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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1374893
異議申立番号 異議2020-700233  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-02 
確定日 2021-04-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6588224号発明「炭酸感が改善された炭酸飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6588224号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6588224号の請求項1、2、4に係る特許を維持する。 特許第6588224号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6588224号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成27年4月27日に特許出願され、令和1年9月20日に特許権の設定登録がされ、同年10月9日にその特許公報が発行され、その後、令和2年4月2日に、特許異議申立人 松永 健太郎(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年6月19日付けで当審から取消理由通知が通知され、同年8月24日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年11月13日付けで当審から訂正拒絶理由通知が通知され、同年12月18日に訂正請求書の手続補正書、意見書及び上申書が提出され、令和3年1月21日付けで当審から特許法120条の5第5項に基づく通知書が出され、特許異議申立人から令和3年2月15日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正請求書に対する手続補正の適否について
令和2年11月13日付け訂正拒絶理由通知に対してなされた上記訂正請求書の手続補正は、拒絶理由の指摘のあった訂正事項を削除するものであるといえるので、上記訂正請求書に対する手続補正は訂正請求の趣旨を変更するものとはいえず、訂正拒絶理由は解消している。

令和2年8月24日に提出され、同年12月18日に補正された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。

2 訂正の内容
本件訂正の内容は以下の訂正事項1?3のとおりである。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「カフェイン及びカリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、及び
カリウムを25mg?50mg、
含有する前記炭酸飲料。」との記載を
訂正後に「カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、
カリウムを25mg?40mg、及び
カリウムとナトリウムを合計含量で40mg以下、
含有する前記炭酸飲料。」とする。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項4の「請求項1?3のいずれか1項に記載の」との記載を
訂正後に「請求項1又は2に記載の」とする。

なお、訂正前の請求項1?4について、請求項2?4は請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?4に対応する訂正後の請求項1?4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 判断
(1)訂正事項1について
ア 目的の適否について
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、請求項1の「カフェイン及びカリウムを含有する炭酸飲料」に、さらに「ナトリウムを含有する」ことを特定し、カリウムの含有数値範囲の上限を減縮して「カリウムを25mg?40mg」と特定し、「カリウムとナトリウムを合計含量で40mg以下」との特定事項を加えて限定しているのであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、4の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、訂正前の登録時の請求項3、本件明細書【0011】【0012】に記載されているので、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2、4の訂正も、同様の理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

オ 訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないのは明らかである。

イ 訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3) 訂正事項3について
ア 訂正事項3は、訂正前の請求項4について、請求項3が削除されたのに伴って、引用元の請求項の数を減少させる訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項の削除に伴って、引用元の請求項の数を減少させる訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないのは明らかである。

イ 訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

4 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

よって、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。

第3 特許請求の範囲の記載
本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1,2,4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」,「本件特許発明2」,「本件特許発明4」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1,2,4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(なお、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明を、「訂正前の本件特許発明1」?「訂正前の特許発明4」といい、まとめて、「訂正前の本件特許発明」ということもある。)。

「【請求項1】
カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、
カリウムを25mg?40mg、及び
カリウムとナトリウムを合計含量で40mg以下、
含有する前記炭酸飲料。
【請求項2】
カラメル色素を更に含む、請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
請求項1又は2に記載の炭酸飲料の製造方法。」

第4 取消理由及び特許異議申立理由
1 特許異議申立人が申し立てた理由
特許異議申立人は、下記の甲第1?8号証を提出し、以下の異議申立理由を主張している。
(1)新規性
異議申立理由1:甲第1号証には、訂正前の本件特許発明1,2,4に成分の含有量が該当するカフェイン及びカリウムを含有する炭酸飲料が記載されているので、訂正前の本件特許発明1,2,4は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、その特許は同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取消されるべきものである。

(2)進歩性
異議申立理由2-1:甲第1号証には、カフェイン、カリウム及びナトリウムを含有する炭酸飲料が記載され、カフェイン及びカリウムの含有量が該当し、カリウム及びナトリウムの合計量は設計的事項であるので、訂正前の本件特許発明1?4は、甲第1号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
異議申立理由2-2:甲第2号証には、カフェイン及び濃縮果汁を含有する炭酸飲料が記載され、甲第5号証の果汁食品成分表、甲第6号証のカフェインの苦みの、柑橘類に含まれるナリンジンによる抑制技術が記載されているから、訂正前の本件特許発明1?4は、甲第2号証記載の発明及び甲第5,6号証記載の技術常識から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
異議申立理由2-3:甲第3号証には、カフェイン、ナトリウム及び濃縮果汁を含有する炭酸飲料が記載され、甲第5号証の果汁食品成分表、甲第6号証のカフェインの苦みの、柑橘類に含まれるナリンジンによる抑制技術が記載されているから、訂正前の本件特許発明1?4は、甲第3号証記載の発明及び甲第5,6号証記載の技術常識から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
異議申立理由2-4:甲第4号証には、カフェイン、ナトリウム及び濃縮果汁を含有する炭酸飲料が記載され、甲第5号証の果汁食品成分表、甲第6号証のカフェインの苦みの、柑橘類に含まれるナリンジンによる抑制技術が記載されているから、訂正前の本件特許発明1?4は、甲第4号証記載の発明及び甲第5,6号証記載の技術常識から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(3)サポート要件
異議申立理由3-1:本件明細書【0004】の「炭酸飲料のカフェイン含量を高めると、炭酸感が十分に得られないことが判明した。」「本発明は、炭酸感が改善された、カフェインを含有する炭酸飲料の提供を目的とする。」との課題の記載は、発明の詳細な説明から読み取れず、技術常識でもないので、発明の構成を採用することで上記課題を解決できると理解できず、訂正前の本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取消されるべきものである。
異議申立理由3-2:訂正前の本件特許発明は、カリウムの由来を特定しておらず、果汁は一般にカリウムを含有するので(甲第5号証参照)、果汁から含有させる場合を含んでいるが、果汁を含有させることで炭酸感が低下することが技術常識(甲第7,8号証参照)であるから、本件明細書で具体例が示されたクエン酸カリウムの場合以外、課題を解決できると認識できないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取消されるべきものである。

(4)実施可能要件
異議申立理由4-1:本件明細書【0004】の「炭酸飲料のカフェイン含量を高めると、炭酸感が十分に得られないことが判明した。」「本発明は、炭酸感が改善された、カフェインを含有する炭酸飲料の提供を目的とする。」との課題の記載は、発明の詳細な説明から読み取れず、技術常識でもないので、発明の構成を採用することで上記課題を解決して所望の効果を奏すると理解できず、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の本件特許発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、その特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取消されるべきものである。
異議申立理由4-2:訂正前の本件特許発明は、カリウムの由来を特定しておらず、果汁は一般にカリウムを含有するので(甲第5号証参照)、果汁から含有させる場合を含んでいるが、果汁を含有させることで炭酸感が低下することが技術常識(甲第7,8号証参照)であるから、本件明細書で具体例が示されたクエン酸カリウムの場合以外、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の本件特許発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、その特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取消されるべきものである。

