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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 G06Q |
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管理番号 | 1375416 |
審判番号 | 不服2020-10517 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-28 |
確定日 | 2021-07-06 |
事件の表示 | 特願2018-131912「薬剤収集支援端末、薬剤収集支援装置、薬剤収集支援システム、薬剤収集支援方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月11日出願公開、特開2018-160277、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月12日に出願した特願2014-48843号の一部を平成30年7月11日に新たな特許出願としたものであって、平成30年8月9日に上申書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和元年6月21日付けで拒絶理由が通知され、令和元年8月23日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和元年12月13日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月14日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和2年4月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和2年7月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年4月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 理由3.この出願の請求項1、4、7、9に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特願2014-35932号(特開2015-160696号) なお、請求項2-3、5-6、8、10に係る発明については、拒絶理由を発見しない請求項とされている。 第3 本願発明 本願の請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、令和2年2月14日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、本願発明1は、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 薬剤の収集を支援する薬剤収集支援端末であって、 収集対象となる薬剤が記載された処方箋の入力を受け付けて当該処方箋に記載された1又は複数の薬剤に関する在庫場所情報を含む薬剤情報を生成する薬剤収集支援装置から送信された前記薬剤情報を受信する薬剤情報受信部と、 装用者が視認する複数薬剤の在庫場所を含む景色を背景に、薬剤毎の前記薬剤情報を重畳して表示することが可能な表示部と、 前記薬剤の前記薬剤情報が新たに受信されているか否かを確認し、新たに受信されている場合に、当該薬剤情報の受信を契機として、受信された前記薬剤情報を、前記装用者が視認する複数薬剤の在庫場所を含む景色を背景に重畳して前記表示部に表示させる制御部と、 を備えることを特徴とする薬剤収集支援端末。」 本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明5は、薬剤情報収集支援端末に薬剤情報を送信する薬剤情報収集支援装置に係る発明である。 本願発明6は、本願発明1の薬剤情報収集支援端末の一部の構成と本願発明5の薬剤情報収集支援装置の一部の構成とを組み合わせた薬剤収集支援システムに係る発明である。 本願発明7は、本願発明1の表示部を備える薬剤収集支援端末の薬剤情報受信部、制御部が行う処理をステップとした薬剤収集支援方法に係る発明である。 本願発明8は、本願発明5の薬剤情報収集支援装置の薬剤情報生成部、薬剤情報送信部が行う処理をステップとした薬剤収集支援方法に係る発明である。 