNOであればステップS7に戻り、ステップS7以降の制御が反復される。また、ステップS13の判定結果がYESであればステップS14に移行し、管理人通知処理が実行される。この場合、管理人が入出庫口3付近に赴いて第2の認証操作が実行されない原因を調べ、例えばユーザーが第2の認証操作を実行し忘れて立ち去ってしまったり、あるいは暗証番号やICカードを忘れてしまった場合には、認証一致手段としてのマスターICカードを操作盤12のICカードリーダー34にタッチする。
【0053】
このように管理人がマスターICカードを使用することにより、制御はステップS15に移行し、管理人による認証が一致したか否かの判定が下され、この判定結果がYESであれば、ステップS16にてマスター認証処理が実行され、さらに、ステップS11?ステップS12に移行して閉扉処理が実行されて入出庫扉11が閉じられる。また、ステップS15の判定結果がNOである場合、即ち管理人が未着、あるいは原因究明中であればステップS15において待機となる。このように、管理人が呼び出されてマスターICカードを使用することにより入出庫扉11を閉じることができるため、以後の駐車場運行に差し支えることがない。」

(カ)上記「(ア)」に摘記したように、甲第1号証には「本発明は、・・・車庫装置内に人が取り残された状態で入出庫扉が閉じられてしまうことを防止して安全に運行することのできる機械式立体駐車場の制御方法及びこの制御方法により制御される機械式立体駐車場を提供することを目的とする」ことが記載されているから、甲第1号証の「機械式立体駐車場」が、「安全に運行することのできる機械式立体駐車場の制御方法」に係る「制御を行う装置」を有することは明らかである。

(キ)以上を総合すると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「機械式立体駐車場1の車庫装置4内に人が取り残された状態で入出庫扉が閉じられてしまうことを防止して安全に運行することのできる制御方法により制御される機械式立体駐車場1の制御を行う装置であって、
機械式立体駐車場1に車両を駐車させるユーザーは、入出庫口3の近傍に設けられた操作盤12を操作して入出庫扉11の開閉と車両の入出庫作業を行い、
ユーザーは、操作盤12に向かい、第1の認証操作を行い、この第1の認証操作に基づき、主制御部17の認証照合部21において、ユーザーが機械式立体駐車場1の正式な契約者であるか否かの判定が行われ、
この第1の認証操作は、ユーザーが自分専用の暗証番号をテンキー操作部33に入力するか、自分専用に貸与された暗証記号媒体を操作盤12に認識させることによって行われるものであり、
第1の認証操作でユーザーが正式な契約者であると認証されると、表示画面31と音声スピーカ32によってユーザーに起動ボタン35を押すように指示がなされ、起動ボタン35が押されると同時にパレット駆動機構25を起動させて空のパレット5を入出庫口3の位置に搬送させ、空のパレット5が到着すると、入出庫扉開閉制御部18と入出庫扉開閉機構22が自動的に入出庫扉11を開扉させ、ユーザーは、車両を前進させて入出庫口3に進入し、パレット5上の規定位置に車両を停車させ、
次に、ユーザーは、車庫装置4の外部に出て、再び操作盤12に向かい、第2の認証操作を行い、この第2の認証操作では、第1の認証操作を行ったユーザーと、第2の認証操作を行ったユーザーとが同一人物であるか否かの判定が行われ、仮に第2の認証操作を行ったユーザーが第1の認証操作を行ったユーザーと異なる場合には、第1の認証操作と第2の認証操作の認証情報が一致しないため、表示画面31と音声スピーカ32によりエラー表示がなされ、機械式立体駐車場1は動作せず、前のユーザーがまだ車庫装置4の中に居る状態で入出庫扉11が閉じられてパレット駆動機構25が起動してしまうことが防止され、第2の認証操作において、主制御部17の認証照合部21が第1の認証操作を行ったユーザーと同一であると判定すると、表示画面31と音声スピーカ32により、ユーザーに車庫装置4内の安全確認を行うよう報知がなされ、さらに安全確認が取れたら閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じるように指示がなされ、これに従いユーザーは車庫装置4内に人が残っていないかどうかを確認してから閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じる機械式立体駐車場1の制御を行う装置。」

イ.甲第2号証
申立人が特許異議申立てに係る証拠として提出した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、より確実に乗降室から人が退出した後に動作を行い、乗降室内の安全性が確保される、機械式駐車装置及び機械式駐車装置の制御方法を提供することを目的とする。」

(イ)「【0041】
機械式駐車装置10は、車両12を乗入階14から入出庫させる。そして、機械式駐車装置10は、車両12を載置したパレット16を乗入階14と車両12を格納する格納庫18との間で昇降させる。なお、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10の構成は、一例であり、乗入階14を格納庫18よりも上層とする等、他の構成であってもよい。
【0042】
乗入階14には、格納庫18へ搬送されるパレット16に車両12が載置され、車両12の運転者が車両12に乗降可能な乗降室20が設けられている。
【0043】
また、乗降室20(乗入階14)の外側には、機械式駐車装置10の操作盤22が設けられる。
操作盤22は、機械式駐車装置10の利用者が操作可能なように、例えば、スイッチ、タッチパネル、ICカード、リモコン装置等を介して各種操作(入庫又は出庫の指示等)の入力を受け付ける。また、操作盤22は、文字や画像等を表示する液晶ディスプレイ装置、表示ランプ等の表示装置、音声合成装置による音声、警報音を出すスピーカーによって、種々の情報を利用者のために提供する。
【0044】
図2は、乗降室20の構成を示した上面図である。
【0045】
車両12及び運転者等は、入出庫口30から乗降室20へ出入りする。入出庫口30には、入出庫扉32が設けられ、乗降室20の略中央には、車両12が載置されるパレット16が配置される。
【0046】
乗降室20内には、安全確認の実施位置の近辺に配置され、人による安全確認の実施状態が入力される入力手段である確認ボタン34A,34Bが備えられる。確認ボタン34A,34Bは、人によって押圧されるボタン(押ボタン)である。
本第1実施形態では、確認ボタン34A,34Bは、パレット16(車両12)を挟んだ位置、図2の例では左右の壁面35に備えられる。より具体的には、図2の例では、右奥(車両12右側前方)の壁面35に確認ボタン34Aが備えられ、左手前(車両12左側後方)の壁面35に確認ボタン34Bが備えられる。
なお、以下の説明において、各確認ボタン34を区別する場合は、符号の末尾にA,Bの何れかを付し、各確認ボタン34を区別しない場合は、A,Bを省略する。
【0047】
確認ボタン34は、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有する。例えば、確認ボタン34は、入力が行われていない状態、すなわち押圧されていない状態で明滅する。具体的には、確認ボタン34の内部にLED(Light Emitting Diode)又は電球等の照明装置が設けられ、この照明装置が明滅する。なお、入力を促す機能は、明滅の他に、単に点灯するだけでもよい。
そして、確認ボタン34は、押圧されると消灯する。これにより、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、確認ボタン34への押圧(入力)忘れや押圧(入力)ミスを防止できる。
【0048】
入出庫口30には、人の乗降室20への入退室を検知する入退室検知センサ36が設けられる。入退室検知センサ36は、一例として、センサ36Aが入出庫口30の内側に設けられ、センサ36Bが入出庫口30の外側に設けられる。
入退室検知センサ36は、センサ36Bからセンサ36Aの順で人を検知した場合、乗降室20へ人が入室したと検知し、センサ36Aからセンサ36Bの順で人を検知した場合、乗降室20から人が退室したと検知する。」

(ウ)「【0060】
そして、確認ボタン34への入力が行われ、かつ乗降室20から人が退室した後に、制御装置50によって、パレット16の搬送が実行される。このため、確認ボタン34への入力が行われ、乗降室20から人が退室することで安全が確保されない限り、パレット16の搬送は行われず、車両12も格納庫18へ搬送されることは無い。」

(エ)「【0065】
まず、ステップ100では、一つめの確認ボタン34、例えば確認ボタン34Aが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定する。確認ボタン34Aへの押圧は、確認ボタン34A近辺での安全確認の実施終了の入力を確認ボタン34Aが受け付けたこととなる。肯定判定の場合はステップ101へ移行する。
【0066】
ステップ101では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ112へ移行し、否定判定の場合はステップ102へ移行する。
【0067】
ステップ102では、二つめの確認ボタン34、例えば確認ボタン34Bが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定する。確認ボタン34Bへの押圧は、確認ボタン34B近辺での安全確認の実施終了の入力を確認ボタン34Bが受け付けたこととなる。肯定判定の場合はステップ103へ移行する。
(中略)
【0069】
ステップ103では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ112へ移行し、否定判定の場合はステップ104へ移行する。
【0070】
ステップ104では、入退室検知センサ36の検知結果に基づいて、乗降室20から運転者が退室したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ106へ移行する。
【0071】
ステップ106では、操作盤22に備えられる最終確認ボタン40への操作を有効とする。
乗降室20へ入室した人の退室が検知された後に、最終確認ボタン40への操作が有効とされることで、例えば安全確認者が乗降室20から出る前に他者によって最終確認ボタン40が操作されても、パレット16の搬送が実行されることは無い。
従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、より確実に乗降室20内の安全性が確保できる。
【0072】
次のステップ107では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ114へ移行し、否定判定の場合はステップ108へ移行する。
【0073】
ステップ108では、最終確認ボタン40が押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定し、肯定判定の場合はステップ110へ移行する。
【0074】
ステップ110では、機械式駐車装置10の動作が開始され、本安全確認処理が終了する。具体的には、入出庫扉32が閉じられ、車両12が載置されたパレット16が格納庫18へ搬送される。」

(オ)「【0109】
また、上記各実施形態では、安全確認の実施状態が入力される入力手段を押ボタンとする形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、入力手段は押ボタンでなくてもよい。
例えば、入力手段を、機械式駐車装置10の契約者だけが使用し携帯が可能な、認証カード、認証タグ、リモコンといった専用の携帯認証媒体に記録されている認証情報を読み取る読取手段としてもよい。」

(カ)上記「(エ)」に摘記した事項によれば、上記「(エ)」の各ステップは、「ステップ100」で「一つめの確認ボタン34Aが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定」し、その後の「ステップ102」で「二つめの確認ボタン34Bが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定」し、その後の「ステップ104」で「入退室検知センサ36の検知結果に基づいて、乗降室20から運転者が退室したか否かを判定」するという時系列、及び、「ステップ106」で、「操作盤22に備えられる最終確認ボタン40への操作を有効とし」、その後の「ステップ108」で、「最終確認ボタン40が押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定」するという時系列で行われることが分かる。