甲第1号証:Energizing Black Cherry Flavored Sparkling Juice Drinkの製品情報(https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2306530/)掲載時期2014年2月,株式会社MINTEL
甲第2号証:The Doctor Energy Drinkの製品情報(https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2995471/)掲載時期2015年2月,株式会社MINTEL
甲第3号証:Energy & Juice Drinkの製品情報(https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2607433/)掲載時期2014年8月,株式会社MINTEL
甲第4号証:Energy + Juice Drinkの製品情報(https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1336000/)掲載時期2010年6月,株式会社MINTEL
甲第5号証:食品成分データベースの出力物,(https://fooddb.mext.go.jp/result/result_top.pl?USER_ID=10212)印刷日2020年3月26日,特許異議申立人
甲第6号証:特許第2933496号公報
甲第7号証:特許第5296173号公報
甲第8号証:特許第4324761号公報

2 当審が通知した取消理由
理由1(新規性):訂正前の本件特許発明1,2,4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、その特許は同法第29条の規定に違反してされたものである。
理由2(委任省令要件):本件特許は、訂正前の本件特許発明1?4に係る発明について、【0004】に記載された「本件特許発明の課題」と本件特許発明の「カフェイン」を含有する「炭酸飲料」において、「カリウム」を特定量添加するという「炭酸感改善に係る解決手段」との関係が不明確で、発明の技術上の意義が不明確となっており、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由3(サポート要件):本件特許は、訂正前の請求項1?4の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、訂正前の請求項1?4に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。


電子的技術情報1:Energizing Black Cherry Flavored Sparkling Juice Drinkの製品情報(https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2306530/)掲載時期2014年2月,株式会社MINTEL(甲第1号証)

第5 当審の判断
取消理由通知に記載した取消理由について
1 理由1(特許法第29条第1項第3号)について
(1)甲号証の記載事項
(1-1)甲第1号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的情報である甲第1号証には、以下の記載がある。
成分の欄の記載は訳文にて示す。
(1a)
「製品情報

栄養表示
一食あたりの量16.00fl.oz(US)
パック当たり:1.00

単位

1日の摂取量(%)
カロリー80.00kcal
総脂肪分0.00g 0.00%
ナトリウム170.00mg 7.00%
カリウム 120.00mg 3.00%
総炭水化物 20.00g 7.00%
糖質 19.00g
タンパク質 0.00g
カフェイン 92.00mg

・・・
成分
炭酸水・・・カラメル色素」(栄養表示、成分の欄)

(1-2)甲第2号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的情報である甲第2号証には、以下の記載がある。
成分の欄の記載は訳文にて示す。
(2a)「
製品情報

単位:100.00ml

1日の摂取量(%)
エネルギー(kJ)186.00kJ
エネルギー(kcal)44.00kcal
炭水化物11.00g
糖質10.00g
食塩0.02g
リボフラビン0.70mg 50.00%
ナイアシン8.50mg 53.00%
ビタミンB6 0.80mg 57.00%
ビタミンB12 2.50μg 100.00%
・・・
成分
炭酸水,・・・,濃縮果汁(4%)(オレンジ濃縮果汁、レモン濃縮果汁),・・・カフェイン(0.03%),・・・」(栄養表示、成分の欄)

(1-3)甲第3号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的情報である甲第3号証には、以下の記載がある。
商品説明、成分の欄の記載は訳文にて示す。
(3a)「
製品情報

栄養表示
一食あたりの量240.00ml
パック当たり:2.00

単位:
エネルギー(kcal)78.00kcal
炭水化物19.00g
糖質19.00g
ナトリウム19.00mg
ビタミンB2 1.60mg
ビタミンB3 11.50mg
ビタミンB6 1.90mg
ビタミンB12 5.80μg
タウリン893.00mg
Panax Ginseng203.00mg
L-カルニチン4.80mg
カフェイン47.00mg
・・・
商品説明
・・・
・・・果汁30%

成分
炭酸水,・・・,濃縮果汁(りんご濃縮果汁、オレンジ濃縮果汁、モモ濃縮果汁、タンジェリン濃縮果汁、パインアップル濃縮果汁、ぶどう濃縮果汁),・・・カフェイン,・・・着色剤,・・・」(栄養表示、商品説明、成分の欄)

(1-4)甲第4号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的情報である甲第4号証には、以下の記載がある。
商品説明、成分の欄の記載は訳文にて示す。
(4a)「
製品情報

栄養表示

単位:100.00ml
エネルギー(kJ)122.00kJ
エネルギー(kcal)29.00kcal
タンパク質0.00g
炭水化物7.00g
糖質7.00g
脂質0.00g
飽和脂肪酸0.00g
繊維質0.10g
ナトリウム0.01g
ビタミンB2 0.70mg
ビタミンB3 8.50mg
ビタミンB6 0.80mg
ビタミンB12 2.50μg
タウリン400.00mg
高麗人参80.00mg
L-carnitine l-tartra・・・4.00mg
・・・
商品説明
・・・
・・・果汁50%

成分
濃縮果汁(50%)(りんご濃縮果汁、オレンジ濃縮果汁、モモ濃縮果汁、マンダリン濃縮果汁、パインアップル濃縮果汁、白ぶどう濃縮果汁),炭酸水,・・・着色剤・・・カフェイン(0.03%),・・・」(栄養表示、商品説明、成分の欄)

(1-5)甲第5号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的情報の出力物である甲第5号証には、以下の記載がある。

(5a)「
食品成分データベース
・・・
食品成分 … ナトリウム カリウム 重量
単位 … mg mg g
果実類(かんきつ類)/うんしゅうみかん/… 1 21 100
果汁飲料/20%果汁入り飲料
果実類(かんきつ類)/オレンジ/バレンシア/…6 57 100
果汁飲料/30%果汁入り飲料
果実類/パインアップル/ …1 18 100
果汁飲料/10%果汁入り飲料
果実類/ぶどう/ …6 3 100
果汁飲料/10%果汁入り飲料
果実類/(もも類)/もも/ …3 35 100
30%果汁入り飲料(ネクター)
果汁飲料/りんご/果実飲料30%果汁入り飲料…8 24 100
果実類/(かんきつ類)/レモン/果汁、生 …2 100 100
TOTAL… 27 260 700