本願発明9は、本願発明1の表示部を備える薬剤収集支援端末の薬剤情報受信部、制御部が行う機能をコンピュータに実現させるためのプログラムに係る発明である。なお、請求項9に記載された「実現指せることを特徴とするプログラム」は「実現させることを特徴とするプログラム」の誤記であることは明らかとして本願発明9を認定した。 本願発明10は、本願発明5の薬剤情報収集支援装置の薬剤情報生成部、薬剤情報送信部が行う機能をコンピュータに実現させるためのプログラムに係る発明である。 第4 先願明細書等、先願発明 1.先願明細書等(特願2014-35932号(特開2015-160696号)) 原査定の拒絶の理由で提示された先願明細書等には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、注目箇所に当審が付与した。) ア.「【0008】 図1は、本実施形態に係る薬剤処方管理システムの構成を示す図である。薬剤処方管理システム10は、電子カルテサーバ11と、情報処理端末装置12と、薬剤部サーバ13と、ハンディターミナル14と、収納装置15と、無線アクセスポイント16とを備える。 【0009】 薬剤処方管理システム10において、電子カルテサーバ11と、情報処理端末装置12と、薬剤部サーバ13と、無線アクセスポイント16とは、通信ネットワークNに接続される。また、ハンディターミナル14は、無線アクセスポイント16を介して、無線により通信ネットワークNに接続される。 【0010】 電子カルテサーバ11は、電子カルテを記憶・管理するサーバ装置である。情報処理端末装置12は、電子カルテの記入等を行うための医師用の端末装置である。なお、電子カルテには医師から処方された薬剤(目的薬剤)を指示する情報(処方箋情報)が含まれるものとする。また、処方箋情報には、目的薬剤の薬剤コードが含まれるものとする。 【0011】 薬剤部サーバ13は、薬剤部に配置され薬剤払出等を管理するサーバ装置である。また、薬剤部サーバ13は、ハンディターミナル14と連携することで、薬剤のピッキング(取り揃え)作業を支援する。 【0012】 ハンディターミナル14は、薬剤師等の薬剤ピッキング作業を行うピッキング作業者により携帯される端末装置である。本実施形態において、ハンディターミナル14は、薬剤部サーバ13と協働することで、薬剤のピッキング作業を支援する薬剤ピッキング支援装置として機能する。 【0013】 ハンディターミナル14は、ヘッドマウントディスプレイ141と、デジタルカメラ142と、インタフェースボックス143とを備える。 【0014】 ヘッドマウントディスプレイ141は、図2に示すように、眼鏡のフレーム状に形成されたフレーム本体1411と、このフレーム本体1411の左右両側に設けられた装着用アーム1412とを備える。ヘッドマウントディスプレイ141は、装着用アーム1412によってピッキング作業者OPの頭部に装着することが可能である。 【0015】 フレーム本体1411は、ピッキング作業者OPの両眼に合わせた大きさの枠状に形成されている。フレーム本体1411の枠外の上部中央には、撮像方向可変機構1413を介してデジタルカメラ142が設けられている。フレーム本体1411の枠内には、例えばフレーム枠の形状に合わせて形成された板状の光透過性部材1414が保持されている。この光透過性部材1414は、ヘッドマウントディスプレイ141をピッキング作業者OPの頭部に装着した際に、ピッキング作業者OPの眼によって周辺環境を観察可能である。この光透過性部材1414は、例えば無色透明又は予め決められた色を有していてもよい。 【0016】 光透過性部材1414内の一部分には、モニタ表示部1415が形成されている。このモニタ表示部1415は、後述する表示制御部316の制御に従い各種情報等を表示する。モニタ表示部1415は、例えばヘッドマウントディスプレイ141における左側に形成される。すなわち、モニタ表示部1415は、ヘッドマウントディスプレイ141をピッキング作業者OPの頭部に装着したときに、ピッキング作業者OPの左眼に対応する部分に形成される。なお、モニタ表示部1415は、ピッキング作業者OPの右眼に対応する部分に形成してもよいし、両眼に対応する各部分に形成してもよい。モニタ表示部1415は、光透過性の状態でモニタ表示する。しかるに、ピッキング作業者OPは、モニタ表示部1415に画像データや各種情報等が表示されている状態でも周辺環境を観察することが可能である。」 イ.