(キ)以上を総合すると、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「機械式駐車装置であって、
乗降室20の外側には、操作盤22が設けられ、
乗降室20内には、右奥(車両12右側前方)の壁面35に確認ボタン34Aが備えられ、左手前(車両12左側後方)の壁面35に確認ボタン34Bが備えられ、確認ボタン34A、34Bは、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有するものであり、入力が行われていない状態、すなわち押圧されていない状態で明滅し、押圧されると消灯し、
入出庫口30には、人の乗降室20への入退室を検知する入退室検知センサ36が設けられ、そのうち、入退室検知センサ36Aは入出庫口30の内側に設けられ、入退室検知センサ36Bは入出庫口30の外側に設けられ、センサ36Aからセンサ36Bの順で人を検知した場合、乗降室20から人が退室したと検知し、
確認ボタン34A、34Bへの入力が行われ、乗降室20から人が退室することで安全が確保されない限り、パレット16の搬送は行われず、
ステップ100では、一つめの確認ボタン34Aが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定し、
その後のステップ102では、二つめの確認ボタン34Bが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定し、
その後のステップ104では、入退室検知センサ36の検知結果に基づいて、乗降室20から運転者が退室したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ106へ移行し、
ステップ106では、操作盤22に備えられる最終確認ボタン40への操作を有効とし、
その後のステップ108では、最終確認ボタン40が押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定し、肯定判定の場合はステップ110へ移行し、
ステップ110では、機械式駐車装置10の動作が開始され、入出庫扉32が閉じられ、車両12が載置されたパレット16が格納庫18へ搬送される、
機械式駐車装置。」

ウ.甲第3号証
申立人が特許異議申立てに係る証拠として提出した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、乗入部の扉の閉め忘れが発生しても、扉の閉め忘れを迅速に解消できる、機械式駐車装置の制御装置、機械式駐車装置、及び機械式駐車装置の制御方法を提供することを目的とする。」

(イ)「【0083】
利用者は入出庫口4の前に到着すると、操作盤22に対して認証操作を行う(S404)。認証操作は、リモコン送信機50に対するボタン操作、もしくは操作盤22のトランスポンダリーダー36Bにリモコン送信機50を接触させ、認証情報を操作盤22へ送信することで行ってもよいし、タッチパネルとされているディスプレイ画面41に、認証情報を入力することで行ってもよい。
【0084】
認証に成功すると、機械式駐車装置1は、入出庫扉4aを開ける(S506)。そして、利用者は、乗入階7へ入り、車両2を出庫する(S410)。車両2が出庫されると、車両2を出庫させた利用者が入出庫扉4aのリモコン送信機50を用いて再度認証を行った後に操作盤22で入出庫扉4aの閉操作を行う。これにより、入出庫扉4aは閉まり(S508)、車両2の出庫が完了する。
【0085】
図11は、扉閉忘処理が行われる場合の処理の流れを示す。なお、図11における図10と同一のステップについては図10と同一の符号を付して、その説明を一部又は全部省略する。
【0086】
ステップ410で、車両2の出庫が完了したのち、車両2を出庫した利用者が入出庫扉4aを閉めないまま、扉閉忘時間が経過すると、扉閉忘検知部78によって入出庫扉4aの閉め忘れが検知される(S412)。入出庫扉4aの閉め忘れが検知されると、出庫順番表示機49の出庫順番の先頭は出庫を完了した利用者のままで、入出庫扉4aの閉め忘れが発生していることが表示される(S304)。また、閉め忘れの発生は、操作盤22のディスプレイ画面41、出庫予約盤22Bのディスプレイ画面41B、及び入庫予約盤22Cのディスプレイ画面41Cにも表示される。
これにより、機械式駐車装置1の次の出庫予約を行った利用者(以下「出庫利用者」という。)、又は入庫予約を行った利用者(以下「入庫利用者」という。)は、乗入階7の入出庫扉4aの閉め忘れの発生を目視によって認識し、入出庫扉4aの閉操作を行うことができる。
【0087】
入出庫扉4aの閉め忘れの発生を認識した次の出庫利用者は、入出庫口4への移動を開始する(S106)。
次の出庫利用者は入出庫口4の前に到着すると、操作盤22に対して認証操作を行い、認証に成功すると、乗入階7の安全を確認した後に入出庫扉4aの閉操作を行う(S414)。これにより、入出庫扉4aは閉まることとなる(S508)。
なお、閉め忘れられている入出庫扉4aは、予め登録されている利用者による閉操作のみが可能とされる。予め登録されている利用者とは、機械式駐車場設備100の利用者として認証可能な者である。これにより、出庫順番表示機49等の表示を目視した次の出庫利用者が入出庫扉4aの閉操作をできるため、入出庫扉4aが閉まっていない状態を早期に解消できる。また、入出庫扉4aを閉操作する利用者が固定されているため、入出庫扉4aを閉じる際の安全性が高められる。」

(ウ)以上を総合すると、甲第3号証には次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「機械式駐車装置の制御装置において、
利用者は入出庫口4の前に到着すると、操作盤22に対して認証情報を入力することで認証操作を行い、認証に成功すると、機械式駐車装置1は、入出庫扉4aを開け、車両2が出庫されると、車両2を出庫させた利用者が再度認証を行った後に操作盤22で入出庫扉4aの閉操作を行い、
入出庫扉4aの閉め忘れの発生を認識した次の出庫利用者が入出庫口4の前に到着すると、操作盤22に対して認証操作を行い、認証に成功すると、乗入階7の安全を確認した後に入出庫扉4aの閉操作を行い、入出庫扉4aは閉まることとなり、閉め忘れられている入出庫扉4aは、機械式駐車場設備100の利用者として認証可能な者である、予め登録されている利用者による閉操作のみが可能とされる点。」

エ.甲第4号証
申立人が特許異議申立てに係る証拠として提出した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0029】
【実施例】以下、この発明に基づいた実施例について説明する。なお、この実施例における立体駐車装置の全体的な構造は、図11で説明した従来の構造と同一であるため、ここでの説明は省略し、車両入退室内の構造についてのみ説明する。
【0030】まず、図1を参照して、この実施例における車両入退室110の構造について説明する。この実施例における車両入退室110の内部には、入庫車の入出庫を確認するための車両入退室チェック光電管11が設けられている。また、パレット22上の所定の位置に入庫車が位置しているかどうかを確認するための後部車長制限光電管12、実車検知光電管13および前部車長制限光電管14がそれぞれ設けられている。なお、図中実線a?dは、各光電管の光軸を示している。
【0031】さらに、本実施例においては、車両入退室110内の人の存在を検知するための前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置左側人検知センサ17、後配置左側人検知センサ18、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20が設けられている。」

以上を総合すると、甲第4号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「立体駐車装置において、
車両入退室の内部には、車両入退室内の人の存在を検知するための検知センサが設けられている点。」

オ.甲第5号証
申立人が特許異議申立てに係る証拠として提出した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0043】
以下に、本発明の実施形態について、図1?図7を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るエリア検知装置を適用可能な機械式駐車設備の縦断面図である。この機械式駐車設備1は、複数の車両2を収容可能な垂直循環式の立体駐車場施設であり、地上部に車両2の入出庫口3が開口する駐車塔4を備えている。駐車塔4は、例えば鉄骨で形成された躯体5の外面に軽量コンクリート板6が設置された構造であり、入出庫口3の内側のスペースは車両2が乗り入れる乗入室7(乗降エリア)となっている。」

(イ)「【0050】
また、2基の測域センサー36A,36B(検知手段)が、乗入室7内の定点、好ましくは対角位置に設置されている。これら2基の測域センサー36A,36Bと、複数の位置センサー34a?34jは、それぞれ制御装置30に接続されてエリア検知装置40を構成している。そして、位置センサー34a?34jおよび測域センサー36A,36Bの検知データが制御装置30に出力される。」

(ウ)「【0053】
さらに、測域センサー36A,36Bは、乗入室7内のリアルタイムデータD2、即ち現状のデータ、つまり乗入室7内に車両2が居る、居ないに拘わらず、乗入室7の内部状況のデータを検知し、制御装置30に出力することができる。このように、測域センサー36A,36Bは、乗入室7内における車両2およびそれ以外の物体や人等の存在を認識できる。」

以上を総合すると、甲第5号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「機械式駐車設備において、
測域センサーが、乗入室内に設置されており、
測域センサーは、乗入室内における車両およびそれ以外の物体や人等の存在を認識できる点。」

カ.甲第6号証
申立人が令和2年4月16日提出の意見書に添付して提出した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「8.6 人検知装置
8.6.1 乗降領域の有人検知装置(人感センサ)
a) 次のすべてに該当する駐車設備を除き,自動制御の駐車設備には乗降領域の有人検知装置を設けなければならない。
1) 駐車設備を構成する装置の動作速度は,手動制御の動作速度を超えない。
2) 開放型の駐車設備の規模は,入出庫する搬器と同じ高さのすべての搬器と操作場所の間で,発声による指示,警告が聴取できる概ね10mの距離である。
b) 乗降領域の有人検知装置は,出入口扉が閉動作を開始する直前まで,人を検知しなければならない。」(第20ページ第3?10行)

(イ)以上を総合すると、甲第6号証には次の技術事項(以下「甲6技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「自動制御の駐車設備において、
乗降領域の有人検知装置を設け、
乗降領域の有人検知装置は,出入口扉が閉動作を開始する直前まで,人を検知する点。」

キ.甲第7号証
申立人が令和2年4月16日提出の意見書に添付して提出した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1ないし図4に示されるように、機械式駐車装置の一例としての垂直循環式駐車装置1は、柱や梁等で構成された建物躯体2を有する駐車塔3を備え、駐車塔3内の上部および下部における入出庫口4側(前側)と奥側(後側)には、上下2対の上部スプロケット5および下部スプロケット6がそれぞれ対向配置された状態で回転自在に支持されている。」

(イ)「【0039】
即ち、ECU21は車両Wの駐車状態が適切であるか不適切であるかを監視する駐車状態監視機能を備えており、少なくとも車両Wにおける前後左右の各サイドドアWaのいずれかが半ロック状態である場合や、ハッチバック等のリヤドアWcが半ロック状態である場合や、車内に人やペット動物を検知した場合に、駐車不適切状態であると判断し、そのような駐車不適切状態を検出した場合に所定の報知電波を送信アンテナ25を通じて送信するように制御されている。」

(ウ)「【0072】
即ち、前記実施形態では、制御装置28は入出庫口扉16の扉閉釦49押動信号を受けて、車両Wからの報知信号の有無を判断するように制御されているが、本変形例においては、車両Wの適正位置の乗込み確認後、「降車・退場」の案内表示後、予め設定された所定のタイマー設定時間経過後に車両Wからの報知信号の有無を判断するように制御されている。従って、ステップS1?S9までの動作は前記実施形態と同様であり、ステップS9において、「降車・退場」の案内表示や案内がなされると、タイマー計時が開始され(ステップS21)、所定時間Tが経過したかどうかが判断される(ステップS22)。この所定時間Tとしては、降車から退場するまでのおおよその時間を設定すればよい。この際、荷物の取りまとめ等で降車までに手間取る利用者も考慮し、余裕をもった時間設定とする。しかしながら、あまり長い時間設定であれば、素早く降車した利用者が駐車装置1より遙か彼方に立ち去ってしまうおそれがあり、例えば、20?30秒程度が設定される。なお、このような時間設定は個々の機械式駐車装置の状況に応じて臨機応変に変更できるようにしておけばよい。」

(エ)上記「(イ)」における「報知電波」は、(ウ)における「報知信号」を送信する電波であると解されるから、上記「(イ)」の「報知電波を…送信する」ことは、「報知信号を…送信する」ことであるといえる。

(オ)以上を総合すると、甲第7号証には次の技術事項(以下「甲7技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「機械式駐車装置において、
「降車・退場」の案内表示や案内がなされると、タイマー計時が開始され、所定時間Tが経過したかどうかが判断され、
予め設定された所定のタイマー設定時間経過後に、車内に人やペット動物を検知した場合に送信される車両Wからの報知信号の有無を判断し、
この所定時間Tとしては、降車から退場するまでのおおよその時間を設定すればよい点。」