(1-6)甲第6号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、以下の記載がある。

(6a)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、飲料に適さない強い甘味を付与することなくカフェインの苦みが抑制され、味が良く飲み易いカフェイン強化飲料を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らが上記課題を解決するために研究した結果、柑橘類に含まれる苦み物質ナリンジンが、カフェイン特有の後味に残る嫌な苦みをマスキングすることを発見し、カフェイン含有量が多いため苦みが強い飲料に、所定量のナリンジンを加えることにより、多量の甘味原料を加えることなくカフェインの苦みを大幅に抑制できるという知見を得た。したがって、本発明はカフェイン25?175mg%及びナリンジン5?70mg%を含む、ブリックス6?20のカフェイン強化飲料を提供するものである。なお、1mg%とは溶媒100g中に溶質1mgが溶けていることを意味する。本発明で用いるナリンジンとは、柑橘類に多く含まれる苦み物質であって、グルコース、ラムノース及びナリンゲニンからなる、下記一般式(I)で表されるフラボノ配糖体(4', 5, 7-トリヒドロキシフラボノン)である。
・・・
【0006】このナリンジンは非常に苦く、キニーネよりも強い苦みがあり、水で50000倍に希釈しても苦みを感じるが、柑橘類などに含まれている場合に食欲を刺激する良質な苦みを呈する。このナリンジンはミカン科のグレープフルーツ、夏みかん、ダイダイ、ザボンの果実や果皮、特に未熟果に多く含まれており、通常、グレープフルーツ、夏みかん及びダイダイの果皮から抽出して製造する。本発明のカフェイン強化飲料では、ナリンジンの含有量を5?70mg%、好ましくは10?60mg%、より好ましくは15?45mg%とするのが適当である。このようにナリンジンの量を限定するのは、5mg%よりも小さいとナリンジンの苦みに比べて、カフェインの苦味の影響が強くナリンジンの効果が認められないからであり、70mg%よりも大きいとナリンジンの苦みが強くなりすぎて、ベースとなる飲料の味覚を損なうからである。
【0007】本発明では、食品添加物である精製又は濃縮されたナリンジンを使用することもできるが、ナリンジンを多く含む柑橘類の果実や果皮の搾汁を所望の含有量となるように、ベースとなる飲料に加えてもよい。このナリンジンは、カフェイン強化飲料を製造するどの段階で加えてもよい。なお、本発明のカフェイン強化飲料に炭酸を加えてもよく、これにより口内に刺激味を与え、爽快感がプラスされることから、カフェインの眠気抑制効果を助長することができる。しかし苦味抑制にはマイナス効果であり、炭酸の添加量を増すに従いカフェイン強化飲料の苦味は増大する。したがって、本発明のカフェイン強化飲料に炭酸を加える場合、ナリンジンの苦味抑制効果を阻害しないように、炭酸の添加量を調節することが望ましい。本発明のカフェイン強化飲料では、カフェイン含有量が25?175mg%、好ましくは50?150mg%、さらに好ましくは75?125mg%とするのが適当である。このようにカフェイン含有量を限定するのは、25mg%よりも低いとカフェインの苦みが小さく、特に苦みを抑制する必要がないからであり、175mg%よりも大きいと苦みが強すぎ、ナリンジンでその苦みを抑制できず、味の点から飲料として適切でないからである。」

(1-7)甲第7号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、以下の記載がある。

(7a)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、柑橘類のフレーバー等を含有する炭酸飲料や柑橘類の果汁(特にオレンジ果汁)等を含有する炭酸飲料は、カロテノイドを含有するものであるが、このカロテノイドが油っぽい好ましくない味を有するため、炭酸の刺激感が弱くなるという問題があった。そのため、従来のカロテノイド含有炭酸飲料においては、炭酸の刺激感の弱いものしか存在しなかった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、カロテノイドを含有しながら炭酸の刺激感が強く、かつカロテノイドに由来する油っぽい味が抑制された容器詰炭酸飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第一に本発明は、カロテノイド及びヘスペリジンを含有する容器詰炭酸飲料であって、前記容器詰炭酸飲料における前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]を前記容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aで除した値[H]/Aが48?98であることを特徴とする容器詰炭酸飲料を提供する(発明1)。
【0007】
上記発明(発明1)においては、前記容器詰炭酸飲料における前記カロテノイドの含有量(mg/L)[C]に対する前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]の比[H]/[C]が176?1000であることが好ましい(発明2)。」

(1-8)甲第8号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第8号証には、以下の記載がある。

(8a)「発明の開示
従来、果汁と炭酸ガスの両方とも多く含む炭酸飲料が提案されていなかった理由については定かではない。しかし、後述の比較例に示すように、炭酸飲料に果汁を配合すると、当該果汁に含まれる糖類の割合分、糖類の添加量を減らして通常の炭酸飲料と同等の甘味量(砂糖換算で8?14重量%程度)になるように調整した場合であっても、口当たりが重くなり炭酸飲料本来の爽快感が消失してしまうこと(比較例1)、一方、果汁の配合量を減らすと、甘味量は同じにもかかわらず炭酸の刺激が突出してしまう(比較例2)などという具合に、果汁と炭酸ガスの両者を配合して味や風味のバランスを図ることは極めて難しいことがわかった。
本発明の目的は、果汁等の植物成分と炭酸ガスの両者を含有する飲料であって、植物成分の豊かな味わいと炭酸ガスの爽やかな刺激感(爽快感)をバランス良く備えた植物成分含有炭酸飲料を提供することである。
また本発明の目的は、野菜や果物の搾汁等の植物成分によるボディー感、又は/及び、炭酸ガスの刺激感が互いに突出せずに、植物成分の豊かな味わいと炭酸ガスの爽やかな刺激感(爽快感)をバランス良く備えた植物成分含有炭酸飲料の製造方法を提供することである。
さらに本発明の目的は、果汁等の植物成分と炭酸ガスを比較的多く含有する炭酸飲料において、該植物成分に起因して生じる強すぎるボディー感(重い口当たり)と炭酸ガスに起因して生じる刺激感を軽減する方法を提供することである。
本発明者らは、植物成分に由来する豊かな味わいと炭酸ガスによる刺激を有しながらも爽やかさで清涼感を備えた炭酸飲料を開発するために種々試行した結果、10?80重量%の植物成分と2容量%より多い炭酸ガスを含む処方において、高甘味度甘味料、特に好ましくはスクラロースを特定の割合で配合して可溶性固形分含量を特定量以下に抑えることにより、口当たりが重くなりすぎず、また刺激が強くなりすぎずに、所期の目的が達成できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。」(3頁4?28行)

(2) 電子的技術情報1記載の発明
摘記(1a)のとおり、電子的技術情報1には、飲料として、ナトリウム170.00mg/16.00fl.oz(US)、カリウム 120.00mg/16.00fl.oz(US)、カフェイン 92.00mg/16.00fl.oz(US)を含むものが記載され、1fl.oz(US)=29.573・・・mlであるから各成分を100mlあたりに換算するとナトリウム35.93mg/100ml、カリウム 25.36mg/100ml、カフェイン 19.44mg/100mlを含むものが記載されているといえる。
また、該飲料は炭酸水を含んでいるのであるから炭酸飲料である。
さらに、カラメル色素も含まれている。