「【0019】 収納装置15は、所定の領域(薬剤室)内に設けられた薬剤の収納を目的とする構造物である。収納装置15は、複数の棚151を備える。棚151の各々には、薬剤を収納することが可能な引き出し等の収納部152が設けられる。また、収納装置15には、各収納部152の設置位置を特定することが可能な位置情報装置153が設けられる。なお、図3では、収納部152を囲う位置に位置情報装置153を設けた例を示している。 ウ.「【0025】 また、薬剤部サーバ13のCPU21には、入力部24、表示部25、通信部26及び記憶部27等が接続される。」 エ.「【0027】 通信部26は、通信ネットワークNに接続可能な通信インターフェースである。記憶部27は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。記憶部27は、各種プログラムや各種ファイルを記憶する。CPU21は、薬剤部サーバ13の起動時等に、記憶部27に記憶されたプログラムの全部又は一部をRAM23にコピーし、実行する。 【0028】 また、記憶部27は、薬剤管理ファイルF1、位置管理ファイルF2等のデータファイルを記憶する。薬剤管理ファイルF1、位置管理ファイルF2は、通信ネットワークNを介して、ハンディターミナル14から読み出し可能である。 【0029】 薬剤管理ファイルF1は、収納装置15に収納された各薬剤に関する情報と、その薬剤の収納位置に関する情報との関連付けが設定されたデータファイルである。図5は、薬剤管理ファイルF1のデータ構成の一例を示す図である。同図に示すように、薬剤管理ファイルF1には、薬剤毎にユニークに割り当てられた薬剤コード、薬剤名及び量等の薬剤に関する薬剤情報と、その薬剤が収納された収納装置15の収納部152を示す位置情報(第1情報、第2情報)と、が関連付けて登録される。」 オ.「【0033】 また、ハンディターミナル14のCPU31には、入力部34、接続インターフェース35、通信部36及び記憶部37等が接続される。 【0034】 入力部34は、キーボードやポインティングデバイス等の入力デバイスである。入力部34は、オペレータからの操作指示を受け付ける。なお、公知の視線入力技術等を用いることで、ヘッドマウントディスプレイ141を入力デバイスとして用いる形態としてもよい。 【0035】 接続インターフェース35は、ヘッドマウントディスプレイ141及びデジタルカメラ142との間でデータ送受信を可能にする。通信部36は、無線アクセスポイント16と無線により通信可能な通信インターフェースである。記憶部37は、HDDやSSD等の記憶装置である。記憶部37は、各種プログラムや各種ファイルを記憶する。CPU31は、ハンディターミナル14の起動時等に、記憶部37に記憶されたプログラムの全部又は一部をRAM33にコピーし、実行する。」 カ.「【0039】 画像解析部312は、画像取込部311が取り込んだ画像を解析することで、デジタルカメラ142の撮像範囲に存在する各棚151の位置情報を取得する。具体的に、画像解析部312は、画像取込部311が取り込んだ撮像画像に含まれる位置情報装置153の各々から位置情報を読み取る。」 キ.「【0044】 薬剤位置特定部314は、ピッキングの対象となる目的薬剤の薬剤コードに基づき、目的薬剤が収納されている棚151(或いは収納部152)の位置を特定する。具体的に、薬剤位置特定部314は、目的薬剤の薬剤コードが検索対象に設定されると、その薬剤コードを含むエントリーを薬剤管理ファイルF1から検索する。そして、薬剤位置特定部314は、該当するエントリーに含まれた位置情報を、目的薬剤が収納されている薬剤位置として特定する。なお、薬剤コードの入力方法は特に問わず、薬剤コードを含む処方箋データ等を入力部34や通信部36を介して入力する形態としてもよい。 【0045】 エリア判定部315は、薬剤位置特定部314で特定された目的薬剤の薬剤位置が、デジタルカメラ142の撮像範囲内に含まれるか否かを判定する。具体的に、エリア判定部315は、画像解析部312が撮像画像から取得した位置情報の中に、薬剤位置特定部314が特定した薬剤位置の位置情報が含まれるか否かを判定する。 【0046】 ここで、含まれると判定した場合、エリア判定部315は、デジタルカメラ142の撮像範囲内、つまりピッキング作業者の視野内に目的薬剤が存在すると判定する。また、含まれないと判定した場合、エリア判定部315は、位置管理ファイルF2に基づき、端末位置特定部313が特定した端末位置から、薬剤位置特定部314が特定した薬剤位置までの経路を導出する。