(2)本件訂正特許発明1
ア.本件訂正特許発明1と甲1発明との対比
(ア)甲1発明における「車両を駐車させるユーザー」、「機械式立体駐車場1」及び「入出庫扉11」は、本件訂正特許発明1における「利用者」、「機械式駐車設備」及び「入出庫扉」にそれぞれ相当する。

(イ)甲1発明は、「ユーザーが、車両を前進させて入出庫口3に進入し、パレット5上の規定位置に車両を停車させ」るから、「車庫装置4内」の「パレット5」を含む「入出庫口3」の近傍はユーザーが車両の入出庫を行う部位であるといえ、当該部位は本件訂正特許発明1の「利用者が」「車両の入出庫を行う」「入出庫部」に相当する。

(ウ)甲1発明の「機械式立体駐車場1の制御を行う装置」が制御する「機械式立体駐車場1」は「機械式立体駐車場1の車庫装置4内に人が取り残された状態で入出庫扉が閉じられてしまうことを防止して安全に運行することのできる制御方法により制御される」ものであり、「仮に第2の認証操作を行ったユーザーが第1の認証操作を行ったユーザーと異なる場合には、第1の認証操作と第2の認証操作の認証情報が一致しないため、表示画面31と音声スピーカ32によりエラー表示がなされ、機械式立体駐車場1は動作せず、前のユーザーがまだ車庫装置4の中に居る状態で入出庫扉11が閉じられてパレット駆動機構25が起動してしまうことが防止され、第2の認証操作において、主制御部17の認証照合部21が第1の認証操作を行ったユーザーと同一であると判定すると、表示画面31と音声スピーカ32により、ユーザーに車庫装置4内の安全確認を行うよう報知がなされ、さらに安全確認が取れたら閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じるように指示がなされ、これに従いユーザーは車庫装置4内に人が残っていないかどうかを確認してから閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じる」ものであるから、甲1発明の「機械式立体駐車場1の制御を行う装置」が「機械式立体駐車場1」の「安全確認」に係る制御を行うことは明らかである。
そうすると、甲1発明の当該「機械式立体駐車場1の制御を行う装置」は、本件訂正特許発明1の「機械式駐車設備の安全確認装置」に相当する。

(エ)本件特許明細書の段落【0022】には、「機械式駐車設備1の取扱いに関し、教育・訓練を受けて管理責任者から操作権限を与えられた認定取扱者」と記載されているから、本件訂正特許発明1の「認定取扱者」は、「機械式駐車設備1の取扱いに関し、教育・訓練を受けて管理責任者から操作権限を与えられた」者であると解される。
一方、甲1発明は、「ユーザーは、操作盤12に向かい、」「自分専用の暗証番号をテンキー操作部33に入力するか、自分専用に貸与された暗証記号媒体を操作盤12に認識させることによって行われる」「第1の認証操作を行い、この第1の認証操作に基づき、主制御部17の認証照合部21において、ユーザーが機械式立体駐車場1の正式な契約者であるか否かの判定が行われ」るものであり、上記「機械式立体駐車場1の正式な契約者」には、機械式立体駐車場1の操作権限が与えられていることは明らかであるし、また、機械式立体駐車場1の取扱いができるようになるために、その「契約」の際に、少なくとも操作・取扱いができる程度に教育を受けていると推認されることから、上記「機械式立体駐車場1の正式な契約者」は、本件訂正特許発明1の「機械式駐車設備の認定取扱者」に相当する。

(オ)本件訂正特許発明1の「制御装置」は「機械式駐車設備の認定取扱者を、登録者の認証データとして記憶する」から、「登録者の認証データ」は、「機械式駐車設備の認定取扱者」に関して認証に用いられるデータであるといえる。
一方、甲1発明においては、「ユーザーは、操作盤12に向かい、第1の認証操作を行い、この第1の認証操作に基づき、主制御部17の認証照合部21において、ユーザーが機械式立体駐車場1の正式な契約者であるか否かの判定が行われ」るところ、当該「判定」が「認証照合部21」において行われることから、「判定」に際して「ユーザー」と「正式な契約者」とに関する何らかの「認証照合」が行われることは明らかである。
そして、「第1の認証操作は、ユーザーが自分専用の暗証番号をテンキー操作部33に入力するか、自分専用に貸与された暗証記号媒体を操作盤12に認識させることによって行われる」のだから、「判定」に際して、「ユーザー」と「正式な契約者」とのうち、「ユーザー」に関しては「自分専用の暗証番号」、または、「自分専用に貸与された暗証記号媒体」における「暗証記号」が用いられ、また、「正式な契約者」に関しては、「暗証番号」や「暗証記号」と「認証照合」し得るような何らかのデータが用いられることが理解できる。そして、当該「正式な契約者」に関するデータを「認証照合」に用いて「判定」を行う以上、甲1発明の「装置」が当該データを保持し、そのための手段を備えていることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「正式な契約者」に関する「認証照合」のための当該データを保持するための手段は、本件訂正特許発明1の「前記機械式駐車設備の認定取扱者を、登録者の認証データとして記憶する制御装置」に相当する。

(カ)甲1発明においては「ユーザー」が「第1の認証操作」を行うところ、甲1発明の「第1の認証操作に基づ」いて「機械式立体駐車場1の正式な契約者であるか否かの判定」を行う「主制御部17の認証照合部21」は、本件訂正特許発明1の「操作時に利用者の認証を行う認証装置」に相当する。

(キ)甲1発明の「閉扉ボタン」は、その名称からみて「閉扉」を行うために操作される「ボタン」であると解される一方、甲1発明においては「第2の認証操作において、主制御部17の認証照合部21が第1の認証操作を行ったユーザーと同一であると判定すると、表示画面31と音声スピーカ32により、ユーザーに車庫装置4内の安全確認を行うよう報知がなされ、さらに安全確認が取れたら閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じるように指示がなされ」るから、「閉扉ボタン」は「車庫装置4内の安全確認を行」い「安全確認が取れたら」操作されるものであって、このような観点からは、安全確認に係る操作を行う手段であるということができる。
そうすると、甲1発明の当該「閉扉ボタン」は、本件訂正特許発明1の「前記入出庫部内の安全確認を行った後に操作する安全確認操作部」に相当する。

(ク)甲1発明において、「入出庫口3の近傍に設けられ」、それを「操作」して「入出庫扉11の開閉と車両の入出庫作業を行う」「操作盤12」は、本件訂正特許発明1の「機械式駐車設備を運転操作する運転盤」に相当する。

(ケ)甲1発明において、「第1の認証操作」により、テンキー操作部33に入力する「自分専用の暗証番号」や、操作盤12に認識させる「自分専用に貸与された暗証記号媒体」の「暗証記号」は、本件訂正特許発明1の「利用者の認証情報」に相当する。
そして、甲1発明における「主制御部17の認証照合部21」(認証装置)が、「第1の認証操作に基づ」き、「ユーザーが機械式立体駐車場1の正式な契約者であるか否か」を「判定」することは、本件訂正特許発明1において、「利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第1認証を行」うことに相当する。
また、本件特許明細書に、「上記第1認証で、暗証番号から登録者であることが認証された場合、運転盤7の画面に、例えば「スタートボタンを押してください」と表示される(SA4)。そして、利用者がスタートボタンを押すと(SA5)、スタートボタンが押されたことを検知し(SA6)、機械が起動する(SA7)。この機械起動により、暗証番号に紐付けられた収容車のサイズに適合する空のパレット6が呼ばれる。」(段落【0039】)、及び、「空のパレット6が入出庫部3に到着すると、ステップ(SA2)で第1認証が認証データに含まれることを確認しているので、自動的に入出庫扉5が開放する(SA8)。」(段落【0040】)と記載されており、「第1認証で、暗証番号から登録者であることが認証された場合」に「自動的に入出庫扉5が開放する」までの間に「スタートボタンを押す」行程を経ていることからすれば、本件訂正特許発明1における「該認証情報が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放する」とは、認証情報が認証データに含まれる場合に、何ら操作を要さずに入出庫扉を開放することではなく、認証情報が認証データに含まれるという条件が満たされている場合に、入出庫扉を開放することを意味すると解するのが相当である。
そうすると、甲1発明の「ユーザーは、操作盤12に向かい、第1の認証操作を行い、この第1の認証操作に基づき、主制御部17の認証照合部21において、ユーザーが機械式立体駐車場1の正式な契約者であるか否かの判定が行われ」、「第1の認証操作でユーザーが正式な契約者であると認証されると、表示画面31と音声スピーカ32によってユーザーに起動ボタン35を押すように指示がなされ、起動ボタン35が押されると同時にパレット駆動機構25を起動させて空のパレット5を入出庫口3の位置に搬送させ、空のパレット5が到着すると、入出庫扉開閉制御部18と入出庫扉開閉機構22が自動的に入出庫扉11を開扉させ」は、本件訂正特許発明1の「前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第1認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放する」に相当する。

(コ)甲1発明は「仮に第2の認証操作を行ったユーザーが第1の認証操作を行ったユーザーと異なる場合には、…機械式立体駐車場1は動作せず、前のユーザーがまだ車庫装置4の中に居る状態で入出庫扉11が閉じられてパレット駆動機構25が起動してしまうことが防止され、第2の認証操作において、主制御部17の認証照合部21が第1の認証操作を行ったユーザーと同一であると判定すると、…ユーザーは車庫装置4内に人が残っていないかどうかを確認してから閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じる」のだから、第2の認証操作が行われる時点では、入出庫扉11が閉じられていないことは明らかである。
そうすると、甲1発明の「ユーザーは、車庫装置4の外部に出て、再び操作盤12に向かい、第2の認証操作を行い、この第2の認証操作では、第1の認証操作を行ったユーザーと、第2の認証操作を行ったユーザーとが同一人物であるか否かの判定が行われ」と、本件訂正特許発明1の「前記安全確認操作部が操作された後、前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第2認証を行い」とは、「前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を照合する第2認証を行い」の点で共通する。

(サ)甲1発明の「第2の認証操作において、主制御部17の認証照合部21が第1の認証操作を行ったユーザーと同一であると判定すると、表示画面31と音声スピーカ32により、ユーザーに車庫装置4内の安全確認を行うよう報知がなされ、さらに安全確認が取れたら閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じるように指示がなされ、これに従いユーザーは車庫装置4内に人が残っていないかどうかを確認してから閉扉ボタン36を押して入出庫扉11を閉じる」と、本件訂正特許発明1の「利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第2認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれていることで前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御する」とは、「第2認証を行い、入出庫扉を閉鎖可能に制御する」の点で共通する。

(シ)以上を総合すると、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、
「利用者が入出庫部において車両の入出庫を行う機械式駐車設備の安全確認装置であって、
前記機械式駐車設備の認定取扱者を、登録者の認証データとして記憶する制御装置と、
前記機械式駐車設備の操作時に利用者の認証を行う認証装置と、
前記入出庫部内の安全確認を行った後に操作する安全確認操作部と、
前記機械式駐車設備を運転操作する運転盤と、を備え、
前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第1認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放し、
前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を照合する第2認証を行い、入出庫扉を閉鎖可能に制御するように構成されている、機械式駐車設備の安全確認装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件訂正特許発明1は、第1認証を行い、認証情報が前記認証データに含まれる場合に、「運転盤による運転操作をロック」し、第2認証を行い、認証情報が認証データに含まれていることで第2認証のときの認証情報が第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず、「運転盤による運転操作のロックを解除」するのに対し、甲1発明は運転操作のロック及びロックの解除について明らかでない点。