したがって、電子的技術情報1には、以下の発明が記載されているといえる(以下「引用発明1」という。)。
「炭酸飲料100mlあたり
カフェインを19.44mg、
カリウムを 25.36mg、
ナトリウムを35.93mg、
カラメル色素を
含有する前記炭酸飲料」

また、電子技術情報1から、上記引用発明を成分として炭酸飲料を製造したことは理解できるので、以下の発明も記載されているといえる(以下「引用製造方法発明1」という。)。

「炭酸飲料100mlあたり
カフェインを19.44mg、
カリウムを 25.36mg、
ナトリウムを35.93mg、
カラメル色素を
含有する前記炭酸飲料の製造方法」

(3) 対比・判断
(3-1)本件特許発明1との対比・判断
ア 対比
引用発明1の「炭酸飲料100mlあたり」それぞれ、
「カフェインを19.44mg」、「カリウムを 25.36mg」、「含有する」することは、本件特許発明1の「当該炭酸飲料100ml当たり」、それぞれ、「カフェインを10mg?40mg」、「カリウムを25mg?40mg」、「含有する」することに該当している。
そして、引用発明1の「炭酸飲料」は、カフェイン、カリウム、及びナトリウムを成分として含有しているのであるから、本件特許発明1の「カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料」に相当する。
したがって、本件特許発明1と引用発明1とは
「カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、
カリウムを25mg?40mg、
含有する前記炭酸飲料。」である点で一致しており、
以下の点で相違する。

相違点1:本件特許発明1は、「カリウムとナトリウムを合計含量で40mg以下」であることが特定されているものの、引用発明1においては、カリウムとナトリウムの合計含量61.29mgである点。

イ 判断
相違点1の判断について、本件特許発明1と引用発明1のカリウムとナトリウムの合計含量が相違している以上、上記相違点1は、実質的相違点であり、本件特許発明1は、電子的技術情報1に記載された発明とはいえない。

(3-2)本件特許発明2との対比・判断について
ア 対比
本件特許発明2は、本件特許発明1において、「カラメル色素を更に含む」ことを特定したものであり、上記(3-1)アで対比したのと同様に、
本件特許発明2と引用発明1は、
「カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、
カリウムを25mg?40mg、
含有し、カラメル色素を更に含む前記炭酸飲料。」である点で一致しており、上記相違点1を有する。

イ 判断
そして、上記(3-1)イの相違点の判断のとおり、本件特許発明2と引用発明1のカリウムとナトリウムの合計含量が相違している以上、上記相違点1は、実質的相違点であり、本件特許発明2は、電子的技術情報1に記載された発明とはいえない。

(3-3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4は、本件特許発明1又は2の炭酸飲料を「炭酸飲料の製造方法」として特定したものであり、上記(3-1)ア又は(3-2)アで対比したのと同様に、本件特許発明4と引用製造方法発明1は、
「カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、
カリウムを25mg?40mg、
含有する(また、本件特許発明2を引用する場合は、カラメル色素を更に含む点も一致点となる。)前記炭酸飲料の製造方法。」である点で一致しており、上記相違点1を有する。

イ 判断
そして、上記(3-1)イ又は(3-2)イの相違点の判断のとおり、本件特許発明4と引用製造方法発明1のカリウムとナトリウムの合計含量が相違している以上、上記相違点1は、実質的相違点であり、本件特許発明4は、電子的技術情報1に記載された発明とはいえない。

(4)取消理由1についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正によって、本件特許発明1,2,4に対する取消理由1は解消している。

2 理由2(特許法第36条第4項第1号)について
(1)判断
特許権者の提出した乙第1号証(実験成績証明書)には、実験Aとして、本件明細書【0026】?【0029】に記載した方法によって得られた炭酸飲料の炭酸飲料の評価結果が示され、本件明細書【0030】に既に示されていた【表2】の結果を補足する結果が示されている。
カリウムが添加されていない場合のカフェインの増量によっては、基本的に炭酸感の改善はなく、カフェイン入りの炭酸飲料において、炭酸感の向上に問題が存在していることは一応読み取れる。
そして、上記カフェイン入りの炭酸飲料における炭酸感の向上という課題に対して、表2全体でみれば、その解決手段として、一定量のカフェインを含有させた場合に、カリウムを一定量含有させることで、炭酸飲料の炭酸感が十分に向上していることが理解できる。
また、乙第1号証の値は、本件明細書【0030】に既に示されていた【表2】の値の間を埋めるものであり、かつ整合したものである(【0004】の「本願の発明者は、カフェインを含有する炭酸飲料の開発を行っている。その過程において、炭酸飲料のカフェイン含量を高めると、炭酸感が十分に得られないことが判明した。」との記載自体には、一部不明確な点はあるものの上記結論に影響するものではない。)。

(2)取消理由2についてのまとめ
したがって、【0004】の記載の一部に不明確な記載はあるものの、本件特許発明の課題と解決手段の関係は、一応明確になっており、発明の技術上の意義も明確であるといえるので、本件の発明の詳細な説明の記載についての取消理由2は解消している。

3 理由3(特許法第36条第6項第1号)について
(1)本件特許発明に関する特許法第36条第6項第1号の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)本件特許発明の課題
本件特許発明1,2の課題は、【0004】【0005】の「本願の発明者は、カフェインを含有する炭酸飲料の開発を行っている。その過程において、炭酸飲料のカフェイン含量を高めると、炭酸感が十分に得られないことが判明した。そこで、2価の無機金属塩を特定量で添加する等によって、カフェインを含有する炭酸飲料の炭酸感を改善することを試みたが、十分な効果を得ることはできなかった。カフェインを含有する炭酸飲料において、炭酸感に改善の余地があることは、本願の発明者により初めて見いだされたことであり、従来技術として知られていないし示唆もされていない。本発明は、炭酸感が改善された、カフェインを含有する炭酸飲料の提供を目的とする。」「以上の事情に鑑み、本願の発明者は、炭酸飲料に配合することのできる様々な成分に着目し、各成分と炭酸感との関連について検討した。鋭意検討の結果、カフェインを含有する炭酸飲料において、カリウムが特定量で存在する場合、炭酸感の改善に寄与し得ることを見出した。更に検討を進めたところ、特定量のカリウムが、特定量のカフェインと組み合わされた場合、炭酸感が顕著に改善されることを突き止めた。このような知見に基づいて、本発明を完成させた。」(下線は、当審にて追加。以下同様。)との記載及び本件明細書全体の記載を参酌して、カフェインを含有する炭酸飲料において、炭酸感が改善された、炭酸飲料の提供にあると認める。
また、本件特許発明4の課題は、炭酸感が改善された、カフェインを含有する炭酸飲料の製造方法の提供にあると認める。