なお、経路の導出方法は特に問わず、ナビゲーション等の公知の技術を用いてもよい。 【0047】 表示制御部316は、ヘッドマウントディスプレイ141(モニタ表示部1415)への画像(静止画像又は動画像)出力を制御する。また、表示制御部316は、エリア判定部315と協働することで、端末位置特定部313が特定した自装置の端末位置から、目的薬剤が収納された収納位置に案内するためのガイド画像をヘッドマウントディスプレイ141に表示する。 【0048】 具体的に、表示制御部316は、エリア判定部315が撮像範囲内に目的薬剤が存在すると判定した場合に、該当する薬剤位置を指示する第1ガイド画像をヘッドマウントディスプレイ141に表示する。 【0049】 図10は、ヘッドマウントディスプレイ141に表示される第1ガイド画像の一例を示す図である。表示制御部316は、撮像範囲内に目的薬剤が存在すると判定されると、薬剤位置特定部314が特定した薬剤位置に基づき、該当する収納部152を指示する第1ガイド画像G1を表示させる。ここで、表示制御部316は、画像取込部311が取り込んだ撮像画像に基づき、装着者の視界VA内において、目的薬剤が収納されている収納部152の位置に第1ガイド画像G1が重畳するよう表示位置を制御する。」 ク.「【0054】 一方、薬剤部サーバ13のCPU21は、プログラムを実行することにより、検索部411と、情報提供部412としての機能を備える。 【0055】 検索部411は、ハンディターミナル14からの要求に応じて、薬剤管理ファイルF1、位置管理ファイルF2を検索する。例えば、検索部411は、ハンディターミナル14から薬剤コードを検索キーとして受け付けると、この検索キーに対応する薬剤情報及び位置情報を薬剤管理ファイルF1から検索する。また、検索部411は、ハンディターミナル14から位置情報を検索キーとして受け付けると、この検索キーに対応する収納装置15(収納部152)の位置関係を位置管理ファイルF2から検索する。情報提供部412は、検索部411の検索結果をハンディターミナル14に提供する。」 ケ.「【0056】 次に、ハンディターミナル14の動作について説明する。図12は、ハンディターミナル14が実行するピッキング支援処理の手順を示すフローチャートである。なお、本処理の前提として、ハンディターミナル14には目的薬剤の薬剤コードが入力されているものとする。また、撮像部164により撮像された画像は、画像取込部311により順次取り込まれ、画像解析部312により画像解析が行われるものとする。 【0057】 まず、CPU31は、ピッキング作業者等からの指示に応じ、予め入力された目的薬剤の何れかを検索対象に設定する(ステップS11)。 【0058】 薬剤位置特定部314は、検索対象に設定された目的薬剤の薬剤コードに基づき、対応するレコード(位置情報等)を薬剤管理ファイルF1から検索することで、目的薬剤の薬剤位置を特定する(ステップS12)。また、端末位置特定部313は、画像解析部312が取得した位置情報等に基づき、位置管理ファイルF2のマップデータから、薬剤室内における自装置の端末位置を特定する(ステップS13)。」 コ.「【0061】 以上のように、本実施形態のハンディターミナル14によれば、目的薬剤が収納されている薬剤位置へ案内するためのガイド画像を、ヘッドマウントディスプレイ141に表示する。これにより、ピッキング作業者は、自らの視野内、つまり実空間上に重畳表示されるガイド画像に基づき目的薬剤を探すことができるため、ピッキング作業の効率化を図ることができる。」 前記ア?コの記載によると、先願明細書等について、次の事項が記載されているといえる。 サ.前記アの【0012】の記載によれば、ハンディターミナル14は、薬剤のピッキング作業を支援するから、先願明細書等には、「薬剤のピッキング作業を支援するハンディターミナル14」が記載されている。 シ.前記アの【0013】の記載によれば、ハンディターミナル14は、ヘッドマウントディスプレイ141を備えている。 ス.前記アの【0009】の記載によれば、ハンディターミナル14は、無線アクセスポイント16を介して、無線により通信ネットワークNに接続され、前記オの【0033】、【0035】の記載によれば、ハンディターミナル14の通信部36は、無線アクセスポイント16と無線により通信可能な通信インターフェースであるから、先願明細書等には、「無線アクセスポイント16と無線により通信可能であり、前記無線アクセスポイントを介して、無線により通信ネットワークNに接続される通信部36」が記載されている。 