(相違点2)
第2認証が、本件訂正特許発明1においては「安全確認操作部が操作された後」に行われるのに対して、甲1発明においては閉扉ボタンが操作された後に行われるのではない点。

(相違点3)
第2認証において、本件訂正特許発明1が「認証情報が認証データに含まれていることで第2認証のときの認証情報が第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず」入出庫扉を閉鎖可能に制御するのに対して、甲1発明は「第1の認証操作を行ったユーザーと、第2の認証操作を行ったユーザーとが同一人物であるか否かの判定が行われ」る「第2の認証操作において」、「第1の認証操作を行ったユーザーと同一であると判定すると」入出庫扉を閉鎖可能に制御する点。

イ.相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。

(ア)甲3技術事項
a.甲3技術事項は、上記「(1)ウ.」に記載したとおりのものであって、甲3技術事項の「認証操作」が行われる「操作盤22」、「入出庫扉4a」、「機械式駐車場設備100」及び「予め登録されている利用者」は、本件訂正特許発明1の「機械式駐車設備の操作時」に「認証」する「認証装置」、「入出庫扉」、「機械式駐車設備」及び「登録者」にそれぞれ相当する。

b.甲3技術事項の「利用者」は本件訂正特許発明1の「第1認証」における「利用者」に相当し、同様に、「次の出庫利用者」は「第2認証」における「利用者」に相当する。

c.甲3技術事項における「認証操作」は「操作盤22に対して認証情報を入力する」ものであるところ、技術常識を踏まえれば、一般に、「認証情報」が各「利用者」に固有のものであって、「利用者」の「認証情報」と「次の出庫利用者」の「認証情報」とが異なることは明らかである。

d.そして、甲第3号証には「次の出庫利用者」の「認証情報」と「利用者」の「認証情報」との一致を判定することは記載されておらず、また、甲3技術事項の「閉め忘れられている入出庫扉4a」に関する「次の出庫利用者」による「認証操作」においては、「機械式駐車場設備100の利用者として認証可能な者である、予め登録されている利用者による閉操作のみが可能とされる」のだから、「次の出庫利用者」の「認証情報」が予め登録されていれば足りるのであり、認証に成功すると「次の出庫利用者」の「認証情報」と「利用者」の「認証情報」との一致を判定する必要がないことも明らかである。

e.そうすると、甲3技術事項においては、「閉め忘れられている入出庫扉4a」に関する「次の出庫利用者」による「認証操作」に際しては、「次の出庫利用者」の「認証情報」に係る「認証に成功すると」、「次の出庫利用者」の「認証情報」と「利用者」の「認証情報」とが一致するか否かにかかわらず、「乗入階7の安全を確認した後に入出庫扉4aの閉操作を行い、入出庫扉4aは閉まることとな」るのであって、甲3技術事項の「操作盤22に対して認証操作を行い、認証に成功すると、乗入階7の安全を確認した後に入出庫扉4aの閉操作を行い、入出庫扉4aは閉まることとなり、閉め忘れられている入出庫扉4aは、機械式駐車場設備100の利用者として認証可能な者である、予め登録されている利用者による閉操作のみが可能とされる」点と、本件訂正特許発明1の「認証情報が認証データに含まれていることで第2認証のときの認証情報が第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御する」点とは、「認証情報が認証データに含まれていることで第2認証のときの認証情報が第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず入出庫扉を閉鎖可能に制御する」点で共通する。

f.以上のとおりであるから、甲3技術事項は、本件訂正特許発明1の相違点3に係る発明特定事項を備えるといえる。

(イ)動機付け及び阻害要因について
次に、甲1発明に甲3技術事項を適用することが、当業者が容易になし得ることであるかについて検討する。

a.甲1発明と甲3技術事項は、ともに機械式駐車場の分野に属する技術であって、技術分野が共通する。

b.甲3技術事項は、「乗入部の扉の閉め忘れが発生しても、扉の閉め忘れを迅速に解消できる」(段落【0007】、上記「(1)ウ.(ア)」参照。)ことを課題とするものである。
一方、甲1発明は、「機械式立体駐車場1の車庫装置4内に人が取り残された状態で入出庫扉が閉じられてしまうことを防止して安全に運行すること」(上記「(1)ア.(ア)」参照)を課題とするものであるが、甲第1号証には、「ユーザーが車両を車庫装置に入出庫させた後に第2の認証操作を実行し忘れて立ち去ってしまっても、機械式立体駐車場の管理人に通知がなされるため、管理人が入出庫扉を閉じることができ、機械式立体駐車場の運行に支障が出ない」(上記「(1)ア.(キ)」参照)ことが記載されており、甲1発明が「第2の認証操作」を経て「入出庫扉11を閉じる」ことを考慮すると、甲第1号証には、入出庫扉11を閉め忘れた場合を課題とすることが記載されており、甲1発明には甲3技術事項の課題と共通する課題が内在するといえる。

c.しかしながら、甲1発明は、上記「1.(1)ア.(キ)」に記載したとおりのものであって、「機械式立体駐車場1の車庫装置4内に人が取り残された状態で入出庫扉が閉じられてしまうことを防止して安全に運行すること」を課題とし、「第2の認証操作では、第1の認証操作を行ったユーザーと、第2の認証操作を行ったユーザーとが同一人物であるか否かの判定が行われ、仮に第2の認証操作を行ったユーザーが第1の認証操作を行ったユーザーと異なる場合には、第1の認証操作と第2の認証操作の認証情報が一致しないため、表示画面31と音声スピーカ32によりエラー表示がなされ、機械式立体駐車場1は動作せず」との技術的事項を備えることにより、「仮に第2の認証操作を行ったユーザーが第1の認証操作を行ったユーザーと異なる場合には、第1の認証操作と第2の認証操作の認証情報が一致しないため、…機械式立体駐車場1は動作せず、前のユーザーがまだ車庫装置4の中に居る状態で入出庫扉11が閉じられてパレット駆動機構25が起動してしまうことが防止され」るという効果を奏するものであると認められる。
一方、甲1発明に甲3技術事項を適用した場合には、「入出庫扉4aを開け」、「入出庫扉4aの閉操作を行」った「利用者」とは異なる「次の出庫利用者」であっても、「予め登録されている利用者」でありさえすれば、「入出庫扉4aの閉操作を行い、入出庫扉4aは閉まることとな」って、先の「利用者」が乗入階7に居る状態でも入出庫扉4aを閉じることが可能となる。
そうすると、仮に甲1発明に甲3技術事項を適用した場合には、甲1発明における「機械式立体駐車場1の車庫装置4内に人が取り残された状態で入出庫扉が閉じられてしまうことを防止して安全に運行すること」という課題を解決することができなくなるから、甲1発明に甲3技術事項を適用することには阻害要因があるといえる。

d.以上のとおりであって、甲1発明と甲3技術事項とは、技術分野が共通するとともに、甲3技術事項の課題は甲1発明にも内在するとはいえるものの、甲1発明に甲3技術事項を適用することには阻害要因があるから、甲1発明に甲3技術事項を適用することを、当業者が容易になし得たということはできない。

(ウ)本件訂正特許発明1の効果について
そして、本件訂正特許発明1は、相違点3に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を備えることにより、先行技術における「人が退出したことを検知したことによって入出庫部外で扉閉操作を実行できるため、…入力操作をした人を残して同乗者が先に退出した場合などに、取扱いに必要な知識を備えていない他の人が扉閉操作を実行してしまうおそれがある」(段落【0008】)こと、並びに、「人の居残りを防止することが難しい場合がある」、「先の利用者が入出庫扉を開いたままで立ち去った場合のために、管理人専用の認証一致手段が必要になる」、及び、「連続して利用者が待っているときなど、特に、先の利用者が出庫の場合で入出庫扉を閉めずに立ち去った場合には、第2認証の完了を待つための待ち時間が長くなる」(以上、段落【0009】)ことを前提とし、「運転盤を操作する者が異なる場合でも適切に安全確認を行って入出庫操作を行うことができる機械式駐車設備の安全確認装置を提供する」(段落【0010】)との課題を解決して、「入出庫扉5の解放前と入出庫扉5の閉鎖前とに、運転盤7で登録者(操作権限を与えられた認定取扱者)であることを認証して入出庫扉5の開閉を可能とするため、入出庫部3に人が居残っていることの見落としや第三者(次の利用者)による不用意な入出庫扉5の閉鎖を未然に防止できる」(段落【0068】)、「入出庫部3で安全確認をして安全確認ボタン20(21)を押した後、認定取扱者が…運転盤7において第2の認証を行うので、見落としによる入出庫扉5の閉鎖や、思い込みによる他の利用者の入出庫扉5の閉鎖を防止することができる」(段落【0069】)という本件特許明細書に記載された効果を奏するものと認められる。

(エ)申立人の主張について
a.申立人は令和2年4月16日及び令和3年1月8日提出の意見書において、概ね以下のとおり主張している。

(a)仮に、甲1発明が「第1認証の結果と第2認証の結果との一致の確認を行うこと」を、甲1発明における課題を解決するための基本原理としていたとしても、甲1号証には、扉の閉め忘れが発生した場合に、管理人による閉扉を可能とすることが記載されている(段落0043-0045)。このことから、甲1発明が、扉の閉め忘れを解決課題の一つとしていることは明らかである。したがって、甲1発明と甲第3号証とは、「扉の閉め忘れ」という共通の課題を有しているといえるから、甲1発明において扉の閉め忘れ等が発生した場合に、甲3号証に記載されている「次の利用者の認証情報を登録者の認証データと照合し、認証情報が認証データに含まれていることで入出庫扉を閉鎖可能に構成する」との技術事項を適用するに足る十分な動機付けがあるといえる。
したがって、甲1発明に甲3技術事項を組み合わせることには阻害要因があるとの特許権者の主張は失当である。
(令和2年4月16日提出の意見書第7ページ第5?17行)

(b)相違点2(当審注:本決定における相違点3)は、要するに、甲1発明においては、原則として、入出庫扉の閉鎖を行える人物を、第1認証操作を行ったユーザーと同一人物に限定しているところ、本件訂正発明1では、この条件を緩和して、第1認証を行った人物だけでなく、認証データに登録されている人物まで入出庫扉の閉鎖を行えるようにしたものである。
すなわち、本件訂正発明1は、甲1発明で規定している入出庫扉を閉鎖できる人物の条件を単に緩和しただけである。また、その具体的な実現方法も「利用者の認証情報が登録者の認証データに含まれるか否か」によって判定するという、第1認証と同様の手法を用いているにすぎず、この技術は甲1発明にも記載されている通り、周知技術である。本件訂正発明1における「入出庫扉を閉鎖することのできる人物の条件の緩和」は、当業者が適宜なし得る取り決めの変更にすぎないし、その具体的実現手法も周知技術を適用しただけである。
従って、相違点2は、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。また、入出庫扉を閉鎖することのできる人物の条件を緩和することは、機械式駐車装置を危険たらしめる改悪変更であり、何ら新規な効果をもたらさない。
(令和3年1月8日提出の意見書第5ページ第15行?第7ページ第18行)

b.当審の判断
申立人の上記主張について検討する。

(a)上記「a.(a)」の主張について検討すると、甲1発明に甲3技術事項を適用することに阻害要因があることは、上記「(イ)c.」に説示したとおりであるから、甲3技術事項と共通する課題が甲1発明に内在するとしても、そのことのみを以て甲1発明に甲3技術事項を適用することが、当業者が容易になし得たことであるということはできない。