(3)請求項1には、前記第3のとおり、「カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料」において、「当該炭酸飲料100ml当たり」の「カフェインを10mg?40mg」、「カリウムを25mg?40mg」、「カリウムとナトリウムを合計含量で40mg以下」「含有する」することを特定した物の発明が記載されている。
また、請求項2には、請求項1において、「カラメル色素を更に含む」ことを特定した物の発明が記載されている。
そして、請求項4には、請求項1又は2の炭酸飲料の製造方法の発明が記載されている。

(4) 発明の詳細な説明の記載
ア 本件の発明の詳細な説明には、特許請求の範囲に記載された発明に対応した記載として、実質的な繰り返し記載を除いて以下のような記載がある。

イ まず、【0008】には、炭酸飲料の種類に関する記載、【0009】には、カフェイン含有飲料に対するミネラル一般の配合の炭酸感の従来認識、カフェインとカリウムの単なる組み合わせを超えた相乗的効果についての記載、【0010】には、カフェインの由来と定量条件の記載、【0011】には、「本発明においては、食品へ配合することが認められている限り、いずれの原料をカリウムの供給源として用いてもよい。限定されないが、例えば、炭酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カリウム、水酸化カリウム、乳酸カリウム、酒石酸カリウム、コハク酸カリウム、リンゴ酸カリウム、クエン酸カリウム、及びフマル酸カリウム等を、本発明において、カリウムの供給源として用いることができる。本発明の炭酸飲料におけるカリウム含量は、炭酸感の改善効果が奏される限り、特に限定されない。例えば、炭酸飲料100ml当たりのカリウム含量は、14mg以上、20mg以上、25mg以上、30mg以上、35mg以上、又は40mg以上を下限にすることができる。そして、カリウム含量の上限を定めることもでき、例えば、炭酸飲料100ml当たり、50mg以下、45mg以下、40mg以下、35mg以下、又は30mg以下にすることができる。別の観点から、飲料100ml当たりのカリウムの含量は、6mg?50mg、10mg?50mg、15mg?50mg、20mg?45mg、25mg?40mg、又は30mg?40mgにすることができる。カリウム含量の測定は、当業者に周知となっているいずれの方法で行ってもよいが、例えば、原子吸光光度法(塩酸抽出法)で測定することができる。本発明においては、別段の記載がなければ、当該方法によりカリウム含量を測定するものとする。」とのカリウムの供給源と含有量、含量測定方に関する記載がある。
また、【0012】には、「本発明の炭酸飲料は、更にナトリウムを含有していてもよい。ナトリウムの供給源となる原料は、食品へ配合することができる限り、いずれのものを用いてもよい。・・・」とのナトリウムの供給源等の記載がある。
さらに、【0014】?【0024】には、炭酸飲料の製造方法に関する記載がなされ、【0021】には、カリウムとナトリウムの合計含量の上限の技術的意義の記載やカフェインを含有する炭酸飲料において、ナトリウムが一定量を超えて存在すると炭酸感の改善が妨げられることについて記載がある。

ウ 具体的記載としては、[試験例1]において、クエン酸カリウムを用いた炭酸感の改善効果の実施例が、[試験例2]において、カラメル色素存在下での炭酸感の改善効果を試験例1に準じて行った実施例が、[試験例3]において、ナトリウムの炭酸感への影響を試験例1の成分にクエン酸ナトリウムを配合して検討した実施例が、[試験例4]において、カラメル色素存在下でのナトリウムの炭酸感への影響を試験例3の成分にカラメル色素を配合して検討した実施例がそれぞれ示されている。

(5)対比・判断
ア 甲第7号証には、【0004】に「しかし、柑橘類のフレーバー等を含有する炭酸飲料や柑橘類の果汁(特にオレンジ果汁)等を含有する炭酸飲料は、カロテノイドを含有するものであるが、このカロテノイドが油っぽい好ましくない味を有するため、炭酸の刺激感が弱くなるという問題があった。そのため、従来のカロテノイド含有炭酸飲料においては、炭酸の刺激感の弱いものしか存在しなかった。」との記載(摘記(7a))や甲第8号証には、「従来、果汁と炭酸ガスの両方とも多く含む炭酸飲料が提案されていなかった理由については定かではない。しかし、後述の比較例に示すように、炭酸飲料に果汁を配合すると、当該果汁に含まれる糖類の割合分、糖類の添加量を減らして通常の炭酸飲料と同等の甘味量(砂糖換算で8?14重量%程度)になるように調整した場合であっても、口当たりが重くなり炭酸飲料本来の爽快感が消失してしまうこと(比較例1)、一方、果汁の配合量を減らすと、甘味量は同じにもかかわらず炭酸の刺激が突出してしまう(比較例2)などという具合に、果汁と炭酸ガスの両者を配合して味や風味のバランスを図ることは極めて難しいことがわかった。」との記載(摘記(8a))があるものの、それらの記載は、果汁に含まれるカロテノイドにより、相対的に炭酸の刺激感が弱くなるという点や、果汁と炭酸ガスの両者を配合した場合、同等の甘味料での口当たりの重さ等の味や風味のバランスの困難さがあるとの点に着目した見解の一つであって、本件特許発明のように、カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料において、カフェイン含有量やカリウム含有量、カリウムとナトリウムの合計含有量を特定範囲にした場合にも、一定の炭酸感の向上が生じないことまでも技術常識として示すものとはいえない。