セ.前記ウの【0025】、前記エの【0027】-【0029】の記載によれば、薬剤部サーバ13には、通信ネットワークNに接続可能な通信インターフェースである通信部26と記憶部27を持つこと、記憶部27は、通信ネットワークNを介して、ハンディターミナル14から読み出し可能であり、薬剤毎にユニークに割り当てられた薬剤コード、薬剤名及び量等の薬剤に関する薬剤情報と、その薬剤が収納された収納装置15の収納部152を示す位置情報と、が関連付けて登録される薬剤管理ファイルF1を記憶すること、が記載されている。 また、前記クの【0054】、【0055】の記載によれば、薬剤部サーバ13は、ハンディターミナル14から薬剤コードを検索キーとして受け付けると、この検索キーに対応する薬剤情報及び位置情報を薬剤管理ファイルF1から検索し、検索結果をハンディターミナル14に提供することが記載されている。 さらに、前記キの【0044】、前記ケの【0056】-【0058】の記載によれば、予め入力された目的薬剤の薬剤コードから検索対象に設定された目的薬剤の薬剤コードに基づき、対応する位置情報等を、薬剤管理ファイルF1から検索することで、目的薬剤が収納されている薬剤位置を特定する薬剤位置特定部314が記載されている。 してみると、先願明細書等には、「予め入力された目的薬剤の薬剤コードから検索対象に設定された目的薬剤の薬剤コードを検索キーとして、通信ネットワークNに接続可能である通信部26を持つ薬剤部サーバ13の記憶部27に記憶され、通信ネットワークNを介して、ハンディターミナル14から読み出し可能であり、薬剤毎にユニークに割り当てられた薬剤コード、薬剤名及び量等の薬剤に関する薬剤情報と、その薬剤が収納された収納装置15の収納部152を示す位置情報と、が関連付けて登録される薬剤管理ファイルF1から薬剤情報及び位置情報を検索し、検索結果である薬剤情報及び位置情報を前記薬剤部サーバ13から提供されることで、目的薬剤が収納されている薬剤位置を特定する薬剤位置特定部314」が記載されている。 ソ.前記アの【0014】-【0016】の記載によれば、ヘッドマウントディスプレイ141は、ピッキング作業者OPの頭部に装着可能であり、ヘッドマウントディスプレイ141をピッキング作業者OPの頭部に装着した際に、表示制御部316の制御に従いモニタ表示部1415に各種情報等が表示されている状態でも周辺環境を観察することが可能であることが記載されている。 また、前記イの【0019】の記載によれば、収納装置15に備えられた複数の棚151の各々には、薬剤を収納することが可能な引き出し等の収納部152が設けられることが記載されている。 さらに、前記カの【0039】、前記キの【0045】、【0046】の記載によれば、デジタルカメラ142の撮像範囲内とピッキング作業者の視野内とが同じ範囲内であり、撮像範囲内に各棚151が存在し、撮像範囲内に目的薬剤の薬剤位置が含まれるか否かが判定され、含まれる場合には、ピッキング作業者の視野内に目的薬剤が存在すると判定されることが記載されている。 加えて、前記キの【0047】-【0049】、前記コの【0061】の記載によれば、ピッキング作業者の視界VA内において、自らの視野内の実空間上に、目的薬剤の薬剤位置に基づき、該当する収納部152を指示する第1ガイド画像G1を重畳して表示することが可能なモニタ表示部1415と、そのように第1ガイド画像G1を表示させる表示制御部316とが記載されている。 してみると、先願明細書等には、「ヘッドマウントディスプレイ141を頭部に装着したピッキング作業者OPの視界VA内において、複数薬剤を収納する棚151を含む自らの視野内の実空間上に、目的薬剤の薬剤位置に基づき、前記目的薬剤が収納されている前記棚151に設けられた収納部152を指示する第1ガイド画像G1を重畳して表示することが可能であり、各種情報が表示されている状態でも周辺環境を観察することが可能なモニタ表示部1415と、 前記薬剤位置に基づいて、前記ヘッドマウントディスプレイ141を頭部に装着したピッキング作業者OPの視界VA内において、複数薬剤を収納する前記棚151を含む自らの視野内の実空間上に、前記目的薬剤の薬剤位置を指示する前記第1ガイド画像G1を重畳して前記モニタ表示部1415に表示させる表示制御部316」が記載されている。 以上、サ?ソによると、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。 