(b)上記「a.(b)」の主張について検討すると、本件訂正特許発明1は相違点3に係る発明特定事項を備えることにより、上記「(ウ)」に記載した課題を解決し、効果を奏するものであるから、甲1発明において相違点3に係る発明特定事項を備えるものとすることが、当業者が適宜なし得る設計変更であるとすることはできないし、何ら新規な効果をもたらさないとすることもできない。

(c)そうすると、申立人の上記主張には理由がない。

(オ)甲第3号証以外の各甲号証について、
甲第3号証以外の各甲号証には、本件訂正特許発明1の相違点3に係る発明特定事項は、記載も示唆もされていない。

(カ)小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件訂正特許発明1は、甲1発明及び甲2発明に基づいて、または、甲1発明、甲2発明及び甲3技術事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたとはいえない。

(3)本件訂正特許発明2ないし7について
本件訂正特許発明2ないし5及び7は、本件訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
そうすると、上記「(2)」における判断と同様の理由により、本件訂正特許発明2ないし4及び7は、甲1発明及び甲2発明に基づいて、または、甲1発明、甲2発明及び甲3技術事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
また、本件訂正特許発明5は、甲1発明、甲2発明並びに甲第4号証及び甲第5号証に例示される周知技術に基づいて、または、甲1発明、甲2発明、甲3技術事項並びに甲第4号証及び甲第5号証に例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
なお、請求項6は、本件訂正によって削除されている。

2.上記「第4 1.(2)及び(3)」の理由(サポート要件及び明確性要件)について
(1)申立人の主張の概要
申立人は、申立書において、サポート要件及び明確性要件に関して、取消理由通知(決定の予告)に記載し、上記「第5」で検討した明確性要件に関する取消理由のほかに、概ね以下の取消理由を主張している。

請求項1に記載の発明には、「運転盤を操作するものが異なる場合でも適切に安全確認を行って入出庫操作を行う」との課題を達成するために必要とされる発明特定事項が明らかに欠落しており、発明特定事項に技術的な不備があることは明らかである。従って、請求項1-7に記載された発明は不明確である。
更に、請求項1に記載の発明は、安全を確保できない可能性が高いことから、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。よって、請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(申立書第23ページ第5行?第24ページ第4行)

(2)当審の判断
本件訂正特許発明は、「運転盤を操作する者が異なる場合でも適切に安全確認を行って入出庫操作を行うことができる機械式駐車設備の安全確認装置を提供すること」を課題とするものであり、「前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第1認証を行」うとともに、「前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第2認証を行」うことを発明特定事項として備えることにより、「入出庫扉5の解放前と入出庫扉5の閉鎖前とに、運転盤7で登録者(操作権限を与えられた認定取扱者)であることを認証して入出庫扉5の開閉を可能とするため、入出庫部3に人が居残っていることの見落としや第三者(次の利用者)による不用意な入出庫扉5の閉鎖を未然に防止できる」(段落【0068】)等の効果を奏するものと認められる。
これに対して、「運転盤を操作するものが異なる場合でも適切に安全確認を行って入出庫操作を行う」との課題を達成するために必要とされる発明特定事項が明らかに欠落して」いる、及び、「安全を確保できない可能性が高い」との申立人の主張は、何を以て安全確認や安全の確保ができないとするのかについての具体的な理由を欠くものであり、採用することができない。

(3)令和2年4月16日提出の意見書における申立人の主張について
申立人は、令和2年4月16日提出の意見書においても、サポート要件及び明確性要件に関して次の主張をしているので、検討しておく。

ア.申立人の主張の概要
(ア)一次訂正後の請求項1
令和2年1月22日になされた訂正の請求による訂正(以下「一次訂正」という。)後の請求項1には、「前記安全確認操作部が操作された後、前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第2認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれていることで前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御するように構成されている、」と記載されている。
このうち、「前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず」との記載は、(解釈1)第2認証のときの認証情報と第1認証のときの認証情報とを照合する処理を行わずに、単に第2認証のときの認証情報が認証データに含まれていることをもって運転盤による運転操作をロックを解除するのか、それとも(解釈2)第2認証のときの認証情報と第1認証のときの認証情報とを照合する処理を行い、その結果として、両者が異なる場合であっても運転盤による運転操作をロックを解除するのか、どちらを意味しているのか不明である。
よって、一次訂正後の請求項1及び請求項1を引用する請求項2-5、7は不明確である。
(第4ページ第4?20行)

(イ)一次訂正後の請求項5
一次訂正後の請求項5には、「前記制御装置は、前記安全確認操作部を操作後、所定時間を経過するまで前記入出庫部内の物体を検知するセンサを無効とするように構成されている」と記載されている。
上記のうち、「物体を検知するセンサ」は一次訂正後の請求項5にしか記載されておらず、ユーザ認証や安全確認操作部との関連性も一切記載されていない。したがって、上記「所定時間」がどのような長さの期間であるのか不明である。
更に、物体を検知するセンサを所定期間経過するまで無効にすることが、本件発明が解決するべき課題との関係においてどのように寄与しているかも不明であるし、センサを無効にすることによる作用効果も不明である。したがって、一次訂正後の請求項5には、「運転盤を操作するものが異なる場合でも適切に安全確認を行って入出庫操作を行う」との課題を達成するために必要とされる発明特定事項が明らかに欠落しており、発明特定事項に技術的な不備があることは明らかである。
以上から、一次訂正後の請求項5及びこれを引用する一次訂正後の請求項7は、不明確であるとともに、請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(第4ページ第21行?第5ページ第8行)

イ.当審の判断
(ア)上記「ア.(ア)」の主張について
本件訂正(令和2年11月16日提出の訂正請求書による訂正)後の請求項1における「該認証情報が前記認証データに含まれていることで前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御する」との事項は、申立人が挙げる解釈1及び解釈2のいずれかの意味であるかを特定するまでもなく、「該認証情報が前記認証データに含まれている」という条件を満たす場合には、「前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否か」という条件を満たすか否かにかかわらず、「前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御する」ことを意味すると明確に理解することができる。
そうすると、本件訂正特許発明1ないし5及び7が、上記「ア.(ア)」の点で、明確でないということはできない。

(イ)上記「ア.(イ)」の主張について
「所定」とは一般に「定まっていること。定めてあること。」(岩波書店『広辞苑 第六版』)を意味するから、当業者は、ユーザ認証や安全確認操作部との関連について記載されていなくても、「所定時間」がある定まった時間であることを明確に理解することができる。
また、本件訂正特許発明5は、請求項5が引用する請求項1に記載された発明特定事項を備えることにより、「運転盤を操作するものが異なる場合でも適切に安全確認を行って入出庫操作を行う」との課題を解決することができるから、課題を解決するための手段を備えたものであるといえる。
そうすると、本件訂正特許発明5及び7が、上記「ア.(イ)」の点で、明確でないということはできず、また、発明の詳細な説明に記載したものではないということもできない。