イ 本件明細書には、上述のとおり、カフェイン含有飲料に対するミネラル一般の配合の炭酸感の従来認識、カフェインとカリウムの単なる組み合わせを超えた相乗的効果についての記載(【0009】)、「本発明においては、食品へ配合することが認められている限り、いずれの原料をカリウムの供給源として用いてもよい。限定されないが、例えば、炭酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カリウム、水酸化カリウム、乳酸カリウム、酒石酸カリウム、コハク酸カリウム、リンゴ酸カリウム、クエン酸カリウム、及びフマル酸カリウム等を、本発明において、カリウムの供給源として用いることができる。・・・炭酸飲料100ml当たりのカリウム含量は、・・・25mg以上、・・・以上を下限にすることができる。そして、カリウム含量の上限を定めることもでき、・・・40mg以下・・・にすることができる。別の観点から、飲料100ml当たりのカリウムの含量は、・・・25mg?40mg・・・にすることができる。カリウム含量の測定は、当業者に周知となっているいずれの方法で行ってもよいが、例えば、原子吸光光度法(塩酸抽出法)で測定することができる。本発明においては、別段の記載がなければ、当該方法によりカリウム含量を測定するものとする。」とのカリウムの供給源と含有量、含量測定方法に関する記載(【0011】) 、「本発明の炭酸飲料は、更にナトリウムを含有していてもよい。ナトリウムの供給源となる原料は、食品へ配合することができる限り、いずれのものを用いてもよい。・・・」とのナトリウムの供給源等の記載(【0012】)、【0014】?【0024】の炭酸飲料の製造方法に関する記載、【0021】のカリウムとナトリウムの合計含量の上限の技術的意義の記載やカフェインを含有する炭酸飲料において、ナトリウムが一定量を超えて存在すると炭酸感の改善が妨げられることについて記載が存在する。
そして、[試験例1]におけるクエン酸カリウムを用いた炭酸感の改善効果の実施例、[試験例2]におけるカラメル色素存在下での炭酸感の改善効果を試験例1に準じて行った実施例、[試験例3]におけるナトリウムの炭酸感への影響を試験例1の成分にクエン酸ナトリウムを配合して検討した実施例、[試験例4]における、カラメル色素存在下でのナトリウムの炭酸感への影響を試験例3の成分にカラメル色素を配合して検討した各実施例において、いずれも炭酸感の一定程度の向上が確認されている。
さらに、乙第1号証の、本件明細書試験例1に沿って実施した塩化カリウム、リン酸カリウムを用いた実験B、本件明細書試験例3に沿って実施した塩化ナトリウムを用いた実験C、オレンジ果汁を用いた以外は、実験Cと同様に実施した実験Dにおいても、カリウム、ナトリウムの供給源に基づく対陰イオンが異なっても、柑橘類であるオレンジ果汁を供給原としたものでも、炭酸感が向上していることが理解できるといえる。

以上のとおり、発明の詳細な説明には、本件特許発明の特定事項に対応した、カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料において、当該炭酸飲料100ml当たり、カフェインを10mg?40mg、カリウムを25mg?40mg、及びカリウムとナトリウムの合計含量が40mg以下、含有する前記炭酸飲料において、炭酸感の向上が一定程度得られていることが当業者において、理解できる程度に示されているのであるから、乙第1号証の実験B,C,Dの結果も考慮すると、本件特許発明の課題が解決できていると認識できる。

(6)取消理由3のまとめ
したがって、本件特許発明1,2,4は、発明の詳細な説明に記載されたものといえ、取消理由3は解消している。

4 小括
以上のとおり、取消理由1?3は解消している。

取消理由で採用しなかった特許異議申立理由についての検討
1 進歩性(異議申立理由2-1、2-2、2-3、2-4)について
(1)甲第1?4号証記載の発明
甲第1?4には、以下の発明が記載されているといえる。
(1-1)甲第1号証記載の発明(再掲)
「炭酸飲料100mlあたり
カフェインを19.44mg、
カリウムを 25.36mg、
ナトリウムを35.93mg、
カラメル色素を
含有する前記炭酸飲料」(引用発明1)(前記第5 1(2)参照)
「炭酸飲料100mlあたり
カフェインを19.44mg、
カリウムを 25.36mg、
ナトリウムを35.93mg、
カラメル色素を
含有する前記炭酸飲料の製造方法」(引用製造方法発明1)(前記第5 1(2)参照)

(1-2)甲第2号証記載の発明
甲第5号証の食品データベースから一応、オレンジ果汁及びレモン果汁にナトリウム及びカリウムが微量でも含有されていることを技術常識であるとして、炭酸飲料の比重を1と仮定して計算すると、以下の発明が認定できる。

「カフェイン、カリウム、ナトリウムを含有し、炭酸飲料100mLあたりカフェインを30mg含有する前記炭酸飲料」(引用発明2)
「カフェイン、カリウム、ナトリウムを含有し、炭酸飲料100mLあたりカフェインを30mg含有する前記炭酸飲料の製造方法」(引用製造方法発明2)

(1-3)甲第3号証記載の発明
甲第5号証の食品データベースから一応、リンゴ濃縮果汁等にカリウムが微量でも含有されていることを技術常識であるとして、以下の発明が認定できる。

「カフェイン、カリウム、ナトリウム、着色料を含有し、炭酸飲料100mLあたりカフェインを19.580mg、ナトリウムを7.92mg含有する前記炭酸飲料」(引用発明3)
「カフェイン、カリウム、ナトリウム、着色料を含有し、炭酸飲料100mLあたりカフェインを19.580mg、ナトリウムを7.92mg含有する前記炭酸飲料の製造方法」(引用製造方法発明3)

(1-4)甲第4号証記載の発明
甲第5号証の食品データベースから一応、リンゴ濃縮果汁等にカリウムが微量でも含有されていることを技術常識であるとして、以下の発明が認定できる。

「カフェイン、カリウム、ナトリウム、着色料を含有し、炭酸飲料100mLあたりカフェインを30mg、ナトリウムを10mg含有する炭酸飲料」(引用発明4)
「カフェイン、カリウム、ナトリウム、着色料を含有し、炭酸飲料100mLあたりカフェインを30mg、ナトリウムを10mg含有する炭酸飲料」(引用製造方法発明4)

(2)対比・判断
(2-1-1)本件特許発明1と引用発明1との対比・判断について
ア 対比
前記第5 1(3)(3-1)で認定したとおり、
「カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、
カリウムを25mg?40mg、
含有する前記炭酸飲料。」である点で一致しており、
以下の点で相違する。

相違点1:本件特許発明1は、「カリウムとナトリウムの合計含量が40mg以下」であることが特定されているものの、引用発明1においては、カリウムとナトリウムの合計含量61.29mgである点。

イ 相違点1の判断
引用発明1においては、カリウムとナトリウムの合計含量61.29mgであると特定されており、甲第1号証は、商品情報として示されたものであり、引用発明1は、商品として確立しているものであり、計算の結果合計含量61.29mgになっているのであるから、わざわざ、カリウムとナトリウムの合計含量に着目して、該合計含量を40mg以下に変更する動機付けはない。
したがって、引用発明1において、カリウムとナトリウムの合計含量を40mg以下と変更して、相違点1の構成をなすことは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。

ウ 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1は、「カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、
カリウムを25mg?40mg
カリウムとナトリウムを合計含量で40mg以下、
含有する前記炭酸飲料」という全体構成を採用することで、カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料における炭酸感を向上させるという効果を奏していることは実施例等から明らかなのであるから、炭酸感の向上に関して記載のない甲第1号証から当業者が予測可能な効果とはいえない。

エ 本件特許発明1は、甲第1号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-1-2)本件特許発明2と引用発明1との対比・判断について
本件特許発明2は、本件特許発明1において、「カラメル色素を更に含む」ことをさらに技術的に限定したものであるから、上記(2-1-1)で検討したのと同様に、甲第1号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-1-4)本件特許発明4と引用製造方法発明1との対比・判断について
本件特許発明4は、本件特許発明1又は2を製造方法とした発明にすぎないから、
上記(2-1-1)(2-1-2)で検討したのと同様に、甲第1号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-2-1)本件特許発明1と引用発明2との対比・判断について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明2とを対比すると、
「カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、
含有する前記炭酸飲料。」である点で一致しており、
以下の点で相違する。