「薬剤のピッキング作業を支援する端末装置であるハンディターミナル14であって、 ヘッドマウントディスプレイ141と、 無線アクセスポイント16と無線により通信可能であり、前記無線アクセスポイントを介して、無線により通信ネットワークNに接続される通信部36と、 予め入力された目的薬剤の薬剤コードから検索対象に設定された目的薬剤の薬剤コードを検索キーとして、通信ネットワークNに接続可能である通信部26を持つ薬剤部サーバ13の記憶部27に記憶され、前記通信ネットワークNを介して、前記ハンディターミナル14から読み出し可能であり、薬剤毎にユニークに割り当てられた薬剤コード、薬剤名及び量等の薬剤に関する薬剤情報と、その薬剤が収納された収納装置15の収納部152を示す位置情報と、が関連付けて登録される薬剤管理ファイルF1から薬剤情報及び位置情報を検索し、検索結果である薬剤情報及び位置情報を前記薬剤部サーバ13から提供されることで、目的薬剤が収納されている薬剤位置を特定する薬剤位置特定部314と、 前記ヘッドマウントディスプレイ141を頭部に装着したピッキング作業者OPの視界VA内において、複数薬剤を収納する棚151を含む自らの視野内の実空間上に、前記目的薬剤の薬剤位置に基づき、前記目的薬剤が収納されている前記棚151に設けられた収納部152を指示する第1ガイド画像G1を重畳して表示することが可能であり、各種情報が表示されている状態でも周辺環境を観察することが可能なモニタ表示部1415と、 前記特定された薬剤位置に基づいて、前記ヘッドマウントディスプレイ141を頭部に装着したピッキング作業者OPの視界VA内において、複数薬剤を収納する前記棚151を含む自らの視野内の実空間上に、目的薬剤の薬剤位置を指示する前記第1ガイド画像G1を重畳して前記モニタ表示部1415に表示させる表示制御部316と、 を備えるハンディターミナル14。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と先願発明とを対比する。 ア.先願発明における「ハンディターミナル14」は、薬剤のピッキング作業が処方箋に基づいて薬剤を収集する作業であり、当該作業を支援する端末装置であるから、本願発明1における「薬剤の収集を支援する薬剤収集支援端末」に相当する。 イ.先願発明における「薬剤部サーバ13」は、薬剤情報及び位置情報をハンディターミナル14に提供するから、本願発明1における「薬剤収集支援装置」に相当する。 ウ.先願発明における薬剤サーバ13から提供される「薬剤情報及び位置情報」は、目的薬剤、すなわち収集対象となる薬剤の薬剤コードを検索キーとした同じ検索の結果として得られる情報であるから、本願発明1における「位置情報を含む薬剤情報」に相当する。また、先願発明における「位置情報」は、検索対象の目的薬剤が収納されている薬剤位置を特定するために使用される情報であるから、本願発明1における「1」「の薬剤に関する在庫場所情報」に相当する。してみると、先願発明における薬剤サーバ13から提供される「薬剤情報及び位置情報」は、本願発明1における「収集対象となる」「1」「の薬剤に関する在庫場所情報を含む薬剤情報」に相当する。 エ.先願発明における「通信部36」と「薬剤サーバ13」とは、ともに通信ネットワークNに接続され、薬剤情報及び位置情報は、ハンディターミナル14から読み出し可能であり、ハンディターミナル14に備えられた薬剤位置特定部314は、検索結果である薬剤情報及び位置情報を薬剤部サーバ13から提供されることから、薬剤サーバ13から薬剤情報及び位置情報を送信し、ハンディターミナル14は、通信部36において、当該送信された薬剤情報及び位置情報を受信していることは明らかである。してみると、先願発明における「通信部36」は、本願発明1における「薬剤情報受信部」に相当し、先願発明には、本願発明1における「薬剤情報を薬剤情報収集支援装置から送信され、前記送信された前記薬剤情報を受信する」ことに相当する構成が存在する。 オ.先願発明における「ピッキング作業者OP」は、ハンディターミナル14に備えられたヘッドマウントディスプレイを頭部に装着する者であるから、本願発明1における「装用者」に相当する。 カ.先願発明における「棚151」は、複数薬剤を収納する棚であるから、本願発明1における「複数薬剤の在庫場所」に相当する。 キ.先願発明おける「視界VA」は、ピッキング作業者OPの視界であるから、本願発明1における「装用者」の「視認する」「景色」に相当する。 