第7 むすび

以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本件訂正特許発明1ないし5及び7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正特許発明1ないし5及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件訂正特許発明6に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議申立てについて、請求項6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
機械式駐車設備の安全確認装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車設備の入出庫部内の安全を確認して運転盤による運転操作のロックを解除する安全確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械式駐車設備の入出庫部内には、人や車両のはみ出しを検知するために複数の検知センサ(以下、単に「センサ」ともいう)が設置されている。そして、これらのセンサが車両の入出庫や利用者の出入りを検知すると、制御装置が運転盤による運転操作をロックするようにした安全確認装置が備えられている。この安全確認装置によって運転盤による運転操作がロックされた状態では、入出庫扉の閉鎖操作や呼び操作(出庫車又は空のパレットなどの自動車搬送手段を入出庫部に移動させる操作)ができないロック状態が保たれる。そして、入出庫が完了して利用者が入出庫部から出て、入出庫部内の安全を確認し、安全確認ボタンを押すと安全確認装置による運転盤の運転操作ロックが解除されて、入出庫扉の閉鎖操作や呼び操作が可能となる。
【0003】
上記安全確認ボタンは、通常、運転盤又は運転盤付近に1個が設置されている。そのため、安全確認ボタンを押す位置から入出庫部内が見渡せなかったり、入庫車両の反対側などが死角になる場合には、利用者が移動して安全確認をするために多くの時間を要する場合がある。
【0004】
一方、上記入出庫扉の開閉操作をリモコンで車両内から行うものがある。しかし、車両内からのリモコン操作の場合、十分な安全確認をしないまま入出庫扉の閉鎖操作をして入出庫部内に人が閉じ込められるおそれがある。また、入出庫扉が開放した状態の場合、次の利用者が、先の利用者が入出庫扉を閉じずに立ち去ったと思い込み、入出庫部内を確認せずに入出庫扉を閉じて先の利用者が閉じ込められるおそれがある。
【0005】
そこで、この種の先行技術として、入出庫部内において安全確認の実施が入力される1又は複数の入力手段と、入出庫部外に配置されてパレット搬送を許可する許可入力手段と、人の入出庫部への入退出を検知する入退室検知手段とを備えさせたものがある(例えば、特許文献1参照)。この先行技術では、入力手段への入力が行われた後に、入退室検知手段によって入出庫部から人の退室を検知すると、許可入力手段への操作を有効としている。
【0006】
また、他の先行技術として、入出庫扉を開放する前に第1認証処理を行って入出庫扉を開放し、その後、入出庫部で車両を入出庫し、入出庫扉を閉じる前に第2認証処理を行うものがある(例えば、特許文献2参照)。この先行技術では、第1認証処理の認証情報と第2認証処理の認証情報とが照合処理で一致した場合に、運転盤で扉閉処理ができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開2015-48595号公報
【特許文献2】 特開2014-139401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1の場合、入出庫部内で安全確認を実施して入力手段を操作した後、人が退出したことを検知したことによって入出庫部外で扉閉操作を実行できるため、例えば、入力操作をした人を残して同乗者が先に退出した場合などに、取扱いに必要な知識を備えていない他の人が扉閉操作を実行してしまうおそれがある。
【0009】
また、上記特許文献2の場合、第1認証の情報と第2認証の情報とが一致した場合には扉閉操作ができるので、例えば、認証情報としての暗証番号を家族で共有している場合など、家族による全員が退出したとする思い込みによって扉閉操作を実行するおそれがあり、人の居残りを防止することが難しい場合がある。さらに、先の利用者が入出庫扉を開いたままで立ち去った場合のために、管理人専用の認証一致手段が必要になる。その上、連続して利用者が待っているときなど、特に、先の利用者が出庫の場合で入出庫扉を閉めずに立ち去った場合には、第2認証の完了を待つための待ち時間が長<なる。
【0010】
そこで、本発明は、運転盤を操作する者が異なる場合でも適切に安全確認を行って入出庫操作を行うことができる機械式駐車設備の安全確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、利用者が入出庫部において車両の入出庫を行う機械式駐車設備の安全確認装置であって、前記機械式駐車設備の認定取扱者を、登録者の認証データとして記憶する制御装置と、前記機械式駐車設備の操作時に利用者の認証を行う認証装置と、前記入出庫部内の安全確認を行った後に操作する安全確認操作部と、前記機械式駐車設備を運転操作する運転盤と、を備え、前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第1認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放するとともに、前記運転盤による運転操作をロックし、前記安全確認操作部が操作された後、前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第2認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれていることで前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御するように構成されている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「認定取扱者」は、機械式駐車設備の取扱いに関し、教育・訓練を受けて管理責任者から操作権限を与えられた者であり、取扱いに必要な知識を備えている者をいう。また、「安全確認」は、「無人確認」及びその他の安全確認を含む。「運転操作」とは、少なくとも、入出庫扉の閉鎖、パレット又は自動車の搬送、のいずれか又は両方をいう。入出庫扉を閉鎖しないと搬送が行なえないように構成するのが好ましい。
【0012】
この構成により、認定取扱者についての第1認証と、入出庫部内での安全確認操作部の操作後に行う入出庫部外における認定取扱者についての第2認証とによって入出庫が行われるので、認定取扱者として教育を受けていない者による運転盤の操作を防ぐことができる。従って、教育・訓練を受けた認定取扱者による認証操作によって運転盤による運転操作が行えるので、人が入出庫部内に居残ることを防止するように機械式駐車設備を運転することができる。
【0013】
また、前記安全確認操作部は、前記利用者が操作する安全確認ボタン、IDカード確認器、IDリモコン確認器、のいずれかを含んでいてもよい。このように構成すれば、入出庫部内で行う安全確認の操作を、機械式駐車設備に応じた手段によって容易に行うことができる。
【0014】
また、前記安全確認操作部は、前記入出庫部内を見渡せる位置に配置されていてもよい。このように構成すれば、安全確認操作部の数を減らして、制御の簡略化と装置の簡略化によるコスト低減などを図ることができる。
【0015】
また、前記安全確認操作部は、前記入出庫部で入出庫する車両の少なくとも左位置と右位置とにそれぞれ配置されていてもよい。このように構成すれば、利用者が車両の右位置又は左位置のいずれから乗降しても、安全確認操作部の操作を適切に行って、迅速な入出庫操作を行うことができる。
【0016】
また、前記安全確認操作部は前記入出庫部内に配置され、前記制御装置は、前記安全確認操作部を操作後、所定時間を経過するまで前記入出庫部内の物体を検知するセンサを無効とするように構成されていてもよい。このように構成すれば、安全確認操作部の操作後、利用者が退出するまでの間におけるセンサの物体検知による制御を減らし、制御装置における制御判断を簡略化することができる。
【0017】(削除)
【0018】
また、前記安全確認操作部は、該安全確認操作部の有効状態又は無効状態を示す明示機能を有していてもよい。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「明示機能」は、安全確認操作部の位置変化、発光色変化、ディスプレイによる文字や画像表示、音など、有効か無効かの状態を目や耳で確認できる機能をいう。このように構成すれば、安全確認操作部で安全確認を行った否かを利用者が容易に認識することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、入出庫操作を行う利用者が、機械式駐車設備の取扱いに関し、教育・訓練を受けて認定取扱者として登録された者に限定されるため、機械式駐車設備における入出庫部内の安全確認を認定取扱者が適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る機械式駐車設備の入出庫部における安全確認装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示す安全確認装置による入庫制御のフロー図である。
【図3】図3は、図1に示す安全確認装置による出庫制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、機械式駐車設備1としてパレット式の駐車設備を例にして、入出庫部3に安全確認操作部としての安全確認ボタン20,21を備えさせた例を説明する。また、認定取扱者の認証を、「暗証番号」を用いて行う例で説明する。この「認定取扱者」は「登録者」でもあり、「利用者」でもある。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における前後左右方向の概念は、図1に示す入出庫扉5に向かった状態における前後左右方向の概念と一致するものとする。また、車両Vを矩形状枠として示す。
【0022】
[安全確認装置の構成]
図1は、この実施形態の機械式駐車設備1の入出庫部3を示す平面図であり、矩形状に形成された駐車塔2の正面側に入出庫口4が設けられ、この入出庫口4には入出庫扉5が備えられている。この入出庫口4の側方(図では右方)には、機械式駐車設備1の運転操作を行う運転盤7が設けられている。この実施形態では、この運転盤7と制御装置8が一体となった例を示している。制御装置8には、機械式駐車設備1の取扱いに関し、教育・訓練を受けて管理責任者から操作権限を与えられた認定取扱者が登録者として記憶されている。また、運転盤7は、認証装置も兼ねている。
【0023】
この機械式駐車設備1に備えられた安全確認装置10には、物体を検知する複数のセンサが設けられている。車両Vを入出庫させる車両配置部であるパレット6の左側方に左部センサ11が設けられ、右側方に右部センサ12が設けられている。また、パレット6の前方には、入出庫部3の左右方向全長で物体を検知する前部センサ13が設けられ、パレット6の前後方向の中間部分には、車両Vの有無を検知するための車両検知センサ16が設けられている。さらに、パレット6と入出庫扉5との間には、入出庫部3の左右方向全長で物体を検知する後部センサ14が設けられ、入出庫口4の部分には、入出庫扉5の外側で物体を検知する入出庫扉外センサ15が設けられている。
【0024】
そして、この実施形態では、上記入出庫部3であって、上記車両検知センサ16の前方の左右位置に、左安全確認ボタン20と、右安全確認ボタン21とが設けられている。これらの安全確認ボタン20,21は、車両Vが停車した状態で入出庫部3の全体を見渡せる位置に設ければよく、二点鎖線で示すように、入出庫口4の左位置に左安全確認ボタン20を設け、右位置に右安全確認ボタン21を設けるようにしてもよい。これらの安全確認ボタン20,21の配置は、入出庫部3の全体が見渡せる位置であれば、他の位置でもよい。安全確認ボタン(安全確認操作部)20,21は、IDカード確認器、IDリモコン確認器など、利用者が操作できるものであればよい。
【0025】
また、入出庫部3の外部に設けられた運転盤7には、最終確認ボタン22が設けられている。運転盤7は、後述する第1認証と第2認証とを行う装置を兼ねており、暗証番号の他、認定取扱者として認定されて登録された時に付与される認証情報によって第1認証及び第2認証が行われる。この第1認証及び第2認証は、暗証番号による認証、IDカードによる認証、IDリモコンによる認証、などを含む。この運転盤7に設けられた最終確認ボタン22は、押す操作の他、引く操作、レバー式のように傾ける操作などのものを含む。
【0026】
さらに、上記左部センサ11及び右部センサ12と安全確認ボタン20,21とは、左部センサ11が検知したら、左安全確認ボタン20を有効にし、右部センサ12が検知したら右安全確認ボタン21を有効にするようにしてもよい。この「有効」とは、押すことにより「無効」状態に切り替えられる状態で、有効な安全確認ボタン20,21が存在する限り操作機能のロック及び運転操作のロックは解除できない状態を指す。「操作機能のロック」とは、運転操作、及び運転操作を許可するための第2認証の受付を禁止した状態をいう。ロック中でも、管理やメンテナンスのための特別な認証のみ受け付けられるようにしておくことができる。「有効」な安全確認ボタン20(21)を押すことにより、全て「無効」にすることで安全確認ボタン20(21)によるロックを解除できる。安全確認ボタン(安全確認操作部)20,21は、有効な状態か無効な状態かを目や耳で確認できるように、位置変化、発光色変化、ディスプレイによる文字や画像表示、音などで明示する機能を有していてもよい。