相違点2:本件特許発明1は、「カリウムを25mg?40mg、カリウムとナトリウムの合計含量が40mg以下」であることが特定されているものの、引用発明2においては、カリウムの含有量も、カリウムとナトリウムの合計含量も特定されていない点。

イ 相違点2の判断
引用発明2においては、カリウムの含有量も、カリウムとナトリウムの合計含量も明らかでないところ、甲第2号証は、商品情報として示されたものであり、引用発明2は、商品として確立しているものであり、個々に商品情報として独立している甲第2、3,4号証に記載されている濃縮果汁成分の記載や、ナトリウムやカリウム等の含有量の数字として標準的な一例を示しているにすぎない甲第5号証の食品成分データベースの値から、カリウムの含有量や、カリウムとナトリウムの合計含量の数値範囲を設定することも、特定の値にすることもできないといえる。
さらに、甲第6号証は、強い甘味を与えずにカフェインの苦味抑制するため、ナリンジンを特定量添加してマスキングする技術であり、商品として確立している引用発明2において、当業者が甲第6号証に着目する理由はないし、それによって、カリウムの含有量や、カリウムとナトリウムの合計含量の数値範囲を本件特許発明1の範囲に設定する動機付けもないといえる。

したがって、引用発明2において、カリウムの含有量やカリウムとナトリウムの合計含量を設定し、相違点2の構成をなすことは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。

ウ 本件特許発明1は、甲第2号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-2-2)本件特許発明2と引用発明2との対比・判断について
本件特許発明2は、本件特許発明1において、「カラメル色素を更に含む」ことをさらに技術的に限定したものであるから、上記(2-2-1)で検討したのと同様に、甲第2号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-2-4)本件特許発明4と引用製造方法発明2との対比・判断について
本件特許発明4は、本件特許発明1又は2を製造方法とした発明にすぎないから、
上記(2-2-1)(2-2-2)で検討したのと同様に、甲第1号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-3-1)本件特許発明1と引用発明3との対比・判断について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明3とを対比すると、
「カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、
含有する前記炭酸飲料。」である点で一致しており、
以下の点で相違する。

相違点2’:本件特許発明1は、「カリウムを25mg?40mg、カリウムとナトリウムの合計含量が40mg以下」であることが特定されているものの、引用発明3においては、カリウムの含有量も、カリウムとナトリウムの合計含量も特定されていない点。

イ 相違点2’の判断
上記(2-2-1)イで検討のとおり、引用発明3において、カリウムの含有量やカリウムとナトリウムの合計含量を設定し、相違点2’の構成をなすことは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。

ウ 本件特許発明1は、甲第3号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-3-2)本件特許発明2と引用発明3との対比・判断について
本件特許発明2は、本件特許発明1において、「カラメル色素を更に含む」ことをさらに技術的に限定したものであるから、上記(2-3-1)で検討したのと同様に、甲第3号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-3-4)本件特許発明4と引用製造方法発明3との対比・判断について
本件特許発明4は、本件特許発明1又は2を製造方法とした発明にすぎないから、上記(2-3-1)(2-3-2)で検討したのと同様に、甲第3号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-4-1)本件特許発明1と引用発明4との対比・判断について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明4とを対比すると、
「カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、
含有する前記炭酸飲料。」である点で一致しており、
以下の点で相違する。

相違点2”:本件特許発明1は、「カリウムを25mg?40mg、カリウムとナトリウムの合計含量が40mg以下」であることが特定されているものの、引用発明4においては、カリウムの含有量も、カリウムとナトリウムの合計含量も特定されていない点。

イ 相違点2”の判断
上記(2-2-1)イで検討のとおり、引用発明4において、カリウムの含有量やカリウムとナトリウムの合計含量を設定し、相違点2”の構成をなすことは、当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。

ウ 本件特許発明1は、甲第4号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-4-2)本件特許発明2と引用発明4との対比・判断について
本件特許発明2は、本件特許発明1において、「カラメル色素を更に含む」ことをさらに技術的に限定したものであるから、上記(2-4-1)で検討したのと同様に、甲第4号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-4-4)本件特許発明4と引用製造方法発明4との対比・判断について
本件特許発明4は、本件特許発明1又は2を製造方法とした発明にすぎないから、上記(2-4-1)(2-4-2)で検討したのと同様に、甲第4号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人は、甲第2、3,4号証に記載されている濃縮果汁成分が等量ずつ含まれていることを仮定し、ナトリウムやカリウム等の含有量の数字として標準的な一例を示しているにすぎない甲第5号証の食品成分データベースの値をさらに計算の前提として用い、計算した結果をナトリウムやカリウムの数値範囲とした上で、濃縮果汁量を4?50%で変更することで数値範囲は重複し当業者にとって容易になし得る旨及び甲第6号証から濃縮果汁の配合量を最適化する動機付けがある旨主張している。

イ しかしながら、上述のとおり、甲第2、3,4号証はそれぞれ、確立した商品の商品情報であり、上記のような多くの仮定や前提をおいて計算された数値範囲を判断に用いることはそもそもできない。
また、甲第6号証は、強い甘味を与えずにカフェインの苦味を抑制するため、ナリンジを特定量添加してマスキングする技術であり、仮にそのような技術が知られていたとしても、商品として確立している引用発明2、3、4又は引用製造方法発明2、3、4において、当業者が甲第6号証に着目する理由はないし、それによって、カリウムの含有量や、カリウムとナトリウムの合計含量の数値範囲を本件特許発明の範囲に設定する動機付けもないのは、上述のとおりである。
したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

2 サポート要件・実施可能要件(異議申立理由3-1、4-1)について
ア 特許異議申立人は、本件明細書【0004】の記載と明細書全体の記載から課題が読み取れず、結果として、特許請求の範囲が、課題解決できると当業者が認識できる範囲を超えているし(異議申立理由3-1)、当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない(異議申立理由4-1)旨主張している。

イ しかしながら、特許権者の提出した乙第1号証(実験成績証明書)には、実験Aとして、本件明細書【0026】?【0029】に記載した方法によって得られた炭酸飲料の炭酸飲料の評価結果が示され、本件明細書【0030】に既に示されていた【表2】の結果を補足する結果が示されている。
カリウムが添加されていない場合のカフェインの増量によっては、基本的に炭酸感の改善はなく、カフェイン入りの炭酸飲料において、炭酸感の向上に問題が存在していることは一応読み取れる。
そして、上記カフェイン入りの炭酸飲料における炭酸感の向上という課題に対して、表2全体でみれば、その解決手段として、一定量のカフェインを含有させた場合に、カリウムを一定量含有させることで、炭酸飲料の炭酸感が十分に向上していることが理解できる。
また、乙第1号証の値は、本件明細書【0030】に既に示されていた【表2】の値の間を埋めるものであり、かつ整合したものであるので、本件明細書【0004】の記載が原因で、明細書全体の記載から課題が読み取れず、特許請求の範囲が、課題解決できると当業者が認識できる範囲を超えているとまではいえないし、当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとまではいえない。