ク.先願発明における「前記目的薬剤の薬剤位置に基づき、前記目的薬剤が収納されている前記棚151に設けられた収納部152を指示する第1ガイド画像G1」は、収集対象である目的薬剤が収納されている収納部152を指示するために使用する情報であるから、薬剤に関する情報という点で、本願発明1における「薬剤毎の前記薬剤情報」と共通する。 ケ.先願発明における「モニタ表示部1415」は、ハンディターミナル14に備えられ、各種情報を表示することが可能であるから、本願発明1における「表示部」に相当し、ピッキング作業者OPの視野内の実空間上に、第1ガイド画像G1を重畳して表示することが可能であり、各種情報が表示されている状態でも周辺環境を観察することが可能であるから、先願発明には、本願発明1における「装用者が視認する」「景色を背景に」、「情報を重畳して表示することが可能」なことに相当する構成が存在する。 コ.先願発明における「表示制御部316」は、モニタ表示部1415の表示を制御するから、本願発明1における「制御部」に相当する。 サ.以上、上記ア?コによると、本願発明1と先願発明とは次の一致点、相違点を有する。 <一致点> 薬剤の収集を支援する薬剤収集支援端末であって、 収集対象となる1の薬剤に関する在庫場所情報を含む薬剤情報を薬剤収集支援装置から送信され、前記送信された前記薬剤情報を受信する薬剤情報受信部と、 装用者が視認する複数薬剤の在庫場所を含む景色を背景に、薬剤に関する情報を重畳して表示することが可能な表示部と、 前記薬剤に関する情報を、前記装用者が視認する複数薬剤の在庫場所を含む景色を背景に重畳して前記表示部に表示させる制御部と、 を備える薬剤収集支援端末。 <相違点1> 「薬剤収集支援装置」において、本願発明1では、「1又は複数の薬剤」が「薬剤が記載された処方箋の入力を受け付けて当該処方箋に記載された」薬剤であり、「薬剤収集支援装置」が「薬剤情報を生成」し、「薬剤収集支援装置」から送信される「薬剤に関する在庫場所情報を含む薬剤情報」が、「1又は複数」の薬剤に関する情報であるのに対し、先願発明では、そのような「薬剤収集支援装置」に関する構成がない点。 <相違点2> 「表示部」において、装用者が視認する複数薬剤の在庫場所を含む景色を背景に重畳して表示することが可能な薬剤に関する情報が、本願発明1では、「薬剤毎の前記薬剤情報」であるのに対し、先願発明では、「前記目的薬剤の薬剤位置に基づき、前記目的薬剤が収納されている前記棚151に設けられた収納部152を指示する第1ガイド画像G」である点。 <相違点3> 「制御部」において、薬剤に関する情報を、前記装用者が視認する複数薬剤の在庫場所を含む景色を背景に重畳して前記表示部に表示させるための制御として、本願発明1では、「前記薬剤の前記薬剤情報が新たに受信されているか否かを確認し、新たに受信されている場合に、当該薬剤情報の受信を契機として、受信された前記薬剤情報を、」表示させる制御を行うのに対し、先願発明では、「予め入力された目的薬剤の薬剤コードから検索対象に設定された目的薬剤の薬剤コードを検索キーとして、」「薬剤部サーバ13の記憶部27に記憶」された「薬剤管理ファイルF1から薬剤情報及び位置情報を検索し、検索結果である薬剤情報及び位置情報を前記薬剤部サーバ13から提供されることで、目的薬剤が収納されている薬剤位置を特定」し、「制御部」において、当該「特定された薬剤位置に基づいて」、「第1ガイド画像G1」を表示させる制御を行う点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討する。 事案に鑑みて、相違点3を先に検討する。 先願発明では、第1ガイド画像G1を表示させる際に、予め入力された目的薬剤の薬剤コードから検索対象に設定された目的薬剤の薬剤コードを検索キーとして、薬剤部サーバ13の薬剤管理ファイルF1から薬剤情報及び位置情報を検索し、検索結果である薬剤情報及び位置情報を前記薬剤部サーバ13から提供されることとしており、薬剤収集支援端末であるハンディターミナル14から、薬剤収集支援装置である薬剤部サーバ13に目的薬剤の薬剤コードを送信することが必要となっている。 それに対し、本願補正後発明1では、薬剤情報を表示部に表示させる際に、「前記薬剤の前記薬剤情報が新たに受信されているか否かを確認し、新たに受信されている場合に、当該薬剤情報の受信を契機として」おり、薬剤収集支援端末から薬剤収集支援装置に何ら情報を送信することなく、薬剤情報を表示部に表示させることが可能なことから、薬剤収集支援端末は、薬剤収集支援装置と独立して動作させることが可能である。 