【0027】
両方の安全確認ボタン20,21が有効になる場合、有効状態A(それぞれ個別に押す必要がある)となる。但し、出庫時は、車両Vが入出庫部3から出て全体が目視可能となるため、有効状態B(どちらか一方を押せばよい)とする。入出庫部3の奥の前部センサ13が検知すると、左安全確認ボタン20及び右安全確認ボタン21を有効にする。但し、それまでに安全確認ボタン20,21のいずれか1方のみ有効になっていた場合は、有効状態Bとなる。既に安全確認ボタン20,21の両方が有効になっていた場合や、前部センサ13が検知後に、左部センサ11の組と、右部センサ12の組の検知していなかった方が検知した場合、有効状態Aに変わる。
【0028】
なお、駐車塔2の内部を見渡すことができる場合や、カメラとモニタによって確認できる場合、又は鏡等により直接目視できない部分を間接的に視認できるようになっている場合は、安全確認ボタン20,21を1つとしてもよいし、複数の安全確認ボタン20,21が有効な時でも、視認や確認が可能な安全確認ボタン20(21)を押すことで他の安全確認ボタン21(20)を合せて無効にできるようにしてもよい。
【0029】
また、安全確認ボタン20(21)を押した利用者が退出するまでに、左部センサ11又は右部センサ12、及び車両検知センサ16(出庫時のみ)が検知しても、再びこれらのセンサが有効にならないようにできる。例えば、一方の安全確認ボタン20(21)のみ有効の場合、一定の時間(例えば10秒?20秒)を経過していない、及び後部センサ14が検知した後、入出庫扉外センサ15の順に検知して、利用者の退出を検知していない、の両方を満足している間は、左部センサ11又は右部センサ12及び車両検知センサ16が利用者を検知しても無効にすることができる。この場合、押された安全確認ボタン20(21)の配置位置から、入出庫口4までの経路上に位置するセンサ11,(12),16のみを無効にしてもよい。
【0030】
なお、この間に入出庫扉外センサ15から後部センサ14の順に検知した場合は、入出庫部3に人が居ると判断して、左部センサ11又は右部センサ12の検知している側が再び有効になる。出庫時の、両方の安全確認ボタン20,21が有効状態Bで有効になっている場合も、これに準じる。
【0031】
また、同様に、両方の安全確認ボタン20,21が有効状態Aで有効な場合、安全確認ボタン20(21)を押した人を退出するまでに検知して再びこれらが有効とならないように、先に押された安全確認ボタン20(21)に対応する側の左部センサ11又は右部センサ12を、一定の時間(例えば10秒?20秒)を経過していない、及びその利用者の車両反対側への移動を前部センサ13又は後部センサ14が検知していない、の両方の条件を満足している間は、利用者を検知しても無視するようにできる。この場合、押された安全確認ボタン20(21)の配置位置から、入出庫口4までの経路上に位置するセンサ11,(12),16のみを無効にしてもよい。この後は、上記の、一方の安全確認ボタン20(21)が有効な状態と同様に処理する。
【0032】
その後、安全確認ボタン20(21)が押され、すべての安全確認ボタン20(21)が無効となった状態で、後部センサ14が検知した後、入出庫扉外センサ15が順に検知して、その利用者の退出を検知することで、操作機能のロックが解除され、運転盤7に備えられた認証装置が有効となって第2認証を行い、その後、運転盤7に備えられた最終確認ボタン22が有効となる。この認証装置が「有効」とは、認証操作を受け付けることができる状態で、操作機能がロックされた状態では原則として無効となっている。最終確認ボタン22が「有効」とは、運転操作のロックを解除するための最終確認入力を受け付けることができる状態で、押して無効にすることにより運転操作のロックを解除できる状態をいう。そして、この最終確認ボタン22を押すことにより「運転操作のロック」が解除されて運転盤7から入出庫扉5の閉鎖操作などを行うことができる。
【0033】
なお、上記した各センサ11?16は、線状に検知するものに限らず、画像処理や赤外線の輻射や超音波によるものなど各種センサを用いることができる。また、左部センサ11や右部センサ12の本数は、1本?複数本でもよい。さらに、前部センサ13は、目視で確認できる入出庫部3の内部レイアウトであれば省略してもよい。
【0034】
また、後部センサ14と入出庫扉外センサ15は、兼用する1本として、他のセンサ11,12の検知状況の組み合わせから、利用者の入退場を判定することもできる。例えば、他のセンサ11,12が検知している状態で入出庫扉外センサ15(後部センサ14)が検知した場合は入場、他のセンサ11,12が検知しなくなった後で入出庫扉外センサ15(後部センサ14)が検知した場合は退場、入出庫扉外センサ15(後部センサ14)が検知した後で他のセンサ11,12が検知した場合は入場、などの判定ができる。
【0035】
さらに、安全確認ボタン20,21は、入出庫部3内(実線位置)又は入出庫口4の部分(二点鎖線位置)のどちらか一方又は両方に備えてもよい。また、入出庫部3の場合でも、車両検知センサ16よりも入出庫口4に近い位置でもよい。
【0036】
このように、この実施形態の安全確認装置10では、入出庫部3の各位置に車両Vや、パレット6の左位置で車両Vから降りる人などを検知する左部センサ11と、右位置で車両Vから降りる人などを検知する右部センサ12と、入出庫部3の前部で検知する前部センサ13、及び入出庫口4付近でパレット6の左右位置への通路を通る人を検知する後部センサ14、入出庫口4を通る人を検知する入出庫扉外センサ15を設けている。そして、入出庫部3の左右位置に安全確認ボタン20,21を各々配置している。
【0037】
[入庫制御]
次に、図2に基づいて、上記安全確認装置10による入庫制御のフローを説明する。図の左側に利用者(登録者)の行動を示し、右側に安全確認装置10における各ステップを示している。なお、この図では、入出庫部3である駐車塔2の内部を、単に「塔内」と表示し、入出庫扉外センサ15を「扉外センサ」と表示する。
【0038】
まず、利用者が運転盤7において「暗証番号」を入力すると(SA1)、この入力された暗証番号が制御装置8に登録されている認定取扱者(登録者)の暗証番号に含まれる(暗証番号(認証情報)が認証データに含まれる)か否かが判断(認証)される(SA2)。この暗証番号入力(1)による認証が、第1認証である。入力された暗証番号が登録者の暗証番号と一致しない場合、例えば、運転盤7の画面に「有効な暗証番号ではありません。入力しなおしてください」と表示されて(SA3)、終了する。
【0039】
上記第1認証で、暗証番号から登録者であることが認証された場合、運転盤7の画面に、例えば「スタートボタンを押してください」と表示される(SA4)。そして、利用者がスタートボタンを押すと(SA5)、スタートボタンが押されたことを検知し(SA6)、機械が起動する(SA7)。この機械起動により、暗証番号に紐付けられた収容車のサイズに適合する空のパレット6が呼ばれる。
【0040】
空のパレット6が入出庫部3に到着すると、ステップ(SA2)で第1認証のときの暗証番号が認証データに含まれることを確認しているので、自動的に入出庫扉5が開放する(SA8)。その後、利用者が車両Vを入庫させ(SA9)、利用者が車両Vから降りて、入出庫部3(駐車塔2の内部)の無人を確認する(SA10)。この時、運転盤7は、操作機能ロック(無効)の状態であり、運転盤7には「操作ロック中、塔内の無人を確認し、安全確認入力を行ってください」と表示(放送でもよい)されている(SA11)。
【0041】
そして、利用者が入出庫部3(駐車塔2の内部)の無人を確認し、入出庫部3内の「安全確認ボタン20(21)」を押す(SA12)。これにより、制御装置8は「安全確認ボタン」が(全て)押されて全ての安全確認ボタン20,21が無効になったか否かの判断(SA13)で、「YES」となる。その後、利用者が入出庫部3から入出庫口4を通って退出する(SA14)。この利用者が退出したことは、利用者を入出庫部3の後部センサ14が検知した後、入出庫扉外センサ15の順に検知したことで判断している(SA15)。
【0042】
なお、上記安全確認ボタン20(21)が押された後、利用者を入出庫部3のセンサ11(12)が検知し、その後、入出庫扉外センサ15で検知するまでに所定時間(例えば、10秒?20秒)を経過すると、上記安全確認ボタン20(21)が押されていない状態に戻る(SA16)。これにより、例えば、利用者が安全確認ボタン20(21)を押した後、再び車両V内の荷物を出しに戻った場合など、再び安全確認ボタン20(21)を押す操作から行うようにしている。
【0043】
そして、上記したように、利用者を入出庫部3(駐車塔2の内部)のセンサ11(12)が検知した後、後部センサ14、入出庫扉外センサ15の順に検知すると(SA15)、数秒後(例えば、5秒位)に運転盤7の操作機能のロックが解除される(SA17)。
【0044】
その後、運転盤7にて第2認証のための「暗証番号」を入力する(SA18)。そして、この「暗証番号」は、予め制御装置8に登録された認定取扱者の暗証番号に含まれるか否かが判断(認証)される(SA19)。この暗証番号入力(2)による認証が、第2認証である。入力された暗証番号が登録されていない場合、運転盤7に「有効な暗証番号ではありません。入力しなおしてください」と表示されて(SA20)、暗証番号入力待ちの状態に戻る。なお、入力しなおしの回数や認証が成功するまでの時間を所定値に制限し、これを超えるとステップ(SA11)に戻るなどの制御を加えることができる。
【0045】
一方、入力された暗証番号が認定取扱者として登録されている番号の場合には、何も表示しないか、必要に応じて「最終確認ボタンを押してください」などの表示が行なわれ、利用者が最終確認ボタン22を押すと(SA21)、制御装置8は、最終確認ボタン22が押されたことを検知する(SA22)。ここで、運転操作のロックが解除される。ただし、後述のように最終確認ボタン22を省略する場合、(SA19)の判定がYESとなった時点で運転操作のロックが解除される。その後、利用者が運転盤7の「扉閉ボタン」を押すと(SA23)、制御装置8は扉閉ボタンが押されたことを検知して(SA24)、入出庫扉5が閉じられる(SA25)。
【0046】
なお、上記最終確認ボタン22を押す操作(SA21)と、その最終確認ボタン22が押されたことの検知(SA22)は、省略してもよい(二点鎖線で囲む部分)。最終確認ボタン22を押す操作は、第2認証と順序を逆に入れ替えることもできる。
【0047】
また、上記入庫制御の説明では、入出庫部3の2箇所に安全確認ボタン20,21を設けた例としているが、安全確認ボタン20,21を、入出庫扉5の近傍の1箇所と、入出庫部3の対角線上に離れた複数箇所(例えば、前側と奥側の2箇所以上)とに設け、以下のように、条件に応じて使い分けるようにしてもよい。この使い分けとしては、通常時は入出庫扉5の近傍に設けた安全確認ボタンの入力のみで安全確認を行い、入出庫扉5の閉め忘れと推測される場合には、入出庫部3の対角線上に設けた安全確認ボタン20(21)を入力後、最後に入出庫扉5の近傍で安全確認ボタンを入力して退出するようにしてもよい。その後、運転盤7で最終確認ボタン22を押して暗証番号を入力(暗証番号を入力後、最終確認ボタン22を押してもよい)することで、入出庫扉5を閉鎖することができる。
【0048】
なお、「入出庫扉5の閉め忘れ」とは、例えば、入庫を行った認定取扱者と異なる認定取扱者が入出庫扉5を閉操作するときや、入庫と同一の認定取扱者であっても、一旦、入出庫口4から注意をそらして(入出庫口4の前から離れて)戻った場合などを指す。「入出庫扉5の閉め忘れ」の推測方法の一例を挙げると、ステップ(SA17)で運転盤7の操作機能のロックが解除されてから所定時間(例えば30秒)経過した場合や、全ての安全確認ボタン20,21が無効になっていない状態(安全確認ボタン20(21)の押し忘れ)でセンサ14,15が退出を検知した後、塔内のいずれのセンサ11?16も検知していない状態が所定時間(例えば30秒)続いた場合などに、閉め忘れとしての制御に切り替えることができる。
【0049】
このように、車両Vを入庫する場合、空のパレット6を呼ぶための第1認証用の「暗証番号」の入力と、車両Vの入庫後に入出庫扉5を閉めるための第2認証用の「暗証番号」の入力とを行うが、これらの認証は、「暗証番号」が認定取扱者として登録されている利用者(登録者)の「暗証番号」のいずれかであれば、両暗証番号が一致することを照合することなく運転盤7による運転操作のロック解除を可能としている。
【0050】
つまり、第1認証と第2認証とを行う者は、教育を受けた認定取扱者であって制御装置8に記憶された登録者であれば、入出庫部3に人が居残ることがないように入出庫扉5を閉じることができるので、第1認証者と第2認証者とが異なる場合でも運転盤7による運転操作のロック解除を可能としている。しかも、安全確認ボタン20(21)の操作と第2認証操作を組み合せることで、操作者に無人確認を行ったことへの意識付けを行うことができる。
【0051】
[出庫制御]
次に、図3に基づいて、上記安全確認装置10による出庫制御のフローを説明する。図の左側に利用者の行動を示し、右側に安全確認装置10における各ステップを示している。なお、この図でも、入出庫部3である駐車塔2の内部を、単に「塔内」と表示し、入出庫扉外センサ15を「扉外センサ」と表示する。
【0052】