ウ そして、本件明細書には、上述のとおり、カフェイン含有飲料に対するミネラル一般の配合の炭酸感の従来認識、カフェインとカリウムの単なる組み合わせを超えた相乗的効果についての記載(【0009】)、カリウムの供給源と含有量、含量測定方法に関する記載(【0011】) 、ナトリウムの供給源等の記載(【0012】)、【0014】?【0024】の炭酸飲料の製造方法に関する記載、【0021】のカリウムとナトリウムの合計含量の上限の技術的意義の記載やカフェインを含有する炭酸飲料において、ナトリウムが一定量を超えて存在すると炭酸感の改善が妨げられることについて記載が存在し、[試験例1]におけるクエン酸カリウムを用いた炭酸感の改善効果の実施例、[試験例2]におけるカラメル色素存在下での炭酸感の改善効果を試験例1に準じて行った実施例、[試験例3]におけるナトリウムの炭酸感への影響を試験例1の成分にクエン酸ナトリウムを配合して検討した実施例、[試験例4]における、カラメル色素存在下でのナトリウムの炭酸感への影響を試験例3の成分にカラメル色素を配合して検討した実施例において、いずれも炭酸感の一定程度の向上が確認され、乙第1号証でも、本件明細書試験例1に沿って実施した塩化カリウム、リン酸カリウムを用いた実験B、本件明細書試験例3に沿って実施した塩化ナトリウムを用いた実験C、オレンジ果汁を用いた以外は、実験Cと同様に実施した実験Dにおいても、カリウム、ナトリウムの供給源に基づく対陰イオンが異なっても、柑橘類であるオレンジ果汁を供給原としたものでも、炭酸感が向上しているのであるから、発明の詳細な説明には、本件特許発明の特定事項に対応した炭酸飲料において、炭酸感の向上が一定程度得られていることが当業者において、理解できる程度に示され、本件特許発明が当業者が実施できる程度に記載されているといえ、サポート要件・実施可能要件を欠如しているということはできない。
したがって、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものであり、発明の詳細な説明の記載は、同法同条第4項第1号の要件を満たすものである。

特許異議申立人の意見書における主張について
1 特許異議申立人は、意見書1?3頁において、本件特許発明の数値範囲の内外で顕著な効果の相違のないことを進歩性欠如の理由として挙げているが、上述のとおり、本件特許発明の構成に想到することが、当業者が容易になし得た技術的事項であるといえないし、本件特許発明の全体構成を採用することで、カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料における炭酸感を向上させるという効果を奏していることは、少なくとも示されているのであるから、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

2 また、特許異議申立人は、意見書4?5頁において、特許権者の甲第7号証、甲第8号証は、カフェインを含有した炭酸飲料の炭酸感の改善と無関係な文献であるとの主張に反論し、果汁を供給源とした炭酸飲料の製造には、炭酸感に問題が生じることが技術常識であったことを示すための証拠で無関係ではないこと、乙第1号証の実験Dは、後出し証拠であり、技術常識に反し、新規事項であり、記載不備を補うことはできない旨主張している。
しかしながら、甲第7号証、甲第8号証の記載は、果汁に含まれるカロテノイドにより、相対的に炭酸の刺激感が弱くなるという点や、果汁と炭酸ガスの両者を配合した場合、同等の甘味料での口当たりの重さ等の味や風味のバランスの困難さがあるとの点に着目した見解の一つであって、本件特許発明のように、カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料において、カフェイン含有量やカリウム含有量、カリウムとナトリウムの合計含有量を特定範囲にした場合にも、一定の炭酸感の向上が生じないことまでも技術常識として示すものとはいえないことは、上述のとおりである。
また、乙第1号証の実験Dは、本件明細書の【0011】の「本発明においては、食品へ配合することが認められている限り、いずれの原料をカリウムの供給源として用いてもよい。限定されないが、例えば、炭酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カリウム、水酸化カリウム、乳酸カリウム、酒石酸カリウム、コハク酸カリウム、リンゴ酸カリウム、クエン酸カリウム、及びフマル酸カリウム等を、本発明において、カリウムの供給源として用いることができる。本発明の炭酸飲料におけるカリウム含量は、炭酸感の改善効果が奏される限り、特に限定されない。例えば、炭酸飲料100ml当たりのカリウム含量は、14mg以上、20mg以上、25mg以上、30mg以上、35mg以上、又は40mg以上を下限にすることができる。そして、カリウム含量の上限を定めることもでき、例えば、炭酸飲料100ml当たり、50mg以下、45mg以下、40mg以下、35mg以下、又は30mg以下にすることができる。別の観点から、飲料100ml当たりのカリウムの含量は、6mg?50mg、10mg?50mg、15mg?50mg、20mg?45mg、25mg?40mg、又は30mg?40mgにすることができる。」とのカリウムの供給源と含有量に関する記載や【0012】の「本発明の炭酸飲料は、更にナトリウムを含有していてもよい。ナトリウムの供給源となる原料は、食品へ配合することができる限り、いずれのものを用いてもよい。・・・」とのナトリウムの供給源等の記載の範囲内の実験で、柑橘類果汁を供給源とした場合も、本件明細書に既に示された、供給源としてはいずれを用いてもよい旨の記載に則した結果が得られることを示したものであるから、その限度においては、その結果を明細書のサポート要件の参考として参酌することができないというわけではない。
よって、上記特許異議申立人の主張も採用することはできない。

第6 むすび
したがって、請求項1,2,4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1、2,4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
異議申立ての対象であった請求項3は、訂正請求により削除されたので、請求項3についての申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフェイン、カリウム、及びナトリウムを含有する炭酸飲料であって、
当該炭酸飲料100ml当たり、
カフェインを10mg?40mg、
カリウムを25mg?40mg、及び
カリウムとナトリウムを合計含量で40mg以下、
含有する前記炭酸飲料。
【請求項2】
カラメル色素を更に含む、請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
請求項1又は2に記載の炭酸飲料の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-26 
出願番号 特願2015-90884(P2015-90884)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 福澤 洋光  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 瀬良 聡機
井上 千弥子
登録日 2019-09-20 
登録番号 特許第6588224号(P6588224)
権利者 サントリーホールディングス株式会社
発明の名称 炭酸感が改善された炭酸飲料  
代理人 宮前 徹  
代理人 中西 基晴  
代理人 鶴喰 寿孝  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 鶴喰 寿孝  
代理人 中西 基晴  
代理人 小野 新次郎  
代理人 宮前 徹  
代理人 山本 修  

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