この点は、先願発明に対して新たな効果であるから、特許庁特許・実用新案審査基準第III部第3章3.2(ii)に記載された、本願の請求項に係る発明と引用発明とが同一か否かの判断の一つである、「本願の請求項に係る発明と引用発明との間に相違点がある場合であっても、両者が実質同一である場合」、すなわち、「本願の請求項に係る発明と引用発明との間の相違点が課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)である場合」には当たらない。 なお、先願明細書等においては、検索結果である薬剤情報及び位置情報を前記薬剤部サーバ13から提供される際に、提供されたか否かを確認すること、すなわち、ハンディターミナル14において受信したか否かを確認することについて明記がないため、先願発明において、当該受信したか否かを確認することを行う可能性もあるが、このように受信したか否かを確認したとしても、それは、本願補正後発明1のような「新たに受信されているか否かを確認すること」ではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、先願発明と同一であるとはいえない。 2.本願発明2-4について 本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明であり、上記相違点1-3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、先願発明と同一であるとはいえない。 3.本願発明5及び6について 本願発明5及び6において、少なくとも「処方箋に記載された1又は複数の薬剤に関する在庫場所情報を含む薬剤情報を、前記処方箋に記載された1又は複数の薬剤の提供業務における作業毎に生成する薬剤情報生成部」について、先願明細書等に記載も示唆もされておらず、先願明細書に記載された発明と相違しているから、本願発明5及び6は、先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。 4.本願発明7及び9について 本願発明7及び9は、それぞれ本願発明1に対応する方法及びプログラムの発明であり、本願発明1の薬剤情報を表示部に表示させる際に、「前記薬剤の前記薬剤情報が新たに受信されているか否かを確認し、新たに受信されている場合に、当該薬剤情報の受信を契機と」する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、先願発明と同一であるとはいえない。 5.本願発明8及び10について 本願発明8及び10は、それぞれ本願発明5に対応する方法及びプログラムの発明であり、本件補正発明5の「処方箋に記載された1又は複数の薬剤に関する在庫場所情報を含む薬剤情報を、前記処方箋に記載された1又は複数の薬剤の提供業務における作業毎に生成する薬剤情報生成部」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明5と同様の理由により、先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。 第6 原査定について 1.理由3(特許法第29条の2)について 本件補正により、本願発明1、4、7、9は、第5の1(2)で検討した相違点3に係る「当該薬剤情報の受信を契機として」という事項を有するものとなっており、本願発明1、4、7、9は、拒絶査定において引用された先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。したがって、原査定の理由3を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-06-17 |
出願番号 | 特願2018-131912(P2018-131912) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
WY
(G06Q)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 緑川 隆 |
特許庁審判長 |
佐藤 聡史 |
特許庁審判官 |
中野 浩昌 畑中 高行 |
発明の名称 | 薬剤収集支援端末、薬剤収集支援装置、薬剤収集支援システム、薬剤収集支援方法及びプログラム |
代理人 | 坊野 康博 |