まず、利用者が運転盤7において「暗証番号」を入力すると(SB1)、この入力された暗証番号が制御装置8に登録されている認定取扱者(登録者)の暗証番号に含まれる(暗証番号(認証情報)が認証データに含まれる)か否かが判断(認証)される(SB2)。この暗証番号入力(1)による認証が、第1認証である。入力された暗証番号が登録者の暗証番号と一致しない場合、例えば、運転盤7の画面に「有効な暗証番号ではありません。入力しなおしてください」と表示されて(SB3)、終了する。
【0053】
上記第1認証で、暗証番号から登録者であることが認証された場合、運転盤7の画面に、例えば「スタートボタンを押してください」と表示される(SB4)。そして、利用者がスタートボタンを押すと(SB5)、スタートボタンが押されたことを検知し(SB6)、機械が起動する(SB7)。この機械起動により、暗証番号に紐付けされた車両Vを収容している実車パレット(出庫パレット)が呼ばれる。
【0054】
出庫パレットが入出庫部3に到着すると、ステップ(SB2)で第1認証のときの暗証番号が認証データに含まれることを確認しているので自動的に入出庫扉5が開放する(SB8)。その後、利用者が入出庫部3(駐車塔2の内部)に入って車両Vに乗車し(SB9)、車両Vを入出庫部3から出庫させて、駐車塔2の外部で降車する(SB10)。この時、運転盤7は、操作機能がロック(無効)された状態であり、運転盤7には「操作ロック中、塔内の無人を確認し、安全確認入力を行ってください」と表示(放送でもよい)されている(SB11)。
【0055】
そして、利用者が入出庫部3(駐車塔2の内部)の無人を確認し、入出庫部3内の「安全確認ボタン20(21)」を押す(SB12)。これにより、制御装置8は「安全確認ボタン」が(全て)押されて全ての安全確認ボタン20,21が無効になったか否かの判断(SB13)で、「YES」となる。その後、利用者が入出庫部3から入出庫口4を通って退出する(SB14)。この利用者が退出したことは、利用者を入出庫部3の後部センサ14が検知した後、入出庫扉外センサ15の順に検知したことで判断している(SB15)。
【0056】
なお、上記安全確認ボタン20(21)が押された後、利用者を入出庫部3のセンサ11(12)が検知した後、入出庫扉外センサ15で検知するまでに所定時間(例えば、10秒?20秒)を経過すると、上記安全確認ボタン20(21)が押されていない状態に戻る(SB16)。これにより、例えば、利用者が安全確認ボタン20(21)を押した後、入出庫部3に所定時間以上とどまった場合、念のために、再び安全確認ボタン20(21)を押す操作から行うようにしている。
【0057】
そして、上記したように、利用者を入出庫部3(駐車塔2の内部)のセンサ11(12)が検知した後、後部センサ14、入出庫扉外センサ15の順に検知すると(SB15)、数秒後(例えば、5秒位)に運転盤7の操作機能のロックが解除される(SB17)。
【0058】
その後、運転盤7にて第2認証のための「暗証番号」を入力する(SB18)。そして、この「暗証番号」は、予め制御装置8に登録された認定取扱者の暗証番号に含まれるか否かが判断(認証)される(SB19)。この暗証番号入力(2)による認証が、第2認証である。入力された暗証番号が登録されていない場合、運転盤7に「有効な暗証番号ではありません。入力しなおしてください」と表示されて(SB20)、暗証番号入力待ちの状態に戻る。なお、入力しなおしの回数や認証が成功するまでの時間を所定値に制限し、これを超えるとステップ(SB11)に戻るなどの制御を加えることができる。
【0059】
一方、入力された暗証番号が認定取扱者として登録されている番号の場合には、何も表示しないか、必要に応じて「最終確認ボタンを押してください」などの表示が行なわれ、利用者が最終確認ボタン22を押すと(SB21)、制御装置8は、最終確認ボタン22が押されたことを検知する(SB22)。ここで、運転操作のロックが解除される。ただし、後述のように最終確認ボタンを省略する場合、(SB19)の判定がYESとなった時点で運転操作のロックが解除される。その後、利用者が運転盤7の「扉閉ボタン」を押すと(SB23)、制御装置8は扉閉ボタンが押されたことを検知して(SB24)、入出庫扉5が閉じられる(SB25)。
【0060】
なお、出庫の場合も、上記最終確認ボタン22を押す操作(SB21)と、その最終確認ボタン22が押されたことの検知(SB22)は、省略してもよい(二点鎖線で囲む部分)。最終確認ボタン22を押す操作は、第2認証の操作と順序を逆に入れ替えることもできる。
【0061】
また、この出庫制御の説明でも、入出庫部3の2箇所に安全確認ボタン20,21を設けた例としているが、安全確認ボタン20,21を、入出庫扉5の近傍の1箇所と、入出庫部3の対角線上に離れた複数箇所(例えば、前側と奥側の2箇所以上)とに設け、以下のように、条件に応じて使い分けるようにしてもよい。この使い分けとしては、通常時は入出庫扉5の近傍に設けた安全確認ボタンの入力のみで安全確認を行い、入出庫扉5の閉め忘れと推測される場合には、入出庫部3の対角線上に設けた安全確認ボタン20(21)を入力後、最後に入出庫扉5の近傍で安全確認ボタンを入力して退出するようにしてもよい。その後、運転盤7で最終確認ボタン22を押して暗証番号を入力(暗証番号を入力後、最終確認ボタン22を押してもよい)することで、入出庫扉5を閉鎖することができる。なお、「入出庫扉5の閉め忘れ」とは、上記入庫制御で説明しているため、説明は省略する。
【0062】
さらに、上記例では車両Vの出庫後に利用者が安全確認ボタン20(21)を押しているが(SB12)、入出庫部3の見通しが良い場合などでは、乗車(SB9)前に安全確認ボタン20(21)を押し、車両Vの出庫をセンサ14,15が検知した以降に同センサ14,15が侵入を検知しない限り、運転盤7の操作機能のロックが解除される(SB17)ようにしてもよい。
【0063】
このように、車両Vを出庫する場合も、出庫するパレット6を呼ぶための第1認証用の「暗証番号」の入力と、車両Vの出庫後に入出庫扉5を閉めるための第2認証用の「暗証番号」の入力とを行うが、これらの認証は、「暗証番号」が認定取扱者として登録されている利用者(登録者)の「暗証番号」のいずれかであれば、両暗証番号が一致することを照合することなく運転盤7の操作を可能としている。
【0064】
つまり、第1認証と第2認証とを行う者は、教育を受けた認定取扱者であって制御装置8に記憶された登録者であれば、入出庫部3(駐車塔2の内部)に人が居残ることがないように入出庫扉5を閉じることを教育されているので、第1認証者と第2認証者とが異なる場合でも運転盤7の操作を可能としている。
【0065】
そのため、例えば、入出庫扉5の閉め忘れがあったとしても、次の利用者が認定取扱者で登録者となっている者であれば、塔内の安全を確認した上で、運転盤7にて第2認証を行って、次の入庫又は出庫操作へ迅速に進むことができる。
【0066】
また、上記説明では「入庫制御」と「出庫制御」とを独立したフローで説明したが、運転盤7に暗証番号を入力し、認定取扱者であることを認証した後(上記「SA2」、「SB2」:第1認証後)、その登録者のパレット6に車両Vを入庫済か否かを判定し、入庫済であれば出庫、入庫していなければ入庫、と入庫か出庫かを自動的に判断して、それぞれのフローに沿って処理するようにしてもよい。例えば、暗証番号を入力した登録者の車両Vが入庫済の場合は「出庫」と判断して上記「出庫制御」のフローへと進み、入庫していない場合は「入庫」と判断して上記「入庫制御」のフローに進むようにできる。
【0067】
[総括]
以上のように、上記安全確認装置10によれば、駐車塔2の外部で入出庫扉5を開ける前に行う第1認証と、入出庫後に駐車塔2の外部で入出庫扉5を閉じる前に行う第2認証とにおいて、それぞれ操作権限を与えられた認定取扱者(登録者)が操作を行っているか否かを認証するようにしている。そのため、機械式駐車設備の取扱いに関し、教育・訓練を受けた認定取扱者によって、入出庫部3に人が居残った状態で入出庫扉5を閉鎖しないような運用をすることが可能となる。
【0068】
つまり、入出庫扉5の解放前と入出庫扉5の閉鎖前とに、運転盤7で登録者(操作権限を与えられた認定取扱者)であることを認証して入出庫扉5の開閉を可能とするため、入出庫部3に人が居残っていることの見落としや第三者(次の利用者)による不用意な入出庫扉5の閉鎖を未然に防止できる。
【0069】
しかも、入出庫部3で安全確認をして安全確認ボタン20(21)を押した後、認定取扱者が駐車塔2の外部で運転盤7において第2の認証を行うので、見落としによる入出庫扉5の閉鎖や、思い込みによる他の利用者の入出庫扉5の閉鎖を防止することができる。
【0070】
その上、認定取扱者であれば、第1認証のときの認証情報と第2認証のときの認証情報とを照合することなく異なる場合でも運転盤7の操作ができるため、先の利用者による入出庫扉5の閉め忘れが生じた場合、管理者や他の認定取扱者が第2認証操作を行って入出庫扉5を閉めることができるので、次の入出庫作業へと迅速に進むことが可能となる。
【0071】
なお、上記した実施形態では、認定取扱者の認証を「暗証番号」を用いて行っているが、IDカードの登録データ、IDリモコンの信号、などを用いて行ってもよく、認証のための手段は上記実施形態に限定されるものではない。
【0072】
また、上記した実施形態では、パレット式で駐車塔2を有する駐車設備を例にしているが、パレット式でないものや、駐車塔2もない機械式駐車設備においても適用でき、機械式駐車設備の構成は上記実施形態に限定されるものではない。また、入出庫扉が簡易的なフェンス状のものにも適用できる。
【0073】
さらに、上記した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0074】
1 機械式駐車設備
2 駐車塔
3 入出庫部
4 入出庫口
5 入出庫扉
6 パレット(車両配置部)
7 運転盤(認証装置)
8 制御装置
10 安全確認装置
11 左部センサ
12 右部センサ
13 前部センサ
14 後部センサ
15 入出庫扉外センサ
16 車両検知センサ
20 左安全確認ボタン(安全確認操作部)
21 右安全確認ボタン(安全確認操作部)
22 最終確認ボタン
V 車両
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が入出庫部において車両の入出庫を行う機械式駐車設備の安全確認装置であって、
前記機械式駐車設備の認定取扱者を、登録者の認証データとして記憶する制御装置と、
前記機械式駐車設備の操作時に利用者の認証を行う認証装置と、
前記入出庫部内の安全確認を行った後に操作する安全確認操作部と、
前記機械式駐車設備を運転操作する運転盤と、を備え、
前記制御装置は、前記入出庫部の入出庫扉を開放する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第1認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれる場合に前記入出庫扉を開放するとともに、前記運転盤による運転操作をロックし、
前記安全確認操作部が操作された後、前記入出庫扉を閉鎖する前に、利用者の認証情報を前記登録者の認証データと照合する第2認証を行い、該認証情報が前記認証データに含まれていることで前記第2認証のときの認証情報が前記第1認証のときの認証情報と一致しているか否かにかかわらず前記運転盤による運転操作のロックを解除可能に、かつ、入出庫扉を閉鎖可能に制御するように構成されている、ことを特徴とする機械式駐車設備の安全確認装置。
【請求項2】
前記安全確認操作部は、前記利用者が操作する安全確認ボタン、IDカード確認器、IDリモコン確認器、のいずれかを含んでいる、請求項1に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。
【請求項3】
前記安全確認操作部は、前記入出庫部内を見渡せる位置に配置されている、請求項1又は2に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。
【請求項4】
前記安全確認操作部は、前記入出庫部で入出庫する車両の少なくとも左位置と右位置とにそれぞれ配置されている、請求項1?3のいずれか1項に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。
【請求項5】
前記安全確認操作部は前記入出庫部内に配置され、
前記制御装置は、前記安全確認操作部を操作後、所定時間を経過するまで前記入出庫部内の物体を検知するセンサを無効とするように構成されている、請求項1?4のいずれか1項に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記安全確認操作部は、該安全確認操作部の有効状態又は無効状態を示す明示機能を有している、請求項1?5のいずれか1項に記載の機械式駐車設備の安全確認装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-24 
出願番号 特願2015-134685(P2015-134685)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (E04H)
P 1 651・ 537- YAA (E04H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 美紗子  
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 袴田 知弘
森次 顕
登録日 2019-03-01 
登録番号 特許第6487795号(P6487795)
権利者 新明和工業株式会社
発明の名称 機械式駐車設備の安全確認装置  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